- 1二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:11:19
- 2二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:22:31
「トレーナーさん......。」
今、私はトレーナーさんに抱き枕にされている。いやいやおかしいでしょ、せいちゃんが可愛いのもわかるし、抱き枕にするとあったかいもんね。でも抱くのは違くないですか。おかしいですよせいちゃん恥ずかしくて壊れちゃいます。
そもそもこうなったのは昨日の夜トレーナーさんと次のレースの作戦会議をしてて、それで二人とも眠くなっちゃって仮眠布団で寝たんだよね。そのとき確かに私は寒いから
「トレーナーさん抱き枕になってくださいよー。」
って言いました。はい、認めましょう。でもおかしいですよ、なんで起きたときせいちゃんが抱きつかれてるの。なんでトレーナーさんはぐっすり寝てるの。
「ゲシゲシ」
なんで一切反応ないんですか。起きてくださいよトレーナーさん。抱き枕にされるのその
「恥ずかしいんですけど......。」
顔赤くなってんなこれ。恥ずかしすぎるんですけど、せいちゃんこんな顔真っ赤にされてお嫁に行けないですよー責任とってくださいよトレーナーさん。
「ん。」
起きたよ、さっさと離れてくださいよ。
「あれ、スカイ?」
気づくの遅いよー。
「早く離れてくださいよートレーナーさーん。」
トレーナーさんは気づいたのかすぐに抱きつくのを止める。
「ごめんな、スカイ。」
「いいですよー」
この赤面は見せられないので部屋を出ようとする。
「えーと、スカイ。なんかあったのか?」
「しーりーまーせーん」
「何かあったなら説明して欲しいんだが、なんかあったら責任取んなきゃいけないし。」
顔が完全に赤に染まったことを確認した。寝ぼけた体で部屋を出て、全力で逃げ出した。
こんなんでいい? - 3二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:23:47
はやい…
- 4二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:23:58
11分で書くとは……
- 5二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:31:01
- 6二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:33:25
コタツにみかん。ストーブの上のヤカン。冬のレトロなイメージそのままの居間で、私は機会をうかがっていた。
すうすうと、顔に似合わない寝息を立てる人がいる。府中から新幹線でここまでやってきたその日に雪かきを手伝わされ、また親戚一同からの質問責めを受けていた。疲れ果てるのもやむなし、と言ったところか。
「……寝てるなぁ」
頬杖をついて寝顔を見守る。いつもと構図が逆だなぁと思った。
冬休み、暇なら実家まで来て欲しい。とうとうセイちゃんへの愛が爆発したのかコイツと疑いそうになったが、トレーナーさんの言っていることに裏などなかった。そういう人だ。契約前だって、バレンタインだって、シニア期のあの浜辺でだって。
「……起きないなぁ」
ご両親は酒臭い息と共に場所を移した。実家にはストーブの唸るような音と、私たちの息遣いしか残っていない。
しんしんと雪が降り積もる、とかよく聞くけどあれは嘘だ。めっちゃ静か。鼓動の高まりをごまかせないほどに。
「頑張ってください、じゃないよもう……」
キングのありがたいお小言とフラワーの純粋無垢な応援とが脳裏を過ぎる。そういうのをお節介だとか有難迷惑と呼ぶって教えてあげたのに、あろうことか更にお小言を重ねる始末。私が逃げないと踏んで、わざわざフラワーを呼んできた王様の狡猾さが憎い。 - 7二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:33:53
「……」
とはいえ。彼女らに見くびられたままなのも癪だ。帰ってエル辺りにヘタレ呼ばわりされるとなると、聖母のごときセイちゃんも怒り心頭に発して怒髪天を衝くだろう。
「起きない、トレーナーさんが悪いんだよー……?」
私はコタツムリとなり、そのまま頭を出す位置を変える。
「……ぁう」
まず感じたのは鼻先に触れる呼吸だった。すこしかさついた唇の間から呼気が漏れる。否応なく背筋に緊張を走らせる。
思ったより眉が整っているとか、鼻筋がキレイだとか、少し目じりはだらしないとか、ちょっと太ったなとか、いろいろな情報で頭のなかがこんがらがった。起こしたらいけない。大変なことになる。私は乱れそうになる息を頑張って抑える。
「……ん? あ? ……ねっむ、さっむ……」
そして、それが裏目に出た。
伸びてきた腕が私の身体を、なんと、がっちりとホールドしてしまった。少し遠くから嗅いでいた匂いがダイレクトに鼻腔を満たす。
「ちょ、ちょ、トレーナーさ、離して……」
「ぁあ……? うー、まだ眠いよ母さん……」
なしに礫だった。私は身じろぎを繰り返すも、抱き枕に遠慮する者はそういまい。大人の腕の感触は味わったことのないもので、血流が煮えたように熱かった。
本気で抗えば抜け出せたと気が付いたのは、トレーナーさんの両親が戻ってきてからだった。 - 8二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 00:05:39
「…えーと、トレーナーさん?あの…どうですか?その…セイちゃんの…だ、だきごこちは…」
「…ふーん。あ、そうですかそうですか。まあ、セイちゃんはどっちでもいいんですけどね。トレーナーさんがいいならよかったんじゃないですか」
「…え?いや、だって本当にやるって言い出すなんて思いませんよ…」
「え、エルとエルのトレーナーさんは毎日やってるらしいですけど…まあ…あそこはその…ラブラブですから…」ゴニョゴニョ
「…へっ?こっち向けって?い、いやいや、今はダメですって」
「…それはそのー…せ、セイちゃんの可愛いお顔が近すぎると、トレーナーさんには刺激が強すぎますからね」
「いいからって…わっ!」
「ち、近っ…あ、ああああの…ちちち近くないですかトレーナーさん…?」
「…………か、顔赤い?そ、そんなことな―――か、可愛い?ま、またまたー…」
「そ、そそそんなこと言ってあの、せ、セイちゃんとちゅーでもできるとおおおお思ってるんじゃないですか?」
「…………」
「な、なななんでもないですやっぱ今のナシ!ナシ!」
「…………意気地無し。私は別に…その…トレーナーさんと…」
「…へっ!?い、いやいや、な、何も言ってないですって!」 - 9二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 00:57:12
なんでそこまで行ってあと一押しできないんだ!
- 10二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 02:13:11
真っ白な息を吐き出しながら、廊下をパタパタ小走り。視界に映る夜の中では、深々と降り出した雪が少しずつ庭を白く染め始めていた。
道理で寒いわけだ、と思いながら、障子を開ける。暖かい空気と灯りに出迎えられた安心感から思わずほう、と息をついた。
「ただいまでーす。いやあ、ついに降ってきましたよ。こりゃ明日は雪かきですかね」
お馴染みのテンポで話しかけてみたが、返事を期待した相手は何も言わなかった。不思議に思って様子を伺うと、先程まで炬燵の上に置かれたみかんに舌鼓を打っていたその人は、炬燵を掛け布団にして寝息を立てていた。思わずため息を一つ。
「ちょっとトレーナーさーん? 私には風邪引くからやめろって言うくせに、随分自分に甘くありません?」
口を尖らせ苦言を呈してみたが、起きる気配は無い。まったくもう、と続けてみたが、どちらかと言えば安堵の想いの方が大きかった。彼はつい先日まで、有馬記念の大舞台に挑む自身の為に色々と苦心していたのだ。優勝レイを手土産にその重圧を乗り越え年の瀬を迎えたのだから、気の一つ二つ緩んでも別に不思議ではない。
むしろ、もっと緩んでも良いくらいだと、セイウンスカイは思っていた。学園では寝ても覚めてもトレーニングとレースの事、つまりは、スカイの事をずっと考えているのだから。なので、彼がスカイの帰省にお供してスカイの祖父に挨拶に行く話が纏まったと聞いた時には鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。しかも話の起こりはスカイの祖父からだと言うから、スカイは頭を抱えた。想像した通り、丁寧にお土産まで持ってきて畏まった挨拶をするトレーナーの姿に、これじゃ気が休まらないと内心不安に思うところもあったのだ。
それが杞憂で済んで、本当に良かったと思う。むしろ、こんなにも穏やかに眠る姿を見ていると、スカイの頬も緩んだ。スカイの故郷を、まるで自分の故郷のように思ってくれたのだろうか? もしそう思ってくれたのだとしたら、こんなに嬉しい事は無い。
「……こうして見ると、トレーナーさんの寝顔もなかなか可愛いじゃないですか」
思わずイタズラ心が動く。緩んだ口元のまま、自身の定位置には戻らずトレーナーが寝息を立てる側に移動する。間近で寝顔を映して、後でからかってみようか、それとも────あれこれ考えながらスマホを取り出し、同じ側に潜り込んだ、その時だった。 - 11二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 02:15:33
「────」
「えっ?」
気の抜けた声がスカイの口から飛び出した時には、既にスカイは彼の両の腕で抱きしめられていた。一瞬、何が起きたか分からず目を白黒させていたが、すぐに自身が置かれた状況に気付く。青雲は、一気に夕焼け色に染まった。
「ちょ、ちょっとトレーナーさん」
慌てて身体を捩ったり声を掛けたりしてみたが、彼が起きる気配はない。それどころか、自身をしっかり抱き寄せ、片方の掌は軽くスカイの頭を撫で始めた。本当は起きているのかとも思ったが、残念ながらそうではないらしい。
「そ、そりゃあ確かに、撫で心地には自信ありますし、なんなら抱き心地だって……あ、近っ……」
彼の無意識の行動に、いつものからかい上手はドコへやら。スカイは混乱のままもう一度声を上げて見たが、熟睡している彼は起きる気配が無い。それどころか、間近で見る彼の寝顔をまじまじ見ていると、自身の顔の方がどんどん熱くなっていく。何分出会って以来、何よりも自身の事を考え共に3年を過ごして来た相手だ。スカイにも特別な感情が無いと言えば嘘になる。
ま、マズい。このままじゃ────
スカイの感情が爆発寸前に陥ったその時、不意に彼の口から声が漏れた。
「────スカイ」
その穏やかで優しい声色は、感情の昂ぶりで混乱したスカイの心の琴線にするりと触れて、スカイの心を一気に落ち着かせた。先程まで一緒に食べていたみかんの甘酸っぱい香りを感じて、スカイの口角が柔らかく上がる。
「まったく、もう」
安心しきったような寝顔を目の前に、スカイは優しく微笑むと、徐ろに彼を両の腕で抱き返した。いつだって側に居る、大切な人。いつか胸に秘めたこの想いを伝えたいと思っていた相手が、自身を抱きしめてこんなにも愛おしい表情を見せてくれる事が、嬉しくてたまらなかった。普段なら先行するハズの恥ずかしいという気持ちさえ置き去りにして、愛しさが溢れ出す。
「トレーナーさん……」
その先に続く言葉は唇の動きだけで伝えながら、スカイは彼の胸の中で静かに瞳を閉じると、暖かい想いに包まれながら夢の世界へ旅立つのだった。
その後、抱き合って寝ていた様子をスカイの祖父に激写され、翌朝その証拠写真を突き付けられた二人は全身から火が出る程恥ずかしい思いをしつつ交際を認められる事になるのだが、それはまた別の話である。 - 12二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 02:16:58
以上、便乗。幸せセイちゃんは健康に良い。古事記にも書かれている。
- 13二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 06:28:41
セイちゃんSSは身体に良いのでいくらあっても良いとされる
- 14二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 07:45:02
朝から健康になった
- 15二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 10:10:51
- 16二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 10:14:01
胃に優しいSS
セイちゃんは幸せになってほしい - 17二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 21:00:31
こういう一幕のあと、冬休み明けに二人に会ったら
トレーナーさん←→スカイ だったのが、
トレーナーさん←→セイちゃん
に変わってたりすると心の中のフラワーが絶好調になります - 18二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 21:03:53
結婚後の2人も見てみたい
- 19二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 23:18:53
あ、フラワー、やあやあおはよー。久しぶりー。元気にしてた?
…へー、そうなんだ。ゆっくりできてたみたいで良かったよー。
私?私は実家に戻ったり、あとはちょこちょこ出掛けてたくらいかなー。
自主練?してたしてた。してたって。セイちゃん真面目ですからー。
ん?
あーうん、そういえばフラワーには話してたっけ…。
〇〇さn…じゃなかった、トレーナーさんも、うん…まあ、そうだね。まあまあ。一緒に来たり…してたりしてなかったり。
え?い、いやいや、今のは気にしないでって!
別になんにも無いから!なんにも!
…あ、トレーナーさん。おーい。
ちょうど今フラワーと休みの間の話を…。
ってあああ!?
す、スカイでいいんですよ「スカイ」で!い、いつも通りに呼んで下さいって!
ちょっ…フラワー!?
な、なにニヤニヤしてんの!なんにも無いから!なんにも!
はあ…ん、じゃあまた後でねーフラワー。
あーもうトレーナーさんってば…調子狂うなあ。
…え?いやいや、トレセン学園ではスカイでいいんですスカイで。
2人っきりの時はって…あ、あれは…………………2人っきりの時だけですよ。
- 20二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 23:22:21
本当の2人きりになると敬語も取れるセイちゃんだったり
- 21二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 23:28:48
- 22二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 00:17:20
「トレーナーさーん、今日はトレーニングをお休みにして、ちょっと釣りにでも……おや?」
ガチャリと扉を開けてトレーナー室に入ると、いつものデスクにトレーナーさんはいない。
ふと視線を落とすと、ソファの上で横になっているトレーナーさんがいた。
ブランケットを被ってはいるが寒いのか、その顔はしかめっ面だ。
「あれれ、トレーナーさん。セイちゃんを置いて一足先にサボってるんですか?抜け駆けはいけませんね~。」
起こさないように小声でトレーナーさんを煽ってみる。
当然反応はない。
ソファ前のテーブルにはエナジードリンクと待機中になったポータブルPC。
ほんの少しの休憩のつもりが、寝入ってしまったのだろう。
「全く、トレーナーさんはセイちゃんのこととなると一生懸命なんですから。ふふ。」
無理はしないでほしいけど、私のために無理をしてくれるトレーナーさんにちょっと心が暖かくなる。
ウマ娘とそれを鍛えるトレーナー。
人バ一体と言うように、そのどちらが体調を崩してもレースで最高のポテンシャルを魅せることは出来ない。
トレーナーさんには元気でいてほしいものだが――― - 23二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 00:17:52
ふと、今朝のニュースを思い出す。
会社員が過労で亡くなった、という暗いニュース。
体調を崩すどころではなく、疲れが致命的な病になりうるということ。
ヒトよりも比較的丈夫なウマ娘だって、疲労が生命を脅かすことだってあるのだ。
―――トレーナーさん、生きてるよね?
ブランケットのせいで胸の上下はよく見えない。
かと言って、それを剥ぎ取ってお疲れのトレーナーさんに寒い思いはさせたくない。
ならば。
「ちょっと失礼しますね~……?」
耳を胸に当てれば、ブランケット越しにも心音が聞こえるはず。
そう思ってトレーナーさんの近くに寄ってみる。
起こさないように、バレないように慎重に。
そっと、ぴとっと耳を当てる。 - 24二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 00:18:05
トクン、トクン。
トレーナーさんの鼓動が聞こえる。
良かった、ちゃんと生きてる。
安心を覚えると同時に、こんな事をしている自分のことを顧みる。
客観的に見て、かなり恥ずかしい。
何をやっているのか。
なんというか、とても子供っぽい。
「ま、まあ生存確認は出来たことですし、にゃはは。」
そうひとりごちて離れようとした時。
「!?」
トレーナーさんの腕が伸び、体ごと抱え込まれた。 - 25二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 00:18:30
「む~……。」
「ト……!?」
トレーナーさんが近い。
温かい、熱い。
様々な感情が頭の中を駆け巡り、言葉が出ない。
ウマ娘の体温はヒトのそれよりも高く、トレーナーさんも温かいと感じてくれているんだろうか。
彼の眉間からシワが取れた。
それを見て、少し愛くるしいような感情まで芽生え始めた自分に混乱が深まる。
私の体温を逃がさないように足が絡まる。
「!!?」
体中をすごい勢いで血が巡っているみたい。
汗が出てきた。
臭わないかな、なんて気にするのと同時に離れようとは微塵も思っていない自分に気づく。
きょ、今日は釣りじゃなくてこのままのんびり過ごすのも悪くは――― - 26二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 00:18:46
「スカイさんのトレーナー、いる?たづなさんが次のレースの会見について打ち合わせを……あっ。」
キングと目が合う。
もう、何も言えない。
「……等身大のスカイさんの抱き枕だなんて、彼女のトレーナーね。ある意味、一流ね。ええ。おーっほっほ……。」
静かに扉を閉める友達に感謝をしながら口止め料について考えつつ。
とりあえず、もう少しだけ体温を味わうことにした。 - 27二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 00:20:05
あらぁ…あらぁ…。
- 28>>2222/10/17(月) 00:43:08
- 291/222/10/17(月) 00:59:03
首に回された腕。衣類越しのぬくもり。心地よい圧迫。規則正しく肩にかかる寝息。
おおきな男のひとに抱きつかれているセイちゃん。その至近距離の質感を、心地よいと思っている『私』。
「うわぁお……」
寝ているそのひとを起こさないように、小声で息をつく。
起きたらいっしょに寝ていてこうなっていた。驚きはしたけれど、それはおーけー。
別に酔いから覚めての修羅場というわけではないしそのへんの記憶は瞬時に掘り起こせた。
冷えるからといってかけぶとんをバサッとふたり並んでくるまる、いたずらのようなやりとり。
ニヤリと、セイちゃんはあなたをわざと困らせて。
そしてあなたが、つよくセイちゃんを拒むなんてことをするわけがなくて。
私の身体を容易く覆ってしまえるおとこのひとっておおきいんだなあ、なんて。そんなことを思いながら、抱かれる重みに身を任せる。
寝ているこのひとを起こしたくないなんて言うのは建前だ。触れあうぬくもりが、重みが、とてもここちよいものだから。
私が、このあたたかいハグから出て行きたくないから、じっとしていたいと思ってしまう。
それは恋のどきどきではなくて。えっちな照れでもなくて。
抱きすくめられていることをただただ許す私の安らぎが、このおふとんのなかにあるだけ。 - 302/222/10/17(月) 00:59:18
おふとんの外の空気は冷たい。ほんのちょっと身じろぎして、かけぶとんが動けば冷えた部屋の空気がこちらに動いてくる。
おふとんのなかのあなたの存在はぬくぬく。ほんのちょっと身じろぎをすると、無意識であなたもちょっと反応するものだから、これ以上は動けないなと、セイちゃんのさすがの配慮が光る。
でも、『私』はこのあたたかさを逃したくはないと思っているかもしれないけれど、
『セイちゃん』ははやく、目を覚ましておどろくあなたの顔も見たいとも思ってる。
あなたをどうにでもできる心理的なマウンティング。そんな状況に、ふんす、と私の唇が笑みを形づくる。
あたたかな心地よさに、ニヤニヤしているのか。
起きたあなたをからかう未来に、ニヤニヤしているのか。
そんなほほえみのひとときを、きっと私はしあわせと感じているだろうか。
あなたがそばにいることを、しあわせと感じているのだろうか。
この疑問を、あなたに応えてほしいと思うように、私は少しだけ、あなたに重みを預ける。
このしあわせが、あなたに伝わってしまうのはどうもなあ、と、そっと目を閉じた。
まあ、いいか。
セイちゃんのひとりだけの眠りの世界に、いまはまあ、あなたが居てもいいと、私は願っている。 - 31二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 01:09:05
めちゃくちゃ好き
なんか大人な空気があってドキドキする - 32二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 01:47:53
- 33二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 08:40:54
わかる…なんかそういうハグ好き…
- 34二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 10:22:20
セイトレSSはセイちゃんの脳に効くと論文で証明されている
- 351722/10/17(月) 11:36:03
- 36二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 12:56:43
書き上げるのが速い上に質も量も凄い…
貴方が神か… - 37二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 17:06:48
ひとつのお題に複数の書き手が群がるスレなんてすばらしすぎる
- 38二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 19:12:38
それぞれの味付けがあってめちゃくちゃ贅沢
- 39二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 19:27:30
流しのSS書きまん民多くない…?
ありがたいスレだ - 40二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 01:51:08
マジでありがたいスレ
- 41二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 09:44:17
愛されセイちゃんは栄養価抜群で助かる
- 42二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 12:41:05
今朝も元気になった
- 43二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 21:55:56
同じシチュエーション、同じ登場人物でこれだけ異なる文章が見られるのは面白い
- 441/422/10/19(水) 00:43:34
「おー…今日もやってるやってる」
遠くの方でエルコンドルパサーとトレーナーが勢いよく抱き合う姿が見える。
あの二人は毎日、トレーニングの前と後にはハグをしないといけない。
エルが決めたらしい。
「相変わらず仲が良いね」
「そうですねー。あのウマ娘にしてあのトレーナーありと言いますか」
「まあ、エルコンドルパサーってあったかそうだしね」
笑いながらそう口にするトレーナーさん。
それを聞いて私はふと思いついたことを口にする。
「そういえばトレーナーさんは知ってます?ウマ娘って普通の人より体温が高いらしいですよー」
「ああ…なんとなく聞いたことがある気がするけど…」
やたらと勉強熱心なこの人が、ウマ娘のことで自信が無さそうなことを言うのは珍しい。
話している中でさらにもう一つ思いつく。
今日もまた少しからかってやろう。
また一つ、私だけが知っているこの人の顔を増やしてやろう。
「じゃ、どうですー?トレーナーさんもセイちゃんとハグしてみます?」
さあ来い、とこちらから手を広げてみせる。
「えっ…」
「今ならお安くしておきますよー」 - 452/422/10/19(水) 00:43:49
少し驚いた顔をする彼。
そうだ、と思いさらに言葉を畳み掛ける。
困ったように笑ういつもの顔を見てから、今日のトレーニングに臨むとしよう。
「そうそう、どうせならお昼寝する時にセイちゃんを抱き枕にしてみては?きっといつもより疲れが取れますよー」
しかし、想定内だったのはそこまでで、返ってきた言葉は私の予想とは異なっていた。
「…確かにそうだね、試しにやってみようか」
「え゛」
想像していなかった答えが返ってきて、私は一瞬硬直する。
「ウマ娘のことを良く知っておく必要もあるし…こんなことスカイ以外に頼めないしね」
トレーナーさんは私の考えに反して乗り気だった。
興味津々と言った表情で目を輝かせている。
かといってこの人にやましい考えがある訳はない。
それは私がよく知っている。
「じゃあ今日のトレーニングが終わった後にでも仮眠室で試そうか。スカイも疲れが取れるだろうしちょうどいい」
「え゛…え゛…」 - 463/422/10/19(水) 00:44:12
「えーと…トレーナーさん、本当にやるんです?」
今日のメニューを全てこなした後、私とトレーナーさんは仮眠室に来ていた。
トレーニング後に部屋ではなくわざわざ仮眠室に来るような子は少なく、他のウマ娘は見当たらない。
トレーナーさんはベッドの一つに腰掛けると、ポンポンと隣を叩いて私に声を掛ける。
「ほら、おいでスカイ」
いつもと同じ優しい声で私に呼びかける。
トレーナーさんは今どんな気持ちなのだろう。
全く動揺していないのだろうか?
私は…。
「…はい、はい、わかりましたよっと」
平静を装いながらトレーナーさんから少し空けて隣に座る。
「じゃ、横になろうか」
(…なーんでこんなことになっちゃったんですかね?)
トレーナーさんが先に横になり、私も続いて横に並んで寝転ぶ。
向かい合って見つめ合う。
いつも見ている目のはずなのに、今日はなんだか緊張する。
(なんだろ…なんか変な感じ)
いつも呼ばれている声のはずなのに、ドキリとしてしまう。 - 474/422/10/19(水) 00:44:58
「スカイ」
トレーナーさんが両手を広げて伸ばす。私にそこに入ってこい、というのだろう。
「…ん、はいはい」
のそのそと少しずつ近づく。トレーナーさんの手が、顔が、近づいてくる。
(シャワー浴びたけど、変な匂いしないかな…)
(って、何考えてるんだか)
(トレーナーさんの手…意外とおっきいな)
(ぎゅってされたら…どうなるのかな)
(…よく知らないって感じだったし…担当ウマ娘にこういうことするのは、私が初めてかな…)
トレーナーさんの手が私の背中に回され、力が入ろうとしたその時。
「―――や、やっぱやーめたっと!」
なんだか堪えられなくなり、私はバッと起き上がる。
「す、スカイ?」
「せ、セイちゃん用事思い出しちゃったのでー…それじゃそゆことで!」
ベッドから飛び降り、急ぎ足で仮眠室を飛び出る。
「…はー」
胸に手を当ててみると、全力で走った訳でもないのにバクバクと心臓は高鳴っていた。
「…いやいや…あれ…?セイちゃん、そんなチョロくない…よね…?」 - 485/422/10/19(水) 00:45:54
まだスレ残ってたから書いた
みんなも書いてSS書きまん民になろう
他のお題を書き残しても誰か拾ってくれるかも - 49二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 00:48:32
ありがとうございます(感謝)
寝る前に見れて疲れ取れた - 50二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 07:20:23
これで今日の仕事も乗り切れるわ
- 51二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 12:27:55
お題投下したくなる…
- 52二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 12:53:52
良いんじゃないかな
誰かしら拾ってくれそう - 53二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 17:25:07
- 54二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 23:54:08
さて、どうしよう、とフラワーは困った顔で目の前の状況に向き合った。
併走の約束をしていると言うキングの為にスカイを探しに来たまでは良かった。スカイお気に入りのお昼寝ポイントは概ね把握していたが、時折雪もちらつく学園において、スカイが横になる場所は一つしか思い浮かばない。
ノックしても返事が無かったので、きっと本人不在のトレーナー室で寝ているのだろうと思い扉を開けると、確かにスカイは自身のトレーナー室のソファで横になっていた。スカイのトレーナーに抱き枕にされながら、であるが。
キングとの約束を忘れているなら、めっ!と咎めるつもりであったが、その決意はあっという間に吹き飛んでしまった。頬が熱を持ち、胸のドキドキが一気に加速していくのが分かった。
(スカイさん、とっても嬉しそう……)
トレーナーの両の腕に抱かれて眠るスカイの寝顔は、傾き始めた陽の光を浴びて、それは美しく微笑んでいた。
結局フラワーは、幸せそうに眠るスカイとスカイを両手で抱きしめるトレーナーを起こす事が出来なかったので、「仮眠中」という張り紙をドアに貼り、トレーナー室を後にしたのであった。
「分かったわ。ありがとう、フラワーさん」
「あ、ハイ……お役に立てず、ごめんなさい」
まったく、もう、とため息をついたキングの表情を見ていると、多少の罪悪感が胸をちくちく刺した。とは言え、あの時のスカイを起こす勇気は、フラワーにはまだ無かったのだ。表情に出ていたのか、キングがそっとフラワーの肩に手を置いた。
「良いのよ、貴方が謝る事じゃないわ。後でスカイさんにはキッチリお灸を据えておくから」
「その時はご一緒させて頂きますね~」
一向に現れないスカイに代わって併走相手となったグラスは笑みを浮かべていたが、目は全く笑っていない。言い知れない迫力を感じたフラワーは、目を覚まして慌ててやって来るであろうスカイを全力でフォローしようと心に決めるのだった。 - 55二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 23:54:45
「……それにしても仲が良いわよね、スカイさんとトレーナーさんって。今頃どこかで二人揃って横になってるのかしら?」
「えっ!?なんで分かったんですか!?」
言ってから、あっ、と慌てて口を両手で塞いだが、キングはあたふたしだしたフラワーに笑顔で応え、改めてスカイを探してくれた事への感謝を述べると、グラスとその場を後にした。
結局自身がフォローされてしまったが、常日頃からスカイがライバルだと言う人達の理解度と大人の対応を目の当たりにしたフラワーは、憧れのお姉さん像の一つに、しばし目を輝かせるのだった。
以上、思い付いたからちょっと変則的なタイプを。拙者知り合いに見つかってバレるのもお好きでござる。 - 56二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 01:07:54
とてもいい…。
- 57二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 10:03:12
これは気付いた時には知れ渡っててセイちゃんがうにゃるヤツだ……
- 58二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 10:58:30
- 59二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 21:44:07
いいSS沢山ありがとうございます、元気出る
- 60二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 00:30:22
「―――さん、起きてくださーい…」
「…ん……」
「―――トレーナーさん、朝ですよー…」
「…ん…んん……」
「…おやおや?意外とお寝坊さんなんですね」
「………ぅ…」
「あはは…トレーナーさんのそんな顔は珍しいですね。これは他の子には見せられないなぁ」ボソッ
「………スカイ…」
「はい、セイちゃんですよー」ポンポン
「…………え…スカイ?なんで―――」
「おはようございます、トレーナーさん」ニコ
「…あ…お、おはよう…」
「はい、じゃあ起きた起きた」グイ
「わっ…とっと…わかった、わかった―――って、スカイ、どうやってここに…?」
- 61二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 00:30:36
「ちっちっ…セイちゃんを舐めちゃいけませんよ」
「…答えになってないけど…まあ良いか。それで今日は?オフだったはずだけど…」
「それはですねー…ほら、アレですアレ」チョイチョイ
「あれはスカイの…たしか、タックルバッグ………………釣り?」
「せいかい~」
「そうか…そういえば今度一緒に行こうって話してたっけ…」
「あ、思い出しました?」
「ああ…にしてもなんで今日―――」
「思い立ったが吉日なんですよ、こういうのは…っていうんじゃダメですかね?」
「………わかった、すぐ準備するよ」
「おお!さっすが私のトレーナーさん!そう言ってくれると思ってましたよー」
「けど…まだ薄暗いじゃないか。早すぎないか?」
「まあまあ、釣りは早起きしてやった方が気持ちいいんですって」
「そういうものなのか」 - 62二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 00:30:53
「…それにせっかく一日中一緒なんですから―――」
「ん?」
「あっ…いえいえ、なんでもないです。それより早く早く」
「…あ、じゃあ朝ごはんを―――」
「それなら私が用意しておきましたからねー」
「え」
「ふふーん」
「…スカイが?」
「はい、大事な大事なトレーナーさんのために愛情込めてーってやつですよ」ニヤ
「…………」
「…なんですかその目は」
「…ありがとな、スカイ」ポンポン
「…う……はい…意外に素直か…///」
「じゃ、さっさと朝ごはん食べて出掛けようか。連れて行ってくれるんだろ?スカイのとっておきの場所にさ」
「! はい、行きましょトレーナーさん……えへへっ」 - 63二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 02:59:51
ありがとうございますありがとうございます
好きです本当に - 64二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 12:03:48
いいSS…ぜひ見てほしい
- 65二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 20:23:41
割とマジで神スレだから残ってほしいし広まってほしい
- 66二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 04:19:48
わかるの上げ
- 67二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 13:49:50
みんなセイちゃんで健康になろう
- 68二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 23:36:44
「スカイ」
「……んん」
波の音を子守歌にして瞳を閉じていたスカイの意識が、潮の香りに混じって鼻をくすぐる炊きたてご飯の香りに誘われてゆっくりと目を覚ました。
「朝ご飯出来たよ、顔を洗っておいで」
「ふぁ~い……」
レースやトレーニングで大忙しの日々からちょっとだけ逃げを打ち、早朝から海に繰り出したスカイとトレーナー。釣果は上々だ。一仕事終えた太公望は寝袋に収まり、後は調理担当にお任せ。
海岸から歩いてすぐのキャンプ場は、朝釣りの成果を朝食にするにはもってこいの場所だ。冷たい水でさっぱりしたスカイが戻ってくると、炊きたてのご飯とそれを彩る料理の数々が湯気を立てて待っていた。
「さあ、暖かい内に召し上がれ」
「は~い♪ にしてもトレーナーさん、またアウトドアスキルがレベルアップしましたね」
「誰かさんのおかげでな。おかげで休日の趣味が増えたよ」
そう言って、彼はあどけない少年のように笑った。元々彼にその手の趣味は無かったが、スカイと釣りに行ったのをきっかけに、今ではトレーナー室にアウトドア用品のカタログを置いておくまでになっていたのだ。
スカイも釣られて笑みを浮かべ、満足げに頷いた。
「釣りにキャンプに、色々連れて行った甲斐がありましたねぇ。こうして美味しい料理にありつけるのも、日頃の頑張りのおかげですかね? にゃは♪」
おどけたように笑いながら食べた一口目は猫舌のスカイにはまだ熱かったようで、口をほふほふと閉じたり開けたりしている。そんなスカイを見ながら、彼も席に着いた。
「勿論だよ。スカイが頑張ってくれるからには、俺もそれにしっかり応えたいと思ってるから」
こういう時、スカイがおどけていてもそうでなくても、彼は決まって真っ直ぐにスカイを見てそう答えるのだ。
そんな彼の想いが嬉しくて、スカイは時折こうしてトレーナーにお決まりの調子を振っていた。そうして帰ってくる彼の答えに頬を赤らめ、耳と尻尾は感情に呼応して揺れていた。
- 69二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 23:39:57
朝食が済んだら、後片付けをして撤収するのみだ。使い終わった道具やゴミを荷台に詰め込んで、運転席に座る。助手席のスカイは満足げにお腹を撫でては緩い笑みを浮かべていた。思わず彼の口角が上がる。
「それじゃ、行こうか」 「この後は渓流ですか?」
「残念、府中はトレセン学園だ」 「ありゃりゃ、休暇はもうおしまいですかぁ」
参ったなぁ、とばかりに両手を広げるスカイだったが、表情は緩い笑みを浮かべたままだ。エンジンを掛け、アクセルを踏むと同時に、スカイは助手席の背を倒し、目元にハンカチを被せて朝陽を遮った。
「……ねえ、トレーナーさん」
「ん? どうした?」
不意をついて出たスカイの声がそれまでの調子より少し真剣味を帯びていたので、彼もスカイの声にしっかり応える。それからワンテンポ置いて、スカイはゆっくりと口を動かした。
「……今度は、お泊まりでキャンプ、なんてどうです? 渓流釣りとか、ハイキングとか。ちょっと遠出ですけど、良さげな所、知ってるんですよ。もちろん、トレーナーさんが良ければ、ですけど……」
その言葉に、彼はふ、と笑みを浮かべる。
「もう次のお出かけの相談か? 気が早いな」
「……それもやる気につながったり、するんですけど」
背を倒して横になっているスカイの表情は、運転している彼から見えなかった。彼はそうだなぁ、と一歩間を置くと、うん、と頷いた。
「じゃあ、それまでにテントの張り方を覚えないとな」
「……!」
彼の視界の外で、耳をピンと立てたスカイの、目元をハンカチで覆った表情が綻んだ。
「その時は、サボらずちゃんと手伝ってくれよ? 勿論、トレーニングもな」
「……はーい。えへへ……♪」
次のお出かけに向けて、トレーナーは楽しみが一つ増えたことに嬉しそうな笑みを浮かべ、スカイは彼と一緒に過ごす次の時間へ想いを馳せ、期待に胸を膨らませる。今はまだトレーナーと担当ウマ娘という関係の二人を乗せた車は朝陽と海風を浴びてシーサイドラインを駆けていくのだった。 - 70二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 23:42:15
「朝起こす」をテーマに書いてみた。行数の都合で2レス目の会話が詰まってるのは許して。
釣りから始まってアウトドア男子になったセイトレがセイちゃんと行くキャンプが趣味になってたりすると私性合。 - 71二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 00:24:09
良き…良き…ありがとうございますありがとうございます
- 72二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 00:47:25
- 73二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 09:08:24
- 74二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 18:29:47
「スカイさんって、本当にトレーナーさんと仲が良いわよね」
「……はい?」
トレーニング前のストレッチ中、突然そう声をかけてきたキングに、スカイは訝しげな表情で応えた。しかし、キングはそれに動じる様子も無く、淡々と続ける。
「言葉通りよ。何というか、息ぴったりって感じ。レースの事だけじゃなくて、プライベートでも随分仲が良さそうだから」
「急にどうしたの……あ! もしかして、自分の所は既に倦怠期が来てるからって嫉妬してるとか~?」
「……だから、言葉通りよ」
ニヤニヤと笑いながら顔を近づけるスカイ。普段なら、顔を赤くしてムキになって反論したりするキングだが、今日はやけに冷静だった。ポケットからスマホを取り出し、タップとスワイプを繰り返してスカイに画面を見せた。
「……はえ?」
「……あなた達がここまで進んでるとは思わなかったわ」
「え……へ、あ、えっ……?」
そこに映っていたのは、西日の差し込むトレーナー室でトレーナーの両腕に抱かれ、嬉しそうに眠るスカイの姿だった。あまつさえ、トレーナーはスカイのメンコをしていない方の耳にそっと口付けまでしている。先程までのからかいセイちゃんの表情は一気に崩れ去り、ターフをつんざくような悲鳴がトレセン学園に響き渡った。
- 75二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 18:33:38
「ちょっと、うるさいわよ」
「誰!? 誰の仕業!? なんでキングがこんなの持ってるの!?!?」
「……秘密」
「キングぅぅぅぅぅぅ!!!!」
突然悲鳴を上げ、騒ぎ出したスカイにターフは騒然となる。誰も見たことが無い狼狽っぷりに、周囲のウマ娘やトレーナー達も何事かと遠くから様子を伺っていた。
「スカイ? 何かあったのか?」
「随分騒がしいケド、貴方達今度は何したの?」
「!!!!!」
噂をすれば、とばかりにキングのトレーナーと共にスカイのトレーナーが現れた。ターフの異様な空気に、二人も怪訝な表情をみせる。しかし、それどころでは無いのがスカイだ。
「わぁぁぁぁぁぁ!!!」
「す、スカイ!?」
逃げウマ娘の本領発揮と言わんばかりに飛び出して行ったスカイを、トレーナーは呆然と見送る他無かった。
キングは、スカイとトレーナーくっつけちゃおう作戦の立案者達の顔を脳裏に思い浮かべた。
やめておいた方が良いと言ったのに、案の定二人を結びつけるには手段が手荒すぎた事、あの時力尽くでも止めた方が良かったと内心後悔しつつ、ため息一つ吐き出して自身のトレーナーに一言声をかけると、逃げ出したスカイを差し切って連れ戻して責任を取るべく、その場から駆けて行くのだった。 - 76二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 18:35:35
- 77二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 22:30:20
ありがとう…ありがとう…こういうのめっちゃ好き…
- 78二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 23:48:48
ここにいるとSS書きにもセイちゃん推し多そうだなって思う。
辻概念に辻SSかますのも居ればスレ立てしてくれるSS書きもいて頭が下がるぜ。 - 79二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 07:14:57
- 80二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 14:25:26
ねー聞いてる?
……あ、トレーナーさん寝てるじゃん。もー、話の途中じゃんかさぁ。
降りる駅、まだだいぶ先かぁ。……だったら。
…………肘掛け上げるぐらい、いいよね
よ、よし。
それにしてもそんなに忙しかったんだ。途中休み挟んだのに──あ、セイちゃんが釣りに引っ張り出したんだった。あっちゃー……
まあこんな時ぐらいはゆっくりさせてあげましょ。着いたらセイちゃんのモーニングコー……おおっと!?
た、倒れて来た……というかこれでも起きないとかどんだけぐっすりなのさ。
まったく、担当に寄りかかって寝るとは悪いトレーナーさんですねぇ。よいしょっと。
…………あ、あれ。
身体起こしたらこれ、私に支えられてるんじゃなくて私が肩を抱かれてる姿勢なんじゃ。
や、やば。どうしよ。起こす?無理無理無理!こんなセイウンスカイどころかユウヤケスカイな顔見せらんないって!
うん、このままにしておこう。ほら離れたらまた倒れて来そうですし?お疲れの人叩き起こしたりしたらかわいそうだし?たまにはこっちがしっかり支えてあげるのがデキる担当ウマ娘の優しさだし?はいオッケー決まり現状維持。
……………………にへ。 - 81二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 15:02:39
終点まで起こせずドキドキしながら揺られるか不意にトレーナーが起きるか、いずれにせよ美味しい展開が見えるな……
- 82二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 00:43:47
幸せそうに笑っちゃって
- 83二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 05:18:11
ザワザワ… ヒソヒソ…
なんだか今日は朝から視線を感じる。
というか、明らかに遠巻きで私のことを見て何かを話しているような子が何人もいる。
「…居心地悪いなー…なんかしたっけ?」
「スカイさん!」
「あ、おはようフラワー」
私のことを見つけたフラワーが駆け寄ってくる。
だけどどこか血相を感じた。
「お、おはようじゃないですよ!」
「どしたの?そんなに慌ててさ」
「だ、だって…」
フラワーが顔を寄せてきて小声になる。
周りに聞こえたくない話のようだ。
「き、昨日から騒ぎになってますよ!?」
「え?…あー…今朝からなんかやけにジロジロ見られてるなーって思ってたけど…」
この間トレーニングをサボっていた時のことが噂されているのだろうか。
それとも、キングに仕掛けた悪戯が発覚して今頃私を探し回っているのだろうか。
「…ほ、本当なんですか?あの…」
急に顔を真っ赤にするフラワー。
何か言いにくいことがあるのだろうか。 - 84二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 05:18:29
「んー?」
「…えっと…」
「なになに?大丈夫だって。なんでも言ってよー」
「……………その、スカイさんのトレーナーさんと………」
「…………………んん?」
トレーナーさんの名前が出てきて私の心がざわつく。
トレーナーさん?トレーナーさんが、どうしたの?
愛想付かされちゃった…とか?
(い、いやいや…そんなわけ…ないよね?)
そういえば最近は前よりトレーニングをサボろうとする回数も増えてた気がする。
でもそれはトレーナーさんがちゃんと私を捕まえてくれるって信じてるからであって…。
(…私が手間が掛かるから他の子のトレーナーに…とか)
そう考えると急に背筋が冷たくなる。
イヤだ。私のトレーナーさんが…。
「………えと…あぅ」
フラワーは顔を赤くしたまま結局口をつぐんでしまう。
ともかく聞かないことには始まらない。
「ふ、フラワー?とりあえず…言ってみよ?」
「え、えっと…」
おずおずとフラワーが口を開く。 - 85二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 05:18:42
「スカイさんと、スカイさんのトレーナーさんが……あの…」
「お付き合いされていて…………それで…ええと……」
「その…も、もう…あの……そういう…深い仲に…進んでる…ってウマッターの一部で…………」
「…………えっ?」
フラワーの口から出てきた言葉は私の想像から遥か斜めの方向にぶっ飛んでいるものだった。
「え!? は!? はぁあああああああ!?」
「す、スカイさん!?」
「なんだそりゃあああああ!なんか悪い方に深刻に考えてた私がバカみたいじゃないですかあああああ!」
「いや十分深刻ですけど!?なんか良からぬ噂が流れてますけど!?」
「はぁ…はぁ…」
「お、落ち着きましたかスカイさん…?」
「だ、誰!?誰がそんなこと言ってるの!?ていうか、ふ、深い名って…………はぁ!?」
「え、えと…その…鍵アカウントの一部で…えっと…」
フラワーが自分のスマホのウマッターの画面を見せてくる。
そこには―――そこには、トレーサーさんの部屋のソファで抱き合って眠る私とトレーナーさんの姿が。
しかも見ようによっては私がトレーナーさんの耳を咥えているような、キスしているような…そんな風にも見える。
「あっ…」
先ほどまでの寒気が消えた代わりに別のイヤな汗が出てくるのを感じる。
顔が異様に熱くなり、自分でも赤くなっていることがわかる。 - 86二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 05:18:57
昨日は珍しくトレーナーさんがソファで眠りこけているのを発見し、あんまり気持ちよさそうだから横でゆっくりしてしまった。
そして…なんだか良い気分になってしまって寄り添ってそのまま眠ってしまったのだ。
たぶん、それを誰かが見掛けてウマッターに…。
「ふっ…あっ…にゃっ……あぁああああああああああああああああああ!」
「す、スカイさん!?」
耐えきれなくなってスカイの手を引いて叫びながら走り出す。
「はーっ…はーっ…はーっ…」
「はぁ…はぁ…す、スカイさん…」
人の少ないところまで来たところで、少しだけ落ち着いて息を整える。
「はーっ…ご、ごめんねフラワー…ちょっと抑えきれなくなって…」
「い、いえ…」
「それで…あの…スカイさん、この噂って…」
「い、いやいやいやいや!無い無い!違うって!え、ええと…とにかく!ありえないから!」
「はぁ…そ、そうですよね…わかってはいたんですけど…」
「そ、そもそも…私とトレーナーさんはその…恋愛とかそういう関係じゃ―――」
「ああいえ、そこはもういいです」
急に落ち着きを取り戻してニコニコしているフラワーを不思議がっている私の後ろから声がする。
「ヘーイ、セイちゃん!今夜もトレーナーさんとメイクラブするんデスかー?」
「にゃあああああああああああああああああああああああああ!」 - 87二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 05:20:42
- 88二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 06:21:48
「あー、さむさむ……」
何でもない冬の日、普段どおりの昼下がり、日常になったトレーナー室への道のり。
はー、と息を吐きかけた両手をこすり合わせながら、私──セイウンスカイは廊下を歩いておりました。
「こんなに寒くてもトレーニングはしなくちゃなんて、我が事ながら中々難儀だよねぇ……っと」
いつもより気持ち足早に歩き、到着しますはトレーナー室。窓が薄っすら曇っているあたり、中は温かそうです。
「やーやー、あなたの愛するセイウンスカイですよー……なんちゃって……って、あれ?」
戸を開き、中へ。冗談を言いながら最初に感じたのは、冷えた体に染み入る温かさ。
次に覚えたのは困惑。いつもなら返ってくるはずの返事がありません。くるりと部屋を見渡してみれば……
「……トレーナーさーん……? 来ましたよー……? ……うーむ、寝ちゃってますね」
……ソファでスヤスヤお昼寝中の、トレーナーさんがそこにいました。
私愛用のブランケットを掛けて、読みかけだろう学術書を顔に伏せて。何とも心地よさそうに眠っています。
「まあ、最近どうにもお忙しそうでしたし。これも仕方ないってやつですかね」
とりあえずページにクセが付かないように本を取り上げ、少しズレたブランケットを掛けなお──
「……にゃはは」
──そうとして。セイちゃんはふと、魔が差してしまったのです。
思い出したのは、理事長と一緒にいるネコ。何故だかいつも帽子の上にいるあの子。
「にゃん、にゃん。にゃーん。セイウンスカイだにゃー……うーん、カチューシャでも用意しておくんだったかなー」
ネコはよく寝るから寝子(ねこ)という名になったのだという説がありますが、それを聞いたセイちゃんは羨ましく思いました。
「まあいっか。それじゃトレーナーさん……いやさ、ご主人。失礼しますよーっと」
ああ、もしも私がネコだったなら。呑気に好きなだけお昼寝できたのかな、なんて。
「よい、しょっと……重くないですかー? なーんて、聞こえてないですよね……よね?」
そんなセイちゃんが殊勝にもトレーニングするぞ、と意気込んでやって来たトレーナー室では、トレーナーさんがお昼寝中。
……これはもう、私もネコになってお昼寝しちゃうしかないですよね! 理事長のところの子よろしく、上に乗っかって! - 89二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 06:22:09
……とは、言え。流石にちょっと、いやだいぶ恥ずかしいので、トレーナーさんの寝顔を眺めたらすぐやめましょう。
まあ万が一起きちゃっても、多分すごく驚くだろうし……それはそれで、トリックスターの面目躍如ってことで。
「しかし、ウマ娘が乗ってるのに起きないなんて。相当疲れてるのかなぁ……あ、折角だから写真撮っちゃおう」
そーっとウマホを構え、至近距離からパシャリ。うんうん、いい表情をいただきました。
「ふふふっ、どうせならもう何枚か……」
と、別の角度から撮るべく私がもぞりと動いた瞬間でした。
「……って、うわっ!?」
同じくトレーナーさんまで、もぞり。結果……
「……どうしよう、これ」
セイちゃんはものの見事に、抱き枕にされてしまいました。
体重を掛けすぎないように、と少し体を浮かせていたさっきまでと違い、今度はぴったり密着中。
温かな部屋で寝ていたからか、少し高めの体温がダイレクトに伝わってきます。
「──あ、うぅ……」
体勢の都合で、私の耳にはトレーナーさんの寝息が直接かかって来て。
トレーナーさんの胸元に当てる形になった私の両手からは、鼓動が規則正しく響いてきて。
「……っ」
顔がたまらなく熱い。尻尾が揺れるのを抑えられない。早鐘を打つ心臓がうるさい。
けれど、私をそうしている当人は変わらず……どころか、心なしかせっきまでより安眠しているような。
──ああ、まったく。
──ずるいなあ、トレーナーさんは。
十数分後。目覚めたトレーナーさんは、セイちゃんの当初の目論見通りに、すっごく驚いてくれました。
……それまでずっと大変な思いをしたことに比べれば、何とも利が合わない悪戯になっちゃいましたけど。 - 90二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 06:24:38
以上、良いお題に便乗して一筆
口調とかかなり不安ですが、大目に見てくだされば幸いです
いいよね、抱き枕シチュ…… - 91二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 08:50:46
- 928322/10/25(火) 14:21:26
今見返したら誤字めっちゃあった。許してね。
みんなでセイちゃんを書こう。
1のお題とはズレちゃうけどスレが生きてたらいずれなんか書く。 - 93二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 19:17:49
甘い…甘々で暖かい気持ちになった
ありがとう - 947222/10/26(水) 04:09:52
──なんで私がこんな目に!!
そう心の叫びをあげたところで、目の前で気持ちよさそうに眠る人には届かない。
きっかけは、ほんとちょっとの悪戯心だったのだ。
冬の暖かなある日、トレーナー室で珍しいものを見つけた。なんと、トレーナーさんがソファーで居眠りをしていたのだ。
いつもは「サボりはダメだよ」と私を窘めるトレーナーさんが、なんと、ななんと!仕事をさぼって居眠りしているじゃありませんか!!
「そりゃあこんな日はお昼寝日和ですよねぇ」
などと言いつつ、良いものを見たとばかりに写真を数枚撮影し確保する。
ひとしきり撮影会を終えたものの、意外にトレーナーさんに起きる気配が見られない。
仕事は大丈夫なのか?なんて思ったりするけれど、よくよく考えればその大変な仕事は全部私のためにやってくれていることでもありまして……。
「しょうがないですねぇ。セイちゃんは天使のように清い心の持ち主なので、大目に見てあげますよ」
そう言って、ドアのカギをかけて、外出中の札をかけておく。
「これで邪魔されることもなくなりましたねぇ」
とはいえ何をするでもない。隣に座って、トレーナーさんの無防備な寝顔を堪能する。
こうしてみると意外と幼いかも、普段は大人って感じなんですけどねー。でも、唇や肌の荒れ具合が気になるかも。リップクリームとか持ってないのかな?
そうしてしばらく寝顔を眺めていたのだけれど、トレーナーさんはまだ起きる気配がない。
それにこの陽気。ぽかぽかと温かくって、セイちゃんもお昼寝したくなってきたぞ?
でも、いつもの定位置、お昼寝のためにちょっと大きめにしてもらったソファーはトレーナーさんが占拠中。
そんなトレーナーさんを見ていると、ふと、悪魔的発想が私の頭に降りてきたのだった。
「起きたとき、私が添い寝してたらトレーナーさん驚くんじゃない?あまつさえこんな美少女に添い寝されてたとか、もしかして意識しちゃうかも?」
普段の私なら絶対に考えないようなこと、仮に考えたとしても絶対にしないようなことを、なんで実行に移してしまったのか、後から考え直してもわからなかったが、とにかくこの時はとても名案だと思ったのだ。
「では、起こさないように、お邪魔しまーs・・・ぉぅわ!?」
トレーナーさんの横に滑り込もうとした私は、なんと、ななんと!トレーナーさんに抱きまくらにされてしまったのでした。 - 957222/10/26(水) 04:10:13
と、まぁ、ここまでが現状説明。
『それにしてもここまでやってまだ起きないとか、どれだけ疲れ溜まってるんですかねぇ。
はてさて、動いたら起こしちゃいそうだし、どうしたものか──よし!』
とにかく私は開き直って今の状況を楽しむことにしたのだ。
少女漫画に憧れる純粋な女の子…とはいかないけれど、この状況に憧れがないかというと嘘になる。
大切な人に包まれる幸福。爺ちゃんとも違うし、スぺちゃんやエルちゃんが抱き着いてくるのとも違う。
この幸せな気持ちは、きっと今しか味わえないだろうから。
頭を抱き寄せた胸元に意識を集中すると、トクン、トクン──と、トレーナーさんの鼓動が伝わってくる。
『あぁ、生きてるんだなぁ。』などと当たり前のことを思う。
当たり前の、でも、なんて素晴らしい奇跡。
改めて、トレーナーさんと出会えて、一緒にトゥインクルシリーズを走って来て思う。
私はなんと幸運なウマ娘だったのだろう、と。
黄金世代と人は言う。が、ライバルたちは、明らかにとびぬけた才能を持っていた。
それでも私はクラシック二冠の快挙を成し遂げ、爺ちゃんにもすごく喜んでもらえた。
……そう、快挙だったのだ。彼女たちを相手に私が勝利したのは。
勝利してなお、背後に迫りくるあの圧迫感。日常までも追い立てられるような焦燥感。
それでもなんとかかんとか走ってこれたのは、トレーナーさんがいたからだった。
私のことを信じてくれたトレーナーさん。私だけを見つめ続けてくれたトレーナーさん。
私が逃げたら探しに来てくれて、震えてるときは手を握ってくれて……。
私を支え続けてくれた。一緒に歩いてくれた。
そんな人だからこそ、私は、あなたのことを── - 967222/10/26(水) 04:10:32
「んぅん…」
「ぴっ!?」
思わず変な声が出た。危ない危ない。
……って今私何を考えてた!?もう!セイちゃんたら、いけない子!
慌てて思考に蓋をする。それを言葉にするのはまだ早いから。
もう少しの間だけ、大人しくしていてもらいたい。
はぁ、顔が熱い。熱を逃がそうにも完全に捕まっちゃってて逃がせないし、どうしたものか。
「スヵィ…」
トレーナーさんがもらした寝言に思わず耳がぴくりと反応する。
「……んにゃむにゃ……」
残念ながら、続く言葉はまともに発音されず意味は分からなかった。
でも、もしかしたら寝てても私のことを考えているのだろうか。
『……どこまで仕事熱心なんですかね。』
少し呆れて、でもとっても嬉しくて、思わずにやけてしまう。が、そんな気持ちでいたのは一瞬だった。
次の瞬間、寝ぼけたトレーナーさんは、寝言に反応してぴくぴくと動いていた私の耳を──
「んぁ…ぁむ…」
──!!!?!?!?!?!
思わず叫んじゃいそうな、同時に息が止まるような、あまりの衝撃に私は完全に混乱していた。
体中から汗が噴き出る。
『ダメ、トレーナーさんが起きちゃう!』
そう思い、必死に体を硬直させる。
だが、そうしている間にもにゅもにゅと耳の先端をあまがみするトレーナーさん。
『うら若き乙女になんてことを!!』
と必死に現実逃避することで、冷静さを取り戻そうとする。
が、更なる衝撃に、もはや私の我慢は限界だった。
乙女の敏感な耳の先端に、柔らかな肉の感触が── - 977222/10/26(水) 04:12:00
「にゃぁぁぁあああ!それはダメ!!」
トレーナーさんを突き飛ばした反動でソファーから落ちてしまった。
「はぇあ!?……???……スカイ?」
トレーナーさんは起きたみたいだ。が、私は床に寝そべったまま耳を隠す。ちょっと普通に会話できそうにない。
「スカイ!?どうしたんだそんなところで!大丈夫か!?」
私を心配するトレーナーさん。私がこうなってるのはトレーナーさんのせいなんだってば!!
「すぐに医務室に連れてって──「待って!!」──スカイ?」
「大丈夫だから。私は」
「でも……」
「医務室とかは大丈夫だから!というか、トレーナーさんのせいだから!!トレーナーさんのえっち!!!」
「スカイ!」
そう叫んで私はトレーナー室を飛び出した。
トレーナー室を出たところで、キングに「スカイさん!?」と呼び止められた気がするが、今の顔は誰にも見せられたもんじゃない。無視することにした。
後ろの方で「キング!違うんだ!俺は何もしちゃいない!スカイ!戻ってきてくれー!!」などと情けない声が響く。
でも私は振り返らない。乙女の柔肌をもてあそんだトレーナーさんなんて、キングに説教されちゃえばいいんだ!
後日、キングに事の経緯を説明させられて更に「あなたが原因じゃない!」と説教される羽目になったが、それもこれもトレーナーさんのせいだ。お詫びに釣りにでも付き合ってもらうとしよう。 - 987222/10/26(水) 04:26:40
とにかく担当ウマ娘に「トレーナーさんのえっち!」と言って欲しかった。
今は反芻している。 - 99二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 07:46:40
うら若き乙女セイちゃんかわいい
- 100二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 08:17:27
可愛い…
- 101二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 08:37:51
乙女セイちゃんすごくすごい好き
- 102二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 12:17:39
複雑な乙女心のセイちゃん本当可愛い
- 103二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 20:42:10
最高
- 104二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 00:27:15
こんなにセイちゃんSSが集まるスレもそうそう無いな、ありがたい……!!
- 105二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 05:14:01
健康に良くなるお題が欲しい
- 106二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 07:19:52
健康に良くなるお題ってなんだ?
『トレーナーさんをお出かけに誘うセイちゃん』とか?
例えば、
トゥインクルシリーズを引退し、そろそろ二人の関係も次のステップに、ということで、トレーナーさんをお出かけに誘おうと考えたセイちゃん。
が、釣りだといつもの流れになりそうなのでちょっと違ったところに誘いたいのだけど、候補が思いつかない。
頭を悩ませていたところをフラワーに見つかってしまい、「大丈夫」というものの可愛い顔で「私じゃ力になれませんか(涙目」なんて言われたら、白状せざるを得ない。
すると、「この植物園、デイジーのお花畑がとても綺麗だったんですよ」とクーポン券をもらってしまった。先日担当トレーナーさんと行ってきたそうだ。さすがスプリンター、行動が早い。
と、いうわけで、改めてトレーナーさんを誘おうとするのだけど、なかなかどうして、緊張してうまく話が切り出せない。
だって「デートに行きましょう」って言ってるみたいだし…。まぁ実際そうなんだけど!
あたふたするセイちゃんを訝しんで、トレーナーさんが顔を覗き込んでくる。
びっくりしてチケットを落としちゃうセイちゃん。
トレーナーさんがそれに気づいて一言。
「もしかして、誘いに来てくれた?」
「…………はい」
「嬉しいよ、スカイ。俺が一緒に行かせてもらっていいかな?」
「…………はい」
と、見事セイちゃんは当初の予定通りデートの約束を取り付けたのでした。
ちなみに、相当顔が緩んでしまっていたらしく、みんなにはすぐバレた。
みたいな。 - 107二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 08:31:57
良過ぎる…
- 108二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 09:16:18
憂鬱な朝に元気貰ったわ
- 109二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 19:11:56
セイちゃんへの愛で折り返しまで来たの凄いな
- 110二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 03:14:29
褒めらえて嬉しい。
がこれは実はこの後デートの約束を取り付けたセイちゃんが、
・黄金世代連中に「どうやって約束したの?」「いや~、セイちゃんとトレーナーさんならツーカーですから~」とか誤魔化したり、
・フラワーに「フラワーのおかげだよ!」って報告してフラワーがにこにこになったり、
・或いはフラワーに「どんな風に誘ったんですか?」って聞かれて「普通にだよ。行きましょーって。ま、私とトレーナーさんの仲だからね」って見え張っちゃうもんだから、フラワーは「スカイさんはすごいです!大人です!」って尊敬の目で見てスカイは真実を思い返していたたまれなくなる
とかのシーンを考えてて、長すぎたりどうしたらいいか迷った結果オミットした結果なのだ。
さて、言いたいことは言ったので失礼する。 - 111二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 03:47:50
おい待てェ
失礼するんじゃねェ
そこまで書いたなら書いてしまえ - 112二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 08:28:28
あげる
- 113二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 14:43:53
俺はいつまでもマッテルゼ
- 114二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 19:36:14
肩枕とか…いいよね
温泉でもしてるけどさ - 115二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 07:05:11
朝あげ
- 116二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 15:07:50
続きあるといいな
- 117二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 22:02:21
「じゃあスカイさん、昨日はトレーナーさんと二人でお出掛けできたんですね」
スマホに映ったセイウンスカイとトレーナーの写真を見て満面の笑みを浮かべるニシノフラワー。
「あーうん…そうそう、フラワーにはお礼を言っておかないとなーと思ってね」
ちょっと照れくさそうにはにかむセイウンスカイ。
ニシノフラワーのアシストもあって無事にトレーナーと二人で休日を過ごせたセイウンスカイはお世話になったお礼もあってフラワーに事後報告をしていたのだった。
植物園の写真や数少ないながらも二人で映っているものもあり、フラワーは目を輝かせながらそれらを眺める。
「スカイさんはすごいです!私、自分のトレーナーさんにデートしましょうなんてとても言えないと思います…スカイさんもスカイさんのトレーナーさんもやっぱり大人ですね!」
「あはは、まあね~」
「あのっ!…スカイさんは、お誘いする時はどんな風に切り出したんですか…?」
「え?」
「私もトレーナーさんと一緒にお休みの日にお出掛けしてみたいなって思うんですけど、やっぱり恥ずかしくて…。スカイさんみたいに進んだ関係の人のお話、参考にしたいなって思ってます!」
「うーん…まあ普通にね。セイちゃんと二人でお出掛けしませんかってね。ま、私とトレーナーさんの仲だからね」
「わぁ~…はっ!…じゃあもしかして、お二人くらい深い関係だと…デートの最中にはやっぱり、手を繋いだり…とかするんでしょうか…?」
「えっ!?」
目をキラキラさせて見つめてくるニシノフラワーに対して、目を逸らすセイウンスカイ。
「えーと…」
「」キラキラ
「…ま、まあその辺の話はフラワーにはまだ早いかなー。ちょーっと刺激が強いかもしれないしさ」
「わぁ~…!やっぱりスカイさん、大人です…!」
(…フラワーに偉そうなこと言えないし、私も次はもっとスマートに誘わないとなー。『トレーナーさん、セイちゃんと二人っきりでお出掛けしませんか?』…あーダメダメ…なんか顔熱くなってきたかも…)
- 118二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 22:04:49
- 119二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 22:29:48
良き…良き…ありがとう
頑張れセイちゃん、多分そのうちスマートに誘えるさ - 120二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 08:09:46
見に来る度にSSが増えてて嬉しい
- 121二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 19:35:29
- 122二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 07:09:52
周りの人達の反応から引くに引けなくなったりとかするセイちゃんいいよね
- 123二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 07:09:58
まだ失礼するな願望を形にしてから失礼しろ
- 124二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 08:17:49
あげ
- 125二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 13:19:14
失礼しないでまた書いて♡
- 126二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:35:59
とてもよいスレを見つけてしまった
- 127二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 07:55:38
本当にいいスレ
ありがとう - 12811022/11/01(火) 10:05:57
- 12911022/11/01(火) 10:06:21
「すみません、少しアドバイスもらえますか?」
「ん?あぁ、大丈夫だよ」
声をかけてきたウマ娘に答えるトレーナーさん。
真摯な態度、的確なアドバイス、……変わらない笑顔。
それを見上げるウマ娘たちも、真剣に話を聞いている。
「──とまぁ、道中のペース配分と、どのポイントで息を入れるかは重要なので、そこを考える余裕を持つことを意識した方がいいかな」
「ありがとうございます!」
一通り話が終わったのか、そう言って深々と礼をした後、彼女たちは明るい笑顔でターフへ戻っていく。
彼女たちを見送るトレーナーさんの後ろから声をかける。
「いやぁ、トレーナーさんはモテモテですなぁ」
「……モテモテって、そういうのとは違うだろう。スカイ、お疲れ様」
驚いた様子も見せない。このやり取りも、ずいぶんやってきたからだろうか。
……なんだか面白くない。
「それに彼女たちももうすぐ選抜レースだしね。気合が入ってるのさ」
「お、既にチェック済みですか?さすがですな~」
「それが仕事だからね。選抜レースに登録した子たちは一通りチェックしてるよ」
「それなら、チームメンバーの選抜ももう決まっちゃってたり?今の子とか?」
「ん?いや、そういうつもりじゃないよ。……チームのメンバーもまだ検討中かな」
「そうなんですか?今の子もかなり有望だと思いますけど……」
「そうなんだけどね。……俺に話を聞きにくる子は逃げウマ娘が多くてさ。同じ戦法の子ばかりだと、出走レースの調整とか、トレーニングメニューの組み立て・併走の際の経験値とか、どうしても難しくなっちゃうから」
その実績からか、トレーナーさんは逃げウマ娘の子からよくアドバイスを求められる。
トレーナーさんの実績──それはつまり、私のこと。
黄金世代と言われる私の同期たちの中で、私はクラシック二冠の栄誉に輝いたのだから。
「でも逃げウマ娘って言っても、色んな子がいますよ?それなのにどの子からもけっこう好評みたいですよ?」
そう、好評なのだ。困ったことに。 - 13011022/11/01(火) 10:07:52
「勉強したからね。ミホノブルボン、アイネスフウジン、サイレンススズカ、メジロパーマー、ツインターボ、他にもたくさん……。いろんなタイプの逃げウマ娘の走り方をさ」
トレーナーさんのことだ。私のためにいろいろ研究してくれたのだろう。
「それって……」
思わず口をついて出た言葉。どう考えても明らかなのに、わかり切ってるのに、トレーナーさんの言葉を聞きたい気持ちが抑えられなかった。
「もちろん、スカイのためさ。俺は、スカイのトレーナーだからね」
トレーナーさんはいつものように優しく笑う。
わかってたことだけど、トレーナーさんならそう言ってくれるって知ってたれど、それでも、それだけで私の心はもやもやなんてなかったように晴れ渡ってしまうのだ。
「それに、逃げウマ娘はどうもね…」
「おやおやおやぁ?その言葉は聞き捨てなりませんなぁ。他でもない逃げウマ娘のセイちゃんを前にして、そんなこと言っちゃいます?」
「というか、半分はスカイが原因だよ。……どうしても、比較しちゃってさ」
「…っ!」
顔が熱を持つのがわかる。真っすぐ見ていられず思わず目を逸らしてしまうが、横目で様子をうかがうと、どうやらトレーナーさんも照れているらしい。珍しく顔を赤く染め、頬をかいていた。
自分で言って自分で照れているトレーナーさんの様子に、私は少し余裕を取り戻す。
こういうのは、機先を制した方が勝ちなのだ。
「しょ、しょうがないですねぇ。そんなセイちゃんのこと大好きなトレーナーさんのために、今日は頑張っちゃいますか!」
「……!……うん、そうだね。じゃあ、始めようか」
──なんか言えよ!
思わず心の中で突っ込んでしまう。
そりゃあ、「セイちゃん大好き」って言ったのは私自身だけど、何も言われないと恥ずかしいじゃん!
まったく、本当に困ったトレーナーさんだ。誰にでも優しい八方美人で、肝心なことに気付かない鈍感なボク念仁。まぁでもそれが私のトレーナーさんなのだから仕方ない。
それに今日はこんなにもいい天気なのだ。つまらないことをグチグチ言って、せっかくのいい気分を台無しにするのは無粋というもの。
どうせなら、トレーナーさんにもこの気持ちをおすそ分けできるように、セイちゃんいつもよりほんの少しだけ頑張っちゃいましょうかね。 - 13111022/11/01(火) 11:02:31
というわけで、美味しそうなネタ(>>118)があったので書いてみた。
状況的には、トゥインクルシリーズが一段落した後トレーナーさんは担当チームを持つことになった、くらいのイメージです。
ちなみにセイちゃんのトレーナーは、明らかにセイちゃん相手だと雰囲気とか表情の柔らかさが違うのだけど、セイちゃん本人はいつもそればっかり見てるから気づいてないし、なんなら他の子に対して同じことしてると思いこんじゃってるから気が気じゃない。
なお、同期連中にはそれが明らかなので呆れたり微笑ましく見守ったり。
特にキングは「トレーナーさんが他の子担当することになった…」ってこの世の終わりみたいな顔で相談されて、よく聞いたら半分惚気だったので完全に呆れてるといいなと思いました。でも毎回真剣に聞いちゃう。だってキングだから。
さて、ハロウィンが終わったのにまだセイちゃんから「トリック&トリート?」って言ってもらってないので探しに行ってきます。
- 132二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 14:19:31
新作助かる。ヤキモチ→分かり切った反応返されて喜ぶセイちゃんは健康に良い。
- 133>>2222/11/01(火) 22:47:55
あらぬ噂を耳にした。
曰く、セイウンスカイのトレーナーが担当を抱きまくらにしている。
曰く、自室で担当に足を絡め、幸せそうに頬を緩ませて眠るトレーナーがいる。
曰く、そんな話を聞いた瞬間「尊い」と叫んで失神したウマ娘が出るほどに、桃色な空間をトレーナー室に展開している、と。
いやいや、そんな事があるはずないだろう。
自分はトレーナーだぞ?
これでもボディタッチには気をつけている。
いくらトゥインクル・シリーズを共に乗り越えて親しくなったからって、礼儀を欠いてはいけない。
これまで積み上げてきたセイウンスカイとの信頼関係に罅が入る……そんな状況、考えるだけで背筋が凍るから。
日頃、のらりくらりとこちらの言葉を交わす彼女の頭を「こいつめ」なんて撫でたくなっても、G1勝利後に抱き合って喜びを分かち合いたくても我慢してきた。
何年も続けてきたその鋼の精神を無礼ないでいただきたいものだ。
その甲斐もあってか、最近はトレーナー室に入り浸ることも減り、トレーニング前はふらりと散歩することの多い彼女。
さて、今日もトレーナー室に彼女がいないことを確認して、居所を捜索するところから始めよう。
一抹の寂しさを覚えるが、物理的にも精神的にも、きっとそれくらいの距離感が丁度良いのだ。
扉を開け、部屋の中を確認する。
ああ、いつも通り、彼女はいない。
そう思って踵を返すはずだった。 - 134>>2222/11/01(火) 22:48:14
「……。」
目の前にはソファに横になり、ジャージ姿ですやすやと眠るセイウンスカイ。
珍しくも懐かしい光景。
一体何週間ぶりだろうか。
実際にはそんなに経っていないのかもしれないが、それ程の空白を感じた。
「スカイ……?」
小さな声で話しかけても、彼女は微動だにしない。
まるで眠り姫のように静かに安らぐその顔を眺めていると、目の下に薄く黒が残っていることに気付く。
寝不足だろうか。
……もしかしたら例の噂が原因かもしれない。
早急に手を打つ必要があるが、以前に彼女と親しいウマ娘に聞いても「私は何も言ってないわよ~!」と駆け出すだけで相手にしてもらえなかった。
あの子がそんなデマカセを広めるはずはないし、疑ったわけではないんだが。
……しかし、いまだかつてこれだけ無防備な彼女の顔を見たことがあっただろうか?
カーテンから漏れる陽の光を受けて、彼女の芦毛はキラキラと輝く。 - 135>>2222/11/01(火) 22:48:38
「綺麗だな」
気づけば髪を撫でていた。
彼女の眠りを妨げないように、可能な限り優しく。
トレーナーになってからというもの、思えばこの子は自分の世界の中心だった。
全てに魅了されたから。
彼女の走りに、飄々とした普段の姿に、そしてレースでの真剣な眼差しに。
この手の下には、そんな熱い想いをもたらしてくれた空色の宝石がある。
愛でたくもなるだろう。
幸せそうに頬を緩ませる?
当然だろう。
尊い?
ああ、そうとも。
幸いここには他に誰もおらず、眠り姫を起こすつもりもない。
衝動的で、トレーナーとしてあるまじきこの行為を咎めるものもいないだろう。
さて、あまり長く続けているのも危険だろう。
撫ですぎたのか、それとも陽の光が当たりすぎたのか、手のひらから伝わる彼女の体温が心なしか上がっている。
もしかしたらこの行為がストレスになってしまったのだろうか、寝息も大きくなっている。
……名残惜しいが、これくらいにしておこう。
今はただ、彼女に休んでいてもらいたい。
そう思い、手を離そうとした時。 - 136>>2222/11/01(火) 22:48:53
「ちょ、ちょっといいかしら、スカイさんのトレーナー? その、噂は私のせいではないけれど、あの時のことを詳しく――」
はたと、キングヘイローと目が合う。
まずいと思うより先に彼女が動く。
「ま、またなの!? いえ、それより窓の外……今度は大丈夫ね! もう、スカイさん! 口止め料は高くから覚えていなさいよ~!」
駆け出していく彼女は一瞬のうちに視界から消えていた。
口止め料を請求するならスカイではなく自分にすべきだと思うが、気が動転していたのだろうか。
何にせよ、黙っていてくれるのなら有り難い。
しかし、あれだけキングヘイローが騒いだというのに、未だ目覚めないとは。
本当に疲れていたんだろうな。
今日のトレーニングは見送って、ゆっくりと寝かせてあげよう。
噂の方は……理事長かたづなさんにでも相談しようか。
「ずっとこうしていたいけど、またいつか、な」
最後に軽くポンポンと彼女の髪に手を当て、立ち上がる。
トレーニングではないけれど、彼女のためになることだから。
彼女の眠りを妨げる原因を排除すべく、トレーナー室の扉を締めて理事長室へと足を進める、まさにその時。
背後から何かが転げ落ちる音が聞こえた気がした。 - 137>>2222/11/01(火) 22:49:53
- 138二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 23:04:15
あらー
あらあらあらあらあらあら - 139二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 09:04:20
素敵なSSありがとう、朝から元気出たわ。
- 140二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 12:29:56
にしても息が長いな
- 141二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 14:53:34
愛されセイちゃんは健康に良いからな
- 142二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 19:10:46
まるで一本の長編合作
- 143二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 06:42:06
このレスは削除されています
- 144二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 16:44:46
はしゅ
- 1451/222/11/03(木) 23:11:26
「―――なあスカイ、寝る時に抱かせてくれないか?」
「………はい?」
「だから…寝る時にさ、スカイを抱き締めて寝てみたいんだ。ダメかな?」
「…あれー?セイちゃん聞き間違いかな?…なんかおかしなことを言われてるような気がするなー」
「スペシャルウィークのトレーナーから聞いたんだ。昼寝する時にスペシャルウィークを抱いてるとよく眠れて疲れも取れるって」
「…………はーーーー…。何やってんのスぺちゃん…仲が良いって言っても限度があるでしょ…」
「俺も試してみようと思ったんだけどスペシャルウィークに頼むわけにはいかないからさ」
「当たり前じゃないですか」
「そうそう、それでセイウンスカイに頼んでみようと思って」
「ええーーー…………そりゃまあ…トレーナーさんが一番に頼るのがセイちゃんなのはわかりますけど?トレーナーさん相手と言えども許せる範囲っていうものが―――」
「そっか…さすがに図々しすぎたか。ごめん」
「ま、まあどうしてもイヤって言うわけじゃないんですけどね?そこまで言うなら無下には断らないと言いますか。ただ勘違いして欲しくないんですけどセイちゃんは―――」
「他の娘に頼んでみるよ、じゃあ―――」
「ちょっと待ったーーーーーーー!」
「ん?」 - 1462/222/11/03(木) 23:14:59
「い、いやいやおかしくないですか?なんでそうなるんですか?」
「聞いたからには試してみないと気が済まなくて。何人か担当の娘に頼んで回れば誰かは聞いてくれるだろ」
「……………そりゃまあトレーナーさんはおモテになりますからそうかもですけど」
「じゃあ―――」
「あーーーはいはいわかりましたわかりました。セイちゃんが一肌脱ぎますって」
「え、いいのか!?」
「………あのー、トレーナーさんわかってやってません?」
「何が?」
「何ですかその満面の笑みは………いえいえ、なんでもありませんよっと」
「スカイ…ありがとう!!」
「………添い寝くらいならいつでもしてあげますから、他の娘に頼まないで下さいよー?」
「ああ、もちろん。やっぱり俺にとってはスカイが一番だな」
「う……………こ、こんなことするんですから責任取って下さいよ?セイちゃんうら若き乙女なんですから」
「わかってるわかってる。スカイが卒業したらちゃんと責任取るからな」
「はいはい………………………………………………え?」 - 147二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 00:27:27
おめでとうセイちゃん
- 148二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 08:26:32
朝からいいの見た
- 149二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 15:11:52
セイちゃんちょっと幸せになりますね……
- 150二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 20:37:31
- 151二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 08:13:05
告白シーンも良いがほんのり匂わせるのも捨てがたい