- 1二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:13:25
「ほら、あれやろうタイシン!」
「あっ! 見てみてタイシン!! タイシンのぱかプチ!!!」
「うるっさ……」
チケットのうるっさい声が頭に響く。こっちはヘッドホンをしてるのに、余裕で音楽をかき消してくる。
「あれ取ろうよタイシーン!! タイシンも欲しいでしょー!?」
「いや、別にいらないし。自分のぱかプチなんて欲しくならないでしょ」
「えーっ!? そうなのー!? アタシ、自分のぱかプチあったら絶対取るのにー!?」
「っつーか、UFOキャッチャーって元取れないんだから、直接買った方がいいんじゃ」
「よしっ! まずは500円!!」
人の話を聞く前に、チケットは小銭を投入していた。
アタシとチケットは今、ゲームセンターにいる。本当は行きたくなかった、というか行ける気分じゃなかったけど、チケットに勢いで連れて行かれた。 - 2二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:13:55
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- 3二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:15:36
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- 4二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:15:43
昨日のトレーニング後に声をかけられた。
「あれ? タイシンなんか元気ないね。どうしたの?」
「は? そんなことないって」
表面上は否定したけど、内心ではわかってた。
別に、特別何かあったわけじゃない。大きな失敗とかはない。
でも、自分で自覚できるくらいには落ち込んでた。
何をしてもあんま楽しくないし。
授業はちゃんと出るし、トレーニングもこなす。テストの点も悪くないし、タイムも落ちてはない。
けど、空いた時間に何かする気にもなれない。
強いて言うなら、些細なことの積み重ねなんだと思う。
あんなこと言わなきゃよかった、とか。
迷惑かけちゃったかも、とか。
今のままじゃ勝てないかも、とか。
漠然とした不安とちょっとした後悔が頭から抜けない。
「えー? そう?」
「何も問題ないから」
そう、何も問題はないんだ。
自分に言い聞かせる。
「ほんとにー? タイシン、何か隠してない?」
無言でムッと睨み返してみる。
しつこいなあ、何もないって言ってるでしょ!
と内心思ったが、言い返す元気がなかった。 - 5二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:15:54
「そっか。ところでタイシンは明日、予定空いてる!?」
「えっ? 明日は、空いてるけど……」
「じゃあさ! ゲーセン行こうゲーセン!! 一緒にゲームやろぉぉぉ! きっといいことあるよぉぉぉ!!」
「は? いや、アタシは行かな――」
「明日10時にお迎え行くから! それじゃあね!!」
アタシの言葉を遮って、無理やり約束させられた。
そして今朝、部屋まで迎えに来られ、行かざるを得なくなり今に至る。
しかし、よりによって、なんでゲーセンなんだか。
あちこちでゲームの音ガンガンかかってるし、休日は人多いからあんまし好きじゃない。
まあ、音に関してはもっとうるさいのがいるから関係ないか。 - 6二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:18:41
「うおおおおお!!? 取れないよおおお!!!」
いつの間にか、500円分やってしまったらしい。
案の定というか、ぬいぐるみは1つも取れていない。
「やめときなよ。お金無くなるよ?」
「うおおおおおおおおお!!! 燃えてきたあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
手元を見ると、「6play」の文字が見えた。
既に500円を入れてしまったらしい。
「うわあああああああ!! まだとれないぃぃぃぃぃ!!!」
またしてもダメだった。
「もう一度ぉ!!!」
「あ、ちょっと!」
声をかけるも間に合わず、チケットはまた500円を突っ込んだ
「いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
張り切って叫んでたけど、キャッチャーのアームはぬいぐるみを落としてしまう。
「うわあぁぁぁぁ!! ダメだあぁぁぁぁぁ!!」
「もういい。貸して」
我慢できなくなったアタシは、チケットをどけてUFOキャッチャーのレバーを握った。
「えええええっ!? タイシンがやるのーっ!?」
驚いているようだけど、見てな。これからもっと驚かせてやる。 - 7二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:20:15
今までのを見てると、アームのパワー的にいきなりは取れない。1回1回、徐々に穴に近づけていかなければ。
まずは1回。標的よりやや左側までアームを運ぶ。
「おおおお!! 動いた!!」
アームの片側がうまく刺し込まれ、転がす要領で動かしてくれた。
2回目。
同じように左へ転がし、標的を近づけていく。
「おおおおおお!! 近づいてる!! すごいよぉぉぉぉ!!!」
3回目。
よし。少しずつだけど、上手く近づいている。
4回目
穴までもうすぐだ。この距離なら簡単に取れるだろう。
残り1回。いよいよ最後の5回目。
「ほら、あとはアンタがやんな」
アタシはチケットに譲った。
「えっ!? アタシが取っていいのぉー!?!?」
「アンタの金でやったんだから、アンタが取りなよ。違うのやってくるから」
そう言い、アタシは台から離れ、辺りを見回す。 - 8二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:20:57
◇辺りを見回すと…!?
- 9二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:25:41
「おっ」
すぐに、目についた。3つ隣のUFOキャッチャー。そこへと足を運ぶ。
中にあったのは、ネコのぬいぐるみ。モフモフしていて、かわいらしい。
正直なところ、自分でも驚いていた。
先ほどのUFOキャッチャー、上手くいきすぎていた。
今日は、ツイてる気がする。
運が向いてる。
他のも取れるかも……
我ながら、らしくない。
チケットの前でいいところを見せれて、いい気になっていたんだと思う。
「っし。やってみるか」
試しに100円を入れ、やってみる。
……あれ?
1回目からアーム強っ……
さっきみたいに位置をずらすつもりだったが、アームは2個のぬいぐるみを抱えたままだ。
そして…… - 10二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:28:22
ガコンッ
「うそ……!?」
一発で取れた。
それも2つ。黒猫と白猫。
信じられない、本当にツイてる……
「うおおおおおおおお!!!」
うるさい声が聞こえた。
向こうも取れたみたいだ。
「なんで取れないのおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
取れてないようだ。手助けしようかと思ったが、チケットはもうボタンを押していた。
「これでラスト!! いっけえぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!」
うるっさ。大声上げながらやっても変わんないっつーの。
「ファイトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!!」
しかし、アイツの思いが届いたのか、アームはガッシリとぬいぐるみを掴み、穴まで持っていった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!? やったあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!! うわああああああああん!!」
ゲーセン中に響いてるであろう叫び声。
「静かにしろっての!!」
我慢できなくなり、アタシも声を上げてしまった。
「だっでっえぇぇぇぇぇぇぇぇ!! タイシンが手伝って、2000円かけてやっと取れたんだもぉぉぉぉぉぉん!!!」
「わかったから、一旦出るよ!! 迷惑になるから!!」 - 11二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:30:34
チケットの腕を無理やり引っ張り、一度ゲーセンの外に出た。
「よかったよぉぉぉぉぉぉぉ!! ぷちタイシンが来てくれてよかったぁぁぁぁぁあああ!!! ありがとうタイジィィィィィィィィィン!!」
「わかった。わかったから。目立つから、泣くのやめなよ」
なんとかなだめ、チケットは徐々に落ち着きを取り戻した。
「ごめんごめん! タイシンが手伝ってくれたし、ぷちタイシンがアタシの元に来てくれて……うれしくて……うぅ……」
「ちょっと! また泣きそうじゃん」
「あ、ごめん!」
チケットは涙を拭う。
「タイシンもやったんだね、UFOキャッチャー! しかも、ネコちゃん2匹!!」
アタシが取ったネコのことを話したら、目をキラキラさせて見ていた。
「黒猫と白猫……どっちもかわいいぃぃぃぃ!! タイシンすごぉぉぉぉぉぉい!!!」
うるさいヤツからでも、褒められると正直いい気分だ。
だけど、アタシはこの2匹をどうするか、心に決めていた。
「ほら、これ。あげるよ」
「えっ?」
キョトンとするチケットに、すかさず黒猫を差し出す。
「ええっ? いいの!? タイシンが取ったものでしょ!?」
「アンタが誘ってくれなきゃ、取れなかったから」
ぬいぐるみを手に取ったチケットの目がまた潤んでいる。
「泣かなくていいから」
それを聞いたチケットは目を見開き、そして笑った。
「ありがとう!! あと……」 - 12二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:33:12
- 13二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:38:29
デジリーーーーーン!!!!!
尊い…尊い…… - 14二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:47:47
チケタイ尊い……穏やかな心を持ちながら尊みで目覚めたスーパーデジタル人になりそう…
- 15二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:08:05
尊い....
あと3だけどできれば消してほしい
反射でレスしてしまったがノイズだあれは - 16二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:53:03
「お前も尊死させてやろうか?あのウマ娘のように」
案外よく見てるうるさいだけじゃないチケットすき