【ss】恒星とデブリ｜あにまん掲示板

1二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:53:49

ウィニングライブが終わる。3年間の集大成、URAファイナルズを優勝した自分たちは帰路についてもその余韻を噛み締めていた。

新人であった自分をトレーナーとして受け入れてくれて、最初は責任感に押し潰されそうだったけれどレースに臨む君、理想の自分を追い求める君を見ているとどこまでも頑張れそうな気がした。

彼女の中等部の時間は終わり、春休みに入る。今日は打ち上げをしようと2人で計画しており、最後には秋川理事長たちとパーティーをする予定だ。

2二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:58:36

テレビ<ｷｮｳﾊﾊﾚﾄｷﾄﾞｷﾏｸﾞﾛ
午前中は散歩をしながらウィンドウショッピングを楽しむ予定だから釣竿を持ち歩かないとな。何気なくそう考えながらも外行き用の服に着替える。

そして窓の外をふと見た。おでんに人参を入れることを許容できなかった南坂トレーナーがロケットに乗り宇宙旅行へ行くと言い出していた。

カレンチャンははっきり言って出来すぎている。人間として完成されているのだ。正直自分でなくても良いとそう思う事を今でもしないわけじゃない。

3二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:01:20

そんな事をぼんやりと考えていると彼女がマグロを持ってトレーナー室に入ってきた。
「おにいちゃん、待ち合わせの時間そろそろだよ。」
…あぁ少し考え方が長引いたらしい。携帯を見れば既に3億年はたっていた。

ごめんね、すぐ行く。と短く返して学園を2人で出発した。

4二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:08:03

世界は荒廃してどれほど経っているかなど分からない。ただ分かるのは見た目を変えず輝き続けるカレンチャンと空を舞う龍の体を手に入れたトウカイテイオーだけが何かを知っているようであった。

カレンチャンは語る
「おにいちゃんはさ…3年間どうだった？」
その声は朧げでただ珍しく自信のなさだけが伝わってきた。

自分は不安だった。カレンチャンは素晴らしい能力を持っている。次で4年目の新人ですら分かる。だがそれが己の為に使われている部分もあるのだ。

それが彼女の成長の妨げになっているかも知らないと一度思うともうたまらなくなってしまう。

おでんの出し汁は僅かに煮干しの風味であったが
自分はそれが嫌ではなかった。

5二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:14:43

彼女はトレーナーである自分がいなくても輝いていた。そして、輝く努力を怠らない。だがその輝きが　この心を蝕むのだ。

唯一の愛バであるが故に。マグロが降ってきたので釣竿をさしてそっと彼女の肩を抱き寄せる。吹いた熱湯がかかると危険だ。

自分は彼女に見合うように努力をしていたつもりだった。だがそれは教え子である彼女に道を指し示してもらっていたのではないか。

心が焼きついてくる。マグロは他のマグロに押し潰されタタキになっていた。

6二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:19:28

しかしこの心中を察したのか、とっくの前に気付いていたのかカレンチャンはこのような事を語った。

幼少期、私の夢を笑わないでいてくれたのは自分だけだと。
その気持ちに応え、立派な姿を見て欲しいからここまで頑張って来れたと。もっと語っていた気がするが、自分の嗚咽、テイオーガの鳴き声でそれ以上は聞き取れなかった。

ただ担当のその想いが嬉しくて、心配されていたことが情けなくてみっともなく涙を流してしまった。

7二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:24:55

彼女は恒星だ。事実として宇宙はｶﾜｲｲｶﾚﾝﾁｬﾝとｶﾚﾝﾁｬﾝｶﾜｲｲから成っており取り巻くものはマグロとおでんのコンニャクだけだ。

自分はそれらと同じ、もしくはそれら未満のチリ屑だと思っていた。だがそれも今日までにしよう。彼女は
「これはおにいちゃんと私の夢なんだ」とそう語った。

それを叶える為に、彼女に相応しい人間になる為に悩んでいる時間はもう要らない。気付けば我慢出来ずにこのような事を口走っていた。

「次の3年間、いやこれからずっと君の夢を叶える手助けをさせてくれ」

マグロはもう止んでいた。空は澄み渡り輝くカレンチャンが鉛色の雲の間から眩い輝きを放っている。

8二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:27:14