【SS】私が生徒会長を務めて、何年が経つだろうか

[1 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 19:33:02]

私が生徒会長を務めて、何年が経つだろうか。
思えばメイクデビューを走る前からこの役職に就いていた。

記憶力がいいから、要領がいいから、同世代の中でも強いから。
だから、私ならウマ娘全員を幸せにできる。
最初の理由はそんなところだった。

レースと生徒会、二足のわらじを履き続けることは大変ではあったが、無理ではなかった。
運の良いことに、頼れる二人の副生徒会長、そしてトレーナー君と出会うことが出来たことが大きいのだろう。
業務は確かに時間を圧迫したが、精神的なストレスとして感じることは少なかった。

ただ一つ、不満があるとするのなら。
同じ一人の競争者、友人として見るウマ娘が少ないこの現状だ。
誰も彼もが躊躇し、一歩引いて私と接する。
悩みがあるなら愚痴をこぼしてくれても構わない。
昼食で共に笑い合いたい。
新しいダジャレを思いついたのなら、披露してほしい。

気軽にレースで、噛み付き合いたい。

そんな事ができるのは、いつの間にか本当に限られた者達とだけになっていた。

[2 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 19:33:31]

私は全てのウマ娘たちの幸福のため、トレーナー君と一緒に夢を見せた。
私と、私のかけがえのないトレーナー君。
仲睦まじく七冠達成の会見に望むふたりの姿は間違いなく、それを見るウマ娘たちの心に届いたはずだ。
これがレースで頂点を極めるウマ娘とトレーナーの姿だと。
これが自分たちの目指す理想の姿だと。
練習場でトレーニングを重ねる者たちの姿から、それは自負できる。

だけど、何故だろう。

それをただ俯瞰するしかない現状が、夢の実現とは違うところで私に影を落とす。
ああ、分かるとも。
私は寂しいのだ。

[3 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 19:34:13]

転機が訪れたのは、更に数年がたったある日。
私に憧れ、会見で声をかけてくれたウマ娘が、トレセン学園に入学してきた。
自慢ではないが正直、会見での私に憧れ、声をかけてくる幼いウマ娘は少なくなかった。
だけれど数年が経つと、皆と同じように距離を取り始める。
現実を、私を、自分の壁だと認識して立ち止まる。

だけれど、彼女はそうじゃなかった。

トウカイテイオー。

彼女だけは、あのときと同じ憧憬の眼差しを忘れないまま、私の元を訪れてくれた。
それがどれだけ救いだっただろう。

もちろん、問題がなかったわけじゃない。

溢れるその才能から、初期の彼女は尊大とも言えるほど増長していたし、私に憧れるあまり、私を盲信していた。
気持ちはわからなくはないが、それは彼女の成長を妨げてしまうと、当時の私も気を揉んだものだ。

だけど、それはトレーナーとの出会いによって解消された。
君も私と同じように、管鮑之交を得られたのだな、テイオー。
出会いの形は違えども、過ぎし日の私達を観ているようで懐かしいような、嬉しいような、そんな心持ちだったよ。

[4 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 19:34:54]

そしてもうひとり、壁を感じさせずに私を慕ってくれた後輩。
最強世代と呼び声の高い優駿たちの中で、誰よりも走りたいと叫び続けた君。

ツルマルツヨシ。

君もまた、その才覚を感じさせるウマ娘だった。
まともに走れてさえいればきっと三冠だって夢ではなかったと、私は今でも思っているよ。
持ち前の才能だけじゃなく、君は最も気持ちが強かったから。
君が走る姿はいつだって、私を熱くさせた。

いつの日か、私に君達のような子供が出来たら、きっとこのように温かさを得られるのだろうと、そう思わせてくれた君たち。
ふたりが夢を叶えるその姿が観たかった、観たかったとも。

―――ああ、だというのに。

[5 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 19:35:24]

テイオーは夢の実現の手前で故障。
３度も、これでもかと彼女を痛めつけるように。
ツヨシは身体が弱く、そもそも三冠に挑戦すらさせて貰えなかった。

ああ、ああ。
どれほど悔しかったことだろうか。
彼女たちの涙声が私の胸を焼き尽くす。

トレーナーたちが無理をさせたわけではない事も、わかっている。
ある日、それが運命であったかのように身体に不調を来したのだ。

こんなものが、運命だというのなら。
才能にも恵まれ、私を変わらずしたい続けてくれた彼女たちに、何故このような仕打ちをするのか。
これからのウマ娘達を導いてくれるかも知れなかった子達に何故。

私は初めて三女神像を睨み上げた。

[6 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 19:36:14]

それが効いたわけではないのだろうが。

大きな故障や病気をしたウマ娘は復帰が難しい。
そんな大方の予想を裏切るように、彼女たちは復活してみせた。
テイオーは１年かけて復帰の有馬記念で見事勝利を収め、ツヨシはシニア級からその力をふるい始めることが出来た。

聞けばトレーナーたちが、それぞれの体調に合わせて寝る間も惜しんでメニューの改善を図ったそうな。
テイオーのトレーナーは、怪我が完治するまでは筋力の低下を抑える程度に、そして治った後も再発を防ぐため慎重に慎重を重ねた計画を練って。
ツヨシのトレーナーは、その日の体調をすぐに当日のメニューに反映できるように、同じように身体の弱いウマ娘を担当するトレーナーのもとに相談しつつ、頭を悩ませていた。

やはり君たちの選んだトレーナーは、間違いじゃなかったようだ。
三女神が用意したのかそうでないのか、ともあれ運命を打ち砕くほどには強固な絆を感じる。
今や、テイオーの足には不安などなく、ツヨシが体調を崩してレースを棄権することもなくなった。
そうだな、私のトレーナー君の次に優秀と言っても差し支えないだろう。
うむ、無論ふたりとも同着だとも。

[7 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 19:37:07]

さて、久しく現れなかった私の……私達の好敵手。
君たちは幾多の試練を乗り越え、申し分のない実力を持ったウマ娘とトレーナーであることは、もはや疑いようがない。

ＵＲＡファイナルズ。
この場所が、いつからか私が追い求めた新しい夢の終着点。

二人と走り、そして勝ちたい。
私の足は愛するトレーナー君の手により、ピークを過ぎても未だ衰えを感じさせない力を備えている。

それでも何時しか終わりは来るものだ。

その前に私を追う君たちが、どれほど私に迫れるのか。
あるいは……追い越すのか。
ふたりともしっかり頑張って、私に見せて欲しい。

そうだな、ここのところグランドライブやアオハル杯などで、他の女にうつつを抜かしていたトレーナー君を惚れ直させるくらいのレースをしようじゃないか。
彼に、見るべきは私以外にないことを思い知らせてくれよう。

ああ、楽しみだ。
空に浮かんだ三日月を眺めながら、夜が更けていく。

[8 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 19:37:22]

おしまい！

[9 二次元好きの匿名さん 22/09/11(日) 19:38:47]

こんなところで投稿してる場合やないぞ…！

[10 二次元好きの匿名さん 22/09/11(日) 19:40:33]

たまに思うが勿体ないから然るべきところにお出してほしいのん

[11 二次元好きの匿名さん 22/09/11(日) 19:44:06]

最近玉座（ルドルフ親子）SSよく見るな

[12 二次元好きの匿名さん 22/09/11(日) 19:50:38]

惜しいのはここがあにまんという所である

[13 二次元好きの匿名さん 22/09/11(日) 19:58:29]

投稿先を惜しがる前に感想を言おうね
皇帝の慈愛と我欲が相半ばしてるのがたまらんす

[14 二次元好きの匿名さん 22/09/11(日) 20:06:02]

感想がまとまらんので｢いいね！｣とだけ言わせて貰おう　あと♡

[15 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 20:32:40]

早速のレス、ありがとうございます。

投稿先について、コメントありがとうございます。
過去スレに格納されるあたりで渋とか笛とかにも投稿しておきますね。
普段はそちらにいますので。

ルドルフは生徒会長としての面と、時折見せるウマ娘としての面の両方がカッコいいウマ娘ですよね。

史実の繋がりがあるにしろそうでないにしろ、この子に対してはどんな事を考えているんだろうとか考え始めるともう妄想が（ｒｙ

[16 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 21:42:48]

もし良ろしければ過去作も読んで頂ければ幸いです

分身分裂スカーレット｜あにまん掲示板

嘘とバクシンロード｜あにまん掲示板

ばーぶさいどの誘惑｜あにまん掲示板

スカーレット・リボン｜あにまん掲示板

[17 二次元好きの匿名さん 22/09/11(日) 21:46:50]

てっきり時間の歪みについて言及するものかと

[18 ◆bEKUwu.vpc 22/09/11(日) 23:08:24]

>>17

正直ちょっとその誤解を狙ってたところもあります……