- 1二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 21:29:05
- 2122/09/28(水) 21:29:32
ウタは配信に使った道具を片付け、窓際の椅子に腰かけた。
歌だけでなくダンスも一緒だと一層体力の消耗が激しい。
脱力して椅子に体を沈み込めると窓から風が吹いてきた。
涼しい風が体を動かして火照った肌に心地いい。
窓の外に目を向けると雲一つない青空と弧を描いて飛ぶ海鳥。
のどかで平和な光景だが、今のウタはこの光景が世界の全てではないことを知っている。
電伝虫を通して、毎日のようにウタに届くファンの声。
『ウタ聞いて今日海賊が町を…!』『ウタ!父さんが海賊に…!』『ウタちゃん助けて…!村が燃えちゃった!』
海賊に苦しめられる人々の声がウタに世界がどういうものか教えてくれた。
この世界で力ない人々は理不尽に現れる暴力に大切なものを奪われ、失うばかり。
目を閉じたウタの瞼に燃える町や逃げ惑う人々の姿が想起される。
私が助けなくちゃ───それが私の─── - 3二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 21:30:26
ワクワク
- 4122/09/28(水) 21:31:26
偉大なる航路前半の海 海賊船 サウザンドサニー号
「ん~、いい天気。気圧も安定してるし次の島の海域に入ったみたいね」
船首近くの甲板でビーチチェアに座ったまま、潮風を体にまとわせるように伸びをするナミ。
雲一つない空に穏やかな風、安定した気圧配置。
久しぶりの穏やかな波模様にホッと一息つくナミだが彼女の背後ではひと騒ぎ起きていた。
甲板中央ではナミ以外のクルーのほとんどが船の手すりにもたれかかり釣り糸を垂らしていた。
ヒマなメンバーだけではなく見張り当番のゾロまで甲板に降りてきて釣りに興じているのはある理由があった。
食糧難である。
航海において普遍的な脅威ではあるが、大食漢を擁する麦わらの一味にとってはより死活問題である。
気候が安定したのをこれ幸いと手の空いた男連中で釣りを始めたのだが、心待ちにしているときこそ釣果が少ないのが釣りというもの。
竿に反応がなく退屈な時間を過ごす中、ようやく動いたのはウソップの釣り竿だった。 - 5122/09/28(水) 21:32:36
「ウソップ!釣り糸引いてるぞ!」
「よしきた!ウソップ様の手にかかれば……よし、かかった!ってなんだこの引き!釣り竿ごと持ってかれちまう!」
ウソップの腕もあって釣り針が獲物に引っかかったようだが、釣り竿どころかウソップ自身が持っていかれそうになっており、ウソップはサニー号の手すりに全身でしがみついて海中に引きずり込まれるのを防いでいた。
「釣り竿よこせウソップ!」
力自慢のフランキーが応援に駆け付けウソップごと竿を引き上げる。
フランキーがもはやなんで折れていないのかわからないほど曲がった釣り竿を振りぬくと、サニー号とそう変わらないサイズの大蛸が海中から飛び出してきた。
「うおォォォォォ!なんかスゲェの釣れたァ!」
「大蛸だーー!!」
「野郎共逃がすんじゃねェぞ!今日の晩飯がかかってんだ!!」
海賊たちの必死の形相に命の危機を直感したのか大蛸は8本の足を伸ばしてサニー号に攻撃してきた。
「指図すんじゃねェ、クソコック!」
船から飛び上がり、大蛸に向けて三本の刀を構えるゾロ。
「三刀流 虎狩り!!」
ゾロの刀の一振りで、襲い掛かってきた大蛸の8本の足は空中でにぶつ切りになった。
「うォォ!ゾロスゲェ!!」
ぶつ切りになった蛸足が甲板に散らばる中、大口を空けてゾロの剣技に驚愕するチョッパー。
そしてゾロに負けじと気合を入れて大蛸に突撃する人物がもう一人。 - 6122/09/28(水) 21:33:44
「おれにまかせろ!ゴムゴムの銃!!ん…!?ぶわァァァ!!」
ゴムゴムの実の能力を活かしたルフィ渾身の攻撃を受けて大蛸が吹き飛び、大量の飛沫を上げて水面にたたきつけられた。
しかし、その衝撃で大蛸が口から吹いた大量の墨がルフィにかかり、ルフィの体が真っ黒になる。
「早く蛸を引き上げるぞ!!」
そんな船長の身に降りかかった不幸を知ったことかと大蛸を引き上げるためゾロが号令をかけた。
釣りをしていたメンバーが大蛸へ投げつけるための銛つきロープを手に銘々走り回っていると、ルフィが声を上げた。
「ウソップこっち見ろ~!」
「なんだよルフィ!今はお前に構ってるヒマは…」
ルフィの声に、号令をかけるゾロに続いて大蛸にロープをかけようとしていたウソップが振り向いた。
「捕まったおれの影のマネ!!」
ウソップが見たのは、甲板から生えてきた巨大な手に体を掴まれ、目を閉じて全身真っ黒になったルフィが手足をバタつかせる姿だった。
「「「「「「ぷ~~~~ッ!!!」」」」」」
たまらず吹き出すウソップ達。
ルフィがマネと言っているのは先の航海で自身の影が切り離されたときの物まねだった。 - 7二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 21:34:37
ルフィ結構余裕あって草
- 8122/09/28(水) 21:38:37
たまらず吹き出すウソップ達。
ルフィがマネと言っているのは先の航海で自身の影が切り離されたときの物まねだった。
魔の三角地帯(フロリアントライアングル)をさまよう巨大海賊船スリラー・バークでの冒険。
ゾンビやゴースト、透明人間が闊歩する摩訶不思議な島で麦わらの一味は王下七武海ゲッコー・モリアと対峙した。
島を訪れた者の影を奪い、死体に封じ込めることでゾンビを生み出すカゲカゲの実の能力者モリア。
ルフィの影を奪い、古代巨人族オーズのゾンビを起動させたモリアに対し、麦わらの一味は総力戦を挑み辛くも勝利したのだった。
影を切り取られると気絶するため、捕まった自分の影というのはウソップ達のみならずルフィ自身も詳しくは知らないはずなのだが、なぜかルフィの物まねは堂に入ったもの。
慌てふためく影の様子の再現に、ウソップも含め振り返ったクルー達は全員吹き出してしまっていた。 - 9122/09/28(水) 21:39:09
「ヨホッ!ヨホホホホホッ!ちょっとロビンさんズルイですよソレ!」
不意打ちで笑わされたことが悔しいのかブルックが笑いながらロビンに苦情をいれる。
「ごめんなさい。ルフィに頼まれたの」
物まねをするルフィを掴み上げていたのはロビンが能力で出現させた巨大な腕である。
ウソップ達が大蛸を引き上げようと準備している間にルフィと打ち合わせたのだろう。
「ナハハハハ!!な、上手かっただろ?」
そう言いながら得意げに笑うルフィと大爆笑しているクルー達の声を聞きつけ、船首近くにいたナミが走ってきて問いただした。
「ちょっとアンタたち蛸は!?」
「ア~~~ッ!いつの間にかいなくなってる!!」
「アンタ達が遊んでるからでしょうが!!全く、消えかけておいて物まねなんてよくやるわ」
大蛸はルフィ達が物まねで爆笑している間にこれ幸いと海へ潜ってしまっていた。 - 10二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 21:39:31
これは…大作じゃな?
- 11122/09/28(水) 21:46:05
「晩飯~~~!!!」
「あ、でも蛸足はあるぞ」
嘆くルフィにチョッパーが船上にぶつ切りで散らばる蛸足を見ながら言った。
「これで足りる訳ねェだろ。ウチの船長の食欲で」
サンジがタバコに火をつけながらぼやく。
「食料だけじゃなく調味料もいくつか底が見えてきた。そろそろ、どこか島に上陸して補給してェところだ」
「なあナミ~、島まだか~?」
ルフィが手すりにもたれかかりながら、頼れる航海士にねだる様に質問する。
「もう見えてるわよ!アンタたちがバカやってるから言い損ねたの!!」
「よし野郎共~!上陸だ~~!」
「それよりルフィ、あんた早くシャワー浴びて来なさい!芝生が汚れちゃうでしょ」
「あ~い!」
タコ墨を滴らせるルフィにナミが注意するとルフィは気の抜けた返事をして、体についた墨を洗い流すため大浴場へ向かっていった。 - 12122/09/28(水) 21:51:32
「ん?チョッパーお前何もってんだ?」
タオルを首にかけなおし、見張り兼修行に戻ろうとしたゾロがチョッパーが手に持っているものに目をとめた。
「映像電伝虫!見張りなんだおれは!」
「見張り?」
何のだよ?、と続けて問おうとするゾロより先にウソップが胸を張って質問に答えた。
「その通り!チョッパーはこのウソップ様が『プリンセス・ウタのゲリラライブ監視隊長』に任命したのだ!」
「なんだそりゃ」
聞いた単語のほとんどが理解できないゾロにロビンが助け船を出す。
「ゾロはまずウタのことを知らないんじゃないかしら」 - 13二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 21:52:15
むっ!神ssの匂い!
- 14二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 21:54:07
- 15122/09/28(水) 22:02:11
エレジアに着くまでの部分がこんな長いと思わんかった…
文章量減らすからちょっと待ってね - 16二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 22:05:36
wkwk
- 17二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 22:06:19
楽しみだ
- 18122/09/28(水) 22:17:18
「私から説明しましょう」
話を聞いていたブルックが説明を買って出る。
「いいですかゾロさん。ウタさんは今から半年ほど前に映像電伝虫を介して歌の配信を始めた歌い手です。素性もなにもわからない人物の、ただ歌を歌うだけの配信ですが、彼女の異次元の歌声は世界中の人々を魅了しました」
「歌声一つで聴衆を虜にする彼女の配信は、爆発的に視聴者数を増やし今や世界トップクラスの歌手たちに引けを取らないほどの知名度を得ました。ウタさんはまさに今をときめくトップアーティストの一人なんです」
「そんなスゲェのか」
口ではそういいつつも特に興味がなさそうなゾロにロビンが補足する。
「所謂アイドルのような扱いだけど、中には歌によってひと時の安らぎを提供してくれる彼女のことを救世主の様に扱う人たちもいるみたいね」
「救世主ねェ…」
「で、ゲリラライブってのはなんだ?」
救世主という文句でうさん臭く感じたのか、単に気になった部分を聞いて満足したのか見張りに戻るゾロと入れ替わりにフランキーが質問した。 - 19122/09/28(水) 22:25:40
「プリンセス・ウタの定期配信は配信前に事前に予告があるんだけど、配信開始ハーフアニバーサリーのイベントで予告なしのゲリラライブをするみたいなの。そのライブで新曲を発表するって触れ込みで、ファンはいつ始まるか気が気じゃないのよ」
そう答えるナミも彼女のファンなのか事情に詳しい。
「最近定期配信が止まってるんでそろそろ例のゲリラライブやるんじゃねェかってもっぱらのウワサなんだ」
「って新聞に書いてあったぞ!」
ウソップの解説に、チョッパーが新聞の切り抜きを見せながら付け加えた。
「そいつが流してんじゃねェのかそのウワサ」
フランキーがもっともなツッコミをすると、展望台に取り付けた拡声器から見張りに戻っていたゾロの声が聞こえた。
『島の正面に埠頭が見えるぞ。あと島の右手にデケェ海獣の骨が見える』 - 20122/09/28(水) 22:37:26
ゾロの報告通り、島の右手にはこの距離でもわかるほど巨大な生物の骨のようなものが見えていた。
そして注視しているとまだ小さい島の全景、その真正面に人工物のようなものが見えた。あれが埠頭なのだろう。
「ちょうどいいわ。あそこに停泊しましょう」
「港があるってことは人が住んでんだな。食料を分けてもらえりゃあいいが」
人が住んでいるらしき痕跡に食糧難解決の糸口を見出し喜ぶナミとサンジの隣でロビンは島全体を観察していた。
さらに島に近づくと海獣の骨は想像以上に大きい。見上げても全景が見えないほどの巨大な骨格にロビンはある島の特徴を思い出していた。
「この島まさか……」
「デッケェ~骨だな~~!巨大生物がいる島かな?」
思うところがあるのか島の観察を続けるロビンの後ろで、いつの間にか風呂から上がって戻ってきたルフィが巨大海獣の骨を仰ぎ見て感嘆していた。 - 21122/09/28(水) 22:39:12
「リトルガーデンじゃあるまいしそうそうそんな島あるわけねェだろルフィ」
『デケェ動物がいるぞ』
「いやァァァ~~~!!」
ルフィの意見を否定するウソップだが、端的なゾロの報告に絶叫する。
「おい、ウソップ!あれ見ろ!」
ルフィが隣で騒ぎたてているウソップをバシバシと叩きながら叫んだ。
「ゴリラが洗濯してる!!」
「何言ってんだ、ルフィバカも休み休み言えゴリラが洗濯するわけ……しとるーーーー!!」
「な?」
「ゴリラが洗濯しとるーーーーー!!!」
ルフィが指さした先の海岸には確かに一匹のゴリラが棒から棒へ渡したロープへ洗濯ものを干していた。
「なんでゴリラが…?」
「この島面白れーな~~」
ウソップ同様不思議がるサンジの隣で、ルフィがヒャッヒャッヒャと笑う。 - 22122/09/28(水) 22:44:19
「待てルフィ~、この島にはきっと凶暴な肉食獣と食人ゴリラが住んでいるに違いない。上陸はやめにしよう~」
「よし、錨を下ろせ!あのゴリラ仲間にしよう!!」
「面白ェって理由で勧誘すんじゃねェ!!ただでさえロボだの白骨死体だの増えてんだウチは」
島の状況に三者三様の反応をするウソップ、ルフィ、サンジだが、サンジの発言の対象となった二人が血気盛んに異議を申し立てる。
「何度言ったらわかんだ!おれはロボじゃなくてサイボーグだ!!」
「ああ、変態のな!!」
「なんだわかってんじゃねェかこの誉め上手め」
「いや誉めてねェぞ!」
照れるフランキーと激しく手を振って否定するサンジ。
照れて頭をかくフランキーとは対照的に、険しい顔のブルックがサンジに詰め寄った。
「ちょっとサンジさん今回は私も物申しますよ!」
「人のことを白骨死体呼ばわりなんて人権侵害もいいトコロです!!」
「…ところでナミさん、私の場合”人権”って”骨権”…になるんですか?」
「知るかァ!!」
ブルックから話を振られたナミが鋭いツッコミを入れたところで、船が接舷できる距離に近づいてきた。 - 23122/09/28(水) 22:50:18
海岸近くには小高い丘と港町らしき建物の集まり。
サニー号の錨を下ろし、一味が島に上陸すると動物たちが恐る恐る建物の陰から現れた。
ゾロの報告通りどの動物も普通の人間が襲われればひとたまりもないような巨大さだが、その見た目に反して一味を襲ってくるような様子は微塵もない。
「チョッパーこいつらなんか言ってんのか?」
「何も喋ってくれねぇ…おれたちのこと警戒してんのかな」
先程からチョッパーが何度か動物たちに話しかけているが、動物たちからは何の反応もない。彼らの眼前を通るとチラリと視線を向けるのみで鳴き声ひとつ上げなかった。
ゾロが動物たちの反応の薄い理由を訪ねたが、チョッパーにも原因はわからないようで首を傾げるばかり。
チョッパーが諦めず動物たちの行く手を遮って話しかけようとすると、声が聞こえてきた。
「あなたたち海賊?この島に何しに来たの?」 - 24122/09/28(水) 23:06:26
ルフィ達の前方、小高い丘のようになっている部分の側面は崖のように切り立っており、その崖の上に少女が立っていた。
「待って、私たちは…」
まずは、少女に略奪の意思がないことを伝えようとするナミだが、少女の顔を見て驚愕に息を詰まらせる。
崖の上に立つ少女の髪は白と赤のシメントリー。わっかを作る様に後ろで結んだ髪に、大きなヘッドホン。
白いワンピースに白とピンクのダボダボのパーカー。ファンなら忘れようもない、電伝虫越しに何度も見た姿。
「えっ…嘘…まさか……プリンセス・ウタ!?」
「えーーーッ!!ホンモノーーーー!!??」
口に手を当てても驚きと喜びを隠せないナミと眼前の光景に感激の涙を流すチョッパーを見て、ウタは苦笑して手を振った。
「私のこと知ってくれてるんだ…ありがとね!」 - 25122/09/28(水) 23:10:44
「知ってるーーー!めちゃめちゃ知ってるーーー!!」
前々からウタのファンであるウソップとブルックも突然の邂逅に驚きと喜びを隠せない様子だったが、もう一人別の理由で喜びを隠しきれない人物がいた。
「ウタ?お前あのウタか!?」
ルフィがウタが立っている崖の真下まで駆け寄って声を張り上げる。
「ん?誰?」
ウタの位置からは真下にいるルフィの顔は麦わら帽子に隠れて見えない。
「ルフィさん、ウタさんのこと知ってるんですか?」「一味で一番そういうのに興味ないモンだと…」
ブルックとウソップが意外そうに言うと、ルフィは振り返って答えた。
「ああ、こいつシャンクスの娘だからな」
今日一番の驚きの情報にルフィ以外の一味の全員が驚きの声を上げた。
「ええ~~~~~!!??」 - 26122/09/28(水) 23:14:41
そして驚いているのはウタも同様だった。
「ッ………まさか…ルフィ…なの?」
思わずウタがたじろぐ。驚きとともに喜びの感情を隠し切れないルフィとは対照的に、そう言ったウタの声にはただ動揺のみが乗っていた。
「ん?ウタ…お前どうした?」
ウタの反応が思っていたものと違ったためかルフィが聞き返すが、その返答を遮ったのはこういった場面には珍しくロビンだった。
「話の腰を折ってごめんなさい。ウタ、この島はエレジアよね?この動物たちはいったい…」
「それは……」
ウタはどう話すべきか迷っているようだったが、しばらくするとハッとして、
「それよりも早く船を島の裏手に動かして。こんなところにいたら…」
ウタがそう言いかけたところで、
─────空から人が降ってきた。 - 27122/09/28(水) 23:15:18
突如上空から降ってきた人物はウタの真横で急停止した。
今しがた空から降ってきた謎の人物はどうやってかウタの隣で空中に浮遊し、港のルフィ達を睥睨していた。
落下中はよく見えなかったが、ウタの隣に並ぶと3メートルはあろうかという体躯の目立つ大男。
身構えるルフィ達は男が何者かを測るためにその姿を凝視した。
まず登場の仕方も度肝を抜かれたが、それ以上に異様なのは男の風体だった。
男の纏っている和装と肩にかけた黄と橙の縞の羽織は年月を感じさせる風化の具合。
羽織同様、風に棚引く金色の長髪は獅子の鬣を思わせる猛々しさ。
しかし、その派手な装いよりも目を引く特徴が二つ。
目にも眩しい金色の出で立ちよりもさらにまばゆい直映り。
男に両足はなく、本来足があるべき場所からは二振りの刀剣が覗いていた。
そして最たる異様は男の頭部。男の頭部には大型の舵輪が縦向きに突き刺さっていた。
五体満足どころか、内三体は異様の姿。
しかして、男の圧倒的な存在感は調和すべくもないこれらの要素を支配し、強烈な威厳として纏め上げていた。
男の異質偉容の出で立ちにも慣れているのか、隣で浮遊する男に向かってウタは冷たく聞いた。
「…何の用?シキ」 - 28二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 23:15:56
ゴリラ…?まさか…
- 29二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 23:17:14
やっぱり尾田荘メンバーだああああ!
- 30122/09/28(水) 23:18:01
今書いてるのがここまで!
後は書き次第明日の夜以降投稿します。
前置きが想像の5倍くらい長くて驚いている…本当に申し訳ない… - 31二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 23:20:26
まさか…スカーレット隊長!?
- 32二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 23:21:10
ssならタイトルにつけた方がわかりやすかったのでは?
- 33二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 23:22:35
これは大作になるぞ…!
釜は…もうあるか - 34二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 23:24:25
救済ssかと思いきやそっちのパターンで来たか〜…
- 35122/09/28(水) 23:26:50
シキと呼ばれた男はニヤリと笑い大げさな手振りを交えて話し出した。
「連れないこと言うなよ、ベイビィちゃ~ん。泣いちまうぜおれァ。大事なパートナーが海賊と一緒にいるもんだから襲われてんじゃねェか、って文字通り飛んできたのよ」
「アンタも海賊でしょ」
「ジハハハハ、キツイこと言うねェ!間違っちゃいねェが」
ウタの冷え切ったツッコミを軽く流して笑うシキ。 - 36122/09/28(水) 23:28:28
- 37二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 23:29:54
シキって老化諸々の弱体化含めても本来今のルフィでも勝てるかどうかってラインだからな…
- 38二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 23:31:33
さすがに老化とかのデバフ入ってたら今のルフィなら行ける。未来視ないとあの高速戦闘についていけないからトットランドまでのルフィならキツいと思う。
- 39二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 03:23:12
保守
- 40二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 09:48:02
保守
- 41二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 16:04:16
ほ
- 42122/09/29(木) 19:43:13
「シキ?……まさか…”金獅子のシキ”!?」
彼らの会話を聞いていたロビンは、常に冷静な彼女には珍しく驚愕の感情を表しながら問いただした。
「シキ…そんな海賊が確かいたような…。待ってくださいね、今私の灰色の脳をフル回転させて思い出しています……。あっ、私回転させる脳ないんでした!ヨホホホホホ!!」
スカルジョークに余念のないブルックを余所にロビンが続けた。
「…シキは”海賊王”ゴールド・ロジャーと渡り合った大海賊。かつてこの海に君臨していた元”四皇”の一人よ」
「よよよよよ、四皇~~~!!!」
「ゴールド・ロジャーとーーーーー!!!なんでそんな怪物がこんなところに~~~!!!」
ナミとウソップが悲鳴を上げる。 - 43122/09/29(木) 19:55:20
二人の反応ももっともである。
麦わらの一味もこれまで多くの強敵と戦ってきた。”王下七武海”クロコダイル、モリア、政府の暗殺機関CP9。
そのいずれもが並々ならぬ強敵であり、化物と形容しても差し支えない強さを持つ者達ばかり。
しかし、相手が”四皇”となるとその強さの質は別格となる。
”四皇”とは偉大なる航路後半の海に君臨する海賊の頂点。
それぞれが多くの部下、傘下と独自のナワバリを持ち、一海賊団で”海軍本部”、”王下七武海”と拮抗すると言われる強大な戦力。
偉大なる航路後半の海で”四皇”に睨まれて生き残るすべはない。 - 44122/09/29(木) 19:56:04
突然海賊人生の岐路に立たされ、慌てふためく彼らを眺めながらシキは興味なさそうに言った。
「ジハハハハ、なに別にとって喰おうってんじゃねェ。おれは今事業の最中なんだ。海賊ってのは海の支配者。お前らみたいな海賊ごっこのガキ共に構ってる暇はねェのよ。とっとと出航するなら見逃してやるよ」
「……支配?」
シキの言葉にルフィがピクリと反応する。
「見逃してくれるってよ!」「よし、すぐ出航しましょう!」
シキの言葉を聞いたウソップとナミが息を合わせてサニー号を出航させようと甲板を駆け回る。
「おい舵輪」
サニー号の錨を上げようとする2人を遮るようにルフィがシキに向かって言い放った。
「お前、ウタになんかしたのか」 - 45122/09/29(木) 20:04:59
「おいおいルフィ~、見逃してくれるって言ってるのになんで喧嘩売るんだよ~」
ウソップが涙声で嘆くがルフィが聞き入れる様子はない。
ルフィは変わらずシキを睨みつけていた。
「なんかってのは何のことだ?」
シキは敵意を込めたルフィの視線を涼風のように受け流して応じた。
「ウタがお前なんかと組むわけねェ」
「ジハハハハ、口の減らねェガキだ。つまりお前はおれの興行に文句があるってわけだ。さっきは見逃してやると言ったが、そうなりゃ話は別だ」
シキがおもむろに手をかざす。
「おれをぶん殴りてェってツラしてるな?ジハハハハ!望み通り相手してやろうじゃねェか。かかってきな」 - 46122/09/29(木) 20:08:37
そう言うと、まるでシキの言葉に反応するかのように周囲の建物が浮き上っていく。
「ちょっとシキ!!」
「ああハイハイ、殺さねェよ」
まさかここで戦う気かと語気を強めるウタに、シキは駄々をこねる子供を安心させるように言うと、
「こっちとしても都合がいい」
そうぼそりと呟いた。
「結局やんのか、なんの能力だ?」
「そうこなくっちゃな!」
一方、サニー号の上では船番のはずだったメンバーも臨戦態勢に入っていた。
不服そうに言いつつも腕を鳴らすフランキーと、先程まで興味がなさそうに寝ていたゾロも戦闘の気配を感じ取り、獲物を見つけた肉食獣のように唇の端を吊り上げながら腰の刀に手をかける。
「小手調べだ。捌いてみな小僧ども!」
シキがかざした手を振ると、シキの周囲に浮いた岩や建物がサニー号めがけて飛んできた。 - 47二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 23:46:51
展開がめちゃくちゃ楽しみ!!!
- 48122/09/30(金) 00:16:01
保守してくれた人、読んでくれた人ありがとうございます!
もう少し投稿するつもりだったんだけどキリのいいところまで行かないので、続きは明日の夜投稿します! - 49二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 08:52:38
夜か、続き楽しみだなあ
- 50二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 09:17:12
支援
- 51二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 09:35:50
もしかしてジンベエ居ない?
- 52二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 10:51:53
ウタが19歳設定やぞ
- 53二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 11:16:26
ストロングワールドでの合流か………
- 54二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 20:46:00
保守
- 55122/10/01(土) 03:08:13
「一刀流 三十六煩悩鳳!」「ストロングライト!」
船上のゾロとフランキーが次々と飛来する岩や瓦礫を破壊していくがシキの周りに浮遊する物体は増えていく一方。
このままではシキの手数に押し負けてしまうことは火を見るよりも明らかだった。
「キリがねェ」「これが奴の能力ならシキ本体を叩かねェとあんま意味ねェな」
「六輪咲き」
「おおッ!?」
突如シキの体から6本の腕が咲き誇り、シキの腕と上半身を固定する。さすがのシキも想定外だったのかうめき声をあげた。
「クラッ…!」
続けてシキに関節技を極めようとしていたロビンはその場で膝をついた。
一方、関節技を極められる寸前だったシキは変わらず宙に浮いたままである。
「ロビン!?あいつ何したの!?」
次の瞬間には関節を極められたシキが地面に落下すると思っていたナミは驚いて、何が起こったのかとシキを見遣った。
シキの体にはいまだロビンの咲かせた腕は健在。
しかし、シキの体から咲いた6本の腕にはそれぞれ水塊がまとわりついていた。
「あれもシキの能力…?」
「ジハハハハ!そう!おれはフワフワの実の浮遊人間!自分自身と触れた物を自在に浮遊させることができる。この通り、岩や海も自由自在よ!さて、能力も説明してやったしハンデはこれくらいでいいな?」 - 56二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 03:09:09
このレスは削除されています
- 57122/10/01(土) 03:09:54
帰って来るの遅くて全然書けてない…すまぬ…
続き夕方には投稿します - 58二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 03:12:10
無理せずに…!待ってます!
- 59二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 06:07:53
- 60二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 08:20:50
ほしゅ
- 61二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 12:18:10
保守
- 62二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 17:32:37
保守
- 63122/10/01(土) 18:38:42
「獅子威し“地巻き”!!」
シキがそう言うと、シキの真下の地面が獅子の頭部の形に盛り上がり、そのもたげた獅子の頭がサニー号に向かって襲い掛かってきた。
「ロビン、サニー号任せるぞ!」
シキにかけた能力を解除したロビンに向けてそう言い放つとゾロは船から飛び降り、一直線に港町の直上に佇むシキの方へ走っていった。
「三刀流」
ゾロが港町の建物を足場に飛び上がり、獅子頭に向かって突進していく。
「”牛鬼…勇爪”!!」
ゾロの突きが獅子頭を破壊し、突き抜け、そのままシキへ刃を向ける。
そのままシキを貫かんとする勢いの突きに対しシキは右脚を上げ、脚に刺した刀剣の切っ先で難なく受け止めた。
「なッ…!!」
渾身の突きを受け止められ驚愕するゾロへ、シキは右脚の刀を器用に操り三刀の上からかかと落としを決め、ゾロを真下の港町へ蹴り飛ばした。
「こんにゃろ!必殺!アトラス彗星!!」
ウソップが巨大パチンコから放った玉は4方向に枝分かれし、シキの左右と下方、少し遅れて上方で爆発した。
ゾロへの追撃のため下に向かおうとしていたシキが方向転換し上空へ移動する。
「ウソップナイス!くらいなさい!”サンダーボルト=テンポ”!!」 - 64122/10/01(土) 18:50:09
上空に局所的に表れた黒雲から稲妻が迸り、シキに直撃した。
「シビれるねェ、お嬢ちゃん。いい女じゃねェか」
雷が直撃して黒焦げになるもさしたるダメージを感じさせずシキはナミの方に目を向けた。
「ナミさんに色目使ってんじゃねェよクソ舵輪!!」
ナミへ向かおうとするシキを引き離すようにサンジが横っ腹に蹴りをたたきこむ。
島の海岸近く、フランキーのいる方向に吹き飛ばされるシキ。いつの間にか移動していたフランキーがそれを待っていたかのように構えをとる。
「ナイスパスだぐるぐる!風・来・砲!!」
フランキーの両腕に接続されたコネクターから放たれた空気の塊に激突され、またも別方向に吹き飛ばされたシキは島中央の尖塔にぶつかった。
岩壁が壊れる破砕音と甲高い音が入り混じる。
「効いたかよ!バカ野郎め!」
シキが吹き飛ぶのを確認し、掛けているサングラスを跳ね上げ勝鬨を上げたフランキーの目前に目にも止まらないスピードでシキが現れた。
「強風は止めてくれるかい兄ちゃん」
シキがそう言うと、次の瞬間フランキーはシキに顔面を鷲掴みにされ港町に投げ飛ばされていた。 - 65122/10/01(土) 19:08:47
「フランキー!!」
粉塵を巻き上がら建物に激突するフランキーの身を案じ、サンジが叫ぶ。
一方、戦闘の中心となっている港町直上から少し離れた場所で、ウソップ達は次なる攻撃の準備を整えていた。
「いくぞ、チョッパー、ブルック!超巨大パチンコ”クワガタ”!ブルッチョ彗星!!」
「おう!」「お任せください!」
チョッパーとその背に乗ったブルックがウソップの巨大パチンコに弾かれシキの背後に向かっていく。
「"刻蹄…"」
「"桜吹雪"!!」
背中からチョッパーの攻撃を受け、シキは一瞬苦悶の表情を浮かべるがすぐさま振り返りチョッパーの首元を掴んでニタリと笑った。
「ハハハハハ!まずは一匹目…!!」
シキは左手でチョッパーの首元を掴み、右手を鉤爪のように曲げてその喉を描き切ろうと腕を振り上げた。
「ヨホホ!頭上注意ですよ!”スワロー・ボンナバン”!」
チョッパーが死の危険を感じ青ざめるが、シキの右腕が振り下ろされる直前でチョッパーの背から飛び上がっていたブルックがシキめがけて刀を突き下ろした…が、
シキが空中で後退しブルックの突きを躱すと、ブルックはそのまま港町へ落下していった。 - 66122/10/01(土) 19:12:43
「ああああああァ~…!」
悲鳴を上げながら地面へ落下していくブルックだが、その攻撃は無駄に終わったわけではない。
ブルックの攻撃を避けるためシキが手を離したことによって、チョッパーは危機から脱していた。
「”ギア2”!”ゴムゴムのJET銃”!!」
そしてそのスキを見逃さずルフィが攻勢をかける。
赤い皮膚に蒸気を纏い、目にもとまらぬルフィの攻撃をどてっ腹に受けたシキは後方へ吹き飛ぶが空中で一回転してから姿勢を制御して言った。
「なかなかいいチームワークだ。だが一人一人はたいしたことねェなァ」
「お前ェ!!ギア3!ゴムゴムの!!」
ルフィがギア2を解除し、右腕に空気を送り込むと、右腕がまるで巨人族のそれのように肥大化した。ルフィは飛び上がり、巨大化した右腕をシキに向かって撃ち出す。
「ほう」
受けて立つと言わんばかりに上空のシキが右腕を振り上げる。
二人の拳が交わろうとしたその時、───花火が打ちあがった。 - 67二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 00:24:25
花火?
- 68二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 00:27:36
期待
- 69二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 09:33:53
保守
- 70二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 13:22:11
保守
- 71二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 20:49:22
保守
- 72二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 21:34:20
このレスは削除されています
- 73二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 21:57:39
保守
- 74122/10/02(日) 22:05:48
花火は海岸線を取り囲むように次々と発射された。
続けて鳴り響く音楽に何処からか現れたスポットライトの光。
赤、緑、青、色とりどりの光が乱舞し、ルフィを、シキを照らしていく。
何事かとあたりを見回すルフィとシキの間に球状の光が現れ、二人を引き離すように炸裂した。
「なんだァ!?」「おいおい、こりゃあ…」
突然の出来事に銘々反応するルフィとシキ。
戸惑うルフィを尻目に港町を駆け回るスポットライトは崖の上に集まり、そこに立つウタを照らした。
ウタは戸惑う海賊たちを意に介さず、マイクを手に歌いだした。 - 75122/10/02(日) 22:07:57
『散々な思い出は悲しみを穿つほど』
ウタの周囲に音符の意匠をもった兵隊のようなものが現れゾロたちに向かっていく。
「なんだコイツら!?」
斬り飛ばしても細かい音符に分解してから。再度兵士の姿に集結して麦わらの一味へ襲いかかる。。
『やるせない恨みはアイツのために置いてきたのさ』
帯状に実体化したスポットライトがルフィを包み込むと、色とりどりの光線がルフィを捕まえ、四肢を縛り上げた。
ウタが自分たちに攻撃してきたことが信じられずルフィはウタに向かって叫んだ。
「何すんだウタ!!」
『あんたらわかっちゃいないだろ本当に傷む孤独を』
「ルフィ!?ぐおッ!!」
捕まったルフィの方向いたゾロへ巨大な音符が激突し空中の五線譜の方へ弾き飛ばした。
他の仲間も物量に押され次々と五線譜の方へ吹き飛ばされていく。
ウタが歌いを終わることにはルフィは帯状になったスポットライトに雁字搦めにされ、麦わらの一味は巨大な五線譜貼り付けられていた。 - 76122/10/02(日) 22:25:57
「…コイツらを守るたァ」
「海賊嫌いは治ったのかい、ベイビィちゃん?だったら、おれにももっと優しくして欲しいもんだ」
シキは葉巻に火をつけて一服しながら、ウタへ冗談交じりに問いかけた。
「守ったわけじゃない。捕まえたの。これ以上ここで暴れないで」
相変わらず冷たく言い放つウタに対してルフィは叫んだ。
「おい、ウタ!なんでこんなヤツと組んでんだ!お前は自由な赤髪海賊団が大好きだったじゃねェか!!」
「…シキは私の配信を支援してくれてるの。」
「プリンセス・ウタが海賊と!?」「ウタは海賊嫌いなんじゃなかったのか!?」
それを聞いたナミとチョッパーが驚いて疑問を投げかける。ウタが海賊嫌いなのはファンの間では有名な話。
先程ルフィが言いだしたシャンクスの娘という情報も驚きだが、海賊と組んで配信している、というのはこれまでの”ウタ”像を破壊する事実であった。
ウタはそれらの質問には答えず、ルフィだけを見て問いかける。 - 77122/10/02(日) 22:27:04
「ルフィはなんで海賊になったの?」
「海賊王になるためだ!」
「お前は何で海賊になるのやめちまったんだよ!?フ―シャ村にいたときは、自分のこと赤髪海賊団の音楽家だって言ってたじゃねェか!!」
「シャンクスは!…私のことを家族だなんて思ってなかった!私をこの島滅ぼして!私をここに捨てていったのよ!!」
そう声を張り上げるウタはルフィ達がこの島に来てから初めて感情を露わにしているように見えた。
「嘘だ!!シャンクスはそんなことしねェ!!おれは信じねェ!!」
ルフィが即座に否定する。
そんなルフィを見てウタは項垂れ、マイクを持つ手をだらりと下げて言った。
「もういい、何を言っても真実は変わらないんだから…」
「次会うときは、私の『新時代』の中でだよ。じゃあね、ルフィ」
そう言って背を向けるウタを見ながら、ルフィ達の視界は後暗転した。 - 78122/10/02(日) 22:28:34
半年前と少し前 偉大なる航路前半の島 エレジア
転機は空からやってきた。
「いい歌だなお嬢ちゃん」
いつも通り海を見つめながら歌っていたウタのところにその男は現れた。
「おれかい?おれはただの通りすがりの海賊さ。あんたの歌に惚れた。俺にあんたを支援させちゃァくれねェか?海賊風に言えば『同盟』ってやつだ」
そう言って男は最新式の映像電伝虫を差し出した。
「これでお嬢ちゃんの歌を全世界に配信するんだ!」
男はウタがまさに求めていたものを差し出した。
ウタがここにいることを、ウタの歌を世界に発信する方法。
ウタが世界と関わるためのたった一つの可能性を。
結局、ウタは男の差し出したものを受け取った。
こうして、お互いに本当の目的を何一つ話さない薄っぺらい同盟は始まった。 - 79122/10/02(日) 22:32:14
保守ありがとうございます!
続きはたぶん明日の夜になります - 80二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 00:32:00
めちゃくちゃ良い…
尾田荘スレ見て麻痺しかけてたけど、ウタと海賊ならこんくらいギスるよなそりゃ
体にいいギスギスだ - 81二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 00:51:42
両足刀のあやしいおじさんだけど映像電伝虫くれたんなら仕方ないよな…
- 82二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 07:33:23
ゴードンさんは無事だろうか?
- 83二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 17:27:31
保守
- 84二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 00:07:07
シキの目的がわからん
- 85二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 00:13:47
シキはプルトン欲しがってたんだよなァ…
- 86二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 00:22:27
保守
- 87122/10/04(火) 02:05:41
目を開けるとルフィ達は建物の中にいた。
建物の中には、ルフィ以外の麦わらの一味8人全員が思い思いの姿勢で待機しており、どうやら目だ覚めたのはルフィが最後の様だった。
ルフィが起きたのを確認すると一味の前、部屋の中央で待機していた男性はどこか威厳を感じさせるよく通る声で語りかけた。
「全員…目が覚めたようだね…。ああ、君たちの船は今頃スカーレット君が移動させているから安心してくれ」 - 88122/10/04(火) 02:07:20
- 89二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 02:31:23
- 90二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 02:43:54
無理するな!!ちゃんと寝てくれ!!!!
- 91二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 12:36:30
保守
- 92二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 12:39:46
自分の生活第一に続きを投稿してください。
- 93二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 20:43:47
保守
- 94二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 07:02:29
保守
- 95二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 07:23:23
保守
- 96122/10/05(水) 08:35:06
- 97二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 16:32:19
待ってます!
- 98二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 22:51:39
ほ
- 99122/10/06(木) 01:32:25
ルフィ達のいる石造りの広間は何百人か収容できそうなほどの広大さで、一見して家ではなく城のような重厚なつくりをしていた。
ルフィは周囲を見回し、仲間と手元の麦わら帽子が無事であることを確認した。
「全員無事だな。おっさん誰だ?」
「私はゴードンという者だ。かつてこのエレジアを治めていた」
ゴードンと名乗る老人の説明に引っかかりを覚えたフランキーがゴードンに聞き返した。
「かつて、ってのは…。さっきの人っ子一人いねェ港町と関係あんのか?」
「エレジアは10年前一夜にして滅んだと言われているわ…現四皇”赤髪のシャンクス”の手によって」
「嘘だ!シャンクスがそんなことするわけねェ!!」
ロビンの説明にまたも間髪入れず否定するルフィ。しかし、ロビンもそれを否定することなく続ける。
「…”赤髪のシャンクス”に悪い噂は聞かないわ。それに、ここは『魔王』伝説の根付く土地。だから、私はエレジアが滅んだのは別の原因なんじゃないかと思ったのだけれど…。例えば、港町にいた動物たちが暴れだしたら小さな国なんてひとたまりもないわよね」
「そうだ、あの動物はなんだったんだ?」
「ウホウホ」
チョッパーの疑問にいつの間にか広間に入ってきたゴリラが同意した。
「「「「「いや、おめェのことだよ!!!!」」」」」 - 100122/10/06(木) 01:47:43
当たり前のように広間に入ってきて当たり前のように空間になじんでいるゴリラに麦わらの一味から総ツッコミが入る。
しかし、ゴードンは慣れているのか手を挙げてゴリラにねぎらいの言葉をかけた。
「おかえり、スカーレット君」
「彼らはシキが連れてきたのだ。シキはどこかの島で動物を進化させる実験をしていたらしい。エレジアに放たれているのはその実験体となった動物たちの様だ。そこのスカーレット君もその1人。いや1ゴリラか…?非常に知能が高く、シキからウタや私の見張りを言いつけられているようだが比較的自由に行動していて、困ったときには手助けをしてくれる」
「シキの部下ってことか?そんなやつ信用できんのか?」
ゴリラは洗濯が終わったのか、先程海岸で干していた赤い服を身に着けていた。サンジが突如現れたゴリラを訝しむが、その対象となったスカーレットはサンジの意を汲んだのかウホウホと喋りだした。その言葉を聞きながらチョッパーが翻訳する。
「おれは今お前たちの船を島の裏手へ移動させてきたところだ。おれが信用できないというのなら疑うのは些か遅いんじゃないか?、だって」
「ゴリラのくせに嫌みな野郎だ、おろしてやろうか?」
「やめておけ、争いは同じレベルの者同士でしか発生しない、だって」
「おめェが下ってことだよな、このクソゴリラ!!!」
「ゴリラ以下」
「ああァ!!!???うるせェ”藻”!!」
「やめなさい!!」
最初はサンジがスカーレットに突っかかっていたはずが、いつの間にかいつも通りのゾロとサンジの喧嘩に発展しそうになり、呆れたナミが仲裁に入った。 - 101二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 11:25:17
保守
- 102二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 11:53:11
1ゴリラか…?
天然ボケゴードンさんを感じてすこ - 103二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 19:44:53
保守
現状だとどうなるか先が見えん - 104二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 20:19:10
保守
- 105二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 22:29:57
保守!
- 106二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 06:57:00
1匹じゃなくて1ゴリラなのが草
ゴードンさんはウタへの人質なのかな? - 107二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 07:05:08
シキの目的はやっぱりトットムジカか?
- 108二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 15:28:55
ウタがトットムジカだしたら詰みな気がする 二年前時空だし
- 109二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 21:43:52
シキが世界を支配するのに古代兵器級のトットムジカは魅力的だろうね
- 110二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 21:45:27
クソギミックな分防御力やHPは弱く設定されてると信じたい
- 111二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 23:29:10
ほし
- 112二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 06:07:00
保守
- 113二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 15:47:22
待機
- 114二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 15:48:39
ウタウタの能力が現実に干渉されてないか?
- 115122/10/08(土) 18:15:56
後ろで火花を散らし始めたゾロとサンジを余所にルフィは帽子をかぶり直し、ニカッと笑ってゴードンに向き直った。
「助けてくれてありがとな!おっさん」
「いや、助けたのは私ではないよ。君たちをここに運んだのはウタだ」
「プリンセス・ウタがおれ達を運んだ、ってどうやって?」
麦わらの一味9人全員をウタの細腕で運べるとは思えない。ウソップの当然の疑問にゴードンが答えた。
「ウタはウタウタの実の能力者。自分の歌を耳にした者の心をウタが作った仮想世界に招き、現実世界に残された体はウタが操ることができる。先程の戦いの最中にウタは能力を発動し、君たちの心を仮想世界”ウタワールド”に招いた。そして現実世界に残された君たちの体はウタの指示通りに移動してこの城までやってきたのだ」 - 116122/10/08(土) 18:43:19
「じゃあ、さっきの戦いであの女が出してきた兵隊や音符はあの女が作った世界の中で起きた出来事、ってことか」
悪魔の実の能力は得てして物理法則を超えてくるものだが、それにしても先程のウタの能力の多様さと強力さはこれまで戦ってきた能力者たちとは一線を画していた。しかし、それが仮想の世界で起きたことなら、とゾロも得心した。
「私は耳栓をしていたのであの時”ウタワールド”の中で何が起こっていたかは私には分かりかねるが、”ウタワールド”は彼女の世界。大抵の物理法則は無視して彼女の思い通りにできるだろう」
「なんとも音楽の神様のような能力ですね」
ブルックが能力の強大さに感嘆する。歌を聞いたものを仮想世界に取り込むという時点で強力な能力だが、取り込んだ者の現実世界の体を操るなど最早無法もいいところだろう。あの歌声に耳を貸さないことなど初見では不可能といってもいい。
「おっさん、ウタはほんとにアイツと組んでるのか?」
「そう…だと聞いている…」
ルフィの質問にゴードンはどう答えるべきか迷いながら口を開いた。
「シキは、半年と少し前に突然この島にやってきた。私が彼と会った時には既にウタと何らかの話がついていたようで、ウタは彼を伴い『映像電伝虫を使って歌を配信したい』と言い出したのだ…。海賊嫌いになったあの子が海賊と手を組むのは意外だったが、ウタの声を世界に届けたいと思っていた私にとってもその提案は魅力的だった。そして配信を始めてみると、ウタの配信の視聴者数は予想通り、いや予想を超えて爆発的に伸びていった。配信にあたってはもちろん私の過去の伝手を辿って宣伝もしたが、多くは配信の手配やプランニングに関わったシキの手腕によるものだ。今回のゲリラライブもシキの発案らしい」 - 117二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 01:45:22
ほしゅ
- 118二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 08:51:35
保守じゃ
- 119二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 13:31:38
ほしゅほしゅ
- 120122/10/09(日) 21:50:47
「舵輪野郎の発案ってのはきな臭ェな」
「シキは、いやウタはゲリラライブである計画を実行するつもりなのだ」
「計画?」
「ああ……、その計画とは…」
ゲリラライブにシキが関わっていると聞きゾロが眉根を寄せる。
ゾロの問いかけに、ゴードンが伏せていた顔を上げ意を決して口を開くと、
「なにがロビンちゃんに向かって『おれの嫁にしたい』だ!!口気にをつけろよクソゴリラ!!!どうせウタちゃんにも同じように色目使ってんだろ!!」
「サンジおめェチョッパーの翻訳なしで会話できるようになってねェか?」
「あ、そうだゴリラ!お前おれの仲間になれ!!」
「ルフィあんた適当な理由で勧誘するのやめなさいよ!」
話題の中心はスカーレットに攫われていた。
「あの……聞いてるのかねッ!?」 - 121122/10/10(月) 09:16:01
書くスピードが遅くて申し訳ない
今日の夜続き投稿します - 122二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 14:01:32
無理せずな!!?!謝るなよ!!!!
- 123二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 18:54:24
ゆっくりでも大丈夫ですよー
こんないいものを読ませてもらってホントにありがたいです - 124二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:08:33
待機
- 125二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 23:04:21
保守
- 126122/10/10(月) 23:59:49
気を取り直してゴードンが咳払いをする。
「ルフィくん、君はウタと話していたように見えたがウタの知り合いなのかね?」
「ああ、あいつシャンクス達と一緒にフ―シャ村を拠点にしてたんだ。急に居なくなっちまったけどな」
ルフィの言葉にゴードンはしばらく黙り込み、言葉を絞り出すように言った。
「………ルフィ君頼む、ウタを助けてくれ。彼女は自分の命を引き換えにして、次のゲリラライブで世界中の人々を”ウタワールド”へ取り込むつもりなのだ!!」
エレジア上空 ”空飛ぶ秘境”メルヴィユ
現在、エレジアの上空には空島ともまた違う、空飛ぶ島が停滞していた。
島の地盤ごとシキの能力で浮遊させ、ある時から偉大なる航路上空を彷徨うこととなった文字通りの秘境。
その島の中央に聳えるのは威風堂々たる城、海賊”金獅子のシキ”の居城である。
そして今、城の内部では麦わらの一味との戦いから帰還したウタとシキが向き合っていた。 - 127122/10/11(火) 00:01:44
「ゲリラライブは今夜開催する」
「…何?」
突然そう言い放ったウタにシキが聞き返す。
それも当然、シキの計画ではゲリラライブはもう少し先の予定だ。
ライブ前に世界各地に映像電伝虫を配備することで、好む好まざるとに関わらず世界中の人々をウタワールドに引き込む、これがシキとウタの立てた計画の概要だった。
シキの財力と組織力によってこそ成せる荒業だが、シキは実際のところただ映像電伝虫を配備するだけでは不十分と見ていた。
シキの力をもってしても世界中に隙間なく映像電伝虫を配備できるわけではない。
もし、ある日謎の映像電伝虫から流れる音楽を聴いた人々が昏倒していったとしたら、ウタウタの実の能力の影響を免れた人々はどうするか?
頭の働く者がいれば何処かからの攻撃を疑い、自身が歌を聞こえない状態で映像電伝虫を処分するだろう。
ウタウタの実の能力は強力だが、相応の穴はある。
その補完のために、ウタに一定程度の知名度が必要だった。
”歌姫”ウタが一定の知名度を得ておりそのゲリラライブが行われる、という形で大々的な宣伝を行うのであれば、各地に配備してある伝電虫をゲリラライブの演出と位置付けることで電伝虫の排除を遅らせるというのがシキが講じた対策の一つだった。
そのために配信の度、計画のために必要な接続者数を試算していたのだが、前回の配信では目標数値にわずかに足りなかった。
確かに日頃の接続者数の伸びを見ればライブ実施時には目標数値に到達していても不思議はないがリスクを負うことに変わりはない。 - 128122/10/11(火) 00:02:44
「もう各地への電伝虫の配備は済んでるんでしょ?」
「済んでるが…嬢ちゃん、まだ接続者数の目標は…」
言葉を続けようとするシキを遮るように、ウタは右手を前に掲げた。
ウタが親指と人差し指で摘まんでいるのは齧った後のあるキノコだった。
「……マイク?」
「ネズキノコだよどう見ても!」
「「ハイッ!!」」
「……………………」
シキと彼の隣にいる部下Dr.インディゴのコミカルなやり取りを繰り広げるが、それを眺めるウタは微動だにしない。
その眼には手に持ったキノコの赤色が映り込み、ゆらゆらと炎の様に揺らめいていた。
「…………いいだろう。手配を進める。ライブの開始は今夜8時だ。喉の調子を整えておきな」
シキは観念したようにため息を吐きながら言った。
ウタはその言葉を聞くや否や城の出口へ向かって行った。 - 129122/10/11(火) 00:04:18
今日はここまで!
続きは明日の夜投稿できると思います! - 130二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 06:17:56
保守します
- 131二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 10:20:38
期待待機
- 132二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 20:26:18
保守するよ
- 133二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 06:04:03
保守
- 134二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 06:56:55
なんか映画より悲惨な結末になりそうこわい
- 135二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 16:00:31
保守保守
- 136122/10/12(水) 22:56:48
岩盤にウタを乗せエレジアまで下ろすと、シキは深いため息をつき椅子に座り込んだ。
「ハァ、ガキのお守りも楽じゃねェな。なァ、Dr.インディゴ?」
そう言いながらシキが目を向けると、Dr.インディゴは無言でなにやらパントマイムをしている。
「あ?」
「シキの親分!」
「喋るんかい!なんだ?」
「スカーレットから報告がありました。麦わら達はエレジアの城で待機しているようです」
「…なるほど。まあ、やつらがこの島で大人しくしているうちに計画を実行するのも手ではあるな。いい人質になる。ところで、例の薬は完成したのか?」
「はい。いつでも使える状態です」
「なら万全だな。時は来た!行こうじゃねェか”新時代”へ!!ジハハハハハ!!」
Dr.インディゴの返答を聞き、改めて自身の計画が盤石であると確信したシキは高笑いした。 - 137122/10/12(水) 23:32:21
シキの城から立ち去ったウタはエレジアに降り立った後、ふらふらと歩き続けていた。
ウタの手には配信用の映像電伝虫が1匹。この電伝虫に取り付けた信号が点灯すればゲリラライブの準備が整った合図。
ウタが電伝虫のボタンを押して配信を開始すれば、”新時代”が始まる。
誰も苦しむことのない、誰もが許される新しい時代が。
しかし、救いがすぐそこまで来ているにもかかわらずウタの気分は最悪だった。
最悪の気分のまま歩き続けたウタはいつの間にか城の前の岬にたどり着いていた。
もう日が沈む時間だ。夕日が岬に臨む海を真っ赤に染めたその光景から、ウタは目を逸らした。
ある人を思い出して直視なんてできなかった。
これまでも、ウタにできることなんてなかった。
ウタがしてきたことは過ちだけ。
ウタができることはもう……
「ウターーーーーー!!!」
「ルフィ」 - 138122/10/12(水) 23:33:13
つらつらと考え続けていたウタの思考をルフィの声が中断した。
大声でウタの名前を呼びながら突撃してくるルフィに感情のこもらない声で返答するウタ。
続けて麦わらの一味とゴードンがやってきた。
「プリンセス・ウタ!早まったマネはヤメロォ!!」
「ウタ!計画を中止するんだ!!君の歌声はこんなことをするためにあるんじゃない!!」
こちらもまた大声でウタに計画の中止を呼び掛ける、麦わらの一味とゴードン。
しかし、そんな彼らの訴えを余所にルフィはまた叫んだ。
「ウタ!!勝負しろーーーーーー!!!”ゴムゴムの”~~~」
ルフィが手を伸ばし、ウタの手前にある岩を掴む。伸び切った腕はそのまま縮み、岩を掴む手はそのままにルフィの体がウタの方へ向かってくる。
「”ロケット”ォ!!」
ものすごい勢いでウタの方へ突撃したルフィはウタにぶつかり、彼女を抱えて崖の下に落ちて行った。
誰もいなくなった岬に静寂が訪れ、サワサワと潮風が草木を揺らした。
「「「「なにやってんだあのアホ~~~!!!!」」」」
麦わらの一味の絶叫が虚しく夕焼けの海にとどろいた。 - 139二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 00:36:40
ホシュホシュの実
面白い - 140二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 10:37:26
保守
- 141二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 19:55:52
えっ…心中!!!?
- 142二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 01:01:38
落とさない
- 143二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 04:33:33
Keep
- 144二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 13:24:09
保守します
- 145二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 21:45:17
捕手
- 146二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 07:06:17
保守
- 147二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 15:59:29
楽しみ楽しみ
- 148二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 21:00:31
ルフィは
お前みてぇな
アホだよ - 149二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 21:03:41
Drインディゴがいるから不特定多数配信でんでん虫は作れないこともない...のか?
- 150二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 08:08:30
ほ
- 151二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 14:27:59
保守
- 152二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 23:17:03
保守
- 153二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 23:19:18
シキの本心が読めねぇな
- 154二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 07:14:24
せやな
- 155二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 17:53:52
保守
- 156二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 22:53:39
保守
- 157122/10/18(火) 00:00:35
岬に残された面々がルフィの奇行に絶叫する一方で崖から落下していくウタとルフィ。
当然ウタも想定すらしていなかった事態に当惑していた。
「何すんのよ!?」
「『度胸試し』だ!昔やったときウタは怖くて飛び降りなかったからな」
「ハァ!?あれはアンタが『度胸試しだ』とか何とか言って勝手に飛び降りたんでしょ!!」
「参ったって言ったら負けだ!」
人の話を聞いているのかいないのか、ルフィは左手でウタを抱え右手は岬の先端を掴んだまま今も伸び続けていた。
先の戦闘でも見せた悪魔の実の能力。ウタかルフィかどちらかが降参すれば伸ばした腕を縮めて助ける、ということか。
状況確認のためウタは眼下の光景に目を向けた。
下は、海だ。
岩場がないだけマシにも思えるがウタもルフィも能力者。海への落下が致命的なのには変わりない。
「私は…まだ死ぬわけにはいかない…。ルフィ、アンタこんな意地の張り合いで命を捨てる気なの!?」
「おれは海賊王になるまで死なねェしこの勝負に負けねェから大丈夫だ」
ニッと笑うルフィに、ウタは理解不能だと言わんばかりの表情で呟いた。
「何を根拠に…」
「今のウタに負ける気がしねェ」
「シャンクス達を信じられねェって言うんなら、島を出て追いかけて赤髪海賊団の皆に直接聞けばよかったじゃねェか。シャンクスに会う度胸がねェからこの島に閉じこもってんだ」
抑えたトーンで発したルフィの言葉は的確にウタの地雷を踏み抜き、トラウマを抉った。ウタがカッと目を見開き、怒りに声を荒げる。
「アンタに…アンタに何が分かるのよ!!私は…」
しかし、ウタの反論虚しく、彼女が言葉を言い切る前に2人は海へ落下した。 - 158122/10/18(火) 00:01:40
中々パソコン触れなくて続き書けなかった。申し訳ない。
続きは明日投稿します! - 159二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 05:37:10
期待待機
- 160二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 06:38:16
やっほぅ待機待機
- 161二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 12:26:13
2人とも海に落ちちゃったよ
- 162二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 12:33:06
ド地雷踏んでる!!
- 163二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 22:16:26
保守
- 164122/10/18(火) 22:42:01
転機は死者の灰に沈んだこの地に埋もれていた。
シキと組み配信を始めておよそ一ヶ月後。
配信の視聴者も順調に増え、鼻歌を歌いながら城に戻ろうとしていたウタは廃墟でそれを見つけてしまった。
10年前の映像を記録した映像電伝虫。何気なく映像を再生したウタは知ってしまった。
『この映像を見ている人…ウタという少女は危険だ…あの子の歌は世界を滅ぼす!』
息も絶え絶えに映像電伝虫に語り掛ける男性の声。映像にはエレジアを破壊し尽くす『魔王』とそれに対抗する赤髪海賊団の姿が映っていた。
ウタは知った。エレジアを滅ぼしたのは他ならぬ自分自身であることを。
もしウタがこの事実を知ることなく配信を続けた期間が長かったとしたら。
”新時代を作る救世主”としての自覚が芽生えた後にこの事実を知ったとしたら、ウタは”救世主としてのウタ”の使命と”本来のウタ”のパーソナリティの板挟みになったかもしれない。
しかし、今のウタの心に壮大な使命はなく、ただ一人の少女として自分がエレジアを滅ぼした事実を受け止めるしかなかった。
そしていつしかウタは歌うことに喜びを感じなくなった。
ウタにとって歌うことは喜びでも、人々を救う方法でもなく、贖罪のための道具になった。 - 165122/10/18(火) 23:09:22
「何やってんだお前は!?」
「す、すびばぜん…エホッ」
「大丈夫・プリンセス・ウタ!?息してるわよね」
海に落ちたルフィをゾロが、ウタをナミが抱えて海から引っ張り上げ、それぞれ海岸に下ろした。
「カハッ…ゴホッ…何が…度胸がない…よ…。これで私の…184勝目……」
飲んだ水を吐きだしながら息も絶え絶えに宣言するウタにルフィが食って掛かる。
「違う!おれの184勝目だ!おれは負けてねェ!参った、って言ってねェからな!!」
「認識の違いが甚だしいわね」
冷静にツッコミを入れるロビンを尻目に、ウタはルフィに敵意を込めた視線を向けた。
「さっきからなんで突っかかってくるのよ!?私はこれから”新時代”を作るの!!私が償うためにはこうするしかないの!!どいてよ!!」
「おれはお前が参った、っていうまでどかねェ!」
確固たる意志をもってウタの前に立ちふさがるルフィを前にして、ウタは糸の切れた操り人形のように項垂れ、低い声で呟いた。
「…もういいわ。じゃあ…アンタに参ったって言わせればここから消えてくれるのね…」
そう言ったウタの手にはいつの間にか手に握っていた映像電伝虫の配信開始ボタンを押した。
ウタは大きく息を吸い、先程までの態度が嘘のような笑顔で電伝虫に話しかけた。
『みんなーウタだよ!みんな楽しみにしてくれたかな?告知してたゲリラライブ、始めちゃうよーー!でも、その前に目の前にいるライブを邪魔する悪い海賊たちをやつけちゃうね!』 - 166二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 23:58:09
尖ってるなあウタ
- 167二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 07:07:11
保守
- 168二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 16:20:28
支援
- 169二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 00:25:00
待機
- 170二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 09:37:35
保守
- 171二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 19:25:28
保守
- 172二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 19:46:33
保守
- 173二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 02:50:09
保守
- 174二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 07:40:59
ぽ
- 175二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 17:44:14
ほ
- 176二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 21:51:45
保守
- 177二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 21:56:52
作者
せめて生存報告してくれ
落ちちまう - 178二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 08:29:35
ほ
- 179二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 16:22:11
ほ
- 180二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 00:23:30
し
- 181二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 10:09:20
ゅ
- 182二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 19:51:14
。
- 183二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 19:59:59
義によって保守致す
- 184二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:31:55
期待
- 185二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 06:58:35
保守
- 186二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 17:52:58
保守します
- 187二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 17:54:21
残りレス数が全部保守で埋まりそう
- 188二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 22:49:40
保守
- 189FILM N.G.22/10/25(火) 01:06:52
続きが気になる~金獅子&歌姫との決着がどんな風になるのかとても楽しみ
良い所でおあずけするじゃん1さん - 190二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 04:17:38
- 191二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 12:22:43
保守
- 192二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 21:13:13
2スレ目行く?
- 193二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 06:28:29
2スレ目いくとしたらスレ主がなんか言ったらかなー
- 194122/10/26(水) 13:15:26
たくさん保守してくれてありがとうございます!
保守してもらっておいて申し訳ないですが、忙しくて全然続き書けてない状態です
今週末くらいには落ち着くと思うので書ける状態になったらpart2立てて投稿します!
このスレは落としてもらって大丈夫です! - 195122/10/26(水) 13:16:35
今後どんなに忙しくても生存報告はするようにします!
- 196二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 19:13:43
- 197二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 23:56:53
それじゃあ埋めるね
- 198二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 00:00:27
続
- 199二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 00:00:40
き
- 200二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 00:00:55
待
機