【SS?】「えっウソだろ!?!?」

  • 1続かないかもしれない22/10/03(月) 20:55:02

    「お前今日誕生日だったのかよ〜!?普通そう言えばそうでしたみたいにあっさり言うもんじゃねェだろそういうのは!!」

    コラソンに半ば誘拐される形で始まった二人旅はもう数ヶ月目に突入していた。相変わらず病院の医者達はおれを化け物みたいに扱うし、それにキレたコラソンが病院を爆破して騒がれるの繰り返しだ。
    あまりに騒ぎを起こしすぎて町に近寄れなくなったから今日は野宿する事になった。もう暗くなってきたから火を起こそうとして案の定コートを燃やしたコラソンを見て、バースデーケーキみてェだとふと思った所で、そう言えば今日はおれの誕生日だったと思い出したのだ。

    「そうかぁ。じゃあお前今日で13になるのか!おれの半分だな!13本もケーキにロウソク立てんのは流石にキツくなってくるよなぁ〜…」

    相変わらずコラソンは呑気な事を言ってやがる。コイツはいつもそうだ。治るはずのないおれの病気を何の確証も無く必ず治ると真顔で言ってのけるのだ。


    おそらく、これはおれが迎えられる最後の誕生日になるんだろう。最後の誕生日をコイツと一緒に過ごす羽目になったのは、少し不運だろうけれど。

  • 2二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 20:55:36

    油鍋準備ヨシ

  • 3二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 20:56:11

    是非続いてほしい

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 20:57:04

    続き頼むわ

  • 5二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 21:01:07

    鍋はもう熱々だぜ

  • 6122/10/03(月) 21:05:33

    「んじゃあまずバースデーケーキ買わねーとな!あと誕生日プレゼントも!お前何か欲しいもんあるか!?」

    「ねーよそんなもん!後ケーキ買うにしてもお前のせいで町に近寄れなくなっただろうが!」

    「それは……すんません」

    しょげたコラソンを横目におれは寝る準備を始める。正直そんな話聞いてるだけでうんざりだ。もうこれから死ぬって人間の誕生日祝って何が楽しいんだ。

    「あ!ま〜たおれはどうせ治らねェって顔してんだろ!?そんなくだらねェ事考えるなよ!?人間生きていたら何だって出来るんだからな!」

    うわ近寄って来た。コイツ添い寝するつもりじゃねェだろうな。この前寝返りうったお前に押しつぶされて寝起き最悪だったんだぞ!!!

  • 7122/10/03(月) 21:17:14

    「…言っとくけどな。お前がいくらおれを祝おうと、後一年くらいでおれは死ぬ。だからこれが最後の誕生日なんだ。最後くらい誰かさんのせいで嫌な思い出になるのは避けてェんだよ。分かったらあっち行けよ。」

    そう言っておれは毛布を被ってそっぽを向いた。
    だがコラソンはお構い無しにおれに話しかけてくる。

    「…ローは、大人になったらなりたいもんとか、ねェのか。」

    なりたいもの。
    なりたかったものならあったさ。
    父様みたいな立派な医者になって、ラミと一緒に病院を継ぎたかった。
    でも今はそんなものどうでも良くなった。とにかくどいつもこいつもぶち殺したかった。
    でももう何もかも疲れてきたんだ。

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 21:38:34

    支援

  • 9122/10/03(月) 22:24:21

    「だから大人になんてなれねェっつってんだろ!!!ウザイんだよお前!!ああそうさ確かにあったよ!なりたかった夢も何もかも政府がぶち壊しやがったんだ!!」

    イラついてつい声を荒らげてしまった。コイツが能力で防音室を作っていなければ大分響いていただろう。それでも日に日におれの身体を侵食していく痣を間近で見ているくせにまだそんな事をいうコイツにどうしようもなく腹が立ったんだ。


    「いいや。お前はきっと大人になれる。おれが大人にさせてみせるさ。」

  • 10二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 22:30:40

    わァ……………ぁ………

  • 11二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 07:02:54

    おわ………有言実行したね……………

  • 12122/10/04(火) 07:33:55

    また夜に来る

  • 13二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 07:51:47

    >>12

    お待ちしてます!

  • 14二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 15:09:21

    続き待ってます!

  • 15二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 15:10:10

    コラさん声も相まって好き

  • 16122/10/04(火) 16:25:39

    「今日誕生日ってのもっと早く知ってたら色々と準備してやれたんだけどなぁ…コラさんハッピーバースデー歌うぐらいしか出来ねェな。ごめんな」

    「歌ってくれなんて頼んでねェよ音痴」

    「でも寂しいじゃねェかよ!せっかくの誕生日なんだぞ!?誕生日は誰かに祝われてこそ楽しいもんじゃねェか!」

    「だからもうすぐ死ぬ奴の誕生日なんざ祝ってんじゃねェよ!!」

    「だからお前は死なねェんだって!!!!」

    ギャイギャイ言い合っていたら尚更疲れてきた。もういい。コイツには何を言っても無駄だと分かったので無視を決め込む。


    「……ロー?お〜い、シカトは悲しいぞコラさん………もしかして寝たのか?」

  • 17122/10/04(火) 18:57:07

    どうやら寝てしまったと思われたらしい。好都合だ。もう話しかけてくるな。

    「………ハッピバースデートゥーユー………」

    正気かよ!?コイツバースデーソング歌い始めた!!歌音痴のせいで余計眠れなくなるから子守唄やめろって昨日くらいに文句言ったばっかだろうがよ!!!

    寝てるフリを決め込んでいるせいで下手くそなバースデーソングを終わるまで聞くという拷問じみた仕打ちを受けることになった。最悪だ。

    「……ハッピバースデー、ローォ〜……」

    …終わったか。ようやく眠れる。

    「…ごめんな。あん時連れ出してから、お前を傷つける事しかしてねェよな。おれ。」

    分かってんのかよ。そう思うなら早くファミリーに戻せよ。

    「でもおれは本気でお前を元気にしてやりたいんだ。お前が大人になった姿を見たい。」

    「来年も再来年も、出来たらその後も…」

    「おれは一緒にお前の誕生日を祝いたいんだ。」


    「誕生日っていうのは、生まれてきてくれた事に感謝をして、これからもずっと元気にいて欲しいって伝える日なんだぞって…昔ある人に教わったんだ。」

  • 18122/10/04(火) 19:06:49

    生まれてきてくれた事に感謝をする。

    おれは世界中から死を望まれている存在なのに。
    生きてちゃいけないモンスターで、人間ですらないのに。

    そんな事を思ってくれる奴が、まだこの世にいるというのか。
    おれが生きてくれてるだけで嬉しいと、この先ずっと元気でいて欲しいと願ってくれる。そんな奴が。

    でも、そんな奴がいた所で、おれはもう……

  • 19122/10/04(火) 19:19:58

    ローが寝た。ぐーすかいびき立ててやがる。やっぱり強がっていてもアイツはまだまだガキンチョなんだ。

    ローから少し離れて崖のふちに腰掛け、何枚もの地図を広げる。どいつもこいつも赤いバツ印でいっぱいだ。

    おれはもうヤケになって酒のコルクを抜き、ラッパ飲みをする。そして地図をばら撒き海に捨てた。

    「…………。」

    「何をやってるんだおれは…悲劇の町に生まれたガキに…散々悲劇を思い出させて……結果少しもよくなりゃしねェ……」

    「"D"の為か……?……いや、それはもうどうでもいい……」

    「おれはずっと同情してた……キズつけるだけのこんなバカに言われたかねェだろうがよ……」

    「まだ幼いクソガキがよ…『おれはもう死ぬ』なんて……かわいそうで……!!」



    「あん時お前おれを刺したけど……痛くもなかった……!!」

    「痛ェのはお前の方だったよな………かわ"いそうによォ……」

    「ロ"ー………!!」

  • 20122/10/04(火) 19:24:41

    ………………

  • 21122/10/04(火) 19:37:29

    「『コラさん』」

    「ん〜いつ聞いてもいい響き!もう一回頼む!」

    「もういいだろ…これで10回は言ったぞ!」

    「またまた照れちゃって〜♡」

    「うるせー!」

    あの夜の言葉を聞いてから、おれはこの人をコラさんと呼ぶようになった。
    初めて呼んだ時の顔はあまりにも間抜けだったなとつくづく思う。
    それからすぐにドフラミンゴからオペオペの実の取引について話があり、ようやく治る兆しが見えてきた!と思った所で、おれは発作を起こした。
    取引まで後2週間。
    今日は久しぶりにおれの体調が良い日という事もあって、コラさんは上機嫌だった。
    コラさんはおれを元気づけるために明るく振舞ってくれていた。

    「なぁロー、ようやく希望が見えてきたんだ。病気が治ったらしたい事、今から考えとこうぜ!」

    「だから…その変な実食っておれの病気が治る確証は…」

    「んなネガティブな事考えんじゃねェよ!お前はすげー医者なんだ!オペオペの実さえ食ったら珀鉛病なんてちょちょいのちょいで治るぞ!」

    「また適当な事を……」

    おれは呆れて大きくため息をつき、そして言った。

    「……やっぱり、医者になりたいな。」

  • 22二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 03:02:36

    コラさんに本音零せれるようになったのいいな……

  • 23二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 07:39:21

    保守するれすよ

  • 24二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 16:54:51

    早めの保守

  • 25122/10/05(水) 19:13:49

    「おれは……本当は両親の病院を継いで医者になりたかった。」

    父様から医学を教わっていた頃は本当に幸せだった。
    勉強してたら母様とラミが部屋に入って来て、ラミは祭りに行こうとはしゃいで、母様は2人ともカッコイイわねと褒めてくれていた。
    将来は尊敬する父様と母様の病院をおれが継いで、ラミは看護師になって、それで一緒に………

    「…そうか。そうだよな。ローは頭がいいからな…きっとスッゲー医者になれるさ!歴史に名を残す名医に!」

    「それは褒めすぎだよコラさん……」

    「ローが診療所開いたらおれは手伝いに回ろう!カルテ運んだりとか、子供あやしたりとか…」

    「アンタが手伝うと絶対事故が起こるからじっとしといてくれよ……」

  • 26二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 06:07:38

    このレスは削除されています

  • 27122/10/06(木) 08:00:16

    「ロー、ホントにごめんな。お前の誕生日何もしてやれなくて…」

    「5割くらいアンタのせいな気がしないでもないけどな。」

    「すいません………」

    「でも………」


    「次の誕生日は、またアンタと一緒に過ごしたいな。コラさん。」

  • 28122/10/06(木) 08:05:10

    その時のあの人の嬉しそうな顔は一生忘れられないだろう。
    この人と一緒なら、おれは生きていける気がしたんだ。

    それから1週間後。
    おれは病気を自分で治す事ができるようになった。




    おれの命と引き換えに、あの人は死んだ。

  • 29二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 08:13:39

    一緒に過ごせなかったね……

  • 30二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 11:44:33

    ほしゅ

  • 31122/10/06(木) 16:16:59

    「「「キャプテ〜ン!!!お誕生日おめでとう〜!!!!」」」

    朝起きて船長室のドアを開ければ、幼なじみの3人が待ち構えていた。
    今日は10月6日。
    これで26回目の誕生日だ。

    あの人と同じ歳になってしまった。

    本来なら、39歳になっているあの人と一緒に過ごすはずだった。
    13年前おれが間違えてヴェルゴに文書を手渡さなければ。
    本来なら、あの人に伝えたい事を沢山伝えられるはずだった。
    二人で過ごした間にもっとおれが素直になっていれば。

    もっとこうすれば良かったと気づくのはいつだって、
    もう取り返しのつかない所まで来た時だった。
    銃声を聞いて、あの人が血塗れで倒れている姿を目の当たりにした後、ただひたすらに歩き続けながら、おれは何度己の非力さと
    愚かさを呪っただろうか。
    何故言える時に言わなかったのだろう。
    愛してると言ってくれたあの時の返事を、おれは返す事が出来なかった。
    結局おれは命と心と自由を貰うだけ貰って、恩に報いる事なんて出来やしなかった。
    だからおれがやらなければいけない。


    おれがあの人の本懐を遂げる。
    命を懸けてでもドフラミンゴを討つんだ。

  • 32122/10/06(木) 16:28:15

    ベポに急かされて甲板を出ると、仲間達は宴の用意を整えていた。
    きっと昨日からコソコソと準備してくれたのだろう。
    本当におれは良いクルーを持った。

    もうすぐ、二度と会えなくなってしまうのだろうけれど。

    宴はおれへの賛辞で持ちきりだった。
    途中で自分キャプテンについて行けて幸せっすと言いながら号泣する者もいた。おれはベポにもたれかかり、それを微笑みながら聞いていた。
    でも本当は、一番におれを祝って欲しかった人がいた。

    「おれ達全員で誕生日カード書いたんすよ!この箱の中に20人分入ってますからね!誰がどのカード書いたのか当てて見てください!」

    ペンギンがそう言ってきたので、抽選箱のようなそれから1枚ずつカードを引いては、誰が書いたのかを的確に当てていった。

    「スッゲー!全員当たってるっすよ!ホントに分かるもんなんですね!?」

    「クルー一人一人の筆跡や口調も覚えられていないようじゃ船長失格だろうが。…お前ら、ありがとうな。」

    「「「「「船長〜♡」」」」」

    「そんじゃ、このカードで最後だな………」
    そういっておれは一枚の誕生日カードを取り出した。



    「…え?キャプテン…もうさっきのやつで全員当て終わりましたよ?」

  • 33122/10/06(木) 16:42:14

    !?
    じゃあこのカードは誰が書いたんだ……?

    おれは恐る恐るカードを開いた。






    ​──────ポタリ。


    「えっ………キャプテンが泣いてる!?」

  • 34122/10/06(木) 16:46:50

    キャプテンどうしたんすか!?と仲間達が心配してきたが、おれはそのカードを見てただただ泣く事しか出来なかった。

    「悪ィ………少しだけ部屋に戻る。」

    そう言って、慌てる仲間達を置いて、おれは足早に船長室へと戻った。


    もう溢れ出す涙を止める事は出来なかった。
    カードには、あの頃と変わらない、少しだけ悪筆な字でこう書いてあった。




    『おおきくなったな ロー おめでとう』

    『いつまでもあいしてるぜ』

  • 35122/10/06(木) 16:48:25

    終わりれす

  • 36二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 16:49:56

    いいSSれした!!!!
    イチランドありがとうれす!!!
    トラランドは誕生日おめでとうれす!!

  • 37二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 16:50:22

    わァ………ぁ………

  • 38二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 16:51:09

    >>37

    泣いちゃった!

  • 39二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 16:51:09

    感動したれす…

  • 40122/10/06(木) 16:56:23

    (これ本当はもっと早く終わらせるつもりだったんれすけど長引いた結果ローランドの誕生日が来るというミラクルが起こったんで今日中に無理やり終わらせたれす)

  • 41二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 17:02:25

    語り継がれるSS
    🍢🔫🐲
    🍲

  • 42二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 04:26:12

    2人で診療所開いた時の想像がほほえましいと同時に切なくなりました…
    いいものを読ませてもらった、本当にありがとう

  • 43二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 04:44:31

    誕生日(の翌日)に素晴らしいSSを堪能させていただきました!
    ありがとう!

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