- 1GM 焔の終焉◆uPjPcgD1TZK322/09/12(月) 20:19:55
ここは「ここだけダンジョンがある世界の掲示板」の番外編みたいなスレです。
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『焔の終焉』
《あらすじ》
伝説の赤竜「古き焔」が目覚めない ─── 彼が抱えるコボルドの召使いによってもたらされた一報は瞬く間に世界へ知れ渡った。
伝説の最後を望む者、永遠の眠りを望む者、覚醒による世界の維持を望む者、………様々な思惑が交錯する中、古き焔の監視に当たっていた監視基地総司令はセントラリアの冒険者ギルドへある依頼を持ち掛ける。
『古き焔の精神世界へ潜り込み、奴が目覚めない理由を探れ』────────。
前代未聞の「冒険」。
未知の領域に挑む冒険者たちが目にするのは歴史の深淵か、それとも─────────。
書き込みの方針は以下でお願いします
何もなし or ※付き →メタ会話
「」→セリフ
()→心情
【】→状況描写
《》 →固有名詞
このスレはイベントのモノローグのようなものです。
少し時間をかけながら事の顛末を書き上げていくので、もし興味があればお付き合いください。
- 2二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 20:20:47
立て乙〜
楽しみにしてるぜ…… - 3祖龍の雛◆vcruzRdAsM22/09/12(月) 20:25:21
きゅぅ
- 4死霊王◆N4rysfkBiA22/09/12(月) 20:28:19
しばらくONE PIECEカテに籠っていたから、こんな面白そうなイベントがやっているなんて知らなかったっ……!!!!
この後も用事があるのでリアタイ出来ませんが、楽しみにしております。 - 5魔刀剣士22/09/12(月) 20:33:26
※スレ立てお疲れ様です
※前か後で最後の反応上げたりしていいですかね… - 6英雄登竜門22/09/12(月) 20:34:41
※スレ立てお疲れ様です
※わざわざありがとうございます - 7〈紅輝姫〉プレドスラヴァ22/09/12(月) 20:36:19
スレ立てお疲れ様です
こいつはあの世に直帰、月杯くんが来るのは時系列的に翌日なので何も言わせられないッピ - 8白髪少年◆LXse3il6fw22/09/12(月) 20:39:03
※立て乙です。
日中にコイツのエピローグ的なのを本スレに書こうと思ったらずっと寝てました。
楽しみに待ってます。 - 9GM 焔の終焉◆uPjPcgD1TZK322/09/12(月) 21:08:41
――――――――――――――――――────
―――――――――────
―――────
───
ー
【空の果てを目指して飛んだ。】
【崩れゆく灰の身体を支え、煙と散る翼を残し、煤ばかりとなった尾を引いて。】
【煉鉄山は最早遠い場所にあった。】
【それは物理的距離においても、心理的距離においても。】
【あの地は己が ”在った” その時と同じくして生まれた地だった。】
【幾星霜を幾度となく数え、幾度となく暁と黄昏を共に掲げた。】
【だが、なにもかも遠い。】
【かつての日々も、栄光も、記憶も、己の名前すらも。】
【今まで疎ましかった。】
【けれど、今は少し誇らしい。】 - 10GM 焔の終焉◆uPjPcgD1TZK322/09/12(月) 21:09:46
(―――――おまえは、おまえの道を征け。)
【玉座に一人残された、かつての従者を思う。】
【まさかこの期に及んで説教を喰らうなどとは思いもしなかった。】
【しかも取るに足らぬほど小さき者に、奥底に眠る心を打たれるなどとは。】
(我を超えた、などとは決して言わぬがな。)
【まだあれには超えるべき試練がいくつもある。】
【心配は特にしていなかった、というよりも想像がつかなかった。】
【竜とコボルドでは何から何まで、生きる世界が違うのだから無理もない。】
【もっとも、想像できたところで心配することはないだろうとも確信していた。】 - 11GM 焔の終焉◆uPjPcgD1TZK322/09/12(月) 21:12:00
【太陽が近づく。一つの太陽だ。】
【大気と虚無の狭間、世界と世界の境界、存在の限界点。呼び名はいくつかある。】
【ここまで飛んだことには理由があった。】
【一つは ”奴”を見つけるため。】
【”奴” は好機と見て暗殺者を送り付けてきたが、それは失敗に終わり、遂にすべての始まりの刻から見せなかった手掛かりを晒した。】
【ならば、あとはその痕跡を辿るのみ。】
【無数の世界がつながるこの場所だからこそ、一つの場所へ行きつく唯一の道を示し得るのだ。】 - 12GM 焔の終焉◆uPjPcgD1TZK322/09/12(月) 21:13:03
【二つは、これから起こる事柄の影響を最小限に抑えるため。】
【己と ”奴” 以外の何者にも、これから起こることを知覚させてはいけない。】
【見せてはいけない。】
【聞かせてはいけない。】
【感じさせてはいけない。】
【絶対に。】
【さもなければすべてが滅び去る。】
【如何に狂暴で残酷な、かつての《赤の王》といえど、”これ” ばかりは例外なのだ。】 - 13GM 焔の終焉◆uPjPcgD1TZK322/09/12(月) 21:14:52
(頃合いか。)
【《支配領域》。】
【己の心を世界として現出させ、己以外のの世界を超越する、絶対者にのみ許された奥儀。】
【当然のことのように、この███もそれを保有している。】
【最後に使用したのは記憶の彼方のことであった。】
【かつてはよく他の《王》との決戦のため使っていた。】
【無意識に感傷が、彼ら以外の相手を彼の地へ招くことに抵抗していたのかもしれない。】
【もう遠いことだというのに。】
【だが、それでも。】
【《偽りの王》を葬り去るにはこの上ない因果であろう。】
【笑みもなく、怒りもなく。】
【灰と散る刹那に世界が展開された。】 - 14二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 07:26:03
必要かわからないけど一応保守をば
- 15GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/15(木) 23:14:14
※保守ありがとうございます…!本当助かりました本当…!
※何人か後書きを投下してみたい、という方がいらっしゃいましたが、全然ウェルカムです。ご自由に投下してください。
※ただし、まだ本筋の方が遅々として書き終えていないのでもう少しばかりお待ちを…! - 16二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 00:16:59
ほしゅ
- 17GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:41:33
─―――――――――――――――――――――───
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――――――────
────
【火の粉が舞う。】
【この古い領域には何もない。】
【灰が降り積もり、溶けた鉄は錆びれ、火は塵となって止まった風に吹き溜まる。】
【薄暗い空を覆う厚い雲の切れ目から、八つの太陽が険しい眼差しで抑えつけてくる。】
【すべてが懐かしい。】
【壊れることすら知らず、己を焦がし続けた世界。】
【これが███の支配領域なのだ。】
【前述の通り、この世界は空っぽ。なんら特殊な作用や主の優位を定めるものでもない。】
【ただ、限りなく広く、限りなく深く、世界の全てを圧倒し、飲み込んで、欠けることも砕けることも知らず、そこに在るだけの場所だ。】
【名をつけようとしたこともない。ここはただの戦いの場であり、道具でしかなった。】
【だがそれに愛着を覚えてしまっていることを、そしてその愛着に己が途方もない郷愁を抱えていることを胸中に仕舞い続けてきた。語ったところで、竜の心を誰が理解できようか。理解されたくもなかった。】
███「………間に合ったか。」 - 18GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:42:01
「………そして、待たせたな。」
【朽ち果てた身体を引き摺り、遥か地平を見やる。】
【無限と形容するにも不足であると直観させる、天の彼方まで充満する腐肉と死肉の複合体。】
【万物を内包する其の身体は始原以前の混沌のまま躍動し、泡立ち、産声を上げ、また死に絶える。】
【時空間の因果律を、統制された無秩序のまま散漫たる精神によって攪拌させ、果てしなく飛び散って干上がった。】
【渦巻きにして梯子にして道。】
【偽りの王、夢で汚す者、現実の冒涜者、即ち《無限の想像者》が其処に在った。】
【本来、叶わぬ望みであった。】
【はじめて《無限の想像者》が存在の危機に瀕し、《赤の王》がその名を喪った時から、███はずっとこの魔王を探し続けていた。】
【悪夢を駆け、夜を費やし、朝を飲み干し続けた。】
【《無限の想像者》は███を恐れて逃げ出したのだ。本来存在するはずのない、絶対者たる己の ”天敵” から。】
【これはごく合理的な結論であった。《赤の王》は夢を完全に焼き尽く███を得た代償に、己のすべてを███にくべた。その中には《王》たちが持っていた概念的不滅性も含まれる。】
【ならば、対応は簡単、”あれが絶えるまで姿を隠し続ければいい。こちらの時間は無限、あちらは無限。こちらはすべてに潜み、あちらは一つに縛られる。”】
【《無限の想像者》は███が消えるまで隠れるだけでよかったのだ。】
【だからこそ、心臓が召喚され、それを目撃されたことは《想像者》にとって最大の不測であり、███にとっては最大の好機だったのだ。もっとも、その成果は心臓の物理的存在を消失させただけに過ぎず、概念存在の輪郭だけが███の朽ちかけた精神世界に残留させたのみだったのだが。】 - 19GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:42:30
そう、本来はそれで終わったはずだった。
八の王を穢した偽りの王は遂に逃げおおせ、最後に生き残った孤独な暴君は死に絶える。それが本来の結末だったのだ。
それが覆った。どちらにとっても取るに足らぬはずの小さき者たちの介入により。
誰にも予期せぬ事態、あるいは奇跡と呼ぶべきものなのだろうか。
【この時を前にして、《想像者》は予想外に静かであった。】
【すべての始まり、因縁の契機にて焼いた傷はもう塞がっていた。あの時は直撃させることができなかったのだから仕方ない。】
【ただ意味もなく宙を覆い尽くし、拍動し続けるのみだ。】
【八つの太陽と腐肉が空を隔て、二名を分かって二つに並ぶ。】
【片方は永遠に暗く満ち満ちて、片方は永遠に明るく欠け続ける。】
【最早時間など無意味な歩調であった。古い時代の残骸が向かい合うだけの空っぽの世界は、すべてを置き去りにしたつもりで、すべてに置き去りにされていた。】 - 20GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:42:51
想像者『私はここで潰えるのか?』
脳裏に忍び寄る影。テレバシーだろう。
█「それが定めだ。」
想像者『定め。最後に交感する精神が反逆者とは、我が無知をして知りえなかった定めだ。』
█「………。」
想像者『反逆者よ。汝は暴威の果てに何者にも縛られぬ自由を求めた。だが実際にはどうだ?過去、理想、自身、そして焼き払った運命にすら縛られ続けている。』
█「………………。」
想像者『尋ねよう。汝が果てにあったのは ”自由” か?』
█「無論。」
すべて自分が決めたことだ。
自分で征くと決めた道だ。
身体を起こし、大きく息を吸い込む。
最後に残った魂の一辺が█によって燃え尽きたのを感じた。
無限にして久遠に坐する古今独歩の存在、或いは神、それを滅ぼすに足る武器とは即ち己自身であった。”焔” とは薪木の上に点るもの、良い薪木ほどに ”焔” を育て得る。
そして”焔” とは燃え広がるものである。物から物へ、場所から場所へ飛び火していく。 - 21GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:43:12
かつて《赤の王》が導いた結論は極めて単純であった。
己が持ち得る最上の薪木である己を燃やし、世界にして零である者を無限に焼き続けて滅ぼす。
事実、この理論は正しかった。
八の王の内、赤の王を除く七名が夢として散った後、最初の邂逅にて放たれた ”焔” は夢の想像者へ直撃をはずしてなお致命傷を負わせたのだから。
そして、もうはずすことはない。
身体がいよいよ崩壊していく。
燃え尽きた木炭が火掻き棒で軽く触れるだけでも崩れてしまうように、己という薪木の内で魂と名前と存在すら燃料に燃やし続けてきた焔を再び取り出すということは、絶対的破滅を受け入れることに他ならない。
だが、それでも構わなかった。
この瞬間に己のすべてがあるのだから。
そして、灰の中にまだ残っていた欠片を託すことができたのだから。
”古き焔”(我にしては上等過ぎる幕引きよ…!!) - 22GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:43:30
文字通り全身全霊をこの一息に賭ける。
英雄登竜門へ放ったものはこれの火の粉の欠片、それですら世界を滅ぼすに足る破壊力を有するその一撃の前兆はしかして静かであった。
大口の中で煉精される赤い火球は最初にゆっくり広がり、止まり、急速に収縮、遂に。 - 23GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:44:33
ㅤ
”世界を焼く焔”、《古き焔》が放たれた。
ㅤ - 24GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:44:59
其処に音はなかった。
燃え尽きたからだ。
其処に色はなかった。
燃え尽きたからだ。
其処に時はなかった。
燃え尽きたからだ。
其処に意味はなかった。
燃え尽きたからだ。
其処に世界はなかった。
燃え尽きたからだ。 - 25GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:45:30
すべてが消え失せた空虚な灰の墓所で、あれほど巨大であった《無限の想像者》が燃え尽きていった。
世界を焼く焔。そして世界とは精神の認識に他ならない。
《無限の想像者》は認識するすべてを自身の夢と断じ、すべてを掌握し、すべてを自分へ統一させる。すべてが自分であるからこそ全知全能であり、同時に自分以外の何者でもない一人遊びだからこそ無知無能である。
いわば巨大な自意識そのものだ。
この性質の前に他の王たちは敗れていった。
だが、そこに大きな弱点があると最後の王は考えた。
焔とは燃え広がるもの、ならば手で触れた途端に、目で見た瞬間に、知った時点で、認識という世界そのものに燃えつくほど貪欲な焔を生み出してしまえばいい、と。 - 26GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:46:06
なるほど、全知全能であれば焔に対処する方法も思いつくかもしれない。
だが焔に対処しようとしている時点で認識している。着火。
認識への着火を対処できる方法を思いつくかもしれない。
焔を認識している。着火。
時間軸から取り去って無効化できるかもしれない。
取り去るという目的から間接的に焔を認識している。着火。
認識を無効化することができるのかもしれない。
無効化の目的が焔にある。着火。
《夢》として棄却できるかも。
《夢》として捉えた時点で《夢》を認識している認識からそれを認識している認識からそれを認識している認識からそれを認識している認識それを認識している認識それを認識している認識それを認識している認識それを認識している認識それを認識している認識それを認識している認識──―――――――――――――――――――─着火。
無限に焔が広がり続ける。
一度着火した時点で無限に逃れ続けるという選択肢すら零時間で燃え尽きる。
これが《赤の王》の結論、《古き焔》なのだ。 - 27GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 21:46:27
《無限の想像者》はまったくの無抵抗、いや実際には同一の横時間軸にて悍ましいほどの試行回数を経て存続のためもがいていたのかもしれない。だが結果がすべてであった。宇宙そのものとすら思わせるほどの肉塊はまったく同時に燃え尽き、灰も残さず、無限の時間の中に崩壊していった。
これで、終わったのだ。
《古き焔》を失った、《赤の王》の抜け殻だけが、かつて不壊であった灰の世界に取り残されていた。
そして、それももうじき終わる。
八つの太陽だけが鮮明だ。
………………随分と時間を掛けてしまった、
これから、客が来るかもしれない。門だけは開けておこう。 - 28英雄登竜門22/09/19(月) 22:06:13
【空間に僅かに空いた穴。まるで招く様に開かれた門の様な隙間。そこに門が現れ、開かれる】
【現れたのは赤毛に赤目の美女──英雄登竜門であった】
「随分と、寂しい所じゃないの……」
【現れるなり、殺風景な空間を眺めてそう言った】
「……やりたいことは、終わったのかしら?」 - 29GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 22:11:40
- 30英雄登竜門22/09/19(月) 22:19:36
- 31GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 22:28:44
- 32英雄登竜門22/09/19(月) 22:44:55
「はっ、私に死体蹴りしろっての? 嘗めんじゃないわよ……!」
【それは心の底から出た言葉だった】
「私があんたを殺したかったのはね……、あんたへの敬意よ!」
【本当は引導を渡すつもりはあった。しかし、今の姿を見て気が変わる】
「傲慢不遜なる祖竜《古き焔》を倒す英雄ってのは、長い時を散々暴れた飽きたあんたにさえ……死の恐怖を思い出させ! 闘争心を燃やして! 生命をかけて! 心の底から『満足』の行く戦いをさせる存在よ!」
【そう強く断言した英雄登竜門は、それからポツリと溢す様に言う】
「だから、私はあんたを殺さないわ……だって、あんたはもう『満足』してるんでしょ?」
【その顔を見ただけでわかった。この竜は既に満足している、と】
「確かに悔しはあるけどさ……これは、そういう英雄を生み出せなかった……、私への罰よ」
- 33GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 22:58:46
「………………満足。」
「………そうか。我は、満足したのだな。」
満ち足りたことなど一度もなかった。
常に『自由』を求め続けてきた。それを阻むすべてに怒り、すべてを破壊し、すべての果てにこそそれはあると信じてきた。
だが、果てにあったものは終わりなき『強さ』という責務。己が課した己という枷。
それでもまだ焼き払った運命の先はまだあると叫び、抗うばかりであった。
名を、身体を、過去を、使命を、不可能を、己そのものであったすべてが飛び立ったことに、かつて《赤の王》であった《古き焔》の抜け殻は、その両方が遂に得られなかったものを手に入れた。
それをたった今、自覚したのだ。
胸の大きな欠片が崩れ落ちた。
大きな空洞が見える。もう焔はない。
「…………だが、我はやはり強欲らしい。新たに欲しいものができてしまった。」
抜け殻は続ける。
- 34英雄登竜門22/09/19(月) 23:02:55
- 35GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 23:08:32
- 36英雄登竜門22/09/19(月) 23:22:17
【思わず言葉が詰まりそうになる】
「なに言ってんの? 私とあんたの喧嘩はこれからも続くのよ……?」
【しかし、ここで弱さを見せる訳には行かない】
「私が、あんたへ英雄を差し向けられなかった。その心残り、罪悪感を払拭するまでわ、ね」
【それは英雄登竜門ではない】
「そしていつの日か私が果てた時、私は私の英雄の軍勢を引き連れて──あんた達のいる所へ行くわ」
【ここで奮い立ってこそ、英雄登竜門なのだから】
「だから、あっちで鍛え直しときなさいよ? いい、これは約束よ?」
【英雄登竜門は、傲慢不遜に微笑む】
「いずれ喜びをもたらす『英雄』の到来を──待ってなさい! 例えどこだろうと、必ず行くわ!」
【そうして、あの日《古き焔》から授かった剣を突きつけた】
- 37GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 23:40:47
最早、その『あっち』へ辿り着くための魂すら喪っているとは口にしない。
もう、互いにわかりきっている。
だからまた、勇ましい英雄の名言を、竜は鼻で笑うのだ。
「ああ……それはまた……素晴らしい戯言を……。」
王冠を下ろすように角が灰と崩れていく。
まだ少し待って欲しい。
「……『罰』、『罪悪感』と言ったな。どちらも我が好かぬ言葉だ。」
「そして誤りでもある。」
首を持ち上げて、固まった背中がひび割れるが関係ない。
外套を脱ぐように翼が灰と崩れていく。
まだ。
- 38GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/19(月) 23:41:12
「敢えて言おう。汝は遂に我を討ち倒すことは叶わなかったな。」
「だが、それ以上のことを成し遂げた。」
「己を罰することなかれ。堂々とするのだ。」
「………英雄よ。」
何を為したかは言わない。
きっとわかっている。
最後の欠片が、焔と散った。
八つの太陽と共に。 - 39英雄登竜門22/09/19(月) 23:59:14
【八つの太陽と共に崩れた、その身体を、抜け殻の残滓を、彼女は見つめる】
【風すら吹かぬこの空間で、山の様に積もった灰を──その最後を見つめていた】
「……」
【突きつけた剣をゆっくりと下ろす】
【空に大きな亀裂が入る。もうこの空間は長くない】
「…………」
【静かに、灰の山に歩み寄る】
【その灰を持ち帰ることは出きるだろう。しかし、彼女はそうしなかった】
【ここが《古き焔》の最後──焔の終焉なのだから】
「………………それでもね、私はあんたを追うわ」
【そう呟いて、自らの門へと振り返る】
【もう灰の山には目を向けず、しっかりとした歩みで門に入る】
【門が閉まる──その直前、彼女は最後にこう言った】
「見事だったわ、《古き焔》──さようなら」
【門が閉まり、消える】
【崩壊する空間に残された灰の山。そこには、二つの水滴が落ちていた】 - 40GM 焔の終焉 ◆uPjPcgD1TZK322/09/20(火) 00:03:23
- 41GM 焔の終焉◆uPjPcgD1TZK322/09/20(火) 00:10:29
(※イメージソングとEDを貼って、本イベントはほぼ終了となります。)
(※長い間、とてもお世話になりました!中の人も《古き焔》も大変な幸せ者です。)
(※以後、かなり遅れてしまいましたが、エピローグ等を投下したい方はご自由にどうぞ!楽しみにお待ちしております。)
(※重ねてとなりますが、関係を紡いでくださったすべての人とキャラへ心から感謝を!)
(※ありとうございました!) - 42英雄登竜門22/09/20(火) 00:14:55
(※お疲れ様でした! そして、ありがとうございました!)
(※くそぅ、読み返すとアラが目立って仕方ない! 後、こっちで締めてしまって申し訳ない!) - 43月の娘◆FZj6svE9vc22/09/20(火) 00:16:30
※乙でした。いい物語だった、掛け値無しに……。いずれ偉大なる竜の終焉を受けたナールドヴィーング視点のエピローグを投下させてもらいます
- 44〈薄明〉◆JawX2fps5g22/09/20(火) 00:20:04
(※乙でした! ああ、なんだか本当に寂しくなりますね……)
- 45生態観測所 職員◆OU1pKi4EIE22/09/20(火) 00:56:25
(※お疲れ様でした!)
(※最後の即興の掛け合いも素晴らしかったです、どちらも!) - 46〈月杯〉上級吸血鬼◆iX0nFh5lDw22/09/20(火) 08:03:12
(※お疲れ様でした)
(もはや言葉は不要。そう思わされるような、堂々たる最期でした) - 47重鎧剛蛇◆IRjp04k5N.22/09/22(木) 08:45:20
(※お疲れ様です!誉れある大往生…今はただごゆるりと…素晴らしかったです…)
- 48二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 21:21:56
エピローグ待ちの保守
- 49魔刀剣士22/09/27(火) 20:51:15
- 50詩謳う御子◆bRrRGs00cA22/09/27(火) 21:20:02
新スレ立てお疲れ様でございました
遅ればせながら楽しませていただいた事に感謝を - 51魔刀剣士22/09/30(金) 21:18:21
参加させていただき、ありがとうございました
圧倒的な力の象徴の姿、楽しんで拝見させていただきました
最強がその最後まで気高く強いままでいる、という姿は魔刀剣士達にとって紛れもなく希望でした
彼らにとって求道とは果てのないものであるので、強さの頂点にある古き焔に最期が来るというのは複雑な心境があったのです
その「限界」を見せない最期を見せてくれたことに対して一層の敬意を持ち、その姿で自分達の望んでいた果てのない道を示してくれたことにまた感謝していました
滅びを迎えるどころか自ら迎え撃ちに行くような鮮烈な最期でした。改めて素晴らしいイベントに感謝を… - 52二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 10:33:40
もうちょっと…もうちょっと待ってください
- 53二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 01:29:48
もうちょっと待ちの保守!
- 54安息地より◆FZj6svE9vc22/10/08(土) 21:37:43
【嵐──あるいは、世界の断絶──に守られた小大陸。古竜により支配された地の中心、天を突き聳え立つ霊峰の頂上】
【二対の翼を持つ漆黒の古竜、"ナールドヴィーング"】
【『最も疾き翼』の名を持つ竜が、閉じていた眼を開く】
『……戻ったか』
【青い肌、白い髪。そして特徴的な長い耳を持つ女性が、その様子を見て語りかける】
「ああ。我が眼はしかと見届けた。かの竜が最期に何を想ったか……」
「そして、何を成さんとしてその翼を広げたのか」
【真紅の眼を開き、竜は首を上げる】
【先ほどまで分体に埋め込んでいた”眼”で見ていた光景】
【それは、かの『古き焔』の最期であった】
『だ、そうだ。ご苦労だったなカーナーキル。もう戻ってもいいぞ』
【言葉の先にはもう一体の竜。鉄色の鱗と二対の翼】
【ナールドヴィーングとよく似た、一回り小さい体躯を持つこの竜の名は”カーナーキル”】
【『最も疾き翼』の娘たる古竜である】
『ええ。ではわたくしはセントラリアに戻りますわ』
「すまぬな。おまえに自由を許しておきながら」
『自由、であれば。父上のお望みを叶えるのもまた自由でしょう。わたくしはこの地、己が故郷を捨てたつもりはありません故──』
【鉄色の竜、カーナーキルは翼を広げ飛び立つ】
【そして音を振り切る飛行によって領域を迅速に離れてゆく娘を見、ナールドヴィーングは眼を細める】 - 55安息地より◆FZj6svE9vc22/10/08(土) 21:39:01
「……あれは、我の領域を見事に維持した。やがてはこの座を継がせることもできるやもしれぬな」
『なんだ、もうすぐ死ぬ予定でもあるのか?』
【青肌のエルフ、『竜の友』たる者。今はただ”静寂の魔女”と名乗る女性が肩を竦める】
「いいや。まだ当分は滅びぬとも。だが……」
【ナールドヴィーングは眼を細め、先ほどの光景を想起する】
「そうさな。今の我は幸福である……かの竜の最期を前にそう思っただけのこと」
『……そうかい。まあ、死ぬつもりってわけじゃないなら私はいい。あの竜の結末にも興味はない……君の力が戻ったのなら、部屋に戻るぞ』
「……興味はない、か」
『そもそも君が興味を示したこと自体が私にとっては少々意外だったのだぞ?どういう風の吹き回しだ。アレとどんな関係なんだ?』
「……かの竜は、我が同類ではない。同胞ではない」
『…………』
「友ではない。敵ではない。愛する者でもなければ、憎むべき者でもない」
「領域を同じくする者でもないが、同じ空を戴けぬ者でもない」
「かの竜と我との間には、そうさな。君たちが想像するような絆のほとんどは存在しない」
『ほとんど無関係じゃないか』
「そうだ。だが……」 - 56安息地より◆FZj6svE9vc22/10/08(土) 21:39:50
「彼は古き竜であり、王であった」
「我もまた古き竜であり、この小さな地に君臨するものである」
「そして彼の敵は、我にとってもまた敵であり」
「なにより、かつて”言葉”を交わした」
「ただそれだけのことだ」
「それだけのことが……我が、彼の最期に”竜詩”を捧ぐ理由になる」
【そこまで語ると、ナールドヴィーングは二対の翼を広げ天に舞い上がった】
【”静寂の魔女”はただそれを見届けることにした。その動機に理解が及ばずとも、これが親愛なる友にとって欠かせぬ行動であると理解できた故に】
「竜に弔いは不要」
【弔いとは、残された生者のためのもの。故に、竜──特に、永きを生きる古竜がそれを行うことは極々稀だ】
「だが──彼の肉体の滅びが、終わりを意味しないのなら。その死が、安寧の眠りではなく……」
「最後の戦いに挑む”出立”であるのなら────!」 - 57安息地より◆FZj6svE9vc22/10/08(土) 21:42:29
【遥か高空。ナールドヴィーングは滞空し、”天の先”を見据える】
【そこに”彼”がいるわけではない。だが、互いに共有した景色がこの空のみなのだから】
【詩を響かせるべきは、やはり空なのだ】
【──同じ空を戴き、同じ敵に相対した者の終焉《フィナーレ》】
「そこに我が捧ぐは、惜別の鎮魂歌ではない」
【ナールドヴィーングが口を開く。その内に湛えられるものは、世界を歪めんばかりの”圧力”】
「かの偉大なる王の道行を祝し謳う、”賛歌”である────!」
【────”竜の安息地”より、敬意を込めて】
「”τζουν”──” γκουρα”──“κερου”!!!」
【空を裂き、天を貫く竜詩《ブレス》。『最も疾き翼』が、己の知る限り最も雄大であった王に捧ぐ言葉】
【それは、”王の勝利”】
【偉大なる王の戦いを賛するものであり、また──】
【────やがてはその勝利を祝う、凱歌となる】
「我は……そう信ずる。彼は成し遂げたのだと」
【自らの竜詩により晴れ渡る空を眺め、想いを馳せる】
【真紅の眼に焼き付いた”焔”が、やがてその蒼に溶けていった】 - 58〈春風〉◆FZj6svE9vc22/10/08(土) 21:44:35
死ぬほど遅れました、ごめんなさい(土下座)
ナールドヴィーングが彼の最期を見て想うことは、やはり惜別ではなくただただ賞賛と敬意だろうな……ということを僭越ながら書かせていただきました - 59焔の終焉◆uPjPcgD1TZK322/10/09(日) 12:25:25
お疲れ様でした…!そしてありがとうございます…!
お待ちした甲斐のあるクオリティですよ…!
ここまで保守のお手伝いをしていただいた方々へも感謝を!
保守はここで終了する予定ですが、あとがきを投下したいという方はまだまだ歓迎しますので、よろしければどうぞ。