自由時間

  • 1二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 12:30:19

    「えと、確かハーブティーの茶葉は…」

     夏の暑さも落ち着いた9月中旬、アタシはトレーナー室にいた。理由は、この部屋の主の使い魔が生意気にも3日間も出張に行っちゃうからそのお留守番。
    ご主人さまをほったらかしにする使い魔なんてどうなの?と思ったが、お土産をたっくさん買って帰ってくるのを条件に許可してあげた。

     使い魔がいない2日間は、自由そのものだった。口うるさいアイツがいない分、魔法のレンシューだってずっと出来るし、渡されたメニューもやったと嘘ついちゃえばやらなくてもバレない…ハズ。まあ?暇つぶしがてらやってあげたけど?
    だから、この三日間のアタシは籠から放たれた孔雀のような気持ちだった。やりたいことをいーっぱいやって、とても楽しい時間を過ごせるはずだった。

     …でも、この自由を謳歌出来たのはほんの一瞬。すぐに物足りないというか、つまんないと感じるようになった。
    あれだけ渇望していた誰にも縛られない自由な時間を得たのに。
    アタマデッカチな口うるさい使い魔がいない最高の環境のはずなのに。
    こんなにも、味気のないものだったの?と自分でもビックリしている。

    「あ、ここの戸棚に入れてたのね。覚えとこ」

     だから、今の暇つぶしはトレーナー室の探索、調査をすること。アタシもよく使うけど、色々と知らないことが沢山あって宝探しをしているようで楽しい。
    例えば、使い魔のデスクトップPCのパスワードはアタシが勝った宝塚記念の日時である0626。
    例えば、学内の連絡用スマホの暗証番号はこれまたアタシが勝ったエリザベス女王杯の日時の1113。
    例えば、デスクトップの画像は宝塚記念で勝った時に乙名史さんに撮ってもらった使い魔とスイーピーのツーショット写真。
    …ホント、呆れるくらいに使い魔のあらゆるものはスイーピーのまつわる何かが関与している。まっ、使い魔としてトーゼンの心構えだけど?

     デスクに腰掛けて、クルクル回りながらスマホを仰ぎ見る。時間は16時。あと3時間位で戻るとか言ってたっけ…帰ってくる頃には晩ごはんの時間じゃない。帰ってきたら、晩ごはんを食べながら使い魔の知らないアタシの話をしてやったり、向こうでのお話を聞き出してやるんだから。

    「…早く帰ってきなさいよね、ダメダメ使い魔」

     そんな事を呟いて、使い魔の帰りを待つのだった。

  • 2二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 12:32:42

    ユキノビジン滑り込みで当たってくれてとっても嬉しかったです(小並感)

    改行が一部歪かもわからないのはどうか許し定期

  • 3二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 12:32:54

    トレーナーが数日不在中に誰もいないトレーナー室で過ごすウマ娘ちゃんは良い

  • 4二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 12:34:48

    ちゃんと練習するスイーピーとパスワード全部担当絡みの使い魔と寂しそうなスイーピーで心のデジたんが4人死んだ

  • 5二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 12:39:51

    外出ままならぬ中、投下助かる ありがとう

    >>4

    余分に召されてない?

  • 6二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 12:47:44

    普段使っててもトレーナーしか知らない場所とかあるもんね
    逆に自分だけが知ってる秘密の隠し場所とか

  • 7二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 12:51:22

    許し亭氏の新作助かる


    >>「渡されたメニューもやったと嘘ついちゃえばやらなくてもバレない…ハズ。まあ?暇つぶしがてらやってあげたけど?」

    ↑スイーピーのこういうところがかわいらしくてたまらんのよ

  • 8二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 13:08:11

    自由時間、何をしてもいいけどそこにいつもいたはずの人がいないから違和感を感じてるのかな?かわいい〜

  • 9二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 13:30:22

    いつも一緒だから、楽しかったことをすぐ共有したいのにいないから窮屈に感じてるんだったら可愛い

  • 10二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 14:27:22

    助かる
    スイーピーのあまのじゃくなところすき

  • 11おまけ22/09/19(月) 17:54:37

    「ただい…うん?」
    「…くぅ」

     3日間の出張を終えてトレーナー室に戻ると、スイープが仕事用デスクの椅子に座って寝ていた。出張用にノートPCを持参していた為、デスクトップが使えなくても対して問題はないのだが、変な体勢で寝て身体のどこかを痛められても困る。先に謝ってからスイープを抱えてソファーに移す。
    …それにしても、彼女はなぜここで寝ているんだろうか。時間帯的に、生徒は帰宅している時間帯である。俺の帰りを待ってくれたとか思ったが、スイープのことだ。多分暇を潰してたら寝落ち辺りが本命だろう。

     ソファーに寝かせたスイープの横に腰掛けて、ノートPCを開く。パスワードは、彼女がトリプルティアラを成し遂げた秋華賞勝利日の1017。デスクトップを飾っているのは、彩 Phantasiaをセンターで踊る彼女の写真。データを乙名史さんから戴き、使用させてもらってる。
    …この時には俺もスイープも、レースの魔法が世界のレースウマ娘の概念すらも変えると確信が持てたのをよく覚えている。クラシック三冠だとか、ティアラだとか関係ない。彼女は、観客を魅了し、同じ路線の後進たちを背負い立つ旗印になり、新しい風を吹き込んでくれると。

    「強い奴が強い…か」

     暮のグランプリでクラシック出身者、トウカイテイオーと勝負した時、前述のクラシック出身者とティアラ出身者、どちらが強いかと言う彼女からの問答へのスイープの答え。そばで俺も聞いていて、とても彼女らしくて苦笑いしてしまったが…俺も同じだった。その気持ちがあったから、レースの魔法をかけることが出来た。本当に、強い娘だ。

     これから先、彼女が競技者生活の終りを迎えた時。俺は果たして使い魔として彼女を支えたと言える存在になれるのかわからないし、今もダメ出しばかりされているから厳しいかもわからないが…。
    スイープトウショウという、偉大な魔法使いの一番近くでその魔法を見れたことを一生忘れない。そして、願わくばこれからも使い魔として彼女と魔法の爪痕や思い出を残したいなんて言ったら、調子に乗るなと怒るのだろうか。

    「ん…?使い魔?」
    「起きたか。おはよう。あとただいま」
    「…帰ってくるのが遅いのよ。おかえり…ふわぁ」

     眠れる魔女が目を覚ましたみたいなので、頭が覚醒するのを待ち、ファミレスにてこの三日間のお互いの身の上話に花を咲かせるのだった。

  • 12二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 17:56:05

    外の雨ザーザーでやること無くておまけつくりました
    お目汚し失礼いたしました。

  • 13二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 19:22:30

    おまけ助かる

  • 14二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 21:16:26

    いいねえこういうの
    スイーピーがもう一つの秘密に気づくのはいつになるのかしら

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