- 1二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 03:15:51
(そして二人で運命の人――トレーナーさんに会って、一緒に指導を受けることになる……)
(三人で楽しく学園を過ごして、たまに私はお姉ちゃんやトレーナーさんに怒られながらもレースに向けて頑張って走るんです)
(お姉ちゃんの勝負服は、巫女さんみたいでとても綺麗で、トレーナーさんは少し頬を染めながら褒める……)
(私は私なりの走りをするんだけど、優秀なお姉ちゃんには勝てなくて、そしてお姉ちゃんはやっぱり凄くて、私を置いて先に行く、それが例えどんなレース、どんな場所だって、お姉ちゃんは私より早く辿り着く)
(周りの皆も、スズカさんもエアグルーヴさんも、大好きなトレーナーさんもお姉ちゃんに夢中になるんです)
(何時しかお姉ちゃんとトレーナーさんはお似合いだなって噂も立って、私は笑顔で応援する。だって二人とも大好きだから、大好きな人達が笑顔になれるなら、それはとても幸せなことだから……)
(お姉ちゃんの一番のファンは私だから、トレーナーさんが惹かれるのは分かる。その反対も。トレーナーさんの事を、私は……)
(……手を取り合う二人、それを後ろから見る私。追い抜けない、追い抜くことは許されない。差す必要はないから、だから。でも何でちくちくするのでしょう?)
(そのままURAファイナルズで優勝するお姉ちゃん。二着は私。トレーナーさんに手を振るお姉ちゃん。お姉ちゃんを労う為に向かうトレーナーさん)
(抱き合う二人。絆は強くて、同時に告白して笑い合って、頷き合って、私の存在なんか忘れて二人の世界に入るんですね)
(キスをする二人を眺めて……泣く私。嬉しくて泣いているはずなのに、笑顔は作れず、拍手も出来ず、声も掛けられない。私は……私は……) - 2二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 03:16:23
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- 3二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 03:16:25
「フクキタル」
「……ハッ!?あ、トレーナーさん?何で?ここに居るんですか?」
「いや、何でって。お前が誘ったんだろうが。ほれ着いたぞ」
名前を呼ばれて起き上がると、そこは見慣れた景色があった。山の中のお寺。何度も来たことがある。
お姉ちゃんのお墓が置いてある場所だ。初めてここに来た時、泣きじゃくって骨壺から離れられなかったことを覚えている。
……そうだ、お姉ちゃんは居ないんだ。だってトレセン学園に入る前に、死んでしまったのだから。
「ごめんなさい、トレーナーさん。寝ぼけていたようです。直ぐに降ります!」
慌ててトレーナーさんの車から降りて、後ろの席から線香と仏花を取る。トレーナーさんは既に手桶やお供え用のお菓子を持っていた。
初めて来るトレーナーさんを案内しながら、お姉ちゃんが眠る墓地に向かって歩く。
(お姉ちゃんは居ない。だから、私とトレーナーさんの二人だけ。三人じゃなく、二人でレースに勝つ為に頑張って……)
(にゃーさんの存在をトレーナーさんに呆れられながらも、自分なりの勝負服を着て、少しだけ褒められて……)
(走って、走って、走って、トレーナーさんに背中を押されながら、スズカさんをエアグルーヴさんを、色々な人を差し切って……)
(私はURAファイナルズに優勝した。それを今、お姉ちゃんに報告しに来ている……)
少しだけトレーナーの方を見る。真面目な顔をしている。教え子の姉の墓参りの付き添いだなんて、きっと面倒なはずなのに嫌な顔一つせず頷いてくれた。
目が合って、訝し気な顔をされて、視線を逸らす。顔が赤くなる。もう直ぐ、お姉ちゃんのお墓の前だというのに。
(……夢の中でトレーナーさんはお姉ちゃんのことが好きだった。なら現実のトレーナーさんは、私のこと、どう思っているのでしょう)
- 4二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 03:16:48
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- 5二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 03:17:17
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- 6二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 03:18:08
- 7二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 03:36:39
おつおつ
お墓参り概念すき - 8二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 03:51:44
3と4が連投になってるぞ
SS自体は最高だったぞ - 9二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 03:59:25
URAファイナルズに優勝した後、私はトレーナーさんに告白した。勿論、生徒と教え子の壁があることは理解していた。
けれど好きで好きで、どうしようもなくて、想いを抑えきれずに伝えてしまった。
返答は直ぐにしなくてもいいと言った。卒業したら、改めて告白するから、その時に答えて欲しいと。多分それは卑怯な手なのだろう。
一方的に想いをトレーナーさんに押し付けて、困らせている。意識して欲しいからと、自分だけ満足している。
悩んでいる間にお姉ちゃんのお墓に着いて、私はトレーナーさんと二人で掃除してお花やお菓子を添えて、線香を付けた。
手を合わせる。心の中でお姉ちゃんに報告をする。ありがとう、お姉ちゃん。何時も見守ってくれて。
――お姉ちゃんのおかげで私、一番になれました。だけどお姉ちゃんなら、もっと早く一番になれたのかな。
「……お姉ちゃんは、とても優秀なウマ娘だったんです。頭が良くて、足が早くて、優しくて、美人で。自慢のお姉ちゃんでした。生きていたら、一番のウマ娘になれていたと思います」
「フクキタルは、本当に姉さんのことが大切なんだな」
「はい!大切です!大好きです!家族も友達も皆も、お姉ちゃんが好きでした。……トレーナーさんもお姉ちゃんと会っていたら、きっと好きになっていたと思います。私、よりも……」
言うべきではないことが口から出る。目から涙が溢れて、合わせる手が震えてしまう。
悲しい?嬉しい?苦しい?分からない。お姉ちゃんが居たら、良かった。生きていて欲しかった。一緒に走りたかった。三人で笑いたかった。
でもトレーナーさんは取られたくなかった。
駄目な子って思われている。お姉ちゃんのお墓の前で変なことを言う子だって。幻滅されたかもしれない。また涙が零れそうになった時、トレーナーさんに頭を撫でられた。
- 10二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 03:59:48
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- 11二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 04:01:23
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- 12二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 04:05:53
「フクキタル、顔を上げろ」
「ふぁ、ひゃい……?」
「バ鹿か、お前は」
「ば、バ鹿って酷いです……。いえ、私はバ鹿です。はい、しゅいません……」
「おい、これ以上泣くな。お前の姉に祟られるだろうが……はぁ、全く」
「ん、う、あ、えっ」
お姉ちゃんが居る前で、トレーナーさんに抱き締められた。
「例え、お前の姉さんが居たとしても、その人がどれだけ優秀だったとしても、俺はフクキタルを選ぶ」
「っでも、お姉ちゃんは私よりもずっと優秀で……」」
「俺がこの世で一番惚れている走りを持っているのはお前だ」
「う、トレーナーさん……」
「だからそう卑下するんじゃない」
そう言ってトレーナーさんは照れたように笑って、頭をわちゃわちゃに撫で回した後、誤魔化すように額にでこぴんをした。
ちょっと痛い。でもそれがとても嬉しくて愛しくて、大好きで、私は涙を拭って笑った。
「ハイ!私は【トレーナーさんが大好きなマチカネフクキタル】です!」
(お姉ちゃん。私はお姉ちゃんが居なくても、幸せです。それはとても罰当たりなことかもしれないけれど、どうか何時までも見守って下さい。遠い先、必ず出会って、その時は三人で笑いましょう!)
end
- 13二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 04:08:18
すいません。連投のご指摘を受けて、慌てて消して再投稿したのですが、これも連投でしたね。
消さなくて良かったのに、パニくってレス数を増やしてしまい申し訳ありません。もう少し勉強してから、またSS投降したいと思います。
最後に、フクキタルは可愛い。実は当初、曇らせ方向に行こうと思ったのですが、悲しいままのフクキタルが個人的にキツかったのでハピエンになりました。 - 14二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 09:24:17
良かった。最近曇らせも多いからハピエンの栄養も取らないとね
- 15二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 17:12:49
お姉ちゃんもトレーナーさんも大好きなフクキタル良いよね…ごちそうさまでした
- 16二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 17:15:29