グラスのSSを書こうとするとさ

外はあいにくの雨、せっかくのターフでのトレーニングの予定がミーティングになってしまった。
｢体育館、とれなくてごめん｣
｢いえいえ、たまには2人でのんびり、水無月の空模様を見守りましょう〜｣
水無月？というのはよくわからないが、グラスがそうするのなら俺もそれに倣おう。
そんなふうなことを思ってミーティングを続けている。口ではこんな事を言ってはいたが、久々のターフでのトレーニングが潰れてしまったことをグラスはきっと落ち込んでいるんだろう、どこか元気がないように見えた。多分グラスはそれを言わないしそれどころかそんな素振りすら見せていない。ただなんとなく、そんなふうに感じただけ。何か彼女を少しでも喜ばせるものがこのトレーナー室にあっただろうか、記憶の中を漁っていると先日買った緑茶があったことを思い出した。試食コーナーで飲んだ時に美味しかった覚えがあるそれならきっと彼女も喜んでくれるだろう。
｢トレーナーさん、何かいいことでもあったんですか？｣
｢え？｣
｢いえ、なんだか嬉しそうな表情をしていらしたので〜｣
｢そんなことないよ！？………いや、そうかもしれない｣
グラスが嬉しそうなところを想像したら俺も嬉しくなる、と言いかけたところに
｢なんですか、それ｣
と少しくだけたような表情で笑みを浮かべるグラスがいた。何か嬉しいことでもあったのだろうか、少し不思議に思ったがミーティングもキリがいいところまで来たので、ここで休憩がてら例の緑茶を振る舞うことにした。
｢休憩がてらさ、お茶にしない？｣
｢いいですね、トレーナーさんのお部屋にお茶ってありましたっけ？｣
｢この前珍しく買ったんだ、味は保証するよ｣
そう言って緑茶があった場所を漁っ…あれ、ない。確かにここに置いていたはずなのに…。慌てて探すもどこにも無い。

>>28

24二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 10:17:04

｢？トレーナーさん？どうかしました？｣
心配そうなグラスを背に必死で探すもそれはどこにもなかった。記憶を漁ると先日カレンチャンのトレーナーが来た時にもてなしでお茶をいれたこと、買ったお茶っ葉の量がかなり少なかったこと、カレンチャンのトレーナーが全部飲み干していたことを思い出した。あんまりにも美味い美味いなんてニコニコして言うもんだからこっちも嬉しくなってついたくさん飲ませちゃったんだなとため息が漏れる。
｢ごめん、お茶なかった。｣
｢あら、そうですか。トレーナーさんがどんなお茶をいれてくれるか楽しみでしたが仕方…｣
｢ごめんね、こんな不甲斐ないことばっかりで｣
思い返せばこんなふうに期待させて落胆させる、なんてことをしたのは今日が初めてじゃない、何度も似たようなことをしてぬか喜びさせている。雨で気分が上がらないからか平静を装うのに必死になってしまう。すでに見せているが少しでも気を緩めると涙が出てきそうで、担当の前で情けない姿を見せてしまいそうで…。本当に情けない。責めだしたら止まらない。それでも必死に平静を装い、
｢ははっ、情けないとこ見せちゃったな｣
なんて半ば自虐気味な笑いを顔に出してグラスのほうに顔を上げる。
果たしてちゃんと笑えているだろうか、どんな表情をして今彼女の前に立っているのだろうか、何かが決壊しそうになるすんでの所で、グラスが口を開いた。
｢ではトレーナーさん、腹を切りなさい♪｣
｢え？｣
思わず振り返るとなぜか笑顔のグラスがそこにいた。
あまりにも非現実的、いやそうでもないのかな、いや非現実的だよ！？でもグラスだしなぁ…そんなことをぼんやりと考えていると
｢落ち着きましたか？｣

25二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 10:19:05

またしても思いもよらぬ言葉が帰ってきた。
｢きっとトレーナーさんはターフでのトレーニングがなくなってしまって落ち込んでる私を励まそうとして、お茶を振舞ってくれようとしたんですよね？｣
普段の優しい声が更に優しく聞こえてくる。
｢私は、トレーナーさんが私のことを想って私を励まそうとしてしてくれる貴方の心遣いだけで十分励まされましたよ。ありがとうございます♪｣
｢グラス…｣
いつの間にか取りだしてきた懐刀をすっと前に置くと、
｢ですのでそんなふうに落ち込んでいるトレーナーさんの気持ちを切りなさい。介錯は私にお任せを｣
穏やかに、優しくグラスは落ち込んでいる自分の気持ちに切腹を命じてくる。そんな事を言われてしまったら、そうするしかないじゃないか。
俺は心の中で落ち込んでいる自分の腹を切った。そんな様子の俺を見て落ち着いたことを察したのだろう。グラスは懐刀を元の場所に戻すと
｢それはそれとしてどんなお茶か気になってしまいました。天気も良くなったみたいですし、2人で買いに行きませんか？♪｣
いつの間にか雨は止んでいたようで、雨上がりの道をどうでもいいような話をしながら2人で歩くことにした。
6月の空模様は雨のち晴れ、優しい風が吹く中、ふたつの影は嬉しそうに隣を歩んでいる。

面白い考えだなと思い誠に勝手ながら書かせていただきました。グラスの育成シナリオなんて正直覚えてないので解釈違いとか込でお目汚しもいい所なのですがお納めください