【胸糞閲覧注意SS】ウタ「今日は木登り勝負よ!」 立て直し

  • 1二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:15:55

    ごめんなさい。エロいの抜いて考えたらまとまらず落ちました。もういいかなって思ったけど、とりあえず完成はさせておきたいので立てます。

    ※ルフィが狂気に染まります
    ※メインキャラはありませんが、死の場面があります


    その勝負を受けて立つと、シャンクスの「遅くなるなよ」を聞き流しながら酒場を出て、山にある知る限りでは一番高い木へと向かった。
    どちらが早く登頂できるかを競う、単純なものである。
    ルフィは負けたくないという必死さに夢中になりすぎて、太めの枝に頭をぶつけてしまい一度落ちてしまった。
    そのロスのせいで、ウタに負けてしまう。
    強がった言い訳を垂れ、ウタがバカにするように笑うのはいつもの光景だ。
    しばらく、木からの景色を眺めながら何気ない話をする。
    ウタの話はルフィからすれば海の向こうの話なので目を輝かせて聞き、海賊になる意欲を増やさせていた。

    ウタ「って!もうこんな時間じゃない!」

    話に夢中になりすぎて、気づけば太陽が沈み始めていた。
    夕焼けはどこにいても、眩しいものである。
    急いで木を下り、すぐに酒場へ戻らなければ。
    いつもの勝負で、いつものように今日も終わる、はずだった。

  • 2二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:16:19

    ガッ!!という音と共に、ルフィの背中に鈍痛が走った。
    まだ小さな身体ではその威力は大きく感じられ、自分よりも前を走っていたウタの背中にぶつかってしまう。

    ウタ「きゃ!」

    2人して山道にて転倒してしまう。
    自分にぶつかってきて、転び、乗りかかっているルフィに怒ろうとしたが、後方にある光景が目に入り、血の気が引いた顔で固まってしまう。
    そこには山賊が二人いた。こちらを見下すように、ひきつった嫌な笑い顔をしている。

    ルフィ「いってェ!なんだ!?なんだ!?」

    何が起こったか解らず、混乱から周りをキョロキョロと見渡そうとしていたルフィを山賊の一人が、彼の頭を掴み、地面に押し付ける。
    口に土が入ったのか、地面に顔を付けながら咳き込むルフィだったが、それ以上はどうすることもできず。
    もう一人の山賊が、押さえつけられているルフィの腹部に蹴りを入れる。
    「ゲホっ!」という、体中の空気を吐かされたような声をあげ、そこから何度も蹴りを入れていく。
    ウタも何が起こったのか理解に追いつくのに時間がかかっていた。
    だが、ルフィの痛々しい声がした途端に我に返り、ルフィを押さえつけて蹴りを入れる山賊をどうやったて無意味なのに止めようとする。
    力ではどうしようもない。不意打ちもできない。
    山賊の服を掴んで、「やめて!」と神でもないのにお願いすることしかできない。

    ウタ「やめて!お願い!ルフィが!お願いだから!お願い……します……!!」

  • 3二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:16:32

    こんな子供の子供の言葉など聞いてくれるはずもなく、ルフィはもはや抵抗もせずに蹴られるがままの姿となり、山賊は飽きたのか蹴るのをやめた時にはぐったりと動かなくなってしまっていた。

    ウタ「ルフィ!?ルフィ!!」

    彼の名前を呼ぶが反応がない。もしかしたら、死んでいるのかもしれないという不安が脳裏に浮かび、震える。
    だが、ウタの声だけは聞こえたかどうかは定かではないが、ぴくりと小さな手が動いたのを見逃さなかった。
    彼に駆け寄ろうとしたその時、山賊が背後からウタを捕え、口を手で押さえる。

    「よぉ、お嬢ちゃんも……この前はよくも!」

    もう一人の山賊がウタを殴ろうとしたが、「商品だぞ」という言葉に舌打ちをしながら拳を収める。

    「このクソガキはどうする?バラしてワニの餌にしとくか?」

    「放っといても、どうせ死にそうだがな。何かの糧となったほうが報われるだろ。優しいなぁ、俺らは」

    2人の下品な笑い声が、耳障りに聞こえる。
    ウタはもがこうとするも力では叶わず、溢れんばかりの涙を流しながら横たわるルフィの方を見つめるだけ。

  • 4二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:16:44

    「この小娘、いくらで売れると思う?」

    「さぁな。こういった子供を奴隷にしたり慰者にしたがるやつらなんてごまんといるからな。買い手数多だろ。多い分、この容姿だったら競り合いになるだろうから、しばらくは贅沢できる金にはなるぞ」

    「奴隷」という言葉は、海賊の船に乗っていれば様々な場所で耳にしてしまう言葉だ。
    その言葉を聞くと、まともな感性があるならば誰だってあまりいい顔をしない。
    そして、まだ歳場いかないながらもこれからの未来に恐怖が湧いてくる。
    口から手が離された。ここで叫ぶことをしたかったが、声すら出ない。
    しゃっくり混じりで泣いていると、突如として盗賊らはウタを地面へと押し付ける。
    片方がウタの両手を掴み、もう片方がスカートを上げようと掴む。

    「お頭もいねーし、商品が売り出される前にやれるなんてそうそうねーからな!」

    「おいおい、使い過ぎて商品になる前に壊すなよ」

  • 5二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:16:57

    スカートを上げてきたので、「いや!」と拒絶に足をばたつかせる。
    その足が山賊の顔を蹴ってしまい、さらに火に油をそそぐだけだった。
    怒りに任せてか腹部と顔を計二回殴られ、それ以上は暴れることも、何の反応も起こさなくなってしまった。
    笑い声だけが聞こえる。閉ざしたいぐらいに汚らしい笑い声。
    それをごまかす為か、脳内でただ知っている歌の歌詞を流し始めた。

    ルフィ「……う」

    体中が痛い。苦しいし、息もしにくい。
    だらしなく涙と鼻汁と鼻血を流しながらも、ルフィは震えながら起き上がった。
    ウタのことが心配だった。その姿を探せば、山賊らに地面に組み伏せられてるウタの姿が目に入った。
    一瞬、頭の中が何故か真っ暗になるも、おぼつかない足取りで歩みだす。
    痛みとか、苦しさなんかは知らない。ここで、このままだとウタを失いそうで、それの方がもっと嫌だった。
    山ではそこらにうんざりするほど落ちている木の棒を拾い、迫る。
    偶然か何か、木の棒は折れた際なのか、斜めに折られていて先端に少し尖りを持っていた。

    「おい、手足を折っておけ!またさっきみたいに暴れられるわけにはいかんからな!商品は顔が命……!」

    ここで、ウタのスカートを上げようとしていた山賊の後頭部に何かが当たった。
    当てられたのは小石で、それに気を取られ振り向いた次の瞬間に右目に木の棒が突き刺される。

    「ぎゃああああああああああああ!?」

    「こ!このガキ!」

    片目をやられ、あまりの出来事に横転した山賊の顔を何度も何度も、力の限り滅多刺しにする。

    ルフィ「消えろ!!消えろ!!くたばれーーーーーーー!!!!お前みたいなやつ!!!お前みたいな!!!!」

  • 6二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:17:18

    山賊が一切動かなくなったとこで手が止まり、返り血を浴びた姿で、「次はお前だ」と言わんばかりの眼(まなこ)は、荒い息遣いを威嚇に変え、標的を睨む。
    その威圧は子供のものではない。別の何か。
    残った山賊は悲鳴をあげながら、逃げ出した。

    逃げた山賊の背を無視し、絶命した方の山賊へと視線を移した。
    ウタが怯えている。それに気づき歩み寄りたかったが、視界がぼやけてきた。
    何か大きな力が、自分の意思とは関係なく出てきたせいもある。
    さんざん蹴られたダメージもあり、急に電池が切れたかのように倒れてしまう。
    最後に聞こえたのは、自分の名を呼ぶウタの声。

    ウタ「ルフィ!ルフィ!お願い!死なないで!死なな……いで……!」

    意識を失った男の子に泣きすがる。おぶって山を下りたいが、恐怖がまだ染み付いてそんな気力も絞り出せない。
    ただルフィのそばにいて、泣いて、願うことしかできずにいた。
    どれぐらいの時間が経っただろうか。いや、そこまで時間は経過していないが、状況が状況なので長く感じるたものの、遠くから自分とルフィの名前を呼ぶ声がいくつか聞こえてきた。

    ウタ「シャンクス……!!シャンクスーーーー!!ここよーーーーー!!シャンクスーーーーー!!!」

  • 7二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:17:39

    ウタの叫びはただ事ではないことが察せられた。何かあったのか?と急ぎ、声のした方角へと向かう。
    シャンクス達は帰りが遅くなっていた二人を見つけたが、その光景に驚愕した。
    泣きじゃくった顔のウタと、血濡れながら気を失ってるルフィに、血だまりで動かなくなっている山賊の死体。
    ここで何が起こったのか、まず整理するのは難しい。

    シャンクス「お前たち!怪我は!?」

    ウタ「あたしは……なんともない……なんともないけどルフィが!」

    シャンクス「わかった!わかった……!」

    ウタ自身もなんともないはずがない。顔の殴られた痣ができている。
    落ち着かせる為に優しく抱きしめてやった。怖い思いをしたのだろう、少女は震えていた。
    ウタをマキノに、ルフィを同じぐらいの子がいるヤソップに任せ、シャンクスと他のクルーらは現場の処理にかかる。
    山賊の死体の顔を見た。何かで滅多刺しにされて、もはや顔の原型やパーツなど見る影もない。
    これを、ルフィがやったのかとこれまで数多の修羅場を抜けてきたつもりだったが身震いする。

    シャンクス「起こったことをあの子達から聞き出すのは……難しいだろうな……」

  • 8二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:17:49

    あっ!これ俺がみたかった奴だ!戻ってきてくれてありがとう!!

  • 9二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:18:32

    戻ったのは夜も更けてきた時刻だった。
    ウタはまだ起きており、酒場のカウンター席で出された飲み物にも手を付けず、空虚に座っていた。
    その様子を、マキノはただ心配そうに見つめる。

    シャンクス「ウタ……」

    ウタ「……シャン……クス」

    少女の隣の席に座り、黙ったまま頭を優しく撫でてやる。
    マキノに治療してもらったのだろう、頬には薬品がしみ込まされたガーゼが貼られていた。

    シャンクス「マキノさん、ルフィの方は?」

    マキノ「命に別状はないみたいですけど……酷く何度も何度も痛めつけられてたみたいで……」

    それを聞き、あの時の光景を思い出してしまったのかウタが泣き出す。
    マキノは、配慮できなかった自分に自責の念を含みながらも、少女を抱きしめてあげることしかできない。

    シャンクス「ウタ……言える範囲で構わない、あそこで何があったのかを教えて欲しい」

    マキノはウタの状況に今は訊くべきではあいと咎めようとしたが、少女は「大丈夫だよ」と涙を袖で拭き、口を開いた。
    自分から誘った木登り勝負の後、山賊に襲われたこと。ルフィがされたこと、自分がされたこと。そして、ルフィが山賊したこと。

    ウタ「そしてね、シャンクス……ルフィは、ルフィは……逃げる山賊を追いかけずに倒れてる方のを見てたのだけど……笑ってたの」

  • 10二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:18:34

    お帰りなさい!待ってました!

  • 11二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:18:44

    それを聞き、シャンクスは戦慄する。あんなまだ子供が?死体を目にして笑うものなのか?
    それはまるで、平和を知らない少年兵の末路である。
    ウタに話してくれたことの礼を言い、今夜はもう遅いので寝るようにした。
    元気のない返事で、少女は酒場から出て行ったが様々な不安しか、店には残らず。

    シャンクス「はぁ……」

    頭を抱えながら、深く溜め息を溢してしまった。
    あんなことになったのは自分の責任だろう。そう責めるしか、己自身を慰める手段がない。
    謝るにも、誰に謝ればいい?

  • 12二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:19:28

    あの日から、身近だった人たちが「勝手」に変わっただけで、ルフィはいつも通りの様子だった。
    ウタはしばらく、距離を置いてしまいそうになっていたが、少年の誘いと挑発のについ根負けしてしまい、前と変わらず今日も遊びに出かける。
    変わらないルフィに村人らは、いつもの空気を徐々に取り戻していく。
    その光景にほっとしていたマキノだったが、シャンクスだけは時折首を傾げる姿があった。

    それでも時間は過ぎるもので、再びに航海に出て、フーシャ村にまた戻る。
    しかし、次に赤髪海賊団が訪れた時、そこにウタの姿が無く。
    それをシャンクスに問い詰めるも、教えてくれることはなかった。
    塞ぎ込み、ベックマンに諭され、シャンクスとウタの問題だからと割り切ることにした。
    そしてゴムゴムの実を食してしまい、左腕を犠牲に救ってもらい、エースとサボとも出会う。
    やんちゃで好奇心旺盛、天真爛漫で寂しがり屋の泣き虫、そう過ごしてきた。いや、その部分はちゃんとあるので否定されるものではに。だが、表向きではそうしていた。ルフィは、ずっと……

    ルフィ「………」

    17の歳となり、明日には海賊として旗揚げをして海に出る。
    ずっと夢に見てきたことだ、嬉しさは嘘ではない。
    出航前夜、海を眺めたく海岸沿いで焚火をしていた。その手には古びた新聞があり、記事を何度も読み返す。
    この新聞は、幼いころから何度も何度も繰り返し読み返してきたものだ。
    その新聞を焚火の火に触れさせ、燃やし始める。

    ルフィ「シャンクス…やっぱり嘘はいけねーよな」

  • 13二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:19:54

    灰となっていく新聞の記事には、赤髪海賊団によるエレジアでの一件が載っていた。
    シャンクスはこんなことをする海賊ではないことを信じている。だからこそ、新聞の時期と内容からウタが関係してるのを察してしまっていたのだ。
    ここで起こったこと、そして死んでいるのか生きてるのか判らないウタの消息。
    何年かかってもいい、いずれはここに行かなければならない。

    ルフィ「寝るか………明日はいよいよ、旗揚げだしな」

    火の後始末を行う傍らには、数人の死体が無惨な形で転がっていた。
    もはや、人の形とは言えない。木の棒を折るように、へし折られたりしている。
    わずかな衣服情報から、山賊であったものだろう。

  • 14二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:20:31

    この男、モンキー・D・ルフィという者は、海賊としての旗揚げから破竹の勢いで名を上げていく。
    中にはルーキーの勢いという理由で馬鹿にする者らもいるが、経済新聞は彼に目を離せなかった。

    東の海では手始めに金棒のアルビダをぶっ飛ばしたことが皮きりだった。果てへとぶっ飛ばされた船長を失い、残された手下達は血の海にされてしまう。

    続いて権力に溺れたモーガンを打ちのめし、コビーと別れ、海賊狩りであるゾロを仲間に加える。そこには特に自分が嫌悪するやつらはいなかった。

    続く道化のバギーとの交戦でも、船長をぶっ飛ばして残りの船員らを始末しようとしたが逃げられてしまう。静かな舌打ちだけを残して。

    シロップ村で、遺産を狙うキャプテンクロの頭をあとでこっそりと踏み砕き、ウソップを仲間に入れ、ゴーイングメリー号をご厚意でいただく。

    海上レストラン、バラティエではドン・クリークを何度も打ち付けて瀕死に追い込む。クリーク海賊団の船員を数名が地獄送りとなったが、ギンが船長と残った手下たちを連れて逃走。そこでサンジが仲間に加入。

    ココヤシ村を支配するアーロンをゴムゴムの斧で首をへし折るように狙い、死にはしなかったが目覚めることはないかもしれないぐらいに重傷を負わせる。
    ねずみ大佐の身体は人気のないところでこっそりへし折った。
    そして、この村を発つ時にナミが正式に仲間となる。

    一行はローグタウンへ、そしてグランドラインへと突入し、あとは我々の知る次第でる。

  • 15二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:20:46

    ウォータセブンでロビンを奪還した一行に、海軍の英雄であるガープが訪ねてきたある日のことだった。
    壊した壁を修理する祖父が、父と会ったことに触れる。

    ルフィ「あぁ、会った。船に戻る前におれを助けてくれたことへ礼を言いに行ったら父だと言ってた」

    ガープ「そうか!おぬしら親子水入らずで話をしたか!ぶわはっはっはっはっは!息子もずっと会わずにいた己の息子と会話出来てさぞ嬉しかったじゃろ!なんでこの前、連絡した時に言ってくれなかったのじゃろ?」

    ルフィ「さぁな、おれも祖父ちゃんが苦手だし、父ちゃんも苦手意識から変に根深く話すつもりはなかったんじゃないのか?」

    ガープ「そうかの?ぶわっはっはっはっはっは!・・・・うぅ・・・!」

    ルフィ「泣いちゃった」

    で、結局その父が誰なのかもどかしくなってきたので、ナミがルフィの耳を引っ張りながら問う。

    ルフィ「おれの父ちゃんはモンキー・D・ドラゴン。革命家をしてるとか言ってたな」

    ルフィの口から出た父の名。その場にいた皆が固まり、次にオーバーだと思えるリアクションが響いた。
    似た者孫と祖父は笑い合う。しかし、ガープはルフィが隠す狂気を察しており、警戒は抜けていない。
    東の海での活躍にて、死亡した賞金首やその手下どもの話は耳に入っている。
    さいわい、グランドラインに入ってからは敵対した者の中で死亡報告はまだ入っていないが。

  • 16二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:21:04

    それから、麦わら海賊団は順調に名を轟かせて順調にいく・・・はずだった。
    シャボンディ諸島の一件、それにより行方をくらますこととなる。
    次に公に姿を現したのはマリンフォード頂上決戦にて。
    そこでモンキー・D・ルフィは兄のエースを失い、そこからこれまで決して汚職した海兵以外に手をあげることはなかったはずだが、構いなしに殺戮を行ってしまう。
    もはや、己だか海兵のだか判らないほどの血に塗れながら。
    そして、途中から悲痛の叫びは笑いへと変色していく。
    その見てられない光景に、ようやく終止符が打たれた。
    幾多のも海兵を笑いながら葬った男の行方は、またくらまされることとなる。
    最後に赤犬によって重傷を負わされていたようだが、あれでは生きていまいと誰もが思うであろう。
    ニュースクーは、今日も情報を求む。

  • 17二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:21:20

    二年、実に二年の月日を要した。麦わら海賊団の復活の報せが世界を駆け巡った。
    それから新聞は、麦わらの一味らのおかげで記事の筆が進む。世界は騒然とする事態も多くなってきていた。
    様々な情勢や陰謀が世界に渦巻く中、ある日の夜にルフィはゾロと二人で呑んでいた時のことである。

    ルフィ「なぁ、ゾロ。お前には先に伝えておかなきゃならねーことがあんだ」

    ゾロ「なんだ?改まいやがって。今さら、隠し事でも暴露するのか?」

    ルフィ「そういったとこかな・・・・」

    傾かせようとしていた酒瓶の持つゾロ手が止まった。
    その秘め事を言おうとしていたルフィの方は構いなしに酒瓶の酒を口から体内へと流していく。

    ルフィ「今日の昼、ウソップとチョッパーらが聴いていたあの曲だが・・・」

    ゾロ「ああ・・・世界の歌姫が歌う曲か。実はお前も大ファンだって口か?」

    ルフィ「大ファンか・・・・」

    空となった酒瓶を優しく置き、二本目をあける。

    ルフィ「あの声は、多少なり声変りがあったのかもしれないけど、おれの知ってる女の声だった。何度も耳にした声、纏わりついて離すことができなくなってしまっていた声・・・・」

    「どういうことだ?」と訊きたくはあったが、ゾロはそのままルフィの話を黙って聞いてやっている。

    ルフィ「分かり易く言えば、おれの幼馴染とでも言うべき女の子の声だ。そいつはおれの恩人の娘だったんだが、エレジアへの航海を最後に行方がわからなくなっていたんだ」

    ゾロ「エレジアって、歌姫のライブ会場じゃねーか」

    ルフィ「そうだ・・・あいつらが一生の願いでエレジアに行きたいと言ってきた。賛成はしたが、本心はおれが一番に向かうべきだと言いたい。行こうじゃねーんだ。行かなきゃならねーんだ。エレジアに」

  • 18二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:21:41

    エレジアへ向かうは、ライブ当日ではない。ルフィからの提案で訪れたのは開催の半月も前。
    ライブ会場の建設が進まれている途中であり、どうしてこのタイミングで訪れる事となったのか、ゾロ以外は疑問に思ったままである。
    いい加減、理由を訊きたかったのに、ルフィの姿は船内のどこにもいなかった。
    いつもの、島に着いての冒険心だろうと、そう片付けられる。

    ウタ(あ、潮風・・・・)

    海の眺められる丘にて、すっかり女の子から女性へと成長したウタは想いふけていた。
    それは罪悪感か、覚悟の改めか。「新世界」への目的の為、エレジアの会場は利用する場となる。

    ウタ「あたしが望んだ、約束の新世界・・・今の夢とは、かけ離れているのかな?」

    その自問自答は、今日で何回目だろうか。
    何度もあるのは「嫌だ」と「やろう」の繰り返し。
    頭が痛い、苦しい、その考えが過ぎる度にかつて共に目指す夢を語り合った男の子の存在を思い出す。
    あのままの姿で時間が止まっている。自分もそうである。

    ウタ「嫌だ・・・嫌だ!でもやる!やりたい!そうよやるのよ!」

    髪を搔きむしり、無理矢理な言葉で自分を鼓舞する。そうするしかない。
    身体が震える。息が止まればいいと思えるぐらいに過呼吸寸前の状態が苦しくてどうしようもない。
    泣くこともできない。後ろへ歩いてしまいそうだから。
    だが、その場に足から崩れた彼女の耳に声が届く。

    ルフィ「それは、やるじゃなくて、やらなきゃいけないじゃないのか?」

  • 19二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:21:56

    その声の主、見違えるほどに逞しくなったが、当時の面影もしっかり残るルフィであった。
    ウタは驚きが顔と髪の動きで隠せず、思わずさっきまでの情緒は無視で彼に抱き着いてしまう。
    ルフィもまた、優しく抱き返した。

    ウタ「ルフィ!ルフィ・・・・!」

    その悲しそうな声は何を意味するのか。せっかく再会できたのに彼をもウタワールドに閉じ込めてしまうことになることへの罪悪感か、それともまたすぐに別れることになってしまうことへの寂しさか。

    ルフィ「何を、苦しんでいた・・・?」

    やはり、つい先ほどまでの葛藤を見られてはそれについて訊いてくる。
    ウタはゆっくりと、彼の腕から距離を置いた。

    ウタ「なんでもない・・・」

    ルフィ「なんでもないならそれでいいが、どう見たってライブを行う歌姫様のするべき情緒じゃなかっただろ。緊張、不安、プレッシャー・・・それらからくるものとは微塵も感じられなかった。何を、考えている?企んでるとも言うべきか?お前優しいから、その企みに時折罪悪感に押されでもしたか?」

    もちろん、ルフィは彼女の計画など知らない。
    だが、これまで陰謀やらそういったものを見てきたので、それと似たものを感じていた。
    だから、探るように彼女に問う。

  • 20二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:47:25

    ウタ「その帽子....シャンクスの......」

    ルフィと再会した一心が、彼の被る帽子がシャンクスの物だと気づかせるのを遅らせてしまう。
    一瞬、話をはぐらかされたか?と疑ったが、彼女の表情からそういった誤魔化しを感じられない。
    どうやら、彼女の口から目的を聞くより先に帽子のことを片付けた方がよさそうだ。

    ルフィ「あぁ....いずれシャンクスに返すつもりさ。一人前の海賊になってな」

    それを聞き、彼女は目を伏せる。それは、悲しんでいるのか、喜んでいるのか、どちらとも捉れる感情であった。

    ウタ「あんた、海賊をやってるのね。シャンクスと同じで」

    ルフィ「夢だったからな.....」

    ウタ「そう.....だよね......夢.......」

    痛むかのように胸を押さえる。とてもとても、苦しい。
    「夢」という単語がのしかかる。
    求めたものとは違う。それは自身が一番解っている。
    夢が自責となって終わりへと向かっていく彼女にとって、夢を追う最中の者はあまりにも眩しい。憎いぐらいに。

  • 21二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 00:30:40

    ウタ「夢.....夢.....!夢!夢!!夢、夢、夢って!!!」

    瞳孔を縮小させ、怒りの湧く顔でルフィの胸倉を摘み引っ張った。
    イラつきがある。羨ましさもある。喜ばしさもあるが、その剣幕が訴えるは自分がこうならざるをえなかった原因である大海賊時代。

    ウタ「あんたとシャンクスもやっている海賊のせいで!夢すら見れない人たちがいる!」

    違う。本当はこんなことを、せっかく会えたルフィにぶつけたいのではない。
    自分のファンの声を、代弁してその期待に応えようとする自分を見せたいのではない。
    怒り?違う。覚悟をするはずだったのに、どこかで海賊であるも彼を巻き込みたくない己の甘さと、それが本心でもあり、逃げ出したいという本音に嫌気と恐怖がある。

    ルフィ「情勢も苦しみも、海賊のせいは否定しない。お前がおれをどういった海賊と捉えるかは知るまで疑って構わない。だけどな、シャンクスを、それまでそこにいた自分を否定するな。他とは違う海賊だとお前自身が近くで見てきたはずだ......」

    ウタ「うるさい!うるさいうるさいうるさーーーーーーい!」

    どうして、どうしてこうも話しかけてくるの?まるで、自分が自分に囁いているようである。

    ルフィ「お前がやっているのは、整理と本心が言えずに八つ当たりだな。本心が言えずに苦しむやつらは何度も見てきたからさ......」

  • 22二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 02:16:15

    ウタ「わかっているような口ぶりで!」

    ルフィ「わからねーよ.....だけど、せっかく会えたのに苦しそうだったから」

    待ち望んだ。ルフィ自身は、今日この日を。
    捨てられていた新聞で知ったシャンクスのエレジアにおける一件。
    時期からして、ちょうどウタがいなくなった航海時。
    手掛かりはその一件のみ。だからずっといつか訪れる事を望んでいた。
    そんな時に耳に入ったのが、プリンセスウタのエレジアで開催されるライブである。
    ルフィの中で、点と点が繋がり始めたかのように感じていた。

    ウタ「苦しい?苦しい....それはあんたもでしょ?あの日からずっと...!」

    ついの堪えきれなくなった。己の口から切り出したそれに、自分が嫌になり涙が溢れる。こんな情けない涙は見せたくなかったのに。
    嫌でも蘇るは幼少時に人を殺めてしまった際のルフィの顔。
    あれ以降、ルフィは何の変わった様子もなく接してくれた。しかしそれは間違いで本当は接しようと必死だったのだ。
    本当は、ルフィが陰でこっそりと独り、あの日のことを苦しんで悩んで泣いていたことは知っている。
    そういうウタも、あの時の場面が今日この日まで何度も夢に蘇り、何度もあの笑った幼い男の子の顔を思い出し、自責に囚われてしまうのだ。
    あれは、自分のせいであんなことにと。

    ルフィ「お前の言いたいことは解る。だが、今はおれの苦しさを思い出すよりお前の苦しんでる姿は見たくねぇ」

  • 23二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 07:29:18

  • 24二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 10:56:30

    ウタ「いいのよ.....この苦しみからはもうすぐ解放されるから」

    その場に座り込む。頭を掻きむしり、笑い、その手はやがて草と土を握る。
    ルフィは、それに問う素振りはなく、今の様子をただ静観するだけ。

    ウタ「完成させるの、あたしの新時代を」

    ルフィ「お前が葛藤するようなのが、か?」

    イラつく。イラつくイラつく。何も知らにくせに、見透かしてますよーな態度でいられるのが。
    再会は嬉しくてたまらなかったのに、こんなことなら現在の前に現れないでほしかった。
    変わってしまった。いや、それは自分のせいかとまた自責に呑まれそうになる。

    ウタ「その葛藤も捨てられる!あたしも!世界の苦しむみんなも!あたしの世界で思い通りに!あたしの力で導いてあげるの!」

    ついに、彼女の目的が解ってきた。
    理屈やどういった能力でといったものかはまだ手探りと憶測でしかないが、この世界を破壊的に書き換えるのとは似たようで違うようだ。

    ウタ「ルフィ.....海賊なんてさ......やめて一緒に行こうよ新世界に。弱い人はみーんな、海賊に奪われちゃうんだから。ううん.....海賊だけじゃない。弱者は奪われるしかない立場なの。みんが怯えてるの。みんなが助けてって言うの」

    ルフィ「奪われた者らが.....全て弱者だと思うな!!!!」

  • 25二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 15:54:35

オススメ

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