- 1二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:22:00
空に星明かりや月も見えない荒れ模様の深夜。虫の音が鎮まり、窓から強い風の音や雨音が聞こえてくる。
「…………」
そんな夜中だというのに、サトノダイヤモンドは眠れずにいた。
私は雨が苦手で、更に今日のような台風の夜で寝付きが悪くなっていた。
いつもならキタちゃんと他愛もない話をしていればいつの間にか眠ってしまうのだが……
今夜ばかりはそうはいかなかった。
私はベッドの中で強く目を瞑るが、雨音や風音が気になって眠れない。
心細くて、誰かと話したくて仕方がなかった。いつもなら、隣にいるキタちゃん起こせばいいのたが、彼女はぐっすり眠っているようで声を掛けても起きなかった。
「うぅ……ダイヤちゃん……」
寝言だろうか?私の名前を呟く声が聞こえる。
私は彼女の夢の中にまで登場しているらしい。それだけでも嬉しかった。
だが、今はそれどころではないのだ。
(困ったなぁ……)
何か話せる相手はいないだろうか?ふと思い浮かぶのは一人しかいなかった。 - 2二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:24:50
(もう寝てますよね)
そう思いながら、私はスマホを手に取り、画面をタップする。
電話帳から『トレーナーさん』の名前を探し出し、通話ボタンに触れる。
トゥルルルルッ!トゥルルルルッ!!
呼び出し音が耳元で鳴り響くが、一向に出る気配がない。駄目元で二度目をかけても出ることはなかった。
(やっぱりダメだよね、寝ているよね)
諦めようと思った時だった。
スマホの画面にトレーナーさんの名前が表示された。私は慌てて応答ボタンを押した。
「もしもし!」
思わず大きな声で話しかけてしまう。
『もしもし?』
「あっ……こんばんわ」
『どうしたの?こんな時間に』
「その……ちょっと眠れなくて」
『……あーそういうことね。俺もちょうど寝付けなくてさ』
「えへへっ、お揃いですね♪」
トレーナーさんは私に共感してくれたことが嬉しくてつい笑みを浮かべてしまった。 - 3二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:25:23
『この天気だし不安になって、眠れないよな。』
「はい。それで少しだけお話しできたらなって思って」『それじゃあ、俺の昔の話でもしようか』「昔ですか?」
『ああ、まだトレセン学園に入る前の話になるけど』
「聞きたいです!!」
『まぁ、大したことじゃないんだけどな。……』
そうして、トレーナーさんは眠れない私を気つがったのか、ゆっくりと優しく自身の昔話を語りかけてくれた。いつもは私が楽しく話すのを聞いてくれるトレーナーさんと立場が変わって、今度は私がトレーナーさんの話を相槌をうちながら、静かに聞いていた。
トレーナーさんが語った話はよくあるような平凡な話で、特に面白いものはなかった。
だけど、不思議とその話が私の心に響いて、安心感をもたらしてくれた。気がつけば、先程までの心細さが嘘のように消えていた。
そしていつしか、私は心地よい睡魔に襲われ意識を手放していた。
『ってことがあってね、…ダイヤ?』
「すぅ……すぅ……」
『あれ?寝ちゃったかな?ダイヤ?』
「むにゃ……はいぃ……」
『ははっ、寝ぼけてる。』
「……」
『……おやすみダイヤ。また明日な』
「……んぅ……はい……おやすみなしゃい……」 - 4二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:32:22
台風が来たときに上げたかったが間に合わなかったSSになります
- 5二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:36:02
何気ない深夜のやり取りはいいぞ…