- 1二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 19:58:57
「じゃあ今日の練習はおしまい。お疲れ様でした。」
午後三時、マーちゃんとトレーナーさんは早めにトレーニングを切り上げて荷物をまとめていました。
今日は待ちに待った花火大会。私服に着替えて準備を終えるとトレーナーさんが難しい顔をしていました。
「どうかしましたか?」
「いやー電車が止まっちゃったみたいでね。どうやって行こうかなーって考えてたところ。」
確かに花火大会の場所まではちょっと遠いので電車が止まっては行けません。
「じゃあマーちゃんトレーナーさんと一緒にバイクで行きたいです。」
一緒に乗る為に買ったヘルメットが少し埃をかぶって壁にかけられてあります。
「まあ、そうするしかないか。」
少し悩んだ後トレーナーさんは言って、わざわざ埃を払ってヘルメットを渡してくれます。
マーちゃんは少し嬉しかったのを憶えています。 - 2二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 19:59:16
マーちゃんとトレーナーさんが一緒にバイクに乗っているとトレーナーさんが言いました。
「寄りたいところがあるんだけど寄っていい?」
「もちろん大丈夫です。」
トレーナーさんが向かったのは寂れた商店街でした。
駐車場が遠いので少しの間だけ道路に止めさせてもらいます。少しの間、だけですよ。
トレーナーさんのバイクはキレイにしてあるのですが、金属のパーツがかなり錆びてきてしまっています。
トレーナーさんも「そろそろ買い換えどきかな。」と呟いていました。
トレーナさんが言うには、今日でこの商店街は無くなってしまうそうです。
大半のお店にはシャッターが下りていて、ぽつぽつと開いているお店にマーちゃんたちは入ってみました。
雑貨屋さんも駄菓子屋さんも今日で終わってしまうのに笑顔で仕事をしていたのをマーちゃんは憶えています。
古本屋さんに行くと、トレーナーさんはひとつだけ本を買いました。
「にいちゃん、大きくなったな」
トレーナーさんは小さい頃からここでよく本を買っていたらしいです。
照れくさそうに頭を掻きながら笑っていたトレーナーさんを、マーちゃんは憶えています。 - 3二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 19:59:54
マーちゃんたちは会場についた後、屋台の焼きそばを買って見晴らしのいい高台へ向かいました。
ついた頃にはもう暗くなっていて、ふたりで並んで座って焼きそばを食べていると、花火が上がって夜空に一輪の花が咲きます。
「わ〜、キレイです。」
「そうだね。」
ふたりで見る花火はとっても楽しかったのをマーちゃんは憶えています。
焼きそばを食べ終わった後も、花火は続いていました。ハートの形をしたものや、キラキラと金色に輝く花火があったのをマーちゃんは憶えています。
「今日のマーちゃん、憶えていてくれますか?」
トレーナーさんはいつも「うん。」と答えてくれるのですが今日は少し考えてから言いました。
「絶対、忘れないよ。」
大きな花火が上がり、ふたりは色とりどりの光に照らされていました。
古くなったバイクのことも、終わってしまった商店街のことも、すこし日焼けした本のことも、マーちゃんはずっと忘れないと思います。
「明日も明後日も、百年先も。あなたの心の隅っこに、アストンマーチャン。どうぞ、よろしくです。」
そういうとトレーナーさんがこっちを見て微笑みます。
花火の終わった静寂の中で見たあなたの笑顔を、マーちゃんは憶えています。 - 4二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 20:01:23
読んでくれてありがとうございます。あまり推敲してないのでミスがあったらごめんなさい。
- 5二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 20:02:39
切ない…っていうのかな、しんみりした雰囲気の中でマーちゃんが可愛くて好き
- 6二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 20:15:47
クラシック級夏のイベントかな?
- 7二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 20:19:31
あったかくてちょっと切ない…
でも素敵な思い出の1ページという感じがたまらないです
マーチャンってまだ掘り下げがあんまりされてないのにSSを書けるのはすごくすごいです