ss【CP注意】私が消え去っても

12回目投稿22/10/02(日) 08:38:40

ウタ「……だ…」

耳障りな爆発音が鳴り響く。
魔王の手足が一本、また一本と壊されていく。

始まりはルフィとシャンクスの一撃。まるで心が通じ合っているかのような、息のあった攻撃だった。

そしてヤソップと、おそらくその息子、あれが以前何度も話していたウソップなのだろう。彼らの指示によって同時攻撃が可能となり、少しずつ魔王の体は崩れていく。

それはまるで世界を滅ぼさんとした魔王を打ち破らんとする勇者たち。絵本の物語のような光景だった。

彼らはまさに勇者そのもの。

…なら、私は？
今まさに倒されようとしている私は、なんだ？

2二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 08:39:12

魔王に囚われてた姫

32回目投稿22/10/02(日) 08:43:32

ウタ「…やだ…」

…新時代が、わたしの人生のすべてをかけた新時代が、崩れていく音がする。

親に捨てられた

11年間恨み続けた

実は庇われていただけだった

そして、自分は人殺し

ひどい人生だった。我ながらよく自殺しなかったものだ。

そんな私の人生を、これ以上空虚にしないでよ。これ以上惨めにしないでよ。新時代すらつくれなかったら、私の人生は何だ？

もう何も残ってないよ。もう私は助からないんだよ。次はもうないんだよ。やめてよ。止めないで。やめて。

4二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 08:43:41

歌姫なんだから当然魔王の手から助けられるべきお姫様だよ

52回目投稿22/10/02(日) 08:48:22

ウタ「いや…だ…っ」

…ルフィはいつか海賊として、何か大きなことを成し遂げると思っていた。

それが今、確信に変わった。シャンクスに託された麦わら帽子もよく似合う。

先ほどの心が通じあったような同時攻撃もそうだ。ルフィとシャンクスの間には確かな絆がある。
いずれ2人は、海賊としての高みを掛けて戦うのだろう。

そしてそこに、私はいない。

6二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 08:51:39

保守

72回目投稿22/10/02(日) 08:52:33

シャンクスはルフィに麦わら帽子を託した。
私が捨てられている間に。

ルフィはシャンクスにも負けないくらい強くなった。
私が空虚な人生を過ごしているうちに。

今までも、そしてこれからも。2人の物語は果てしなく続いていくのだろう。

私が消え去っても、変わりなく。

82回目投稿22/10/02(日) 08:58:43

ウタ「い゛や゛た゛あ゛っ！！！！！！」

惨めだ！惨めだ！悔しい！悔しい！悔しい！

なんで！なんで私だけ！ふざけるな！ふざけるな！！！

久しぶりに聞きに来た！？私を助ける！？ふざけるな！！！12年もほったらかしにしておいて！何で今になって来るんだよ！！！

ウタ「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ！！！」

私はシャンクスの娘だった。でもそんな証はなにも残ってない。

ルフィと新時代をつくると約束した。でも私の新時代は今壊されようとしている。

こんな惨めな話がある？

私を救うといいながら、私から全てを奪おうとしている。

ズタボロの人生に、せめて意味がほしかった。それくらい許してよ。私の12年は無駄じゃなかったって。それくらい許してよ。

92回目投稿22/10/02(日) 09:03:26

ウタ「…あ゛……ぁ………」

ああ、魔王が崩れていく…

…私は…

私は…

なんのために生まれてきたのかな

102回目投稿22/10/02(日) 09:04:28

もう少ししたら続きます

11二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 09:05:17

期待！

12二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 09:06:42

愛される為に決ってんだろバカヤロー

132回目投稿22/10/02(日) 11:12:44

シャンクス「もういい！終わった！この薬を飲めば、まだ助かる!」

シャンクスの声が聞こえる。…そうだね。終わったね…

そっか…その薬を飲めば助かるわけか…ははっ

ウタ「…」

シャンクス「ウタ!」

惨めだ

ウタ「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ！！！」

シャンクス「！？」

血反吐を吐きながら、諦めずにトットムジカを歌う。だが、魔王は倒された。もう出てこない。いくら叫んでも、虚しく響くばかりだった。

142回目投稿22/10/02(日) 11:26:44

シャンクス「もうやめろ！ウタ!」

ウタ「…ぅ゛…ぁ…」

今ので喉がほとんど潰れてしまった。もう…当分歌えない

ウタ「ぅ…ぅ゛ぇっ…」

シャンクス「…ウタ…お前…」

魔王は完全に消滅した。もうじき皆目を覚ますだろう。

それで全部元通りだ。魔王は倒され、めでたしめでたし…

これまでの人生の全ての意味が、たった今、なくなってしまった。

ウタ「…悔しいよ」

シャンクス「…」

ウタ「…ぐやじいよぉ…っ」

惨めな気持ちでおかしくなりそうだ。

15二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 11:34:23

観客に「もうやめて」「この世界は何か違う」って言われた時点で分かっておったろうにのうウタ
「止まれウタ」ってルフィに言われた時点で既に自覚はしてたんだろうが

16二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 11:37:16

ウタ「私が…いなく…たって…何も…変わらないんだ…」

シャンクス「お前何を言って…」

ウタ「羨ましかった…」

シャンクス「！」

ウタ「麦わら帽子…約束…ルフィはシャンクスにいっぱい託された…私には…何もないのに…」

シャンクス「…」

ウタ「う゛ぅ………私なんて…私…なんてっ…いなくたって…………」

「ふざけんなああああ！！！！！！」

17二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 11:38:20

カモン太陽神

182回目投稿22/10/02(日) 11:48:49

叫んだのは、シャンクスではなかった。

見たこともない形相で…ルフィが、立っていた。

ウタ「もう…起きたんだ…」

…驚いた。ウタワールドから開放されても、当分は眠り続けるハズなのに。

ウタ「…ふざけんなって…何…？」

私からすれば、そっちこそふざけるなだ。
娘である私よりもシャンクスから色々託されていて、私の新時代も潰した。

ルフィ「いなくてもいいってどういうことだ！！！」

ウタ「そうだよ…もう…私…何も残ってないし…」

ルフィ「まだ生きてればわかんねぇだろ！？」

ウタ「…つらいんだよ…」

ルフィ「！」

ウタ「悔しくて…しょうがなかった…自分が子供のままみたいで…でもルフィはずっと成長してた…それが…悔しくて…

それでも…自分の人生に…少しでも価値が欲しかった…

今更、誰かに縋ってまで…生きたくないよ…これ以上惨めな思い…させないで…」

19二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 11:55:40

ルフィ「ふざけんなって言ってるだろ！！！」

ウタ「…？何いってんの…アンタ…」

ルフィ「お前が死んだら…俺の2年はなんだったんだよ！！！」

ウタ「…？」

ルフィ「おれ強くなったんだ！全部守るために！もう誰も遠くにいかないように！なのに、お前が死んだら…！おれ…おれ…っ！」

ウタ「…！」

何となく、言いたいことはわかった。ルフィが強くなった理由は、仲間達を守るためだったのだ。
口ぶりからして、おそらく過去に守れなかった人がいたのだろう。だから…

ルフィ「惨めだっていうなら…おれだってそうだぞ！いなくならねぇでくれよ！ウタァ！！！」

ウタ「…」

…ルフィが泣いてる、気がつけばシャンクスも泣いてる…

２人の物語に…私なんかいらないと思ってた…
私が消え去っても、何ら変わらないんだって…

私は…２人の物語に…まだ必要なのかな？まだ…私の席はあるのかな？

20二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 11:59:16

よくやった！
その説得は正解だった！

212回目投稿22/10/02(日) 11:59:25

いや…そんな考えはやめだ。

私が消え去っても２人は冒険をつづける。それは間違いない。

ならば…尚更ここで逃げるわけにはいかない。

託されてないからなんだ。おいていかれたからなんだ。
私を差し置いて夢をかなえるなんて、許さない。
私という存在をこの２人に刻み込んで、一生消えない傷をつけてやる。

忘れさせなんかするものか。私は…

まだ負けてないっ！！！

22二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 12:00:13

お願い、落ち着いて？

232回目投稿22/10/02(日) 12:02:40

ルフィ「なぁ、ウタ」

ウタ「どうしたの？」

あれから私はルフィの船に乗せてもらってる。

シャンクスたちに１２年間おいてかれたことはまだ許してないし、何より今は、ルフィと居たかった。

薬を飲んでから、私の回復は異常なほど早かった。船医のチョッパーくん曰く、生きようとする意志が尋常ではなかったらしい。

ルフィ「…ありがとうな」

ウタ「…とりあえず、どういたしましてと言っておくよ」

ルフィの仲間は私を迎えいれてくれた。まさかあそこまで歓迎されるとは思わなかったな…緑の人には怖い顔されたけど。それもいつか、認めさせてみせる。

まだ、私の中での戦いは続いている。ルフィはずっとずっと遠くまでいってしまった。でも、このままじゃ終われない。

今はルフィには敵わないけど、このまま終われるもんか。

いつかルフィと、胸を張って隣に立てるような女になるんだ。

ルフィになれたのなら、私にだってなれるハズだ。

覚悟しておきなよ！ルフィ！

242回目投稿22/10/02(日) 12:07:08

ただ…

寝るときにまでひっついてくるのはやめてほしいな…

超えるべき目標にしてるんだからさ、覚悟が揺らいできちゃうじゃん…

そう思いつつ、背中をポンポンしながら頭を撫でている私は、なんだかんだでルフィが好きなのだ。

私が消え去っても、ルフィの心に残り続けるように、私は戦うんだ。それはそうとして…

ウタ「おやすみ、ルフィ♪」

今は、私もこうしていたいかな♪

おわり