【リコリコSS】千束とたきなと炬燵

  • 1二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:49:26
  • 2二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:50:06

    このレスは削除されています

  • 3二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:50:08

    「しまった…」
    セーフハウスのドアの前で、私は立ち尽くしていた。
    「忘れてた…」
    私が困り果てている原因、それは、つい先程リコリス御用達の運送業者が運んできた大きな荷物。
    「…どうしよう…」
    頑丈な作りのダンボールには
    『組み立て簡単 ダイニング炬燵セット ウォールナット製 高級掛布団付き』
    と、デカデカとプリントされていた。

    1週間前。
    私とたきなの間でちょっとした事件が…いやちょっとしてないな、あれは大事件だった。
    リコリコに設置した炬燵。その炬燵の中で始めた、たきなへの些細な悪戯。それが、あんな事件になると誰が予想できるというのか。
    あれ以来、たきなとはギクシャクしたままだ。
    仕事はなんとかこなしているものの、たきなは私とあまり目を合わせてくれない。
    たまにたきなの方から私を見てくれるときも、今度は私がたきなと目を合わせるのが、なんだか恥ずかしくてつい目を逸らしてしまう。

  • 4二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:50:30

    この1週間、DAや荒事関係の仕事がなかったのは不幸中の幸いだった。代わりに保育園の園児たちからは
    「千束お姉ちゃんたちどうしたの?」
    なんて無垢な質問をぶつけられて更にぎこちなくなってしまったのだけど。

    「と、とにかくコレをなんとかしなきゃ…」
    そう、目下対処しなければならない事案はコイツだ。ドアの前に鎮座している、炬燵一式が入ったダンボール。まず出入りに邪魔だし、何より今日は。
    「もうすぐ、た、たきなが来ちゃう…!」

  • 5二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:50:45

    「すまん千束、明日は臨時休業にする。」
    「へ?」
    昨日のことだった。先生が突然そんなことを言い出した。
    なんでも、楠木さんからの急な呼び出しらしい。
    剣呑なキーワードに思わず私は身構えたが、
    「安心しろ、お前が心配するようなことじゃない。明日は依頼もない、1日ゆっくりするといい。」
    と、笑いながら厨房に入っていく。
    降って湧いた、急な休み。なんの予定も用事も思いつかない。さてどうしたものか、とぼんやり考えていると、
    「明日お休みですか?」
    と背中からたきなの声がした。
    「はえっ?あ、そう、そうみたい。」
    たきなからの不意打ちに思わず声がうわずってしまう。
    本人にはそのつもりは全くないだろう、だけど今の私には暗闇からの射撃よりずっと効果的な不意打ち。それに、久しぶりにたきなから声をかけてくれた。そんな些細なことで、なんとなく、ちょっとだけ心が弾む私。
    しかし。
    不意打ちをした本人は私など気にも留めず顎に手を当てて何か思い耽っている。こんにゃろう、ひとの心を弄びやがって。
    「千束。」
    今度は思い立ったように顔を上げ、真っ直ぐ私の目を見てくる。たきなにじっと見つめられたのがとても久しぶりに感じられる。
    「な、何?」
    冷静を装いながらも、私の心臓はバクバク脈打ってる。いや、単なる比喩なんだけど。
    「明日、千束のセーフハウスに行きます。」
    …はい?

  • 6二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:51:25

    …そんなやりとりが、つい昨日のこと。
    私の事情など関係なく、決定事項です、と言わんばかりに告げられた。
    そして、今日だ。
    時間は11時を回ったところ。予定ではもうすぐたきなが家に来る時間。
    マズイ。いや、べつにマズイわけではないハズ、…ハズなんだけど、これはなんだかよくない気がしてしょうがない。とりあえずコレどうしよう、隠す?どこに?クローゼットに入るようなサイズじゃない。そもそもなんで炬燵が届くんだ、何かしたっけ私?アレかな?秋になったあたりで、たきなと約束してたっけ。冬には炬燵だーなんて私がはしゃいでたら、たきなが炬燵使ったことないってポロッと口にして。DAの養育施設には炬燵なんてなかったからなぁーそっかーたきな炬燵知らないかーなんて言って。じゃあ千束さんがたきなに炬燵の良さを教えちゃろう!って意気込んで、炬燵で鍋パーティーしようって。善は急げで注文したけど、在庫切れで冬ごろ届くことになって。そのまますっかり忘れていた。ははーん、アレだな。私のアホ。いやあの時はものすごくグッドアイディア!ナイス私!と自画自賛したのだけど。今となってはどうにも扱いに困る、タチの悪い…いや質はいいんだよね、コレ。ちょっと高かったけどたきなのためだし。でも改めて思うとなんで『ウォールナット製』を選んだんだ私。頭の片隅でクルミの笑い声まで聞こえてきた。いやいやいや、落ち着け私落ち着け。冷静に冷静に。

    ピンポーン

    「はぅい!?」

    突然鳴る玄関のチャイム。
    間違いない。
    いま、扉の向こうには、たきながいる。

  • 7二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:51:44

    遅筆ですみません、ひとまずここまで。

  • 8二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:53:59

    執筆お疲れ様
    SS書く人が増えて嬉しい!嬉しい!
    千束の内面が可愛いことになってる…

  • 9二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 01:00:47

    楽しみに待ってます

  • 10二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 01:09:01

    需要と供給のバランス取らねぇとなァ!(保守)

  • 11二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 01:33:26

    狂犬スレの方か!続き楽しみにしてます!

  • 12二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 01:54:42

    独立したSSスレが増えるのはいいことだ

  • 13二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 02:14:12

    投稿お疲れ様!
    続きもあるのは嬉しすぎる

  • 14二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 03:11:22

    >>7 続き

    扉の向こうからたきなの気配がする。でも今どんな顔をして迎えてあげたらいいのか分からなくて、呆然としてしまっていた。

    …千束?

    たきなの声。私を呼んでいる。だけど、次の行動がとれない。どうすればいいか、わからない。

    …千束!?

    わずかに、たきなの声に焦りが混じってる、ような気がする。

    千束!?何かあったんですか!?

    ハッとして我に帰り、ダンボールを跨いで慌てて扉を開けた。

    そこにいたのは、私服のたきな。私がコーディネートした冬バージョンに、私があげたマフラーを巻いたたきな。

    「千束?大丈夫ですか?何かあったんですか?」

    スマホに手をかけ心配そうにこちらの顔を覗き込んでくるたきなに「大丈夫大丈夫」と苦笑いしながらごまかす。

    そうですか、とほっとしたようにたきなの表情が緩む。

    私があげたマフラーをそっと撫でるたきなが、なんだか可愛い。

    「何かあったらどうしようかと。今日はリコリス制服は着てませんし銃もなかったので…」

    何もなくてよかったです、とは言うが、その目は仕事に臨むリコリスの目をしていた。

    「今度からは制服ごと鞄を持ち歩くようにします。」

    …やりかねないな、たきななら。

  • 15二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 03:12:32

    >>14

    「ところで、千束。」

    視線を落としてたきなが言う。

    「なんですか、それ?」

    私が跨いでいるダンボールのことを聞いてきた。当たり前だ。部屋に入ってすぐこんな大きな段ボールがあれば誰だって気になる。

    「いやあの、これは…ですね…」

    「ウォールナット…炬燵…?あ、たしか秋ぐらいに買うってはしゃいでいたアレ、届いたんですか?」

    「あ、そうそう、それそれ…」

    そうですか、とあっけらかんとしているたきな。

    さっきまで私がどれだけ頭を悩ませたか、こんこんと聞かせてやりたかった。というか、そこまではしゃいでいたのか、あの時の私は。

    …しかし、これをどうしたものか、とまた考えていると、

    「…なら手伝いますよ、一緒に組み立てましょう。」

    たきなが提案してきた。

    「へ?」

    またも不意打ちを食らってしまった。


    ただ、人より目がいい私は、たきなの黒髪に隠れた耳が真っ赤になっていたのを見逃さなかった。

    それがどういうことなのか、まだ私にはわからなかったけど。

  • 16二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 03:13:27

    >>15

    すみません寝ます、続きは明日にでも。予告来るまでには書ききりたいなぁ

  • 17二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 08:45:14

    お疲れ様です

    たきなも流石に照れる

  • 18二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 11:59:18

    念のため保守

  • 19二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 12:10:09

    補習

  • 20二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 12:40:06

    >>15


    昼食を軽く済ませた後、テーブルを退かせてソファーをずらし、テレビとソファーの間に炬燵のスペースを作る。

    たきなが組立説明書を読み、私が指示に従って組み上げていく。

    部品を手渡してくるたきなの指に触れるたび、なぜかドギマギしてしまう…いかんいかん、落ち着かなければ。


    そうこうしている間に土台が組み上がって、その上に布団を掛ける。

    天板を炬燵に置く前に、その横に立てかけておいて、試さなければならないことがある。

    「そりゃっ」

    ボフン、とふかふかの布団に顔を思い切り埋め、高級布団をじっくり味わう。

    「ふふっ、何してるんですか、千束。」

    「いやぁ~、なんていうか、儀式?みたいな?柔らかくて肌触り最高だよ~?たきなもやる~?」

    「もう、そのまま挟んじゃいますよ?」

    今度はたきなが悪戯っぽい笑顔を見せて、立てかけていた天板を倒してくるそぶりを見せる。

    やめれ~、などと二人で笑い合っていると、さっきまでの緊張感は薄れていく。

    たきなからも、昨日までのぎこちなさを感じない。ちょっとだけ、安心した。


    さてと、天板を置き、電源をつないで、炬燵の完成!

    いえーい、とハイタッチ。

  • 21二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 12:41:06

    >>20


    淹れたてのコーヒーを炬燵に置き、ソファーを背もたれにして、2人で並んで炬燵に入り直す。

    たきなと肩が触れ合って、さらりと揺れる髪の毛からたきなの香りがしてくる。

    私の太ももにはたきなの太ももが触れている、というか、やっぱりほとんど密着している。

    どうにも落ち着かない…ドキドキしてしまう。


    1本目は私の大好きなアクション映画。だというのに、全く集中できない。

    映画はいつの間にか後半、爆破されるビルから主人公が飛び降りるシーン、物語はクライマックスに向けて加速していく。

    だけど映画より気になってしまう。ちら、と横目でたきなを見る。

    じっとまっすぐに、真剣な眼差しでテレビを見つめている。

    そんな横顔がどこか凛々しくて。いつもと違うように感じるのは、きっと気のせいじゃない。

    どうしてしまったんだろう、私は。


    「千束?映画終わっちゃいましたよ?」

    急にたきなが私に振り向いてきて、ドキッとしてしまう。

    映画はいつの間にかエンドロールに。しまった、一番好きなラストシーンを見逃してしまった…ごめん、パウエル…

    「あえ!?あ、あはは、そうだそうだねそうだった~…」

    謎の三段活用で誤魔化しつつ、次のディスクをセットする。次ももちろん、アクション映画。


    …結局この映画にも集中できなかった。

    映像は見ているが、見ているだけ。何も頭に入ってこない。

    テレビの中では筋骨隆々の俳優がボートを漕いで浜辺に向かっていく。

    上陸するとボートから様々な重火器を取り出し、その筋肉に装備を身に纏っていく。

  • 22二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 12:42:36

    >>21


    「…んん…」

    ふと隣を見ると、たきなも船を漕いでいた。

    ついさっきまでの真剣な眼差しが、打って変わってトロンとした目になって、カクン、カクンとリズムよく頭を揺らしている。

    いつものたきななら、誰かの前でこんな油断した顔を見せることなんてないはずなのに。

    「たきな?眠いの?」

    「…んぃえ、千束…、見て…ます…」

    もはや意識は遥か彼方。

    しょうがないなぁ、なんて思いながらリモコンに手を伸ばそうとしたその時。

    不意にたきなが私に寄りかかり、長い黒髪が私の首筋をサラサラと撫でていく。

    「ひゃぅっ!たきな…」

    こそばゆさに思わず声を上げそうになったが、ぐっと我慢した。

    たきなを起こさないよう、ゆっくりとリモコンに手を伸ばし、テレビのボリュームを下げる。


    「きれいな髪だなぁ…」

    すっかり熟睡してしまったたきなを見つめて、ポツリと呟いてしまう。

    たきなの黒髪。長くてきれいな髪。二人で街を歩いているとき、風に揺られるといい香りがするのを、私は知っている。

    そんなたきなの髪を、私の指は無意識に撫でていた。

    綺麗な髪。ツヤツヤして、シルクのよう。指で優しく梳かし、顔を寄せる。

    深呼吸すると、たきなの香りに胸が満たされていく。

    ふと、髪の隙間から、たきなの白い肌、首筋がチラリと見えた。

    私は、ちょっとした悪戯心で、首筋に唇を寄せていった。唇がたきなの肌に触れる。

    たきなを起こさないように、唇の先でちょっとだけ啄むようにキスをした。

    ん…とたきなの寝息は相変わらず心地良さそうだった。

    そんなたきなの寝顔を見ていると、さっきまでの悪戯心とは違う、別の衝動が胸の奥から湧いてくる。

  • 23二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 12:47:45

    保守ありがとうございます
    続き製作中です。

  • 24二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 12:49:52

    おねむなたきなは可愛い

  • 25二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 14:18:09

    投稿主です。
    まだ書いている途中ですが、この後、前より性的な描写が入ります。
    今更で申し訳ありませんが、苦手な方はお気を付けください。

  • 26二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 14:18:48

    >>25

    R-15くらいのつもりで書いてますが、まずそうなら消してからpixivに上げます。

  • 27二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 14:27:48

    >>22


    たきな。井ノ上たきな。DAからやってきた、私の相棒。大切なパートナー。

    たきなの大事なところに、触れてみたい。

    そんなことしたら怒られるかな、怒るだろうな。嫌われるかもしれない。

    だから、駄目だ。でも、触れてみたい。嫌われたくない。

    葛藤すればするほど、同じくらい邪な衝動はどんどん膨らんでいって、もう抑えきれそうにない。

    でも駄目、触れちゃいけない。

    たきなには、触れない、から…


    私はたきなの首元に顔を寄せたまま、自分のショーツに手を伸ばす。

    …少しだけ…少しだけなら…少しだけだから…

  • 28二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 14:28:12

    >>27


    まだ成長しきっていない蕾に生地の上から触れる。

    「んっ…くぅ…」

    たきなの香りを吸い込む。

    指先で丸い輪郭を描くように、ゆっくりと。

    刺激が足りなくて、『あの時』たきなに刺激されたように、少し強く押し込む。自分を戒める様に。

    無意識に緩急をつけて、徐々に高みに上ってゆく。

    あの日偶然知ってしまった、初めての感情。あのときを思い出すように。

    「…ふうぅ…んぅ……」

    体が熱くなってきて、かけていた布団を少し開ける。

    「は…っ…ぁぁ…うぅ…」

    だけど足りない。何か足りない。もどかしさばかりが募っていく。

    「…たきな…たきなぁ…」


    はぁ、と吐息を漏らすと

    「…千束?」

    たきなが目を覚ましていた。

  • 29二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 14:29:51

    >>28


    やばい。見られちゃった。

    私の手は全く言い逃れできない状態。

    暑さのせいで布団を開けていたから、隠しようもない。

    「あの、これは、その」

    顔が熱くなる、けどそれとは反対に頭の中は冷え切っていく。どうしよう、何も考えられない。

    しどろもどろになる私を見て、たきなは無言のまま大きく深呼吸した。

    たきなの目が真っ直ぐ私を見つめている。

    映画を見ていた時より、もっと真剣な眼差し。

    ドキリ、とする。さっき横目で見た凛々しい瞳にまっすぐ見つめられて、こんな時だというのに、そのきれいな瞳から目が離せなくなる。

    怖い。バレてる。…嫌われた。きっと。

    不安で頭がいっぱいだった私は、たきなが顔を近づけていることに気づかなくて。

    「え…?あむっ…」

    気付いたら、たきなから口付けされていた。

    たきなの唇に、私の唇が優しく吸われる。

    「ん…」

    「んむ…ふぁ…っ」

    数秒だったはずの時間は無窮の時のように感じられ、私はたきなの唇にただ身を任せていた。

    ぷは、とたきなからゆっくり唇が離されていく。

    さっきまでの焦燥も突然のキスへの驚きも、離れていくたきなの唇への寂しさと恋しさにかき消されていた。

  • 30二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 14:30:40

    >>29


    「…千束」

    「…たきな…?」

    「今日は、その…」

    「…?」

    「責任を…取りに、きたん…です。」

    責任。とは。


    『…ちゃんと、責任とって』

    自分の言った言葉だったのに、それを思い出すにはちょっと時間がかかった。

    …そのあと私は、なんて言ったんだっけ。


    いいえ。と、たきなは小さくかぶりを振って、私に向き直った。

    「そうじゃないんです。」と。


    紅く染まった顔は、恥じらいとともに覚悟を決めた表情で、でもその声はとても優しく、私に告げた。

    「今日は…ちゃんと、しに、きました…」


    「…千束」

    『今度は』

    「わ…わたしは」

    『ちゃんと』

    「貴女を…」

    『してよね。』

    「愛して、ます…!」

  • 31二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 14:31:46

    >>30


    たきなから告げられた、思いがけない愛の言葉。

    それが、鼓動のない胸にじんわりと広がり、脈打って。

    それは涙となってあふれ出てきた。


    「あ、ち、千束…?」

    突然の涙に驚くたきな。

    「あ…あれ?」

    私自身、この涙を止めることができなくて、困惑することしかできなかった。

    だけど、目の前で不安そうな顔をしているたきなに、ちゃんと伝えなきゃ。

    「た、…たきな…ぁ…」

    涙で前が見えないけど、ちゃんとたきなを見なきゃ。

    「あ、あの…ね…」

    うまく声が出せないけど、ちゃんとたきなに言わなきゃ。

    「わ、わた、私もぉ…」

    うまく表情がつくれないけど、精一杯の笑顔で、ちゃんとたきなに答えなきゃ。

    「あ…愛してる…よぉ…!」

  • 32二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 15:37:28

    たきなは真面目でいい子だぁ

  • 33二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:05:41

    >>31


    気が付くと、たきなもぽろぽろと涙を零していた。だけど、さっきまでの不安そうな顔とは違う。笑顔だった。

    「ちさ…と…わ、わたしも、大好き、です、からぁ…!」

    「わ、私だ…ってぇ…大好き、だか、らぁ…!」

    「グスッ…わ、わたし、千束が、大好き、です…!」

    「も、もう、なんで何回も、言うんだよぉ…!…私も、大好き、だからぁ…」

    「ふふふ…千束、だって…!」

    涙声がやがて少しずつ笑い声に代わり、涙も止まったころ。

    どちらからでもなく、ゆっくりと唇を重ね合い私達はお互いの感情を確かめあった。

    「た…きぁ…」

    優しくたきなの唇を吸い、勇気と共に舌を出してたきなの唇を舐める。

    「ん…ちさと…」

    たきなもそれに答えて私を口腔に迎え入れてくれる。

    たきなの中に迎え入れられた私は、舌や歯を優しくなぞっていく。

    柔らかな水音が、鼓膜より先に口の中から頭の奥を揺らしてくる。

    「んん…ちひゃと…ちさとぉ…」

    今度はたきなが私の中にやってくる。もちろん、抵抗などしない。

    「ん…たき…ひゃぅ…っ!」

    たきなも優しく私の口の中をなぞってくるが、不意に上あごをチロリとつついてきて、その度に私は体をピクンと跳ねさせてしまう。

    二人の吐息が混じりあい、唇を離しても光の糸が二人をつないでいた。

  • 34二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:06:45

    >>33


    「…あの、千束。」

    「…なぁに?」

    「今日は、その…私が、千束に…いいですか…?」

    たきなが私の手を握りながら、意を決したように尋ねてくる。

    ちゃんとしてよね。

    私が言った、あのお願いを、律儀に守ろうとしている。

    ちょっと上目遣いなところが、普段のたきなとは対照的で、とても愛らしい。まるで母親にご褒美をねだる子供のよう。

    私は優しく、いいよ、とだけ告げた。

  • 35二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:08:49

    >>34


    たきなは倒れこむように私に覆いかぶさると、口づけと共に私の中に舌を入れてくる。

    さっきより、ちょっとだけ激しい舌の動きに、ピチャピチャと水音も激しくなる。口の中を舐められる度、私の反応も激しくなる。

    「は…ふぁ…!ひゃきな…ぁ」

    「んん…んは…ちさと…!」

    たきなの右手が、さっき私がしていたように、ショーツの上から私に触れてきた。

    私の蕾にたきなの指先が触れる。

    「んんっ!」

    思わず声が上がる。

    「あっ、千束?い、痛かったですか?」

    こんなふうにやさしく触れられて痛いわけがない。そんなことないよ。とたきなの耳元で囁く。

    「嬉しいんだよ。」と。だけど。

    「あの、たきな、その…直にじゃない…の?」

    思わず、ストレートに聞いてしまう。もしかして、触れるのが本当は苦手だったのかな。

    「その、よくわからなくて…で、でも…」

    たきなが思わぬところで口籠る。さっきまでとは少し違う緊張感が漂う。どうしたのだろう。

    「あ…あの、さっき…」

    さっき…?

    「千束がこうしていたので、そうやってするもの、なのかと…」

    さっき。私が。していた。

    「…!!!」

    ボフン!と頭から煙を噴いた気がする。さっきの、アレ。やっぱり見られていた。

    「あ…あぅ…あああ…」

    「す、すみません千束!あ、あの私よくわからなくて…」

    たきなが慌てているが、私の心はそれどころじゃない。どうしよう、どうしようもない、どうしていいかわからない。

  • 36二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:19:24

    >>35


    顔を真っ赤にして硬直する私をたきなは優しく抱きしめてくれた。

    「千束。」

    「…ふぇ?」

    未だに呆けている私に、たきなが言う。

    「今日は、これでいきましょう。」

    たきなの言葉の意味がすぐには分からなかった。しかし、たきなはまた私にキスをして、ショーツ越しの愛撫を再開した。

    「んひゃぅ!ふぁぁ…!」

    口の中で動き回るたきなの舌も一段と激しくなり、頭の中に響き渡る水音に興奮してしまう。

    ショーツ越しに愛撫する指は蕾を転がすように、しかし不規則にその軌道を変える。

    自分でするのとは全く違う快感に腰が引けそうになるが、たきなに覆いかぶさられている私には逃げ場などない。

    身をよじってこの快感に抗う程度がせいぜい。でもその程度では、たきなの指は逃してくれない。

    ぎこちないけど正確に私の弱い部分を刺激してくる。

    いや、ちょっと違う。指先の動きは自分でするのとあまり変わらない、はずだ。

    だけど、違う。ああ。そうか。私はたきなに弱いんだ。そう、きっとそう。

    自覚した途端、一段と強い快感が体中を駆け巡り、もう限界を迎えようとしていた。

    「たきな…!たきな…!」

    「ちさと…!」

    必死になってお互いの名前を呼び続ける声は、二人の口の中でだけ響いていた。

    たきなは転がすような指の動きを止め、指の腹で強く、優しく蕾を押し込んだ。

    「たき…ひぅ、あぁぁぁ…!」

    体が私の意志とは関係なく強く跳ねる。目の前がチカチカと明滅したかと思えば、今度はぶるぶると震えて、ぼやけていく。

    次第に体がふわふわと浮かんでいくように、体と意識が軽くなっていく。

    ああ。あの時と同じ感じだ。

    やっぱり。たきなじゃなきゃ、駄目だったんだ。

  • 37二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:20:10

    >>36


    「千束…」

    強い快感の余韻に浮かされる私の耳元で、たきなの声がする。

    すぐ近くにいるはずなのに、どこか遠くから響いてくるような、不思議な感じ。

    「千束…愛してます…」

    わたしだってそうだよ。

    声に出そうとして。でも私の意識はゆっくりと沈んでいった。

    目の前が真っ暗になる前に、たきなが優しく微笑んでいる顔が、見えた気がする。

  • 38二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:21:34

    >>37


    ふと、目が覚めた。薄暗くてよく見えない。テレビからの光源でちょっとだけ明かりがあるが、周りがどうなっているかわかるほどじゃない。

    だけどすぐにわかるものがあった。

    たきなの香りがする。私はたきなの胸に抱かれて眠っていたようだった。

    あの後、私もたきなも眠ってしまったようで、炬燵の布団にくるまって二人並んで横になっている。

    たきなは私に腕枕をしてくれていた。すぅー、と心地よさそうな寝息が私の顔をくすぐる。

    ああ。幸せってこういうこと、なのかな。

    たきなとたきなの香りに包まれ、私はまた微睡みの中に潜り込んでいった。

  • 39二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:30:48

    エピローグ作成中です。思ったより長くなってしまったけど、綴りたい言葉が多いんです・・・

  • 40二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:48:03

    >>38


    朝、時間は午前7時。目を覚ました私が最初に感じた違和感。

    「…のどのおくのほうが、からからする…」

    たきなも似たようなものらしく。

    「はなの、おくのほうが、かわいて、ます…」

    風邪だ。久々に風邪にかかった気がする。そういえば、炬燵に入ったまま寝ると風邪を引く、なんて話を聞いたことがある。あれは都市伝説じゃなかったのか。

    「どうしよう…」

    「どうしましょう…」

    二人して昨日までとは違う、ガサガサの声。

    なんだかそれが可笑しくて、二人して笑い合う。

    が、水分が枯渇している喉はすぐに笑いを咳に変える。

    ケホッケホッと二人して咳き込み、こりゃ駄目だ、と自覚する。

    先生に連絡を入れて、二人の臨時休暇を一日延ばしてもらうよう頼みこむ。明日なんて言い訳しようか。

    電話している間にたきなはお風呂を準備してくれたようだ。そういえば、あの後眠ってしまったから汗やらなにやらで体はベトベトだった。拭くだけじゃ足りない、と判断したのだろう。

    たきなぁ~、一緒に入らなぁ~い?なんて、私ってばダイタンな提案をしようとしたが。

    「千束は先に入ってください、軽く食べられるものを作ります。」

    と素っ気ない、というよりいつも通りのたきなだった。

    はぁーい、と気の抜けた返事してお風呂へ入る。

  • 41二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:49:41

    >>40


    暖かいお湯の中で、昨日のことを思い出す。

    突然炬燵が届いて大慌てしたこと。たきながやってきて慌てふためいたこと。一緒に映画を見たこと。

    色々あったはずだが、しかし。

    頭に浮かんでくるのは、たきなとの事ばかり。風邪のせいでも、お風呂のせいでもなく、顔が熱くなっていく。

    風邪を引いていなければ冷水で頭を冷やすところなのだけど。

    でも、確かなことがある。今、私はたきなと両想いだということ。

    それだけで、この熱以上に私の心は浮かされる。


    お風呂を出ると脱衣所にたきながいて、服を脱ぎ掛けていた。

    黒い髪が白い肌に映えて、きれいだな。なんてことを考えていると。

    「あの…千束…そんなに見られると、恥ずかしいんですが…」

    「あ、え、ああ、ごめんごめーん」

    なんて生返事をしながら視線を外し、持ってきた寝間着に着替えて脱衣所を出る。

    今までのたきななら、着替えを見られたくらいで動じなかったんだけど。

    「あ、千束、お粥を作りましたから、冷める前に食べててくださいね。」

    なんて声が聞こえる。ありがとー、なんて間延びした返事をしながらリビングに向かう。

    でも頭の中にはたきなの髪と肌のコントラストが焼き付いて離れなかった。

  • 42二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:52:03

    >>41


    リビングに戻ると、たきなが作ってくれた玉子の入ったお粥の香りがしてきた。

    うんうん、風邪っ引きにはお粥だよね。なんて一人頷きながらお椀にお粥をよそい、一人食べ始める。

    一人の食事。今までと変わらないはずなのに。なんとなく、寂しい感じがする。こんなに近くにたきながいるのに、寂しいと思うのは、わがままな悩みだろうか。

    お粥を食べ終えたころ、たきなもお風呂から上がってきた。

    私の寝間着を着ているたきなを見ると、不思議と嬉しくなってくる。


    たきながお粥を食べている間に、ちゃんとベッドで寝れるよう準備を整える。来客用の布団はあるにはあったが、あえて敷かなかった。

    つまり自然とたきなは私と一緒のベッドで寝るしかない。完璧な作戦だ。


    …たきなと一緒のベッドで寝るんだ。自分で準備しておいて、とは思うが。

    緊張してきた。寝れるかな、私。いや昨日も一緒に寝たじゃん。いや寝たってそういう意味じゃなくてね?そういう意味でも寝たんだけどそうじゃない、そうじゃないよたきな。

    一人盛り上がっていると、寝室にたきながやってくる。

    「あ、たきな…」

    「それじゃ千束、寝ましょうか。」

    自分用の布団がないことに何も言わず、ベッドに腰掛けるたきな。

    つられて私もベッドに腰掛ける。

    「千束は落ちないように、壁側で寝てください。」

    落ちねーよ。と反論しつつも壁側に移動する。

    「ふたりだと、ちょっと狭いでしょうか。」

    シングルだから、ちょっと狭いかも。横になりながら答える。

    「じゃあ、こうしましょう」

    そういうとたきなは私を壁側にゴロンと向かせて、後ろから抱きしめてきた。

    え、ちょ、ちょいちょいちょい、たきなさん?

    「おやすみなさい、千束。」

    すでにたきなは眠る態勢に入っている。

    これは、こんな状態で、寝れるとでも?

    私はたきなの吐息と胸の感触を背中に感じていて、眠るどころじゃない。

    風邪の熱以上に頭が熱くなっていった。

  • 43二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:53:46

    >>42


    「…ねぇ、千束。」

    しばらく眠れないでいると、背中からたきなが声を掛けてきた。

    「たきな…?眠れないの?」

    「…はい。千束もですか…?」

    「うん、まぁ…」

    眠れないのは誰のせい。と言ってやりたかったが、ぐっと呑み込んだ。

    そうですか。とつぶやくように、たきな。

    相変わらず背中にはたきなの少し熱っぽい体温を感じているが、今はそれがなんだが安心する。

    それに、言葉を交わせたことで、少し私も落ち着いてきた。

    「あのさ、たきな…」

    「なんです?」

    壁のほうを向いたまま、たきなに言う。

    「私、たきなのこと、大好き。」

    「…」

    返事はない。だけど、私を抱きしめる柔らかな腕の力が、わずかに強くなる。

    「だからさ、えっとね…」

    言わなきゃ。あの時、弾みで言ってしまった言葉を訂正しなきゃ。


    『…ちゃんと、責任とって』


    そんな負い目で振り向いてほしいわけじゃない。

    わかってる。たきながわかってくれていることを、わかってる。けど。

  • 44二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:54:36

    >>43


    「千束。」

    「たきな…」

    「わたしは千束のことが大好き。」

    まただ、嬉しくて、感情が涙と共に溢れそうになる。

    「あの…あの時のことは、今も申し訳ないと思ってます。だけど…」

    一週間前の大事件。

    「本当はもっと前から…もっとちゃんと、千束と向き合いたかった。」

    あの時より前から…?

    「だから、ちゃんと…」

    千束、と抱きしめる力を緩め、私の体の向きを変える。

    たきなと目があい、また優しく抱きしめてくれる。

    「わたしと、付き合って、ください…」

    たきなからの告白。正式なプロポーズ。

    思わず、笑みがこぼれる。昨日あれだけ好きだ、愛してると言い合ったのに。

    でもそんなたきなの生真面目さが、愛おしくて、大好きだった。

    涙交じりの笑顔で、答える。

    「喜んで…!」

    ふたりで、涙声の笑顔で笑い合い、静かに口づけを交わした。




    看板娘2人の臨時休暇がさらに一日延びたのは、もはや語るまでもない。

  • 45二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:57:10

    投稿主です。千束とたきなと炬燵その2、完結です。
    ご覧になってくださった皆様、拙作に付き合っていただきありがとうございました。
    13話予告までに間に合ってよかった。
    意欲がわいたらまた書きます。それでは。

  • 46二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 17:04:45

    乙!
    ちさたきが幸せになりますように!

  • 47二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 17:13:39

    おつおつ良かったで!

  • 48二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 17:39:46
  • 49二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 17:57:10

    えっちで愛もあってすばらしいな…

オススメ

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