【🎲・オリキャラ・SS注意】ワノ国将軍暗殺計画

[1 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 03:31:26]

絶対に殺す。
あいつさえいなければ。
花の都なら自分の庭のようなものだ。
城への抜け道だって知っている。
忍び込んで、眠り込んでいる隙にこの刀で刺す。
それさえできればいい。
この命など知ったことか。
ただ、この恨み晴らさでおくべきか──

※オリキャラがモモの助暗殺を計画する話
※すぐ終わる

[2 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 03:35:08]

忍び込んだ。

城への抜け道には警備もいない。

あっという間に将軍の寝室に忍び込むことができた。

将軍──光月モモの助。

寝室にも誰もいなかった。

前将軍はあれほど警備が厳重だったのに。

刀を振りかぶる

dice1d3=3 (3)

1.ずぶりと布団に刺さる

2.将軍の目が覚めた

3.誰か来た！

[3 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 03:36:32]

うそだ、寝室には誰もいなかったはず──

誰だ、誰が来たんだ。

dice1d3=2 (2)

1.赤鞘

2.日和

3.しのぶちゃん

4.！？

[4 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 03:39:09]

「兄上」

鈴を転がすような優しい声がして、びくりとする。この声は知っている。小紫──いや、光月日和、将軍家の姫だ。

「起きてます？」

ううん、と将軍が動く。

どうしよう。どうしよう。

dice1d3=1 (1)

1.どこかに隠れる

2.将軍に刀を突き立てる

3.！？

[5 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 03:46:08]

どこかへ隠れよう。

でもどこへ？

慌てていると、がばりと目の前が暗くなる。何か布をかぶせられたようだった。

「日和、どうしたでござるか」

「兄上、小鼠がお城に迷い込んだそうなのですがご無事ですか？」

「拙者は何も」

自分を軽々と押さえつけながら将軍は呑気に妹姫と会話をしている。

日和姫の声が遠ざかり、将軍はようやく自分を解放した。それでも剛力で身動きが取れない。

「おぬしが小鼠とやらか」

小鼠！？冗談じゃない。

知らぬなら言ってやろう自分は

dice1d4=2 (2)

1.黒炭の末裔

2.オロチの家臣の子

3.オロチのお手つきの子

3.百獣海賊団の子

4.プレジャーズの子

[6 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 03:50:25]

「黒炭オロチの家臣の子。……そうか」

名乗れば将軍は複雑な顔をした。

「拙者を殺したとしても、オロチは戻っては来ないでござる」

そんなことはわかっている。

「それにしてもおぬし歳は？」

歳を聞かれてそっぽを向く。

「いわなならば今この場で家臣たちを呼ぶが良いか」

家臣を呼ばれては暗殺する機会が本当になくなる！

年齢

dice1d20=11 (11)

（最低保証8）

[7 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 03:51:13]

幼いな

[8 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 03:58:08]

答えると将軍は眉を顰めた。

「拙者の三つ上──い、否、今はそうは見えぬか」

上？将軍は二十八だと聞いていたが。怪訝そうな顔が知られたのか将軍は慌てて首を振る。なんの話だろう。

「黒炭家の譜代にござるか？主君の仇討ちならばその歳で忠義深いことでござる」

将軍はしっかりと自分を見ていたが、不思議とそこに敵意はなかった。

自分がこの将軍を殺したいのは

dice1d3=2 (2)

1.父を殺された恨み

2.主君への忠義のようなもの

3.自分はこんなに苦しいのに

[9 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:01:48]

見てるぞ
支援

[10 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:04:08]

黒炭オロチ様への忠義──父母にこんこんと言い聞かせられていたように、将軍様のためには命を捨てなければならない。

命捨てても、忠義を尽くさなければならない。

父上と母上はそう言っていたし、自分もそうでなければならないと思っている。

答えない自分をどう思ったのか、将軍は眉を下げた。

「おぬし一人でずっと城を探っておっただろう。拙者の家臣たちからしらせは受けておった。まさか本当に忍び込むとは思わなんだが……一人か？」

一人だが、それは答えない。

「父上と母上はいずこにおられる？」

父と母は

dice1d3=2 (2)

1.死んでいる

2.生きている

3.！？

[11 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:09:59]

生きている。この男に父母のことを言いたくなどなかった。吐き捨てるように答えると将軍は首を傾げた。

「父上と母上はおぬしの無茶を止めなかったのでござるか？」

父と母は

dice1d2=1 (1)

1.死んで恩を返せと言った

2.暗殺の術を仕込んでいなくなった

[12 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:16:56]

死んで恩を返せといった。今はどこにいるかもわからないが、育ててくれた恩とオロチ様への恩を返すために将軍を殺しに来た。

そう告げると、将軍はひどく驚いた顔をしていた。いや、少し悲しげにさえ見えた。信じがたいものをみるかのような。

「父と、母が、命を捨てよと言うたのでござるか」

拘束していた手が緩んでようやく自由になる。

当たり前だ。

命を捨てて、名を捨てて、名誉も何もかも捨てて、将軍を暗殺せよと、そうしたら誇りに思ってくれると。

父上と母上が笑ってくれるなら、自分の命など惜しくもない。

オロチ様を殺し、父母を悲しませた恨みはらさでおくものか！

刀を握りなおし、動揺している将軍につきかかる。

将軍は──

dice1d3=3 (3)

1.避けられずに刃が届く

2.手で刃を掴む

3.キンッ！

[13 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:19:19]

一歩間違えたらホーディになってしまう所だったんだなこの子は……頑張れモモー!!

[14 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:22:54]

刃が急に弾かれる。

まさか、近くには誰もいなかったはずだ。

将軍を背に庇う侍は冷たい目でこちらを睨む。

「よせ！子どもにござる！」

「しかしモモの助様」

知っていた。

その顔を自分は知っている。父母に絵姿で見せられた仇、赤鞘の一人。

あれは──

dice1d5=2 (2)

1.錦えもん

2.傳ジロー

3.お菊ちゃん

4.河松

5.雷ぞう

[15 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:30:03]

名前少ないなって思っちゃって一気に悲しくなった

[16 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:30:46]

居眠り狂死郎──否、赤鞘九人男の次席と呼ばれる傳ジローその人だ。

刀は簡単に、抜いてすらない刀の柄頭に弾かれて畳に転がる。

将軍が止めなければ自分が即座に殺されていただろうことが、肌身に感じてわかった。恐怖に身がすくむ。

鯉口を切ろうとする傳ジローを止めた将軍が妙に幼い仕草で傳ジローの袖を引く。

「止めよ、傳ジロー。……頼むでござる」

「モモの助様！おやめ下さい！」

「どうせこやつの刀では拙者を切ることはできぬ。知っているでござろう」

「ですが、将軍に刃を向けるのは誰であれ重罪にございます……それにこやつは──」

dice1d3=1 (1)

1.オロチの腹心だった家臣の子

2.即座にオロチを裏切って逃げた家臣の子

3.オロチ政権で悪逆非道だった家臣の子

[17 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:31:16]

九人男じゃなくて悲しかった……

[18 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:35:55]

「オロチの腹心の子、まさかとは思いましたが……」

「うむ。先程聞いておったでござる。拙者を殺してオロチの仇を討ち、父母に褒められたいのだと」

傳ジローの手は未だ柄にかかっている。逃げられない──殺せもしない。

必死に頭を回転させても、このまま死ぬ未来しか見えない。

混乱していると、ふと将軍が声をかけた。

「のう、おぬし。……逃げ道とか考えておったでござるか？拙者をもしうまく暗殺できたとして、そのあとどうするつもりでござった？」

──えっ

dice1d3=1 (1)

1.その場で自害

2.赤鞘をなるべく道連れに

3.次は小紫を狙う

[19 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:41:58]

拷問され、父母に類が及ばぬようにその場で命を絶てと言われている。
当たり前だ。そうしなければ、父と母がどうなるかわからない。
仇討ちは自分の役目だ。
そういうと将軍どころか、傳ジローまでが目を丸くした。将軍は先ほどからずっと泣き出しそうな変な顔をしているし、傳ジローはひどく顔を険しくさせた。
「……傳ジロー、このものの父上のことは知っておるか？」
「ええ、オロチを即座に受け入れ取り合った狡猾な男です。雷ぞうと追っておりましたが……今は妻と白舞に。名を変え商いを始めたとか」
「……仇討ちのためでござるな？」
傳ジローはわずかに目を逸らして、小さく首を振った。
──えっ？

[20 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:44:14]

「…………」

傳ジローの視線がこちらを向く。

「……聞きたいか、小鼠」

心臓が変なふうに鳴っていた。

何か、とても嫌な予感がする。

dice1d3=3 (3)

1.激しく首を振る

2.頷く

3.！？

[21 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:49:36]

「やめよ、傳ジロー！……聞きとうない！」

将軍が声を荒げた。傳ジローが痛ましげに眉を顰めて口を閉じる。

どちらかわからぬままだった自分が、ほっと安堵していた。

将軍がこちらを振り返って、歪に笑って見せた。

「おぬしの役目、拙者を殺すことは今失敗したでござる。白舞で同じの父上母上は生きて商いをしておるとのこと、帰って両親と一度相談してみてはどうでござろうか」

それは──

dice1d3=1 (1)

1.できない

2.できない

3.そうしてみる

[22 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 04:55:39]

できない。将軍を暗殺するか、死ぬかしか道はない。
そう告げると将軍は困り果てた顔をした。
「そうでござるか……」
「モモの助様、兎丼へ収容するのは……」
「………………」
将軍は黙りこくってこちらをじっと見ていた。居心地が悪くて顔を逸らす。横目でチラリと見ると、将軍は目にいっぱいに涙を湛えていた。驚いていると、大きな体が自分を包む。
「おぬし、拙者の家来になれ」
「！？モモの助様！？」
傳ジローがびっくりした声を上げた。
自分は声が出ないほど驚く。

[23 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 05:00:04]

どういうことだ！？
「拙者を殺さねばならぬというが、拙者は今ワノ国のためにも死ぬわけにはいかぬ。……しかし、お主をみすみす死なせるわけにもいかぬ。死んでほしゅうない。おぬしには生きていてほしい……！」
肩を掴まれ、将軍の顔が近くにくる。今にも泣き出しそうな顔は、まるで寺子屋の子供のようだった。
「おぬしもまた拙者の民でござる」
殺そうとしたのに？
「拙者自慢ではないが、20年以上前から命を狙われておらぬ時がない！」

[24 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 05:04:04]

泣き笑いの顔に、奇妙な気分になる。

──そんなことを言われたのは初めてだ。

将軍のために命を捨てよと言われてきた。

オロチ様が失脚してからは、仇を討って命を絶たねばならぬと言われてきた。

なのに、何故殺さねばならない男が涙ながらに自分の命を守ろうとしているのだろう。

「良いな、傳ジロー」

「将軍様の仰せの通りに」

傳ジローは見たことのないような柔らかな笑みで頭を下げた。

それから自分は

dice1d3=2 (2)

1.侍に

2.忍者に

3.！？

[25 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 05:17:16]

書いてた文が消えたぜ

[26 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 05:24:19]

年上子供家来概念で助かる命もある
応援してます

[27 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 05:27:46]

暗殺ならばと忍者として組み込まれる。三つも年下のお玉という少女が先輩だと言われた。

それから何年も経つ。
モモの助様暗殺計画は、未だに成功の兆しは見えない。自分が強くなる以上にモモの助様は強くなり、そして賢くなる。
赤鞘の侍たちは自分をモモの助様の家臣として扱い続けた。お玉は年上の自分を後輩として導いた。
日和様はまるで自分を弟のように扱い、おトコはまるで友人のようだった。
モモの助様は子どものように自分を遊びに連れ回した。コマ回しやかくれんぼ、笹馬、竹馬、鬼ごっこに氷鬼、モモの助様は驚くほどにこれらの遊戯に関しては物知らずで、好奇心旺盛だった。一緒に遊んでいると、時折弟のようにさえ思う時がある。
けれどもうわかっていた。
父母は、オロチのために育てた自分がオロチなき今不要であった事。そう育てた自分が隠遁の中邪魔であった事。
「モモの助様」
鍛えたこの刃は流桜によって彼の肌をさえ傷つける事ができるようになった。
けれど──暗殺計画はもはや成功しないだろう。
この刃は、自分が生きるための刃。
そして彼の命を守る刃となったのだから。


完“べんッ”

[28 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 05:33:11]

すぐ終わらせて朝までに消すつもりだったのだが、もう日が昇っておる……。
傳ジローが来てくれたので話が早かったが、モモは泣かなかった。錦さんが来てくれてたらちょっと詰問のターンが長くなったけどボロ泣きできた。
どちらでも気持ちは通じるのでセーフ。
この忍者、女の子でも男の子でもどっちでもとれるように書いた。傳ジローは初めから知ってる。
年下年上家臣は将軍が8つなことは多分知らないままなのかなあ。
白舞で自分を捨てた父母が接触してくるターンとか考えたけど朝日が昇ったから切った。
ダイス楽しかった！見てくれてた人ありがとう！

[29 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 05:46:58]

・身長（数年後）

dice1d400=24 (24)

最低保証:150センチ（ダイス目が150以下の場合150足す）

・強さ（数年後）

dice1d100=45 (45)

1が侍一人100がモモ

・覇気

dice1d3=1 (1)

1.見聞色特化

2.武装色特化

3.バランス

[30 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 05:48:52]

【自分】
見聞色特化
174センチ
モモの助の半分くらいの強さ
忍者
元黒炭オロチの腹心の子供

[31 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 11:16:37]

幼子としてのモモの描写が丁寧でグッときた
他の赤鞘パターンも気になる欲はあるけど傳ジローがいい塩梅すぎてすっきり終わってよかった
ありがとう、楽しかったです

[32 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 14:38:15]

ちょっとだけモモの助将軍かっこいい話続くんじゃ。落ちるまでに思いついたらエピソード書き足すかも

[33 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 14:39:06]

【壱人目の巻】
将軍──モモの助様の忍となってからしばらく経った。
仇だと命を狙った自分の命を救い、自分の忍見習いとして引き取ったモモの助様の暗殺計画は進まない。
進まないのも当然だった。
モモの助様の命を狙うたびに赤鞘が邪魔をしてくるのももちろんだが、彼の顔を見ると途端に刃が鈍るようになった。
母と父に言われたとおり、早くモモの助様の暗殺をして自分も死ななければならないのにどうしてだろう。

ぼんやりとしながらお玉先輩に付いて花の都を歩く。黒炭家の直参の子として花の都に生まれ育った自分だからよくわかるのだが、花の都の活気は前将軍様のいた時よりよほど賑わっている。
前将軍様の頃はあれが一番の活気だと思っていたが、それは自分の思い違いだったらしい。
笑顔の色がまるで違う。
それを嬉しく思う度に、どこか胸が苦しくなる。
あまり考えないようにしていたが、きっとこれは嬉しさだった。仇であるモモの助様の統治を喜ぶ度に、どこかで父母の声がする。名を捨て、血を捨て知を捨て、モモの助様を弑逆して自害せよと言われていた頃の自分が今の自分を責め立てる。

[34 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 14:49:55]

お玉先輩と分かれて別の道を歩く。忍とはいえ市中に紛れるには町人や侍のふりをするのがちょうどいい。
裏通りのごろつきに話を聞いたり、寺子屋帰りの子供に噂話を聞いたりする。
家臣として教養を──そう言った錦えもん殿と傳ジロー殿の差配で自分も少し前まではお玉と共に寺子屋に通っていたので寺子屋には知り合いが多い。
モモの助様は寺子屋で流行っている遊びや絵草紙をことの他喜ぶので、自分とお玉は寺子屋から帰る度にモモの助様にせがまれて色々な話をしたものだった。城の中庭でのメンコ遊びやベーゴマ、釘刺し。将軍家に生まれ育った方には物珍しいのだろうか、一緒に遊んでいると子どものように顔を輝かせて、それに気がつくと苦笑いで誤魔化していた。自分には想像がつかないが、将軍家の若君ならば遊び道具や遊び相手には事欠かなかったのだろうに、まるでそういうのを初めて見るような顔をする。
いつしか彼に話を持ち帰るために、友人と寺子屋でよく遊ぶようになった。

[35 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 18:19:19]

このSSのモモの助すごく好きだ　続き待ってます

[36 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 18:28:39]

>>23

>>「20年以上前から命を狙われておらぬ時がない」

物は言いようであるな

[37 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 18:29:00]

もしかして遊郭のモモの助の話書いた人？あれも好きだった

[38 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 20:30:10]

>>37

なにそれ気になる

できたら貼ってくれると嬉しい

[39 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 20:36:10]

>>38

【SS】遊郭サイコーでござる～～♡｜あにまん掲示板

これ

[40 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 20:43:10]

>>39

ありがとう

[41 イチえもん 22/10/13(木) 20:56:39]

遊郭のモモの助SS今初めて読みましたがたいへんお好きでござるっ♡某はそのスレ主ではござらぬが良いものを読ませていただき申した！

他の方々もお言葉ありがたく頂戴仕りまする。

>>37

[42 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 20:57:00]

寺子屋時代の知り合いから流行りの絵草紙や小唄や噂話を仕入れてほくほくとしながら道を行く。政務に忙しく市井になかなか降りられぬモモの助様に代わり、お玉先輩や自分が彼の目となり耳となることを雷ぞう殿から仰せつかっていた。
花の都は、ワノ国は今日も今日とて栄えている。
お玉先輩との合流地点に向かっていたとき、いきなり袖を引かれた。
ハッと振り返ると、継ぎの当てられた着物をきた白髪の男女がこちらを見ている。やに下がった笑顔に身をひこうとした時、彼らは口を開いた。
「大きくなったねェ」
──えっ。
女がニコニコと笑って自分の肩を掴んだ。
覚えていないかい、と言われてぎょっとして彼らを見る。
父上、母上……？
そう呟くと、二人は涙を流して自分を抱きしめた。

[43 二次元好きの匿名さん 22/10/13(木) 21:17:36]

えぐい

[44 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 00:01:26]

ふわふわとした気分で城への帰途へつく。信じられない気持ちだった。継ぎの当たった服を着ていたのでそうじゃないかとおもったが、白舞で商売に失敗し、自分を頼りに花の都へ帰ってきたのだという。両親の居ないと聞いていたお玉先輩にはなんとなく言いにくく、ごまかして自由時間をもらう。
父と母を連れていった小料理屋で、二人は自分をそれはもう褒めちぎった。
あの時は必死で、はぐれてしまって大変悲しかった。生きていてくれて良かった。将軍の側付きになるなんて素晴らしい子だ。さすがは私たちの小だ。
昔、一緒に暮らしていた頃でも言われたことが無いような賞賛に足下が覚束ない。
そうか、ただはぐれていただけだったのか！
そうだ、自分をモモの助様の暗殺の後、自害して果てよというのはきっと自分が思い込んでいただけに違いない。あの時、傳ジロー殿はなにもはっきりと言っていなかった。
一緒に住む家を探そうか、と言うと、二人は少し顔を見合わせて笑った。
お前が城に居室をもらっているのなら、それでいい。貧乏暮らしをさせてしまうのは申し訳ないから。その代わり、また親子として会いに来ておくれ。私たちが今世話になっている人にも会わせたいからね。
自分は一二も無く頷いた。

[45 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 00:02:35]

「モモの助くん」
　幾度か父母に会いに行く日々が続いている。今日はおつとめを終えれば父母が今世話になっている人とやらと顔合わせだと言われていた。
　モモの助様が政務を終えられていれば声をかけて下がろう。そう思っていた矢先に、執務に使っている部屋から若い女の声がした。
「ヤマト、おぬしいい加減に窓からはいってくるのはやめるでござる」
「あはは、いいじゃないか。正門からぼくが来たらみんなびっくりするでしょ」
「拙者が今びっくりしたでござる！」
前将軍のご友人であったカイドウ様のご子息ヤマトどのだった。弾む会話に思わず襖の前で立ち止まる。モモの助様と対等に話ができるのは彼だけで、モモの助様が嬉しそうな顔をするので彼が来ているときに話しかけるのを自分はやめることにしていた。
「あのさ、この前言ってた白舞の件なんだけど」
「ヤマト……、間諜のまねごとなどおぬしがせずともよいともうしたはずでござる」
「わかってる。きみの言いたいことはね。でもまだまだワノ国を見尽くしてない。読んだだろう？ぼくの書いた見聞録！」
「読みもうした！」
「だろう？ ぼくはきみが思うよりこの国が大好きだし、きみの役に立つのだっていやじゃないんだよ」
「……かたじけない。白舞の謀反の件、聞き申そう」

[46 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 06:54:02]

保守

[47 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 10:43:51]

「その前に！入っておいでよ！」
ヤマト殿に手招かれてそろそろと顔を出す。どうせ気づかれているだろうと思っていた。ヤマト殿はニコニコとしている。ちらりとモモの助様を見ると、珍しく動揺した顔をしていた。
「モモの助くんの暗殺はうまくいってないみたいだね。良かったよ」
自分としてはあまり良くはないのだが、はぁ、と答える。居心地の悪さもそうだが、両親に褒められている現状で見ないふりをしていた役目を突きつけられた気分だった。
「下がって良いぞ。なにやら用事があるのでござろう？」
「へえ？」
「……また、市井の話を聞かせてほしい、あと……。いや、良い、なんでもごさらぬ」
首を振るモモの助様はなにかを言いたげだったが、これ幸いと頷いてそそくさと下がる。待ち合わせの刻限が迫っていた。
そういえば最近は父と母に会いに行くことが多く、以前のようにモモの助様に寺子屋での話や、一緒に遊ぶことが少なくなっていたような気がする。
明日はお誘いしてみよう。

[48 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 10:59:00]

あれ……。
自分は今、ふらふらするような気分でモモの助様の部屋に向かっていた。まだ居室には灯りがついている。声をかけると、眠たげな声がした。
「戻ったのでござるか？」
頷いて入る。モモの助様は自分を見てぱっと口元を綻ばせた。
「桃でござるか？」
自分の持つ盆の中にはよく熟れた桃の果実がいくつか入っていた。皮を剥いて切り分けた薄桃色の桃は甘い匂いを立てている。頷くと、モモの助様は明るく笑みを浮かべて筆を置いた。なにやら書き付けをしていたようである。
「もう勉強は疲れたでござる……。拙者まだ十にも……いや、侍は泣き言は言わぬ」
十にも？
「なんでもござらぬ！それより、拙者に持ってきてくれたのでござろう？共にお茶にせぬか」
言い終わるか否かでそそくさと急須を持ち上げられる。モモの助さまがそういうだろうと、湯を持ってきていた。
「気がきくでござるなあ」
モモの助様は子供のように好物に破顔しながら黒文字に手をかけた。
「なかなか今の時期手に入らぬ故、嬉しゅうござる。おぬし拙者の好物を覚えていてくれたのでござるな！」
桃は柔らかに黒文字を受け入れる。
自分は、それを呆然と見つめていた。
──ワノ国将軍暗殺計画。
そのために生き、それを許されていた。

毒入りの桃が、モモの助様の口に運ばれる。

[49 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 12:04:57]

さあどうする

[50 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 18:04:45]

age

[51 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 18:49:32]

毒味をしなきゃ食べちゃいけないってしつけられてて十日断食してたモモが…

[52 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 19:48:01]

「お前が将軍の懐に潜り込んだという、お前の子か！」
花街の一角の料亭で引き合わされたのは、見上げるほどに大きな男だった。大きな虎の毛皮を被っている。上座に堂々と座る男の周りには、似たようなごろつきめいた侍たちが幾人か座り込んでいる。
　腰に差す刀も一目で名刀とわかる。自分を睥睨するまなざしといい狡猾さと同居する慎重さ、そして侍としての力量がうかがえた。
父母はその虎皮の男にふかぶかと頭を下げた。
「ええ、ええ。かの将軍の第一の家臣なっております。これもこの日の為、そうだろう？」
　父上が自分を見つめる。うなずけ、という圧力に背筋が凍り付くような気持ちになって慌ててうなずいた。この日の為とはどういうことだろう。
「ほう……。こんなガキがか」
「お庭番衆として鍛錬を積んでおります。オロチ様が居られた頃はゆくゆくはオロチ様の小姓になるよう育てておりました。オロチ様の覚えもめでたく、いずれは養子にと言われていたほど」
──そんなこと聞いたことがない。慌てて口を開こうとすると、母と父が恐ろしい形相でこちらをにらみつけた。
「オロチ様……、意思を継ぐ子がここに……」
　虎侍がぐっと息を詰めてはらはらと涙をこぼした。
「あの方がもう居られぬのが信じがたい……！ 我らをよく導いてくれた、あの方こそが真の将軍の器だった……！ 富を与えてくださった……」

[53 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 19:48:33]

すすり泣きに応じて周りのごろつきが涙を流して前将軍を惜しむ。尻の座りが悪くてうろたえていると、母上が自分を押し出した。
「この子が！ この子こそがオロチ様の志を継ぎ、今の偽りの将軍を廃して、オロチ様の仇を討つ、要石にございまする……！」
「おう、おう……、おぬしたちまこと良い子を得られた。あやつは未だ決して毒味をせずにものを食わぬ故、困っておった。それほどの臣下であれば、気も緩もう」
　虎侍が手を叩くと隣の侍が丁寧に布にくるまれた籠を取り出した。布の下には丸々と熟れた桃がいくつか籠に転がっていた。
　モモの助様がお好きな果物だ。
「収穫してより、無味無臭の毒水に三日三晩付けた毒桃じゃ。無敵などと笑わせるわ」
　げらげらと笑う虎侍に、周りと父母が応じる。父上が受け取った桃を押しつけられる。
「これを一口かじれば、将軍とてただでは済まぬ。……お前が生きていてくれてよかった！ これでまた、我らは裕福な暮らしができる」
　モモの助様は、確かに毒味をしなければ物を食べない方だが、赤鞘の方々や日和様、お玉先輩にもらったものに毒味をするほど無粋な方ではない。その中に自分が入っているのは確かだった。
あれ……。
「本当に生きていて良かった」
「今度こそちゃんと役目を果たして死ぬのですよ」
　両親が笑っている。
　そのために生きていたのは、その通りなのだ。二人が喜んでくれて嬉しい。モモの助様暗殺計画は、最近が変なだけでずっと続けていたことだ。
「がはは、その毒桃を食わせたら城は大騒ぎ、その隙に白舞より集めた三百人あまりの一斉蜂起で城を落とす！ 貴様、死んでも果たせよ」
　すでに人数を羅刹町の端のある屋敷にあつめて決起の準備はすすんでいると言う。
万一生きて逃げ延びたらそちらへ来ても良いと虎侍が笑って言った。失敗したら決してここの話を口外せずに死なねばならないらしい。
「今宵！ オロチ様の仇を討つ！」
　おお、と鼓膜が震えるような声が部屋に響いた。

[54 イチえもん 22/10/14(金) 19:51:22]

>>51

その下り、某たまらぬ気持ちになり申す。…八つの子供が毒味せねばものを食べられぬ恐怖…。ゆえに、せめて、顔見知りで信頼できる相手からのものは不安がらずに食べてほしいと言う気持ちでござる。モモの助様は年上年下忍を臣下として扱っておりますゆえ、信頼しておったのでござる。

[55 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 19:53:31]

桃を口にした将軍のダメージ

dice1d100=74 (74)

1で無傷（効かなかった）

80以上で吐血レベル

100ファンブルで即死を疑われる

[56 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 20:02:59]

無事で何よりという気持ちと吐血した姿も絵になりそうだし見てみたかった…という気持ち
心が二つある…

[57 二次元好きの匿名さん 22/10/14(金) 20:42:35]

でも数値的には割と効いてそうでこわいね

[58 二次元好きの匿名さん 22/10/15(土) 02:13:55]

保守

[59 保守ありがとうござる 22/10/15(土) 04:55:53]

モモの助様が桃を口に入れようとした瞬間だった。
　咄嗟に手が伸びて、彼の手から桃をはたき落とす。
「な、なんでござ……ッ！？」
　困惑した顔だったモモの助様が、目を見開いて口元を押さえた。
「ぐ、ッ……！？」
　口に残った桃をとっさに吐き出して、モモの助様がその場にうずくまる。持ってきた湯に手を伸ばそうとして、びくりとモモの助様の手が止まった。湯を倒し、けたたましい音を立てて陶器を砕く。
「っ……っ！　どく、でござるか……」
　モモの助様の目一杯に涙が溜まり、ぼろぼろとこぼれて自分を見た。モモの助様は、家臣の前では決して泣くことは無かった。
　けれど、彼の忍であった自分は知っている。
　時折ふらりと居なくなっては、屋根の上や庭の影で膝を抱えて声を殺して泣いていた。自分の力不足や、悔しさを全部かかえて。何を言うことも出来ず、見ない振りをしてきた。
「くるしい……っ、痛い……っ」
　青ざめた顔がうなだれた。その顔に浮かぶのは、自分への失望や敵意では無い。
「……やっぱり、せっしゃではだめでござるか……父上のようには……」
　やはり、自分の悔しさにモモの助様は泣いていた。

[60 二次元好きの匿名さん 22/10/15(土) 05:15:12]

咄嗟に口に入れぬようにしたからか、モモの助様はふっつりと糸が切れるように眠りに落ちた。呼吸音はぜいぜいと荒い。真っ赤な目元を手拭いで拭う。
殺そうとしておきながら、毒の桃を食べようとしたモモの助様を止める。
一体何をしているのだろう。陶器の音で駆け寄ってきた腰元に御典医を呼ぶよう言いつけて、立ち上がる。
自分を疑わず、毒の桃を口にしようとするモモの助様を見て感じたのは壮絶な恐怖だった。
自分には、もうこの方を殺すことなどできなかった。
そんなことも分からなかった愚かさが憎い。初めから、あの夜命を救われた時から感じていた恩義を、まさに仇にして返した。
忠義もなく、信念もない、言われた通りのことしかできぬガラクタだった愚かな自分。否、今も何も変わっていない。
乾き切っていない筆をとって、帳面に書付を残す。
「……ま、て」
窓に足をかけたところで、声が聞こえる。はっと振り返れば、目を開けたモモの助様がこちらを見ていた。完全には毒が抜けていないのか、動けてはいない。
「どうしてで、ござる……おぬしは、桃をたべさせぬようにしたような……」
くしゃりと弱々しく眉を下げて、今にも泣き出しそうな幼子のようにモモの助様は自分に問いかけた。
…………そもそも自分は、オロチ様の家臣が子。
吐き捨てると、彼は否定するように首を振る。そうして城を離れた。
いくな、と呼び止めるモモの助様の声に、耳を塞いだ。

[61 二次元好きの匿名さん 22/10/15(土) 07:55:59]

ああ…

[62 二次元好きの匿名さん 22/10/15(土) 08:04:05]

痛ましい、これでモモが好きな桃を食べようとする度に今回のことが浮かんで食べられなくなったらどうしよう、あまりにもかわいそうだ…という気持ちと好きなキャラの肉体と精神が痛め付けられて悲しんでる姿しか取れない栄養があるな…という気持ちがある
最高です

[63 二次元好きの匿名さん 22/10/15(土) 10:31:40]

頼む、ハッピーエンドで終わってくれ…

[64 二次元好きの匿名さん 22/10/15(土) 13:21:07]

ルフィですらマゼランとイワちゃんのおかげでやっと毒耐性ついたから一般おでんの体にはつらいよな…

[65 二次元好きの匿名さん 22/10/15(土) 22:54:05]

保守

[66 二次元好きの匿名さん 22/10/16(日) 01:07:44]

保守

[67 保守ありがとうござる 22/10/16(日) 03:46:07]

　時は未明。
　花の都の外れ、白舞と花の都を繋ぐ橋のたもとの惜ヶ原。誰も知らぬ謀反人が総勢三百人、ぞろりと勢揃いで刀を担いでいた。
　その真ん中にいるのは、虎皮を肩にかついだ大将とその腰巾着の侍達。無論その中に両親も居た。
「おお、戻ったか」
　両親が驚くのを横目に大将の前に毒桃の皮を投げ捨てた。成功したのか！と賑わう腰巾着を尻目に、大将がにんまりと下卑た笑みを浮かべた。
　大げさに喜んでみせる両親に自分はどういう顔をしたら良いものかわからなくなった。父と母はやに下がった媚びの染みついて落とせぬ顔をしていた。
　なんと自分は愚かだったのだろう。
「丑の刻、闇夜に乗じて将軍を失って混乱しているオロチ様の城へ攻め込む」
　すっかり自分を信頼した大将が肩を叩く。
　すでに勝った気でいるらしい。
　ぐるりと見渡せば、あつめもあつめたごろつきどもが三〇〇人。多少は腕に覚えのある連中もいるだろうが、赤鞘の侍の足下にも及ばないだろう。
　小さく自嘲と共に息をついて自分は腰の刀を抜いた。
　大将を、父母を、三〇〇人のごろつきたちを向こうに、橋を背にして立ち塞がる。
　大将が眉をひそめ、両親が顔をみあわせる。
「何をしている。気でも違えたか」
　まっすぐに刀の切っ先を大将に向けた。
　自分はもう二度とあの方に合わせる顔は無いが、せめて最期は恩に報いねば生きている意味は無い。

　さよならを惜しむ袂の惜ヶ原。
　父母さえ捨てたこの命。
　捨ててなんぼの家来で候う。

[68 二次元好きの匿名さん 22/10/16(日) 04:17:33]

　啖呵を切って幾人かのごろつきを下していく。
　これでも雷ぞう殿やしのぶ殿に忍として鍛えられている。また皮肉だがモモの助様を暗殺するために培った術も今、都を守ることに一役買っていた。それでも、十人を相手取れば傷は受ける。
「何をしているの！　子どもが邪魔をするなんて！」
　劈くような母の叱責に、自分は口元を歪めた。
　昔の自分ならきっとすぐに身を引いて縮こまって許しを請うただろう。昨日まで自分は両親が全てだと思っていた。恩というものを理解していなかった。
　しかし──もう違う。
　力不足に隠れて泣いていた夜を見た。夜遅くまで勉学に励まれる姿、民を思って悩む姿。お玉先輩との寺子屋の噂話を子どものように聞いていた日。
　コマ回しやかくれんぼに興じた日々。
　自分を殺しに来た愚かなガキの命と心をかばい、涙を湛えて生きて欲しいといってくれた人。
　あの日、「聞きたくない」と言ったモモの助様にどれだけ救われていただろう。
　自分は馬鹿で、本当に感じるべき恩に目を背けて仇を返した。
　あの方を殺した自分が許せない……！
　血を吐くように叫べば、虎の皮を被った大将が刀を抜く。
「何を言っているんだお前……。お前が殺したと言ったくせに、気でも狂ったか？」
　呆れ声と共に一合打ち合わせただけで体中が砕けちりそうな衝撃とともに橋の欄干がへし折れるほどに叩き付けられた。
「お前ら、どうにも出来損ないのガキをこさえたな」
　動けない自分に大将が唾を吐き捨てる。
「まったくにございます」
　父が心底忌々しげに追従する。自分を見る目は氷のように冷ややかだった。
　痛む体をたたき起こして、刀に縋るように立ち上がる。
　たとえ死んでも、もうあの方を裏切ることはできない。

[69 二次元好きの匿名さん 22/10/16(日) 04:24:31]

「たいぎであった！」
　青年の声が、花の都からほど近い橋のたもとに響き渡る。朗々と響く声に、空を見上げる。
　時は三日月、雲もなし。
　闇夜に泳ぐは桃色の龍。
　龍に変じられるものなど、この国にはもはや一人しか居ない。
　花の都への橋を封じ、花の都を守るワノ国の守り神が今此処にいた。
　モモの助様。
　昇り龍が焔雲を掴んで空に威容を示していた。
「おぬしのおかげで、花の都には傷ひとつござらぬ」
　将軍自らが直々に参じたことへのざわめきが謀反人どもに波紋を呼んだ。殺したはずではなかったのか、なぜ生きている。
　謀反人たちの声が聞こえたのだろう。モモの助様は龍の口を開けた。
「我が名は光月モモの助。この国の将軍でござる。この意味がわからぬものがいるならば、教えようぞ！」
　桃色の龍が朗々と吠えた。一人、一人と侍達が足をすくませ、自分たちを睥睨する将軍の前に跪くもの、刀を捨てて逃げ出すもの。あっという間に三百人の軍勢は半数足らずになる。
「この、クソガキがァっ！こいつ、時間を稼いで将軍を呼びやがったのか！」
　大将が自分を殴り飛ばす。ひどい痛みと衝撃のまま地面に転がって大の字に手足を伸ばした。夜空一杯に巨大な龍の腹が見える。ワノ国全ての人間を背負い守らんとする偉大な龍だった。
　なんとも自分がちっぽけで、はは、と笑いがこみ上げた。
そんなわけがあるか。自分がしたのは、ただこの場所を記した書付を残しただけだ。
　大将は激高して地面に転がった自分を執拗に蹴りつけた。
　父上と母上は、そんな自分を哀れむでもなく、惜しむでも無く、忌々しげな顔で自分を睨み付けていた。
「やはり、あの日殺して行くべきだった」
　母上が歯ぎしりしながら地団駄を踏む。
「こんな出来損ないに裏切られるとは！」
　父上は心底悔しげに吐き捨てて、刀を抜いた。
　八つ当たりじみたその刀に、避けるまもなくざっくりと腹を切られる。髪をつかまれてなお顔や体をしたたかに殴られる。
「待て、あやつこちらを攻撃してこんぞ」
　大将が呟く。
　はっとしてモモの助様を見る。モモの助様は、龍となっても変わらない目でこちらを見ていた。
　そのまなざしに自分を案ずる色が見えて、ぞっとした。
　まさか、自分がいるからか。

[70 二次元好きの匿名さん 22/10/16(日) 04:28:08]

ありとあらゆる罵詈雑言を、彼にかける。
　もはや惜しむ命などない。
　一度は刀でもってを殺そうとした。
　二度目は毒を盛った。
　そうしてようやく気が付いたのだ。どれだけ自分がモモの助様に救われていたかを。
　今更だ。今更なんになるだろう。
　地面に這いつくばって泥だらけになって、龍に吐き捨てた。この橋がまるで彼と自分とを分ける藤山よりも深い溝となるように。
　自分を盾にしようとする大将と父と母が殴ってそれを止めようとする。それでも喉から血が出るほどに叫ぶ。
　あなたの手にかかるのならば、悔いは無い。
「──もうやめるでござる」
　モモの助様は静かにそういった。
　ばら、ばらと雨のように彼の瞳から涙がこぼれて夜に散る。
「拙者はおぬしのほんとうの心を聞きたい！ 死にたいも、拙者への文句も、全部拙者の側で言えば良い！」
　龍の姿で空を震わせて轟く声に、父母が腰を抜かす。ぐるぐると喉をならす龍。
　ああ、モモの助様が泣いている。
　こんなに立派な、これほどに偉大な将軍が他にいるものか。
「もういちど、改めて問うでござる。……せっしゃの家臣になる気はござらぬか！」
　まっすぐに自分を見つめる彼が、よりちからを込めて夜に吠えた。
　ぼろ、と自分の頬に熱いものがこぼれた。いろんな気持ちが渦巻いて、それでも今までの罵倒よりもずっとこみ上げた気持ちのまま叫んだ声は大きかった。
　自分は──

[71 二次元好きの匿名さん 22/10/16(日) 04:28:40]

「モモの助様の家来になりだい゛っ……！」　

[72 二次元好きの匿名さん 22/10/16(日) 08:01:44]

「死にたいも、拙者への文句も、全部拙者の側で言えば良い！」
エニエスロビーでのことを知らないはずのモモがルフィと同じこと言うのいい…エモい…

[73 二次元好きの匿名さん 22/10/16(日) 10:53:58]

やったああああああああ！！！！！！！

[74 二次元好きの匿名さん 22/10/16(日) 16:22:13]

こうやって自分の忠臣増やしていくモモの助もっとみたい。おでんの血を引いてルフィの弟分であるその場の人間を味方につける才能とカリスマが目立たないけどはっきりとあってほしい

[75 二次元好きの匿名さん 22/10/16(日) 20:30:08]

保守

[76 二次元好きの匿名さん 22/10/16(日) 22:55:51]

保守

[77 二次元好きの匿名さん 22/10/17(月) 06:51:30]

保守

[78 イチえもん 22/10/17(月) 08:17:21]

保守まことかたじけのうござる！明日朝までには最後の一幕お送りできますゆえ、お許し召されよ。

[79 二次元好きの匿名さん 22/10/17(月) 08:20:26]

>>78

保守時間が12時間以内と楽なのでゆっくりと準備されるがよかろう

楽しみにお待ちしております候

[80 二次元好きの匿名さん 22/10/17(月) 13:09:03]

>>78

楽しみにしてます！

[81 二次元好きの匿名さん 22/10/17(月) 19:56:43]

ほしゅ

[82 二次元好きの匿名さん 22/10/17(月) 21:22:45]

　喉もかれよと叫んだ願いは、確かにモモの助様に伝わったようだった。空にそびえる桃色の龍は大きな口を開けて破顔し──ぱっと姿が消えた。
　まさか！
　慌てて目をこらすと、空の上から着の身着のままのモモの助様が落ちてくる。
　押さえつけている父母を振り払って慌ててモモの助様の元に走る。上を見れば、モモの助様はすっかり気を失われていた。
　このまま地面に落ちて、死んでしまったら。思いついてしまった想像に真っ青になって橋を渡る。もう二度と渡れぬと思っていた橋を。
　モモの助様はあっというまに地面に近づいていく。自分ののろまな足はモモの助様に届かない。
　せめて衝撃を和らげようとモモの助様の落ちる場所へ身を投げる。モモの助様は青ざめた顔で意識無く落ちてくる。ぎゅっと目を閉じる。
　その瞬間だった。
「全く、無茶をする主従でござる」

[83 二次元好きの匿名さん 22/10/17(月) 23:45:51]

この話好きすぎて永遠に続いてほしい

[84 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 02:17:52]

転びかけた自分を足でひっかけ、彼はモモの助様の偉丈夫の体躯をものともせずに抱き留める。
赤鞘九人男が筆頭、狐火の錦えもんどのその人だった。
　意識を失っているモモの助様の様子を見てほっと息をつく。その目には心底安堵と誇らしさが滲んでいた。モモの助様を背に負い、ふくらはぎあたりに捕まって呆然としていた自分を厳しい目が見下ろす。
「モモの助様は大事ない。が、おぬし六尺足らずでモモの助様を抱えきれるか馬鹿者」
　ぐいっとそのまま地面に下ろされて、地面にへたり込む。赤鞘がどうしてここに。いやモモの助様が来られているのだから来ていても何もおかしくはないのだ。
「雷ぞうとしのぶが心配しておった。ヤマトの報せのあった白舞の謀反に関わっておるのではないかとな。案の定だったようだが」
「ものども、かかれェ！」
　錦えもんどのの後ろに控えていた傳ジローどののかけ声でどっと郎党が橋を渡り、腰を抜かしたままの謀反人どもを捕縛していた。その中に父母の姿もあったが、何を言うことも出来なかった。
　自分の前にモモの助様を背負い直した錦えもんどのが立った。
　彼の二振りの刀の柄に手がかかっている。ぎろりと猛々しい視線は、自分を裁くものの目であった。はっとして居住まいを正す。
「──おぬし、モモの助様に毒を盛ったな」

[85 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 02:21:33]

錦えもん殿の言葉にはっきりと頷いた。それに錦えもんどのはぐっと眉を顰める。
「モモの助様は……、ワノ国に戻られてよりずっと、必ず毒味役をつけなければ食事が出来ぬ日々を送っておった。……まだお体が幼かった頃、十日も飲まず食わずだったことさえある。生きねばならぬと、毒ともわからぬものを口にしたことさえある」
　淡々と語られる昔語りにゴクリと息をのみ、視線は地面から動かすことができなかった。
「おぬしが裏切ったのは、そのような子の……否、将軍様の信頼よ」
　頷く。頷くたびにばたばたと涙がこぼれた。
「ここで我らに首を落とされても文句はあるまいな！」
　雷のような一喝に深く何度も頷いた。胸が潰れるような気持ちだった。顔がぐちゃぐちゃになり、顔から出るもの全てが出たまま地に伏した。
　申し開きも無かった。
　ただ、己の意思がなく、己の気持ちを見ない振りをしていた怠惰が故だ。
「よく言った」
　傳ジローどのが腰の刀を抜いた。
「ならば、死んで詫びよ」
　ただ、一つだけと頭を下げる。
　先ほど、自分はモモの助様の家臣となると言った。謀反人としてでも、下手人としてでもいい、ただ……自分はモモの助様の家臣として死にたい。
　錦えもんどのは、ちらりと傳ジローどのをみて口を曲げた。
「……ならぬ。お主は今ここでオロチの腹心の子として首を落とす」
　当然だが、ひどい心痛にがり、と爪で土を掻いた。

[86 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 03:29:48]

振り上げられた傳ジローどのの刃に覚悟をして目を閉じる。

──痛みはいつまでたっても来なかった。

おそるおそる目を開けば、目の前に錦えもんどのが膝をついて目を合わせていた。
「……よいか、今、オロチの腹心であった両親をもったおぬしは切った。将軍暗殺計画を負っていたおぬしは今、傳ジローが切り捨てた」
　錦えもんどのの静かな諭す声に目を見開く。
「おぬしは先ほど、モモの助様の家臣となると言った。その言葉に嘘はないな」
　呆然としていると、後ろから傳ジローどのが鞘に刀を収めながら言葉を継いだ。
「無かろうな？」
　二人に尋ねられ、自分は大慌てで首が取れるほどに頷いた。
「もうこのようなことはせぬと誓えるな」
錦えもんどのに念を押される。袖で鼻をかみながら何度も何度も頷く。
「……某はおぬしを切った方が良いと言った。止めたのはモモの助様だ。絶対に何か訳がある。拙者の家臣ゆえ、問いただすまで我らに出てくるなと言いつけられ、薬を飲んですぐに飛び出してしまわれた……。大きくなられたものだ」
カッと頬が熱く、胸があつくなるような、泣き出したいような気持ちで頭を垂れた。生まれて初めて、雷に打たれるような敬服の気持ちだった。
　あどけない子どものような顔で眠っているモモの助さまに、錦えもん殿は柔らかなまなざしを向けた。
「この方は天下無敵の名をもつワノ国が将軍。……いずれおでん様をも越えてゆく大将軍となる若君にござる。その家臣となる覚悟は良いな」
　はっ、と頭を下げる。錦えもんどのの暖かな手のひらが肩にかかった。
「よくよく学び、腕を磨いてお支えいたせ。おぬしはモモの助様の一の家臣となるのだ」
　大きく頷けば、錦えもんどのと傳ジローどのは顔を見合わせて何かこそばゆいような笑みを浮かべた。
　　

[87 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 04:03:58]

　モモの助様が目を覚ます。
「……きんえもん……？ まだせっしゃ眠うござ……」
　むずがるように布団に隠れようとするモモの助様に苦笑しながら自分だと告げる。
　すると、先ほどの甘えたような雰囲気がぱっと切り替わってかい巻きを弾き飛ばす勢いでモモの助様が自分の名を呼んで飛び起きる。
「お、おぬし！」
　此処に、と頭を下げるとモモの助様は顔をくしゃりと歪めて包帯や布でまかれた自分を見つめた。
「怪我がおおいでござる」
　モモの助様に盛った毒ほどではないと首を振る。自分はモモの助様に頭を下げた。
　申し訳ございませぬ、と謝罪をすると、自然と涙がこぼれて膝を濡らした。
　なにゆえ毒を盛ったか、どうしてモモの助様を裏切ったのか。あの場所に居た父母のこと。全てを懺悔するように連ねて、その上で床に固めた拳を押し当てた。
　モモの助様を見つめる。
　黒炭オロチの家臣の子であった自分は、赤鞘の手にかかり死に申した。
　もう一度、申し上げる。龍であったモモの助様に叫んだように。

　どうか、この何者でもなくなった自分をモモの助様の家臣にしてはくださいませぬか！

　モモの助様はずっと鼻をすすってから居住まいを正した。
「あの夜、おぬしが此処に拙者を暗殺しに参った夜より、おぬしは拙者の家臣にござる」
　片膝をつき身を乗り出したモモの助様の両手が肩に掛かる。昨夜の錦えもんどのの片方の手と同じように熱いモモの助様の両の手のひらが自分をつかんだ。その熱さが自分に震えるような昂奮をもたらす。

「せっしゃはまだ十にも満たぬ、剣のうでもまつりごとも未熟にござる。拙者を支えてくれ、父上の赤鞘たちのように。我が家臣として」
──はッ！

　自分が腹から叫んだ声は、あさぼらけの花の都を叩き起こしたとか。そうでないとか。

[88 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 04:04:20]

さてオロチの家臣の子の将軍暗殺計画はこれにて終幕。
　これよりは、ワノ国将軍モモの助様一の家臣にしてとある忍の奮闘記でございますれば、また別の物語。いつかどこかで物語る機会もございましょう。
　ただ名将軍となられたモモの助様の影として、生涯を捧げたことだけは間違いの無いことでございます。

　　
べん！【完】

[89 イチえもん 22/10/18(火) 04:12:06]

短く終わるはずだったのに長々と続いてしまい、見てくださった方には恐悦至極に存じます。
このまま保守せず落としていただいて結構でございますが、なにか小話とか思いついたら書きまする。
この話の主人公と同じ感じの熱量と物語でモモの助に終生の忠誠を捧げた家臣が後何人かいそうだなと思いますな。
ごろつきとか、元プレジャーズとか、オロチに父母を殺され逆恨みした孤児とか、流れ着いた海賊とか。
保守や支援、まことにかたじけのうございました！

[90 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 07:12:51]

お疲れ様でした　楽しませていただきました

[91 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 07:17:21]

お疲れ様です
待ってた甲斐がある話でした…よかった…
体だけ成長してしまったモモの助の幼さに切ないやらかわいいやらで複雑な気持ちになりつつ、忠誠を誓う主君として納得の描写、
モモの助のことが更に好きになりました

[92 イチえもん 22/10/18(火) 12:56:45]

>>90

>>91

ありがとうござきまする！！つたないながらにたのしんでいただけておりましたら幸いです！

[93 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 19:21:51]

モモ好きの拙者、素晴らしさにむせび泣いておる
熱い主従物語、最高でござった！！

[94 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 20:31:51]

お疲れさまです
大好き

[95 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 23:00:13]

最初のダイスで錦えもんが出た場合どうなっていたのかとかも見てみたかったです！
モモの助が可愛い上に格好よくて最高でした！

[96 二次元好きの匿名さん 22/10/18(火) 23:01:15]

モモの助を好きになってくれてよかった…
モモ推しだけど今後もう流石に家臣の描写とかでないだろうし。
なんか見覚えあるなって思ったら『童の草』とか『ちょっと江戸まで』みたいなノリだったんだね。

[97 二次元好きの匿名さん 22/10/19(水) 03:40:32]

>>95

この世界線の話はここでしかできないことを悟った！やれるだけやってみるでござる！ありがとうござる！

【>>14 で来たのが錦さんだったら…の巻】

刃が急に弾かれる。

まさか、近くには誰もいなかったはずだ。

将軍を背に庇う侍は冷たい目でこちらを睨む。

「よせ！子どもにござる！」

「しかしモモの助様」

知っていた。

その顔を自分は知っている。父母に絵姿で見せられた仇、赤鞘の一人。

あれは、狐火の錦えもん。

刀は簡単に、抜いてすらない刀の柄頭に弾かれて畳に転がる。

将軍が止めなければ自分が即座に殺されていただろうことが、肌身に感じてわかった。恐怖に身がすくむ。

ぎろりと睨まれ、まさに刀を抜かんとする錦えもんの腕を掴んで将軍が止める。

「錦えもん！……っ、まだ子供にござる！」

「モモの助様……」

錦えもんを必死に見上げる将軍に錦えもんは困ったように眉を下げて柄から手を離した。

「モモの助様の命を狙ったのですぞ」

「それはわかっておる……、だが、こやつは父母に言われ、褒められたくてきたのだと言っておった」

そうだろう、と言われて隙を伺いながら頷いた。錦えもんは自分を切る様子はないが、逃げる隙がない。

「父上、母上に頼まれたのならば、こやつの意思ではないやもしれぬ。違うか？」

「……仕方ありませぬな」

錦えもんに首根っこを掴まれ、ひっと悲鳴をあげる。長駆の男からしてみればまるで猫を捕らえているくらいのものなのだろう。

「帰れ。モモの助様に免じて許してやろう」

「もうせっしゃの命など狙わず、父母と仲良くしてほしいでござる」

眠い目を擦る将軍に、カッと腹が煮えた。この能天気は、自分がどのような思いでここにいるかなど分からぬのだ。

母と父がどこにいるかなど分からない！

恩を返し、命を捨てて散れと言われた！

[98 二次元好きの匿名さん 22/10/19(水) 03:50:04]

お前なんかに自分の何がわかる。父と母の為に命捨てねば合わせる顔などない！殺すならさっさと殺せ、と喚き立てる。将軍が驚いているその顔に、唾を吐きかけようとして届かずに布団に落ちる。
ぐっと襟首を掴む錦えもんの力が強まり、一瞬息が詰まった。
「……言わされた言葉……でござるか」
将軍はくしゃりと眉を下げて何かを堪えるようにつぶやいた。
「モモの助様……それは違う。あなたとは……」
「そやつを下ろしてほしいでござる、錦えもん」
「しかし……」
「錦えもん」
「言い出したらてこでも動かぬときた……全く」
錦えもんはがりがりと自分を掴んでいない方の手で髷を掻くと、猫の子でも放るように自分を布団に投げ捨てた。
将軍がにゅっと長い手を伸ばして、自分を抱きしめる。
「……っ、おぬし、せっしゃのけらいになれ！」

[99 二次元好きの匿名さん 22/10/19(水) 03:58:04]

どういうことだ！？
「拙者を殺さねばならぬとおぬしはいう。しかし拙者は今、ワノ国のためにも死ぬわけにはいかぬ身でござる。だが、お主をみすみす死なせるわけにもいかぬ。死んでほしゅうない。おぬしには生きていてほしい……！」
肩を掴まれ、将軍の顔が近くにくる。
「生きておれば、きっと、お主自身の言葉を見つけられるはずでござる。それが、今の言葉であれ、違う言葉であれ」
ひぐっ、と将軍の喉が痙攣し、堰の壊れた川のようにばらばらと目から涙が流れる。
「死ぬのはこわいものでござる……！せっしゃはずっと、ずっと怖かった！　そんなにかんたんに、死んで恩を返すなどもうすなァ！ばがものォ！おんは！いぎでかえ゛ずもぬぉにごじゃるゥ！」
ぐいぐいと抱きしめられて困惑する。肩口で鼻を啜られる。
殺そうとしたものをそんな簡単に家来にするなどというのか？
──そんなことを言われたのは初めてだ。
将軍のために命を捨てよと言われてきた。
オロチ様が失脚してからは、仇を討って命を絶たねばならぬと言われてきた。
なのに、何故殺さねばならない男が自分よりもよっぽど泣いているのだろう。
「ぎん゛え゛も゛ん゛」
「ええ、モモの助様。そのように」
錦えもんはまるでなにか暖かで大切なものを見るように将軍の乱れた髪を整えてわらった。
それから自分は、彼の忍として雇われることとなった。

[100 イチえもん 22/10/19(水) 04:02:18]

もしも錦さんが来てたらこんな感じでボロ泣きすると予想してござった。
この流れだと毒の桃のダメージは少なくて（早めに叩き落とすので）、家来にするのを許した錦さんはもう少し叱り方がキツかったかもしれないでござるな。

[101 イチえもん 22/10/19(水) 04:21:23]

・傳ジローと錦さんの【壱人目】の直後の話
・お玉とモモの助と年上年下忍者とで藤山の化け物退治に行く話（化け物は家来になるものとする）
・元百獣海賊団プレジャーズの一人を拾って家臣にする話
・花の都で騒がれている幽霊騒動を解決する話。（犯人を家来にする）
・ヤマトに早く外の海に出なくていいのか、と尋ねるモモの助にヤマトが「きみは自分の国がたった数年で見てまわれるほど小さな国だと思ってるのかい？」っていう話
・モモの助様に仕える“光月十勇士”となる話。
とかこの世界線だけの話ではございまするがぼんやり考えてたものにござる。

[102 二次元好きの匿名さん 22/10/19(水) 07:18:29]

錦えもんルートずっと気になってたからありがたい…命が助かる…
錦えもんの前だと子供としての面が強く出ちゃうモモの助愛おしい

[103 二次元好きの匿名さん 22/10/19(水) 07:19:24]

>>101

もう全部読みたいです…

[104 二次元好きの匿名さん 22/10/19(水) 11:54:24]

これは暴れん坊将軍とか水戸黄門みたいに毎回なんらかの事件が起きてそれを解決するモモの助とその家臣たちのテンプレート冒頭。
将軍→モモの助
爺→赤鞘の皆様

【暴れん坊将軍モモの助の巻】
「もも君もも君たいへんでやんす！」
「何でござるかお玉どの」
将軍が上を見上げると、天井裏をひっくり返して現れたのはくノ一見習いのお玉であった。
「藤山にようかいがでるんでやんす！」
「妖怪〜？」
怪訝そうな顔をする将軍に、お玉は不満そうに頬を膨らませる。
「ほんとうでやんす！見上げるようなけむくじゃらのようかいが、藤山にはいるりょうしのみんなをおいかえしてしまってみんな困ってるでやんす！」
「それは良くないでござるな」
「ようかいがとっても強くて、藤山のりょうしさんたちだと手が出ないらしいでやんす！」
「あいわかった！行ってくるでござる！」
ドロンとひと声、花の都のお城から天に昇るは桃の龍。
「モモの助様ぁ〜！」
家臣の声に苦笑い。
ちょっと出かけてくると言い。
これも世のため国のため。
悪い相手を懲らしめて、弱気を助けるいい男。
龍将軍の大立ち回りの始まり始まり。

[105 二次元好きの匿名さん 22/10/19(水) 20:52:13]

保守

[106 壱えもん 22/10/20(木) 04:27:12]

これで最後にござるー！
先の話書き終わった後書きたかった傳ジローと錦えもんの話！

[107 二次元好きの匿名さん 22/10/20(木) 04:27:27]

【壱人目のその後の話】

「うーん……」

　時は朝に近い真夜中。己に与えられた城の一室で錦えもんが頭を抱えていると、からりと廊下の襖が開いて長身の男が顔を覗かせた。傳ジローである。

「錦さん、まだ帰ってねェのかい。モモの助様はもうお休みだろう？」
「薬も良く効いてよく寝ていらっしゃる。あの阿呆は側に居たいというので置いてきた」
「良いのかい。二度もお命を狙った相手だぞ」
「それをなァ……我らが言うのも……」

　錦えもんは肩をすくめてため息を吐いた。傳ジローも得心して頷く。それもそうだ。自分たちは元々はごろつき。読み書きさえ覚束ない有様であったし、幾人かおでんと刃を交わしている。

「それは良いのだ。あやつの眼を見ればわかった。もう裏切るまい。それよりこれよ」
　
　錦えもんが頭を悩ませているのは別のことらしい。ひらひらとめくる半紙に書き留められているのは、先々代の将軍であるスキヤキに与えられた課題だった。二十年、ワノ国に関われなかった錦えもんや雷ぞう、菊之丞に与えられた二十年を埋める勉強である。

「金策ならおれも手伝うが、それは違うやつかい」
「うむ……、こればかりはおぬしの知恵も借りられぬ」

　髷をかいてため息を吐く錦えもんに、傳ジローは苦笑した。それなりに大規模な謀反であったのだが、それどころではないといえるこの男の度量が自分は好きだった。

[108 二次元好きの匿名さん 22/10/20(木) 04:28:21]

「しかし、今日も独り寝かい、お鶴さん」
「う゛っ」
「二十年待ってようやく旦那が帰ってきたというのに、甲斐性がないねェ錦さん」

にやりと笑ってやれば、錦えもんはぎくりとわかりやすく肩を強ばらせた。しかしすぐに首を振って口をへの字に曲げる。

「二十年待たせた。あと数年は誤差でござる。立派にワノ国を立て直すのを見てる──と言われた」
「ふ、お鶴さんらしい」

　なんだか不思議な気持ちで傳ジローはもう一度書き付けに眼を落として難しい顔をする錦えもんは、昔久里で別れた時のままだ。ぼんやりと窓枠に背を預けながら煙管をふかす。もう丑三つ小僧として町を奔る必要は無いが、二十年来の習慣というのは恐ろしいものでどうにも夜は寝付けない。まやかしではなく賑わう花の都を見おろしていると、ふと弱々しい声がする。

「なァ傳ジロー」
「なんだい、錦さん」
「…………や、やはり、おれは甲斐性なしかな……。鶴女に捨てられたらどうしよう……」
　
　傳ジローがぎょっとして振り返ると、情けない顔をした男がうなだれていた。

「おいおい、錦さんあんたともあろう人がどうした」
「二十年待っていて思わなんだ。相変わらず美しいだろう？ 言い寄る男も多かったろうし……やっと帰ってこれたが、この様だしな……」

　口調まで武士言葉が抜けている。まるで赤鞘となる前の錦えもんと相対しているようだった。くく、っと喉で笑う。もう何十年も前のことなのにまるで昨日のことのようだ。

「お鶴さんは立派だったよ。ずっとあんたを待ってた。アンタが信じなくてどうするんだい。しっかりしてくれよ。ワノ国をもり立てて、お鶴さんを楽にしてやんなきゃ」
「そ、そうでござるな！」

　あっという間に発憤した錦えもんがもう一度机にかじりつく。先ほどの言葉も混じり、そして今宵の一幕も相まってなんとはなしに懐かしい気分になる。

[109 二次元好きの匿名さん 22/10/20(木) 04:29:45]

「そうしていると、康イエ様に言われて学んでいたころを思い出す。今宵の錦さんはまるで康イエさまだったな」
「よせ。あれほど素晴らしい方にはなれん」
「……でも少し、おれは思い出したよ」

　傳ジローが笑うと、錦えもんはへの字に曲げた口を綻ばせた。思い出していたのは同じだったらしい。ようやく書き付けが終わって筆を置く。

「あの方もあのような気持ちだったのだろうか」
「だといいな。……錦さん、付き合ってくれねェかい」

　持ってきたはいいが、だしそびれた酒瓶と杯を揺らす。

「あいわかった。飲みたかったのなら初めから言え」
「錦さんの邪魔ァ出来ねェよ」
　
　からんと縁を当てて盃を乾かす。

「これからのワノ国に幸あらんことを」
「我らが将軍、モモの助様に」

　花の都の向こうが白みがかり、夜明けが始まる。
　長い夜は明ける。
　朝ぼらけの桃色に染まるワノ国はまさに桃源郷のごとき美しさであった。



【完】（ベベベン！）

[110 二次元好きの匿名さん 22/10/20(木) 04:43:50]

云年後〜光月十勇士〜
筆頭（元オロチ家臣の嫡子、暗殺未遂2回。忍者。モモの助の腹心。忠義もの）
二人目（藤山の化け物。ヒトヒトの実を食べた大蛇。影武者）
三人目（元プレジャーズ。ごろつきだったところを拾われた）
四人目（元プレジャーズ。三人目の弟分で同じ外の街の生まれ）
五人目（元海賊。ワノ国に流れ着いて行き場がなくなったところを拾われた、半巨人）
六人目（ワノ国生まれだが外国の血が入っている。花街に生まれ育った）
七人目（オロチに両親を殺された孤児。モモの助の命を狙って失敗した）
八人目（オロチに監禁されていた坊主の槍使い。オロチがいなくなっても檻から出ようとしなかった）
九人目（不思議な妖術をつかうくノ一。しのぶの直弟子であり、獣を手懐ける。モモの助をモモ君と呼ぶ）
十人目（諸国をめぐるオオクチノカミの姿をした女。カイドウの息子（娘）。モモの助をモモの助くんと呼ぶ）

[111 二次元好きの匿名さん 22/10/20(木) 16:43:16]

保守