- 1二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 17:39:10
人口二桁レベルの山奥の村の学校という、この令和の時代に存在価値が認められてるのが不思議なくらいのところに、俺が校長兼教師という形で『栄転』してきた時は、果たして生徒なんか来るのだろうかと思っていたが、今俺はたった一人の生徒である少女と相対していた。
「卒業証書、ミホノブルボン殿。あなたは、本校において小学校の全課程を修了したことをここに証します」
そこらの分校より小さいこの学校に、体育館なんて贅沢なものはない。
体育の授業はいつもクソみたいに広い校庭でやっていた。
故に、せっかくの卒業式もいつも使っている教室で、来賓もなしでやっているのだが、もうちょい卒業式っぽくできないかと思案した結果、ブルボンには今度進学する学校の制服を着てきてもらった。
東京の、中央トレーニングセンター学園の制服を。
「ステータス、疑問。マスター……それはどういうことなのでしょうか?」
「んー……簡単に言うとな。もうお別れなんだ。この学校とも、俺とも」
「解析…結論、もう二度と、マスターに会うことはできないということでしょうか?」
「二度とってわけじゃないと思うけど……トレセン入ってからは、忙しくなると思うし…そうだな、しばらくは会えないと思う」
肩が震えている。鼻が出そうになる。口の端がしょっぱい。
そうだ。この少女は、6年の間二人で連れ添ってきた相棒のような存在だった。
その相棒と、こんな急に引き離されるなんてことになったら、そりゃあこんな気持ちにもなる。
そしてそれは、目の前の少女も同じ気持ちだったようだ。
「マスター、私の目から何かが漏れています」
「それは涙だ」
「涙…記憶解析…マスター、これが『悲しい』という気持ちなんですね」
「そうだ。この気持ちだけは、お前自身で見つけて欲しかった。だから、今、俺『嬉しい』」
「マスター……!」 - 2二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 17:39:47
ブルボンが俺に抱きついた。
スーツが涙で濡れてるが、そんなことはどうでもよかった。
出会った頃は、こいつの頭は俺の下腹辺り
にあった。
それが今じゃ、心臓辺りまできてる。
そして当時こいつの頭があった俺の下腹には…………………
こいつ胸大きくなったな
本当に小学生かこいつ?
情緒が小1の時からそこまで変わらなかったから気づかなかったけど、こいつの身体エッグい成長遂げてるな。
こいつ東京に放り出すのか?
あのまあまあクソなところにこの身体の女をこの精神のまま放り出すのか?
ダメだろ。
だいたい、体質上、元々こいつの人生はこの村で完結するはずだった。
残りの義務教育3年間を俺が教えて、卒業後には理解のある家の三男坊にでも嫁がせるつもりだった。
間違ってもあんな最新機器まみれの日本の中枢都市になんぞ近づかせるつもりもなかった。
体育の時のこいつを見てトレセン学園に勝手に履歴書を送りつけた婆さん共と、それを受けてこんな山奥くんだりまでこいつを視察にきた暇な学園スタッフ。
この2つのどちらかがいなければこいつを東京というロクでもないところに放り出さずに済んだのだ。
「いいか、ブルボン」
「はい」
「変な人から声かけられても、絶対についていくんじゃないぞ」
「はい」
「知らない男の人から触られたら躊躇しないでそいつを殴れよ」
「了解しました。マスター」
こいつ本当にわかってるんだろうか?
もう本人の知らないうちに犯罪に巻き込まれてる気しかしない。
どうすっかな……
確か、あれの試験今月末だったよな……… - 3二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 17:39:59
「ステータス『困窮』。道に迷いました」
月と年度が変わり、私はこの度進学する中央トレーニングセンター学園の寮に向かうため、東京に来たのですが、マスターから「困ったことがあったらこれに頼れ」と渡された小型板状液晶デバイスが壊れてしまいました。
どうすれば……
「お、どしたん君?東京初めて?迷ってんの?」
なかなかに奇抜な頭をした男性が話しかけてきました。
これは、もしかしたらこの人についていけば……
「肯定。道に迷ってしまいました」
「あ、そうなの?んじゃ送ってあげるよ」
そうして辿り着いた場所は
「ステータス『意外』ここが学生寮なのですね」
「ん?あ、うん、そう!ここ学生寮!」
お城のような建物でした。
なるほどここが学生寮。イメージより素晴らしい建物でこれからの生活が少し楽しみになりました。
「そいじゃ早速だけど、一緒に中入ろ」
「んなわけあるかぁ!!」
「ほでゅあ!?」
突然男性の方がうずくまったのと同時に、誰かが私の手を引っ張って走り出しました。その誰かは…
「マスター!?」
「ほらやっぱこうなった!!ここであの男が大人しく寮に送り届けるだけなら帰ってたけど、やっぱこうなった!!」
「ステータス『疑問』。マスターが先程あの男性に攻撃を加えた部位は、ダメージを受けると機能停止するという部位ではないのですか?」
「うん!そう!!実際今停止してるでしょ!!あんな感じなんの!そしてあんな感じのうちに逃げんの!!」
そこから数分走り、マスターはすっかり息が切れていました。
「マスター、これが偶然というものでしょうか?」
「ううん、偶数じゃない。頑張った。マスター頑張った。お前の親父さんから死ぬほどしごかれて、ようやくこれ取った」
マスターが一枚のカードを取り出しました。そこには、『トレーナーライセンス』という文字が。
「マスター、これは……」
「しばらく会えないって言ったけどな、あれ嘘。これからも一緒」
気づいたら、私はマスターに抱きついていました。
これは確か、『嬉しい』という感情だったと思います。 - 4◆dOdssBd8Q622/09/18(日) 17:40:58
コテハンつけ忘れた
これで完 - 5二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 17:44:39
アップダウンがあって、内容もよくて……その、すごくすごかったです!
- 6◆dOdssBd8Q622/09/18(日) 17:45:17
その、こういうこと自分で言うべきじゃないんだろうけど、感想とかくれるとありがたい
- 7◆dOdssBd8Q622/09/18(日) 17:45:38
ありがとう!
- 8二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 17:46:51
スレ主よ
このマスターの外見はどんなイメージ? - 9◆dOdssBd8Q622/09/18(日) 17:47:37
東京03の飯塚かな
- 10二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 17:48:43
このブルボンはトレセンに入る前からかなり感情を理解してますね…
新しい環境に馴染めない子も多いと思うしその中で親しい人がいると凄く心強いと思います!
わかりやすく言うと凄い良かった! - 11◆dOdssBd8Q622/09/18(日) 17:52:34
- 12二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 22:33:34
三男坊「チクショー!!!」