人は人の香りを最後に忘れるらしい

1二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 22:55:04

そんなことを昔、風の噂でひゅるりらと聞きました。
それを言ったのはお医者さんの誰かかもしれませんし、患者さんの誰かだったのかもしれません。忘れられたくなくて、誰かに覚えて欲しくって、それでも亡くなってしまった人が最期に望みを託したのがその噂だった。ということなのかもしれません。

それでもわたしは、その言葉を忘れられないでいました。
ふとした時に覚えのある香りがふわっとして、あんなことがあったな、こんなことがあったなと思い出すたびに、一緒になってそのことも思い起こされるのです。
それは写真よりも薄い思い出で。なのになぜだか、なが～く残るものなのでしょう。

そのことを、クリスマスにトレーナーさんへ渡すプレゼントについて、どうしようと迷って迷って思い出したとき、マーちゃんはマーちゃんにぱちぱちと拍手を送りました。
こんなにいいことを思い出したんですから、きっとトレーナーさんもマーちゃんに拍手を送ってくれると思います。えっへん。

初めはたくさん思い出してもらえるように人気の香水にしよう、と思いました。けれど、それじゃあ他の思い出にどんぶらと流されて残らなくなってしまうかもしれないので、やめました。
そういうわけで、ちょっぴり恥ずかしかったけれどオリジナルのブレンドに挑戦して、マーちゃんながら良いものが出来上がり、香水の小瓶を封筒に入れようとして…それもまた、やめました。

この香りは一回こっきりのものにしようと思ったのです。
今日一日、このクリスマスだけに味わえる香り。
寂しいですか。切ないですか。物足りませんか。
大丈夫。全部ぜんぶ、きっといい思い出になりますよ。だから、大事に頭の中にしまっておいてくださいね。

わたしの声が、顔が、マーチャン人形の手触りが、一緒に食べた料理の味が。あなたの頭のどこかにしまわれたままになったとしても。
クリスマスのたびに感じる切なさと香りが、マーちゃんのことを思い出させてくれます。
その時まで、あなたの心の隅っこに。