- 1二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 04:34:12
早朝。光量で知られるアグネスタキオンのトレーナーはバスケット片手に居心地悪そうに廊下を歩いていた。
ふと気配を感じて視線を向けると、廊下の影に金色の光と目が合った。
「...!?ま、マンハッタンカフェ?」
「はい。おはようございます、タキオンさんのトレーナーさん」
陰色の髪の少女がするりと歩き寄り、穏やかな表情を向けた。
「トースト、とスクランブルエッグですか」
「おお、すごいな。わかるんだ。コメダのモーニングを参考にね。気が乗らない時でも食べられるだろうし」
(それと、ミント。あと、整髪剤と...髭剃り用のフォームでしょうか)
「...直接食べさせてあげたりしませんよね」
「..........」
「甘やかしすぎはダメですよ」
刺激臭のある薬品もお構い無しに扱うアグネスタキオンは、ウマ娘としては嗅覚がにぶい。
──私だけが知っている、朝のモルモットさんの香り。
「あ、トレーナーさんはここで待っててください。私がタキオンさんを起こしてきます」
曰く、そもそもカフェも呼び出されたクチらしい。
「寝起きを見られたと随分恥ずかしがってましたよ」
「え、タキオンがか」
ズボラが服を着て走っているようなタキオンにその様な恥じらいがあったのかと驚くトレーナーに呆れた視線が刺さった。
「叩き起こして身支度だけ済ませますから、少しだけ待っててくださいね」
そう言ってタキオンの部屋にするりと入っていってしまった。部屋の前で待ちぼうけする男性の図は非常に異質で、彼は所在なく天井を見上げる他なかった。
「トレーナーさん。もう入って大丈夫ですよ」
少女の身支度にしては意外な程早く声がかかり、促されるまま扉を開けた先には彼の愛バが待ちかねていた。 - 2二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 04:35:26
「やあおはようトレーナーくん。さあ早めの朝食と行こうじゃないか。ほらはやくー」
「おはようタキオ...ふ!、くっくっ」
「...朝から失礼だね。なんだいそのクシャミを我慢するハツカネズミのような顔は」
「...っく、タキオン。右耳がふたつあるぞ?」
「え、は!?」
慌てて手をやると、見えなくてもはっきりわかる特大の寝癖が反り立っている。
「カフェ〜!さっき直してくれたんじゃないのか!?」
「すみません、うっかり忘れておきました」
「やっぱりわざとじゃないかあ!トレーナーくん〜!!」
「自分で確認しないからですよ。手鏡のひとつでも持っておくべきです」
言葉をタキオンに向けたまま、視線だけがトレーナーを射抜いた。
目力、とでも言えばいいのか。雲間から覗く月のような瞳は時折こうして口程にものを言う。
──どうやら、タキオン買い物にでも連れ出すように訴えているようだ。
小さく頷くと、満足げに目を細めた。 - 3二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 04:35:43
「さて、私はそろそろ失礼します」
「なんだ、カフェは一緒に食べないのかい?」
「普通そういうのは振る舞う側が言うんですよ」
「う」
「ごゆっくり...じゃないですね。あんまりのんびりもしてられませんよ。......それでは。」
散々釘を刺した後、心なしか名残惜しげに退室する。視線は手櫛を通すトレーナーを捉えたまま。
すっかり甘えん坊になってしまったタキオンの瞳には、かつての狂気は薄れていた。
彼女の狂気に魅入られ自らモルモットになったはずの彼と、どちらが奪われた方なのか。
そんな彼女の大事なモルモットくんを見るマンハッタンカフェは、頭の奥から目の奥へ染み出す何かを認めた。
──今の私の目には、貴方が魅入られる光はありますか?
なんの手応えもなく、扉を閉じる。
閉じた扉の向こうの彼にまだ視線を合わせたまま、
「いってきます、モルモットさん」
廊下に微かに残る香りをひとり占めしながら、食堂へ降りていく。
(今日の朝食はトーストとスクランブルエッグにしましょう)
──「夜更かし気味」が治った。 - 4二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 04:36:42
(寮の設定とかいい感じにまとまんなかったのでブン投げましたスマン)
- 5二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 04:43:53
深夜食は健康に悪いと言うのに、腹一杯になった
- 6二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 05:50:46
おはようございます
今朝の朝食はトーストとスクランブルエッグですか…しかしこれはフルコースのディナーもかくやといった満足度…ありがとうございます