- 1二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:18:25
トレーナーさんは親身になってくれる人だから
トレセン入学前の説明会だったか、はたまたもっと前、トレセンに見学に来た時だったか。もうはっきり覚えていない。
トレーナーとウマ娘のレース以外での関係、それに伴って起きる問題について。そういった話だったはず
親身になって、同じ夢を見て、同じように努力して、二人三脚で駆け抜ける。年頃の女の子には劇薬だ
だから、説明会や入学前の時点で話しておく。トレーナーとはそういう仕事なんだと、貴女方の走りに心底惚れ込んだひとたち。名を残すトレーナーとはだいたいそういうひとたちだった、と
そういった話があっても、結局はあたしたちはその劇薬に飲まれてしまう。あたしたちの走りに恋して、夢見て──その夢を夢で終わらせまいとする人。そんなトレーナーさんに、あたしたちは
芝の匂い 汗の匂い 泣き声と嬌声 ぜんぶ混ざりあった─あの場所でしか味わえない全て。あたしの最後の走り。あたしのいつもの味 トレーナーと選んだあたしの道
後悔なんてしてはいない。けれど、最近見る夢はいつもあの場所だ
今日は配信したかったな、とぼんやり目を開ける。最近寒くなったからお鍋がいいなあ でも最近は和風の料理ばっかりだったから、今日はトマトでも使って──と、固まり出したレシピと覚醒しだした意識の中ようやく頭の下が枕にしては固くて、あたたかいことに気づいた。
慌てて体を起こすと見慣れない部屋の中に見知った笑顔が見えた。
「トレーナーさん! ごめんねえ!重かったでしょう」
「大丈夫大丈夫 それにしても珍しいな」
大丈夫、と言いながら痛そうにトレーナーさんが足を伸ばす。トレーナーさんのお部屋で、お昼ご飯のレシピを教えて、お礼にと課題をやっていたんだった。その途中でついうたた寝をしてしまったらしい - 2二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:18:51
最近眠れているかどうかと聞かれて恥ずかしい気持ちが大きくなる。毎日ぐっすり眠れてはいるけど、つい安心してうたた寝と言うには長く寝てしまってたらしい。空はだいぶ暗くなっていた。
寮の門限ももう近い。もう帰らないと
「寮まで送るよ」
せっかくだったのに
咄嗟に浮かんでしまった気持ちがその言葉で
「ボーノ?」
トレーナーとは、そういう仕事なんだから。あたしたちの走りに惚れて。夢を夢で終わらせまいと共に走り、共に努力するひと。共犯者や一心同体、きっと多くのウマ娘はその気持ちを勘違いしてしまうけれど
「トレーナーさん かえりたくない」
遭難していたから。心配だったから。ちゃんこ鍋になる夢を否定してくれないでいてくれたから
いつもの味でいたかったあたしの気持ちを尊重してくれたから。勘違いの理由はたくさん出てくるのに。
何を言ってもきっと言い訳にしかならない。あたしのこの気持ちを勘違いで終わらせることが出来ない。
トレーナーさんの言葉を待った。
わかったよ、といつも通りの言葉で受け止めてくれないかなんて都合のいい気持ちのまま 待った。 - 3二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:19:27
- 4二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:21:15
ここで終わるんですか!?!?!?
- 5二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:25:24
先生、原稿は…?
- 6二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:27:24
キュッとなる 実にボーノ
- 7二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:28:13
内容もさることながら速筆がすごい!!
- 8二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 06:51:14
つ、つづきはっ!?
- 9二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 06:54:54
続きをくれよおお!!!
- 10二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 06:56:43
続きが読みたいっ…!
- 11二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 18:37:30
ほ
- 12二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 22:06:39
つっづきは…
- 13トレボノSS 折り返し22/09/12(月) 23:32:53
走りに魅せられたとしても 彼女たちはうら若き乙女だから
大人として正しく導いてやることが大事だと 伝説のトレーナーと呼ばれた教師はホワイトボードを背に語っていた
そんなことにはならないだろうと隣の席の友人は笑っていた。彼はどんなトレーナーになったのだろうか 今はもう知る術はない。古い連絡先はスマホの奥で埃を被っている。
かえりたくない
空はどんどん色を失っていく。寮長に連絡しよう。ついでにたづなさんにも連絡をしておこう。眠っていて起こせなかったと言えば強くは言えない。俺が全て悪いのだから
担当ウマ娘を部屋に上げないようにした方がいいとも言われていた。彼女たちはまだ幼く、どんなに早く走り、どんなに人々に夢を与えてたとしても。大人が守らないといけない子供だ
俺が導かなければならない。大人として、正しい道に
耳鳴りがする。聞きなれたはずの自分の心臓の音がうるさくて
「君たちがもし恋をしたとしても、それは彼女たちの走りに恋をしたんだ。気持ちは否定はできない だから勘違いしてはいけないよ」 - 14折り返し22/09/12(月) 23:33:14
勘違いでは無いとしたら
俺は、ヒシアケボノに本当に救われた。あの無人島で
彼女の夢を叶えたかった。夢を叶えた彼女を見たかった ─その場に、その隣に俺が居たかった
たとえ長く続かなかったとしても、みんなの望むままの「ヒシアケボノ」でいる彼女が誇らしかった。愛おしかった。憧れだった。その姿に俺は
もう今から帰っても間に合わない。早く連絡しなければ。彼女を導いてやるのが俺の仕事 もう夢を叶えた彼女にできる最後の 俺の
「トレーナーさん」
彼女の大きな体が好きだ。それに誇りを持っているところが好きだ。彼女の料理が好きだ。楽しそうに料理をするところが好きだ。その隣にいることが何より幸せだった。その幸せに目移りして選択を誤った。
喉が痛い 頭が痛い 誰かにどうか
どうかこの感情が彼女の未来を傷つけることの無いものだと言って欲しい
どうかこの感情が正しく美しいものだと言って欲しい どうか誰かに
「ボーノ」
いつも通り名前を呼んだ。いつも通りでは無いかわいた声が出た。いつもとは違う見上げる彼女の目線にまた耳鳴りが酷くなる。
彼女が好きだ どうしようもなく - 15二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 23:35:07
- 16二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 23:39:32
続き、待ってます!
- 17二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 00:17:48
そうか、その後の話だもんな……