【SS】味のないガム

  • 1二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 23:33:17

    おかしな夢を見た。

    宝塚記念を爆逃げで勝つまでは一緒。でも、ウイナーズサークルで私を出迎えてくれた人は誰もいなくって。
    おばあ様たちがいないのはまだ分かる。本当なら、ここに立ってるのはマックイーンのはずだから。でも、トレーナーは私の担当だからいてくれるはず。なのに、影も形もそこにはなかった。

    「あの、私のトレーナーって……」
    「ああ、メジロパーマーさんのトレーナーさんでしたら」

    会場中走り回っても見つからないもんだから、帽子を被った係員の人に聞いてみた。すると、その人は困ったように首を傾げた。

    「もういませんよ。というか、最初からいなかったじゃないですか。あなたを────私を理解してくれる人なんて」

    そう言って帽子を脱いだその人は、私と同じ顔をしていた。

  • 2二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 23:33:50

    「────っ!?」

    飛び起きると、ジャージは嫌な汗でびっしょりだった。なんて夢見てんだ、私。
    長距離走った後みたいに乱れた息を整えながら辺りを見回すと、棚の上にトロフィーと一緒に飾られてるズッ友────ヘリオスやトレーナーたちと撮った宝塚記念の写真が目に入った。よかった、ちゃんと今が現実だ。

    「ソファで寝てるなんて珍しいなと思ったけど、随分うなされてたな」

    声がした方を向くと、デスクワーク中だったのかな、机から心配そうな顔でこっちを見ているトレーナーがいた。
    確か、ミーティングに少し遅れてくるっていうから待ってる間にウトウトしちゃったんだっけ。

    「トレーナー……ああ、ごめん。ちょっと変な夢見ちゃって」
    「夢?どんな?」
    「それは……あれ、ちょっと思い出せないや。ただ、大したことじゃなかったよ、多分」

    ウソ、本当は綺麗に覚えてる。でも、まさかいなくなる夢を見て泣いてたなんて言えなかった。
    普通ならなんだそれ、って軽く流されるだろうけど、トレーナーはきっと真剣に考えてくれちゃうだろうから。

    「ならいいけど……でも顔色が悪いな。具合が悪いなら保健室に連れてくぞ?遠慮しなくていいから」
    「保健室なんて大げさだって!大丈夫大丈夫!ちょっと休んだら落ち着くだろうからさ」
    「そっか……」

    そう言ったトレーナーはなんでもないって顔だけど、明らかに声はトーン下がってる。頼ってもらえなくて悲しんでるんだ。もう、なんで我ながらこういうのに気づいちゃうんだろう。

    「じゃあ俺はそこで仕事してるから、何かあったら呼んでくれ」
    「待ってっ!」

  • 3二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 23:34:04

    そんな背中を私は思わず呼び止めた。どうした?って振り返る顔は、うん、いつものトレーナーだ。

    「よかったらさ、ちょっとの間だけいてくれない?場所、空けるから」
    「……それだけでいいのか?」
    「うん。君がいてくれれば、いいから」

    ソファの上で身体を縮めた隙間にトレーナーがゆっくり腰を降ろした。それだけで、さっきまでの不安が嘘みたいに消えていく。
    なんだか弱くなっちゃったなあ。今までは何とかひとりでやっていけたのに、今はズッ友やトレーナーがいないとすっかりダメになっちゃった。こんなんで大丈夫なのかな、私?

    「ずっとそばにいるから。パーマーが望む限り、いつまでだって」

    頭を撫でてくれる優しい手。ダメだよトレーナー、そんなこと軽はずみに言ったら。私だって勘違いしそうになっちゃうんだからさ、他の子なんかすごいことになっちゃうよ?


    そう。パーマーさんはトクベツ、聞き分けがいいんだから……

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 23:35:44
  • 5二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 23:39:56

    お前ら重いんだよ!

  • 6二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 23:43:22

    パーマーさんとパマトレは互いにどれだけ重くて良いとされる

  • 7二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 23:51:14

    部屋の湿度計が壊れる前にヘリオスを放てッ

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 00:23:08

    あっ あっ(性癖に刺さった音)

  • 9二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 00:49:49

    パーマーがほしくなる……
    前回共々良いSSでした

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