謎の薬で犬になったたわし…

1二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 14:14:02

朝起きたら冷たくなってた

2二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 14:19:33

生暖かいたわし嫌だよ

3二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 16:03:23

「おい、え、なんだそれ！？」

さすがの私も狼狽を隠せなかった。

きゃんきゃんと吠えながらトレーナールームを駆けまわる、たわし。

その吠える音はどこから出てるというのか。

嬉しそうにたわしと追いかけっこをする私のたわけたトレーナー。

「出所は言えないけど、たわしを犬にする薬を貰ったんだ！」

「タキオン！」

たわけの粛清よりも怪薬品の拡散を止めるのが先だ。

奴は今どこにいるのか。

廊下を走っていると偶然アグネスタキオンのトレーナーと出会った。

「すまない、タキオンは今どこに？」

「ああ、体育館の裏に作った実験施設を解体してると思うよ」

「担当の妙な行動を把握してるなら止めろ！」

トレーナーという奴はどいつもこいつもたわけだらけか。

4二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 16:04:26

体育館の裏に行くと何か施設があった痕跡はあるが施設は無かった。

ここがたわしを犬にする薬の製造プラントだったかはわからない。

だが、何らかの怪実験が行われていたのは間違いないだろう。

証拠を掴めなかったのは痛い。

「やぁ、副会長。妙なところであうねぇ」

しかし、容疑者は見つかった。

「貴様のトレーナーから体育館裏に怪しい施設があると聞いてな」

「いやぁ、どうやらそんな施設はないようだよ」

わざとらしく当たりを見回すアグネスタキオン。

これはもう完全に証拠は消されているに違いない。

5二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 16:04:49

「そのようだな。その件はいいとしてタキオンに話があってな」

「ではこれで失礼するよ」

「失礼するんじゃない。私のトレーナーに変な薬を渡した件だ」

ああ、と呟くとアグネスタキオンは立ち止まった。

「そっちの件か。どうだい見事に犬になっていただろう」

そっちじゃない件も気になるがまずはたわし犬だ。

「怪薬品を拡散するんじゃない。何本作った。誰に何本渡した」

「あれは偶然できたものでね。キミのトレーナーが使ったならもうどこにもないねぇ」

どうやら学園中のたわしが吠えだすようなことはなさそうだ。

6二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 16:05:08

両津と部長かな？

7二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 16:05:13

その後、アグネスタキオンを問いただしたが施設については何も聞けなかった。

何かをした、しようとしている、両方の可能性を考え警戒するしかないだろう。

部屋に戻ると私のトレーナーはまだたわしと遊んでいた。

「貴様、たわしで遊んでる暇なぞ我々にはないんだぞ」

「本当に犬になるとは思わなくて……放置するのもかわいそうだし」

きゃんきゃんと嬉しそうにたわしが吠える。

確かに動いて吠えられると放置するのも捨てるのも憚られた。

「薬の効果は長くは続かないみたいだからさ」

「……わかった。仕方ない」

「よし！　じゃあ、さっそくチョビの散歩に行こう！」

チョビってそこのきゃんきゃん吠えてるたわしのことか。

犬、飼いたかったんだろうか。

安易に本物を飼わないのは評価できるが……。

それにしたってたわしを犬にするって、このたわけめ！

8二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 16:05:32

私とトレーナーが校舎内を歩く。

その後ろをたわしがついてくる。

チョビの通った後の廊下が少しだけ綺麗になる。

清掃が少し甘いようだ。

校舎裏の林道を歩く。

自然を見て（どうやって？）チョビのテンションが上がった。

私やトレーナーの足元をくるくると走り回る。

自然に笑みがこぼれる。

散歩が終わるとチョビは随分汚れていた。

暴れるたわしをお湯で洗う。

どこが頭……そもそもどっちが前でどっちが後ろなのか。

自ら動くためかたわしは少し生暖かった。

綺麗になったチョビが嬉しそうに私の周りを走り回る。

餌をあげられないのが少し残念だった。

9二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 16:05:48

次の日。

朝起きると自室の机の上でたわしが冷たくなっていた。

昨日、寮に連れて帰り、クッションの上に寝かせたチョビ。

チョビだったもの。

鳴き声はもう聞こえない。

そっと触れると冷たい金属の感触が指に伝わった。

「そうか、薬の効き目が切れたんだな」

動かなくなったたわしをそっと撫でる。

ほんの少し、痛かった。