【SS】1レス内でSSを書いていくスレ

  • 1二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:23:55

    ここは前半でお題を出し合い、一レス(1000文字)以内で短文SSを投稿していくスレだよ。収まらなければはみ出ても良いよ。出てるお題に沿わなくても良いよ。ダイス振っても練習になると思うよ。

    SSの練習、腕試しなんでもござれ。閲覧注意つけてないから直接のエログロはなしな! エログロ書きたい場合はTeregurahuで書いて乗せてくれたら良いよ。

    >>5>>25くらいまでは何かしらのSSのお題。扉絵お題を想像してくれると良いかもしれないな。でも何でも良いよ。

    >>25からはお題を選んでだれでも自由にSSを書いていってくれ。もしも100まで続いたらまたお題募集しようと思う。

  • 2122/10/06(木) 23:24:34
  • 3二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:25:01

    シャンクスを巴投げする決意を固め、泣きながら実行するウタ

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:25:43

    怪異にやたら強い剣士概念の話

  • 5二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:26:13

    海兵ロシナンテに命を救われた民間人の話

  • 6二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:26:54

    モモの助をかわいがっているオーロジャクソン号の見習い二人

  • 7二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:27:30

    モモの助と錦えもんの疑似父子がワノ国後も疑似父子する話

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:27:59

    ウソップとサンジのお夜食バンザイ

  • 9二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:28:04

    スワロー島時代のハートの海賊団旗揚げ組のほのぼの

  • 10二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:28:40

    チョッパーとローがまじめに医者の話してるところ

  • 11二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:29:22

    ナミとロビンの何気ないが仲間の絆がわかる日常

  • 12二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:29:23

    海軍本部中将ガープの夢の話

  • 13二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:29:26

    21歳ウタと7歳ルフィのおねショタ

  • 14二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:31:32

    百獣海賊団の幹部飲み会でお互いの性癖暴露大会

  • 15二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:32:49

    ロシナンテが海軍に入隊した時のセンゴクの話

  • 16二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:32:52

    あるドレスローザ市民の回想

  • 17二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:34:00

    モブ視点から見たローやハートの海賊団員の話

  • 18二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:34:55

    四皇麦わらのルフィに恨みを募らせる少女

  • 19二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:35:24

    このレスは削除されています

  • 20二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:35:30

    ウタがシャンクスとの日々を回想する話

  • 21二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:35:49

    兄弟(姉妹)ケンカするシャーロット家の人々

  • 22二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:35:59

    船出をテーマにした話

  • 23二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:36:01

    ぼったくりバーの昨日のお客様

  • 24二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:36:24

    ヴィンスモーク兄弟の話

  • 25二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:36:54

    『愛してる』を言う話

  • 26二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:36:57

    いつもの姉貴と実は姉貴に激重感情抱えてるぺーたん

  • 27二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:41:16

    お題ありがとう!あとは自由にss書いていって欲しい。

  • 28二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:44:36

    >>4を書きたいけどダメ?

  • 29二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:45:57

    どんどん書いていって大丈夫じゃないかな
    ただ文章の最初にお題の安価つけてもらえるとわかりやすいのでありがたい

  • 30二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 23:46:49

    >>29

    分かった

    ありがとう

  • 31122/10/06(木) 23:47:07

    >>28

    もちろんいいよ!

  • 32二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 00:10:27

    >>23ぼったくりバーの昨日のお客様


    ここのところ世間が少し騒がしい。

    世界経済新聞が最悪の世代の記事を連日書き立てている。

    それにつられて若い海賊達が我も続けとあちこちで力を誇示しようと暴れている。

    シャボンディ諸島は最近特にそういう輩の出入りが増えた。

    女主人は小さくため息をついてタバコをくゆらせる。

    そして荒れた店内を見まわす。

    昨日の客はそういうイキがった海賊未満のチンピラだった。

    新世界に行く!と下品な飲み方で大騒ぎしていた。

    当然のごとく身ぐるみはいでたたき出したのだが、近隣でもその手の話が増えている。

    女主人は今度は大きくため息をついて、結果的にだが自分で散らかした店を片付け始める。

    ふと窓の外を眺め、そういえば、と思いを馳せる。


    …そろそろあの人、帰ってくるかもしれないわね。

  • 33二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 00:22:49

    >>5 ロシナンテに救われた民間人の話


    あら、彼のことを知ってるのかい?

    恰幅の良い年かさの女将が海賊に笑いかけた。新世界の海。栄えた港町によくある場末の酒場には似つかわしくない写真。その写真に写っている男のことを海賊が尋ねれば、女将は嬉々としてグラスを拭く手を止めてローに身を乗り出した。その海賊が頷くと女は話し始める。


    彼はね。


    彼は昔ここによく来ていた海兵さんなんだよ。背が高くて寡黙で、でも優しくてこの町の娘っ子たちはみんな彼が好きだったわ。でも、ずいぶんとドジでね。もちろんそういうところが好きだった子だってたくさん居た。ドジをしてこける度にハンカチをもっていったりなんかして。

    「アンタもその口だろう」

    あら、よくわかったわね。

    他の海兵さんなんかはきっちりしていて、娘っ子の取り入る隙なんてないように見えるのだけど、その人はドジっては笑われて本人もにこにこしているものだから、ぽーっとなってしまうのよ。でもそれは恋に恋する娘の夢。


    女は遠い夢見る目を写真に向けた。


    「アンタはそれだけじゃなかったのか」


    本当に察しの良い海賊さんだね。

    そう、あれはもう十五年以上前の話だよ。うちに来た海賊団が大暴れしたんだ。

    でも可笑しいことに、そこにはその人やその友人達が遊びに来てくれててね、海賊団はあっというまに捕縛された。

    船長はただ者じゃなかった。女を人質にして海兵の前に突き出したんだ。殺されたくなければ、逃がせとね。

    その娘こそ、この私だった。

    もうだめだと思ったよ。連れ去られるにしても、殺されるにしても、きっともう生きてはいけないと思った。

    けどね。あの人は強かった。びっくりしたよ。人はあんなに音もなく動ける物なんだね。その人は船長をあっという間に倒して、すくい上げてくれた。

    「そうか」

    そう。それから別の支部にいってしまったと聞くけれど、この人は命の恩人なんだ。アンタ、なんでこの人のこと知ってるんだい?


    「おれもこの人に命を救われたことがある」


    クマの深い海賊はうっすらと笑って、グラスの酒を乾かした。

  • 34『愛してる』を言う話22/10/07(金) 01:17:36

    >>25


     それは単なる気紛れだった。強いて言うなら上弦の月が綺麗だったから。夜の海が煌めいていたから、うっかり魔が差したのだ。

     あいしてる、と口に出してみる。

     たった五音しかないというのにぎこちない響きをしていてローは思わず苦笑した。月も呆れているように見える。とはいえ、不格好な発音になるのも当然のことだったろう。

     ローはこれまでの生涯において誰かに愛してると告げたことはない。恵まれていた幼少期だってせいぜいが「大好き」止まりだ。そして愛に関する語彙が増えることもなかった。大好きな人たちは皆死んでしまった。

     愛の話になると自然と思い出される人がいる。ローの大好きな人。愛してるぜと言ってくれた人。

     傷だらけで、血まみれで、歯も欠けていて、いっそ不気味なほど奇天烈な表情をしていたが、ローにとっては世界で一番あたたかい笑顔だった。──笑顔のまま逝ってしまった。

     おれも、と返せなかったことは深い傷となって胸に残っている。癒えることはないだろう。情けないことに、十年という時を経てなおも痛む傷が抱えながら、ローは今でも愛してるの一言をまともに言えないままでいるのだ。

     愛を知らないわけではない。愛されていたからこそローは今を生きている。しかし、いざ口にしようとすれば途端に自信を喪失してしまった。

     単純に恐ろしくて仕方ないのだ。愛してると言うことが。

     あの人の愛してるがこうも優しく響いたのは、あの人が愛を正しく理解し、愛してるという言葉をちゃんと自分のものにしていたからだ。愛してるという言葉以上に愛してくれたからだ。

     故にローは恐ろしく思う。愛を知っていても愛を身につけている自信はない。口に出した「愛してる」が薄っぺらいものであったらどうしよう。

     自分のものにできてない言葉をそのまま使ってしまえば、自分の気持ちさえも嘘になってしまいそうで怖かった。


     けれど今夜は少しばかり様子が違った。恐れは存在していたもののそれ以上に勇気が勝った。夜空に浮かぶ半月がDに見えて──かつての同盟相手を思い出してうだうだ考え込むことが馬鹿らしくなったせいかもしれない。

     ローはそっと瞼を伏せた。柔らかな思い出ばかりではなかったが、記憶の中に佇む愛しい人たちはいつも笑顔だった。


     父様。母様。ラミ。──コラさん。


    「愛してる」


     ああ、やっと言えた。

  • 35二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 01:37:36

    >>32

    あの世界の日常って感じがしていいなこの話。シャッキーが激動の時代を感じてレイリーの帰りを察するところ、幕間に本当にありそうな空気感も素敵だな

  • 36二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 01:40:01

    >>34

    家族とコラさんにやっと言葉にできた愛してるっていいね。しかも誰も聞いてない月夜にっていうのが絵画的な美しさがあるね。全部終わった後、やっと言葉にできた雰囲気が伝わって素敵

  • 37二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 02:33:19

    >>14 百獣海賊団の幹部飲み会でお互いの性癖暴露大会


    意固地になって文字数カウントで数えてまで1000文字以内で書いたけど飛び六砲に限定してもキャラが多すぎる!!!地の文全然書けなかった!!!もっと書きたかった!!!(書いててめちゃくちゃ楽しかったけど)


    行数多すぎるのと(ヘビーな性癖は出してないけど)一応性癖ネタなのでTelegraph使います


    百獣海賊団の幹部飲み会でお互いの性癖暴露大会「なぁ、お前らの好みってどんなよ?」

    大分時の経つ酒の席、突如話を切り出したのはフーズ・フ―。


    「あら、いいじゃない…そういう話は大好物よ♡」

    「酒の席ですると面白いもんだしな」

    「よっ!やるでありんす~~‼」

    「酔いすぎだぞ姉貴」

    「…」


    ドレークを除いた全員の返事を聞きフーズ・フーは話を続ける。


    「じゃあ話を始めたおれから…そうだなおれァ、大人しいのがタイプだ。

    そんでもって意外にソッチが大好きなタイプだと良い」


    フーズ・フーが話し終わると、ササキが相槌の様に笑った。


    「わはは、一番手にちょうど良いジャブだな」


    「だろ?さあ、次は誰が行ってくれる?」


    話の二番手に乗ったのはブラックマリアだ。


    「じゃあ私が話すよ♪…そうね、私は言う事何でも聞いてくれるカワイイ子が好きだね…私抜きじゃ生きていけない体にしてあげたいねぇ…♡」


    「ハハハ!支配したい主義は相変わらずか!怖ェな…じゃあ次はササキ辺りに言ってもらうか」


    フーズ・フーはどんどん話を回していく。


    「ん、おれか!そうだなおれァ、抱くならデカい女だな…小さい女じゃつまらねぇ」


    「あら、ご所望かい?」


    ササキがそう答えると、ブラックマリアが冗談めいて言った。…
    telegra.ph
  • 38二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 03:58:47

    >>37

    飛び六胞が仲良くて素敵なほのぼのでありんす。ペーたんとドレークが共闘してもこの面々に太刀打ちできてないの可愛らしくていい。それぞれありそう〜な性癖なのも素敵でありんす

  • 39二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 08:09:53

    保守

  • 40二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 10:46:59

    これは良質なSS
    少なくとも俺はどれも好き

  • 41二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 11:25:15

    >>12

    もうだめだ。最後の一人を艦に送り込み、下卑た海賊どもの銃口はぐるりと自分を狙っている。殿を務めたせいで一人海賊船に取り残された。引き金は今にも引かれようとしている。

    ──ごめん、ばあちゃん。おれ立派な海兵にはなれなかった!

    そう思いながら思わず目を瞑ると鋼鉄に当たったような音がしてはっと目を開く。目の前に巨大な正義が、海兵を守るために聳えていた。潮風にコートはたなびき、鋭い眼光が彼を象徴する犬の帽子の下でぎらぎらと燃えている。

    ──海軍の英雄、ガープ。

    海兵は呆然とした。

    「戦場で目を閉じるなァ!」

    雷鳴のような怒声に背筋が伸びる。

    中将は背後からの銃弾を弾く。そのまままるで瞬間移動するようなスピードで死を覚悟して蹲る海兵を片手でもちあげて肩に担ぐ。老兵の顔であるのに、その得体は隆々として恐ろしいほどに強く固い筋肉に覆われていた。

    「貴様、撤退し損ねたか」

    海兵は大きく頷いた。

    「つかまっとれ。だが、目は閉じるな」

    「は、はっ!」

    中将は海兵の返事に頷くと、手の中の鉄球を振り回した。あっという間に海賊を打ちのめす。軍艦でも太刀打ちできなかった海賊どもの船が沈む。

    英雄の肩に担がれて凱旋した海兵は目の当たりにした驚くべき人間の戦力に呆然としたまま医務室に運ばれた。


    見習い軍医の同輩に無茶をするなと叱られ、それからしばらく話し込んでいると、艦の医務室に声がかかった。

    「おお、起きとったか。楽にしておれ、怪我人じゃろう」

    ガープ中将である。そのまま同輩はそそくさと去り、医務室には二人が残る。

    「貴様一等兵だったか?」

    海兵は頷いた。三年前に新兵になりそれから任務を繰り返してつい先月に一等兵になったことを伝える。

    「年は?」

    二十年と少しの年を答えると、ガープは低くそうか、と答えた。敵船に居残って身を隠していたことを叱られるのだろうかと身をすくめていると、大きな掌が頭を掴んだ。拳骨のガープの武器そのものである拳。

    けれど、その手のひらは不器用に海兵の頭に乗せられていた。皺だらけ肉刺だらけの英雄たる海軍将校のそれに、何故か故郷の祖父母を思い出す。


    「……あまり死に急ぐな。若いもんが」


    低い声の叱責を残し彼は部屋を出る。

    取り残された自分の救出のためだけに、彼が敵船に乗り込んだことを知ったのはその翌日のことだった。

  • 42二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 14:29:19

    >>41

    ガープの無敵さと優しさとかっこいいところがすごく伝わる

    一兵卒目線なのも頼もしさが倍増してて好き

  • 43二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 14:30:55

    ♡ももちろんだけどやっぱり感想コメントもらえるとすごく嬉しいね

  • 44二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 14:53:31

    書いてるけど1000文字に収めるのむずいな
    本題に入るまでに600文字かかってるんだがどう削ろう

  • 45二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 15:01:48

    >>13

    これ書こうとしたけど無理。

    長編でやるほうがいいって。

  • 46二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 16:41:37

    このレスは削除されています

  • 47二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 17:02:22

    >>10

    「トラ男!なに見てんだ?おれにも見せてくれよー」

    「トニー屋か。これはワの国独自の医学書だ。蔵にあった。」

    「おおおすげぇぇぇ!これぜんぶ筆で書かれてんだな。あっ解剖図。」

    「…この国独特の解釈もあるな、古いものだがかなり詳細に書かれている。」

    「なぁトラ男、これ随分リアルな絵だけど…なんで全体図なのに全部首がないんだ?」

    「おそらく解剖に使われる遺体は大抵が死刑囚のものだからだろう。」

    「死刑囚?」

    「ああ。この国では切腹、磔、市中引き回し、いろいろあるがその殆どが最後は斬首だ。」

    「ひいいいいぃぃ」

    「ホラ、こっちのページにはちゃんとあるぞ、首だけ。」

    「びえええええぇ」

    「…トニー屋、おまえも医者だろうが。」

    「べ、勉強するのと人が死ぬ話をするのは違うんだよっ!うぅ」

    「まったく…ほら、鼻水を拭け。本を汚すな!」

    「ずびっ」

    「蔵にはまだ他の本もあったぞ。薬草とかいろいろ。」

    「じゃぁおれそっち借りてくる!ありがとな!トラ男!」

    「あぁ。」

    「トラ男―!今度おまえの船の手術室見せてくれよなー!」

    「バカ野郎。戦が終わったんだから同盟は終わりだ。この国を出たら敵同士に戻る。覚えておけ!」

    「じゃあまた後でなー!」

    「…チッ。」

  • 48二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 17:02:51

    脱字あったので上げなおしましたごめん

  • 49二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 17:44:51

    トラ男とチョッパーの医者コンビ好き
    かわいい

  • 50二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 19:50:36

    >>47

    人が死ぬのは悲しいし怖いけど、勉強の時は切り替えられるチョッパーあまりに心が優しくて強くていい話だな。トラ男の面倒見の良さに甘えられるチョッパーが素晴らしく可愛いな!

  • 51二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 19:59:21

    >>8

    「ふごッ!!!な、なんだ!!?」

    いきなり腹に重たい一撃を食らってウソップは目を覚ました。敵襲かと思ってブンブンあたりを見渡すが周りに響くのは銃声ではなく野郎共のうるさいイビキの大合唱。そして腹に乗っかったルフィの足。どうやらルフィの寝相によって叩き起こされてしまったらしい。肉〜!!捕まえたぞ!!あっ待て!空飛ぶな!などと盛大な寝言が隣のボンクから聞こえてくる。

    「あーくっそ〜びっくりさせやがって…」

    頭をボリボリと掻きながらボンクから飛び降りる。

    ルフィのせいですっかり目が覚めてしまったが叩き起こしてまで怒る気にはなれなかった。ルフィを起こすことの方が骨が折れそうだ。

    明日の朝文句を言おうという決意を胸に秘めウソップは飲み物でも貰おうとそっと男部屋を抜け出した。

  • 52二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 19:59:38

    >>51

    甲板に出ると月明かりに照らされたサニーと穏やかな海が目に入る。視線を感じて顔を上げると音に気づいたのか見張りをしてたフランキーと目があったので軽く手を上げてダイニングへと向かう。

    もう誰もいないだろうと思ったダイニングは予想に反して明かりが灯っている。

    と、同時に何やらいい匂いが漂って来て思わず急いで扉を開けた。

    「ああ〜!!」

    「げっ」

    ちゅるんと麺を啜ったサンジがやべェ見つかったみたいな顔で振り向きこっちを見た。ついでに視界に大きめのどんぶりが映る。

    ラーメンだ。

    豚骨ベースの美味そうな匂いにウソップは思わずぎゅるる〜と腹を鳴らす。

    「ずるいぞサンジくん!」

    そうズルいのだ。いつもおれたちには盗み食いするなと言っておきながら自分は深夜にこんな美味そうなものを食べている。ズルい。

    そして欲を言うならおれも食いたい。さっきまで腹なんか空いてなかったのに今はもう口の中にじわっと涎が溢れてくる。

    「ズルくねェよこりゃおれの夕飯だ。今日はおれが食う時間なかったからな」

    そう言ってサンジはまた箸を手に取る。そういえばそうだ。サンジはいつもみんなへの給仕が粗方済んでから食事を取る。だが今日は急な嵐の対応に追われたためこんな時間まで食べてなかったようだ。

    「あれ?でもいつもは最初に自分の分取り分けてなかったか?」

    「あー取り分けてたんだが嵐ってなると揺れで吹っ飛ばされそうであの場で全部ルフィの口に突っ込んじまった。」

    だから夕飯とは違うものを食べているのかと納得しているともうあと少しだったのだろう。分厚いチャーシュー、ぐるっと巻いたナルト(サンジの眉毛みたいだ)、メンマがパクパクとサンジの口に入っていく。最後にちゅるっと細めの手打ち麺が吸い込まれるのを見て思わずゴクリと喉を鳴らした。

    「さて、そこでおれがラーメン食うのをぽけっと見てた腹ペコ鼻ップくん」

    「おい誰が鼻ップだ!」

    「お前も食うか?」

    「…!食うー!!流石サンジくんわかってる〜!!」

    ちょっと深夜にしてはデカめの返事がダイニングに響く。夜食の時間はもうちょっとだけ続きそうだ。

  • 53二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 20:00:51

    めちゃくちゃ削ったけど200文字ほどオーバーしてしまったので二つにわけた練習ってことで許してくれ
    難しかった…

  • 54二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 20:11:18

    >>52

    ラーメンのシズル感がすごい!腹減った

    あとそうそうサンジはそういうこと言うって思った

  • 55二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 20:13:18

    >>51

    >>52

    >>53

    夜のサニー号の空気感と二人の和気藹々としてるけど夜だから三割り増し穏やかな掛け合いが素敵だなあ。サンジくんたまに食べ損ねる事があるのコックらしくて大変、ウソップは食べてるのからって言わないの思いやり深い。二人仲良しなのいいな。

  • 56二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 22:38:16

    >>26

    これで書こうかなって思ったけど25からひとつ飛び出して26だったわ…

  • 57二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 22:39:41

    >>56

    書いちゃえー

  • 58122/10/07(金) 22:42:25

    >>56

    もちろんいいよ!

  • 59二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 22:46:36

    お題に沿わない夢は駄目?

  • 60二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 22:48:24

    >>59

    もちろんいいよ!エログロはTelegraph使ってね!

  • 61二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 22:50:32

    あっでもスレタイにCP注意つけてないけどいいのかな

  • 62122/10/07(金) 22:53:41

    >>61

    CPの時は冒頭に一言入れといてくれればいいんじゃないかな!

  • 63二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 23:40:12

    >>4 怪異にやたら強い剣士の概念

    ssより誰かが語ってるっぽいのがなんとも言えない


    『寺がなければ剣に頼れ』

     グランドラインではそんな諺がある。寺の他にも、教会などがあるがそこは割愛。正確な意味は“もしも、霊に憑かれてしまったとき寺が見つからないのなら剣士に頼りなさい”という諺、もとい教訓である。では何故、剣士なのか?……そうだな、聞いた話なんだがここで一つ話していこう。

     ある緑色の男の剣士の話だ。頭も服も緑色で、腰に三本の刀を携えたおっかない奴だったらしい。そんで、とにかく怪異にとっては恐ろしい男だったとか。まず、こいつは海賊のうちの一人で、犬猿の仲の料理人がいたようだ。そんでまあこの料理人が優しすぎると言うか、まァ怪異に狙われやすいタチだった。ある日、とある霊が取り憑いちまったんだ。それに気づかない料理人はみるみる生命力を吸われていく。と思いきや、そうでもなかった。剣士が霊の喉元に刀を向けていたのだ。低い、ドスの効いた男よ声が響く。

    「いるだけならまだいい、どうせあのアホがなんか拾ってきただけだからよ」

    「けど、それはダメだ」

    「命を取ろうとしたんだろ?なら、てめェも命取られる覚悟しねェとなぁ!?」

     そう言い放った男の顔と言ったらまるで鬼神!もはやどっちが怪異かも分からなくなった怪異は逃げ出したらしい。いや逃げられただけ幸運だ。

     これまた聞いた話だが、もちろんこの男の話だ。怪異がいたんだが、そいつらがまた凄くて、一つの海賊団に取り憑いていたらしい。そのまま全員こっち側に引き摺り込もうとしたんだと。で、運悪くその海賊団と出会っちまった。怪異たちは最悪だったさ、自分達の獲物がみるみる狩られていくんだから。しかしそう思うのも束の間、一体の霊が斬られたのだ。驚いている間にもまた一体、もう一体、一気に四体、みるみる斬られていく。なんだなんだと焦ってみれば、なんと剣士が海賊ごと怪異を斬っていたのだ。嘘みたいだが、本当の話だ。

     これ以外にもまあ、隈のひどい男や、眼鏡の女の話もあるがここまでだな。長くなっちまう。そんで俺はここでもう一つ諺を作ったんだ。

    『神も剣に敵わず』

     つい最近は、神も斬る剣士ってのもいるらしい。もしかして、剣士は何かしら人じゃないものを斬れないとなれないのか?まあ覚えといてくれ。流石に俺も斬られるバカな同朋を見るのは飽きてきたんだ。

  • 64ゴミ箱 難しいですね22/10/07(金) 23:41:16

    「雨ひでぇな」
    「そうだね~」
    敵船だった残骸の一部に座りながら、バージェスとリラはぷかぷかと海を漂流する。雨の勢いは強く、あっという間に二人そろって濡れ鼠の様相を呈していた。
    刻一刻と闘いで火照った体が冷えていき、じっとりと濡れた服がじわじわと体温が奪われる。
    絶体絶命とは、まさしくこのことを指すのであろう。「いつ助けが来るのかな?」
    「そもそも助けが来るのかよ。俺ら二人だけで充分って船長に言っちまっただろ!?」
    「貴方がね」
    コテンとバージェスの逞しい腕に体を預ける。……彼の筋肉だけは、ひどく温かい。ごつごつしているようでいて、良質な筋肉というのは実は柔らかいことを彼の体をもって知った。
    「うぉ! 冷てーだろうがリラぁ!」
    「ごめん、ちょっと辛い……」
    両足が海水に使っている状態なのだ、ニクニクの実の能力者であるリラの体は、打ち付ける雨と相まってひどく摩耗しているのである。
    バージェスは暫く具合の悪そうなリラを見下ろしていたが、やがて大きなため息一つでそれを許してくれた。
    「吐きそうか?」
    「体の力が抜けるだけ……」
    「ウィ~ハハハァ! 鍛え方が足りてねぇな!」
    「悪魔の実のせいだから。私のせいじゃないから」
    何だかんだとリラの体を気遣ってくれるバージェス。そんな彼のマスクや髪もぐっしょりと雨に濡れてしまっている。
    「提督達が来なかったらさ、ここでそろってお陀仏だね」
    「そん時はそん時で運が悪かったってことだ! 死んだら死んだでその時だ!」
    「……もし、私がここで死んでもさ、バージェスが死ぬまで傍に置いてくれる?」
    「そん時は海に投げ捨てるぜ。お前が消えれば横になれるスペースができるからなぁ」
    「なにそれひどい……」
    勿論死ぬつもりはないのだがとリラは愚痴を吐こうとすれば、バージェスはその大きな暖かい手をリラの頭の上に乗せた。
    「けどよぉリラ」
    「ん?」
    わしゃわしゃと撫でられ、少しこそばゆい。……やっぱり、好きだなぁ、彼の手。
    「そうなったら、あの世でいの一番お前を探してやる。で、二人であの世の獄卒や閻魔大王全員ぶっ殺して、船長達が来んのを気長に待てばいい!」
    豪快なこの男は、どうやら死んだ後も暴れまわるつもりらしい。ぷっとこらえきれない笑いが口から飛び出す。
    「貴方らしいね、どこまでも」
    きっと、私を見つけてねとリラは彼の体により一層体重をかけた。

  • 65二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 23:45:49

    >>63

    何かが語る恐ろしい剣士の話、ゾロが一線を超えてきたモノに対しては容赦がないのかっこいいね。剣士として強くなればなるほどより怪異に強くなって神すら切ると怪異側から怖がられてるの素敵だ

  • 66二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 23:48:26

    >>64

    バージェスかっこいいね。海賊としての自分の道を歩んで貫き通しながら隣に寄り添う、自分に惚れてる女への情も確かにある一人の男が描かれていて良いな

  • 67二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 23:51:39

    >>63

    文章が噺家の語り口調みたいで怪談話聞いてるようで臨場感があった

    そしてゾロかっこいい

  • 68二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 23:53:56

    >>64

    バージェスの人こんばんは!

    リラがかわいいです

  • 69二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 23:59:31

    これお題かぶりは無し?

  • 70122/10/08(土) 00:02:35

    >>69

    もちろんいいよ!

  • 71ゴミ箱 皆優しい……!22/10/08(土) 00:09:10

    腹に衝撃があたり、目が覚めた。ぶへぇ、と女を捨てた汚い声が漏れてしまう。
    いったいなぁと低い声を漏らしつつのそのそと起き上がる。
    周囲を見渡せば、すぐに自分がバージェスのすぐ真横にいて、彼の太い腕が寝返りした拍子にリラの腹に降りてきただけだと把握した。
    「……痛い」
    文句を一つ吐き出し空を見上げれば、うっすらと日が昇ってくる頃合いだった。リンリンと虫の鳴き声が乱反射する、気持ちの良い朝である。起こされ方は大変不服だったが。
    「遭難して今日で四日……いつになったら提督達と合流できるのか……」
    ちらりと見やれば、ぐがぐがといびきを立てながら、バージェスは地面に伏していた。よほど疲れているのだろうか、と彼の顔を見下ろすと、いつもの黒にオレンジのイラストが刻まれたマスクがつけっぱなしになっていた。
    朝ご飯のウサギでも狩ってこようかと立ち上がろうとし――再び彼の頭付近に座り込む。
    「そういえば、私、バージェスの素顔を見たことない」
    バージェスは常にマスクをつけている。暴れる時も筋トレもエッチもずっとで、よく考えれば長年彼と一緒にいてマスクなしの姿を見たことが無い気がする。
    「チャンピオンの誇り……という物なのかな」
    考えれば考えるほどに、バージェスの素顔が見たいという欲求が膨れ上がってくる。そそくさと彼の顔に近づけば、ぐぅぐぅと眉間に皺を寄せて熟睡しているように見える。
    ……今しかチャンスはないのではないか?
    考えてみれば、自分副船長だし! 船長のお顔を確認するのは義務だよね!
    悪戯心に火が付くのは当然の帰結。リラはニヤニヤしながらそそくさとこっそりと彼のマスクに手をかけ――
     
    「……何百面相してんだお前」

    「え」
    我に返れば、リラとバージェスの顔の距離は十センチも離れていなかった。
    というか、ばっちり己の痴態を見られた。
    「わ、わぁわわ! ち、違うのこれは!」
    勢いよく離れる。全く何しているんだ私は!
    「うぃ~~! もう朝かよぉ! はえぇなあ」
    「そ、そうだね//! あ、わ、私トイレ行ってくる! もっと寝ててねバージェス!」
    「元気そうで何よりだぜ、まぁ体は資本だからなぁ!」
    「いつも元気ですぅうう!」
    背伸びするバージェスを放置し、そのまま剃で島を駆け回るリラ。
    迂闊だったというか私は本当に何をやっているんだぁああという絶叫は、無様に無人島全体に響き渡ったのであった。

  • 72海兵ロシナンテに命を救われた民22/10/08(土) 02:03:50

    >>5

    まるで時の流れが遅くなったようだった。

    大きな腕が私を引っ張って、向かってきた刃から私を逃がす。別の手が拳銃を握っている。

    私が見えたのはそれまでだった、彼の腕に違わない大きな掌が私の目を覆ったから。私を抱えた人物はそのまま走る。不思議なことに、足音が聞こえなかった。

    ようやく下ろされたときに見えたのは、月明かりに照らされた金の髪と宝石のように真っ赤な瞳だった。

    彼は笑って私の頭を撫でる。パパにやってもらったときみたいに、暖かい安心に包まれていくような感覚がした。

    彼は私を抱えてた立ち上がる。とても背が高かった。まるで2階のお部屋の窓を覗いているみたい。肩にかけられた大きなコートに隠すように抱えなおされた。

    長居人差し指がそっと私の口にあてられる。ママが『静かにね』って私に言う時みたいに。

    そして、私からも音が鳴らなくなった。

    彼は走る。私を抱えて音もなく。大きな身体が時々窮屈そうに家の隙間を通っていく。家を隔てた先にある町の大通りからは騒ぎ声と、金属のぶつかる音と、パンと爆発するような音。

    音だらけの道の隣で、私と彼は音のない影道を行く。

    しばらく揺られていると、急に明るくなった。月明かりじゃない光、たいまつの火の赤。

    パパとママがこちらに走ってくる。二人とも顔はぐっしゃぐしゃ。彼は私を下ろして、ぽんと頭を最後に撫でた。

    たちまちパパとママに抱きしめられる。心配したのよと泣きじゃくるママに、私はごめんなさい、と言った。ちゃんと声が出た。

    パパが彼に何度もお礼を言っていたけれど、彼はそれに笑顔で手を上げてまた町に戻っていく。夜に突然海賊に襲われた私たちの町へ。

    ママが怖かったでしょう、と頬を撫でて言うけれど。私はちっとも怖くなかったよ、と言った。

    だって、彼に抱えられていた時にとっても安心していたもの。

    まるで、寝る前にベッドでうとうとしている時みたいに。

  • 73二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 02:26:57

    >>71

    リラちゃん可愛いね。これは恋する乙女だね。剃とか使えるのちゃんと強いのわかって面白いけど、バージェスが一枚上手なのかっこいいね。

  • 74二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 02:29:28

    >>72

    ロシナンテのセリフが無いのが絵本を読んでいるような童話感があるね。目を隠したりしーってしたりと細々とした女の子に対するロシナンテの配慮が優しくて素敵な話だ。

  • 75海軍本部中将ガープの夢の話22/10/08(土) 05:49:36

    >>12

    (独自系でスマン)

    時々わしは夢を見るんじゃ

    エースとルフィが海軍に入隊した夢じゃ

    ルフィはクザンの部下として働き、エースはサカズキの部下として働いておる

    二人共とても強く、若くしてわしと同じ階級である中将まで上り詰めておった

    そんな彼らをわしの弟子であるコビーとヘルメッポは尊敬の眼差しで見ておる

    ルフィの傍らにはウォーターセブンで見たルフィの船のクルー達も海軍の制服を着て立っておる

    今となっては有り得ることのない夢じゃ

    エースが死んだ今となっては

  • 76二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 11:36:59

    >>75

    ガープ中将の希望、理想が全部詰め込まれたもう叶わない夢と最後の言葉が儚い現実を突きつけられているようでとても辛い。でもそう願うことをやめられなかったガープの気持ちもわかる。素敵だね

  • 77二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 12:44:06

    あげ
    帰ったら5本くらい書く

  • 78二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 14:20:02

    >>8


     神々しく輝いた月の光が水面に反射して、辺りを明るく照らしていた。普段の風景からは想像できない柔らかな波の音が船上に響き渡る中、ウソップは仲間を探していた。

    「おーいサンジーってまだキッチンか?」

     今の時間、見張り当番はウソップとサンジの2人であった。

     コックである彼は一日の大半をキッチンで過ごしている。サンジに用があれば、キッチンに行くのは当たり前のことであった。

    「サンジー居るか?」

    「おうウソップ、どうしたんだ?」

     明日の料理の仕込みだろうか。テーブルにはいろいろな食材が並べられている。

    「別に用はねェんだけどよ、今日の見張りおれたちからだよな?」

    「ああそうか、悪いすぐに行く」

     サンジは目を見開き、書いていた食材の管理ノートを閉じた。

     この船では食べ物の消費が激しい。毎日5食、デザートやおやつにちょっとした軽食。料理のできない自分たちでも作れる飲み物までサンジは一味に振舞ってくれている。

    「いや、明日の仕込みだろ?今はなんもねェからいいぜ」

    「ああ悪いな、またあのアホが食材食いやがったから計算し直してんだ。言ったら作ってやるって何回も言ってんだけどな……」

     アホとはルフィのことだろう。調理したものではなく、食材そのものをつまみ食いしてしまう彼はよくサンジに怒られている。

     よく見るとサンジの周りには普段の料理に使うには少なくなってしまった食材が並べられていた。

    「ウソップ、お前なんか食うか?このまま残しても1人か2人分くらいにしかならねェんだ」

    「え、良いのか?」

     異様なほどの食欲を持った船長のみならず、この船に乗る者全員がサンジの料理に目を輝かせ、愛していた。そんな彼の料理を一人占めできるのだ。

     ウソップは、おうと返事をし調理の準備をするサンジを見て、すぐさま頭を働かせた。彼の好物は秋島のサンマである。なにか魚料理を頼もうかと思ったが、ふととある料理を思いつく。

    「なんにすんだ?」

     キッチン台からサンジが声をかける。

    「じゃあピラフを頼む!」

    「……おう、待っとけ」

     ウソップはサンジの過去を知らない。そのため、彼にとってその料理がどういうものなのかも知らない。ただ彼は、どんな食材を使っても作れるピラフを選んだだけである。

     小さな子ネズミでも餓死寸前の鬼人のためでもなく、サンジは優しい仲間のために腕をまくった。

  • 79二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 14:31:10

    >>78

    サンジの優しさとウソップの気遣いと優しさが染みる良い話だ。こんな優しい積み重ねが沢山あって一味のことが大好きになっていったんだろうなあ。

  • 80ゴミ箱 難しい…22/10/08(土) 16:36:33

    オレの相棒は色々な格好が似合う。いつものだぼったい黒コートや、デートコーデらしきフリフリした服、生意気にもバージェスを誘う色っぽいネグリジェ。
    けど、彼女が本当に似合うのは──

    リラの両手から放たれた十本の短剣が敵の海賊たちの体を穿ち、バージェスの波動エルボーが地形ごと敵を根こそぎ断裁する。
    「ウィ~ハハハァ! なんて弱い連中なんだ……これじゃあ肩慣らしにもならねぇぜ!」
    ドレスローザ後しばらく床に伏していたバージェスであるが、既に完全復活と言って良いだろう。おののく雑魚どもを追撃し、思うがままに駆け抜けるバージェス。
    体に突き抜ける残虐な高揚とドバドバと脳を焼く本能が更なる惨劇へと突き動かす。
    暴れたりねぇ! もっと骨のあるやつはいねぇのか!?
    「ば、化け物――!」
    「チャンピオン――!」
    武装色をまとった莫大な破壊力を持つ一撃を、有象無象に放つ。「ノックアウトパンチ!」
    射程範囲内の海賊どもを廃村と化した建物ごと吹き飛ばす。騒々しい崩落音とともに、勝利の雄たけびを上げる。
    そこを狙う、一人の海賊の男。飛び上がり「覚悟ぉおお!」と長剣を振り上げる様が視界の隅で確認できた。
    だがそっちはリラの領域。
    男の後ろに短剣を持った女がふっと現れ、その命を刈り取る。「油断しないでよ、バージェス」
    「ウィ~~!」
    鮮血に染まったリラがクルクルと体を捻り華麗に着地する。
    そんな彼女めがけてバージェスは構えを取り、力を込めて一撃を飛ばした。揺らぐ地盤がバージェスの次に放つ一撃の重さを物語る。
    「ハァアアアアア!」
    すっとリラの姿が消え、背後に迫る複数の海賊たちがバージェスの波動によって木端微塵になった。
    「どうだ今の一撃は!」
    「後ろに敵がいるなら声かけてよ」
    的確に敵勢力を刺身にしていくリラが呆れたように溜息をつくのを見、バージェスはますます笑みを深めた。「その程度でくたばるような奴はオレの隣に置けねぇぜ!」
    「それもそっか!」
    血が、臓物が、残虐に飛び交う狂乱にて、バージェスはリラを伴い暴れ続ける。
    強く、強く、ただ強く。チャンピオンに恥じぬ暴れ振りを。
    ちらりとリラに視線を移す。彼女も上手く切り抜けているようで、息の乱れなく可憐に踊る。
    服は赤に濡れ、その目は鋭く尖っている。
    あぁ、やはりな。
    何だって良い、血濡れなお戦う彼女の姿が、最もチャンピオンたる自分に似合う。

  • 81二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 18:48:51

    >>10

    ゾウでの宴の間際、チョッパーが近づいたのドレスローザで分かれるときよりも穏やかな顔をしているローだった

    「トラ男、やっと見つけたぞ」

    「トニー屋か」

    ローは怪訝そうにチョッパーを見る。だが、チョッパーの手に持っているものを見て目つきを変える。一抱えもある書類だ。

    「早めにこれを渡しておこうと思って。ハートの海賊団のカルテだ。表紙に名前が書いてある。申し送りも今していいか?」

    「……ああ、頼む」

     一抱えはあるカルテの山をローに渡す。ローがカルテに一通り目を通すのを待って居る間に、はっと思い出す。

    「そうだ! おれお前に謝らないといけねェんだトラ男」

    「謝る? 何をだ」

    「勝手に艦のカルテ見ちまったんだ。ごめん、血液型とか持病とかわからないと処置が出来なくて」

    「おれのクルーが許可したんだろう。医者なら当然だ。……むしろ、おれのカルテ読めたか」

    「大丈夫だ。北の海の形式だよな。島独特のやつじゃなかったらどこのでも読めるよ」

    チョッパーの言葉にローはへえ、と感嘆する。会話をしながらも読み進めたカルテは痒いところにもきっちり手の届くもので不満はない。それだけでもこの小さなトナカイの医者の腕がわかるというものだ。

    「じゃあ申し送りもするな」

     チョッパーの言葉にローは頷いた。その頃にはもうこの小さな医者を軽んじる気はなく、周りから見ればそこはまるで病院の一室のような緊張感が漂っていた。

     申し送りを終えて、チョッパーはふと呟く。

    「なあトラ男。これは医者というか、おれ個人の意見なんだけどさ」

    「あ?」

     じっとりとしたローの視線を物ともせずチョッパーは考え込むように告げる。

    「うーん、やっぱり医者としてなのかな……。トラ男、しばらくあいつらの側に居てくれよ。おれも気持ちわかるんだけど、あいつら寝込んでる間ずっとうなされてたから」

    「……」

    「一緒にいれないのってくやしいもんな……」

     ローは黙ってチョッパーの帽子をぐりぐりと押さえる。

    「俺に命令するな。それに……もう艦を離れる気はない」

    「そっか、じゃあいいんだ!」

     満面の笑みのチョッパーにローも釣られてわずかに口元が緩む。

    「キャプテン!ジョッキもって!」

     宴の準備は整っている。

     ゾウの夜は賑やかな声で宴が始まった。

  • 82二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 18:58:48

    >>51

    神SSありがとう…

    こーゆーノリのサンジとウソップ好きなんだぁぁ!!

    食べ物や情景の描写が素晴らしすぎる…

  • 83二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 19:25:52

    >>7

    城の屋根に飛び上がる。もうずいぶん高所恐怖症は改善されたと思う。自分自身で空を飛べるようになったのも大きいが、カイドウが打ち倒されたのもきっと大きい。

    見上げればあの日のように大きく丸い満月。きっと今日はネコマムシもイヌアラシもゆっくり寝ていることだろう。こっそりと持ち出した畳んだ海賊旗を撫でる。少し勇気がでるような気がする。

    (今頃ルフィたちはどうしておるのやら)

    目を閉じれば月夜の海をすすむサニー号が蘇る。ドクロの帆をはためかせてすすむ賑やかな太陽のような船。優しい船員たち。

    かれらがいなければとっくに心が折れていただろう。

    (会いたいのう)

     歯を食いしばって空を見上げて、月夜が滲んだ。

    (泣きとうない。体だけ立派になってぜんぜん心が立派にならぬ……)

    きょろきょろと周りを見渡し、人の気配がないことを確認して袖で涙を拭う。もう大人のなりをしているのだから、人前で泣くのはいやだった。

    祖父であるスキヤキや父の臣下である傳ジローから教わる政もまだまだ難しい。剣術の稽古も赤鞘や剣術指南役からつけてもらっているが一向に上達の気配がない。毎日泣き出したいのを我慢している。

     モモの助様はまだ八つなのですから。

     これからでございますよ。

     そうなだめられる度に悔しさが募ってならなかった。もっともっと強く、賢くならねばならぬ。自分はそうでありたい。

    「……拙者はワノ国の将軍、光月おでんの息子でござる……」

    **

     ようやく漏れたちいさな泣き声。天守閣の裏で聞いていた錦えもんは小さく鼻をかんだ。あれほど辛いことがあって、たくさん悲しみ、怖いと泣いた八つの子供が今や涙さえ隠れて流す。

    「──将軍さまは……」

    「ここには居られぬなぁ」

     将軍を探して近づいてきた腰元や幾人かの家臣を追い払う。背中にぐずぐずと泣き濡れる声が聞こえて、そのうちに寝息に変わる。

    「──見ておりますよ。モモの助様」

     錦えもんは静かに呟くと、いつの間にか自分より大きくなった子どもを背負い上げた。

  • 84二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 19:41:50

    >>11

    「サンジ〜〜」

    「ダメだこいつはあと1時間煮込む。フライドポテト作ってやるからちょっと待て」

    「お、フランキー」

    「オウ部屋の改装終わったぜ。スーパーだ!それより外見てこいよ」

    「ジンベエ!」

    「海熊か、ええ波が来そうじゃ。またグリーンルームに入れるくらいになればええがの」

    「ブルック〜‼︎」

    「ヨホホ!お任せください!いくぜヒットナンバーYEAH‼︎」

    「なァゾロ」

    「ああ、あいつ食えそうだな。捕まえるか」

    「ウソップー!」

    「オォよ!新作の釣具ができてるぜ!」

    「おーいチョッパー!」

    「えー!なんで包帯取れてんだ⁈おれかなりきつく留めたぞ‼︎暴れる前に巻き直すからな‼︎」


    芝生が青く揺れ、ブルックの演奏とわあわあ騒ぐ声が届く。ロビンの隣で海図を整理していたナミが「うるっさい」と顔を顰めて、ロビンは読んでいた本から顔を上げた。

    「せっかく海は穏やかだってのに、何の騒ぎよ」

    「さあ……、何か釣ってるみたい」

    「へー!あいつら釣れなきゃ静かだし、大漁かしら?」

    キッチンからは揚げ物のいい香りがするし、手を止めるにはいいタイミングだろう。上機嫌に微笑むロビンに、ナミはばさばさ資料を片付け始めながら声をかけた。

    「なにロビン、何か面白いことあった?」

    「ふふ……、皆ルフィに名前を呼ばれるだけで意思疎通してるのが面白くて」

    「あはは!あいつ分かりやすいもんねー」

    そこへパタパタ軽い足音が近付く。ナミとロビンは顔を見合わせて笑った。

    「“魚を追ってくれ!”じゃない?」

    「“魚に追われてる!”かも」

    「ナミー‼︎ロビン‼︎」

  • 85二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 19:45:25

    >>84

    ルフィに呼ばれるだけで意思疎通できる麦わらの一味の絆エモくてアツいし、それを当然だと思ってるのも素敵。ナミちゃんとロビンちゃんが穏やかに笑いあってるの本当に仲がいいのがわかって最高なお話だ。あと、芝生が青く揺れ、の描写がとても好み。

  • 86船出22/10/08(土) 19:51:24

    >>22

    鮮やかに明るい空。波は穏やかで風も申し分なく帆を膨らませている。

    「もう出航!?」

    「昼!? もう今!?」

     まとわりつく見習いの子どもを両腕にぶら下げた副船長がもう馴れた様子でそのままぐるりと持ち上げて両肩に乗せる。子ども達もおびえもせずにきゃらきゃらと笑いながら副船長の頭に抱きつく。

    「おい、髪を引っ張るな」

    「はーい」

     片方が素直に返事をし、そのまま片割れと話を始める。

    「その二人、重くねェのか」

     と、尋ねれば副船長は肩をすくめた。

    「こんなチビの一匹や二匹。だがやかましいからお前一匹持っててくれ」

     ぽいと放り投げられた赤い髪の小僧は馴れた様子で身軽に肩に乗る。

    「おでんさん! もう出港!」

    「おう。赤太郎、本当に軽ィな。モモとそんなに変わらないくれェか?」

     担ぎなおす手間もなく自分で好きなように動き回る子どもをそのままに尋ねれば、それは不服であったようで唇をとがらせる。

    「モモよりも兄ちゃんなんだけどおれ!」

    「やーいチビ!」

     副船長の肩にひっついている片割れが揶揄えばよけいに頬を膨らませる。

    「みてろよ、すぐにおでんさんよりレイさんよりでっかくなるからさ!」

    「ふん、お前よりもおれァもっとでかくなるね! 船長よりでかくなる!」

    「じゃあお前ら降りて自分で歩け。そこの荷物食料庫に運んでくれ」

    「「えー」」

    「モモより兄ちゃんなんだろうお前ら」

     しぶしぶと肩を降り小突きあいながら子ども達は果物袋をもって船に駆け上がっていく。

    「モモと日和のおかげでちょっと成長したかもしれん」

    「そうか?」

     副船長が二人を見る目は穏やかに優しい。父親の目とよく似ていた。白ひげが息子達を見る目と同じ、優しい目だ。この男がそういうならばそうなのだろう。

     空は快晴。風は順風。

     オーロ・ジャクソン号は今港を離れてゆく。

  • 87二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 20:17:27

    このレスは削除されています

  • 88二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 20:29:11
  • 89二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 20:29:55

    間違えた!!!!

    >>9

    脂ののった鮭を一尾抱えて帰路につく。今日の飯当番は確かペンギンだった。どうにもおれは料理の才能がないらしく、どうせなら美味い飯がくいたいということで最近は料理は大体年上の二人が担当していた。

    「……ただいま」

    ドアを開けながら声をかけると、丁度今帰ってきたばかりらしいペンギンがリビングから顔を出す。

    「お帰りローさん。って、何それ!? えっ、鮭!? まるごと抱えて持って帰ってきたの!? やべー!」

    「患者にもらった」

    「よく持って帰ってこれたな。ってか連絡してくれたら手伝ったのに」

    「別にこれくらい平気だ」

    「ローさん背が伸びたもんなァ」

     しみじみと言われて思わず足を蹴る。

    「能力使うのはいいですけど、倒れないでくださいね!」

    「いつの話してンだ」

    「2年前~」

     歌うように言われてもう一度蹴っ飛ばす。確かに三年前はニシンをいっきに十匹能力で開こうとして体力が切れたが、今はもう十分についている。今年の冬は二十匹を開く予定だ。

    「ただいまァ」

    「ただいまー!」

     ルームを展開しようとしたところに丁度二人が帰ってくる。二人はやはりペンギンと同じようにぎゃあぎゃあと騒ぎ立て、やはりおれの身を案じた。黙らせてルームを展開する。

    「今日のシチュー、鶏肉のつもりだったけど鮭にするか?」

    「ペンギンのシチュー大好きだからどっちでも」

    「新鮮だし、刺身かカルパッチョは?」

    「もらってきたのも捌いたのもおれだ。今夜はシチュー、あしたは焼き鮭だ」

     ルームを解いて宣言すれば、三人は顔を見合わせて笑う。

     切り分けた鮭の一部をペンギンに、残りを氷室にしまっておれの仕事は終わる。

     すぐにシチューの暖かなミルクの匂いが家に漂った。暖炉の前に固まってベポにもたれながら本を読んで待っているとキッチンからペンギンが顔をだした。

    「ベポ、ヴォルフ呼んできてくれ」

    「アイアイ!」

     ベポにあわせて身を起こしたローはすこし浮き足だった気持ちでダイニングに向かう。

     シチューはもちろん美味かった。

  • 90二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 20:52:45

    このレスは削除されています

  • 91ゴミ箱22/10/08(土) 22:19:29

    リラには特等席がある。誰も座ることのできない、リラからすれば最も価値のある物。……誰にも、譲るつもりもない物。

    「うぃ~……! うぃ~……!」
    「頑張れ頑張れ♡ノルマまであと丁度半分だよ!」
    血管を浮かべ、筋肉を膨張させるバージェスの腕立て伏せ。彼の日課である一日一万回腕立て伏せである。全身に汗の球を浮かべながら、バージェスはなおこの苦行を一日も欠かさず断行していた。
    そんな彼の重り代わりに背中に乗って応援しているのは、当然のことながら1番船副船長のリラである。ついでに彼女の手持ちの投擲用のナイフもたくさん積んでいる。
    「はい、1000回──500──100──残り10──、うん、終わり!」
    「ウィ~ハァアア!」
    ドスンという轟音とともに地面に沈んだバージェスの上になおも座り続けるリラ。
    「お疲れ様、プロテインどーぞ!」
    あらかじめシャカシャカ振っていたリラが上からバージェスに渡す。
    「いつも思うんだがよぉ」
    「何?」
    ゴクゴクと豪快に喉を鳴らすバージェスが、黒コートに刃物を収納しているリラに問いかける。
    「お前は律義に毎回俺の上でのんびりしてるが、さすがに飽きねぇのか?」
    「飽きないよ」
    「ただ筋トレしてるだけだぜ。確かに重しが足りねぇからお前乗れ! つったのは俺なんだが」
    口をごしごしと手で拭いているバージェスは不思議なものを見るように眺めてくる。
    「バージェスが頑張ってる姿見るの、私好きだもん」
    「……そりゃ奇特な女だぜ! ウィ~ハハハァ!」
    「本当だも~ん」
    船長室には、基本的に有事の際を除いてクルーが入ってくることはない。おかげで他の人達はバージェスは元々強い人だと勘違いする。本当は彼の傲岸不遜は妥協なしのトレーニングの賜物で、同じく見聞色、武装色に通じているのも努力なのに。
    まあつまり、バージェスのそんな努力家な一面を独占したいと思ってしまう面倒臭い女ムーブをかましているが実情で。「これからも筋トレする時は私を呼んで、貴方の背中に座らせてね!」
    「別に構いやしねぇ! お前は華奢に見えて重いからなぁ!」
    「重くないし!? 武器持ってるだけだし!」
    憤慨すれば面白がり、さらにおちょくるバージェスに小突かれ、そのまま軽い言い合いをする。
    幸せなひと時。
    ……絶対に、この席は誰にも譲らない。
    バージェスの背中に乗る限り、リラは彼とともに居られるのだから。

  • 92二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 22:59:41

    このレスは削除されています

  • 93二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:03:30

    >>92

    好きだ!!語彙力が吹っ飛んだので好きだしか出てこないが好きだ!!

    錦さんはモモにとってずっと子供に戻れる相手であってほしい!

  • 94二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:10:36

    >>92

    錦さんとモモの助の話だったのか…!よ、読みたかった……!!!

  • 95二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:10:44

    >>7

    「(ま、間違えてしまったーーー!!!錦えもんは……)」

    「?いかがしましたかモモの助様」


    チラと錦えもんを見るが特に気づいた様子はない。モモの助はホッと胸を撫でおろす。

    親子の芝居をしていた頃の呼び間違いはあったが、『父上』と呼び間違うことなどこれまでなかったのだ。それというのも…


    「それにしてもモモの助様、お顔がすぐれないのでは?少し休憩を入れますか」

    「いや構わぬ…少し、思い出しておっただけだ…」


    錦えもんに思い出していたとは言ったが忘れようもない。20年後に来て、ワノ国を出航してからの激動の記憶。

    つらくない時などなかった。ずっとずっと不安で悲しくて、泣いてばかりいた。

    だが、拙者にはルフィたちがいた。彼らは航海の間なにも聞かず、拙者の隣にいてくれた。

    それがどれほどの優しさに満ちていたのか彼らが出航した今ならよくわかる。


    彼らは海に出たが、今のモモの助には、錦えもんがいる。妹もいる。頼りになる家臣たちがいる。

    そして一緒に冒険をした仲間が……兄の様に思っている者がいる。彼らとの絆の旗は今もここにある。

    彼らは今もこの海のどこかで陽気な音楽を奏でながら航海をしているのだろう。

    拙者の仕事は、彼らがまたこの国に来た時に笑顔で宴の準備をして迎えられるようなそんな国にすることだ。

    気を引き締めたようなモモの助の表情に錦えもんもフッっと笑った。


    「承知しました。それでは、拙者も外で一仕事して参ります。くれぐれも無理はせぬように、モモの助………様」


    最後にわざとらしく『様』を付け足すと錦えもんは笑いをかみ殺しながら部屋を出ていった。パンと錦えもんが襖を閉める音が響き部屋に静寂が訪れる。


    「錦えもん貴様ーーーー!!!!」


    城下町まで響くような怒号。町民たちが何事かと城を見上げるも、その顔は皆笑顔に満ちていた。

    ここは偉大なる航路 新世界の島 ワノ国。

    掲げられるは麦わら帽子のドクロの旗。風にたなびく海賊旗に桜舞う、侍の国である。

  • 96二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:13:01

    >>95

    92で名前間違ったので再投稿しました

    >>93

    ありがとう!読んでもらえてよかった!

  • 97二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:18:01

    >>95

    鐘を鳴らした甲斐があった。可愛いなあ、二人とも。錦さんがからかってるのも、間違えたのを気づかれてないかな?ってするモモの助も全編良い。モモの二人目の父上だよ錦さんは…

  • 989522/10/08(土) 23:18:32

    >>95

    最初の1行に

    「父うッ…………錦えもん、この書類なのだが…」

    っていう一文があったんだけどコピペミスで入ってなかった…

    なれてなくてすまぬ…

  • 99二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:26:53

    >>98

    その一文でまたエモさが増すなあ。またどんどん書いてほしい

  • 100122/10/08(土) 23:42:58

    100いったのでお題足していくよ!いろんなssが読めて楽しい!ありがとう!

    >>101>>110くらいまでお題募集。

    あと、このスレはスレタイに【閲覧注意】も【CP注意】もついてないからエログロに加えてCP(恋愛系)は説明つけてTelegraph使ってほしい。よろしく頼む。

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  • 101二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:44:22

    ミョスガルド聖とロシナンテの話

  • 102二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:45:03

    河松と日和が2人でカッパ巻き(日和の好物)食べる話

  • 103二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:46:03

    ユキヒョウになったローをかまいまくるハートの船員たち

  • 104二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:46:05

    キッドがキラーと音楽を聴く

  • 105二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:47:34

    フランキーとアイスバーグがサニー号を作る時の話

  • 106二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:48:35

    たしぎと子供たち

  • 107二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:49:57

    コビーとヘルメッポが切磋琢磨する話

  • 108二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:50:08

    CP9達の秘密

  • 109二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:52:25

    シャンクスを見かけたあるモブの話

  • 110二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:52:32

    怪異とスモーカー

  • 111122/10/08(土) 23:54:04

    ありがとう!またのんびり自由にss書いていってほしい。でもエログロCPはTelegraphつかってね!

  • 112二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 23:59:40

    >>111

    イッチいつも的確な誘導ありがとう

  • 113122/10/09(日) 02:43:54

    >>112

    褒められても嬉しくねーぞコノヤロガー♡

    (的確ならよかった。ミスってたら指摘してくれると嬉しい)

  • 114二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 02:45:29

    >>105

    「バカバーグ!」

    太いどら声の罵り声が、廃船島に響く。

    「ンマー、なんだバカンキー」

    低く落ち着いた声が同じように親愛を含んだ罵倒を返す。マストのロープを結んでいたパウリーは目を開き、ついで懐かしんだ。幼き日に強く強く憧れたトムズワーカーズの声がする。声は変われど、まだ此処に残っていた。この軽妙な会話、間に挟まる豪快な笑い声が今にも聞こえてきそうだ。

    船大工パウリーの原点の憧れが目の前に広がっていて眩暈がする。

    「フランキー!あれ持ってねえか?」

    「は?あー、ねえな。ガレーラの若頭にさっき渡した!」

    「そうか。ンマー、パウリー、防風の下げ振りそっちにねェか?」

    「あ、はい!持ってます!」

    遠い昔を思い出していたパウリーはハッと我に帰って手に持っていた下げ振りをアイスバーグに手渡す。

    ──あれ?

    ロープを結び直しながら、ふとパウリーは胸がもやつくのを感じた。ぎゅ、っと縛り直して船から飛び降りる。

    「どうした」

    「べつに……」

    ルルとタイルストンが顔を見合わせる。

    「わかった。フランキーには『あれ』なのに自分には名前で言われたから拗ねてんだろう」

    「めんどくせえな!」

    「そんなんじゃねェよ!!」

    ※※

    眼下で手際よく木鋸を引き、ロープをひく職長たちを見下ろしてフランキーがつぶやく。

    「ガレーラの若頭共も、なかなかいい腕してんじゃねえか」

    「当たり前だ、おれの弟子だぞ」

    「あのロープのやつァ、あれだろ。あの鼻ッ垂れのパウリー坊主だろ」

    「覚えてたのか」

    「思い出した。海列車作ったあとにトムズワーカーズに入りたいって来たガキだ」

    「ンマー来る前に潰れちまったからなあ」

    二人で含み笑う。これほど穏やかな気持ちで木槌を振るえる日が来るとは二人とも思っていなかった。

    とんてんかんてん木槌の音が鳴り止まぬ。

    いずれ海賊王の船となる船は、今はまだ生まれる前。

  • 115保守代わり22/10/09(日) 12:59:04

    >>12

    「……泣きたいなら声を上げて泣けばいいだろう。らしくない」

    破壊されたマリージョア。既にどこに死の気配はなく、潮風が砕けた岩盤や処刑台だった瓦礫の山をすがすがと吹き渡っていく。

    ガープは一人、いつもの犬の帽子を深く被り処刑台の瓦礫に腰掛けてせんべいを齧っていた。コートを脱ぎ、横に置いている。センゴクが近づいても腰掛けたまま、視線はただ一点を見つめている。長い付き合いだ。それはもうセンゴクやおつるにしか見せなくなった男の弱さだった。きっとここにきたのが自分以外ならばさっさと英雄の顔をして笑って立ち上がっただろう。

    「わはは、阿呆、海賊が死んで泣く海兵があるか」

    「そんな面で言われても何の説得力もないぞガープ」

    「わしは海兵じゃ。誇りがある。あやつらが道を選んで――わしも覚悟をした。それだけじゃ」

    「それでもお前は、人の親だっただろうに」

    この男がどれだけ情に篤い男か、すこしでも接したことのある海兵は誰もが知っている。センゴクに孫の話をする時のやに下がった目元や口元はただのどこにでもいる老人だった。

    パキン、とせんべいを割る音がする。

    「老いたなお互い」

    「潰えた夢ばかりが多くなる」

    半分に割れた煎餅を渡され、センゴクは口に放り込んだ。

    「塩辛いな」

    塩辛い煎餅に文句をつければ、ガープは黙って横のコートを取り上げて立ち上がった。正義を翻してふたたび羽織って、センゴクに振り返った。

    「うむ、辛い。じゃが好きで食うた煎餅よ」

    悲劇のあとも空は眩く、陽光は素知らぬ様子でさんさんと照りつけている。

    「そうか」

    センゴクも立ち上がる。

    仕事はまだ山積みだった。

  • 116二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 22:27:02

    >>110

    >>4

    スモーカー中将からはいつも葉巻の重たい煙と潮の香りがする。だが、彼の能力で出た煙にはなんの匂いもない。不思議なものだと思う。

    葉巻の重たい香りと裏腹のその無臭の煙は自分たちを守るもので、海賊どもを蹴散らす武器でもある。

    だが、時折その煙は奇妙な香りをまとうことがある。故郷でよく嗅いだ煙の匂いは、彼にはふさわしくない凶事の匂いだ。

    「あっ」

    「……あ」

     自分と同時にたしぎ大佐が声を上げて通り過ぎたスモーカー中将を振り返る。自分も同じように鼻をかすめた匂いに思わず彼を見た。

    「……なんだ」

    意外と面倒見の良い彼はふたつそろった声に怪訝そうに振り返る。たしぎ大佐と一緒に慌てて手を振って何でもないとごまかした。大佐の視線が自分に向く。

    たしぎ大佐と自分はよく似た文化のある島だというのは知っていた。

    この匂いは、弔いの匂いだ。

    「なんでスモやんからお線香のにおいが……」

    自分の言葉にたしぎ大佐は苦笑して頷いた。

    「あの匂いがしたら、私に教えてくれますか。あまり良くないので」

     真剣な声音に慌てて頷く。

     たしぎ大佐は微笑むとスモーカー中将に駆け寄った。中将の背後でわざと音を鳴らすように鯉口を切る。

    ──キンッ

     異様に澄み切った金属音が響く。

     一瞬むせかえるような線香の匂いが広がって消えた。

    「本当になんなんだ、たしぎ」

    「えーっとえへへ……」

    「またドジったのか」

    「まあそんなところです」

     スモーカー中将は呆れた顔でまた歩き始める。

     もう、線香の匂いはしなかった。

  • 117二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 22:28:54

    なんか二つセットみたいな話になっちゃったのでまとめた。どこかで見たような概念だな……?
    スモやんの煙が線香の匂いになる時はみんなを守ってる時なバージョンも考えたけどかっこいい大佐ちゃんが書きたくって……また同じお題で書いていいかな

  • 118二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 00:12:27

    >>117

    110です

    ありがとうございます

    静かにかっこいいたしぎちゃんも無自覚なスモやんも見れて嬉しいです

  • 119二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 00:54:37

    >>118

    こちらこそカッコいいお題ありがとうございます!煙と怪異って親和性あるなって書いててワクワクしちゃいました!

  • 120二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 08:56:22

    >>33

    こういうさりげない感じでキャラが聞き手になってる話好き

    女将さんにとってはこれからもコラさんは何処かの海で仕事をしてる命の恩人の海兵さんのままなんだろうなぁ

  • 121二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:38:35

    >>21

    ばさっと資料を放り投げて、ペロスペローは頭を抱えた。隣でやれやれと頭を振っているのはフルーツ大臣のコンポートだ。

    「これは今年のハロウィンも荒れるな……、ペロリン」

    諦めたように呟いた長男の声は苦々しく耳に残る。しかし残念ながら、それが聞こえていたのは発言者のペロスペローだけだった。


    万国のハロウィンは一大行事だ。ここでは子供たちだけでなく、大人も島を回って名産のスイーツをねだってまわる。首都スイートシティ有するホールケーキアイランドをはじめに、キャンディ島など10の島が会場だ。今日は会場は勿論、メニューによって各島のパティシエや材料の融通を図るための大臣会議——だったのだが。

    「去年はおれのヤキガシ島の“女王と大臣のアイシングクッキー”が1番人気だったからな、今年も気合入ってるぜ」

    「ハ。あれはデザイン担当したプラリネのアイデアのおかげだろ。味で勝負したおれのカナッペのほうが人気だった」

    「お、お兄様たち、配った量ならトリュフチョコだと思うわ!」

    「「いいや、それなら!!!」」

    しまった、とペロスペローが思ったときには既に遅かった。彼らは皆スイーツが好きだ。好きゆえに譲れないのが、『万国で1番人気の菓子は何か?』という永遠のテーマである。特に上の兄弟たちは役職が能力と結びついているから余計に、こういうお菓子配りのイベントでは白熱しがちだった。


    そして話は冒頭に戻る。ペロスペローは帽子に刺したロリポップ・キャンディをひとつ摘んで、いまにも殴り合いを始めそうなオーブンとビスケットを見た。こういう時にカタクリやダイフクたち“材料系”の大臣たちは我関せずで困る、と内心で愚痴る。ペロスペローは「“力こそ正義”の体現みたいなママを持って国内一武闘会が開かれないだけマシかもしれん」などと一瞬の現実逃避をした。

    「お前たち、そこまでにしろ。ペロリン♪」

    「でもペロ兄!」「今日こそは!」

    ペロスペローはキャンディ・スティックを手のひらにパシンと打ち付けて弟妹たちの文句を遮った。

    「一体何回その論争をする気だ、ペロリン♪そもそも私のキャンディが味も芸術性も1番だと言っているだろう‼︎」

    再びヒートアップし始めた水掛け論を見て「飽きねェな」とボヤくダイフクに、カタクリは「未来を視るまでもない」と返した。

  • 122二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:56:43

    >>121

    万国の日常って感じのやりとり良いな。たしかにハロウィンって万国的には超盛り上がるイベントだし、上の兄弟たちは能力も含めて大臣役までになってるんだから自負もあるよね。パティシエとしてプライドが高い兄弟たちと、呆れつつ眺めてるカタクリたちが兄弟の仲の良さが伝わって素敵だ

  • 123二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 05:45:48

    >>81

    専門職同士のやりとり〜〜ッ!!

    書式の違いとかそりゃあるよな、世界観広がる感じして好きだしスッと本編の時間軸に戻っていくの読了感良くて素敵だわ

  • 124二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 15:52:46

    >>107

    あいつはいつも先にいる。駆け抜けていってその背中がどんどん小さくなっていくような気がしてならない。追いかけても追いかけても追いつけない英雄。おれと違って遠くを見る目と、勇気と、正しい正義感を胸に憧れを追い求められる青年。

    あいつを無様に追いかけるおれはきっとみっともないことこの上ないだろう。

    でもおれはどうにかあいつの背中が見える場所にいたかった。がむしゃらに突き進みすぎて危うい背中を守りたかったし、悪意から守ってやりたかった。あいつが夢を叶えるところをおれは側で見たかった。

    あいつはおれの友だった。

    上官である以上にコビーは友達だった。

     なのに──なのに。

     はっと自分のうなされる声に目を覚まして頭を抱えた。

    「うう……コビー……!」

     だらだらと流れる情けない涙が仮眠室のピローを濡らしていた。行きは一緒に居たはずのあいつは、帰り道にはもういない。

     涙を拭って身を起こす。

     SWORDの拠点へ艦が近づいている時間だ。

    「ヘルメッポ少佐! 着岸の指揮を……!」

    「──今行く!」

     剥ぎ取ったシーツで顔をめちゃくちゃに拭いてコートを被る。サングラスで、赤い目は隠れるだろう。

  • 125二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 00:07:58

    >>83

    背負った役目がある以上「8歳だから」が慰めにならない、時間が追いつかないモモの歯痒さに人知れず寄り添える錦さんはもう親子なのよ

    外野の読者からしてみると8歳なんだから甘ったれでいさせてやれよってなるけど本人はそれも辛いよなぁ

    ちょっと認識改めたわ、良いSSありがとう

  • 126二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 10:41:12

    >>124

    思い悩んでる感が素晴らしい

    「みっともない」とか自分を客観的に見て批判してるのが成長を感じられて良いな……いやでもそんな卑下することないよヘルメッポも立派だよ

  • 127二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 13:16:19

    >>102


    「河松」

    小腹が空いたとこっそり厨に忍び込む――既のところで拙者を呼び止めたのは日和様であった。

    姫のようなお方がなぜここに。聞けば、拙者を探していたと仰る。

    「どうなされました?」

    「カッパ巻が食べたいの」

    カッパ巻、日和様の好物である。しかし、時刻は宵の口、とうに夕飯は過ぎている。

    「ですが日和様、先程お食事を召し上がらなかったのですか?」

    「河松の作ったものが食べたくなって」

    美しい姫君にそう言われては、ほかに理由を聞くなどありはしない。

    「カッパッパッパ!そうでございますか。それではこの河松、日和様にご満足頂けるカッパ巻を作りましょう!」

    干しのりに引かれた酢飯の上に、細長く切ったきゅうりを置いてせっせと巻いていく。意気揚々とカッパ巻を作っていく拙者を見た日和様は、20年前と変わらない、優しい微笑みだった。

     この20年、姫はどれだけ辛い思いをしてきたのだろう。

     どれだけ泣きたい思いをしてきたのだろう。

     たとえ拙者や傅ジローがお側にいても、姫の中にぽっかり空いた悲しみの穴は、きっと埋まらなかっただろう。

    「河松、あなた泣いているの?」

    「カッパッパッパ、泣いてなどおりません!きっときゅうりが目に染みたのでしょう。さぁできましたぞ!」

    「……ええ、とっても美味しそうなカッパ巻だわ。ありがとう河松。ありがとう」

    ああ日和様、貴女はなんてお優しくお強いのでしょう。この河童の河松、命に変えても貴女を御守り致します。

    「ねぇ河松、この国はきっと変わっていくわ。枯れてしまった川も荒れ果てた山々も、時間はかかるだろうけどきっと20年前の綺麗な姿を取り戻す。だってお兄様たちがいるもの」

    「ええ、もちろんでございます。拙者も、精一杯モモの助様のお手伝いをしなくてはなりませぬ!」

    「だからね、もう守ろうなんて思わなくていいのよ。この国は変わってきっと平和になっていく。だから、身を粉にしてまでわたしを守ろうなんて、もう思わなくていいの」

    はっと顔を上げたと同時に涙が溢れた。日和様も、拙者につられたように涙を流した。

    2人で泣きながら笑った。泣いて笑ってまた泣いて、気が付けば夜は老けきっていた。

    「美味しいわ河松」

    「なんとも嬉しいお言葉、カッパッパッパ!」

    朧月夜が、美しいワノ国を照らしていた。

  • 128二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 13:20:52

    >>114

    うわぁ〜〜この空気感めちゃくちゃ好き!!

    無料公開で読んだ直後だから涙出てくる…

  • 129二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 13:40:33

    >>127

    河松と日和の傅役と姫様の関係が暖かくて優しい空気感ですごい綺麗でいいね。日和が兄を信頼してるのも良い河松が作るかっぱ巻きも美味しそう。もしかして、河松と話がしたくてカッパ巻きをお願いしたのかなと思った。優しくて美しいお話だ。

  • 130二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 22:21:54

    >>15

    「もうそんな時期か」

     教練の終わった訓練兵たちがぞろぞろと訓練艦から降りてくる行列と出くわしてセンゴクは小さく呟いた。隣の子ヤギがメェとなく。教官がセンゴクに気が付いて慌てて敬礼をするが、センゴクは手を振って止めた。

    「皆無事か?」

    「ええ。まだまだケツの青いひよっこですが」

     彼らもそろそろ雑用身分で軍艦に乗る頃だろう。波にもまれ、武器を握るまだ少年らしいあどけない顔の新兵たちが正義を忘れないことを願う。

    「ならよかった。ドジで海に落ちたりとかは」

    「ありませんよ。ロシナンテじゃあるまいし」

     教官は目を細めて懐かしそうに訓練艦を見上げた。

    「懐かしいですねえ……。あの子は本当にドジで、甲板掃除の時に仲間に何回転ぶか賭け事にされていましたよ。その分したたかに色々ふんだくっていたようですが」

    「覚えておるものか」

    「私は教官ですから、ここから卒業した子たちは全員覚えていますよ」

    「そうか……」

     教官は生真面目に頷いた。若々しい教官であった男はゼファーの後を継いで今は教官長になっている。


     ドジっ子だから海兵になんてなれないんじゃないかと自分とロシナンテが顔をつきあわせて不安がっていたことなど嘘のように、士官学校のロシナンテはめきめきと腕を上げた。ガープやゼファーの訓練に食らいつき、にょきにょきと伸びた若木のようなおっとりとした少年はいつしか敬礼もきびきびとした一人の立派な海兵になっていた。

    『センゴクさーん!』

     カモメの描かれた帆がたなびくデッキの上で手を振る若い海兵の顔が今でもくっきりと瞼の上に残っている。

    『落ちるぞロシナンテ!』

    『へへっ、見てください!』

     ロシナンテは満面の笑顔で帽子を振った。MARINEである証の帽子だ。案の定デッキから転んだロシナンテがそのままころがった勢いで自分の足下にたどり着く。

    『ロシナンテ!』

     手を伸ばして彼を引き上げる。片手に乗るほどだったような幼子は今や自分に迫る勢いの若い海兵の卵だった。

    『センゴクさんのおかげです。おれ、海兵になりました!』

     青い空の上、まばゆい太陽が彼の後ろに輝いていた。逆光がまぶしくてセンゴクは思わず目頭を押さえた。

    『よろしくお願いします、大将センゴク!』

     おどけるように敬礼をしてみせた息子同然の男の顔。

     痛みを覚えずに思い出せる日はきっと来ないだろう。

  • 131ミョスガルド聖とロシナンテの話22/10/13(木) 04:24:35

    >>101

    (ミョッさんの年齢がわからなかったんでひとまずドンキ兄弟よりは上、ロズワード聖よりは下くらいで認識して書いた)


    人間になってから、長年見えてこなかったものが…あるいは目をそらしてきたものが、いやでも鮮明に目に入るようになった。

    享楽的な人生を送ってきたものにとってそれを直視することへの痛みは耐え難く、大恩ある彼の人との約束と、生まれて初めて己に宿った「使命感」がなければとっくに潰れていたのかもしれない。

    そしてようやくその痛みにも慣れーーなくなった、とは言えないーー広がった世界の中でふと気になったことは、あの人たちのことだった。

    33年前のことは正直あまり覚えていない。ただ父はしばらく、不機嫌という言い方すら生ぬるいほど憤怒の形相であった。

    一族の恥さらし。堕ちた竜。そう罵られて久しい遠縁の男に今思うことは、尊敬と、共感と、憐憫と、憤りだった。下界で現実に直面し他者に諭されようやくその目を開くことができた己とは違い、聖地にいる中自らの目を開いた人。それ自体は素直に称賛したい。だが、せっかく開いた目でもう少し世界を見ることはできなかったのか。そこに痛みが伴おうとも、世界を知り己を知り、己にできることを知っていれば、彼は自分よりも遥かに多くのことをなせる立場だっただろうに。

    彼には妻と、二人の子どもがいた。奥方のほうは下界で病によって身罷られたと聞いた。うっすらと記憶にある彼女は小さな花のようにはかない人で、それでも妻として母としての覚悟を持った方だった。二人の息子はあまりにも小さく、その後の彼らが下界で何を知りどうなったかは、その後長男が起こした事件を想うとなんとなく察することはできたが、すでに聖地で口にすることすらタブーとなった彼のことは、今更どうにもならないとその後の顛末を知って思った。

    では、もう一人の息子は。

    一族の集まりで一度だけ会った、奥方の後ろに隠れていたあの幼子は、どうなったのだろうか。

  • 132ミョスガルド聖とロシナンテの話22/10/13(木) 04:24:51

    >>131


    手元の書類は軍の関係者に無理を言って持ってきてもらったものだ。とはいえあくまでも借りているものなので、読了したら返さなければならない。

    『ドンキホーテ・ロシナンテ』

    半分己と同じ名を持つ者の情報が書類の上に並んでいる。付属の写真には、金髪の青年が真剣な表情で写っている。いつも朗らかな顔で笑っていたあの夫妻の子とは思えない相貌だったが、目元にその血のつながりも感じられる顔立ちだ。

    『13年前、ミニオン島にて死亡。享年26歳』

    最後に載っていたその文を見て一瞬息が詰まった。それをゆっくりと吐き出しながら、書類を閉じる。

    彼の目には世界がどう映ったのだろう。きっと綺麗なものではなかったはずだ。痛みを伴う目覚めの怖さは自分も知っている。しかし彼はそこから逃げなかった。父のように無知であろうとせず、兄のように世界を拒絶もせず、その世界を守る者になろうとした。そこには、きっと己の知らない痛みがあったはずなのだ。

    それを聞いてみたかった。

    きっと、聞いた己は泣き、苦痛に苛まれるのだろう。そして新たな痛みと共に、また世界を広げるのだろう。

    それが叶わなかったということに、今もこの胸は痛み続けている。


    良き友になれたかもしれないかつての同胞を、そして世界のためにその身を捧げた一人の海兵を想って、ドンキホーテ・ミョスガルドは涙を流した。

  • 133二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 04:26:10

    >>132

    二手に分かれてしまった反省

  • 134二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 04:35:39

    >>130海軍時代のロシナンテいいですね、好きな空気感です。見守られながら大きく立派になって、センゴクさんも誇らしかった筈…読めて嬉しいです。有難う

  • 135二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 05:37:59

    >>131

    >>132

    自分が出しておきながら難しいお題だと思っていたんだけどすごい見事なssになっていて感動!ミョっさんがロシナンテのことを知ったら、そう思ってくれないかと想像してたことがぴったりで嬉しい。ミョっさんの誠実さが端々から伝わった素敵な話だった

  • 136二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 14:38:54

    念のため保守

  • 137保守ありがとう22/10/13(木) 15:21:22

    >>110

     とある海賊との海戦を終えた夜。相手は残虐で名の知られた総合懸賞金額が数億に上る海賊だった。幾人かの負傷者をだしたものの、殉職者無く拿捕できたのはこの艦を率いていた中将の力が大きい。その代わり、海賊船は海の藻屑と消えた。船に染みついた多くのの血と一緒に。

    「早くお礼言いたいんだよ、ヘルメッポさん」

    「コビー、だからってこんな夜に……」

     スモーカー中将。モクモクの実の能力者であり、新任の中将であるはずなのだが、そうと思わせぬ実力者である。

     ヘルメッポのの手を引いてコビーは気配のある後甲板のハッチを開く。二人そろってハッチから顔を上げた途端、むせかえるような不思議な匂いに息を詰める。香水のようですこし違う、けれど心が安らぐような匂いだ。その煙の向こうに偉丈夫の中将の姿がシルエットのように見えている。

    「……眠れねェのか」

     こちらに言われたのかと思ってぎくりとするが、彼はこちらに背を向けていた。ヘルメッポと目を合わせる。自分たちに声をかけているにしては少し変な口調だった。こんな風に穏やかな声だっただろうか。

     まるで海に話しかけているようだった。

    「こっちに来ても誰も付き合ってはやれねェよ。そいつらで満足しな」

     ふう、と葉巻を吹いて煙が動く。

     隣のヘルメッポが息を詰めた。がたがたと青ざめた様子でハッチから震える指を差す。

     コビーはそれを目で追って、ひゅっと息をのんだ。

    「──間違えるなよ。うちの艦の連中は、一人も連れてはいかせん」

     むせかえる良い香りの煙で、艦は丸々包まれている。中将の周りには、煙をかき分けるだけの何かがたむろっていた。中将と見比べてあまりに異質な、影の無い何かが、煙に縁取られて存在をあらわにしている。

    「……もう眠れ」

     中将の低い声と共に、煙の中にいる実態の無い何かがひとつひとつと消えていく。

    ──ありがとう。

     見聞色に聞こえた"声"にコビーは目を見開いた。その"声"は、船員のものでもヘルメッポの物でもない、初めて聞く奇妙に遠い"声"だった。

    「コビー? 大丈夫か」

    「うん……」

     頭を軽く振って、心配そうなヘルメッポの手を引いて船室に戻る。

    「あの人達、よく寝れるといいな……」

    「……ああ。そういうことか」

     翌日、捕らえられた海賊は皆死んでいた。

     まるで、地獄をこの世で見たような顔だったとコビーは後に噂で聞いた。

  • 138シャンクスを見かけたあるモブ22/10/13(木) 17:02:17

    >>109


    火のような人だと思った。

    特に資源や財宝の類や、なんなら縄張りの旗印すらない辺鄙な島に、彼は船員たちと共に白昼堂々やって来た。自分を含め町中の人が怯えて遠巻きに見つめる中、町唯一の酒場を経営している父はその豪胆さをいたく気に入ったらしい。酒を出し、最初は及び腰だった町の昼行灯たちをも巻き込み、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。全て彼ら持ちで。まだ少し恐怖があった自分は父にそれとなく進言したものの、これくらいできなきゃ新世界で酒場なんてやれないと一笑されて終わった。

    なんだかんだ気になっていたらしい住人たちが集まってくる。飲み比べをする者。彼らに冒険譚をねだる者。その中心に彼がいた。まるでキャンプファイヤーの真ん中にある焚き火のようだと思った。そこにいるだけで明るい場を作れてしまう、酒場にいるとよく出会う人種だ。

    住人たちは求められるまま、酒を、食糧を、そして情報を売った。彼らは十分な支払いをしてくれた。住人はその情報の中に、さらっと最近町を困らせている山賊の情報を混ぜた。隣町と唯一繋がっている道の途中に関所をつくり、金を巻き上げる輩。こちらは直接の被害は出ていないが、隣町では反発した人が殺されたこと。しかし互いに貴重な交流相手で親族がいるものも多く、泣く泣く彼らに金を渡して行き来するしかないということ。

    ならばと彼が膝を叩く。おれたちがなんとかしよう、一宴の恩だと言って立ち上がる。

    あとから聞いた話だが、住人たちは見返りを要求しやすいように大盤振る舞いをしたらしい。金払いがよくなければその情報をやるつもりもなかったと。絶句する自分に父が意地悪く笑う。

    これくらいできないと新世界ではやっていけないのさ。おれたちも、彼らもな。


    翌朝、道の関所が綺麗になくなっていた。住人は彼らにお礼の宴を開き、彼らはそれを十分楽しんだ後この島を出ていった。島に自分たちの海賊旗を残して。

    山賊たちは、最初からいなかったかのように痕跡すらも残らなかった。なんとなく察した住人は多く、自分もまたその1人だ。なるほど、彼らは嘘偽りなく海賊で、彼は紛れもなく世界指折りの賞金首なのだ。


    なんとなく、本当になんとなくだが。

    彼は火のようだけれど、陽にはなれない人なのだろう。

    彼の陽はすでに落ちたのか、あるいはこれから昇るのか。

    さっていく船に手を振りながら、そんなことを思った。

  • 139二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 17:06:42

    >>138

    赤髪海賊団かっけー!

    新世界の普通の島の住人たちの事情がありありとわかる良いお話ありがとう

  • 140二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 17:11:42

    >>138

    なんというかっこいい赤髪海賊団なんだ。強かな新世界の島民も暗黙の了解を受け取りたのしむ赤髪海賊団も全部すごいかっこいい話だね。それなの赤髪が太陽ではないっていう語りの余韻が綺麗な話だった。

  • 141二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 18:34:39

    >>139>>140

    ありがとう。感想もらえるの嬉しい。

    新世界に住むには逞しくないといけないしそれを理解してないと四皇できなさそうだなと思って書いた。


    落ちる陽と昇る陽はロジャーとルフィのイメージ

    シャンクスは新時代を照らす太陽にはなれなさそうだなと

  • 142二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 21:17:08

    あげ
    皆文うまいな羨ましい

  • 14321歳ウタと7歳ルフィのおね略22/10/14(金) 01:30:30

    >>13


    私の能力の作る世界は、私の望んだものを望んだとおりに生み出すことができる。

    でもそれは、私の頭の中にあるものしか生み出せないということ。私の知らないものは作れないということ。

    だから当たり前のことだけれど。

    私の世界にいる彼は、別れたあの日の姿のままだ。


    目の前に小さな彼がいる。

    屈託なく笑って何かを言おうと口を動かしているけれど、声は出ない。私が、忘れてしまったから。人は音の記憶から忘れると、誰に聞いたんだっけ。それを聞いて私は、何て答えたんだっけ。

    目の前の彼を抱きしめる。子どもらしい暖かい体温が伝わってくる。彼はちょっと困ったように首をかしげて、それでも笑って背中に手を回してくれる。さすってくれる手の小ささになぜか泣きそうになった。

    彼は知らない。私の12年間も、私の罪も。だから何のためらいもなく私に手を差し伸べられるのだろう。こうやって抱きしめ返してくれるのだろう。知ったら怒るだろうか。それとも…

    無性に、今の彼に会いたくなった。背は高くなっているだろうか。声も…昔の声は忘れてしまったけれど…低くなっているのだろうか。手も大きくなっているだろうか。

    もし、この世界のどこかで私の歌を聞いてくれているのであれば、新時代の幕開けと共に今の彼に会えるのだろう。その日を待ちわびる自分と、その日が来ることに怯える自分がいる。

    だから今は、予行演習にもなりやしないつたない一人遊びだとしても、思い出の中の彼を抱きしめる。

    小さな彼は笑ったまま何かを言ったけれど、やっぱりその声は聞こえなかった。

  • 144二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 06:29:48

    >>143

    人間初めに思い出せなくなるのが声と聞くので、十二年間の間に声を思い出せなくなってるウタが切ないね。こういう形で出会わせるお題からの発想すごい。静かな雰囲気で切なさが詰まってる話だね。

  • 145二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 16:07:25

    >>89

    ノベローっぽいやつだ!13歳から船出までの共同生活もだと覗きたいよねー

  • 146四皇麦わらを恨む少女22/10/15(土) 01:35:57

    保守がてら>>18


    あなたは私のことなんて何も知らないだろうし、私もあなたのことについて知っていることはほんのわずか。

    だけど私たちはいやでもあなたが起こす嵐に巻き込まれていく。


    大海賊時代。世界中の海で起こっていることがニュース・クーによって世界に広められて、その波は小さな世界で燻る男たちの心を揺らす。彼もその一人だった。

    平凡な商店の次男坊は、冒険譚の大好きな少年は、それを語ってくれるときの笑顔が何よりも素敵だった私の大切な男は、ある日海に出た。冒険への憧れに突き動かされて、私や家族の静止も振り切って。

    手紙を書くよ。写真も送るよ。世界を君に届けよう。そう言って私がいっとう好きな笑顔で旅立った。綴られる出来事や風景は今まで聞いたこともないようなものばかりで、まるであなたがそばで語ってくれているようだった。彼は約束を違えることはなく私に文を送り続けてくれる誠実な人だった。

    だからそれが途絶えた時に、彼に何が起こったのかは容易に察せられた。


    よくあることだ、と駐屯兵が言う。

    海賊や冒険家に憧れた男が海に出るのも、その大多数が病気や天災、あるいは戦禍や海賊の暴虐によって命を落とすことも。

    彼は運命には好かれず、世界に知られることもなく消えていく、ありふれたつまらない話の一つとして終わってしまった。


    あなたを恨むことはお門違いであることなど百も承知だ。

    けれどもどうしても思ってしまうのだ。

    あの日あなたがこの町に来なければ。首に剣を振りおとされながらも笑わなければ。天の雷があなたを生かさなければ。

    彼がそれを見ることさえなければ。

    今でも私の隣で笑っていてくれたかもしれないのにと。


    ねえ、海の皇帝さん。

    どうせならこんな世界、一周ついでに思いっきり壊してしまいなさいな。

    私はそれを彼への土産話にしましょう。

    だからあなたは進むといい。

    世界中の憎悪と羨望なんて知りもしないで。

  • 147二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 11:07:44

    >>146

    うわー!!めっちゃワンピース世界の雰囲気がある……冒険の横でそういうこともたくさんあるよね……!

  • 148二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 13:33:57

    >>104

    潮風どころか海のド真ん中をいくユースタス・“キャプテン”キッドにとって、錆は小さな大敵だ。鉄は錆を纏うと磁力を通さない。金属腐食は1箇所起きるとみるみる拡大してゆく、そんな間抜けな敗因など許されるものではない。

    キッドは左義手のパーツを磨く間、気に入りの音楽を聴く。金属をぴかぴかに磨くのに合わせてトーンダイアルから響く軽快なスネアとハイハットに混じるバスドラ、スラングの混じった歌詞、ギュイィンと硬質なギターのスクラッチ音を最後に、あたりはふつりと静かになった。そのタイミングを待っていたかのように「お頭ァ」と声がかかる。


    「なんだ」

    「いやァ、なんていうか。おれたちの勘違いかもしれねェんだけど」


    やけに歯切れの悪いワイヤーの言葉をキッドがジッと待っていると、「ガン飛ばさないでくれません?」と困ったように目を逸らした。言っておくがこの船に人相の良い奴は乗っていない。「まァいいや、ちょっとキラーさん見てきてください」と雑な説明だけをされて背中を押された。

    キラーを見つけたキッドはなるほどと思った。なんとなく空気が暗く、仮面越しで表情が分からないから座りの悪い違和感だけが残っている。これは船員が困るわけだ、と。キッドに気付いて「どうした」と声をかけるキラーの様子はいつも通りだった。


    「どうしたはオメーだろキラー。辛気臭ェって苦情きてんぞ」

    「ファッファッファファ!誰だヒートか⁈——あァいや、大したことじゃない」


    じゃあなんで言わねェ。無言のキッドからひしひし伝わる圧に、本気で言うまでもないと考えていたキラーは思い直してすっと手のひらの上のTDを差し出した。怪訝な表情をするキッドをよそに殻頂をベコッと押して音を出す。よく聞いたギターのリフで始まる曲を耳に捉えて、キッドは「まさか」と顔を苦くした。


    「おれとしたことが、ソウルキングにサインを貰い損ねた」

    「本当にしょうもねェな⁈ンなモン生きてりゃそのうちカチ合うだろ」


    ガリガリ頭を掻いて呆れるキッドに、キラーは「違いない」とファッファッファとやや力の抜けた笑いを返した。

  • 149二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 15:16:39

    >>44

    >>37みたいにテレグラフにしてみたらどうだろう

    まあ文字数オーバーにはなるがあなたのSSが読んでみたい

  • 1504422/10/15(土) 15:24:15

    >>149

    嬉しい言葉をありがとう400文字くらい削った上で既に字数オーバーで投げてるんだよかったら読んでくれ>>51>>52

    確かにTelegraph使えば良かったな

  • 151二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:06:15

    >>146

    大海賊時代、ありふれたことだろうことなのがたまらない話だね。時代の流れを作り出してしまった男に対するどうしようもない怨嗟の声がする話だね。バルトロメオがそうだったように、人を海へと駆り立てるけど、その裏に残された人がいる。そこに視点が当たってるのいいなあ

  • 152二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:11:15

    >>148

    キラーもキッドもソウルキング好きそうなのわかる。ワノ国があんなにバタバタしてた中だと貰い損ねもするだろうし、そういうなんでもないことで落ち込むことができるくらいに心の余裕ができたのかなってホッとするね。スマイル食べてても仮面越しでも落ち込んでるキラーの雰囲気のわかるクルーとキャプテン、これはいい海賊団の話だ。

  • 153二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 03:23:36

    >>105

    廃船島で鋸をひくのはいったいいつぶりだろう。アイスバーグは鼻歌でも歌いたいような気持ちでリズムよく木鋸をひいていた。

     さすがは宝樹というべきか、気まぐれな木はみっしりと木目が刻まれ、柔らかであり強固な不思議な切れ味でアイスバーグを翻弄した。指先ひとつの狂いであらぬ方へのこぎりの歯が向かっていくような気配さえある。

     今まで触れてきた木が全て従順な子猫に思えるほどの宝樹アダム。それをしつけて船をくみ上げた時のことを考えると胸がすくような心地の良さの予感がする。

     それはアイスバーグだけではなかったのだろう、弟弟子は調子っ外れの鼻歌で鈍った様子も無くマストになる宝樹に鉋をかけていた。

    「ンマー、相変わらずお前の歌は下手だよ」

    「うるせー、バカバーク」

     あっという間にマストになる場所へ鉋をかけ終わったフランキーがそのまま廃船島の奥に消えてく。その癖奥に居なくなってもフランキーの鼻歌が聞こえてくるので、アイスバーグは思わず笑う。

     相変わらず船をつくっているときは機嫌が良い。何を言っても、何をしても、楽しいと体中が叫んでいる。

     全くなんてひどい話だろう。こんなに船を作るのが好きな男が船を作るのを我慢しなければならなかったなんて。

     宝樹の相手を少し休み、アイスバーグは額に浮いた汗を拭ってW7を振り仰いだ。

    「──ん?」

     廃船島を遠巻きに見つめる視線に目を凝らすとフランキー一家の子分たちが所在なさげにおそるおそるこちらを窺っていた。手に持っているのは料理屋から仕入れてきた料理だろうか。

    「ンマー、おい!」

     声を上げると子分たちは蜘蛛の子を散らすように去って行った。行き場を無くした手をもてあましていると、横木を仕上げたフランキーがため息交じりにアイスバーグに声をかけた。

    「ほっておいてやれ。そこの飯はあとでキウイとモズが持ってくらァ」

    「フランキー」

    「子分ども、変な気をまわしやがって」

     肩を怒らせて顔を顰めているが声音は柔らかい。

    「さっさと船造ってわたさねェとあいつらおまんまの食い上げだからなァ」

    「……そう思うのか?」

     アイスバーグが呟くと、フランキーはサングラスを僅かにずらして眉を曲げた。

    「そう思うぜ、何か悪ィか?」

     堅くなった声に、アイスバーグは首を振った。「ンマー、作り上げちまうのは賛成だ」

     他のことに色々文句をつけるのは後にしよう。

  • 154あるドレスローザ市民の回想22/10/16(日) 03:47:27

    保守ついでに>>16


    これはけして忘れない私だけの記憶。この国がまだ壊される前、偽りの平和の中で皆が日々を享受していた頃の。

    小さな菓子店を営む私は、時々店から離れた広場に露店を出すこともあった。祭りの日であったり記念日であったり…時々私の気まぐれで。そういったスタイルが享楽的な国民にうけたのかそこそこ繁盛していた。店じまいの時間は決まっていない。だいたいは売り物がほとんどはけたときだ。日持ちするものは持って帰れるが、そうでないものは何とか売り切らねばならない。でないと残り物は自分の夕食になり、少し気にしているこの腹がまた大きくなってしまう。その日は売れ行きもよかったが、そろそろ日没という段階で一つだけ余ってしまった包みがあった。すでに広場に人はほとんどおらず、またこの時間帯になってしまうと買い物の目的は菓子よりも総菜のほうに分がある。いつものようにこれは夕飯か…とやや肩を落として帰り支度をし始めた私に、声をかける人がいた。


    「店はもう終いか」


    きっとその時の私は間抜けな顔で固まっていたのだろう。しかしそれは仕方なかったのだ。目の前にいたのは、こんな場所で会うなんて思いもしない人物だったから。


    「こ、国王様…!ご機嫌麗しく…」

    「フッフッフッ、そう畏まらなくていい」


    自信なく臣下の礼をとる私をその人は片手を上げて制した。恐る恐る顔を上げると、彼は今まさにかごにしまおうとしていたその包みを指さす。


    「それをもらおうか」

    「え…?」

    「なんだ、売り物じゃないのか?」

    「いっいえ!あ、あの、お代はいりませんので」

    「商売っていうのは売り手と買い手が対等でなきゃならねェ。おれの国民であるならばその心得を忘れるな」

    「も、申し訳ありません…100ベリーです…」

  • 155二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 03:47:38

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  • 156あるドレスローザ市民の回想22/10/16(日) 03:48:27

    >>154


    高圧的に窘められすっかり委縮しつつも、しっかりと代金のやり取りができたのは長年の仕事の賜物だったのかもしれない。その私の様子に彼は満足したように頷き、ふとまだ片していたなかった棚に並んだそれを見る。


    「あァ、リボンもつけてくれ」

    「かしこまりました…プレゼント用でよろしいでしょうか」

    「そうだ。可愛くしてくれよ。ご機嫌とり用なんでなァ」


    そう言って笑う彼の表情はーーサングラス越しのため細部までは読み取れなかったがーー子どものためにと買ってくれる父親たちのそれによく似ていた。今まで遠い存在だった彼を急に近く感じたが、そのようなことを世間話の一環で気軽に話せるような質ではないので、黙ってラッピングを施していく。真っ赤なリボンで作られたバラは彼のお眼鏡にかなったようだった。それを受け取ると指を振り、ふわりと空に昇っていく。


    「あ、ありがとうございました!」


    そういって見送る私に彼は片手を上げるだけで返し王宮へ帰っていく。またお越しください、とは言えなかった。

    翌日、店にメイド服をきた女性がやってきてまた腰を抜かしかけた。彼女もまた有名人だ。王を守る軍の幹部の一人だった。


    「あのベビーカステラ、美味しかったわ。それだけ伝えに来たの」


    あのリボンと同じくらい真っ赤なルージュを引いた彼女は、本当にそれだけ伝えてすぐに出ていった。平凡な日常に2日連続で起こった出来事に、私の心臓はしばらくうるさいままだった。



    これはけして忘れない私だけの記憶。とっくに壊れていたこの国が、新しく立ち上がって生まれ変わる前の。

    今や話に出すことすら憚られる彼の、その心にほんの少し触れることができたと思えた日のーー

  • 157二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 14:13:06

    >>154

    >>156

    ドフラミンゴとベビーの関係って複雑で一言では言い表せないのがとても伝わるね。ベビーがドフラミンゴに救われたしドフラミンゴがベビーを家族として愛していたと言うのは否定しきれないものなのだろうし。なんだか考えてしまう良い話だね。

  • 158二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 18:49:46

    あげる

  • 159二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 21:56:13

    >>153

    気のおけない二人のやりとり すき

  • 160二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 03:54:04

    ほしゅ

  • 161I22/10/17(月) 14:22:15

    いろんなSS読めてめちゃくちゃ楽しい!保守もありがとう!
    もしかしてお題安価もっと多くしても良かったのかな!?もし次のスレ立てる時は30くらいまでお題にしてもいいかな?

  • 162二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 14:24:31

    最初30、100行ったら20でもいい気はするな
    いつもお疲れ様です、管理ありがとうございます

  • 163122/10/17(月) 20:18:24

    じゃあもし次があれば初め30くらいお題安価でもありかな!ありがとう!

  • 164ハートよ無事でいて22/10/17(月) 20:53:23

    >>103

     ぐるる……と不機嫌そうに喉を鳴らす白い毛並みの美しい獣に歓声が上がった。白くふわふわとした毛並に覆われたしなやかで柔らかい手足。雪に木漏れ日のさしているような黒い斑点が特徴的なネコ科の猛獣。新世界で噂される人の姿を一時敵に獣に変えるトーテム気流に巻き込まれ、美しく巨大な雪豹となったのは運悪く甲板でベポと昼寝をしていたトラファルガー・ローただ一人であった。ミンク族であるベポは多少獣の特徴が増えただけで殆ど変わらない。

     心底楽しそうな勢二十人のクルーに囲まれて、ローは太く立派な尾をだらりと下げた。もはや諦めの境地である。

    「可愛いんですけどキャプテンー♡」

    「ふわふわ~♡」

     ハートの海賊団の名にふさわしいのか、語尾がとろけたクルーがもふもふとキャプテンの毛皮に埋もれてニコニコと笑っている。

    「ガルチューもっかいしていいキャプテン!」

     もう十分やっただろう、と近づくベポの顔に前足を押し当てる。ずるーい!と声が上がったのはもう信じたくない。

     けれどペンギンが梳く耳元は心地良かった。シャチが撫でる喉元もまた。ウニのマッサージは神業だったし、イッカクだから肉球を触れさせたのだ。チョコレートボンボンよりも甘いクルーたちの声にほっとしてしまう。さっきからひっきりなしにぐるぐると喉が鳴ってしまうのは、頼むから不機嫌だと思ってくれ。

    ──勘弁してくれ。

     うなだれたローに気が付いたのかベポは隙をついたガルチューを遂行しながら笑う。言葉も発せないのにこよくもまあローの言いたいことがわかるものだ。

    「大丈夫。トーテム気流の変化は日が暮れるまでだから、心配しないでキャプテン」

     不安なわけじゃあねェと尻尾でベポをはたく。

    「すみません……」

    「「打たれ弱ッ!」」

     雪豹となったローから離れないシャチとペンギンがベポに突っ込んで三人でけらけらと笑う。はあ、と獣の口から人じみたため息が漏れた。

    (こいつら、おれがどんな姿でも関係ねェのか……)

    「そりゃそうでしょ。おれたちはローさんに着いてきたんだし」

    「アンタが虫でも魚でも獣でもローさんならおれたちは着いていくよ」

    「女の子ならきっと可愛いだろうなー♡」

     ペンギン、ベポ、シャチと勝手なことを言い合う馬鹿どもにローはもう一度深々とため息を吐いてどっかりとペンギンの膝に重たい頭を乗せた。

     なんて、馬鹿で、愛しい、仲間達。

  • 165二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:04:01

    >>164

    お題出した者だけど本当にありがとう!!!

    旗揚げ組がローの言葉聞かずとも分かってるのスゴくいい…最高…

    本誌に関しては強く生きような…

  • 166二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:04:09

    >>164

    ベポ達に混じってもふりたい…

  • 167二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 05:09:12

    保守代わりに

    >>15

    「ロシナンテ、頭を下げろ」

    「はいっ」

    唐突に告げられて、叩き込まれた海兵としての本能で命令に従う。頭上を無事に看板が通り過ぎた。

    それを見たセンゴクがしみじみとごちる。

    「随分背が伸びたな、ロシナンテ」

    確かに、この看板は今までなら下を通りすぎていたはずの看板だ。

    「この前までこんなんだったのに」

    「あれ?センゴクさんが縮んだんじゃ?」

    「言ったな」

    センゴクは、にやっと笑って能力を使う。金色の正義の大仏がロシナンテの頭をわしわしとかき混ぜた。

    「能力を使えばまだわしの方が高いぞ」

    変なところで負けず嫌いな育ての親にロシナンテは声を立てて笑った。

    「早々にあなたに追いつけるなんて思ってませんよ。今日海兵なったばっかりなんですから」

    「そうだな」

    何回も送られたおめでとうをもう一度受け取って、ロシナンテははにかんだ。

    「あなたみたいな海兵になりたい」

    自分のような忌まれた子供を、見返りもなしに掬い上げて心と命をくれるようなそんな海兵に。

    そういうと、彼は照れ臭そうに笑っていた。

    そんな思い出。

    今は遠い、入隊日の記憶。

  • 168二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 12:30:29

    保守

  • 169二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 23:39:19

    書けそうなお題大体書き切っちゃった感あるな……

  • 170二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 23:41:02

    >>167

    能力使って張り合ってくるセンゴクさんいいな…

    それくらい気の置けない親子関係だったんだな…

    ほっこりするはずなのに遠い思い出だからしんみりする…

  • 171二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 00:17:17

    >>24

    これを書こうと頑張ったけどイチジたちが難しくて断念したのでちょっとズレるけど別スレに上げたこれを上げる


    今日、小さな姉弟を殺した

    あの頃の私たちくらいの年齢だった

    弟を逃そうと背中を突き飛ばし私の前に立ち塞がる姉の息を止め泣きながら逃げていた弟を撃ち抜いた


    これを残酷だと思う感情は私にもあるでも私は2人を見て一瞬止まった後いつも通り姉弟の未来を奪った

    …一度だけ、見逃そうとしたことがある

    まだ14にもならないくらいの頃私は初めて戦場に出た

    兵士たちを制圧する任務を下された私は淡々と手を動かし倒していった

    そこに大きな感慨は湧かなかった相手も私も戦うためにここにいるのだ

    戦場が終局を迎えたころ急遽別の任務が下った

    …殲滅戦への変更命令だった

    今思えばあれは私に組み込まれた"情報"が正常に作用するかの実験だったのだろう


    実験は成功した

    私の手は、足は、戦う力のない親子を逃がす為には動かなかった

    もう一度命令が今度は父の声で下った

    化け物を見るような怯えた表情で親子の時は止まった


    あの日から10年経った

    あの日の親子と今日の姉弟、そして母と同じ色を持つ弟は2年前に再び消息を絶っていたがどうやらまだ生きていることがわかったらしい

    父は生捕りにするよう軍に頼むとのことだった


    …弟がもう二度と私の目の前に現れないことを心から願っている


    だけど私の体は今日も動かない

  • 172二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:39:20

    ほしゅ
    今ネタがないけどまた書きにくるよ

  • 173二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 09:20:12

    >>171

    心を持っていることがこんなに辛いことある?

    文章自体は淡々とした感じだけど、悲哀・諦観が混じっていて心抉られた

  • 174二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 18:13:34

    >>171

    弟が表れないことを願っている……っていうのが辛いけど、レイジュの優しさが詰まってる言葉で素敵だな。優しいからこそ、戦闘員なら割り切れるけど非戦闘員を殲滅するのは辛かっただろうな。レイジュの苦悩や優しさが伝わるいい話だ。

  • 175二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 01:09:19

    >>6

    おトキの腕の中で眠るモモの助に少年たちは小っちぇえ……、と小さな声で惚けたように呟く。おトキはくすくすと笑った。一応自分より小さな子供を起こさないように声を顰めるという配慮をしているのが面白かった。

    「モモの助というの、妹は日和。よろしくね、お兄様たち」

    「お、お兄様ぁ? おれたちがァ!?」

    バギーが声をひっくりかえし、その横でシャンクスは目を丸くした。

    その挨拶が功を奏したのか、それとも単に自分よりも小さな子供が興味深かったのか、シャンクスとバギーはオーロ・ジャクソンの仲間たちが想像した以上に甲斐甲斐しく世話をやいた。腰を屈めてまだ歩行のおぼつかないモモの助の手をひき、日和をおぼつかない様子であやす姿はいつしか当たり前の光景になった。姿が見えなければ「ばぎー、しゃんくしゅ」と探すモモの助や、二人でかくれんぼや鬼ごっこをしているのもいつしかオーロの日常に溶け込んでいく。

    「あいつらがこんなに面倒見がよかったとは。わからねェもんだな、がきなんてのは。レイリー」

    とクロッカスが笑うのに頷く。それぞれに二人の小さな兄妹を可愛がる姿は今までにみたことがないものだった。

    「おやすみももちゃん〜いいこでね〜♪」

    夕暮れのオーロの甲板に調子っぱずれのシャンクスの歌が聞こえてきて、レイリーはふっと吹き出した。ビンクスの酒を子守唄代わりにしてそだった子供が、子守唄を歌っている。

    期限付きの航海はもうすぐ終わる。終わりに向けて進んでいる。

    けれどきっと、この日々は宝物になるだろう。

  • 176二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 08:30:58

    保守

  • 177二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 16:33:26

    保守だぜ

  • 178二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:57:56

    保守代わりに短いの

    >>107

    掌が痺れるくらいのハイタッチをする。

    どっちの顔も制服も泥だらけで痣だらけでタンコブだらけなだが、そのせいか何故だか今日はやけに二人しておかしなテンションになっていた。命の危機を乗り越えた後のハイなのだが、その頃の僕らはそんなこと知る由もない。

    「ヘルメッポさん!」

    「コビー!」

    「生きてるね!」

    「おう!」

    「お休み!」

    「お疲れ!」

    ばたんと倒れ、その瞬間に二人して寝息を立てる。ひどいいびきもひどい寝相もお互い様だ。

    まだ雑用だったころの、ガープ中将との稽古の後の話。

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