- 1SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:35:35
- 2二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 01:36:33
そんなに色々タグあるのか…
- 3SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:36:53
「カマー船長! もう食糧庫に入りきらねえ! これで充分です!」
「そうか、分かった! よし、載せきれない食料を使い、今晩は宴だ! 明朝、ここを発つぞ!」
「「「「「うおおおおおおお!!!!」」」」」
自分たちの船長の声に、もう日も落ちて暗い夜の闇に多くの部下が歓声が飛び交う。
しかしこの無人島では、その声に怯える市民も、聞きつけて攻撃を加えてくる海軍もいなかった。
「しかしこの島はすげェなあ。野菜も果物も、大人しい獣もいっぱいるから食料の調達にはもってこいだ!」
「確かに。他に住んでる人間もいねェし、かといって略奪されつくした後もない。新世界にこんな絶好の休憩スポットがあるなんてなあ」
「ひょっとして、俺たち『カマー海賊団』がこの島を新発見したってことか!?」
「おお、そうときまりゃここを俺たちのナワバリにしなきゃな!旗立てようぜ旗!」
森の一部を切り倒して臨時の広場とした場所で松明に囲まれた明るい場所でギャハハハと騒ぐ海賊団の一同。そんなバカ騒ぎの時間は、彼らの予期しない形で、終焉を迎えることになる。 - 4SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:37:57
ガタガタン
その異変には、近くの団員がすぐに気づいた。
「ん? 松明が倒れちまった」
「おいおい危ねえな。近くの草木に引火したら大惨事だぜ。おら、責任もって倒したお前がもう一回直せ」
「おっかしいなあ。おれァ倒したつもりはねえんだが...もう酔いが回ったか?」
そう言って、頭をポリポリかきながら倒れて小さな火がチリチリと燃える松明を団員が起こそうとした瞬間...
ガタン
ガタン
ガタン
突然だった。
海賊達の周囲を明るく照らしていた松明が次々と倒れ、火の勢いが大きく弱まり辺りはほとんど夜の帷に覆われてしまう。
「ああ!? おい、お前らまで何やってんだ!」
「何もやってねえよ!なんか一斉に...」
「んな訳あるかよ!変だぞこりゃ...」
暗闇の中に団員達のざわめきが広がり、一部の団員が違和感を感じた瞬間... - 5二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 01:38:21
別に気にせずファンスレに投げてくれてもいいのよ?
あれだったらテレグラ使ってくれてもいいし - 6SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:39:55
シュッ!!
ザク!
「ゔぁっ!!??」
「あ!? どうしたっ!?」
「なんだよ今の声!?」
なにか、空気を切り裂くような音と共に、一人の団員の尋常ならざる悲鳴が上がる。
彼の一番近くにいた団員が、急いで彼に駆け寄る。暗い中手探りで彼の体を探すと...
彼の体は、低いところにあった。地面に横たわった彼の体を触ると、ヌメっとした何かが手に付着する。そして、鼻にツンとつくのは......嗅ぎ慣れた匂い。
さっきまで近くいた仲間は、首に突き刺さった剣の差し口から、大量の血を流して事切れていた。 - 7SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:41:20
「敵襲だァー---!!!!!」
その叫び声がまるで始まりの合図だったかのように、突如として"剣"が海賊たちに向けて放たれた。
遠くの木々の隙間。上空。草の中から。ありとあらゆる場所からなぜか”剣”が飛んできては、まるで図ったかのように団員達の体に刺さっていく。
明らかに、この海賊団を狙った何者かがいる。しかし、夜の闇と草木に紛れて全く姿が見えない。闇の中で倒れる仲間。吹き出す血液。姿を捉えられない敵。カマー海賊団に、恐怖とパニックが蔓延する。
「うわァー!! せ、船長ー!!!」
ビュッ!!
ガキン!!!
団員一人の叫びに応じるかのように、その体に向かって投げつけられた剣を弾くその姿。両手に独特な形の鎖鎌を巻き付けて装備している『カマー海賊団』の船長だった。 - 8二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 01:42:16
かっけぇ
- 9SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:43:00
「全員! 散らばるな! 固まって、常に俺の背後にいろ!」
そう団員に下知している間にも、剣が二本 三本と飛んでくる。船長は前に飛び出して右手の鎖鎌を振り回して剣を弾き飛ばしつつ左手の鎖鎌を、歴戦の勘を頼りに目標に向けて投擲。
彼の左手に伝わる、金属がぶつかって鎌を弾き飛ばす衝撃。
「そこだァ!」
敵の位置を見極めた船長は、さらに右手の鎖鎌を振るう。敵が回避行動を取ることまで視野に入れた上での、大ぶりな振り回し攻撃によって。
すると、鎌についた鎖は真っ直ぐの状態でグッと止まった。そして船長は、右手に伝わる感触でその鎖が敵の体に巻き付いたことを感じ取った。
「…お前ら! まだ息がある負傷者『のみ』を連れて、今すぐ全員船に戻れ!」
「えっ…! そんな!」
「俺らも戦います船長! 敵が何人いるかも分からねえのに一人じゃ無茶です!」
「大丈夫だ! 敵はこいつ一人!」
「へ…?」
船長は、右手の鎖鎌で敵を引きづり出そうとするものの…力が拮抗しているらしく、額に脂汗をかきつつ叫ぶ。 - 10SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:44:44
「その証拠に、こいつを抑えた今ならもう剣は飛んでこねえ! この戦い方は聞いたことがある…噂の通りなら、こいつはたった一人で多くの海賊を潰してきた賞金首だ!」
「なんですって! そんなら、なおさら俺ら全員で…」
「夜はやつのフィールドだ! この闇の中じゃお前ら全員を庇いきれねえ! こいつ一人に集中させてくれ!」
「心配すんな! 俺は必ず戻る! …死んだ仲間の、仇をとってな!」
船長のその”覚悟”。
団員たちは、それを汲まざるを得なかった。
「お前らァ! 船長は必ず戻る! 俺たちは信じて戻るぞ!」
「おお!皆、負傷者に手を貸せ! 行くぞ!」
「待ってます! 俺ら皆、待ってますから! 船長ー!」
「ああ、大人しく待ってやがれ!」
団員たちは、大声で船長への思いを叫びつつ指示を徹底させて動き出す。負傷者を背負い、無念の思いで事切れた団員を捨て置き、次々と森から離れて停泊させてある自らの船に逃げていく。
「デデデデ…できない約束はするもんじゃないぞ。なあ、船長!」
「!!」 - 11SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:45:47
賞金首→賞金稼ぎ
- 12SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:48:02
ガキン、と金属が断ち切られる音とともに、カマーの右手の鎖が力なく地面に項垂れる。
そしてその直後、強い勢いで回転しながら飛んでくる刃物の影。
だが、カマーは危なげなく…その自分の鎌の取手部分をキャッチした。その瞬間に、彼の目は上の木から飛び降りてきた影を見据えた。
「その特徴的な帽子…やはり。賞金稼ぎ “追い剥ぎのジャン”だな」
「デデデデ…お初に。懸賞金1億9700万ベリー ”双鎖刈” カマー・セパレード…」
そのサボテンを模した帽子を被り直し、ジャン・アンゴは地面に突き刺さったいくつもの剣をゆっくりと抜いていく。
「インペルダウンから逃げ出して以降、すぐさま散り散りになった部下を集め再結成。懲りずに新世界に漕ぎ出した気概…あっぱれだが、また監獄送りになってもらおうか…!」
「随分と俺のことに詳しいみたいだな。居場所までかぎつけてくるとは…」
「デデデデ…賞金稼ぎにとっては、情報は大金にも相当する価値があるもんだ。その価値も知らないバカから、お前の進路情報を小金で買い取った…!」
「この島は敵を油断させるのに絶好なスポットで、前々から愛用していたのさ! お前の血も、この島の大地を潤す栄養になってもらおうか…」
「なに、殺しやしねえ! 値を下がっちゃ困るからなァ!」
「!!」 - 13SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:49:49
その言葉を合図としたかのように、刃の射出が始まった。
まるで銃弾のようなスピードで飛んでくる大型の武器。本来両手で振るうための武器が相当なスピードで飛んでくる。その勢いは木々を貫通し、岩にヒビを入れる。
カマーも、左手の鎖鎌と鎖が切れた右手の鎌を振り回し応戦する。だが…少しずつ、避けきれない、防ぎきれないことによ切り傷が増えていく。
(畜生! この暗闇の中で、なんつー精度で投げてきやがる!)
(投げる獲物も剣や斧、薙刀や鉄球やブーメランまで…おまけに、微妙に投げるスピードをずらしてきやがる! 避けるにしてもこれじゃ、タイミングが…)
(だが、武器の数だって無限じゃねえ! なくなる武器が切れる瞬間の隙…俺の鎌で命を刈り取ってやる……!)
敵の弾が切れる瞬間、それに希望を見出して鉄球を右手の鎌で弾き……
カッ!!
「なっ!!??」 - 14SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:51:07
カマーが弾いた…いや、弾くのではなく”切った”鉄球から、突如として激しい光が一瞬、迸った。
(しまった…! 鉄球に見せかけた、閃光弾を混ぜていたのかっ!!)
間違いなく、この隙をついてくる! カマーは封じられた視界の中、左手の鎖鎌を円形に振り回すことで、前方から来る見えない攻撃を防ごうとするが…
ドスッ!
「がはッ……!?」
彼の体に、数本の剣が刺さる。
鎖の防御では防げなかったその攻撃は…彼の背後から。
「デデデデ…強烈だろ? 暗い闇からの急な光は…!」
「こい、つ……!」
緩慢な動きで、振り返るカマー。ジャンはあの光で視界を奪った一瞬の合間に、彼の背後に回っていた。そして、その位置には、先ほどジャンが乱舞した多くの武器が転がっている。ジャンは、弾丸の補充という弱点を、不意をつくための道具と自らの機動性をもって解決していたのだ。
カマーは、すぐさま両手の鎌を構えなおそうとした瞬間…ガクッと、片膝をついた。 - 15SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:52:10
「…麻痺毒か……!」
「デデデデ。抵抗されて値を下げないための、賞金稼ぎの必須アイテムさ。これ以上痛い目に遭いたくなかったら、もう痺れに身を任せて大人しくしな!」
筋肉が強張る。体のあらゆる部分が固まりつつあり、背中の傷が更なる体力を奪いつつある。ジャンの言う通り、このまま倒れられたらどれほど楽だろうと思うほど…。
だが、彼にはその通りにできない理由がある。
ここで自分が監獄へ送られてしまっては…
殺された船員の魂は、どこへいく。
帰りを待つ船員達は、どうなる。
何がなんでも……この賞金稼ぎだけは……!
「うおおおおおおお!!!!!!!」
「デっ!?」
その、生命全てを搾り出すかのような大声は、森の木々を震わす。 - 16SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:54:25
「チッ……”妓配王”!!!」
「うおおおおおおお!!! ”突鎖攻”!!!」
並々ならぬ雰囲気を感じたジャンが、武器を乱れ打ちするのと、カマーが両手の鎌を構えて吶喊するのとが、ほぼ同時。
ジャンは、念を入れて、後方に下がって森の草木を妨害の壁としつつ、その自慢の動体視力と武器捌きで木々の間から武器を投擲する。
が……
「ぐ、う、あああああああああ!!!!!」
「な、なんだとォ!?」
自らの血を流し、振り撒きつつも、カマーは両手の鎌を振るう。
それにより、飛んでくる武器のみならず…自らの進路を妨げる木々すらも一息に両断していく。あれほど小さい鎌で木々を切り裂き、迫ってくる姿にジャンは心底驚く。
「くっ……! しまっ!?」
後方に下がりながら武器を放っていたことが仇となり、投げる弾が尽きてしまったジャン。
そしてその瞬間に、ジャンの懐に潜り込んだカマーの姿が…!!
「しねええええええええええええ!!!!」
その鎌は、ジャン・アンゴの喉元を……! - 17SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:56:06
その鎌は、ジャン・アンゴの喉元を貫く…ほんの数センチ手前で、止まった。
数秒の沈黙。
そして…カマー・セパレードの体は、ゆっくりと倒れ込んだ。
「デデデデ…まさか、ここまでとはな……。驚いて、思わず殺しちまった…」
「念の為、逃げる途中拾っといてよかったぜ…弾をな」
ジャンは、うつ伏せに倒れ込んだカマーの体を足で転がす。
ゴロンと横になった体…その彼の”額”から、血塗れの何かが、転がり落ちた。
「これが、俺の奥の手……”妓配球”」
「デデデデ…そこらの人間には無価値な”石ころ”も、俺の手にかかれば立派な弾なのよ…!」
血塗れの石が転がり、カマーの額からドクドクと流れる血がさらにその石を赤く染め上げる。
カマーに懐に潜られた瞬間、ジャンは予め拾っておいた尖った石を、彼の額に向けて”指で弾いた”のだ。その驚異的な指の力によって、弾いた石はカマーの額に食い込み、穴を穿ったのだった。 - 18SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:57:23
「全く…大人しくしていれば、命だけは助かったのになァ……。まあ、脱獄の前科があるやつが再度捕まったら、公開処刑は免れないか!デデデデ!」
そう笑うと、ジャンは目の前の死体から二本の鎌を取り上げた。
「しかし、なかなかいい鎌を持ってるなァ。…本来なら、二本とも剥ぎ取っちまいたいところだが…」
そのうち両手に持った二本の鎌のうち、一本を地面に投げて突き刺す。
死体の背中に刺さった剣を回収し、その体の首根っこを掴む。
「……このジャン・アンゴを追い詰めた褒美に、一本だけは返してやるよ。お前の仲間にも手は出さねえさ。その鎌は、きっと船長の遺品としてお仲間が大事にしてくれるだろうよ! デデデデ!」
億超えの賞金首を仕留めたジャン・アンゴは、その首根っこを引っ掴んだまま引きずり…自身の移動船に向かって歩き出した。
湾岸に、船長の勝利を信じて待ち続けるカマー海賊団を残したまま……。 - 19二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 01:57:53
いいな妓配球
- 20SSG◆W.sgopFg5E22/09/13(火) 01:59:49
- 21二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 02:00:06
- 22二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 08:38:43
デデデデ!ありがとうよ神SS師!いいSSを読み放題だ!
- 23二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 09:51:36
ジャン・アンゴのss初めて見た
- 24二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 12:44:25
ちくしょう普通にかっこいいじゃねえか