なあスカーレット、頼みがあんだけどさ

1二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:22:44

「何よウオッカ、突然改まって」

「実は今度俺、トレーナーと……デ、デ……」

「デート？」

「んなっ……！　大声で言うとか痴女かよ！？」

「失礼ね！　過剰反応しすぎでしょ！」

「いやいやゴメン！　悪かったって！……実は相談したいのもその話なんだよ」

「……どういうこと？」

「ほら、俺って毎回こんな感じになっちまうだろ？　それでいざ二人で出かけて……そういう空気になった時が不安でさ。上手くふるまえるように練習に付き合ってほしいんだ、頼む！」

「あのウオッカが、ねぇ。恋は人を変える、ってやつなのかしら……わかったわ、アタシがトレーナー役をすればいいのね？」

「ああ、サンキューな！　昼メシは気取らない店らしいけど、やっぱり緊張するんだよなぁ」

「『いつもより食べてないみたいだけど、大丈夫か？』」

「いや、こういうトコだからか、ロースもカルビも味がしねえっていうかさ……」

「『そんなに肩肘張る必要はないよ。どんな場所でもウオッカはそのままが一番カッコよくて魅力的だ』」

「……っ！　お、俺、食うもん取ってくるから！　寿司とカレーとわたがしと……」

「す　た　み　な　太　郎　！　！　！」

2二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:23:18

「なんだよ突然大声出して！」

「すたみな太郎に行ってあの空気になるの！？　っていうかすたみな太郎でデートなの！？」

「いや、俺が『焼肉と寿司が食いてえ』って言ったら『いい店を知ってる』って」

「一つに絞りなさいよ節操ないわね！」

「この『デート計画表』によれば『ここで寿司を焼いて玄人感をアピール』って書いてあるぜ」

「アンタのトレーナーも何のアピールをしてるのよ！　そもそもなんでアンタはデートの計画を普通に手に入れてるの！？」

「だってトレーナーのPCのパスワード、俺の誕生日だし」

「付き合いたてのカップルだってそこまでしないわよ！」

「カッ！？……バカ、まだそんなんじゃねえって！」

「悪いけどもう手遅れだと思うわ……」

「じゃあ次！　次の『街をぶらついてショッピング』で挽回するからさ、もうちょっとだけ待ってくれよ！」

「……はぁ。仕方ないわね」

3二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:24:13

「ほらトレーナー！　こっちにキャンプ用品があるぜ！」

「『ツーリングの予定を立てるなら、アウトドアの楽しみを満喫しないとな』」

「こっちは……トレーニング用品か？」

「『ちょうど今使ってるやつがダメになってただろ？　せっかくだから、プレゼントしたいと思ってたんだ』」

「えっ……いいのか？」

「『もちろん。まだまだカッコよく、強くなれるところを俺に見せてくれ』」

「へへ……なんだか面と向かって言われるとこそばゆいな……よっし！　じゃあこの情熱価格1,980円のプッシュアッパーを……」

「ド　ン　・　キ　ホ　ー　テ　！　！　！」

4二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:24:30

まさかの漫才だったw
期待

5二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:25:04

「なんだよ、いまのはいい感じだっただろ！」

「とんでもなく残念な感じしかしないわよ！」

「おっかしいなー……『デート計画表』にも『MEGAと通常の店舗の違いは生鮮食品の取り扱いの差という話題で玄人感をアピール』って書いてあるのに」

「そんな豆知識披露して盛り上がるデートがどこにあるのよ！　だいたい休日昼間にドンキなんてカップル通り越してヤンキー夫婦の行動パターンじゃない！」

「ふっふふふ夫婦！？　そりゃ、アイツ顔は悪くねーし、俺もいいなーとは思うけど、そういうの考えるのはまだ早いっていうか……」

「都合のいいとこだけ器用に切り取って動揺するのやめて」

「わかった、わかったって！　その次の予定『シネコンで映画鑑賞』なら間違いなくいい空気になるからさ！」

「もう、ほんとに頼むわよ！？」

6二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:25:30

思ってたんと違う！
でも甘さは摂取できるし漫才のクオリティも高い……なんだこれ……

7二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:25:50

「二人で映画なんか見に来ると、あの時を思い出すよな」

「『あのアクション映画？』」

「そう！　デカくてカッケェバイクが出てきたのはいいけど、キ……キス、シーン、で……」

「『ウオッカが鼻血出しちゃって、大変だったな』」

「んだよ、笑うなって！……でも今日は、ちゃんと下調べしてくれたんだって？」

「『ああ、挑戦も大事だけど、楽しくない時間を大切なウオッカに過ごして欲しくはないからさ』」

「……ほ、ほら、もう始まるぜ？　ホラーはあんま見ないから楽しみだな、確かキャッチコピーが『つ・な・げ・て・み・た・い』……」

「ム　カ　デ　人　間　！　！　！」

8二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:26:37

「うおっ！？　ホラー映画はこういうのの定番チョイスだろ？」

「史上まれにみる最悪の選択よ！」

「でも『デート計画表』に『3作目は500人出るという誘い文句で玄人感をアピール』って書いてあるし、あと2回はこのシリーズを楽しめるってことじゃねーか」

「まだ2回地獄が残ってる、っていうのよそういうのは！」

「まあ正直、トレーナーが俺のために選んでくれた映画なら何でもいいんだけどさ」

「……があああああ゛っ！……んがあああああ゛っ！」

「ど、どうしたスカーレット！？　体調悪いのか！？」

「……ええ、アンタのせいで最悪になったわ」

「えーと……その、ゴメンな？」

「……次は？」

「……え？」

「ここまで来たら最後まで付き合ってやろうじゃない、さあ、次は何！？」

「お、おう……最後は、その……『夜景の見えるホテルでディナー』……」

「よし、平常心、平常心よスカーレット……」

9二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:27:29

「ふぅ、食った食った！　飯もうまいし、景色もスゲーし、最高だな！」

「『……実は、今日……部屋は一つしか取ってないんだ』」

「え……」

「『俺はトレーナー失格だな……指導者の立場より、もっとウオッカに近づきたい、ずっとそばにいたいって、そう思ってしまったんだ』」

「そんな……そんなの……俺だって……」

「『うん、ありがとうな……はは、お互い怖くて言い出せなかっただけで、とっくに気持ちは同じだったんだな』」

「あれ？　おかしいな……嬉しいのに、涙が止まんねえや……」

「『泣いていいさ、誰も見てないよ』」

「でもやっぱ、恥ずかしいよ……社長の天然水がこっち見てる……」

「ア　パ　ホ　テ　ル　！　！　！　いい加減にしなさい！」