- 1二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:03:23
馥郁たる香り。芳醇な焙煎具合。静謐さをもたらす芳香。
文字の世界に横たわる豆の香りを動員するとき、私の脳裏には一人の横顔が過ぎります。焙煎機に張り付いた豆は、いつもの品種とは違うものです。
「これ、カフェが淹れてくれたコーヒーの中で一番美味しい」
「そう、ですか……? では、次からはそれを」
「あ、いや。こっちの好みでカフェの好きな豆が飲めなくなるのはダメだと思う。君の趣味なんだから、君が飲みたいものを選ぶべきだ」
「……はい」
視線を一瞬だけ逸らす仕草は、紛れもなくあの人が大人である証左でした。URA本戦を間近に控えたクリスマスの夜。無責任な噂話に困ったような笑みを浮かべたのが印象に残っています。
しんしんと降り続く霧雨は、一日中止むことはないそうです。
私が視認できない霧の向こう側は、もしかしたら別の世界になっているのもしれない。笑みが零れました。続いて、冒険のために必要なものを思い浮かべました。そして、誰と行くかを想像しました。笑みが深くなり、慌てて見られていないか周囲を振り返りました。
不運にも体育館の使用権を得られなかったため、今日はお休みです。
トレーナーさんは眉に深い峡谷を作りながらキーボードを叩いています。直近のタイムと、それに適した出走レースとのにらめっこ。トゥインクルが終わっても、選手生命はまだまだ続きます。
ポッドに差してある温度計が80度を示しました。私は火を止めて、同じ柄のマグカップにドリッパーをはめ込みます。
「うん、そうだね」
オトモダチは言います。それは欺瞞だ、と。蓋をしているだけだ、と。
コーヒーの好み。それを共有することは、きっと許してはならない一線を許すことにつながるのでしょう。
私とタキオンさんの領土が(時折り侵犯されるものの)均衡を保っているように、ミルの音が響けばユキノさんがバターを取り出すように、お互いに適した関係性を破ることは、きっとよくないことなのでしょう。
「オトモダチは、いるんだね」
ですが。
「君の力になりたい」
先に踏み込んできた身でそういうことを言うのは甘えではないか。最近、私はそう思うようになりました。
果たしてあの人は、これから運ぶコーヒーの味に気付くのでしょうか。
あるいは気付かなくとも、よいでしょう。
「しとしと、しとしと……」
おぼんを落とさないように気を付けながら、扉をゆっくりとノックしました。 - 2二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:04:48
なんだそのスレタイから凄まじい文才は!!
- 3二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:07:21
カフェ狂い!?生きてたのか!?
- 4二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:14:49
なんであにまんに投げたの?
- 5二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:16:59
よき……
- 6二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:36:19
霧の向こうのくだりすき…………
- 7二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:38:13
ふざけたスレタイだと思って覗いてみたらなんかすごい…すごくすごいSSがそこにあったんだ
- 8二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:53:30
そこまで書けるならスレタイくらい考えろ定期
- 9二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:54:32
せめせめカフェすき
- 10二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:55:16
本文が素晴らしいのに意識がスレタイに持っていかれる
- 11二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:56:13
スレタイでおともだちの気持ちが漏れちゃったのかな
めっちゃ良いSSでした - 12二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 23:13:25
- 13二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 23:19:06
制約と誓約定期
- 14二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 00:50:25
なんか常に供給あるけどそれでもトレカフェすき
- 15二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 00:50:53
心から笑いたい時に見る動画のニョーデルおじさんかと思った
- 16二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 00:53:00
こいつ前イメ損タイトルで釣ってた奴か
- 17二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 00:53:50
じゃないと見てくれないからね