【閲覧注意】炎の国

  • 1スレー主ー22/09/26(月) 18:12:14

     目が覚めて最初に感じたのは肌をピリピリと刺激する灼炎の風と、鼻をつんざく鉄の匂いであった。



    「ウタちゃん、次はこれを歌って!」

    「その次はこれを!!」ガヤガヤ

     私は今人生の最高点にいるのかもしれない。
     周りを取り囲む人達は老若男女様々で、皆が楽しそうに笑っている。
     この人達の持って来てくれる曲はどれも素晴らしいものだらけで、ついうっかりここに住んでみたいと思ってしまう程だ。しかし、私は知っている。私のステージはここではない、最高のステージはもう手に入れている。

     人混みの隙間を縫うように、一人の男と目があった。私が手を振ると、その男は外向けにバチッと決めていた顔をすぐ綻ばせた。
     私はこの顔の方が好きだ。船長としての凛々しい顔も大好きだが、娘である私にしか見せてくれないこの顔は私のもっと大切なお宝なのだ。

    「ねぇ、シャンクスはどの曲が1番良かった?」

     人混みをかき分け、シャンクスに問いかける。

    「どれも素晴らしかった………は駄目か?」

    「駄目!!どれか決めて!」プクー

    「分かってる分かってる、そう膨れるな…………そうだな……俺としては、今歌ってたのが明るくて宴にも良さそうと思ったぞ。ルフィも好きそうだ。」

    「そうね!!じゃあ私のプレイリストに入れちゃおっと!!!」

    「おう、また聞かせてくれ!!」

     私の居場所はやっぱりここしかない。赤髪海賊団は私の大切な家族だ。

  • 2スレー主ー22/09/26(月) 18:13:17

    閲覧注意を付けての立て直しです。
    元スレはまだコピーペースト作業が終わってないので消すのはまだ少々後になります

  • 3スレー主ー22/09/26(月) 18:13:59

    「皆楽しそうだ。ウタもシャンクスも、来てくれて本当にありがとう」

    「ゴードンさん!!」

    今話しかけてきたこの人はこのエレジアの国王のゴードン。見た目はちょっと怖いけど……中身は呆れ返る程の善人だ。海賊相手にもこうやって真摯に歓迎してくれる。

    「ウタも本当に楽しそうでね、感謝をするのはこっちだゴードンさん」

    「音楽を愛するものとして当然の事をしたまでだ。それにしても、君たちはまったく素晴らしい親子だ。私にも息子と娘がいるが、小さい頃は過保護だ過保護だとうっとおしがられてしまってね…」

    「あんたらしいよゴードンさん、そうだ、うちの船員達もあんたに礼をしたがっててね、着いて来てくれませんか?」

    「あぁぜひ行くとも!!じゃあウタ君は彼らの相手を引き続き頼めないだろうか、どうやら思ってた以上に君のファンは多いそうでね」

    「もちろん!!私はいつか歌で世界を変えるの。こんなの朝飯前よ!!」

    「……いい夢だ、君ならきっと叶えれるだろう。私ももちろん応援しよう」

  • 4スレー主ー22/09/26(月) 18:15:05

     シャンクスとゴードンが行ってしまったのを尻目に、私は私のファンの元へと歩きだす。明日にはここを出て行くのだから、今のうちに楽しまないと損だもの!!まだ見ぬ曲に期待で胸を膨らませながら、急いで人混みへと戻っていく。



    「ふぅ……あぁ〜〜〜流石に疲れた。皆気を使って休ませてくれて、本当に感謝ねー」

     あれから何曲歌ったか、皆は少し休みなさいと言って離れていった。朝飯前と言っておきながら、これじゃぁ赤髪海賊団の音楽家の名折れと思いつつも、疲れたのは事実なので、今はご厚意にあやかって休む事にした。
     シャンクスとゴードン、赤髪海賊団の皆はまだ話しをしている。恐らくは私の教育などについてなのだろう。ボンク・パンチとゴードンが楽しそうに会話している。

    「まったく親バカなんだから…」

     そう呟くが、嬉しいのは事実。やっぱり私は愛されてるのだと実感できたのだから、嬉しくない訳がな
    い。

    (まぁ過保護すぎてもそれこそゴードンさんが言った通り良くないのだろうけど)

     そう思いつつ、私は休憩を終えて再び歌い始めようと振り返った。


     私の目に、ソファに置かれた古びた楽譜が飛び込んで来た。

  • 5スレー主ー22/09/26(月) 18:16:34

     誰が置いて行ったのだろう。私はその楽譜に興味を引かれ、それを手に取った。

    「いい曲………」

     それは私の音楽家としての心を大きく刺激した。

    (それにしても、古い楽譜……トット…ムジカ?)

     私は次に歌う曲をこれに決めた。私は楽譜を手に、マイクに向き合う。そして、大きく息を吸った。

     一瞬ゴードンと目があった。その目はサングラス越しでも感じられる程に動揺しているように見えた。


             私は声を発した




    瞬間、私の意識は薄れていった。かすかな意識の中、とどろくような轟音と悲鳴が聞こえた気がした。









     目が覚めて最初に感じたのは肌をピリピリと刺激する灼炎の風と、鼻をつんざく鉄の匂いであった。

  • 6スレー主ー22/09/26(月) 18:20:31

    「ここ……どこ…………ゴホッ!!!?」

     口から息を吸い込むとその熱さで喉がおかしくなりそうだ。それでも何とか身体を起こし、辺りを見渡す。

    「ここ……エレジア……なの…?」

     辺り一面に広がる炎と瓦礫の山はもはやここがどとであるかを一切物語っていない。かろうじて散らばる楽譜の燃えカスや溶けてバターのようになった金管楽器が、ここが先程までいたエレジアであると告げていた。

     「何で……こんな………………っ!!!?……オエッ」

     目が合ってしまった。瓦礫と炎で胸より下がぐちゃぐちゃになっている女性の死体だ。その表情はウタにとっては初めてのもので、これまでにあった筈の喜び、悲しみ、怒り、愛、何もかもが見つからない抜け殻、人の形をしただけの粗悪な人形に見えた。
     海賊である自覚はあったと思っていた。海賊であるという覚悟は決まっていると思っていた。しかし、たった一瞬で打ち砕かれた。私のこれまではただの海賊ごっこであったのだ。


    「…………ウッ………オエッ…………逃げ…なきゃ……」

     軋む身体に鞭を打って、全速力でこの場から抜け出す。
     運が良かった。幸いここは街の外れであり、火の手も弱く、すぐに開けた場所に出れた事に感謝する。

     「………………何これ……………」

     しかし、そこはどこかおかしかった。火事では考えられないようなクレーターや切り傷、砂が高温で溶けて出来たガラスの粒、多くを占めている瓦礫の山。戦争でも起きたかのような破壊の跡が散らばっていた。

  • 7スレー主ー22/09/26(月) 18:21:24

     薄気味悪さを感じつつも、他に逃げられそうな場所もない。ひとまず身体を休めるためその場に座り込んだ。

     炎の激しい方をよく見ると、やはりあちらこちらにひどい破壊の跡がある。

    「……シャンクス………皆……」

     ふと呟いてしまった。
     そうだ、私は皆を探さなくてはいけない。しかしどこにいるのか見当もつかない、けど1つ分かることがある。それは赤髪海賊団は必ず私を助けてくれるという事。今助けに来てくれてないのは、それだけ他に手を費やせねばならない事態があるということ、もしくは余程離れた場所にいるかだ。
     ならば、私にできることは安全な場所で皆を待つこと。確かここからまっすぐ進めば港に出るはず。なら今すぐ向かうべきだろうと、足を動かせる。


     しかし、彼女は見つけてしまった。瓦礫のそばや中に、確かに人が混ざっているのを。

    「…………」

     おそらくは彼女にとって何の関係もない一般市民。しかし、だからといってこのまま去ってしまうのはあんまりだ。何がエレジアで起きたのかは分からないが、せめて私だけでも弔ってあげようとウタは思った。


     そこは酷く血の池の広がっていた。まばらに、それでいて大量に。吐きそうになるのを必死にこらえて近づく最中、彼女は一つの事に気づいた。

    「これ……海軍の服?」

     船から遠目に何度か見たことのあるその服を見て、彼女はより一層この状況を訝しんだ。

    「なんで海軍が?……!!そうだ、もしかしてシャンクス達を捕まえに?……………けど、じゃあこれはシャンクス達が……?」

    (分からない……いや、シャンクス達がこんなことする訳がない!!…………なら、海軍はここで起きた何かを止めるために来たのかもしれない………)

     そこまで考えてふと目に入った。遠く、瓦礫のそばに落ちているもの。私はすぐその正体に気づいた。

  • 8二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 18:22:23

    このレスは削除されています

  • 9スレー主ー22/09/26(月) 18:23:49

    「………これって………………








    ……………麦わら………帽…子………………?」

  • 10スレー主ー22/09/26(月) 18:24:58

     それを手に取り、見る。全体的に少しよれていて、てっぺんの所は少しだけ薄くなっている。よく見ると軽く焦げてしまっているつばに、特徴的な赤いまき。  
     私がなんども見て来た麦わら帽子に非常に酷似したそれの違っている点といえば、つばとその他所々が、ほのかに鉄っぽい匂いを放つ赤黒い液体に染められているという点だけだろう。

     血の気が引いた。
     唇が急激に乾燥したような感覚に陥る。
     手から抜け落ちた麦わら帽子が「ピチャン」と軽快な音をたてた。
     気づいたら目からは涙が溢れていた。

    「…………………ちがっ!!」

     「違う、そんな訳がない」とでも言いたかったのだろうか、紡ごうとした言葉は途切れてしまった。

     彼女は気づいてしまった、この血溜まりの発生源、石造りの民家の崩れた壁の中でひっそりと横たわっている人物に。

     赤い髪、それに負けない程真っ赤に染まったシャツ、黒いマント、そして一際血の染みた右肩、近くに落ちている剣を握った千切れた右腕



    「………………………シャン……クス………?」

     それは、彼女の1番尊敬した誰よりも格好良い船長、そして、1番彼女の事を愛してくれた愛する父親

        赤髪のシャンクスの死体であった。

  • 11スレー主ー22/09/26(月) 21:25:12

    「シャンクス………?………何で寝てるの?……そんなとこで寝てたら…風邪……引いちゃうよ?………」

     私は必死に呼びかけた。2つの瞳はシャンクスの事を捉えているようで、目の前の情景は何も見えてはいなかった。

     その手に触れる。私を守って来た逞しい手、頭を撫でてくれた優しい手。しかし、そこに体温は感じられなかった。さっき見た女の人と同じ、まるで生きてなか「違う!!!シャンクスは生きてる!!!私には分かる!!!!」

     涙は滝のように、隠そうとした心が抑えきれずに外にこぼれ落ちるように、ただひたすらに流れていた。

    「死んじゃだめ!!!シャンクスはこんなとこ「違う!!!死んでないんかいない、これはただ寝ているだけ、そうに決まっている!!)

    私は必死に自分の心を騙そうとする。けど段々とそれも出来なくなっていく。次第に私の心は風化し始め、私の思い出は燃えていく写真のようにだんだんと見えなくなっていく。


    「………そうだ!!ホンゴウさんを呼ぼう!!!!ホンゴウさんなら絶対に治してくれる!待っててねシャンクス、すぐ呼んで来るから!!!!!」

    「……うん、分かった!!任せてね!!!」

    (口が動いた、私に『任せる』って言ってくれた!!急いで行かないと!!!)

     その目と耳は、大好きな人達を感じるためのそれは、今虚構を捉えていた。

  • 12二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 21:27:04

    ふんふん

  • 13二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 21:28:31

    ひょえ

  • 14二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 21:28:46

    可哀想で可愛い

  • 15スレー主ー22/09/26(月) 21:29:43

     あれからどれだけ探したか、赤髪海賊団の皆は全員寝てしまっていた。どれだけ疲れてたのか、いくら呼び掛けても一人も起きなかった。





          ……………違うよ。

    (……あぁ、皆………


















            ……死んだんだ」

  • 16二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 21:30:19

    これがちょびっと……???(二度目)

  • 17スレー主ー22/09/26(月) 21:37:55

    >>16

    でも、よくよく考えたら本編の方が酷いって感じてしまってね。

    あれはおかしい

  • 18二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 22:40:01

    すみません
    まだ本編の方がマシなような気がします

  • 19スレー主ーねぇ心ま~で珀鉛病〜22/09/26(月) 23:43:31

     あれからどれだけ時間がたったのだろうか、数分か数秒かそれとも数時間か、その一切が分からない程に私の心は錆びついてしまった。
     涙は枯れ果て、乾燥しきった口からはか細いか細い息だけが鳴っている。


    「………行かなきゃ……私だけでも……せめて……」

     思い出はもう何度も繰り返した。楽しかった思い出も悲しかった思い出も、今となってはもう二度と手に入れない日常を何回も何回も繰り返した。

    「…………」

    吹っ切れてなんかいない。吹っ切りきれる筈がない。けど、無理やりにでもそうしないといけなかった。心が失くなってしまう前に、今すぐに全てを断ち切る事が必要だった。
     結果、残ったのは歪みきった理性でコーティングされた灰になってしまった自我で、それを歪に支える「夢」と「怒り」を脚として、醜く歩いてるのが私だ。
     シャンクスや皆と、そしてルフィに誓った「夢」、そしてこの悲劇を起こした誰とも知らない宛先への灼熱の「怒り」、それが私を醜くも生かしている。

     港へ向かう。
     その手に一振りの剣と真っ赤な麦わら帽子を携え、一歩一歩ゆっくりと歩いてゆく。港に着けば、海軍がいるかもしれない。それに助けてもらう事しか出来ない自分の弱さが憎い。

    「………海賊なのに海軍に助けてもらうだなんて……」

     言えるわけがない、自分が海賊だなんて。言ったら何をされるかなんて分からない。楽しかった記憶、私の大切な居場所である『赤髪海賊団の音楽家』を偽る、そうしないといけない。より一層自分が消えていくような気持ちに、心も身体も押し潰されそうになる。

  • 20二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 23:44:21

    >>19

    最悪すぎる粉雪の替え歌やめろ

  • 21スレー主ーねぇ心ま~で珀鉛病〜22/09/27(火) 00:00:03

     海軍の船が見えてきた。私は気力を振り絞って駆け足で近づき、なけなしの声で精一杯助けを求めた。

     誰も反応しない。私の声は確かに届く距離である。不審に思い船内に上って中を見渡す。そこには、まるで先程の広場のような景色が広がっていた。
     それは凄惨で、見ていられないものであった。けどそれ以上に、それを見て吐くことも出来なくなった自分に驚いた。どうやら思っていたよりも心は擦り減っていたらしい。

     私は生き残りがいないか辺りを見渡した。中には船の破片だけでなく、街の方から飛んで来たであろう家屋などの瓦礫も多数見られた。一体何があったらこうなるのかと疑問とそこしれない恐怖を抱きつつ、私は一心不乱にその場を漁り始めた。
     聞いたことがあるから知っている。海軍の船には、海軍本部と通信するための電電虫が存在しているのだと。それで助けを呼ぶ、それが私の振り絞った生きるためのアイデアだった。
     しかし、電電虫は見つからない。見つかっても、どれもが死んでいるか壊れてしまっていて使い物にならない。


     が、私は求めていたものとは違う物を見つける事になる。


     「これって…………映像電電虫………」





        人は、一本足で歩けるだろうか。

  • 22二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 00:00:51

    あーあ

    あーあ

  • 23二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 00:00:55

    あっ

  • 24二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 00:01:14

    BADEND一直線じゃあないか!

  • 25二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 00:04:33

    さーいあくだ

  • 26スレー主ーねぇ心ま~で珀鉛病〜22/09/27(火) 00:06:18
  • 27二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 00:14:16

    最後の一文が鳥肌立つほどかっこいい 恐ろしさ、残酷さ、涙も枯れるようなウタの独白がこちらまで響いてくる

  • 28二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 00:16:21

    >>26

    そのスレだと海軍保護ルートの可能性も語られてるけど、ここはエレジアに来た軍艦も壊滅してるからより酷いことになりそうなんですが…

  • 29二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 00:18:27

    あの、こう言ってはなんやけど救いはありますか?

  • 30カチカチ山のスレ主さん22/09/27(火) 01:09:28

     見たところ海軍のものではなさそうだ、恐らくは瓦礫と一緒に飛んできたのだろう。もしかしたら、この状況のヒントがあるかも知れない。私は電電虫のスイッチをいれた。

    ガガッ……ザッ…ザザッ……

    「……………れか……誰か聞こえてるか!あの少女は、ウタは危険だ!!」ドォォン!!
    「何あのバケモノ、あの子の能力なの!!?」
    「急に現れたんだ、そして彼女を取り込ん…うわぁぁぁ!!!!」ドガッ! ドゴォン!!




    「………何……これ……」

     その映像には逃げ惑う人々と、街を破壊するバケモノ、そしてバケモノの上で狂ったように歌う私の姿があった。

     1人また1人と倒れていく様子を見ていると、突如画面が揺れた。撮影者が倒れたのだろう、横向きになった画面はただバケモノと私の事を写し続けていた。

    「………………!!!………あの楽譜!!」

     映像の中の私の頭上には4枚の古びた楽譜が浮かんでいた。

    「………私が……歌った…から………」

     頭の中でパズルのピースがハマっていく。思い出した、私はあの時のパーティであの楽譜の曲を確かに歌った。そして意識を失い、気がついたら辺りは……

    「わたしの……せい…………」

     嘘だと、嘘であると信じたくて、私は顔を上げた。

     ふと画面を見ると、バケモノに向かって走っていく男達の姿があった。

  • 31二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 01:11:19

    うわあ・・・・

  • 32スレ主系男子22/09/27(火) 01:12:24

    今日はここまでです。
    今更ですが、閲覧注意の指摘を下さった方々ありがとうございました。

  • 33二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 01:13:18

    おつかれさまです
    続き楽しみにしてます

  • 34主レス22/09/27(火) 07:59:50

    「野郎ども、気合入れろ!!!」

     バケモノに立ち向かう男達は赤髪海賊団であった。


     この後どうなるかを私は既に知っている。
     私に出来ることは、意味ないと分かっていながら、映像に対して叫ぶだけだった。
     「やめて」「逃げて」「行かないで」そんなことを叫びながら、私はその映像をただ見守っている事しか出来ない。

       閃光が走った。

    「ホンゴウさん!!!!!」

       地面が轟いた。

    「ルウ!!!!!」

     私は映像電電虫に手をかけ、必死の形相で叫んだ。しかし、いくら叫んでもバケモノは止まらない。

       その剛腕がうねった。

    「…ガブ………スネイク………」

     もう声に覇気なんて一切のってはいない。か細く「やめて」という音が漏れ出た、その声は喧騒に掻き消されてしまった。

       巨大な瓦礫の雪崩が起きた。

    「………パン…チ…………モンスター…………ライムジュース……」

       突然爆炎がバケモノを襲う

  • 35スレッスレッスレ、主ボール〜〜22/09/27(火) 08:14:17

    『効いたか!!?』 『いや!駄目だ!!っが!!?』

       爆炎の中から現れた腕が2人を叩き落とした。

    「…ヤソッ……プ………ベックマン…………」

     映像の中にはもう1人しか立っていなかった。

    「……………………シャンクス!!……」

     この声が届くように叫んだ。ただ、願った。

     シャンクスの剣とバケモノの腕が迫り合う。

    『娘を!……俺たちの娘を返せぇ!!!』

     しかし瞬間、そんな覚悟を嘲笑うかのようにバケモノがシャンクスの右腕を吹き飛びした。


         画面の中の私と目があった。

          その目は、嗤っていた。

       シャンクスがバケモノの腕に吹き飛ばされ、動かなくなった。


    「…私が皆を………シャンクスを…殺した……」

     心のヒビが広がっていく音が聞こえた。
     思い出は灰になって崩れ去ってしまった。

  • 36二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 13:36:58

    うっわ人の心とかないのかな

  • 37二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 13:43:33
  • 38二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 13:44:16

    まだ魚野郎の方がマシに思えてきた

  • 39スレ主だけど何?22/09/27(火) 16:01:13

    「…………………」ガチャ

     私はそばに置いておいたグリフォンを手に取った。死のう、そう思った。自分を生かすための「怒り」の矛先は自分の喉元に突き立てられていた。

    (なんだ……全部私のせいだったんだ………………)

    (………はなから私がいなければよかったんだ)

     息を飲み込む。鞘から抜いた剣先を首元に当てる。

    「……ごめんなさい………ごめんなさい………ごめんなさい………ごめんなさい…………………」

     壊れた玩具のようにひたすら謝る。シャンクスに、赤髪海賊団の皆に、ゴードンに、エレジア国民の皆に。ただひたすら謝る。
     別に許してもらおうだなんて考えていない。それに、どうせ赤髪海賊団は私を咎めない、許すもクソもないんだ。

     これは、私が私を否定するための言葉。自分が生まれてきた事を、私が幸せに生きて来た事を、私の全てを否定するための言葉。

    (ごめんね……ルフィ、強くなった姿…見てあげられないや……)

     私は最後に、私の大切な幼馴染に、今も私の帰りを楽しみに待っているであろう優しい男の子に謝った。

     握る手に力を加える。このまま後数センチでも斬れば私は死ぬ。決意は出来ている、力を加えたときに少し切れてしまった痛みはもう感じない。

     最後はシャンクスの剣で、愛した父親の手で全てを終わらせよう。最期のおしおきだ。

     口元が少し緩んだ。

    (今そっち行くよ、皆……)

     そしてひと思いに首を掻っ切「そこで何しとるんじゃ?貴様」

  • 40二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 16:08:43

    >>38

    尾田っちは少年誌に載せられる範囲で人の心ないことする魚だから

  • 41スレぬボンは笑ったよ。笑ったね22/09/27(火) 16:42:22

    「ちょっと!!!!船から降りるのはちゃんと港に停まってからにして下さい!!ガープ中将!!!」

    「ぶわっはっは!!そんな細かいこと気にしてたらすぐ禿げるぞ!!!」

    「船から船に飛び移るのは流石にどうかと思いますよ!!いくらガープ中将だからといって、少しは心配するんですよ!!!……まったく………ところで、そちらに何かあったんですか?」

    「いや、子供が1人おってな!!見たところ10歳くらいの娘じゃ」

    「分かりました、その子はこちらで保護します。取り敢えず何か聞けないか試してみて下さい!!」

    「はぁ〜〜……まったく心配性なやつらだわい。……それで、お前さんは海軍の船で何をしとるんじゃ?」



     後ろから声をかけてきたのは海兵だった。見たところ初老だがとても活力に満ちていて、………何処となくルフィに似ている。

    「…………ここへは助けを求めにやって来たの。けど、ごらんの有様、皆死んじゃってた」

     活力のない声でボソボソと話す。それにしても、話し掛けられた時に驚いて剣を離して正解だった。死のうとしてる所なんて見られたら、どんな質問されるか分かったもんじゃない。

    「…………確かに、全員息をしてない……か……。気配が一切しないのう」

    「………それと、どうやら島の方も大変な事になっておるな……。おいお前さん、エレジアで何があったんじゃ?」

  • 42スレぬボンは笑ったよ。笑ったね22/09/27(火) 16:43:34

    ちなみにガープの二人称はあやふやです。「お前さん」であってますかね?

  • 43スレ主じゃないかもしれない22/09/27(火) 17:10:45

    「…………バケモノが現れて国を全部めちゃくちゃにした。多分、他には誰も生き残ってない………」

     取り敢えず話を合わせよう。それでここから立ち去ったらすぐに死のう。今来た海軍の船は幸い少し遠くに停めにいってる。もう、誰にも迷惑はかけたくない。

    「バケモノ?……そういえば、救援を呼んだ海兵もそう言っておったそうじゃな。……………それで確か、センゴクの奴が『魔王』とか何とか言ってたような言ってなかったような」

    「…………魔王?………あれが………」

     じゃあさしずめ私は魔王の封印を解いた悪魔か。
     それとどうやら、この人達は救援要請を聞きつけて海軍本部から来たそうだ。

    「…………お前さん、親は?……」

    「………死にました……悪魔に、殺されたんです…………」

    「悪魔ァ?儂が言ったのは魔王じゃぞ。………まぁいい、そうか……それは気の毒だったな……」

     この海兵さんは本気で悲しんだ目をして、私の事を見てくる。その視線が、今は………痛い。

    「…………儂にもお前さんより少し小さな孫がおってな。今は小さな村で気ままに暮らしている。」

    「……?」

     この人は急に何を言い出したの?私は、すぐにここから離れて欲しいとおもってるのに。

    「儂はな、そいつを愛しているんじゃ。親ってのはそうだ、儂の息子も、今はそいつの側には居てられないそうじゃが、本当に愛しているんじゃ…」

    「………………」

    「お前さんの親はどうだったんだ?お前さんの事を愛してたのか?…………お前さんが死のうとして、本当に嬉しいのか?」

  • 44スレ主じゃないかもしれない22/09/27(火) 17:34:18

    「………!!!…………なんだ、見てたんだ……」

    「……………まぁな………」


     ……駄目だ、もうこの人は絶対に私から目を離さないだろう。……勝手に死なせてはくれないんだ。




    「……お前さんは被害者じゃ。きっと、勝手に奪われて行ったのじゃろう……」


         …………違うよ

    「怒りでもどうにもならず、それで逃げようとしたのか……?」


         …………違うよ

    「……じゃがな、逃げた所で結局は何も変わらな「違うよ」

     被害者も、怒りも、逃げたも何もかも違うよ。私は「加害者」で、「怒りの矛先」であって、逃げたんじゃなく……

    「…………………違う………じゃと?……」

    「………」

     逃げたいんじゃない、あくまで消すだけ。けど、そんなことは言えなかった。

  • 45スレ主だったかも知れない22/09/27(火) 17:41:52

     ……沈黙の時間が続く。目の前の海兵さんもどうやら居心地悪そうにしていて、お互い何も喋れずにいた。

    (………もういいや、無理やりにでも死のう。別に、このまま後ろ飛び込めばそれでいいんだ)

     私は悪魔の実の能力者、海に飛び込めばそのまま溺れて死ぬ。

    (……苦しいのはいやだけど、それも罰だ。皆から『愛を奪った罰』、せめて、辛く死のう。エレジア国民の皆のために……私一人の命だけど、せめて苦しゆで……)

    (……そうだ………それでいい。なら、今すぐに走り出してしまおう、それで全て終わ)ドドドド!!


    「はぁ…はぁ……む、迎えにあがりました!!



       "モンキー・D・"ガープ中将!!!」




     急いでこの船に上ってきた海兵の発した言葉に、私は目を見開く。

     (モンキー・D・ガープ……モンキー・D…!!)




          「…………ルフィ…?」

  • 46二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 17:49:56

    >>17

    「ウタが立ち直れるか」


    この1点に限ればこのスレの方がマシ... かなぁ...


    兎に角早い段階で"事実"を知らせないと立ち上がれなくなる

  • 47二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 18:06:59

    >>46

    シャンクスたちが罪を背負うのはエゴでしかなかったからね

    ウタの精神がもたないからって意見もあるけど、親と離れ離れにされた時点ですでにボロボロなんだよ…

  • 48二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 19:58:19

    こんなスレがあるとは……。天才か?

  • 49でもあなたスレ主でしょう?22/09/27(火) 21:52:15

    「ん?今お前さん、ルフィって言ったか?」

     ガープと呼ばれた海兵が目を見開いた。先程までの気まずそうな顔が嘘みたいだ。

    「あ…あなたは、ルフィの………お…おじいさん…なんですか……?」

    「そうじゃが……お前さんルフィの事を知っておるのか!?」

    「は、…はい」

     急に肩を掴んで嬉しそうな顔で質問してくるこの海兵はどうやらルフィの祖父だったようだ。

    (ていうか…肩、痛い……)

     少女相手だから手加減をしているのは分かるが、それでも興奮で力が強くなっている。
     素直に痛いと言ったら離してくれた、まぁ悪い人ではないんだろう。

    「して、ルフィとはどこで出会ったのだ?あやつはフーシャ村にずっと居るがお前さんがフーシャ村へ?」

    「……はい、父の旅によく付いていくんです。エレジアへ来たのも父と一緒に」

    「………もしかしてお前さん、ウタという名前か?」

    「っ!!………それは……ルフィから?」

    「そうじゃ、ここに緊急命令で来る直前まで儂はフーシャ村に寄っててのう。今回ここからの応援に儂が答えたのも、ここがフーシャ村から近い所だったから。まぁ、凪の帯を突っ切る必要はあるがのう」

     確か前に誰かが話していた。「何で海軍の船は凪の帯の方から来る事があるの?海王類がうじゃうじゃいるんでしょ?」という私の質問に、海軍の船は海楼石の力で海王類が反応しないと教えてくれた。質問の流れ的に、相手は恐らくシャンクスだろうとは思う。

    「ルフィが話しておったぞ、自分はウタという友達をずっと待っていると、強くなった姿を見せるんだと」

  • 50二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 21:55:18

    こういうifでのガープの安心感は異常

  • 51そうだ、俺はスレ主だった22/09/27(火) 21:56:47

    「……………ルフィ……」


     ……そうだ、私が死んだら残されたルフィはどう思う? 私はさっき、一度はルフィに心の中で謝った。けど、この海兵の話を聞くうちに、私の中のルフィとの思い出が膨れ上がっていく。
     毎日の対決の記憶が、歌を歌って見せた時の感情が、ルフィの無邪気な笑顔が、次第に広がっていこうとする心のヒビを食い止めている。






     「ルフィ………」


     気がついたら、枯れた筈の涙が溢れ出していた。

  • 52二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 23:20:54

    これは海軍の英雄

  • 53二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 23:22:28

    このレスは削除されています

  • 54二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 23:51:41

    このレスは削除されています

  • 55二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 00:00:17

    このレスは削除されています

  • 56二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 00:04:47

    "脚を切り落として"夢の世界とはなんちゅうことを...

  • 57二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 00:05:25

    まさかこんなことになるとは…

  • 58二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 00:06:19

    これルフィを○して私も○ぬENDじゃないよね…?

  • 59二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 00:07:54

    >>58

    ◯ぬって何?大事なのは心でしょ?

  • 60スレスレスレスレスレ主22/09/28(水) 00:26:34

    今日はここまでです。

    ちなみに、本軸が終わったらifルートとかも欲しいでしょうか?恐らく激重ルートとかになりますが

  • 61二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 00:31:39

    >>60

    構わん...書け(超見たいです)

  • 62二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 00:32:16

    >>60

    これ以上重くなる!?

  • 63二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 00:37:34

    >>60

    油釜温めて待ってるぞ

  • 64二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 01:28:44

    >>60

    🍢🐲🔥🍲🎨

  • 65二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 06:52:34

    これ以上重くなんの……?(恐怖

  • 66二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 13:34:18

    保守

  • 67スレヌシッ!!!!22/09/28(水) 17:52:09

    大幅なストーリー調整をする事が閣議決定されました。申し訳ございません。

  • 68二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 17:56:05

    なんだい此処は地獄かい(震え)

  • 69二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 18:10:53

    途中から削除されて何事かと思ったらそういう事だったのね

  • 70スレヌシッ!!!!22/09/28(水) 18:14:13

    「だ、大丈夫かお嬢ちゃん!!」「もう俺達海軍がいる、安心してくれ!!」

     側にいる海兵さんたちが何か言っているが聞こえない。自分の啜り泣く音と、溢れ出す感情が世界を掻き消す。

    (…何で私、ルフィとの思い出をこんなになるまで…)

     理由は分かっていた。再び、失う哀しみに苛まれるのが嫌だったから、死ぬのは怖くないとおもいつつも、ルフィという光を見失ったまま生きるのが、それよりもっと怖かったから。

     ………ありがとう、ルフィ…思い出させてくれて。

     ……私は、私の歌で世界を変える。皆が幸せな世界を作るんだ。

              でも、

    「………じゃあ、お前さんを保護してフーシャ村へ送り届ける。これでいいか?」

     ルフィのおじいさんが問いかける。でも、私はまだ泣いたまま。

     ……このまま何も言わず、流されて行けたらどれほど良いか。


    「まったく、海賊を海軍が送り届けるとはな……」ボソッ

     (!!………何だ………それも分かってたんだ……多分、ルフィが私と赤髪海賊団の事を言ったんだね…………家族なんだって……)

     ……付いて行きたい。このままフーシャ村に行って、ルフィとまた笑い合いたい。

              でも、

     「……じゃあ、泣き止んだなら付いてこい、出港するのはまだまだ先だが、ひとまず医務室にお前さんを連れて  「ダメだよ……それは」

  • 71スレ主デイズ22/09/28(水) 18:25:45

    「ごめんね」

     私は海兵さん達をその場で眠らせ、ウタワールド内では五線譜に貼り付けておく。ウタワールド内のルフィのおじいさんが叫んでいるが、今は必死に聞こえないふりをする。

    (………次は…………)


    「ん?…おい!!誰かいるぞ、女の子だ!!今すぐ保護する用意を………」バタン

     犬の形をした船首の付いた軍艦に近づき、歌を歌う。その場にいた海兵さん達を皆眠らせたら、次に全員の身体を操って、船から下ろす。

     もう、ここまで来たら迷ってはいられないんだ

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    「…おい、何だこれは!……う、動けね「ねぇそこのおじさん……この軍艦はどうやって動かすの?………教えて」 ……誰だ君は、この島の生き残りか?丁度良かった、これを外し…!!」

     私はウタワールド内で、そこらへんの手頃な海兵を縛り上げ、この軍艦の動かし方を聞いた。けど、中々話が進まなそうだった。……だから、私はその海兵さんの脚を切り落とした。
     ここはウタワールドだから別に現実では何ともない。……けど、もう取り返しなんて付かない、付かせる気も……ない。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     出港の仕方、舵のとり方を手早く聞き出した私は、すぐさま進路をフーシャ村に定め船を出港させた。

     私が眠ってしまう前に、島が見えない所まで離れないと行けない。でもどうやら風は私に味方しているようで、ぐんぐんと目的地の方角へと真っすぐに向かって進んで行く。


    「……………待っててね、ルフィ…」

            それと、

  • 72スレ主デイズ22/09/28(水) 18:26:56

    「…………………ごめんね、ルフィ………」



         私は泣きながらそう呟いた。

  • 73スレ主デイズ22/09/28(水) 18:56:43

     一度寝た私は、そのまま急いでフーシャ村へと向かった。ちなみに、本当に凪の帯で一切海王類に出会わなかったのには正直驚いた。まぁ、別にそれでありがたいし、全然良かったんだけど…

     そして明け方、私はフーシャ村の近海に辿り着いた。
     遠目に小さく見える島の中の、さらに小さな村。それを見て、私は深くため息をつく。
     覚悟はどうやらまだ不十分だったようだ。……無理もない……だって、


     今から私は、大好きな幼馴染に"別れを告げに行くのだから"。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     フーシャ村の港に、1人の少年が立っていた。少年はここ数日、毎日ここに来ては、海を見て何かを待っていた。その日も少年は朝起きて、一目散にここへ来ていた。

     彼は、ただ帰りを待っていた。憧れの海賊団と、ある1人の少女の帰りを。

     しかしその日も待っていた海賊船は見当たらず、少年は肩を落としてそのまま踵を返そうとした。けど、ふとその目に一隻の軍艦が止まった。

    「あの船…………まさか爺ちゃん!!?」

     少年は怯えたようにその場から後ずさりをする。

    「…………あれ?……何か、変じゃねェか?」

     しかし、1つの違和感に気付く。次第に近付いてくる軍艦、いつもならこの距離でもう船を畳んでいる筈。

     しかしその軍艦は、帆を張ったまま減速する気もなくどんどんと近付く。

         「と、止まって〜!!!」

     危険に思い逃げようとしたその時、軍艦からいつも聞き慣れた少女の声がしたのをルフィの耳は捉えた。

  • 74スレ主だよ、少し休憩パートだよ22/09/28(水) 23:50:45

       (不味い不味いまずい!!!!!!)

     拝啓フーシャ村の皆さん、私は今から皆さんの元へ軍艦で突っ込みます。…私は、絶賛海の上で超絶狼狽えていた。

    (やらかした、完全にやらかした!!てか、どちらかというとむしろ今からやらかす!!!
    冷静に考えれば、こんな9歳の少女1人に軍艦の帆を畳む事が出来ないなんて当たり前の事でしょ!!何で先に気づかなかったの私!!!)

    (…き、岸までの距離は!!…………あ、オワタ)

     船首に向かい、岸との距離を測ろうと思ったがどうやらもう駄目みたいだ。

    「と、止まって〜!!!」

     取り敢えず叫んでおく、まぁ別に叫んだからといって何かあるわけでも「う、ウタ!!?」……え?この声…

    「ルフィ!?……き゛ゃ゛ァ゛!!?」ドゴォン!!

     ……そして、思いっきり岸に激突した。予想以上の轟音に衝撃、思いっきり壁に打ち付けられた全身の痛みを感じつつ、何とか立ち上がる。

    「お、おい!!大丈夫か、ウタ!!?」

     隣りの桟橋まで来たルフィが私の名を呼んでいた。

    「う、うん……大丈夫……」

     私はそう答え、軍艦から降りると、ルフィの手を掴んで急いでその場から走って逃げ出した。

     「おい、どうしたんだ、ウタ!?……そうだ!そういや何で爺ちゃんの船に乗って………シャンクス達はどうしたんだ?」

     「っ!!……………それは後で言う、取り敢えず今は着いてきて!!」

  • 75スレ主だぜ、少し休憩パートだぜ22/09/29(木) 00:51:36

    「……はぁ、はぁ……………」「ぜぇ…ぜぇ………」

    (……何とか、村の人達が集まる前に逃げ出せた)

     私達は、肩で息をしながらも何とか目的地へ辿り着いた。

    「ぜぇ……ぜぇ……………あれ?そういやここ、俺が初めてお前を連れてきた場所か?…」

     私達は今、風車の立ち並ぶ丘に来ていた。
     ここは、ルフィが初めて私に教えてくれた場所。私にとっても大切な思い出の場所。

    「………うん、そう……ここは、私の大切な思い出の場所……私達の大切な場所……………ここに連れてきたのは大切な話をしたいから」

          ルフィと顔を見合わせる


    「………さっきの質問の答えね。……まずあの船は、私が乗っ取ったもの」


       私はあくまで淡々とした口調で告げる。


    「それで…………シャンクス達は………赤髪海賊団の皆は……」


          さようなら、私の思い出



         「……私が殺した、私の歌で」

  • 76二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 01:51:40

    うわぁ、どう展開が転ぶか見当がつかん
    続き待ってます!

  • 77二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 07:18:48

    保守

  • 78スシ22/09/29(木) 11:27:36

    ラストまで書き溜めます。できれば明日の朝までには投稿できる様に努めます。

  • 79二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 11:30:54

    >>78

    ゆっくり待ってますので無理しないでくださいね

  • 80二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 19:18:48

    保守する

  • 81スレ主(ネタ切れ)22/09/29(木) 20:41:57

     私はルフィに真実を告げた。

    「………何言ってんだ……ウタ?………お前が、赤髪海賊団の皆を………殺した……?」

     ルフィの表情が歪んだ。ルフィの悲痛な顔を見るのが…辛い。

    「嘘じゃないよ、私が皆を、そしてエレジア国民を皆々殺した。私の歌が皆の命を奪ったの」

     私は、エレジアで起こったことの全てを、ルフィに伝えた。

     
    「分かった?…私は、大好きな家族と罪無き一般市民を大量に殺した」

    「……最初はさ、すぐに死んでしまおうと思ったんだ……けどさ、ルフィとの最初の約束を思い出した」

    「…!!…………新時代の、夢……」

    「……うん、私はね…あの時ルフィに救われたんだ。だから、今度こそ諦めたらいけない…新時代を作らなきゃいけないんだ」

    「………そうだぞ!!ウタは歌で世界を幸せにするんだ、だから絶対に 「ごめんね」 ………え?」

    「私は、あの時死んでしまった人を捨てて新時代を作ることは出来ない……だからさ……」

    「……だから私は、この世界を終わらせる………そして、世界中の人々皆が、あの世で幸せに過ごせる。そんな新時代を作る!!」

    「…!!?……………」

     ルフィの表情が一気に険しくなった、ここからが正念場だ。

  • 82二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 20:43:43

    ルフィさんまだ七歳やぞ…

  • 83スレ主だったもの22/09/29(木) 20:45:33

    「…やめろよ………笑えない冗談言うなよ……ウタは……ウタはそんな事は言わない!!ウタは、皆が幸せになれる新時代を作るんだぞ!!」

     ルフィがついに感情をあらわにした。今日初めて、私に対して怒った。

    (……そりゃそうだよね…交わした約束を勝手に変えて、こんなのあんたを貶しているのと、なんら変わりないもの…)

    「そんな事はどうだっていいじゃん!!夢なんてのは変わっていくものでしょ?」

    「……ルフィもさ、付いて来てよ……私の新時代へ」

     自分ながら、悪趣味な質問だ。答えなんて分かってるのに、相手の嫌う質問をするなんて…

    「………俺は行かねぇ……そんな世界、俺は嫌だ…」

    「…………そうか……」

    (……やっぱり、こうなるよね……)

     別にはなから期待はしてない、ただの確認だった。
    ……いや…私はむしろ、こうやって断られるのを期待していたんだ。

     別にこれでい「そんな新時代、何よりウタが笑えないだろ!!!」

    「…………え???……………………わた…し…?」  

     一瞬、ルフィが何を言ったのかが分からなかった。

  • 84スレ主(原点回帰)22/09/29(木) 20:46:51

    (……何で私の事を?死んだらホネだけなんじゃないの?大好きな冒険が出来ない事よりも………死んでしまう怖さよりも……なんで私が先に出るの?)


    「これは俺だけの約束でも、お前だけの約束でもねえ、俺達2人の約束だ!!!」

    「…………!!!」

    「もしかしたら…俺はその新時代でも、笑えるかも知れねえ……けど、ウタが絶対に笑えない!!その顔を見れば分かる!!!
     ……お前が笑えないなら、俺はそんな世界は許さない!!!」


     …きっと、私の顔は酷いものだったのだろう。きっと、下手くそな笑みを無理やり貼り付けた、そんな顔だったんだ。バレるに決まってる……だってルフィは人一倍優しくて…いつも、皆の事を見てるんだから。


     ……駄目だ……



    「それに、そんな事しても、シャンクス達が喜ぶ訳がないだろ!!ウタだって分かってるだろ、ウタだって、本当はそんな事したくないんだろ!!!」

    「………っ!!!……………ルフィ……!!…」


     ……駄目だ、もう…抑えられそうにない。

  • 85スレ主(原点回帰)22/09/29(木) 20:48:31

    「……わかってるよ………分かってるよ!!!…私だって、本当はこんな事はしたくないよ。当たり前でしょ!?………そんな世界、誰も幸せな筈がない…」

     あぁ…頑張って我慢してたのに、結局感情が溢れるのを耐えられなかった。やっぱり、どこまで行っても私は中途半端なんだ。

    「………こんな事しても、シャンクス達は!!私が殺してしまった人達は喜ばない!!……分かってるよ……でも!!………私がのうのうと生きていく事を、私がただ夢を見る事を、私の心が許してくれない!!!」

     心からの叫び、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら必死に語る。

    「でも私がこのまま夢を目指していいの!!?あの悲劇を忘れて、皆をただの犠牲にしていいの!!!?」

    「…でも!ウタも被害者なんだろ!!?…なら!!」

    「違う!!…私は加害者。たとえ私以外の全ての人がそう言っても、私だけは…絶対に私を許せない!!」


    「………なんてね…違うよ、私はただ、自分を正しいと思いたいだけ………間違ってるって分かってるのに、まだ一縷の可能性にしがみついてるだけ」

    「だって……そうしないと、私は今度こそ完全に壊れてしまうから……」

     自分で言ったことをすぐさま自分で否定する。それはまるで、滑稽な芝居のようで。

    「……もう………どうしようもないんだよ。もう、ここまで来たら引き返せないんだよ……」

    「……………ウタ……」



       …なんて、結局の所は…全部言い訳だ

    「…!!………違う……違うよ……全部嘘だよ……私は、ただこんな事を伝えに来たんじゃない!!……」

  • 86スレ主(原点回帰)22/09/29(木) 20:49:41

       もういい…言おう、言ってしまおう。

    「…ねぇルフィ?……これは、私の一生のお願い……自分勝手だって事は分かってる……けど、どうか聞いてほしい」

          私が本当に言いたい事は…

    「私は止まれない。だから、せめて 「俺がウタを止める!!」 ………え?」

     本当に言いたかった言葉は、ルフィに奪われた。

    「………ウタは…俺なんかよりずっと強い……今も、俺には想像出来ない程、たくさんのものを抱え込んでるんだろ!!?」

     …………何だ………

    「……何それ…………負け惜しみ……?」

     そうか…私の思ってたより、ルフィはずっと…

    「……違う!!!……ウタのしようとしてる事は、多分間違ってる……けど、ウタにとっては絶対に変えられない事なんだろ!!?」

    「だったら、ウタは俺が力づくでも止める!!!ウタに出来ない事は、俺が変わりに引き受ける!!!!」

           ……ずっと、

    「…………ずっと、強いんだね……ルフィは」

  • 87スレ主(ミスモード)22/09/29(木) 20:50:22

    >>86

    訂正、「変わりに」→「代わりに」

  • 88スレ主(ミスモード)22/09/29(木) 20:52:40

    「………あ〜あ!!人が頑張って言おうとした事を、ルフィったら全部1人で言っちゃってさぁ!!!」

    「………………ありがとうルフィ、あの時の約束通り、強くなった所を見せてくれたんだね」

     顔を拭いて、笑顔を作った。

     私は約束を守れなかった。…けど……もう一度だけ、約束させてはくれないかな。

    「……ねぇルフィ…この帽子……あんたに預けるよ」

     そう言って私は、持っていた麦わら帽子を取り出す。血は洗って落とした、ほんのりと赤みがかっているが、ぱっと見は元の麦わら帽子と変わらない。

    「…!!……この麦わら帽子……シャンクスの……」

    「うん……ごめんね、ルフィ……やっぱり私は、もう戻れないんだ………だから…」

     耐えろ、涙は見せるな。今だけは笑顔で別れよう。

    「…だから……いつかこの帽子がもっと似合う男になって、私を止めに来てね………約束だよ…」

  • 89スレ主(ミスモード)22/09/29(木) 20:53:12

     そう言って、私はルフィに麦わら帽子を被せた……今はまだ、大きくて全然格好良くない。

     だから、いつかシャンクスみたいに格好良い海賊になったら。私に、誰もが本当に幸せな新時代を教えてくれる、誰よりも素敵な海賊になったら…その時は…


    「…………………グスッ………分゛か゛った!!!!俺が、いつか絶対にお前を止めに行く!!……だから……だから、それまで絶対に覚えててくれ!!」

    「………忘れる訳、ないよ……」

    「………よし、決めた!!ルフィの作る新時代は、またその時に聞く事にする!!!……だから、それまでには考えておくんだよ!!!」ニカッ!!

    (…その時は、私の夢なんか打ち砕いて、ルフィの見る夢を私にも一緒に見させてね!!)


    「…………お゛う゛!!!約束……だ……?」バタン…

     ルフィを眠らせる。……危なかった、これ以上ここにいると、私の汚い顔を見られてしまう所だった…

    「…じゃあね、ルフィ……私は先に行ってる……ずっとずっと、待ってるから。……それと、

    ありがとうね!!こんな私と…友達になってくれて」

     そして私は1人泣きながら、歩みを始めた。
     もう、振り返りはしなかった。

  • 90スレ主(ミスモード)22/09/29(木) 20:55:26

     あれから10年がたった。海には、小さな小舟が1つ。

     17歳になった少年は、今旅に出た。


     故郷の村の人達に見守られながら、少年は1人、遠い昔を懐かしむ。

     昔交わした、2つの約束を果たすため、そしてその先にある夢の果てを目指して、少年は旅立つ。


    『俺も作ろう!!新時代!!!』


    『……いつかこの帽子がもっと似合う男になって、私を止めに来て…』



        「………待ってろよ、ウタ……」


    「…スゥ〜〜〜…………





     海 賊 王 に  俺 は な る !!!!」


    ED.1  ROMANS DAWN−新時代の幕開け−

  • 91二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 20:59:11

    ED2!2は無いのかえ!

  • 92二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 21:00:03

    これウタはエレジアに戻ってことなのかな...

    戻るよな...

  • 93二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 21:00:04

    語り継がねば…

  • 94スレ主(名前変えるの忘れてた)22/09/29(木) 21:02:43

    どうも、スレ主です。

    見切り発車による、途中での大幅なプロット変更。
    誤字  口調の不安定

    初めてのワンピSS、それも書きながら投稿していくこの掲示板での初執筆で、色々至らない点があり誠に申し訳ないです。

    取り敢えず本軸が完成しました。正直ここまで明るめの終わりになるとは思っておらず、スレ主自身が、驚いています。

    取り敢えず、ifルートに関してはまだ方向性すら決まってないので、仮に書けてもいつになるかは分からませんので、あしからず。

  • 95スレ主(名前変えるの忘れてた)22/09/29(木) 21:11:09

    >>92

    あぁぁぁぁ!!!描写させるの忘れてた!!!!!!



    え〜元々差し込む予定だった話しで、


    ウタ(私はエレジアを滅ぼした、海軍の船も奪った、トットムジカの事も海軍は知ってるはず

    →きっと賞金首だろう、もう戻れない)


    という心情をいれて、ウタの「待っている」というのが「海賊として先に行ってるよ」だと分かるようにする予定でした。


    スレ主としましては、この世界線ではウタがシャンクスにとってかわり、四皇になります。


    海軍や海賊達と戦っていく内にトットムジカを制する事ができる予定でした。

    しかし、この先の描写はされておりません、皆さんの自由な想像に任せるとしましょう。

  • 96スレ主(名前変えるの忘れてた)22/09/29(木) 21:19:00

    >>95

     補足


    ウタの目的は世界滅亡で、この先何万人も死者を出していくでしょう、シャンクス達をただの犠牲にしないために。


    ですが、心の中ではずっとルフィの事を待っています。きっとルフィに倒されたら、「これがルフィの思い描く新時代か……ありがとう……もう、何も思い残す事はないよ…………その麦わら帽子、凄い似合うようになったね…………絶対に新時代を作ってね、ルフィ」

    と、この世界線でも呪いを残して逝ったでしょう。

    やはり、ウタは呪い系女子(21)ですね。

  • 9792だべ22/09/29(木) 21:23:36

    なるほど!

    確かに原作でシャンクスが死んでしまうと四皇の枠があきますからね!

    それで四皇の枠にウタが入ると!


    >>この世界線でも呪いを残して逝ったでしょう。


    ...まあ、スレ主の言うとおり原作よりかは充実した12年間にしたから逝ってるからマシだねうん

  • 98二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 21:49:50

    >>96

    >>きっとルフィに倒されたら

    きっとそうはならんさ

  • 99二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 06:09:50

  • 100二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 06:16:16

    この世界線で海賊やってるウタちゃんパートも見たくねえけど見たい…

  • 101吾輩はスレ主である22/09/30(金) 17:30:53

    〜世界の甲板−New World−〜 
    vol.1 海賊本部、会議室にて

    「……え〜、次の新人は……先日起きたエレジアの悲劇の主犯と言われている少女……ウタ、ですか……」

    「う〜ん……ブランニュー少佐、やはりこれは何かの間違いでは!?こんな9歳の少女にあんな悲劇が起こせるとは到底思えん!!!」

    「しかしモブリー中佐、四皇ビッグ・マムも最初に懸賞金が付いたのは6歳だ!!年齢は否定材料にはならん!!!」

    「あれは異例だろう!!四皇を引き合いに出すのはまちがっているラーモブ大佐!!」

    「だが今回がまたその異例とやらの可能性もあるのではないか!!?それに悪魔の子ニコ・ロビンも

    「落ち着いて下さい!!!……………モブリー中佐、貴方も観たはずでは?……あの映像電電虫を…」

    「……いやすまんなブランニュー少佐…………いや、しかしな……あれはどう見てもバケモノに操られていたように見えたが…」

    「では、ガープ中将の船が奪われた事はどう説明する!!?海兵の中には、脚を斬られる幻覚を見た者もいたと聞く!!!
     こちらが保護する態度をとった上での行動だ、悪意が無かったとは言わせないぞ!!」

    「…くっ!!……………」

    「………では懸賞金決めに移るという事でよろしいですね?」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    「…おい見たか、これ?」「あぁ…しかしこんな少女にこんな懸賞金は…」
    「怖い時代だねぇ、こんな子が国を滅ぼすだなんて!!」「いや!そもそも、その事件が分からない事だらけだ!!これはきっと政府の陰謀で…」
    「…"ALIVE ONLY"……これが付くなんて、一体後ろに何があるのか………」「…魔王の娘………か、」

  • 102二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 17:35:28

    続きだあぁぁ!!

  • 103吾輩はスレ主である22/09/30(金) 17:37:42

    「ん、ありがとうねカモメさん!!」

    クエ~!!  バサバサッ

    「…………エレジアの悲劇………引き起こしたとされる少女……『ウタ』………あっ………」

     だだっ広い軍艦の上には私ただ1人。カモメさんから買った新聞紙を広げて見てみると、あのエレジアでの事件がでかでかと乗っていた。

    そして、隙間からひらりと抜け落ちた1枚の紙を拾う。


         ALIVE ONLY 
        "魔王の娘"ウタ

         200,000,000

  • 104名はまだない22/09/30(金) 17:38:48

    少し幕間としてちょこちょこ投稿していきます

  • 105二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 17:53:36

    >>104

    期待

    ウタかわいそう・・・

  • 106ショコラセーヌ美味しいよ22/09/30(金) 17:54:38

    〜世界の甲板−New World−〜 vol.2
    海軍本部元帥室にて

    「……よかったのか?ガープ」

    「ん、何がじゃ?あ、それより煎餅なくなったから新しいやつ取って来とくれ」

    「……はぁ……ウタという少女の事だ。分かっててとぼけてるのは分かってるぞ……ガサガサ……貴様の孫の友達なのだろう?……まだ9歳だ、うやむやにする事も出来なかった訳ではない」

    「………いや、お前さん、あの子がただの気まぐれで、慌てて逃げるために儂の船を奪ったと考えてないか?」

    「……違うのか?」

    「違うな……最後にブタワールド?とやらで見た去り際の顔、………あれは覚悟を決めた者の顔じゃった。恐らく手強い敵になるぞ」

    「…ウタワールドだ。………お孫さんは大丈夫だったのか?あの後フーシャ村に戻ったと聞いたぞ」 

    「……いや……むしろあやつは1つ大人になっておった。……何があったかは知らんが、きっと大丈夫じゃよ……」

  • 107二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 18:34:03

    男女が入れ替わっただけでエレンとミカサだなこれ...

  • 108二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 01:01:35

  • 109二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 07:10:56

    保守

  • 110ショコラセーヌ美味しいよ22/10/01(土) 10:51:20

    〜世界の甲板−New World−〜 vol.3
    風車の回る村にて

    「た、大変だ!!!」「何だそんなに慌てて……って、これは!!?」「おい、嘘だろ!!?あの子にそんな事………おい、マキノさん?……大丈夫か!!?マキノさん!!!?」

    「………………ウタ……ちゃん……?」

    ガラガラ

    「……!!………る、ルフィ!!!」

    「おうマキノ、ジュースくれ!!!」

    「あ……うん!!…ジュ、ジュースね、分かったわ!!…………あっ!!!」

     ルフィの座った席の目の前には、マキノの読んでいた新聞紙と、幼馴染の姿の写った手配書。それをルフィは手にとって確かに読んだ。

    「る、ルフィ!!………その、これはきっと何かの間違いで!!!………だから「大丈夫だ!!!」

    「約束したんだ、あいつと。だから大丈夫だ!!それより爺ちゃん知らねぇか?修行つけてもらう!!!」

    「今は来てないけど………って、え!!?ガープさんに修行!!?」

    「そうか、分かった!!!じゃあ1人で山行ってくる!!!…………あ、宝払いでな!!!!」

     その顔には一切の迷いはなかった。しかし、その瞳には確かに熱い炎が燃えていた。

  • 111スレ主(誕生祭開始待ちモード)22/10/01(土) 12:00:02

    〜世界の甲板−New World−〜 vol.4
    とある甲板の上にて

    「…2億ベリー……」

     私の手配書を見てそう呟く。初頭手配額としては異例中の異例、しかも9歳の少女に対してだ。
     新聞には、この事について大きく一面を使ってかたられていた。エレジアを滅ぼしてこの金額が付けられたという事、しかしそれは陰謀なのではないのかという疑惑。そして…

    (…ONLY ALIVE………これが付いてる理由は、何となくだけど分かる…)

     『魔王』、私の異名にもなっているあのバケモノが原因だろう。ルフィのおじいさんはあのバケモノの事を聞かされていた。そして恐らく海軍のトップならその詳細を知っている。
     トットムジカか私のウタウタの能力、もしくはその両方を海軍は確保しようとしている。だからONLY ALIVEなのだろう。

     これで、私は海軍や海賊、賞金稼ぎに追われる身となった。シャンクス達に護られていた今までとは違う、私1人で戦わなくてはならない。

    「…………」

     私は側に落ちているトットムジカの楽譜を眺める。
     エレジアから逃げ出した時にいつの間にか着いてきていたのだ。きっとあのパーティの夜も………

    「………っ!!!………」

     私はこの楽譜が憎い、私の幸せを奪っていったこの楽譜が何よりも憎い。けど、今の私にとっては大事な切り札だ。海軍が狙うほどの力、これが無きゃ私なんか戦うことすら出来ない。

     憎しみも怒りも悔いも、何も捨てきれてなんかいない。でも、それを受け入れる覚悟はもう決めた。


     私は楽譜を拾い、軍艦の中へと歩いていく。上陸の準備をするためだ。

  • 112スレ主(誕生祭開始待ちモード)22/10/01(土) 12:02:55

    「"魔王の娘"?…上等よ」


     私の戦いはたった今始まったばかり、ルフィとの約束を果たすまでは私は負けられない。



     赤髪海賊団の音楽家『ウタ』の物語は終わった。



     そして今、後の世界にも語り継がれる最悪の魔王。
     その物語が今始まった。

  • 113スレ主(モード学院ではない)22/10/01(土) 22:18:38

    ifスレに関してですが、こういうのが見たいとかのリクエストってありますか?Happyでもbadでも構いません

  • 114二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 22:23:12

    頂上戦争でズタボロになったルフィを見て、ブチギレて魔王召喚して全勢力に宣戦布告するとか

  • 115二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 23:07:55

    書く予定あるかも知れないけど、再会シーンとハッピーエンドが見たいなあ

  • 116二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 23:40:49

    ハッピーエンドで夫婦になる姿

  • 117二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 05:56:06

    保守

  • 118二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 07:24:56

  • 119二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 15:29:26

    釜を煮込む

  • 120二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 16:01:25

    お前は語り継がれる
    検索用に入れときます

  • 121二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 22:55:10

    保守

  • 122二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 07:13:43

    保守します

  • 123スレ主(無モード)22/10/03(月) 18:26:40

    一週間テストだから多分書けませんので、一旦このスレは落としてもらって構いません。
    またIFや続きが思いついたりしたら新しいスレ建てて書くので大丈夫です。

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