- 1二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 20:59:34
紙の束をめくり練習メニューを確認する
1週間ほど会えてないせいで、ふとした拍子に思い出すのは最後に会った日のほんとうにごめんな と言う必要のない謝罪の言葉。
忙しいのはトレーナーさんのせいではなくて、1番大変なのはトレーナーさんなのに
いつも通りしっかり準備運動をして、柔軟をして、トレーナーさんが渡してくれた練習メニューを始めようとする。
ヒシアケボノと呼ぶ小さな声
流石にあたしも寂しいのか、誰かを誘って練習すればよかったな と耳の先端の毛を整える。
ボーノ と確かに聞こえた声。慌てて振り返ると、いつも以上に白い顔 いつもは無い目の周りを取り囲む黒い隈
「トレーナーさん!」
トレーナーさんを持ち上げて、陽の当たるグラウンドから日陰に移動する。手にあたる骨の感覚と腕にかかる負荷が トレーナーさんの今までの激務を語っていた。
「いやごめんな 大丈夫だよ」
久しぶりに日光に浴びたとわかる青白い顔をしながら笑う。大丈夫じゃない人ほどよく笑う。
桐生院さんとたづなさんの手伝いもあって、グランドライブの準備は上手くいってるらしい。
1度廃れかけてしまったものを復活させるというのは思った以上に大変なことだ。お客さんに、スタンダードになってしまったいつもの味を押しのけて、違う味にチャレンジしてもらう。そしてその味を気に入ってもらう。そのメニューが広まっていく。そんなトントン拍子にいけばいいが、そうはいかないことは重々わかっている。 - 2二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 20:59:58
だからこそ、あんまり無理しないでと言いにくい。難しいことも、難しいからと言って諦めきれないこともわかっているから
「トレーナーさん 時間ができたなら自分の休憩に使ってほしいなあ…」
「…はは、ごめんな」
ボーノの様子が気になったからと笑う
あなたの目があたしから逸れた
あたしは、あたしの願いを間違えたとは思っていない。違う味にチャレンジしてもらいたいと思わなくもなかった。けれどあたしはあたしのいつもの味を大事にしたかった。
このライブはぜったいに、と言ったっきり口ごもったあなた。グランドライブの特別なライブだから。グランドライブがまた認められるための大事なライブだから。色々な理由があるのに口ごもった理由はわかってる
URAファイナルを除いて、最後になるだろうライブだから。
あたしが絶対に踊れるだろう最後のライブだから。
「あたしは大丈夫だよー、トレーナーさん
トレーナーさんの練習メニューもあるんだから……」
いつも通り笑って言った後、ふっと後悔が浮かぶ。大丈夫じゃない人ほどよく笑う
へろへろなトレーナーさんも同じように笑った。
「大丈夫か ならよかった」
あなたの笑顔はいつだってあたたかいのに あなたのそばにいるのはあたたかいのに、ほんの少しだけ見えてしまう距離が酷くつめたかった - 3二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 21:00:37
- 4二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 21:05:59
ボーノのSSありがてえ……
- 5二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 21:14:11
ふつくしい…
- 6二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 21:14:55
トレーナー…