一般人千束 リコリスたきな概念 part2

  • 1二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 12:40:57
  • 2二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 12:46:32

    >>1


    「で、ここで待ってればいいんだよね?」

    「ええ、ここに來るはずなんですが……」

     来ませんね。


     二人は約束の時間を五分あまり過ぎても来ない依頼人を不審がる。

    尤も、不審がっていたのは主にたきなではあるが。


    「……もしかして、もう既に事件に巻き込まれてる……とか?」

    「わたしもそう考えてました、とりあえず依頼人に連絡を取るので、少し待ってください」


     ピポ、と電話を掛けるが、特に応答がない。本格的に心配になる。

     千束とは少し距離をとり、何度か掛け直すがそれでも結果は同じ。

  • 3二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 12:58:50

    >>2


    「あ、あれじゃない?」

     千束は開けられた距離を詰めて、たきなの方に寄る。

    「あれ?」

     指し示された方向を見ると、実に豆粒みたいな車が遠くからその大きさを増しながら

    こちらに近づいてくる。

    「めっちゃ速そう」

     千束の洞察の通り、その豆は卵大になり、リンゴ大になりとほぼ一秒ごとに成長していく。

    「スーパーカーじゃん! 真っ赤なのいい!」

     はたして二人の目の前で耳をつんざくような音を立てて急停止し、タイヤ痕をアスファルトに

    刻んだ。

     うぃぃぃん、と窓が半分開いて、顔を出したのが着ぐるみ……?

     茶色い着ぐるみが入るにはとても窮屈そう。という感想を抱くのが

    精一杯であった。しかし、目の前の現実は、着ぐるみを着た人間が

    べったんこのスーパーカーを運転しているのだから仕方がない。


    「ウォール!」

    「ナット」


    「え、なにそれ合言葉……? え?」


     それで依頼人と請負人の符号がされたのか赤い車は、パカっと後部座席を開けて

    「早く乗れ!」と指示する。


    //なんかスレ、2時間で落ちる仕様になってるんだけどキツくね? ヤバ

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 13:00:36

    この世界線だとスーパーカーなのか!おめでとう千束!!

  • 5二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 13:05:34

    保守だ保守!

  • 6二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 13:07:47

    補習

  • 7二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 13:09:34

    >>3



    「依頼した時には一人で来るという事だったが、その人は誰だ」

     ウォールナットが訊く。

     ウォールナット、自身の口から出ている訳ではない。カースレテオから

    くぐもったような、変声機を通したような声が聞こえるのだ。

     顔も、体型も、そして声までを隠しているそのハッカーはなるほど、徹底している。

    「この人は輜重輸卒です。わたしの武器弾薬を運んでもらっています」

    「なるほどね、その大きな荷物がそれか」

    「ええ」


     たきなもこの話をあまり深堀されたくなかった。たきな自身で調べたとはいえ

    まだクロともシロとも言えないただの民間人を、ちょっと懲らしめようと思って

    連れて来たという実際に触れられるのはいかんせん都合が悪い。


    //みんな保守してくれてありがとう……ううう

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 13:32:52

    こんな神作落としてなるものか!

  • 9二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 13:59:01

    あげ

  • 10二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 14:17:57

    保守

  • 11二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 15:43:26

    立ててくれてありがたい...

  • 12二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 20:35:52

    保守

  • 13二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 22:45:21

    //保守してくれてありがとう!


    >>7


    「空港に行くってことは国外逃亡ってこと?」

     意外に気さくな雰囲気を見て取った千束はその着ぐるみに話しかける。

    「そうだ。なんなら一緒に行くかい?」

    「だってー。たきなもどう?」

    「わたしは……そうですね、行けたら行きたいですね」

    「旅行の話題は地雷じゃなかったの?」

    「うぐ……地雷です」

     よく覚えてるなお前、という目で隣の千束を見る。油断ならない。


     そもそも、護衛対象が自分で運転していて、護衛が二人とも後部座席に陣取っているのは

    中々不自然だ。次の信号辺りで変わってもらおうか、わたしが運転して……なんて考えている。

    しかし、問題はその着ぐるみの頭だ。

     後部座席は若干頭が低くなっていて、引っ掛かりそうである。

    「というかその格好でゲート通れるんですか?」

    「流石にそういう時は脱ぐさ。いつもは顔を隠すべきだからな」

    「顔を隠すんだったら着ぐるみより合理的なものはありませんか、覆面とか」

    「それはそれでいい。これはまあ……趣味みたいなものだ。それはそうと、リコリスはどうしてJKの格好をしてるんだ?」

    「……これは、まあ、女子高生なんて色んなところにいるし、怪しまれないので」

    「へぇ……そうなんだ」


     この短い会話で千束は女子高生に偽装する理由と、たきなが「リコリス」というコードネームらしきものを持っていることを知った。

     尤も、たきなはこれよりも前に「リコリス」という単語を千束に向かって発言しており、

    千束は気にはなっていた。

     そこで小さな点同士を地道に連結していく。

  • 14二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:22:33

    >>13

     ウォールナットは「JKの格好をしている」と言っていた。本物のJKなら「格好」とは言わないだろう。まあ、たきなが教えてくれた学校について調べてもよくわからなかったし、本当は女子高生ですらない? あのときの自己紹介も偽装だと考えるとつじつまが合う。

     じゃあ……ずっと本職の殺し屋? なるほど、と千束の脳内に刻まれる。


     なら……あの子はどう育ったんだろう? と疑問を抱く。

     きっと超特大級の地雷で、踏むどころか周りに近寄っただけで爆発して彼女諸共

    吹っ飛ばされるだろうと予想してしまう。


     でも……と。たきなが隠しておきたいのなら訊かないと千束は自身の中で自分と約束している。

    それはたきなの、少し困ったような顔を見るたびに心が痛むから。

     彼女に「嘘をつかせてしまう」ことへの心苦しさが沸き起こる。

     地雷という言葉を設定したのもこれがためだ。

     

     直観的に千束は、たきなが嘘を吐くことを嫌う人間だと感じた。

     いくらでも嘘を言うチャンスはある。でも彼女は「ノーコメント」を選んだ。

     

    ――ふふ、私に本当のことを言っても、私が後ろを向いた隙に撃てちゃうのに。

     

     たきなのその奇妙な真面目さが千束には心地よかった。

      

  • 15二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 08:35:06

    ほしゅ

  • 16二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 10:03:19

    >>14

    「で、ここから成田だっけ?」

    「そうだ……が、まずいな、追われてる」

     ミラーをチラ、と見ながらウォールナットは無感情に呟く。

    「嘘?」

     空港へ向かう一本道、いつの間にか他の車がいない。さっき通ったゲートを振り返ると

    小さな渋滞が起きている。なんだろうあれは。

     だが、それ以上に目立つのは、この車を負う二台のワンボックスカーだ。

    「おそらくゲートをハックして他の車を足止めしてるんだな、そして今追ってきてる奴が……」

    「あなたを狙っている奴ら、ということですね」


     タタタタタ!!!

     軽い音が響く。銃声だと千束が気付く前に、たきなが鋭い声で伏せて! と叫ぶ。

    高速度で走るスーパーカーに業務用のワンボックスカーは中々追いつけないが、

    亜音速の弾は容易に赤い車体に辿り着く。

     たきなは既に銃を握り、後方の車の足、タイヤ目掛けて弾を放つ。着弾。

    しかし、足回りがぶれることはない。

     畜生、防弾か。特殊な繊維が空気の代わりに詰められている戦場用のものだ。

     射撃の腕に優れるたきなは、いくらでも対象に当てることはできるが、

    当たっても壊せないならあまりその意味はない。


    「簡単な護衛って言ってたじゃないですか店長……」

     拳銃用の弾が効かない。すると……いや、車内が狭すぎる。

    「ここからどこに行くつもりですか?」

    「空港にそのまま行くつもりなんだが、おかしいぞ、他に誰もいない……ロボ太だな」

     忌々し気に吐き捨てるが、運転に集中せざるを得ない。

     さらに続けて、

    「最近の自動車はネットワーク繋がってるからな、ハッカーに乗っ取られてしまうから

    わざわざメカの塊のこの車で来たというのに、結構頭良くなってきたなロボ太の奴」

    「何一人で感心してるんですか! 殺されますよ!」

  • 17二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 10:10:12

    >>16

     パァン! パァン! とこんどはフロントガラスに向けて放つ。

    撃ち抜けはしないが、ガラスに蜘蛛の巣状のひび割れをつければ視界が塞げるのでは

    と実行する。

     いや……それも中々の関門。ひび割れもまた着弾点だけ。かなり特殊な構造になっている

    ようで、絶対にウォールナットを殺すという意思が見て取れる。


    「たきな、これはどう?」

     千束がポーチから二、三の蕪めいたものを取り出してたきなに示す。

    「……そう! それです。ありがとうございます」

     たった今、千束に頼もうと思っていたそれが既に千束の手に握られている。

    「ウォールナット、この車って防弾ですっけ?」

    「簡単な改造はしてもらってる。でもあまり耐えられないぞ」

     ――それでもやるっきゃない。

     たきなは千束から渡されたそれ――手榴弾のピンを軽快な音を立てて抜いて相手方に放る。

     数秒の間を置いて、それは派手に赤い花を咲かせるが、あの車もしぶといものだ。

     まだ追ってくる。

  • 18二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 10:26:22

    >>17

     逆に考えろ。逃げ切ればいいだけの話なんじゃないか?

     千束は今の状況から考えられることを整理する。

     たきなは必死に追っ手を殺そうとしている。それはそれでこの犬みたいな着ぐるみを着ている

    人を守ることはできるけど、どうやら相手は手強そうだ。

     それにだ、なんかあんまり人を殺すことに積極的になることに手を貸すのかあまり気が進まなかった。

     ……いや、まさかね、そんなチャンスは……。

     自身のスマホを操作してこの道路の全体像を見る。ほぼ一直線のこの通路。

    このまま行けば空港に着けるが、そう易々とはさせてくれないだろう。

    ほぼ完ぺきな人払いがされてるんだ、その先にあるのは空港ではなく罠なはず。

     すこし道路の図を指で辿って、ある点を見つけた。

    果てしなくまっすぐなこの道ではあるが、ある地点で、別の道に交差する。

     ねじれの位置でだが。


    「ねえ、ウォールナット? こうやっていける?」

     後方射撃に集中しているたきなの代わりに運転席へ身を乗り出してスマホを示し、

    今考えたアイディアを話す。

    「……クレイジーだが……やってやれないことはないかもしれないな」

     あなたもそうでしょ? と千束はひそかに思う。スピーカーから聞こえるその声が

    どこか弾んでいるように聞こえたから。

  • 19二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 10:49:25

    >>18


    「たきな、ウォールナットとちょっと逃走用ルートの話をしてて、あと二分後に別の道に入るよ。

    その時はどうか伏せてほしいってことになった」

    「この先に道があるんですか?」

     たきなの目には疑問が湧いていることが分かる。

     そりゃあ見る限り真っすぐな道しかないのだから。

     空中を走る、橋のような道路に別の道なんてあるのだろうか、と疑念を抱くのは尤もだ。

    「大丈夫! 千束さんに任せなさい!」

     ドン、と胸を叩く。

     

    「ウォールナット、もうすぐ左に寄ってくれる?」

    「はいよ、しっかしマジでやるとはな、お前面白いな」

    「ノってくれてありがたいよ、さて、もうすぐだ!」

     左に寄った車はある地点で加速度を上げて、道路の右側車線に突っ込む。

    「たきな伏せて!!」

     道路と外界とを隔てる壁のガラス部分をぶち抜いて、車は宙を舞った。


     高速道路のようなさっきまでの道は確かに分岐はない。

     しかし、地図上で見ると、その下には道があるのだ。一般道である。

  • 20二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 10:52:05

    >>19


     しかも今まで走っていた道路に生えていた壁はそこまで丈夫そうなコンクリート製のものではなく、アルミとガラスでできた弱そうなもの。

     加速度と質量で押せばなんとか壊せるのではないか、という発想に賭けた。


     目の前は何も隔てるもののない海、空。

     下に見えるのは空いた道路。

     お腹の中身がぐっと持ち上がるような、身体の芯から寒くなるような感覚。

     レールのないジェットコースター。


     浮いていた時間はせいぜい三秒。

    「ひゃっほぉぉぉぉぉ!!!」

     千束の歓喜とヤケクソが混ざった声だけが車内に響く。

     流石のたきなも自分の頭を押さえて身を低くするだけで精いっぱいだ。


     そしてその直後に来る衝撃。

     身を伏せていたのに頭が車内の天井に当たる。

     周囲からのクラクションのシャワー。

     走っている車特有の後ろに引っ張られる感覚。


     千束の計画は達せられたということがわかる。

  • 21二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 11:04:49

    >>20


    「大丈夫? たきな、ウォールナット?」

     追っ手は流石にそこからは追ってこない。

     もう誰にも追われることのないその赤い車の中で一人を除いて非常に和やかな

    空気になっている。

     ポップに流れる演歌もそれを後押しするかのようだ。

    「ボクなら平気さ、そのお嬢ちゃんの方が心配だ」

     バックミラーに映るたきなは青ざめているやら赤いやらでよくわからない顔になっている。

     髪は乱れ、頬にかいた汗に貼り付いている。

    「ちゃんと説明すればよかったね、ごめんよたきな……」

     隣に座ったたきなの頭を千束は撫でるが、それには反応がない。

    「……まぁしかし、無事ならよかったです」

     そこからたっぷり三十秒は経ったか、たきなが最初に吐いた台詞はこれだった。

    「そのクマの着ぐるみで衝撃は抑えられましたか? 頭とか、打ってませんか?」

    「やだなあ、たきな、あれは犬だよ」

    「リスだ」


    //とりあえずここまでかな

  • 22二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 17:13:50

    乙です

    一般人でも千束は千束だな…

  • 23二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 19:51:27

    保守

  • 24二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 00:56:12

    保守

  • 25二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 07:28:34

    保守

  • 26二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 12:05:02

    保守

  • 27二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 16:56:00

    保守

  • 28二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 19:56:33

    >>22

    本質は変わらない気がするんだよな……


    みんな保守ありがとー、感想とかあったら書いてよ~


    >>21


    「でも空港から離れちゃったしぃ? どうするよこっから」

     周囲に何もいないことを確認していったん停車する。

     ガソリンをバカスカ食う車なのだ、どこかで給油もしたい。

     ガードレールというか、橋の欄干をぶち破ったので整備も必要だろう。

    ということでたきなが最初に車を降りて警戒した後、取り敢えずの休憩となる。

     とはいってもたきな以外は車外に出ることも無いのだが。


     一般道に出て、河川敷の土手に停車する。

     なんともまあ優雅に釣りをしている一般人がたくさんいる。

     数キロメートル離れたところで銃撃戦など起きていることなど誰も知らない。

    まったくみんな暢気なものだよね~と千束は不意に頭に浮かぶ。

     まあ、私もちょっと前まではそうだったんだけど。

     っていうか、銃犯罪ってニュースで見たことないんだけど、どうなってんのかな。

     千束は自分の抱えたリュックに視線を落とす。

     おもっくそ爆弾入ってるよな……。

  • 29二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 19:56:58

    >>28

    「意外に丈夫でしたね、あんな非常識な飛び方したら壊れると思ってたんですが」

    「たははは……ごめんね」

     車の整備をしようとボンネットを開けるが、特に酷い破損が見受けられない。

    とてもよくできた仕様だった。

     千束も内心、アレで何か大事な部品がぶっ壊れていたらと思うと心配ではあった。

    逃げる足がなくなってしまうし、赤色スーパーカーは何となく気に入っているのもある。

    「ガソリン、ブレーキオイル等何も漏れてませんでした。そういえばウォールナット、運転ですが……やはりこのまましていただいてよろしいですか? わたしが銃で戦うので」

    「構わないよ、楽しいドライブだ」

  • 30二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 19:58:34

    戦場慣れしすぎてる……妙だな。

  • 31二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 20:16:24

    >>30

    妙だな……ペロッ、これはヒガンバナ……


    >>29

     目標の成田空港はまさしく交通の要所ということもあって様々なルートから

    経由できる。一番目立たないように侵入できるルートを探そうとするが、

    いかんせん、ゲートを遠隔操作できる人間が相手方についているのだ、

    油断はできないときたもんだ。


    「どうです、千束さん、辺りに何かいますか?」

     目がいいんだと自慢していたので、たきなは双眼鏡を渡し、偵察を頼む。

     もぞもぞと後部座席に膝立ちして周囲を窺っているが、特に敵影のようなものは見えない。

    しかし、相手の車は灰色のワンボックスカーでどこにでもあるようなものだ。

    なかなか怪しいとまで断定できない。

     まったく、この車の反対だ……。というか逃げる癖にこんな目立つ車で来るなよ……。などと

    脳内で悪態をつきながらどうしようかとたきなは悩んでいたところ、千束がひょいと携帯電話を出してくる。

    「追ってきた車のナンバー、一応撮っておいたよ」

    「! ありがとうございます!」

     たきなはそれをデータとして受け取ると、ウォールナットに送信する。

    「あの、ウォールナット、あなた、とても優秀なハッカーだと聞いてます。今から送るナンバープレートがついた車の位置情報なんて分かったりしますか?」

    「まあ、任せろ」

  • 32二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 20:17:12

    >>31

     ウォールナットはそう言ってグローブケースから小型のパソコンを取り出す。

     ぱか、と開いただけで特に操作をしないまま、画面が動いていく。

    たきなから送信されたファイルが開き、検索フォームにドラッグアンドドロップされる。

     ぶれた画像がみるみるうちに動きを止め、文字の陰影を濃くしていく。

     そうして得られた文字データがそのまま検索窓に打ち込まれ、別の窓に登録証やら車検証の

    表示が浮かんでいく。

     登録証に刻まれた名前もまた拾われていき、そのまま携帯電話の契約情報が引き出され、

    通話記録、通信履歴が左側に出た窓に積み重なる。

     頻繁に通信している他の端末の情報を総浚いし、関係深い端末と、その持ち主の氏名、住所が割れる。

     それと同時に窓には地図が表示され、ここにいるよ! とばかりに赤い丸が騒いでいた。


     その一部始終を見ていた、たきなは呆然として言葉を暫し失う。

     一方千束はと言うと

    「うぉぉぉ……すげぇ……映画みたいじゃん……」

     と吐いていた。

  • 33二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 22:45:40

    千束滅茶苦茶手慣れてるな
    これはアランに目を付けられますわ

  • 34二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 07:32:41

    保守

  • 35二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 12:12:00

    保守なの

  • 36二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 18:36:15

    >>33

    すげえ不穏…

  • 37二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 00:00:01

    このルートでも千束の目の良さは健在か

  • 38二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 00:02:04

    >>32

    「では、この位置情報を発信している車からは離れれば万事解決ということでよろしいですね」

    「そうだと思う。あいつらも流石に橋をブチ破っては来られなかったようだからな」

     その位置情報は橋を降りて、一般道に迂回するような回りくどい動き方をしている。

    そりゃあまあ、あんな非常識な動きをするものに追いつこうなんて無理があるとたきなは

    少しばかり同情するが、これはチャンスだ。


    「……これで誰も傷つかないで済む……」

     千束は誰にも聞かれないようにそう唇を動かした。

     その胸にたくさんの銃器、弾丸、爆弾を抱えながら。


    「ウォールナット、訊いてもいいですか?」

     さっきから思っていたことをこの際だから聞いてしまおう。

    そう思って切り出してみる。幸い、ウォールナットは護衛に対して結構協力的だ。

     たきなは過去にこなした護衛任務を思い出してくらくらする。

    事前に決めた約束に従わないで勝手な行動をしたり、こちらからの必要な質問を無礼として

    憤慨したりと……まあ、守られる側というのは概して高い身分の人間で、そういう人たちは

    護衛を下に見るような傾向が――少なくともたきなの思い出の中にあった。

     しかし、このウォールナット。着ぐるみと車こそ変わっているが、行動に協力的だし

    言葉遣いの一つ、二つで憤然としないのはたきなにとって気は楽だった。

    「なんだ?」

    「いえ……なんでこんなに目立つ車で来たんでしょうかと……。逃亡なら目立たない車の方がいいんじゃないかと思うんですが」

    「んー。まあ趣味だな」

    「ええ……」

    「やっぱハッカーさん趣味いいわー」

     そう言って千束はぐぐっと後ろに伸びをするが天井が低くて思ったほど上手くできずに

    腕を引っ込める。

    「まあ、冗談として……速いってのがいいとおもったんだ。あとは頑丈なのがいいな」

    「それはわかりますけど、だいぶ捕捉されやすいですからね。注意しましょう」

     確かに、頑丈の名に偽りはなさそうだ。

  • 39二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 00:13:38

    >>38


    「しかしーフライトの時間が迫っているからな、早めに行かないとなのだが……」

     心配そうな声がスピーカーから聞こえる。

     確かに、銃撃戦をしたりここで作戦会議をしたりとて優に一時間は無駄に使ってしまっている。

    中々困ったことだ。チケットに書かれた時刻にはあと二時間しかない。

     普通にいけば二時間など、余裕を持って到着のはずだが、追われている立場と言うとそうもいかない。

    「とりあえず、その位置情報を気を付けて発進しましょう」

     たきなはそう言う他なかった。

     相手の動きが見えているなら、それで構わない。それを避けて行くしかないのだ。




    ――――


    「で、見つかったかね、最高の英雄となれる才能を秘めたあの子は」

     その言葉には怒りはないが焦りは見えている。 

     注がれたワインを半分近く一気に飲んでいることから、だいぶ喉が渇いている様子だ。

     尤も、渇いているのは恐らくは欲なのだろうが。

    「ええ、ですが……隠れたいようですよ、捕捉しても逃げ続ける」

     逃げる、という言葉を聞いて暫し驚いた顔を見せる。

     そんなことする必要はないのにと、言わんばかりの表情。

    「追っ手を増強しますか?」

    「……まあいい。じきにあちらから声を掛けてくるはずさ……」

  • 40二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 00:21:33

    うわぁぁぁ奴がきてるぅぅ

  • 41二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:42:26

    ひぃぃぃ

  • 42二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 13:58:26

    うっわ心臓!!

  • 43二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 17:58:23

    ハツさんはさぁ・・・

  • 44二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 21:08:18

    このレスは削除されています

  • 45二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 21:10:59

    >>39

    「千束さん、すみませんね、本当は助手席にいてもらった方が比較的安全かと思うんですが」

     彼女はなかなか……使える奴でわたしは少し驚いた。

     必要な道具を言う前に出してくれるし、ナンバーだって撮ってくれてた。

     戦争とかスパイ映画が好きとか言っていたけどそれのお陰なのだろうか。

    架空の話なんかくだらないと思っていたけれど、動画教材にもなる……のかもしれない。

    認識を改めよう。

    「いいって、たきなの役に立ちたいって思ってたんだからさ!」

     彼女の屈託のない顔。……恐怖心とかないのだろうか?

     わたしは防弾や防刃の制服を着ているが、彼女には何もない。

     動きやすい恰好で、前開きの上着を着てきてください。スカートは避けてください。足元は調節できるスニーカーとかでお願いします。

    という要求を彼女は守っている。――が、それだけだ。

     まるで自分が死なないとでも思っている。

     

     アサルトライフルで後ろから撃たれているというのに……。

     訓練を積んだサードも、勿論セカンドのわたしだって、実は怖い。

    平気なように見せかけているけど、寝床に入れば危なかった場面がフラッシュバックしてくる。

     

     あの時に避けられなかったら……と思ってつま先が冷えていく。

     

     でも、彼女は――そうでないように見える。

  • 46二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 07:15:25

    保守

  • 47二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 18:10:59

    保守

  • 48二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 21:21:53

    >>45

     バババババ!!! と銃声が響く。何故? どこからだ!

     軽い音と鋭い、金属に触れる音が車内を満たす。

     車体は改造されていると言っていた、それが弾丸を弾いているのか?

     リアガラスもヒビが入る。蜘蛛の巣のように白い筋が刻まれる。

    「うぉぇぁ! たきな!」

     彼女がサボってたわけではないことはわかる。わたしだって後ろを見ていた。

    何もいなかったのに!

    「とりあえず出してください! 千束さんは伏せて!!」

    「分かってる!」

     ウォールナットがアクセルを踏むが、銃弾は追いついてくる。

     ドアのミラーも、恐らくアンテナも撃ち落され、車窓から後ろに飛んでいくのを見送る。

    「どこから狙ってる?」

     こうしている間にも、銃弾の音があちこちで鳴る。

     火花が散り、ガソリンのタンクが心配になる。

     タイヤが撃ち抜かれては遅い、早く逃げなければ。

     しかし、このまま走れば、一般道に流れ弾が当たる。

     河川敷の、人の居ないところだからまだよかったが、そこから合流しようとすれば

    大惨事だ。

  • 49二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 21:25:45

    >>48


    「ヨォ、ウォールナット、ロボ太だ」

     ひび割れた声がスピーカーから流れる。

     ウォールナットの声が邪魔をされていく、一つのスピーカーでの発言権争いは音を歪ませて

    思わずたきなでさえ耳を塞ぐ。

    「お前か。ここは一般道に近いぞ、無差別乱射は止めろ」

    「ウォールナット! お前を殺して世界一のハッカーになってやるからな! 止めてほしければ降りてこい!」

    「ダメです! ウォールナット! 出ちゃだめです!」

     たきなは渾身の力を込めて叫ぶ。後部座席に沈み込み、ガラスが嵌っていたところから銃口を

    出して数発撃って、牽制、反撃を繰り返すがまったくもって効果がない。

    実際、空を撃つようなものだ。

     向こうからは自分たちが見えている、自分たちは向こうのことが分からないのは

    不利中の不利である。

     

  • 50二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 21:58:12

    >>49

    「ロボ太め……洒落で済まねえことしやがって」

     ウォールナットは忌々し気にハンドルを操作する。見当がついているようだ。

    「マシンガン積んだドローンだろな。上空過ぎてここからは見えない」

     その言葉に、たきなと千束は目を剥くしかない。

    「え、まるっきり兵器じゃん! どうする、ウォールナット」

    「……仕方ない。降りるよ」

    「ダメです! わたしが出しません!」

     たきなが吠える。

    「だめだよ! たきな! ウォールナットになんで銃を向けてんの!」

     千束に制される。

     その目、いつもの少し垂れるような目ではない。目尻が吊り上がり薄桃色の唇がきゅっと結ばれる。

     たきなが構えた銃身を千束は握って逸らす。

     スライドされないから、発射されることはない。

    「……ごめんなさい。我を失ってました」

     そう謝り、千束から解放される。

    「ロボ太、お前の指示に従う。ここは一般道だ。撃つな」

    「フフ、その意気だ。死に場所は与えてやるから安心しろ。こっちだって目立ちたくはないが……言うことを聞かなきゃ、わかってるよな?」

     おかしくて堪らないといった含み笑いが声に混ざりながら、勝ち誇って指示を下す。

  • 51二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 08:27:51

    保守

  • 52二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 19:40:31

    >>50


    「こんなんじゃ機械式の車を選んだのも無駄だったか」

     ウォールナットは少し残念そうな声で言う。ため息がザザッとノイズを立てる。

    「小賢しい真似だったが世界一のハッカーである僕にはこんなの簡単な問題だったさ、おっとその信号は右だぞ」

    「そりゃあすごいね」

     言うことを聞けば乱射しないとの約束で「遠隔操作」を受ける。

     どうあがいても逃げられないようにという考えか、徐々に人気の少ない場所に車は進められていく。

     千束とたきなは車内でどうしようもなく、座っていることしかできない。

    「どうする? たきな」

    「……正直打つ手はありません」

     マイクに拾われないように小声で話す。

     たきなはこの間にも必死で頭を回転させ、この状況の打開を図る。

     敵は銃を積んだドローンを上空で飛行させ、この車を狙っている。

     もし、この車が指示に従わない場合は、その辺にいる人たちを無差別に殺すというのが

    脅しの内容だ。


     たきなからすれば、DAが避けるべき秘密の暴露に該当してしまうし、

    ウォールナットは、あれでも心優しいようで、一旦は降りるとまで言った。

    そして千束は。

  • 53二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 19:41:00

    >>52

    「無関係な人を人質にするやつとか……マジで最低だな……」

    「そうですね、早く殺さないと」

     と、たきなは弾丸を数える。バッグに予備用でいつもより多めに入れておいたことが幸いした。

    ――しかし、流石にあの連射にはと想定を組み立てている中で、千束は言う。

    「殺すまではいい。あの、後ろから撃ってきた奴らはね。どうせこの胸糞悪いハッカーが脅してるんだろうし」

    「……自分も命狙われてるのによくそんなこと言えますよね」

     高出力の弾丸を向けられて、一歩間違えれば死んでいるのに、よくそんなことが言える。

    やはり一般人はバカだな、甘ちゃんだなとたきなは吐き捨てる。

    「……ごめんねたきな、これがたきなの仕事なのに簡単に否定しちゃって」

     千束は引き下がって、謝罪する。

     そうされるとは思っていなかったたきなは、スライドを戻し千束を見る。

    「千束さ――」

    「ロボ太、給油ぐらいはさせてくれるんだろうな。バカスカ燃料食うんだこれは」

     ウォールナットの交渉。

     ロボ太、と呼ばれた声はわざとらしく舌打ちすると、「いいだろうさっさと済ませろよ。変なことしたら全員皆殺しだからな」と尊大そうに言い放った

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