- 1二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 13:40:28
昔々あるところに妻を亡くした父親と娘が住んでいました。
父親には娘が二人いましたが、姉の方は余所に嫁いで家を出ており今は妹の方と二人暮らしです。
暮らしは決して裕福ではなかったものの、親子は仲睦まじくお互いに支え合っていました。
ある日娘が川で洗濯をしていると、近くの茂みから不思議な声が聞こえました。
余りにもヘンテコな声だったので、娘は人のものではなく獣か鳥だと思いました。
好奇心をそそられた娘は恐る恐る茂みに近づいて、そっと覗いてみました。
するとそこには猟師の仕掛けた罠にかかった一羽の大きな鳥がいました。
鳥は娘が今まで見たことがないほど、美しい淡い桃色の羽をしていました。
足に罠が食い込んで痛いのか鳥は苦しそうに鳴いています。
可哀想に思った娘が罠を解いてやると、桃色の鳥はあっという間に空に向かって羽ばたいて行きました。
娘はしばらく空を見つめていましたが、ふと洗濯物のことを思い出し急いで引き返しました。 - 2二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 13:41:37
桃色…?
- 3二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 13:42:16
グラコレのあれか
- 4122/09/29(木) 13:42:59
そうです!アレに触発されました!続きますので…
- 5122/09/29(木) 13:45:28
その夜、家の戸を叩く音が聞こえました。
娘が出ると一人の男がそこに立っていましたが問題はその大きさです。
父親よりも遥かに背が高く、まるで天狗様か鬼のようです。
その上両目には奇妙な飾りをつけ、口元には怪しい笑みが浮かんでいます。
娘は恐々と尋ねました。
「あ、あの……どちらさまでしょう?」
「フッフッフッフ……夜分遅くに済まねぇ。慣れない山道なモンでちょっと迷っちまってなァ……
今夜ここに泊めてもらいてぇんだ。礼は弾むぜ」
少々柄の悪さが目立つのが気になりましたが、気の良い父親は承諾し謎の男を家に招き入れました。
男は居心地が良いのかすっかりくつろぎ始めました。(元々緊張している様子は微塵もありませんでしたが)
そして父親と娘の方を見ると、
「なあ、お二人さん……俺は今夜からちょいと、隣の部屋を借りて仕事に取り掛かりてぇんだ。
俺がそこに入っている間は絶対に中を覗かないで欲しいんだ」
親子は互いの顔を見合わせてから頷きました。
「フッフッフッフッフ…ありがとうよ。恩に着るぜ」
男は自分で言った通り、夜が深くなってきた頃に隣の部屋に移って仕事をし始めました。 - 6122/09/29(木) 13:58:00
翌日
親子が目を覚まして活動し始めた頃、隣の部屋から男が出てきました。
手にこの世のものとは思えないほどの見事な反物を抱えて・・・
「その反物は…」
「俺の仕事が終わったんだ。お嬢さん、こいつを町で売ってくるといい。高い値がつくはずだ。フッフッフッフ」
男は娘に反物を渡しました。
見た目だけではなく手触りもとても良かったので娘は驚きました。
このような代物を手に取れるのは、この世においては貴族様か将軍様しかいないでしょう。
朝飯を済ませると娘は反物を持って早速町に出ました。
男の読み通り反物はすぐに売れました。
目を付けたのは町一番の豪商で、目が飛び出るほどの値段で買い取ってくれたのです。
娘は手に入ったお金を持って家に戻り父親に報告をすると、すぐさま二人揃って男に礼を言いました。
「フッフッフッフッフ……いいってことよ。俺にはここに泊めてもらった恩がある。
それより、俺はまた今晩仕事に取り掛かろうと思ってる。約束通り絶対に覗かないでくれよ」
男は夜になると再び隣の部屋に籠りました。
そして次の日……
彼はやはり見事な反物を携えて部屋から出てきたのです。
これも町で売ってくるよう娘に言いつけると、
「ちょっと疲れたんでな……今日は休ませてもらうぞ」
自身は床に寝そべって気持ち良さそうに眠り始めました。
父親と娘は手渡された反物と男の寝顔を交互に見て、嬉しそうに微笑み合いました。 - 7二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 13:59:09
イトイトならまあ機織りも余裕だよな…
機織り機すらいらねぇ - 8二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 14:16:49
イトイトで作られた服って丈夫そうだしミンゴ以前の能力者たちは服飾で飯食ってそう
- 9二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 14:17:56
このレスは削除されています
- 10122/09/29(木) 14:21:18
それから二日ほど男はくつろいで休んでいましたが、三日目の夜になると…
「お二人さん……今夜はまた仕事に取り掛かるんでな。引き続き中は見ないでくれよ」
そう言って隣の部屋に閉じこもりました。
この日の夜は娘も裁縫の仕事をしていましたが、ふと隣の部屋が気になり始めます。
あの反物を織るのにいったいどのような神業が隠されているのか、絹のごとき素材はどこから出したのか…
娘は次第に居ても立ってもいられなくなりました。
好奇心に駆られるまま静かに忍び寄ると障子をそっと開け……中を覗き見てしまいました。
何と信じられないことに、そこに大男の姿はなく代わりに一羽の大きな桃色の鳥がいたのです。
鳥は自身の羽から美しい糸を繰り出すと、反物の形に寸分の狂いもなく編み込んでいるではありませんか。
その職人技は人間離れしており、まさに神業と呼ぶに相応しいものでした。
すっかり驚いてしまった娘はすかさず障子を閉めると、その場に崩れ落ち…半ば気を失うように寝込んでしまいました。
翌朝……
父親に起こされて娘はようやく目を覚ましました。
そして昨夜見たものをすぐに父親に伝えたのです。
父親もまたひどく驚き、二人揃って彼に問い出そうと決めたちょうどその時……
仕事を終えた男が反物を持って隣の部屋から出てきました。
「お嬢さん…あれほど見るなと言ったのに、見ちまったんだな……」
「あ、あの……本当にごめんなさい……!!つい出来心で……」
「娘がとんだご無礼を……私からもお詫び申し上げます」
娘と父親は男に向かって頭を下げました。
「フッフッフッフッフ……!人間、見るなと言われたら見たくなるもんだ。責めはしねぇよ」
男は反物を床に置くと自身も腰を下ろしました。 - 11122/09/29(木) 14:21:52
※誤字あったのであげなおしました!
- 12二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 14:24:28
そういやフラミンゴって和名で「紅鶴」ともいうらしいもんな
- 13122/09/29(木) 14:30:19
「もう察していると思うが……実は俺こそがお嬢さんが罠から助けてくれたあの鳥なんだ」
「……やっぱり、そうだったのね……」
「どうしてもお前に恩返しがしたくてよ……人間の姿を借りてやって来たってわけだ」
男の義理堅さに娘は胸が締め付けられるようでした。
「数日とはいえ、お前達親子には本当に良くしてもらった。俺は久々に心が安らいだよ。だが、俺としてはまだ恩は返しきれてねぇ……」
「そんな…私達こそ貴方様の反物を売ったお金でどれほど助かったか……どうかお気になさらずに……」
「悪いが俺はその辺に関してはケジメをつけておきたい性分なんだ。そこで……ある決断をした」
「……どのような?」
「俺には長年苦楽を共に過ごした家族がいる。そいつ等は非常に優秀で、幅広い仕事をこなしてきた猛者揃いなんだ。
だからそいつ等もここに呼んで一緒に住むことに決めた」
「「……!!!???」」
「人身売買、闇取引、暗殺、ヤクの密造密売、闇の仲介人……何でもしてやるよ。そうすれば巨万の富も夢じゃない!この家は輝かしいその拠点となる!」
想像を絶する単語の数々に父親と娘は絶句しましたが、男は意気揚々と話を進めます。
「将軍や貴族どもなんて目じゃない富を共に築いていこうぜ、お二人さん!
早速明日から俺の家族をここに呼んでやるよ。これが俺からお前達に出来る、真心のこもった最大限の恩返しってわけだ!フッフッフッフッフ!!!」
こうして父親と娘は助けた鳥から素晴らしい恩返しを受けたのでした。めでたしめでたし。 - 14122/09/29(木) 14:31:00
これで終わりです。書いていて楽しかった…!
- 15122/09/29(木) 14:39:24
ちなみに余所に嫁いだ姉はたまに夫と娘を連れて里帰りしてくる設定です
あと桃色の鳥さんには以前弟鳥もいましたが諸事情で今は亡くなっています - 16二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 14:46:47
いい話…ナノカナー?
- 17二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 14:59:24
うーん、バッドエンド!w
- 18二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 15:08:09
恩を仇で返されてない…?
- 19122/09/29(木) 15:54:23
※別バージョンを思い付いたので……
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昔々あるところに妻を亡くした父親と娘が住んでいました。
暮らしは決して裕福ではなかったものの、親子は仲睦まじくお互いに支え合っていました。
ある日娘が川で洗濯をしていると、近くの茂みからガサガサという音と低い唸り声のようなものが聞こえてきました。
娘は熊が近くにいるのではないかと怖くなりました。
反面とても男顔負けの大胆な娘でもありましたから、好奇心に負けて茂みの向こうを覗きに行きました。
娘は目を丸くしました。そこには猟師の仕掛けた罠にかかった一匹の大きな鰐がいたのです。
よく見ると鰐の顔には傷が一本入っています。昔、猟師によってつけられたものでしょうか。
鰐は娘の視線に気付くと威嚇するかのように睨みつけてきます。
しかし足に罠が食い込んで痛いのか、巨大な口からは苦しそうな呻き声が漏れています。
可哀想に思った娘は、
「……大丈夫よ。今これを外してあげるから」
鰐をこれ以上警戒させないように優しく声掛けしながら近づきます。
言葉の意味を理解したのか鰐は娘に襲ってくることはありませんでした。
娘が罠を解いてやると、鰐は素早く川に向かって行きました。
そして凄まじい水音が響き渡り、あっという間に沈んで消えたのでした。
娘はしばらく川を眺めていましたが、ふと洗濯物のことを思い出し急いで引き返しました。 - 20二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 16:41:15
あっ
- 21122/09/29(木) 19:45:16
読んで下さった皆様どうもありがとうございました!!
お礼が遅くなってごめんなさい…! - 22二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 19:46:58
- 23二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 19:47:10
読みやすくて面白かったです
また気が向いたら何か書いてください - 24122/09/29(木) 19:49:06
- 25二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 19:51:58
トレーボルだけは追い出せ
- 26二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 22:12:46
この鳥はこういうことするかといえばする
- 27二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 22:13:59
鶴の方は割と原作通りになってないか…??