【SS】一等星の凱旋

  • 1二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 19:13:53

    陽が沈み、大半の生徒は寮に戻った頃。トレーナー室で一人の男が大量の仕事と死闘を繰り広げていた。
    同僚のトレーナー達が軒並み忙しい時期なのでたくさん仕事を引き受けた。のだが、考えなしに了承したせいで本来なら10日かけてやる仕事が明日を期限にジリジリと迫ってきていた。

    「アンタのいいところは優しいところで、悪いところは優しすぎるところだ。」

    耳にたこが出来るほど担当に言われていたが、案の定優しさと無計画さが仇となった。引き受けてしまったものは仕方ないので徹夜覚悟で片付け始める。
    眠気覚ましに蹄鉄のマークが印刷されたお気に入りのエナジードリンクの缶に手を伸ばすが、その手は虚しく空気を掴む。

    「お子様がこんなもん飲んじゃ駄目だろ。」
    そこには担当のシリウスシンボリがニヤリと笑いながらエナジードリンクの缶を片手でくるくると回して円を描いていた。
    「また同僚の仕事引き受けたのか。アンタも懲りないな。」
    見透かされたがとりあえず笑って誤魔化す。彼女の言うことを聞くという条件で契約しているのだ。その条件を飲んだ自分に責任があるのだから下手なことはできないし、やりたくない。
    「考え無しのお子様はこれで満足しときな。」そういって彼女はもう片方の手に持っていたコーヒーカップをデスクに置く。コーヒーなら眠気も覚めるしいいだろうと思ってカップに口をつけたが、

    「…これココアだよね?」
    甘い、というか甘すぎる。砂糖とカカオ、牛乳の味が口いっぱいに広がる。
    「だからお子様用って言っただろ。」彼女は笑いながら言った。
    満足したのかエナジードリンクを持ったまま彼女はトレーナー室を去って行った。

  • 2二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 19:14:08

    起きると時刻は午前8時。本来トレーナー室に一晩中いるのは駄目だが、規則を守っている余裕など昨日はなかった。備え付けのシャワーを借りて戻ると、授業をふけてソファーで寝っ転がっている担当がいた。

    「準備ができ次第練習やるぞ、いいな?」
    「了解」と答えてジャージに着替を始める。昨日から洗濯した記憶がないのになぜだかちゃんと洗濯されたジャージが着替え入れに入っていた。
    「いつもありがとうシリウス。」
    感謝を伝えると、
    「感謝されるようなことはした覚えはねぇが、健康には気をつけろよ。あんたみたいな都合のいいヤツそうそういないからな。」とまんざらでもなさそうな表情で答えた。
    上着のチャックを閉めて鞄の中身を確認する。トレーニング予定表、ノートパソコン、取り巻きに配るためのお菓子。

    「仕事はちゃんとこなすくせに授業をサボってる担当には何も言わない、アンタって真面目なのか不真面目なのかわかんねぇヤツだよな。」
    苦笑いしながらシューズの靴紐を結ぶ。約束を守ってるだけだと返しておいた。「バカ真面目ってヤツだな。」と彼女は笑っていた。
    トレーナー室を出てコースへ向かう。本日もシリウスシンボリの名のもとに凱旋が始まった。

  • 3二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 19:18:12

    読んでくれてありがとうございます。ふたくちSSです。今回も未実装キャラなのでミスがあったらごめんなさい。

  • 4二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 19:20:16

    この空気感がいい……

  • 5二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 19:20:19

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