- 1二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:26:22
- 2二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:28:18
銃弾を何発も打たれたところ目の当たりにするのか…
- 3二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:28:51
人
心
無
? - 4二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:29:23
DR前だったらより本懐を遂げることへの覚悟決めそう
- 5二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:29:26
- 6二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:29:53
ローだけは人の心が無さ過ぎる
せめてセンゴクさんとか海兵時代の同期も追加してくれ… - 7二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:30:25
心がズタズタになろうとも一時も目を逸らさないだろうロー
- 8二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:30:30
「白い町の鉄の国境も」「短かった寿命も誰もお前を制限しない」「お前はもう自由なんだ…」
で涙腺崩壊するロー - 9二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:30:48
ヴェルゴにやられた後覚悟決めたの知るの残酷じゃない???
そして最後までローのこと想ってたの知るんですか??? - 10二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:31:15
コラさんのご遺体が入った棺桶の前で鑑賞するコラさんの過去…全部見ないと出られない仕様…
一人で泣きながら観るローが可哀想だよぉ… - 11二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:32:34
ロー本当に最期まで自分を逃がす為に死ぬの必死に堪えてたコラさん見て震えてそう
- 12二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:34:36
部屋から出てきた時ズタボロになってそう
- 13二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:35:12
せめてセンゴクさんとかクルーとか麦わら屋を…
- 14二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:35:25
「もう死にたいよォ」って泣き叫んでた所から「まだだ…もう少し生きてるぞ」までの変遷に泣くよ
- 15二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:35:29
せめてセンゴクさんも入れてやろうよ…
ローだけじゃあまりにも可哀想すぎる… - 16二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:35:37
- 17二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:36:28
- 18二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:37:42
でも、絶対に知ることが出来ないはずだったコラさんのあれやこれやを知れてベショベショに泣きながら喜んでると思う<ロー
- 19二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:37:52
えぐいて
- 20二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:38:35
せめてセンゴクさんが横にいるのはダメですか?
- 21二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:38:58
エグすぎるだろ
- 22二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:39:20
マリージョア時代の仲良かったドンキホーテ兄弟を見てローどんな気持ちになるんだろう
- 23二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:39:38
- 24二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:39:58
せめてセンゴクさんのヤギで癒やされるくらいは許して…
- 25二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:40:00
ローの隣にヴェルゴも付けよう
- 26二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:40:04
- 27二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:40:19
迫害を受けるシーンを見た段階で心折れそう
- 28二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:40:59
そんな無慈悲な…
- 29二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:41:28
迫害を受けた大恩人が全てを敵に回しても自分を助けようとしてくれたことを知るロー...
- 30二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:42:22
先生!
ベポの大きな人形を持ち込むのはありですか! - 31二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:42:56
だめです
- 32二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:45:40
みんなロー曇らせるの好きだな
- 33二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:46:08
- 34二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:49:48
何でより曇らせようとすんの……?
- 35二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:49:58
- 36二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:51:09
ありなのかよ
- 37二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 16:55:05
- 38二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 17:02:24
ローを苦しめるための部屋ですねこれは
- 39二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 17:08:52
- 40二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 17:40:51
迫害シーンよりも、海軍でのセンゴクさんや同僚たちとの楽しい日々を見せられる方が
自分と出会わなければあの人はこの日常に戻れたかもしれない…と自分を責め始めそう - 41二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 17:43:24
- 42二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 17:56:45
しばらくベポのひっつき虫してそうだな
- 43二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 18:07:34
人生の半分くらいはセンゴクさんの元でまともな生活送っていたからな
- 44二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 18:25:21
先生!!流石にロー独りぼっちはかわいそすぎるのでもう映像みたいなドジも輝くような笑顔もできなくなった"ドンキホーテ・ロシナンテ"の簡素な物言わぬ墓石を側に置いてあげちゃダメですか?
- 45二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 19:23:22
- 46二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 20:12:39
そんなことありえないと思いつつも、死の間際にコラさんが自分を助けたことを後悔していたら…と思わずサイレントしそうになる手をどんな内容であれコラさんの最後の自分への思いだ受け入れなきゃだめだともう片方の手で押さえつけるローはいそう
そして聞かされる最後の思いがあれ - 47二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 21:09:07
どこまでもローを愛してたもんね!!
- 48二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 22:05:01
貴方が笑っている。小さな貴方が。
両の手を懸命に伸ばしながら拙い足取りで駆ける。完璧に整えられた庭に障害物はないので、転んだ原因は自分の足に引っ掛けるという幼子によくあるものだった。
途端に泣き声が庭園に響く。目立った擦り傷もなく、柔らかい芝生の上での転倒なので打ち身もない。それでも子どもは泣いてしまう。自分もかつてよく見た光景だった。彼が懸命に追いかけていた奴も、どうやらそうらしい。
『なくなロシィ、どこもけがしてないえ』
『ぐす、ぐす、あにうえぇ』
『よしよし、おまえの兄上はちゃんとここにいるえ』
頭を撫でて、立ち上がるのを助け、身体中についた砂や草をはらってやる。
ごくありふれた仲の良い兄弟の光景。何かが狂っていなければ、その絆はずっと結ばれていたのだろうか。
『ドフィ、ロシィ、ここにいたのね』
優しさに溢れた声が増える。
彼にどこか似た顔立ちの、垂れ目の優しそうな女性。飛びついてきた幼い兄弟を抱きしめて細い手で穏やかに撫でる。
『えらいわドフィ。ちゃんとロシィと遊んでくれていたのね』
『兄上としてとうぜんのことをしただけだえ!』
『ははうえ、ちちうえとのおはなしはおわり?』
こてんと首を傾げた彼に、兄弟の母だという女性は少しだけその笑みを控えた。
もう一度兄弟を抱き寄せる。
『2人とも、父上から大事な話があるの。おりこうにして、しっかり聞けるかしら?』
『…?もちろんだえ』
『うん』
怪訝そうな奴の顔と、素直に頷く彼。
行きましょうと先を歩く母親について行く、手を繋いだままの兄弟。
けして離すまいと、頑なに握られたーー - 49二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 22:08:17
神SSありが……転落の前振りじゃん!!!!!!!!!!!!!!!!
- 50二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 22:11:27
ローの中の人はホーミングに対してあまり良い感情なかったんだっけ?
ローもきっとホーミングのしたことは無理だろうな… - 51>4822/09/25(日) 22:37:51
(>1じゃない上に遅筆なんだけど続きかいていってもよい?)
- 52二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 22:40:20
書いて
- 53二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 22:40:28
ぜひぜひ!続き読みたいです!
- 54二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 22:46:05
ロー曇らせが目的なのはわかるけどロシナンテの最期と嘘をついた理由はセンゴクさんにも見て欲しいから、別の個室でセンゴクさんも見てたことにはならねぇかなぁ!ローはローで見てて、センゴクさんはセンゴクさんで見てて、上映後ロビーで!ってしよ。
- 554822/09/25(日) 23:18:57
貴方が歩いている。傷だらけの身体を引きずりながら。
その小さな手に握られた袋の中にはクッキーが入っている。欠けて売れなくなったものの寄せ集めを店から貰ったものだった。
物乞いへの嫌悪に満ちた眼差しに怯えながら、懸命に何度も頭を下げた。話を聞いてくれただけその店の店主はましだった。いろんな店を周り、ときにはゴミを投げつけられ、ときには蹴り上げられながら、何とか見つけた店だった。
すでに太陽は沈みかけ、明かりのない山道は暗く不気味な姿に変わりつつある。彼がそういったものに滅法弱い子供であったということはこれまでの映像で知った。
ふと、先の道からタッタと走る音が聞こえる。獣かと怯える彼の顔は、次の瞬間安堵に変わる。
『ロシィ!こんな遅くまで何やってたんだ!』
『ご、ごめんなさい兄上…』
『おれや母上を心配させるんじゃない!…帰るぞ』
叱られうな垂れる彼の手を奴が掴む。そして、彼の手にあるものに気づいたようだった。
『ロシィ、それは何だ?』
『あ、えっと、お菓子…』
『お菓子?食べたかったのか?腐りかけとはいえ、しばらく食べ物には…』
『ううん、これは兄上の』
『おれ?』
『きょう、誕生日でしょ?』
奴は驚いた…ようだった。この頃からかけられているサングラスのせいか、それともこの環境のせいか、どうにも奴の表情は読み取りづらい。
少しだけ口を開けてしばらく固まっていたが、すぐに来た道を戻り始める。彼の手を引きながら。
『今はそれどころじゃないだろう。お前に何かあったら…』
『……うん、ごめんなさい…』
『…けど、ありがとうな、ロシィ』
不器用に投げられた感謝。それを聞いて綻ぶ彼の顔。
あの美しい庭で駆け回っていた兄弟の絆は環境が一変しても変わらなかった。今も奴の手は彼を話すまいと頑なに握られている。
ひとつ、明確に違うとしたら。 - 564822/09/25(日) 23:19:16
『母上にも食べさせてあげたいな』
『うん、父上と母上と兄上とぼくで食べようね』
『………そうだな』
奴の声が低くなる。無邪気な彼は気づかずにつないだ手を揺らしながら帰り道を歩いている。いつの間にか少しだけ彼のほうが前に出る。待ちきれないといわんばかりに。
奴と父親の間にゆっくりと入りつつある亀裂は、彼と母親にばれないように周到に隠されているようだった。
いや、父親にさえ表面上は見せていない。それがまだ家族としての情の間で揺れているが故なのか、何かしらの考えあってのことか。
奴の口から親殺しの話を聞いたとき、驚愕の後に来たのは確かな嫌悪感だった。自分にとって父とは尊敬の対象であり、安寧の象徴であり、まかり間違っても刃を向ける相手などではなかったから。
だがーー
『兄上』
『…あ、なんだロシィ』
『お誕生日おめでとう!』
彼が笑う。奴の腕を掴む。そこにはただただ純粋な家族への情愛しか見えない。
奴も笑う。彼の頭をいささか乱暴に撫でる。弟へ「は」まだ、嘘偽りない親愛を向けている。
ーこんな形で、奴と自分が似たもの同士であるという現実を、突き付けられたくなかったー - 574822/09/25(日) 23:21:01
(>>50のコメントを参考に書いた)
- 58二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:36:02
- 594822/09/26(月) 01:00:01
貴方が座っている。まるで人形のような、表情のない顔で。
海に近い邸宅だった。その造りはワノ国のものに似て、引き戸を開けることで部屋から外に出て景色を一望できるようになっていた。
今も引き戸はめいっぱいに開け放たれ、庭続きの廊下に彼は腰かけながら海のほうを見ている。
いや、長い前髪に隠されている彼の目は、今は何も映していないのかもしれない。海風にさらされた彼の前髪が揺れる。一瞬だけみえた赤い目は、子供特有の輝きなど感じられなかった。
そんな彼を遠くから見つめる大男がいる。威厳に満ちているその大きな身体を縮こませながら、機会をうかがっている。普段は世界情勢に向けられているその頭脳を、目の前の小さな子供のためだけに必死に動かしながら。
男に拾われたとき、彼は小さな体の中で暴れまわる感情のままに慟哭していた。意識を失って次に男の家で目覚めたとき、まるで感情をそぎ落とされたようになってしまっていた。
専門ではないが、父の数多の蔵書の中には精神医学の本もあったのでかじった程度には知識がある。いや、そんなものなくても、彼はこうなるには十分すぎるほど凄惨な環境にいたのは明白だった。
何より、その果てに起こってしまったことを目の前で見てしまった。
しあわせな「世界」が壊れてしまったら…壊されてしまったら、人はどうするだろうか。
幾人かは、突き落とされた先の醜い「世界」を憎み壊そうとするだろうーーー自分や、奴のように。
そしてもう幾人かは「世界」を拒絶する。彼はまさに、そういう状態だった。
最初は生に必要な食事すらままならなかった。今では何とか自分で食べるようになった。
話しかけられても反応しなかった。最近は生活に必要な最低限のやり取りはできるようになった。
やることがない時は常にベッドで眠っていた。それでも少しずつ、過ごす場所を広げていった。
すべてのことに、男の懸命な献身があった。独り身であろう男の不器用ながらも暖かい思いやりが、彼の砕かれた心を少しずつ拾い上げて治していく。
よく知っている。
不器用で、乱暴で、けれども暖かい。
打算も何もない、まっすぐな愛。
自分が彼にもらったたものは。
かつての彼がもらったものなのだと知った。 - 604822/09/26(月) 01:00:18
男がわざと足音を立てて近づく。彼もきづいているようだが、そちらを見ようとはしない。
『ロシナンテ』
彼は名前を呼ばれてようやく振り返って……口をあんぐりと開けて固まった。
『ど、どうだ!?似合うか?』
そう照れて赤く染まった頬をかきながら言った男の頭に、正確には被っている帽子に、かもめのぬいぐるみがちょこんと乗っている。
同僚に面白半分に押し付けられたのだという男の弁明は、彼に聞こえているのかはわからなかった。
子どもの反応がないことに気づいたのか男の声色がだんだんとしぼんでいく。やがて沈黙が訪れたが、それを破ったのは男ではなかった。
『ふぇへ…』
『!!』
男の目が驚愕に見開かれる。半開きになった口から洩れた声は、まぎれもなく笑い声だった。
ここにきて、いや彼らが出会ってから始めて見せる、彼の笑顔だった。
あの美しい日々のような満面の笑みとは程遠く、長く忘れていたが故の少しひきつったものであったとしても、男にはそれだけで十分だったはずだ。
『ふぇへへへへ…』
『お、おもしろいか!そうか!そうか…ッ!』
そういって男は彼を持ち上げて、あやすように豪快に回りだした。
その目に涙をためながら。 - 614822/09/26(月) 01:01:22
(>>58ありがとう。そこはこだわりポイントなので嬉しい)
- 62二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 01:11:28
あ......ああ〜................懸命にロシナンテの生を彩ってくれてるセンゴクさん......😭すごくいい......素敵なSSありがたいです......
- 634822/09/26(月) 01:24:55
ネタが浮かんだらまた書きにきます。
- 64二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 02:34:15
乙 神SSありがとう 待ってる
- 65二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 11:03:01
保守しとくら
- 66二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 11:42:14
カモメが幼少期コラさんを喜ばせる物だった解釈とても良いな…
ゲンゾウさんといい義理のお父さんの子供に対する優しくて不器用な接し方心に刺さるわ - 67二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 17:15:01
神SSまじありがたい
同時にこれを見せられてるローの情緒が本気で心配になる - 68二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 17:28:49
『ローひとりだけなら逃せるかな』
『俺はもう助からねえけど』
って声が鳥かごの景色のところで聞こえてきて、
『俺が死んでも覚えててくれよ?』
『俺は笑顔で死ぬからよ』
『だってお前、いつか俺を思い出して貰うなら』
『笑顔の方がいいもんな』
って声が小さい自分を抱き抱えてるところで流れるの辛すぎるでしょ - 69二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 17:28:53
ローからセンゴクさんへの評価爆上がりしそう
- 70二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 17:29:57
一家そろって磔になる光景あたりで
コラさんだけならともかくドフラミンゴにまで一瞬同情してしまった自分に自己嫌悪するロー - 71独白ナレ設定辻褄合わせ中4822/09/26(月) 19:08:58
「正直、このへんまで記憶が曖昧なところが多いんだよな」
懐かしい声。目の前の幼子のものではない、自分の記憶に確かに残る声。
「まだちっせぇガキだったしな。辛かったとか痛かったとか……暖かかったとか、そういう感覚は覚えてはいるんだが」
わかっている。
この声が、後ろの電伝虫から流れてくるただの音声だということは。
それなのに。
「そのくせ、一番思い出したくないところは今でも鮮明に思い出せてしまいやがる。まあ、後々の任務を考えたらその方が良かったかもしれねぇ」
今までの映像の音声はややノイズがかったものだった。まるで昔のフィルムを引っ張ってきたような。
でも、今のこの声は鮮明だ。
まるで
貴方がすぐ後ろにいるような
「しかし拾われたばっかの俺こんなに愛想なかったのか。センゴクさんには迷惑かけちまったなー」
馬鹿馬鹿しいと心では自嘲しつつも、この夢のような感覚に侵されていく自分がいる。
「これを観ているあんたがどこの誰かは知らないが、趣味悪いなぁ。俺の一生なんて面白味も何もないと思うけど」
前半には完全同意だ。強制されたこととは言え、この人の一生を暴くなんてことはしたくなかった。仕組んだ奴には相応の礼はするつもりだ。
でも。どうせ悪趣味ついでならば。
「まあ、楽しんでいってくれ」
この甘い毒を、皿まで喰っていくのを許してほしい。 - 72二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 22:10:48
- 734822/09/26(月) 23:29:10
(コラさんの海兵時代が何から何まで妄想と捏造になってしまうんだが、続いてもよいだろうか…)
- 744822/09/27(火) 00:40:52
貴方が走っている。途中転んでつけてしまった汚れも気にせずに。
「父親の職業って、男だと少なからず憧れるよな」
すれちがう男たちは皆微笑ましそうに、少しだけ心配そうに彼を目で追っている。一心不乱に走る彼の手には、一枚の紙が握られている。その顔は子どもらしい期待と興奮に満ち溢れている。やがて見えてきた厳かな扉の前で止まると、開ける前に少しだけ息を整える。
「まあつまり、最初はそういう単純な理由だったんだ」
『センゴクさん!』
『おおロシナンテ、どうしたそんなに慌てて』
『見て!』
彼が誇らしげに握っていた紙を広げる。男によく見えるように。
少しだけ皺のはいったそこに、合格の二文字が記されていた。
『海軍兵学校の試験、合格しました!』
『おお!そうかそうか!おめでとう!さすがロシナンテだな!』
『えへへ…』
「後々考えたら、結果なんて俺より先に知ってたはずだ。それでもあの人は驚いて、そして喜んでくれた」
自嘲する声とは裏腹に、目の前で彼を抱えて撫でくり回す男はたいそう嬉しそうだった。それに彼も満面の笑みで応えている。出会ったばかりの状況から、お互いずいぶん慣れ親しんだ様子だった。
ふっくらとした健康的な顔。年相応に伸びた身長。その服の下にたくさんの傷が隠れていること以外は、どこにでもいる普通の子どもだった。そうなれたのだ。目の前の男がそう育てた。
そして彼が、多くの子どものように…かつての自分のように、もう一人の父と慕うこの男の職業に憧れを抱くのも、ごくごく自然なことだった。 - 754822/09/27(火) 00:41:13
『がんばってセンゴクさんみたいなつよい海兵になります!』
『……そうか!お前ならきっと、強くて優しい海兵になれるとも』
『うん!』
一瞬の間を自分は見逃さない。背後の声もそうだったのだろう。
「センゴクさんは一度も、「自分のように」とは言わなかった」
背後の声はひどく凪いでいる。世界の残酷さを知る大人の声色だった。
「仮に俺に子どもがいたとしても、自分のようになれとは言えねえ…大人だって不完全なんだって、この年になってようやくわかった。本当の父だって、完全な存在じゃなかったからな」
大人が…いや、人間が完全な存在なのであれば、この世界に悲しみなどというものは存在しないのだろう。不完全な人間がつくった不完全な世界は、今日も悲しみを生み出し続けている。
「でもやっぱ」
ふと、背後の声が和らいだ。自分も、白い記憶に沈みそうだった意識を目の前に向ける。
男に抱き着く無邪気な子どもは、男へ信頼と尊敬のこもった眼差しを向けて笑う。
「ガキってのは、目の前の背中に憧れるもんなんだよ」
その子どもが、遠い日の誰かに重なる。
「父上のように優しく、センゴクさんのように強い男になりたかった」
「始まりは、そういう単純な理由だったんだ」
そう、単純な理由だった
父様のような立派な医者に
そして
誰かの世界を変えられる
貴方のような、強い男に - 764822/09/27(火) 00:43:01
(開き直って続けることにしました。)
- 77二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 01:10:41
支援
- 784822/09/27(火) 02:43:58
貴方が立っている。後ろからの映像なので、顔は良く見えない。
きっとひどい顔をしているのだろう。彼は底なしに優しかったから。
ひどい雨だった。傘もささずに立ち尽くす彼の身体を容赦なく叩いている。濡れた前髪が目を隠し、まだ幼さの残る顔立ちがさらに幼かった頃の彼に重なった。
そこはすでに町と呼べる代物ではなくなっていた。建物は壊しつくされ、価値あるものは奪いつくされた。物も、人も。
彼の足元には倒壊した瓦礫の下じきになったであろう人間の、手だけが見えていた。大きさからして、おそらく子どもの。
『ロシナンテ』
声をかけられて彼が振り向く。形容しがたい髪型をした女の海兵が立っていた。
暗い表情を浮かべながら、それでも彼をひたと見つめる。
『生き残った村人は全員船に乗った。私らも撤収だよ』
『……………海賊は?』
『……何せ到着がずいぶん遅れちゃったからね。村人たちの証言で進んだ方向はわかっても、ね…』
『……』
「当時は大海賊時代が始まってまだそれほど経っちゃいなかった。血の気の多い海賊が後から後から湧いてきて、その対応に海軍は追われていた。当然、すべての事柄に対処できるわけじゃなかった」
当時自分は生まれたばかりで、故郷も政府の庇護のもと偽りの繁栄の最中にあった。すべての国や町がそういった庇護を受けられるわけではなかったということはもちろん知っている。それが当時の海軍…世界政府の限界だった。
だがそれは、当事者たちには関係のないことだ。自分たちの生活がある日突然何の前触れもなく壊される。仕方がなかった、こちらはやれるだけやったというのは、被害を受けた者たちには何の慰めにもならない。それも自分はよく知っている。
『ロシナンテ。私たちだって万能じゃない。すべての民を救おうなんて、それこそ傲慢な考えだと思わない?』
彼がきっと女を睨む。精悍な顔が歪んで、真っ赤な目が揺れている。
『………割り切れって言うんですか』
吐き出すように出た言葉に、女は口の端を上げた。
『そう。だから私はーーー』 - 794822/09/27(火) 02:45:03
場面が変わる。
映像で何度も出てきた執務室だった。座って腕を組む男の前に彼が立つ。ずいぶん伸びた彼の身長は、座った男を見下ろせるまでになっていた。
男の顔は険しい。彼は静かに男の言葉を待っている。
『先の事件の報告は読んだ』
『はい』
『今までも、そしてこれからも似たようなことは世界で起こる。割り切れなければこの先辛いことはいくらでもある。海兵とはそういうものだ』
女と同じようなことを告げる声の節々に、彼への労りを感じられた。
珍しいことだった。男は海兵学校時代から今まで、彼に対して身内であるが故の甘えを許さなかった。海軍では徹底して上司と部下の関係を外れなかった。それが彼のためであることを、彼もわかっていただろう。
『お前がそれをよしとしないのであれば…』
『センゴクさん』
『む…?』
男の声が裏返る。軍務中に彼が男のことを階級をつけずに呼ぶことも、今までなかったから。
赤い目が男を見つめる。確かな決意をもって。
『俺は弱い、ちっぽけな人間です。世界の理を変えられるような、大きな力なんてない』
『……ロシナンテ』
かつて、この世界に君臨していた一族の血を引く彼が笑う。いつもの明るい、彼らしい笑顔で。
『だから、俺は強くなりたい。大きなことは為せなくても、俺にとっての大切な人を救えるように。海軍(ここ)で。貴方の元で』
「………いや~今見るとこっぱずかしいなコレ」
長く沈黙していた背後がそう呟いた。思わず笑みが漏れそうになる。
怪物でも英雄でもなかった彼の、彼らしい青い決意。
きっと彼は最後までこの思いを貫いたのだろう。たとえそれが、彼の大切な人と袂を分かつことになっても。
左胸がひどく重たくなったように感じたのは、気のせいだと思うことにした。 - 804822/09/27(火) 02:45:34
『……そうか』
男は嬉しそうだった。そこにいるのは、息子の成長を喜ぶ一人の父親だった。
『なら、私もお前のその気持ちに託してみようと思う』
『?…何をですか?』
『力、だ』
そう言って机の引き出しから取り出されたモノを見て、彼は驚愕した。
『これ…』
『少し早いが、誕生日プレゼントだ』
『え…』
『泳ぐのと、長風呂ができなくなるのが難点だがな』
にんまりと笑う男に、ポカンとしていた彼がプッと吹き出す。
海軍式の敬礼を返して、おどけるように言った。
『やだなあセンゴクさん。もともと俺、ドジでまともに泳げませんよ』 - 814822/09/27(火) 02:46:01
(次から『奴』が再登場の予定です。おやすみなさい)
- 82二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 06:44:33
素晴らしいスレ、そしてSSをありがとうございます!
- 83二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 08:15:13
朝から良いssを読んだ
期待 - 84二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 08:22:27
センゴクさんがロシナンテくんを持ち上げてクルクル回る動作、コラさんがローに(アニメで)やったのと同じと気づいて自分がされて嬉しかったことをローにもしてるのかなと思って泣いた
- 85二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 11:20:28
女の海兵ってあれか、みかんの人か
- 86二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 15:50:59
どうでもいいことだけどこのスレの番号が10と6しかないの地味に奇跡だな
- 87二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 21:38:07
あげ
- 88二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 03:26:27
神SS作者がいるスレは良質なのであげておきたい
- 894822/09/28(水) 03:41:20
貴方が叫ぶ。
その声を聴くことができるのは映像越しの自分と、彼の能力の中にいる二人しかいない。
一人は彼自身。もう一人は、皺が目立ち始めたが衰えを微塵も感じさせない男だった。
『なぜですか!』
『認められるわけないだろう!』
彼はすでに男の身長を追い越し、その肩には正義を冠するコートがかけられている。胸元の勲章は彼がこの海軍で積み上げてきた功績を表していたいた。だが、それは真っ当に海兵の仕事をこなしてきたが故のもので、今話しているような任務は彼にとっては門外漢なはずだった。
『今奴の懐に入り込んでおかないと!後手に回ると警戒されます!』
『それは諜報部の仕事だ!』
『俺以外に適役がいますか!』
男の執務机には新聞が置かれていた。一面に載った写真の顔は、自分も見知った風貌に成長してる。
奴が動き出した。闇の中で牙を研いでいた、狂った獣。父を殺し、弟と別れ、聖地から命辛々逃げ帰り、歪で手前勝手な忠誠に担ぎ上げられた神輿。
そして彼の、今や唯一血を分けたー
『……奴は自分の部下を「ファミリー」と呼んでいる。自分の家族を殺しておきながら』
『ロシナンテ…』
『つまり、身内に対する一種の「執着」は何も変わっていません。そうでない者たちへの徹底的な軽蔑と敵意も。奴と縁もゆかりもない人材を潜り込ませて一から信用を得るのは難しいでしょう。もちろんこれも賭けですが、前者よりよっぽど分のある賭けです』
気味が悪いほど冷静な声色に確かな決意をたたえて彼が告げる。そこにかつての庭園で無邪気に兄の背を追っていた幼子の面影を探すことは難しい。
実の家族を敵とみなすことがどれほど精神的に負担をかけるのかは、ドレスローザでその成れの果てを見たから知っている。本当に情が欠片もなかったのであれば、奴にとって実の弟など無意識に蹴飛ばす小石と同じく気にも留めないものだっただろう。だが奴も、13年間その手に絡まる糸をほどけずにいたのだ。自分と同様に。
そしておそらく、若い彼にも葛藤はあったのだと思う。遠い日の兄弟の記憶。伸ばしたら当然のように掴んでくれた手。
だが彼は結局この道を選べてしまった。そういう意味では、似たもの兄弟なのかもしれない。 - 904822/09/28(水) 03:41:53
『ノースの裏組織と通じている情報を掴んでいるのでしょう?』
『……お前、また隠れて能力を使いよったな』
『必要だと思ってやっています……そう、まさに今じゃないですか。俺の使いどころは』
まるで自分を道具のように言いきった彼に、男の顔が悲痛に歪む。
実の家族を殺した男のもとに息子同然の部下を送り込む男の気持ちを、彼はわかっていたのだろうか。
『あの日言ったはずです。俺にとって大切な人を守るために強くなると。自分にしかできないなら、その力が今の自分にあるのなら』
『兄を止め、人々を救うことが、俺の本懐です!!』
「正義感丸出しの熱い野郎だなって思ってるか?」
そういう背後の声は少し冷めている。自分ーー鑑賞者ーーに向けられた言葉であると気づくのに少し時間がかかった。
「まあ俺も若かったし、正義感に突き動かされたのももちろんあったけどな」
少しだけ声が震えた。笑ったようだった。
「ただ…ちょっとだけ救われた気もしたんだ。ここまで生かされた俺の命に、意味を見いだせた気がした」
違う、という言葉が喉まで出かかって、無意味だと気づいたときには音にならず息だけ吐きだされた。男はけしてそんな打算で貴方を育てたわけではない。十分すぎるほど、それを見せられた。
あの日のドレスローザで、すっかり白くなった髪の男が力強く言った言葉を反芻する。
ーー受けた愛に理由などつけるな!!!--
あの言葉はきっと、自分だけに向けられた言葉ではなかったのだと。 - 914822/09/28(水) 03:42:10
『…………わかった』
『!?』
『だが、二つ条件がある。一つ、お前を諜報部へは移動させず私直属の部下にする。任務中のやり取りはすべて私のみと行い、他の海兵にはけしてその内容をもらすな』
『……!はい!ありがとうございます!』
それは、任務中に海兵と出くわしても彼への便宜は図られないという忠告でもあった。それを知ってか知らずか、彼は男の直属になるということへの嬉しさを隠そうともしない。
『そしてもう一つ』
そして、もう一つは願いだった。父から子に向けた、願い。
『お前の任務は私に直接報告することで完全に終了となる。それを忘れるな』
『……はい!』
彼は向かう。彼の兄の元へ。
近づいている。
あの日の出会いへ。 - 924822/09/28(水) 03:46:36
(彼はちゃんとセンゴクさんに任務終了の報告を直接伝えました。たとえそれが彼本人の口から発せられた言葉じゃなくても。そういう意味では、やはり嘘をついたのは生涯で一度だけです)
(次こそ奴が直接出てくる…はず。おやすみなさい) - 93二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 14:21:54
保守しとく
センゴク・・・ - 94二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 17:57:16
支援保守
今夜も上げてくれるかな - 95二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 18:04:01
今回も神SSありがとう
ローの見ている過去の記録の中にいる、自分の知らないコラさんを知っていくにつれ段々と鮮明になっていく過去の経歴を経て、良質の曇らせとだけでは言い表せないこの…この感情……
本当に優しい信念を持った人だったんだなというやつを具体的に輪郭どって行くことで無くした物がさらに鮮明になりますねぇ!!!!!
- 96二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 18:05:09
ちなみにスレ主です
感謝を……… - 97二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 18:29:19
(すげえ良スレを見つけた…お気に入り保存…)
- 98二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 21:29:38
年齢的にベルメールさんとスモーカーは面識ありそうだよな
- 994822/09/28(水) 21:47:35
(こちらこそドストライクな設定ありがとうございます!スレ主様的にアウトな面があれば容赦なくBANしてください)
- 100二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 22:02:30
なんて素敵な神ssだ…!
ありがとう神ss作者さん - 1014822/09/29(木) 01:24:27
(今日続きを上げるのは無理そうなので短く幼少期の一コマを)
『最初はどうなるかと思ったけど、何とかなりそうで一安心だよ』
『ああ。いろいろありがとうなおつるちゃん。あと、一応お前も』
『一応とはなんだ一応とは。俺のプレゼントは役に立っただろう?』
『押し付けてきたものをプレゼントとは言わん。役に立ったのは事実だが』
『で、このまましばらく預かるのかい』
『出自が出自だからな。ちゃんと下界の諸々を教えて独り立ちができるようになるまではと考えている』
『つまりがっつり育てるってわけかい。所帯も持ったことがない男のくせに大丈夫なのかね』
『え、じゃあお前、ロシナンテの父親代わりになるのか』
『まあ。そうなるな』
『というわけで!!』
『は、はい……!』
『声がでかい。あと少し離れなガープ。怯えてるじゃないか』
『ロシナンテ、お前センゴクを何て呼ぶ?』
『ふえ?』
『………人をいきなり誘ったと思ったらあんた』
『だっておつるちゃん!あいつが父親代わりだぞ!見たいじゃないか!そう呼ばれるあいつ!』
『否定はしないがね』
『えっと、センゴクさんがぼくのちちうえ?』
『…その役目をするってだけさ。ふたりめの父親と思えばいい』
『……はい』
『で、何て呼ぶんだ?あ、候補はいろいろ考えてきたぞい!』
『…それ、あんたがそう呼ばれるセンゴクの反応を見たいリストじゃないだろうね』 - 1024822/09/29(木) 01:24:41
『あの…』
『ん?どうしたロシナンテ。腹がすいたか?』
『えっと…』
『もしかして眠いか?昼寝でもしようか』
『うぅ…』
『ど、どうした?どこか痛いのか?転んだのか』
『…………だ、だいじょうぶ…です……ッ…とうさま』
『!!!!!』
『いったーーーー!!さあどうでるセンゴク!!』
『本当にうるさいねあんた……おや、ロシナンテがこっち来るね』
『おつるさああああん!!』
『どうしたんだい?』
『センゴクさんがカチコチになっちゃったよおおおお!!』
『『!!!???』』
「あ~………うん、思い出した。あったなこんなこと」
背後の声が妙に低い。おそらくは羞恥心からだろう。
目の前には女性将校にうちわで扇がれ介抱されている男と、その周りを『ごめんなさいい』を繰り返しながら回っている幼子と、抱腹絶倒中の同盟相手の親族が映っている。
「んで、仕事に差し支えるからとおつるさんに父様呼びは封印された。ちなみにガープさんは簀巻きの刑に処された」
彼の声に合わせるように場面が切り替わる。海軍の軍艦の甲板に、簀巻きにされた男がロープで釣り上げられている。切れたら海へ真っ逆さまだろう。その簀巻きを、金色に輝く巨体が絶えず指で弾き続けている。
空気が漏れるような音が背後から聞こえた。笑いを堪えているのだとわかった。
「結局、この後一度も呼べなかったなぁ」
そう呟かれた言葉に滲んだ後悔の色に、遠い日に宝箱にしまい込んだ言葉を想って泣きそうになったのは、自分しか知らなくてよいことだ。 - 1034822/09/29(木) 01:39:12
(個人的な設定としてセンゴクさんはずっと独身です。そしていきなり一児の父に)
(一回は、一回は呼んだか呼ぼうとしたことがあったと思ってもいいじゃないか。妄想だもの。おやすみなさい) - 104二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 08:42:06
簀巻きジジイと仏のデコピン(デコじゃない)の絵面とか是非見たい光景
- 105二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 09:30:08
んんんんロシナンテくん可愛がられてたのがわかるのお辛い
こんな愛されっ子が立派になったことの嬉しさが増すたびにわかっている結末がちらついてさぁ! - 106二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 19:08:34
保守
- 107二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 21:28:07
- 1084822/09/30(金) 01:58:09
(今日は短いのも無理そうです…明日こそは!)
- 109二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 03:40:25
いつもありがとう 次回も期待してる
- 1104822/09/30(金) 08:53:06
『なあ。お前今回の任務ってロシナンテ中佐の隊となんだよな』
『あ?ああ、そうだが、それがなんだ』
『いや、あの人の噂って本当なのかなって』
『噂?』
『普段のドジからは想像てきないくらい、戦い方がおっかないって噂』
(本編の続きの前にこういう話を挟む予定です。ゲスト付き。保守がてら告知) - 111二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 18:32:48
告知だ!一体誰がゲストなんだろう……
- 112二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 23:54:37
あげ
- 1134822/10/01(土) 03:49:34
※注意※
ややグロかもしれない
地の文が今までと違う人物によるもの
銃声が一発響き渡……らなかった。
男の身体が崩れる。地面に盛大に倒れこんだはずだが、その音が響いた様子もない。
なので高台の上にいる3人は、自分たちの下で仲間の男が頭から血を流して絶命していることに気づかない。
男たちが等間隔に並んで見張りをしている。一人が隣にいる男に話しかけようとした瞬間、その人間の頭が吹っ飛んだ。派手に飛び散った赤が周りの男を染めていくが、それを伝える音は鳴らない。ゆえに、気づいて声を上げる前に残った2人も崩れ落ちる。
「全対象の沈黙を確認。いつもながらお見事です中佐」
双眼鏡を片手に海兵の一人が告げる。もう片方の手には銃口から煙を上げている銃器があった。一般的な海兵が使用している拳銃の数倍は大きいものだった。
隣にいる『中佐』と呼ばれた大男の手にも同じ型の銃器があり、同じく煙を上げていた。先ほど他の隊員から教えてもらったが、最新式の遠距離銃らしい。まだ試作品で、実践導入に向けて調整中とのことだ。課題は主に2つ。長距離で弾を跳ばすために火薬を大量に必要とするため、充填できるのは1度に2発までということ。つまり連射には向いていない。そしてもう一つは、一発に消費する火薬の多さがそのまま銃声の大きさに直結するということ。大きな音は気づかれやすいので、2発目を当てる前に敵に気づかれ身を隠されたらそこで終わりだ。
一つ目の課題はあらかじめ充填しておいた銃を持った者が隣で待機し、2発を撃ちきったら即座に交換する形で解消した。
そして二つ目の課題は… - 1144822/10/01(土) 03:52:41
「おう。じゃあ第二段階へ移行。合図があるまで待機」
「了解」
中佐は隣を見ずに銃を渡すと一瞬だけ胸に手をあてて、身をのせていた大岩から飛び降りた。
そして派手にすっころんだ。
「…いつものことですが、くれぐれもお気をつけて」
そう声をかけられた中佐は苦笑いをしながら手を振った。転んだ音も、砂を払う音も、そして駆けていく音も、一切聞こえなかった。
「さて、我々もポイントへ移動します。皆さん準備は良いですね」
その言葉に全隊員が一切乱れぬ挙手で返す。20名もいないやや少人数の小隊。その代行指揮官である目の前の男ーー階級はさっきの中佐に次ぐ大尉だーー以外に声を出すものがいない。正確には、出せるものがいない。自分も含めて。
けして発声に難のある男たちばかりを集めた隊などではない。
これがあの、先ほど正確無比な射撃で4人をヘッドショットしてみせた、ロシナンテ中佐の能力なのだ。
どこかに飛んでいた思考を戻したのは、自分の頭をまったくの無音で軽くはたいてきた年配の海兵だった。
じろりとにらんだのを察してか、音もなく笑って口を動かす。その意味はかろうじて読み取ることができた。
(しっかりついてこいよ。スモーカー)
それに答えず、手元の拳銃を改めて握りなおした。
自分も含めた幾人かの海兵が、ロシナンテ中佐の隊に補充要員として短期配属となったのはつい数日前のことだった。
3つ年上の彼は海兵学校の先輩でもあり、何度か合同訓練でみかけたことはある。聞こえてくる噂はもっぱらその優秀さと、それと同量のドジのエピソードだった。あのセンゴク大将の縁者ということで心無い言葉をかけられることもあったがそれを実力と愛嬌で黙らせていき、彼が卒業して海兵になるころにはそういった言葉は聞かなくなっていた。
驚異的なスピードで将校にまで登りつめたが、それに異を唱えるものはいなかった。彼はセンゴク大将の力になど頼らず自力でここまできた。それができる力があった。
白状すると、その実力を見ることができるということに少なくない期待を抱いてこの辞令を受けた。彼に続きたいという野望のために、盗める技術は何でも盗むつもりだった。
だが、実際に目にした彼の仕事は、印象としては海兵らしくなかった。
どちらかというとCPに近いのではないか。
夜間における、市街地への潜入攪乱作戦とはーーー - 1154822/10/01(土) 03:56:44
- 116二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 04:02:44
- 1174822/10/01(土) 08:21:00
- 118二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 12:28:38
相変わらずの良SS感謝…!
コビーとかたしぎちゃんが若くて出世してるから目立たないけどたしかにロシナンテも出世早い方だな
ナギナギって直接戦闘力に繋がる能力じゃないし、それでやっていくためには使い方の工夫はいるよね
続き期待
- 119二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 16:14:53
続き期待
あげ - 120二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 16:26:34
- 121二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 16:29:12
何度もやる病院爆破について医者キャラから怒りのお言葉がでそう
- 122二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 16:43:55
- 123二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 21:17:13
- 1244822/10/01(土) 22:38:56
>>114の続きです
※ナギナギの実の力について、原作とアニメの描写からの独自解釈あり※
※オリキャラがすごく出張る※
ロシナンテ中佐が食べた悪魔の実は、ナギナギの実という。
あらゆる音を遮断することができる能力。普段あまり彼とかかわらない海兵の持つ知識なんてそんなものだ。そして彼の能力が同僚たちとの話のタネになるときには、きまって「地味」という評価に落ち着いた。
なにせまず攻撃手段に直結しない。音を扱う能力者にはピンポイントで刺さるのだろうが、そうではない相手への対応が思い浮かばない。どちらかといえば戦闘以外の活動に重宝しそうだが、つまりは海兵という職業の者が持つ能力としてはそぐわないというのが周りの評価だった。
転属してすぐにあったミーティングののち、帰ろうとする自分を強引に引き留めて飯に誘ってくれた先輩海兵とその仲間たちは、話の中で伝えたその周囲の印象を素直に話した俺を、大笑いして撫でてくれやがった。
「いうねえスモーカー!お前大物になるぜ!」
「確かにな!俺らも最初はそう思ったし、初めて見せてもらったときなんて中佐、何て言ったと思う?」
「「「『安眠においては俺の右に出るものはいないぜ!』」」」
「「「ぎゃはははははは!!」」」
すでに酒で出来上がっている場に男たちの豪快な笑い声が響いた。周囲の客も同じようなものなので特に目立ちはしない。
この様子だと、どうやら定番の「ネタ」と化しているようだ。だが、自分たちよりも年下の上司を笑うにしては棘が感じられない。ふと、海兵時代の彼の人柄を思い出した。後輩たちにも優しい人ではあったが、それ以上に上から可愛がられる人だった。ドジなこともあってか、下に兄弟がいる者たちからは妙に兄心をくすぐられる奴だと言われていた。そういったところがこの隊員たちにも好まれているのだろう。
「けどよスモーカー。ありゃあ恐ろしい能力だぜ」
「諜報活動においては、とかですか」
「いんや、戦闘においてもだ」
一転して先輩の言葉に圧を感じる。真面目に聞けという遠回しな警告であった。
- 1254822/10/01(土) 22:39:26
「中佐の技は主に二つある。一つが今日会議の際に部屋中にかけたやつ」
「サイレント、でしたっけ」
「おう。中の音を一切外部にもらさないように展開した防音壁だ。ありゃあいいよな、俺も欲しい」
「かあちゃんに聞かれたくない話するときとかな!」
「………もう一つは?」
「それよ。もう一つの技、凪(カーム)ってんだが、あれが心底恐ろしいのさ」
先輩が酒の入ったカップを机に勢いをつけて置いた。両方とも木材なので、やや乾いた音が鳴る。
「凪の技は中佐曰く『俺の影響で出る音は全て消えるの術』だそうだ。この意味が分かるか?」
「…?自分が鳴らした音が周りに一切聞こえない、ということですか」
「不正解だ。もう一度言うぞ。俺の『影響で』出る音は全て消えるの術、だ」
持ったままのカップを何度か振る。コンコンと小気味よい音が鳴った。
「たとえばもし俺に凪がかかっていたとしたら、今カップで机をたたいた音はもちろんお前には聞こえない」
「はあ」
「で、もし俺がすんげえ怪力で、カップで机を叩いたら机ごと破壊してしまうほどだったとする。机はぼっきり割れる。その音はお前には聞こえない」
「……」
「そしたら今度は、机の上に置いてある皿が床に落ちて割れるよな。その音もお前には聞こえない」
「もしこの店の電気が消えて真っ暗で闇目が聞かなくなったら、俺らが皿が割れたと認識できるのは…その破片が自分に飛んできて刺さった時だろうな」
「……!」
だんだん、この先輩の言いたいことがおぼろげにわかってきたような気がする。
周囲の海兵たちがにやりと笑う。背中に冷たいものが触ったような感覚がした。
「別の例を挙げよう。例えば敵側に手榴弾を持つ奴がいて、爆発寸前のそれをこっちに投げてくる前に凪状態の中佐がそいつの脳天を銃でぶち抜く。銃声は聞こえない。敵も倒れるが、ピンを抜いたままの手榴弾も奴さんの手から離れて地面に落ちる。敵の倒れた音も手榴弾が落ちる音も聞こえない。もしその場にいる敵が味方から目を離していれば、その手榴弾の処理に間に合うのかってーと、まあ間に合わないな。間に合ったためしがない」
最後の言葉は存外に、それを経験したことがあるという意味がこもっていた。 - 1264822/10/01(土) 22:39:57
「音っていう『情報』をガバ判定で芋づる式にかき消されていくってことは、一瞬の判断が必要な戦場ではかなりの不利になる」
「で、あのお人は、俺らくらいの人数であれば全員にその凪をかけられる」
「……!」
「あっという間にサイレントソルジャーのできあがりってな」
「だからうちらは大砲向けてドンパチやるような海戦にはあまり徴収されない」
「裏で人知れず動かなきゃならんような、今回みたいな作戦にこそ使われるってことだ」
今回は人手が欲しくてお前らにも来てもらったがな、という言葉を締めに、先輩たちの雰囲気がようやく和らいだ。
固い表情で黙り込んだ俺を見て、さっきの笑顔に戻って笑う。パシンと背中が叩かれる。少しだけイラついたが、ちゃんと音が鳴ったという当たり前のことへの安堵のほうが大きかった。
「まあ楽しい隊だぜ。読唇術とハンドサインは完璧に身に着ける必要があるがな!」
「あと、最低限の医療技術な。主に中佐がドジった時の」
「そうそう、このまえだってなあ…」
その後は空気も元に戻り、ロシナンテ中佐のドジエピソードを肴にしての宴会となった。
明日の朝にはこの港を出て作戦の地に向かうというのに。
海賊に占拠されてしまった小さな島の、奪還作戦に。 - 1274822/10/01(土) 22:44:30
- 1284822/10/02(日) 02:29:24
貴方が潜む。新月の夜の街を音もなく。
街とはいってもそこまで大きくなく、そして人の気配に乏しかった。何せ明かりがついている建物が2つしかない。1つは街の酒場らしく、中で行われている宴の喧騒が外まで聞こえてきていた。
そしてもう1つの見た目は倉庫のようだった。そこを銃や剣を弄りながら二人の男たちが囲っている。いかにも無法者という格好で。
そのうちの一人が厠で離れることを伝え、仲間にヤジを飛ばされる。それに悪態で返した男は一つ隣の建物の影に入ってーーー掴まれた。
驚愕に見開かれる男の目。叫ぼうと懸命に口を開けるが、声は出ない。それどころか建物の壁を蹴っても音が出ず、隣の仲間たちに事態を知らせるすべがない。ならば自身でこの現状を抜け出そうとするも、掴まれた反動で武器は落としてしまって使えない。そして腕力で抜け出すには、あまりにも相手と体格や身体能力が違いすぎた。
そのままなすすべもなく胸を撃たれる。おそらく即死だろう。音もなく崩れ落ちるその身体を仲間に見つからないように倒した彼は、ただじっと待つ。仲間が帰りの遅い男の様子を見に来るまで。
案の定男を心配したのか茶化しに来たのか、もう一人が近づいてきた。影のほうに曲がろうとした男が最後に見たものは、自分に向く銃口と赤い眼だっただろう。
建物の屋根の上にいる海兵が天窓から隣の倉庫の中を覗き、彼にいくつかのハンドサインを送る。うなずいた彼は倉庫の扉の前に行き、その手でカウントダウンを始めた。0を示した瞬間、天窓が無音で割れて倉庫が一気に暗くなる。
『な、何がおこぶへぁ!!』
中にいた男が入ってきた彼の渾身の蹴りを腹に叩き込まれ倒れこんだ。そのまま手錠をかけ男を拘束すると、ライトをつけて同じく倉庫にいた数名…ぼろぼろになった数人の駐屯兵と何名かの子どもに笑顔で手を振った。
『海軍だ。もう大丈夫だからな』
『きゅ、救援か…!助かった…!』
『馬鹿!大声出したら…!』
『あ、音は絶対にもれないから大丈夫だぜ』 - 1294822/10/02(日) 02:30:09
そう言って彼は駐屯兵の背中にしがみついていた女の子…おそらく10にもみたない…に笑いかけた。
『パパとママのところに帰ろうな』
『ふ、うえええええぇぇぇぇ』
『よ~しよし、よく頑張った!』
しがみついてくる子どもをあやす彼。大きな手が子どもの頭と頬を優しくなでる。大きな身体がまるで守るように全身を包んでいる。
その力強さも暖かさも知っているこの身から、抗えない郷愁とわずかな嫉妬が滲み出てくるのを感じる。
『人質はこれで全員か』
『は、はい…』
『よし、じゃあ避難するぞ』
建物の外に武装した海兵たちが集まっていた。突入時に展開していた彼の術の範囲内に入る。
『第二分隊は救助者とともにポイントDまで後退しろ』
彼の指示に第二分隊と呼ばれた兵たちが敬礼で返した。作戦開始時から彼の凪の効果を受けているこの兵たちは声を出せない。一人を除いて。
『すでに第一分隊はポイントAにて待機中。中佐の合流を待っております』
『了解した。じゃあ頼んだぜ大尉』
『中佐もご武運を。あとドジをすることのなきように』
『わかってるって!』 - 1304822/10/02(日) 02:31:00
ふくれっ面の彼に、彼よりもはるかに年配の士官が楽しそうに笑った。それは一瞬のことで、すぐに後ろに控えていた部下たちに指示を出し始める。
そこに見知った男が見慣れない姿をして従事していたことに気づく。驚いた。奴と彼は面識があったのか。
彼は駐屯兵と子どもたち一人ひとりに触れていく。おどけた笑顔を向けながら。
『お前の影響で出る音は全て消えるの術だ!』
ーーーーーーーーーーーーーーー
『スモーカー、火ぃくれねぇ?』
『……いろいろ突っ込んでいいですか』
『おう?』
『さっき大尉からだめって言われてませんでしたか。そもそもタバコ吸ってる余裕あるんですか』
『だってよお、作戦中は吸えねえんだもん。たりねえ』
火のついていないタバコを口先で揺らしながら彼が言う。その体のいたるところに包帯が巻かれていた。いささか乱暴に巻かれているのを見ると職業柄言いたいことも出てくるが、今回の場合はやったものの気持ちもわかるのでぐっとこらえる。
彼は奴からもらったマッチでタバコに火をつけた。美味そうに吸って、ゆっくり吐き出す。その煙は夜の海に散っていった。
2人しかいない甲板でしばらく無言の時間が流れる。それを破ったのは奴からだった。
『指揮官が真っ先につっこんでいくのは百歩譲っていいとして、ドジって怪我するのはどうなんだ』
『俺はドジっ子だからな。仕方ないだろ』
『そう言って部下をかばったケガまで隠してんの、とっくにばれてますよ』
『……ああ、知ってる。まあドジったケガのほうが多いんだけどな!』 - 1314822/10/02(日) 02:31:29
けらけらと笑ってすぐにイテテと脇腹の抑える彼に、奴があきれたようにため息をもらした。
『噂通りでした』
『噂?』
『ロシナンテ中佐の戦い方はおっかないという噂です』
『え、そんな噂が流れてんの?おっかない?え、なんで?自分で言うのもおかしな話だが、俺の能力めちゃくちゃ地味だぜ?』
『ええ、俺もそう思っていました』
かつての自分もそう思っていた。二人だけの旅路のなかで彼が見せてくれた術はとても戦いに向いているようには見えず、彼自身もそういって他の能力者を羨ましがっていた。けれど、彼はその力を最大限活かす実力を昔から持っていた、いや、鍛えてきたのだと知った。その格闘能力も狙撃能力も、自分は見たことがあったから。
文字通りのサイレントキラー。本来は自分の職業の用語だが、まさに彼にふさわしい言葉な気がする。気づかれずに進行し、気づいた時にはもう遅い。どんな能力も極めれば恐ろしい力になると、はてどこで見かけた言葉だっただろうか。
『下手な能力頼みの能力者よりよっぽどおっかないですよ』
『お、おう…えっと、ありがとう…なのか?この場合は』
『んで、同じくらい危ぶなっかしいって思いました』
『だから、ドジのことは仕方な』
『そっちじゃなくて』
ーーいつかあんた、誰にも知られないところで死にそうだなってーー - 1324822/10/02(日) 02:31:40
心臓が、跳ねた。己の心臓が。はっきりと感じられた。一瞬呼吸の仕方を忘れるほど。
映像の中では沈黙が続く。船が海水を分ける音と、風の音だけが聞こえる。風に乗って二筋の煙が海へと流れていく。それには目もくれず、彼の赤い瞳がひたと隣を見すえている。
『自分が生きることよりも他人を生かすために死にそうだって、思いました』
『……そりゃあ、海兵だからな。市民を守るために必要ならそうするさ』
『そこまでに大きな葛藤があるのが人間ってもんですよ。でもあんた、そういう葛藤なさそうだ』
挑発するように奴が言う。彼の赤に剣呑な光が宿る。自分が知るよりはるかに未熟な奴はそれに気おされるも、視線はそらさない。
『いつかあんたと戦ってみたいです』
『……』
『それまでは、生きててください』
『……お互い、できるもんならな』
『そうですね。さて中佐、覚悟しといたほうがいいですよ』
『は?』
『あっちで大尉があなたを見てます』
彼の首がゆっくりと右を向いて、固まる。満面の笑みを浮かべた彼の副官が仁王立ちしている。
彼も笑う。直立不動のひきつった笑みで。
「今だから開けっぴろげに言うが、俺はこいつらといるのは結構好きだったよ。説教はまじで怖かったけどな」
甲板で正座させられた彼に降り注ぐお説教は、なぜか奴は免除されたようだった。
その様子を彼の部下たちが笑いながら見ている。愉快そうに、すこしだけ心配そうに。
まざまざと見せつけられている。彼は海軍に必要な存在だったのだろう。慕われていた。親しまれていた。世界中から憎まれていたかつての幼子は、彼の兄弟とは違う形で周りにたくさんの人がいたのだ。
でもその彼は。
「……結局、俺はこの後すぐにある任務につくことになって、この隊は解散になった。スモーカーともあれっきりだった」
彼のつぶやきをどこか遠くに聞きながらも、煙越しの奴の言葉が頭の中で流れ続ける。
彼と自分が出会うまで、運命のあの日まで、後ーーー - 1334822/10/02(日) 02:33:32
(めっちゃ長くなりました重ねてお詫びを申し上げます。次は本編に戻る予定)
(なんだかスレを乗っ取ってしまっているような気がします…スレ主様的にNGであれば言ってください…) - 134二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 03:19:27
>>127わ、実は色々ご一緒してたんですね。こちらこそありがとうございます…!
抜けてるけど決める時は決める仕事人なコラさん、スモやんとの先輩後輩っぷりも好きな描写です、人間性を見抜くのはさすが白猟のスモーカー…
- 135二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 03:37:27
スレ主です。滅茶苦茶映画を見ているような感覚で見てます。文章がとても好きです……。興味本位でトラ男の情緒をぐちゃぐちゃにする地獄のような部屋を作ってみたわけだけど、まさかこんな神SS氏が現れるとはだれが思うだろうか
- 136二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 12:10:08
神が3人もいる……
- 137二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 17:12:12
ひえ…こんなんあにまんで見てええんかのレベル…
- 138二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 19:01:59
完走までおれは保守し続けるッ!
- 139二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 01:36:06
ほしゅ
- 1404822/10/03(月) 02:35:32
(今日は上げられなさそうです)
(>>135ありがとうございます…!需要がある限り続けようと思います)
- 141二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 11:26:33
ほしゅ
- 142二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 17:19:18
このレスは削除されています
- 143二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 01:31:42
ほす
- 1444822/10/04(火) 02:18:51
貴方が海を眺めている。煙草をふかしながら。
北の海の港町、スパイダーマイルズ。自分もよく知っている町だ。治安はあまりよくなく、景観もお世辞にも良いとは言えない。彼が今眺めている景色も町側のゴミ捨て場が入り込んでいてけして楽しめるようなものではないだろう。
それでも彼は飽きもせず海を眺めている。時々煙と共に吐き出される息はひどく重い。
『おい、コラソン』
話しかけられた彼が後ろを振り向く。大柄な彼に負けず劣らず高身長の、サングラスのせいで表情を読めない男。彼の身体に僅かに力が入る。
『どうした。考え事か』
『……』
彼は手元のメモ帳に短く書き込んで奴に見せる。〈別に〉と書かれたその文字からも向けられた顔からもそっけなさを感じるが、奴は気にも留めずに彼に近づいていく。
『せめて上に何か羽織れ。風邪ひくぞ』
〈へいき〉
『フッフッフッ…強情な奴め。でもだめだ。お前が体調を崩せば俺が困る』
そう言って奴は彼の肩にコートをかける。彼が部屋に置いたままにしていた、奴と揃いのファーコートを。
『「家族」だからな。心配もするさ…気が済んだら早く寝ろ。明日も仕事だぞ』
ぽん、と彼の頭をひと撫でして、奴はその場から立ち去った。
しばらくそのままだった彼が、自分の頭を触る。そして長い溜息をついた。
手すりにもたれかかり、片手で顔を覆う。煙草を持っているほうの手だったので彼を知るものからすると不安があふれる光景だが、少なくとも映像内でそれを咎める者は誰もいない。
『……しんど』
ぽつりとつぶやかれた言葉も聞く者はいない。いや、いたとしても聞こえなかっただろう。彼は普段の挙動から考えられないほど用心深い。先ほどかけられた凪は彼の音を一切他者にもらさない。
「……正直に言うと、このへんは結構精神的に参ってたなあ。あまり眠れなかった」
まあ、だろうなとは思う。月明かりに照らされていようがなかろうが、彼の顔の青さは映像越しでもわかってしまう。 - 1454822/10/04(火) 02:19:38
綿密に練られた彼の潜入計画は呆気ないほどあっさりと成功した。
彼が考えた作戦はシャボンディ諸島へ興行をしに行くサーカス団に紛れ込むことだった。奴隷として売られてきた唖のピエロとして。北の海出身のきな臭そうな団長の男は、金がちらついた瞬間彼の計画への全面協力を約束した。もちろんそこには海軍将校としての彼の圧力もあったのだろう。
ああ、と声を出してしまうのを必死で抑えた。表向きドジが目立つピエロとしてサーカスの舞台に上がる彼は、自分もよく見知った出で立ちをしていた。今までとは違い、急に彼を近く感じるようになった。
そしてシャボンディ諸島にたどり着いた彼は、公演初日であっさりと奴の目に留まる。ほんとうにあっさりと。それは、奴の家族に対する異常な執着から起こったある種の必然だったのかもしれない。
再会までの空白期間についても奴は彼に掘り下げることはしなかった。裏では幹部連中が探りを入れたのかもしれないが、彼が用意してきた工作は完璧に奴らの目を欺いたのか最終的には問題なく「ファミリー」へと迎えられた。
彼自身も驚くほどの順調さだった。それはひとえに、彼が奴の実の弟だったからという一点につきる。奴はその肩書だけで、他の仲間からすれば今まで何をしていたのかも知れないやたら腕の立つ男を幹部という自分に近い席へ迎え入れたのだ。
だが、それはあの日の兄弟の時間を取り戻すような、そういうものではなかった。それをするにはお互いあまりにも変わりすぎた。奴だけではなく、彼自身も。
「あんたにはネタバレになるのかもしれないけど、俺はファミリーに入ってから一度もアイツを『兄上』とは呼ばなかったし、アイツも俺を『ロシナンテ』とは呼ばなかった」
唯一一度だけ呼ばれたのは再会した時だった。サーカスが終わり裏手で片づけをしていた彼は奴に腕を掴まれた。そして、兄弟は一度だけお互いを呼んだ。彼は口が動いただけだったけれど、確かに呼んだ。『ロシィ』『あにうえ』と。
まるでお互いを確かめ合うように。そして彼にとっては、 - 1464822/10/04(火) 02:19:49
「俺は、兄と呼ばないことでアイツと決別する決心をつけたかったんだ。実際ファミリーに入ってアイツの所業を見せられて、その思いはより強くなった」
そして、たぶんそれは奴にとっても過去との決別を表していたのだろう。ただ兄に守られるだけの『ロシナンテ』を奴は必要とはしなかった。いざという時に己に命を捧げられる『コラソン』としての振る舞いを弟に求めた。結局、あいつの家族観は歪んだままだった。
そのほうが彼にとっても好都合だったのだろう。だが、単純にそうだったのであれば画面越しの彼の顔はここまで青くならなかったはずだ。
「だからこそ、本当に稀に……ああいうふうに『兄上』の顔を覗かせるのは勘弁してほしかった。考えなくてもいいことを考えてしまうから」
気まぐれに伸ばされる手。昔の彼ならば疑う間もなく掴んでいたであろう、かつて確かにあったはずの温もり。
「たとえば、俺がもっと必死にすがっていれば、アイツは父上を手にかけることはなかったのかもしれないとか、ずっと一緒にいれば、一緒にセンゴクさんに拾われていれば、ここまで歪むこともなかったんじゃないかとか」
『……センゴクさんと茶を飲みてぇ……』
弱弱しくつぶやかれた言葉は誰にも拾われることなく夜の海に消えていく。またすぐに彼は仮面をかぶらなければならない。『コラソン』を演じるピエロの仮面を。
「そんな日々だったもんだから、アイツによく似た目のガキが来た時に、予感を感じていたんだろうなって今では思うよ」
ーー俺は、この嵐を世界に放つために死ぬのだろうーー - 1474822/10/04(火) 02:20:32
(次回、ロー登場の予定です。おやすみなさい)
- 148二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 02:50:39
いつも本当にありがとう、あなたのSSの曇らせ芸術度の高さに惚れ惚れします。
- 149二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 06:48:37
いつも更新されるたびに素晴らしい物語だなと思いながら読んでます。
続き楽しみにしてます、けど無理はしないでくださいー! - 150二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 11:37:56
保守
最後まで見届ける - 1514822/10/04(火) 15:41:27
(皆さんありがたいお言葉ありがとうございます!)
(『ローの知らないコラさん』がコンセプトなので、ミニオン島以外で本編描写があったところはあまり書かないつもりです。ちゃんと上映されてはいますが)
(つまり終わりが近いです。スレ主様、もう少しだけスレをお借りします。最後までがんばります!) - 152二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 22:55:54
- 153二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 01:06:17
- 1544822/10/05(水) 03:15:34
「最初の印象は『ドフィに似てるな』だった。今のじゃない。あの時のドフィだ。父に銃口を突き付けて、その引き金を引いてしまう前。実の父への憎しみと蔑みを今にも爆発させようとしている姿。その弾丸を巡り巡って世界へ放ってしまう破壊の権化」
「違いがあるとすれば」
「ドフィが引いてしまった引き金を、あいつはまだ引いていなかったこと」
「そして俺も、ただ泣きわめくだけのガキじゃなくなってたってことだ」
「あの時の兄は止められなくても、目の前のこいつは救えるんじゃないかって。そういう自分勝手な思いから、あいつを連れて病院を回りまくった。俺の過去の後悔に、あいつを巻き込んでしまって…たくさん、傷つけちまったなぁ」
ちがう。
そりゃあ、あの時は本当に辛かったけれど。
あの夜。俺のためを思って泣いてくれたから。
それ以上に、貴方に救われたから。
だから。
……言えば、何かが変わったのだろうか。
彼とは3年の月日を共有したけれど、おだやかに過ごせたのは最後の3週間だけだった。彼と真に打ち解けあってからの、たった3週間。
今でこそ無駄にいがみ合っていた日々を惜しむ気持ちが強いが、当時の自分は助からないことも考えて、残った命の中でできる限り彼と一緒にいたいという気持ちでいっぱいだった。
たぶん…子どもらしくあれた最後の日々だったと思う。
奴との電話の日から少しだけ体調も回復して、あの忌々しい島の近くに留まってその日を待っていたとき。
『祭り?』
『ああ、この島の記念日に向けたものだそうだ』
『ふーん……』
『……行ってみるか?店も出るみたいだしな!』
『えっ!?あ、でも…』 - 1554822/10/05(水) 03:16:02
幼い自分がとっさに顔を触る。この頃についてしまっていた癖のようなものだった。
それに彼の手が重なる。かがんでおだやかに撫でてくれる彼の顔からは、すっかり『コラソン』の仮面は剥がれ落ちている。
当時の自分は「なんか妙に優しくなったな」ぐらいにしか思ってなかったけれど、ずっとこの映像をみてきた今ならわかる。これが本来の彼なのだと。人好きのする、強くて優しい海兵。かつて若い彼がなりたいと語った…
『大丈夫だ。俺がついてるから』
『…うん』
痛む体を引きずって、確実に近づく死の恐怖におびえる中、当時の自分にとってその言葉がどれだけ安心をもたらすものだったか。それを彼に伝えそびれたという事実が己の心臓を冷やす。この映像を観始めてからもう数えるのも飽いた。
北の海の島らしく寒い気候だったのはかえって幸いだった。皆自然と着込んで風から守るように顔を落とすから、うっかり顔を見られる心配もない。何より、彼の大きな手がずっと自分の頭に乗っているのでそれが陰にもなってくれている。「手の置き場にちょうどいいな~」などと揶揄う彼だが、重さは全く感じなかった記憶がある。
『コラさんはさ』
『ん?』
『祭りとかよく行ってたのかよ』
『ああ、まあな。セン…親代わりの人がよく連れて行ってくれた。でかくなってからは部…友達と祭りを口実に酒飲みまくってたな』
『あんた友達いたんだ』
『失礼な!俺だって友達くらいいるわ!』
ぷんすこ!というなんだかコミカルな効果音をそのまま言って、乗っていた手が頭をくしゃくしゃと撫でつける。やめろと言いながらも画面の中の自分は楽し気に笑っている。彼も、当時の自分にとって見慣れなかったメイクをしていない素顔で笑う。途中聞こえかけた言葉には触れないようにしながら。
「あの目つきの悪かったクソガキがようやく子どもらしく笑えるようになったことは、本当にうれしかったなぁ」
それも、貴方がくれたものの一つだ。
壊れた笑みで世界を嗤っていた自分が、ようやく取り戻せたものだった。
そうやって人混みの中を歩いていく中、子どもの自分が何かを見つける。 - 1564822/10/05(水) 03:16:42
『コラさん、あれなんだ?』
『んん?』
指をさした先には出店の一つがあった。だが他のテントと違い、売っているものが食料ではない。
『あー、あれは記念コインだな』
『記念コイン?』
『特別な日を記念してつくられるもんだな。日付とかなにかしらのモチーフとかが彫られてて観光土産にはちょうどいいんだ』
『へぇ』
きらきらと光るコインが、ドフラミンゴの元で見たどんな財宝よりも魅力的に感じた。
たぶん彼もそれを感じてくれていたんだろう。
『おばちゃん、一個くれ』
『はいよ!』
『ちょ…!?』
咄嗟に彼の背後に身を隠す。台は自分の背より高かったが、覗き込まれることが怖かった。
渡されたのは小さなケースに入った記念コイン。記念日だという日付と何かの花が彫られているそれが彼の手元で金色に輝いている。
『あら坊や。お父さんと観光かい?よかったねえ』
『おと……!!!!』
『ッ……コラさん行くぞ!!』
ショックで固まる彼を強引に引っ張る。とぼとぼと歩く彼は背中を丸めてもなおでかい。
体力を使ったせいで乱れた息を整えながら、しょぼくれた大男を睨み上げる。瀕死の容態のくせに、この頃の自分は妙に元気だった。 - 1574822/10/05(水) 03:17:41
『おと…おと…』
『いつまで引きずってんだよ!』
『だって…なあロー、俺そんなに老けて見えるか?』
『……少なくとも今の顔はまじで老人みたいだな』
『ガーン!』
『自分で言うな!』
言いあいながらも、彼は手元のコイン入りのケースをいじっている。
『ほしかったのかよ』
『いや、ローにやろうと思って』
『はあ?』
『いいもんだぜ記念コインは。手元にあれば、後であれをしたなとかあんなの見たなとかいろいろ思い出せるしな。あちこちで手に入れてコレクションする奴もいるんだぜ!』
『……』
『今は俺が持っておくから、お前の新しいカバンを見繕ったらやるよ』
『………そのままパクんなよ。もうおれのだからな』
『おう!』
「ただ必死だった」
画面がぼやける。その中から聞こえる楽し気な声がひどく遠く感じられる。背後の彼の声もくぐもっている。おそらく気のせいではない。
「目の前の死にかけのガキに、どうにか『後』につながる何かを作ってやりたかった…」
そういう彼にはもう伝えられないから、伝えたい言葉が喉につまって息苦しい。もれた吐息が暗がりの室内に空しく響く。
あの時の自分にとって、それはまさしく貴方だった。
貴方との旅が、貴方と過ごす日々が、楽しいと思えたから。
貴方と一緒に世界中を旅する未来を夢見てしまえたから。
だから生きようと思えた。貴方と生きたかった。
そう、あの日々の中で少しでも伝えられていたら。
言えば、何かが変わったのだろうか。
あの日彼が持っていたコインは、どれだけ探しても見つからなかった。 - 1584822/10/05(水) 03:18:30
(次が最終回です)
- 1594822/10/05(水) 03:25:21
(またも神絵をありがとうございます…!気まぐれに見せてくる兄の顔が遠い記憶を思いおこしてしんどいコラさんです。彼がばけものであることを否定したくなってきてしまうので。それくらい幼少期に過ごした家族との思い出もコラさんには深く根付いているのだと思っています)
- 160二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 03:26:47
- 161二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 11:50:20
ほしゅー
- 162二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 21:04:30
保守
- 1634822/10/05(水) 23:38:42
貴方の26年を観てきた。
そこには見たことのない貴方がいた。
一度は世界から拒絶され世界を拒絶した貴方が、たくさんの人の愛で世界を受け入れ愛するようになった姿をみた。
兄を止める力がなかった己を悔いていた貴方が、強さを鍛え多くの人々を救い慕われている姿をみた。
心の擦り切れる日々の中で真に兄を見限ることができず、それでも己の使命を全うしようと奮闘する姿をみた。
どれも自分が見たことのない、だけどけして知らないはずがない貴方だった。
天竜人、海兵、『コラソン』、どんな立場にいたとしても、貴方の根底にあったもの。
もらった愛を懸命に返そうと、次に繋げようと、精一杯生きてきた人だった。
「この時考えていたのは」
降り注ぐ雪。満身創痍の彼と自分。島を囲うように張り巡らされた糸。叫びながら殺しあう海賊たち。
忘れることのできない、あの日の光景。
「ローひとりだけなら逃がせるかなってことだった」
いっそ朗らかささえ感じる声にどうしようもない苛立ちが募る。彼のこういうところがたまらなく大好きで、同時にひどく憎らしい。いみじくも、やはりこの兄弟は根本でよく似ている。最終的には自分を押し通す。それが世界に向けられた憎悪か他人に向けられた無償の愛かの違いはあれど、向けられた側の思いなどーー願いなど、考えずに進んでしまう。
「俺はここまでだろうなって。すんなりと受け入れちまったけど、それよりローを生かす方に思考を割きたかったからなのかもしれねぇ」
少しだけでも二人で生き残ることを考えていてほしかったという、ささやかな希望は打ち砕かれる。
『ロー…移動するぞ』
「せめて、大きくなったローがこれからの人生で少しでも、ほんの少しでも俺のことを思い出してくれることがあるのなら…」
「笑顔のほうがいいなと思うことぐらいは許してほしかったな」
『行こう!!!』
あんたそんなことを考えてこんな顔していたのか。
正直不気味すぎて強烈に印象に残っているよ。
残りすぎて……あの日から思い出さないことなんて一日たりともなかったくらいは。 - 1644822/10/06(木) 00:22:10
あの日宝箱の中にいた自分にとって見ることができなかった光景が広がっている。
息も絶え絶えに宝箱にもたれかかる貴方がファミリーに囲まれている。荒い息を整えて、目の前の男に静かに語りだす。この世にたった一人残った、もうどうすることもできないほど道を違えてしまった肉親に対して。
『M・Cー01746…』
拳銃を握るその手が震えているのは寒さからだろうか、恐怖からだろうか。それでも視線を逸らすことなく、はっきりと彼の口は動き続ける。
『「海軍本部」ロシナンテ中佐…ドンキホーテ海賊団船長ドフラミンゴ。お前がこの先生み出す止める為、潜入していた…』
『俺は「海兵」だ』
「どことなく胸がすいた気持ちになったよ。久しぶりにそう名乗ったからかなぁ、妙にしっくり来たというか」
それは彼に根付く確かな誇りだったのだろう。海兵として、育ての親と育った海軍から授かった正義に対する誇り。それを胸に今まで努力を積み重ねてきた彼を知ってしまった今、認めざるをえない。
あそこはまぎれもなく彼の帰れる場所だった。帰るべき場所だった。
ーーそれを彼は手放せてしまった。たった一人の、死にかけのガキのために。
「もう戻れないのにな。あと、ローにはずっと嘘をついちまってたな。海兵嫌いだったしなアイツ。もう今は、嫌われちまってるのかもなぁ」
天地がひっくり返ってもあり得ないことをつぶやく後ろの声に、訂正する術はない。 - 1654822/10/06(木) 00:22:56
状況は動く。まるで大いなる力が、発生したばかりの嵐を消さないように必死に風を起こすように。
だが今この場にいた嵐は弱弱しく無力な存在だった。少なくとも、授かったばかりの力を彼を助けるために使えるような知識はなかった。
つまり、力はあるのに使えなかった。かつての己に理不尽な怒りを抱く。能天気に彼の嘘をーー実の兄弟だから殺されはしないという嘘を信じたということにも。
『なぜ俺が実の家族を二度も殺さなきゃならないんだ!!!』
奴も拳銃を向ける。サングラスでは隠し切れない苦悶の表情で。
お互いに凶器を向けあう兄弟の姿に、一瞬あの日の庭園の情景が浮かぶ。悲劇など知りもしなかった兄弟の手は、けして離すまいと頑なに握られていた。
もう二度と指し伸ばすことも、握り返すこともないーー
『お前に俺は撃てねぇよ』
そうだろう。彼は撃てなかった。凶悪な犯罪者をその正確な狙撃で音もなく葬ったときでさえ、迷いのないその行為の裏にいつも噛みしめられていた唇があることを知っている。
この4年、気まぐれに見せられてきた『兄』の顔が、彼の指先を鈍らせたことも。
だが、奴は一つ大きな勘違いをしている。
彼は撃てなかったが、お前は撃てた。だがそれは、巡り巡ってお前の心臓を撃ち抜く弾丸でもあったのだと。
そう、すべては、
『もう放っといてやれ』
あの日のために
『あいつは自由だ!!!』
ああ、でも
引けるなら俺、この日に引きたかったよ - 1664822/10/06(木) 00:54:56
貴方が倒れている。冷たい雪の上に、たった独りで。
己の手が震える。それをもう片方の手で押さえつける。
彼の最期は、持ち去られる宝箱から見たぼんやりとしたものだった。こんなに鮮明に見れることはないと思っていた。今でも時々夢に見る。記憶の底に沈めて鍵をかけてしまいたいのに、それが己の身を突き動かす燃料にもなりえる、忌々しい記憶。
けれど、今感じている恐怖はそれに対してではない。
後ろの声を聞くことが、怖い。
凪をかければ、後ろにいるのだろう電伝虫から出る音を遮断できる。彼の声を…死の間際に思っていたことを聞かずにすむ。
それは彼と死に別れて13年、ずっと見て見ぬふりをしてきた恐怖だった。
貴方は 俺を生かしたことを後悔したのだろうか
彼にも「家族」がいて、仲間がいて、信念があって、使命があって、夢があった。少なくとも、こんなところで独り死にゆくべき人ではなかった。
映像越しに見せられた彼の26年が重くのしかかってくる。その続きを託されるべきだったものは、もっと他にーー
「最後まで、生きることに必死だった」
心臓が跳ねる。
「ローがあいつらから離れて、自由になるまで」
顔をあげる。ぼたりと手の甲に、滴がとんだ。
「いや、あいつはもう自由になったんだ」
白い町の鉄の国境も、みじかかった寿命も
誰も、何も、あいつを縛ることはないように
自由に、生きられるように
「それだけを、願ってた」 - 1674822/10/06(木) 01:19:08
正面の映像はすでに一面の白のみになった。
とぼけた彼の声だけが、画面以外に光源のない室内に響き渡る。
「えーっと、ご視聴ありがとうございました?」
「享年26歳……まあ、ガキの頃に天涯孤独に餓死する可能性もあったわけだし、十分生きたとは思うぜ」
少し間があった。
「そうだな、心残りはいっぱいあるぜ。もう一度くらい、センゴクさんや部下の海兵どもに会いたかったとか」
死に際に残した心残りにしては、彼の声はとても穏やかだった。
「あとドフィのこともな…結局ドレスローザに対する機密書類は軍に渡せないままだったし」
「あと」
「でかくなったローを、見たかったなぁ」 - 1684822/10/06(木) 01:19:31
「医者になるんだろうか。それとも、海を旅する冒険家とかかな。意外と歴史とかには興味深々なやつだったしな。さすがに海兵…はないだろうけど、万が一にも望んだのであれば、センゴクさんがオペオペから何か察してくれはするかな。あと、これは本当にあってほしくないが、ドフィの元に戻って海賊を続けているってのも、可能性は…」
コラさん。
俺、海賊になったよ。
医者も兼用してるけど、歴史だって気にはなってる。
ただ、世界がひっくり返ってもアイツの元には戻らないから安心してほしい。
「イケメンになんのかなぁ。栄養失調気味でちびだったから、いっぱい食べてでかくなるといいな」
イケメンかはしらないが、でかくはなったよ。
あんたには追い付けなかったけど。
「13で死ぬつもりでいたみたいだが、どうせならよぼよぼのじーさんになるまで長生きしてほしいよな!」
今は26だ。
…あんたと、並んでしまった。
まあ、しばらく死ぬつもりはない。
「ま!どうなってもいいんだ俺は!あいつが今も世界で元気に、自由に、生きてくれているなら!」
その願いなら。
もう、叶っているよ。
「俺の人生、それだけで価値はあったんだってな!」
映像の白が広がっていく。まるで光が勢いを増すように。もともと滲んで碌に見えていなかった視界が白む。
「なああんた。もし、もしできるなら、ローに会ったら伝えてくれねぇか?」
薄れていく意識の中で、その言葉は最後まではっきりと聞こえていた。 - 1694822/10/06(木) 01:19:56
ーーお前の自由に生きろ!愛してるぜ!!ーー
- 170スレ主22/10/06(木) 01:48:37
- 1714822/10/06(木) 02:02:09
目が覚めた。ベッドから体を起こして暗闇に目を慣らす。
窓の外に水平線が見える。空はまだ暗いが、うっすらと明るい光がもれ始めていた。
コン、とノック音が部屋に響いた。
「キャプテン。もう起きてます?」
「……ああ」
「よかった。じゃあ、待ってますんで」
扉越しの船員にそう言われ、のろのろとベッドを出た。いつもよりも大分早い目覚めだったが、コレを見越して就寝時間も艦全体で早めたので疲労感といったものはない。
身体はどこも調子は悪くない。それなのに、
鏡越しの自分は涙を流していた。
「………夢」
そう割り切るには、あまりにも鮮明で、悪趣味で、そして
ひどく幸せな夢だった。
人は、聴覚から得た記憶から順に消えていくらしい。知識として知っているそれを、否定したくで必死だった時もあった。彼のことはその笑顔も、撫でてくれた手も、その声すらも、何もかも忘れたくなかったのに。
背中越しの彼の声は、夢の中にしてはあまりにも鮮明に昔の記憶を修復していった。見せられた彼の生涯もあまりにもリアルで、ただの夢だと断じれないものだった。もしかしたら知らぬ間に能力者の攻撃を受けたのかもしれない。
それでもーー
顔を洗い、首を振った。もし一種の精神攻撃を仕掛けられたならば、その相手とはそのうち会敵することになるだろう。そのときにたっぷり礼をしてやればいい。二重の意味で、だ。
今はそれよりもやることがある。
待たせているクルーたちにどやされないように、さっさと手元にあったシャツを着る。
彼の笑顔を刻み込んだ刺青が名残惜しそうに隠れた。 - 1724822/10/06(木) 02:03:56
甲板に出るとクルー全員がそこにいた。コレはそういうものなので特に驚きも叱りもしない。
空はだいぶ明るくなり、日の出はもうすぐのようだった。
「あ!来た来たキャプテン!」
朝方とは思えないほどテンションの高いクルーたちにすでにやってるのかと心配になる。
だが各々が持っているコップを見ると、まだ口はつけられていないようだった。
はい!とべポから渡されたそれを受け取る。
「……よく飽きねぇなお前らも、毎年毎年」
「え~だって一年に一回の特別な日だもん!」
「最近ゾウとかワノ国とかでいろいろごたついてたんでぶっちゃけ今年は無理かな、とか思ってましたけど、無事に過ごせてよかったっす」
はいこっちこっち、と甲板の中央に連れていかれる。
それを囲んだクルーたちを一瞥して、シャチがこほん、ともっともらしく咳ばらいをした。
「じゃあ改めて…」
ーーキャプテン、お誕生日おめでとう~!!ーー
カァン!とコップのぶつかる音とともに、大合唱が静かな海へ轟いた。
周りに煽られながらコップの中の酒を仰ぐ。もうずいぶん慣れてしまった味が染みわたっていく。
「今日は朝から飲めるぞー!」
「おい」
「まあまあ今日は無礼講ってことで」
「あ、そういえば、麦わらたち全員からキャプテンにプレゼント預かってますよ」
「いつの間に…!!!」
「ワノ国出国の前にこっそりと」
どうかお楽しみに!と笑われ思わず悪態をつくが、トニー屋のプレゼントには少々期待してしまう自分もいる。 - 1734822/10/06(木) 02:04:18
ヒートアップしそうな輪の中から抜けて、甲板の手すりにもたれかかる。
二つ持っていたコップを一つそこにおいて、自分のコップで小突いた。
コラさん
俺はまた一つ歳をとった。
……あんたを追い抜いてしまった。
けれど、あんたから貰った命と心と。
あんたから繋いでもらった26年を心臓(ハート)に宿して。
この、悪くはないと思える世界を、今日も自由に生きている。
太陽が昇り始める。クルーたちからわっと歓声が上がった。
その光は。
かつて彼が自分にくれた、記念コインの光によく似ていた気がした。 - 1744822/10/06(木) 02:05:00
ーーー完ーーー
- 1754822/10/06(木) 02:08:28
- 176二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 02:23:11
- 177二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 02:46:52
- 178二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 03:35:32
毎日更新楽しみにしてました遂に完結で感無量です
神SS投稿主はもちろんみんなで色々語れる場を用意してくださったスレ主や素敵なイラストでシーンを再現してくへた絵師さんにも本当に感謝の気持ちでいっぱいです
海軍時代の活躍エピソードが本当に格好よくて特にワクワクしながら読んでいました!昨日今日の更新ではコラさんからのローへの愛情がたっぷり描写されててボロボロ泣いてしまいたした
ローの誕生日に合わせての完結も美しくて天才…
改めて完結とロー誕おめでとうございます!! - 179二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 06:58:04
- 180二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 10:57:00
一気見しました
最高でした…それしか言えないです… - 181ちょい復活の4822/10/06(木) 14:27:25
- 182二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 22:58:37
完結おめでとうー
- 183もうちょっとだけ続く4822/10/06(木) 23:40:54
それは、彼が男から授かった数多の教えの中の一つだった。
『ロシナンテ、明日の晩飯はお前の好きなものを食べよう』
『え?でも明日はセンゴクさんのお誕生日だよ?』
『だからこそだ。誕生日というのはな、自分がその日を迎えられたことを周りに感謝する日でもある』
『かんしゃ…』
『そうだ。ここまで生きてこれたのは、たくさんの人からたくさんのものをもらってきた証だからな』
『わっ!』
幼い彼を抱え上げて、男はニカッと笑う。
『私のもとにきてくれてありがとうロシナンテ』
『…っ……うんっ!』
およそ二ヶ月後。
彼は彼の誕生日に、あふれる羞恥に必死に抗いながら、男に一枚の手紙を渡した。
〈ぼくをたすけてくれて、いっしょにいてくれて、ありがとう〉
そうつたない字で書かれた手紙を見た男は、彼を抱えてくるくる回りながら、大粒の涙を流していた。
それから彼は自分の誕生日に絶えず男に手紙を書き続けた。
それは彼が彼の兄の元へ潜入しているときもかかさず、しかし怪しまれないようにポストカードに一言二言だけ書き加えたものをファミリーの目を盗んで送り続けた。
〈敬愛する貴方へ 感謝をこめて〉
彼の少し雑な文字から紡ぎだされた言葉は、男にどう届いたのだろうか。
それが途絶えた日に、男は何を思ったのだろうか。 - 184もうちょっとだけ続く4822/10/06(木) 23:41:20
まだ朝日が顔を出してまもない早朝にセンゴクは目を覚ました。彼にとってはいつも通りの目覚めだ。数十年の付き合いなのに、未だに少しの余所余所しさを感じる己の部屋をぐるりと見渡す。
現役時代は多忙の中にあり、この自宅に帰ることもままならない日々だった。家の管理は使用人たちに任せ、時には年単位で帰らないこともあった。
それが単に多忙であるという理由だけではなかったことに、センゴクも薄々自覚はしていた。
上着を羽織って部屋を出る。早朝という時間帯とそろそろ夏の面影がなくなる季節ということもあり、肌寒さを感じたからだった。縁側の床は素足には冷たく、何か履いてくるべきだったかと少々後悔した。
彼以外誰もいない縁側を歩いていく。ここは昔、とある幼子のお気に入りの場所だった。天気の良い日は部屋から座布団を持ってきて、それを枕に昼寝をしているのを何度も見かけた。
もう慣れてしまったはずの喪失感が、冷たい風と共にセンゴクの身体を苛んだ。だが、かつてほどの悲壮感は感じない。その喪失の先に遺っていたものを知ることができたから。 - 185もうちょっとだけ続く4822/10/06(木) 23:41:59
玄関を出てポストを開ける。毎日朝一でニュース・クーが新聞を入れていってくれているし、時々それ以外の配達物も入っている。海軍からの仕事に関する書簡にはげんなりすることもあったが、大目付という気楽な立場になってからはそれはめったになくなった。
だから彼はいつものように油断した状態でポストを開けてーーーそして、目を見開いた。
新聞と共に、一枚の絵ハガキが入っている。
思わず新聞を放り投げてその絵ハガキを見入る。表面には宛先であるセンゴクの住所は書いていても、差出人の欄は白紙だった。書き忘れたのか、あるいは…書くことができない立場からのものか。
現役時代、海軍の中枢にいたセンゴクのもとに届く配達物には厳重な検閲がされていた。大目付となった今でも当時ほど厳しくはなくとも、危険物かどうかのチェックくらいはされているはずだ。
恐る恐る、その絵ハガキをめくる。
そこには、水平線からの日の出の瞬間を収めた写真と共に、手書きでそっと、文が添えられていた。
〈敬愛するあの人の父へ 感謝をこめて〉
崩れ落ちそうになる身体をなんとか支えて、その絵ハガキをそっと指でなぞる。
どこか癖があったあの子のものとは違い、丁寧な文字が並んでいる。書き手の几帳面な性格を反映しているかのように。
その右下にさらに小さな文字で、別の文が書き込まれていた。
〈体を大事にしろ〉
ぶっきら棒な言い回しに、思わず笑ってしまった。嗚咽の混じった不格好な笑いになってしまったが。
差出人はどこまで知っているのだろう。あの情熱の国で話した時の様子だと、あの子は最後まで己のことを隠し通すつもりだったようなので、このことは話してはいないはずだ。
だがどういう経緯であれ、届いた言葉の暖かさはセンゴクの胸をついた。
『とうさま』
一回だけ、あの子にそう呼ばれたことがある。
きっかけは腐れ縁が焚きつけたことだった。呼ばれなれていなかった自分は間抜けな反応をしてしまい、その後全力で元凶に当たりつくした記憶がある。
その様をみて申し訳なくなってしまったのか、あの子はそれから二度と自分をそう呼ばなかった。
ほっとした半面少し名残惜しく、訃報を聞いた後に何度も何度も反芻した数多の後悔の中の一つになった。
それが、このたった一枚の紙によってあっさりと溶けていくのを、センゴクは感じていた。 - 186もうちょっとだけ続く4822/10/06(木) 23:42:12
目の前の海が、横から指す朝日を反射してキラキラと輝いている
この海の続く先に
あの子がつないだ命が
今日も自由に生きているのだろう - 187もうちょっとだけ続いた4822/10/06(木) 23:43:37
(センゴクさんにもちょっとだけ幸せをあげたかったんです)
(今度こそ終わり…なはず。おやすみなさい) - 188二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:45:50
語り継がれるSSありがとうございます
- 189スレ主22/10/06(木) 23:55:43
最後まで本当に美しい話をありがとうございました。
これは語り継がれるべき。 - 190二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:56:11
上映会を経て手紙送ったのかロー…エピローグまで美しいありがとうございます
- 191二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 00:48:10
いい…いいスレとSSだった…語り継がれる…
- 192二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 00:58:47
後日談ありがとう……!!!泣いた
- 193二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 01:24:32
あとはしめやかに埋めるのみかな
- 194二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 06:40:28
うめ
いいもの読ませてもらった - 195二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 10:07:04
(海軍の部下とわちゃわちゃするコラさんとかあの日のクッキー(今度は割れてないちゃんとしたやつ)をコラさんにプレゼントするドフィとか書きたいネタまだあるんで、唐突にどこかに出没するかもしれません。その時は皆さんよろしくお願いします。48)
- 196二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 13:52:05
また会えるのを楽しみにしています
- 197二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 13:52:43
梅
- 198二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 13:56:27
うめ
素晴らしいスレだった - 199二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 14:44:44
ありがとう>>1と48と絵師さん
- 200二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 14:54:13
200ならコラさんの立派な慰霊碑が立つ