- 1スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 16:37:03
穏やかな波で静かに揺れる甲板で大の字になって寝転ぶ。
背中に伝わる芝生の優しい感触が心地よい。
視界いっぱいに広がる星々の煌めきと爽やかな波の音色が私を包み込む。
幼少期を船の上で育った私にとって、この空間はゆりかごのような安らぎを感じる場所だ。
「ウタ、今夜は冷え込むからそんなところで寝てると風邪ひくわよ」
一瞬、私の視界をふわりとオレンジ色の髪が遮る。
測量室で今日の仕事を終えたナミが甲板に降りてきていた。
「ナミもどう?気持ちいいよ」
「私は遠慮しとくわ。ウタは1度そのまま朝まで寝てたことあったんだから、ほどほどにしときなさいよ」
「はーい」
ナミは私に優しく注意するとそのまま隣に座りこんだ。どうやら私が寝落ちしないように見張ってくれるみたい。
ふと、顔を横に向けるとナミの健康的な脚が目に入る。 - 2二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 16:39:24
期待
- 3スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 16:41:08
「隙あり!」
夜空を眺めていたナミの隙をついて、その魅力的な太ももにダイブする。
「ちょっとウタ!なにやってんの!」
「えへへ、ナミの膝枕は頂いたよ!」
「はー、急に変なことしないでよ。ビックリするじゃない」
ナミはため息をつきながら呆れた表情をするが、私の突飛な行動を怒ることなく受け入れてくれた。
正直怒られるのを覚悟して一か八かの勝負に出たのだけど、私の目の前におられるのは女神様だったらしく、愚行を優しく受け止めてくれた。
「女の人に膝枕してもらうの初めてなんだよね」
男所帯の赤髪海賊団で育った私は子供の頃上陸した島で女の人に出会うことはあったけど、親しい間柄になることはなかった。
一番付き合いの長い女性と言えばフーシャ村のマキノさんになるけど、あの頃はルフィのお姉さんとして立ち振る舞うのに精いっぱいだったし、マキノさんとは年も離れていたのでお友達と呼べる間柄になる前にお別れすることとなった。
だから、女の人と一緒に生活するのはサニー号が初めての経験だ。私は女のくせに女の子の扱い方を知らない。ルフィやシャンクスに対する距離感でナミやロビンさんに接すると怒られることがしばしばある。
だけど、二人とも怒るときもすごく優しいから、最近はその優しさに甘えてばかりの毎日だ。 - 4スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 16:45:46
「ふーん、そうだったんだ。それでどう?私の膝枕は?」
「すっごく柔らかくて気持ちがいいよ。シャンクスのガチガチでもじゃもじゃな脚とは大違いだよ」
後頭部に伝わる幸せな温もりを楽しみながら、幼い頃シャンクスにしてもらった膝枕の記憶を思い浮かべる。
シャンクスの膝枕も逞しさを感じて好きだったけど、女の子の柔らかな太ももに沈み込むこの感覚は病みつきになってしまいそう。
「そう、楽しんでもらえて何よりだわ。ちなみに私の膝枕は5分で1,000ベリーだけど何分利用するつもりかしら♪」
「……無料体験サービスとかないの?」
「しょーがない、今回だけよ」
お金が大好きな航海士さんは油断してるとすぐに多額の請求を吹っかけてくる。お小遣いの管理もナミがやってるから、彼女に逆らうとすぐに一文無しになってしまう。
実際にお金を取られることはほとんどないのだけど、ルフィとバカやって怒られた時は本当にお小遣いが減らされていた。
「……ん?」
そんな苦い思い出を頭から追い出すために、星空を眺めて気分を変えようと思い視線を上に向けてあることに気づく。
「どうしたのウタ?」 - 5二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 16:46:16
期待
- 6二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 16:49:21
これはかわいいの気配
- 7スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 16:51:08
「ナミのおっぱいが邪魔して星が見えなくなっちゃった。ナミ、おっぱい小さくできないの?」
「………」ビシッ
「いったい!」
ナミに無言で額をチョップされた。しかも結構強めに。なんで?私変なこと言った?
「なんでチョップしたの?」
「あんたが馬鹿なこと言うからに決まってるじゃない。ウタはおっぱいを小さくできるのかしら?」ビシビシ
ナミはちょっと怖い顔をしながら、私の胸をビシビシ叩いてくる。そんなに痛くはないけど、静かな怒りを感じる。
「私はできないよ。でもナミなら“蜃気楼=テンポ”でおっぱい消せるでしょ?」
「………」ビシッ‼
「いっっったい!」
おでこにガチのデコピンを食らってしまった。なんで?私はナミの魔法見たな技を見たかっただけなのに。
「ウタ、女の子同士でも相手に向かっておっさんみたいな発言をしてはダメなのよ」
「ごめんなさい。……でも、ナミもたまに似たようなこと言ってない?」
「……この話はやめておきましょう。うん、お互いにこれから気を付けるってことでいいわね?」
「わかった。気を付ける」 - 8二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 16:52:23
性知識ゼロウタちゃん、かわいいがあやうい
- 9二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 16:55:11
無邪気からくるおっさん発言…
21歳児かわいい - 10二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 16:55:47
小学生みたいなこと言い出すウタと
おっさんみたいなこと言ってるナミさんの差が好き - 11スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 16:57:43
「ほら、本当に今夜は冷えるからそろそろ部屋に戻るわよ」
「えー、もう少しおしゃべりしようよ」
ナミの太ももをもう少し堪能したいので、我儘を言ってみる。
「……わかったわよ。なら温かい飲み物を準備するから続きはキッチンでね」
そう言うとナミは私のことを気にせず立ち上がろうとするので、慌てて私も立ち上がる。
「さむい!」
少し強めの夜風が甲板を吹き抜けた。確かにこの冷たさは体に堪えそうだ。
「ナミー温めてほしいなー」
温もりを求めてナミにハグする。ポカポカしてとっても気持ちがいい。
「こらこら、急に抱き着くのはやめなさいっていつも言ってるでしょ」
ナミの言う通り私は頻繁に彼女に抱き着いてはその都度怒られていた。それでも私が懲りることなくハグをするので、最近は呆れるだけで怒らなくなってきた。
私も自分がなぜここまでハグが好きなのかうまく説明することができない。
ただ、周りに誰もいなくて私一人だけになると、今いる場所が夢か現実かわからなくなる時がある。
だからだろうか、隣に温かい人がいてくれるときは、ついその温もりを確かめるために触れたくなってしまう。抱きしめ合ってお互いがちゃんと存在することを確認したくなってしまう。 - 12スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 17:00:52
周りで誰かが見ている時は「いいかげんにしなさい」って言いながらすぐに引き離されることが多い。
でも、こうして二人きりになったときは、私が満足するまで優しく抱きしめてくれる。
「いつもありがとうナミ」
十分すぎるほど彼女の温もりを分け与えてもらえたので、お礼を言いながら体を離す。
「ほら、行くわよ」
ナミはくるりと背を向けてキッチンのほうへ歩き出す。だけど、一人で歩き出すのではなく、私の手をしっかりと握りしめてくれた。
私は嬉しくなって、ナミよりも一歩前に出て彼女の表情を確かめたくなった。
けど、そんなことするとこの雰囲気が台無しになると感じたので、そのままナミに手を引かれながらキッチンへ向かうことにした。 - 13スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 17:08:46
「んー、赤ワインが少し残っているわね。ねぇウタ?飲み物はワインで大丈夫かしら?」
「うん、大丈夫だよ」
正直なところお酒はそこまで好きじゃない。けど、静かな夜にナミと二人でお酒を飲むのはロマンチックな感じがする。
大人の夜を楽しみたいから、今日は頑張ってお酒を飲んでみよう。
「なら、ホットワインを作るからちょっと待ってて」
そう言ってナミはキッチンから出て行ってしまった。ホットワインって何だろう?そのままの意味でワインを温めたものなのかな?でもそれならなんでキッチンから出て行ったんだろう?
そんなことを考えていると、数分もせずにナミがキッチンに戻ってきた。
「何しに行ってたのナミ?」
「ん?ああごめんね。みかんを取ってきただけよ」
「みかん?」
サニー号でみかんって言うとナミが育てているみかんのことだよね?ルフィからみかんを勝手に採るとナミに殺されるって聞いていたので、私はあまり近づかないようにしていたけど。
「ホットワインってみかんを使った飲み物なの?」
「人によって色々作り方がある飲み物ね。レモンやリンゴを入れる人もいるけど、私はみかんが好きだからね」 - 14スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 17:14:33
ナミは私の質問に答えながらテキパキと手を動かしていた。
美人でスタイルがよく、頭もよくて仕事もできる。そのうえ料理もできるなんて。
最近は考えないようにしてるけど、私の一つ年下なんだよね……
サニー号に乗せてもらってお互いに自己紹介したとき、ナミが年下だと知って、私はお姉さん力を遺憾なく発揮しようと思っていた。
だけど、そんな思惑はエレジアを出航して数日で崩れ去ってしまった。
航海中は誰よりも早く海と空の異変を感知し、大声でみんなにテキパキと指示を出す姿はかっこよく、周りが年上と男ばかりの船で怖気づくことなく堂々と立ち振る舞う姿はまさにお姉さんオブお姉さんと呼ぶにふさわしかった。
なので、ナミのお姉さんになるのはすぐに諦めた。だって無理だもん。ナミが理想のお姉さんすぎるから。
「ねぇお姉さん、隣いいかしら♪」
ナミのお姉さん力の高さに思いを巡らせていると、突然ナミが私の耳元で囁いてきた。
「ひゃぅ」
不意を突かれた私は思わず椅子から落ちそうになる。なんとか踏ん張ってナミのほうを見ると、彼女はいたずらっぽい笑顔でウインクしていた。 - 15スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 17:19:59
「もーぅ、ビックリさせないでよ」
「ごめんごめん。なんか眠そうにしてたから、起こしてあげようと思ってね」
ナミは笑顔で謝りながら手にしたカップをカウンターに並べてくれた。
ふわふわと立ち上がる湯気とともに漂うみかんの香りが鼻孔をくすぐる。
「わぁーすごくいい香りだね。なんか落ち着くなー」
「ふふ、味のほうも気に入ってくれるといいんだけど」
私とナミはカップを少し上に掲げてお互いの目を見つめ合う。
「「乾杯♪」」
カチンと小気味よい音がキッチンに響いた。
ふうふうと少し冷ましてみながらグラスに口をつけちびちびと飲んでみる。
「ん、甘くて飲みやすい」
赤ワインの渋みが苦手なので恐る恐る口をつけたのだが、まろやかな口当たりに思わず顔が綻んでしまった。
「口に合ったみたいでよかったわ。はちみつと砂糖を加えたのは正解だったわね」
どうやら私がワインを苦手にしていたのはお見通しだったらしく、甘党の私に合わせて味を調整してくれてたみたい。
うん、やっぱりナミのお姉さん力には敵う気がしない。 - 16スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 17:25:00
「はー、体の奥からポカポカしてくるね。ねぇこれ中に入ってるみかんは食べてもいいんだよね?」
「ええ、もちろんよ。あっ、ごめんスプーンを用意してなかったわね。今持ってくるわ」
ナミはすぐさまスプーンと小さなお皿を持ってきてくれた。
ここまでくると妹の面倒をみる姉というよりは、子供の世話をする親って言ったほうががしっくりくる気がする。
もしかして私って子供扱いされてる?いや、さすがにそんなはずは……
うん、変ことを考えるのは止めよう!今は目の前のみかんをいただくことに集中しないと。
雑念を払いながら、持ってきてもらったスプーンでさっそくみかんを食べてみると、爽やかな酸味が口いっぱいに広がった。
「みかんも美味しいね。ほどよい酸味がたまんないよ」
「ふふふ、そうでしょ♪」
みかんの味を褒められたのがよほど嬉しかったのか、ナミは今日一番の笑顔を見せてくれた。
ナミの笑顔はよく見るけど、今の笑顔はなんというか子供っぽくて可愛らしい表情だった。 - 17二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 17:28:12
一味の末っ子ウタとお姉さんナミからしか得られない栄養がある
このスレを開いて正解だった - 18スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 17:32:39
「そういえば、なんで船にみかんの木が植えてあるの?どこから持ってきたの?」
勝手に採ったら殺されるとまで言われているみかんの木。どんな理由で植えてあるのかずっと気になっていた。
「あのみかんの木は私の故郷のココヤシ村から持ってきたものね」
「ナミの故郷って確か“東の海”だよね?」
「ええそうよ」
特別なみかんの木だとは思っていたけど、ナミの故郷のみかんだったんだ。
たまにみかんの木を世話するナミを見かけたことはあるけど、作業中のナミはとても楽しそうにしてるし、かなり手慣れているように見えた。
「もしかしてそのみかんの木って故郷でナミが育ててたの?」
「んーそうね、私の実家がみかん農家でね。ベルメールさんとノジコ、あー、私のお母さんと姉が育てたみかんの木になるわね。私も子供の頃は手伝っていたけど」
そうだったんだ。だからあれだけ大事に手入れしていたのか。離れていても故郷を感じることができるのは素敵で羨ましいな。
でもそうだとすると新たな疑問が生じる。どうしてナミは家を抜け出して海賊になったのだろうか?実家のみかんの木を大事にしているくらいだから、家族仲に問題があるわけじゃなさそうだし……
理由が気になる。だけど、この先はあまり軽々しく踏み込んではいけない気がする。 - 19スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 17:41:35
「どうしたのウタ?何か言いたそうな顔してるわよ?」
いけない。感情が顔に出てしまってた。どうも私は感情を隠すのが下手みたい。勘が鋭いナミにはすぐに気づかれてしまう。
「なんで私が海賊になったのか気になる?」
図星を突かれて黙ってしまったことで、私がナミに聞きたかったことを完全に見抜かれてしまった。
「……うん、気にはなる。けど、その、ナミが話したくないなら言わなくてもいいんだよ」
ばれてしまったので素直に白状する。ただ図星を突かれて目線を逸らす私とは対照的にナミは微笑みながら私を見つめていた。
「別に話したくないことではないわよ。うーん。でも何て言えばいいのかしら」
ナミはあごに人差し指を当てながらしばらく考え込んでいた。
「まず、私の夢は世界中の海を旅して自分の目で見た“世界地図”を作ることなの」
「“世界地図”……とても大きくて素敵な夢だね」
「ふふ、ありがと。だから小さい頃からいつか海に出て世界中を旅するつもりでいたのよね」
ナミは目を輝かせながら夢を語ってくれた。若くして卓越した航海術を持っているのは幼い頃から夢に向かって努力を続けた賜物なのかな。 - 20スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 17:52:58
「だけど、色々としがらみがあって2年前までは村を離れることができなかったのよね。そのしがらみをルフィがぶっ飛ばしてくれたおかげでようやく自由に旅に出られるようのなったのよ」
「……そうだったんだ」
そっか、ナミもルフィに助けてもらっていたんだ。ナミはしがらみって表現でさらっと話したけど、ルフィが手を出すくらいだ。何か大きな出来事があったのだろう。
「それでルフィが私を誘ってくれて、私もこいつらとなら世界中の海を駆け巡れる気がしたから、仲間に入れてもらったってわけ。だから、私の場合は海賊を目指していたわけじゃなくて、夢を叶えるために乗った船が海賊船だったってことになるわね」
言い終わるとナミは手に持つカップに目を落とし、スプーンで優しくみかんをすくい上げていた。
世界中を旅して“世界地図”を描く夢。確かにこんなに大きな夢を叶えるには世界一周を目標にする船に乗らないといけない。
きっとルフィはナミの夢を叶えるために進み続けてくれるはずだ。
見たことのない島、摩訶不思議な風景を求めて舵を取り続けるだろう。
ルフィの船にこんなにも心優しくて優秀な航海士さんがいてくれて本当によかった。
「まぁ私の生い立ちとか家族についての話はまた別の機会に話すわね。肴にするような話でもないし」
「……うん、わかった。ありがとう、色々話してくれて」
「気にしないでいいわよ。んー、でも私のことを話すならウタにはココヤシ村に来てもらおうかしら?」 - 21スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 18:01:23
「私がナミの故郷に?」
「うん。サニー号で世界を一周したら、私は自分の目で見た世界の話と作った海図を家族に報告するためにココヤシ村へ行こうと思ってるから、その時家族にウタを紹介したいのだけどダメかしら?」
「ダメじゃないよ。ありがとう招待してくれて。私、ココヤシ村に行ってみたい!」
これだけ美味しいみかんが育った土地だ。きっと優しい村なんだろう。明るくて優しいナミが育った家だ。きっと温かい家族が待っているのだろう。
「よかった!なら決まりね!きっとココヤシ村にもウタのファンがたくさんいるだろうから大歓迎してくれるわよ!」
「あはは、そうだと嬉しいな。ならライブをやったりしたら喜んでもらえるかな」
「きっと大盛り上がりするわよ!ふふふ、入場料とグッズの売り上げでどれだけ稼げるかしら♪」
ライブの提案をすると瞬時に目がベリーになったナミは見えない札束を数える動きをする。
「ナミって故郷でもしっかり商売しちゃうんだね」
「当たり前でしょ!お金は稼げるときに稼いどかないと後悔するからね!それに安心しなさい。ココヤシ村の懐事情はしっかり把握しているから、ほどほどの料金設定にしてあげるわよ♪」
「うん、本当にほどほどでお願いね。私もお金にがめついってイメージを持たれたくないから」
普段のナミを見ていると本当にほどほどな料金設定にしてくれるか少し不安になる。ナミが村を出た時よりも豊かな村になっていてみんなの懐が温かくなっていることを願うばかりだ。 - 22スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 18:08:24
私の故郷の話を終えた頃には二人ともホットワインを飲み干していた。
「ん、二人とも空になったわね。どうする?もうお開きにする?」
「もうちょっとおしゃべりしたいな。あとよければホットワインをおかわりしたいんだけど……」
アルコールで少し火照ったウタは上目遣いでおねだりしてくる。お酒が入ると妙に色っぽくなるのねこの子は。
けど、あいにく開封済みのワインはさっきので最後だった。わざわざホットワインのために新たにワインを開封するわけにもいかない。
「ホットワインに使える赤ワインはこれが最後だったから、違うお酒でいいかしら?」
ウタでも飲めそうなお酒を思案しながら聞いてみる。
「うん、ありがとう。ナミは優しいねー」ナデナデ
酔って気分がよくなったのかにへら顔で私の頭を撫でてきた。急にお姉さんっぽいことをするからドキドキしてしまう。
「ちょっと待っててすぐに準備するから」
撫でられるのは心地よかったけど、ちょっと恥ずかしいからそそくさと席を立ち飲み物の準備を始める。
キッチンと冷蔵庫の中を改めて確認すると、ラム酒、ミルク、バターがあったので、ホット・バタード・ラム・カウを作ることにした。 - 23二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 18:12:45
見てるぞ…
- 24スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 18:15:36
キッチンでミルクを温めながらカウンターに座るウタのほうに目をやると、こちらの視線に気づいたウタがひらひらと小さく手を振ってきた。
ウタは感情がすぐに顔に出てしまう子だ。あれだけの笑顔を見せてくれているのだから、お酒を楽しんでくれているみたいだ。
ミルクが沸騰する直前で火を止め、あらかじめ温めていたカップにはちみつを入れ、少量のミルクで溶かす。
そこに少量のラム酒と残りのミルクを加えて軽くかきまぜた後、バターとシナモンスティックを加えて完成だ。
ここにホイップを乗せてあげるとウタは大喜びしてくれそうだけど、さすがにそこまで手間をかける時間もない。
ホイップ増し増しバージョンはまた別の機会に作ってあげよう。
「はい、おまたせ。出来たわよ」
カップをカウンターに並べウタの隣に座る。ウタは目の前のカップをキラキラした目で眺めていた。
「ふわーこれも美味しそう!ねぇなんていうお酒なの?」
「これはホット・バタード・ラム・カウっていうカクテルね。名前の通りラム酒にバターとミルクを加えたカクテルよ」
ウタはカップに鼻を近づけすんすんと匂いを堪能している。小動物っぽい仕草が可愛らしい。
そしてカップと手に取ると少し掲げて私のほうを見つめてきた。どうやらもう一度乾杯したいみたい。
私もカップを手に取り、ウタを見つめる。
「「乾杯♪」」 - 25スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 18:21:52
「ふわ~ぁ、甘くて美味しい。ほっぺたが落ちちゃうよ」
ウタは恍惚とした表情を浮かべながらゆらゆらしている。どうやらこれも口に合ったみたいだ。
「そういえば、今日作ってくれたお酒って赤と白のお酒だね」
「ん、言われてみればそうね」
「ねぇ、もしかして私の色に合わせて作ってくれたの?」
そう言うとウタは嬉しそうにニヤニヤ笑いながら私の顔を覗き込んできた。お酒の色については特に考えず作ったのだけど、確かに赤と白ではウタに合わせて作ったように見える。
「別にそういうわけじゃないわよ。たまたま目についたお酒を使ったら赤と白になっただけで」
「もー、恥ずかしがらなくてもいいんだよナミ♪」
お酒が回ってどんどんめんどくさい子になってきたわね。ウタのことを考えて作ったのは確かだけど、色は本当に偶然だ。
「はいはいそうね。愛しいウタちゃんの色に合わせて作ってあげたわよ」
否定したところで延々と問答が続くだけな気がするので、適当にあしらうことにした。
「えへへへ、ありがとーナミ!だーいすき!」
デレデレになったウタは私の肩に頭を乗せる。あっいい匂いする。……じゃなくて、いくら何でも無防備すぎるでしょ。 - 26スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 18:28:19
「……ウタ、他の人には軽々しく肩に頭を乗せたりしちゃダメよ」
大抵の人はウタにこんなことされたら一発で理性が吹き飛ぶだろう。だって私の理性も吹き飛びそうだもん。
「なんでダメなのー」
ウタは今の自分がどれだけの破壊力を秘めているのかわかっていない。天然って恐ろしいわね。
「ダメなもんはダメなの。軽々しくやらないって約束してくれないと、もうお酒作ってあげないわよ」
説明しても理解できないと思うので、お酒を餌に躾けることにした。これで言うこと聞いてくれるといいんだけど。
「わかった。それはイヤだから我慢する」
よほど今日のお酒が気に入ったのか私の要求を素直に聞き入れてくれた。だけど、頭は私の肩に乗せたままだ。
「ウタ?なんでまだ肩に頭を乗せているのかしら?」
「? だってナミにはしてもいいんでしょ?」
あー、しまった。他の人にはって言い方をしたせいで私にはOKって認識されてるみたい。どうしよう、ここで拒否するとウタが機嫌を損ねる気がしてならない。仕方ない、いつもの手を使おう。
「いいけど、5分だけよ。5分以降は1分ごとに1,000ベリー頂くからね」
結局いつものノリでお金を請求する形にした。でも、さすがに最初からお金を取るのはかわいそうなので5分だけは無料でサービスしてあげよう。 - 27二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 18:34:24
おれラフテル見つけたわ
- 28スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 18:36:57
その後、ウタはきっかり5分間私の肩を堪能していた。時折お酒を飲むために頭を離したけど、すぐに寄りかかってくるから、なんとも世話しない感じになっていた。
その間、私たちはなんとも言えない空気の中で黙々とお酒を飲み進め、ウタが肩から頭を離したころには二人のカップは空になっていた。
ウタのほうに目をやると、さっきまでは左右に世話しなく動いていた体が、ゆっくりと前後に揺れていた。どうやら船を漕ぎ始めているみたいだ。
「ウタ、部屋に戻るわよ」
「……うん」
酔いも回っているせいで反応が鈍い。しょうがない無理やり眠気を飛ばしてあげよう。ごめんねウタ。弱点を攻めさせてもらうわよ。
「ひゃん!」
私がウタの腋に指を這わせると一瞬体をビクっと震わせた。ウタの反応を見てるとちょっといけないことをしている気分になる。
「どう目が覚めた?」
「……ひどいよナミ。腋は触っちゃダメって言ってたのに……」
「しょーがないでしょ、ここで寝てしまうと困るもの。ほら、歯を磨いて部屋に戻るわよ」 - 29スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 18:44:32
歯を磨き終え、部屋に戻る。ロビンが先に寝ていたので、二人とも無言でパジャマに着替える。
ウタはよたよたしながらもなんとか着替えることができていた。
「おやすみ、ウタ」
ベッドに横になりながらウタに囁く。
「…………」
だけどウタは自分のベッドに入らず私のほうをじっと見ていた。
「ん?どうしたの?」
様子が気になったので、1度ベッドから立ち上がり、ウタのそばによる。
「ねぇ今夜って冷えるんでしょ?」
「ええ、そうだけど。それがどうかした?」
お互いに小声で会話する。暗くてウタの表情はよく見えない。
「じゃあ私がナミの湯たんぽになってあげる」
「ん?どういうこと?」
酔ってるせいでまた変なことを口に出す。湯たんぽになるってつまり私と一緒に寝たいってこと? - 30スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 18:50:04
「その、つまり今日は私と一緒に寝たいってことかしら?」
私の問いかけにウタは無言で頷きながら私のパジャマの袖をつかむ。
もしかして私とお酒を飲んだことでセンチメンタルな気分にさせてしまったのだろうか。
ここで拒否してしまうと、ウタがひどく落ち込んでしまう気がする。
ウタにお酒を飲ませたのは私の責任だから、ここはウタの希望に沿ってあげるべきなのだろう。
「……ほら、おいで。ありがたく湯たんぽとして使わせてもらうわよ」
本人が湯たんぽ扱いを希望していたので、私もあくまで湯たんぽとして扱う。
ベッドに横になり手招きするとウタは無言でもそもそと私のベッドに潜り込んできた。
湯たんぽを自称するだけあってウタはとても温かい。これなら明日の朝まで快適に眠れそうね。
ウタはとっくに電池切れになっており、スヤスヤと寝息を立てている。
遊び疲れた子供のような満足した表情で眠りについている。
明日もこの子が楽しく過ごせるような航海になることを祈り私も眠りにつく。 - 31スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 19:03:31
<秘密の航海日誌>
ベルメールさん。新しい友達ができたよ。
ウタって名前の子なんだけど、ルフィの幼馴染で音楽が大好きな女の子なの。
ウタはとても歌うのが上手で、歌声でみんなを幸せにする力を持っているのよ。
その歌声で世界を平和にしたいと願うほど、とても優しい心を持つ女の子。
だけど、優しすぎるせいでちょっぴり不器用な女の子。
他人のために頑張りすぎてしまう子だから、今は息抜きの仕方を教えている最中だよ。
今日は世界を一周した後、ココヤシ村に来てもらう約束をしたよ。
彼女に私の故郷を紹介したいから。私の家族に会って欲しいから。
ココヤシ村にも彼女のファンが大勢いると思うから盛大なライブをやるつもりなの。
彼女の歌声は世界中に響き渡るほど大きな力があるから、ココヤシ村で歌ってもらえれば、きっとベルメールさんにも届くはずだよ。
だから楽しみにしといてね。私の自慢の友達のかっこいい姿を見せてあげるから。
あと、ベルメールさんのみかんを美味しいって言ってくれたよ。
やっぱりベルメールさんのみかんは世界一なんだね♪
-fin-
- 32スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 19:04:40
これにて完結です。お付き合いいただきありがとうございました。
ウタとナミのちょっとしっとりした話に挑戦してみたけど難しかったです。 - 33二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:05:21
- 34スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 19:07:48【CP注意】【SS】ナミと謎の部屋に閉じ込められた…|あにまん掲示板1作目↓https://bbs.animanch.com/board/1012086/2作目↓https://bbs.animanch.com/board/1062466/ルフィとウタが謎の部屋に閉じ…bbs.animanch.com
↑このSSでウタとナミの話を書いてみたんですけど、書いてて楽しかったので、二人でお酒を飲むシーンを掘り下げてみました。
- 35二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:08:10
- 36二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:08:51
- 373522/10/10(月) 19:12:42
- 38二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:14:15
- 39二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:14:45
- 40スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 19:15:08
- 41二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:15:54
これは特効薬になるぞ
- 42二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:16:19
祝日を無駄に浪費して荒んだ心に染み渡る神SSだった…
🐉👍 - 43スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/10(月) 19:22:53
この掲示板でもpixivでもいいのでウタとナミのSSでおススメのものがあれば教えてもらえると嬉しいです(小声)
- 44二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 19:24:16
🍢
🍲🔥 🐉👍 - 45二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 20:11:46
なんだか飲みたくなってくるね
- 46二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 20:31:51
ここにあったよ…
ひとつなぎの大秘宝が… - 47二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 06:31:23
ナミに甘えるウタかわいい
- 48二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 18:06:54
ウタとナミのSS増えてほしいよなァ
- 49スレ主◆ItVKZj/d9o22/10/11(火) 20:08:57#ONEPIECE #ナミ 静かな夜にみかんの香り - みーけの小説 - pixiv穏やかな波で静かに揺れる甲板で大の字になって寝転ぶ。 背中に伝わる芝生の優しい感触が心地よい。 視界いっぱいに広がる星々の煌めきと爽やかな波の音色が私を包み込む。 幼少期を船の上で育った私にとって、この空間はゆりかごのような安らぎを感じる場所だ。 「ウタ、今夜は冷え込むからそんな...www.pixiv.net
pixivにも投稿しました。
pixivでナミとウタのSSを探している最中なんですけど、この二人だけで話が進むSSってほとんどないんですね…
- 50二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 07:30:50
ありがとうございます!!
ナミウタのSS増えてほしい…