【ウマウマss】ティネイ

  • 11/422/10/15(土) 23:19:05

     ──何してるんだろ
     周囲を段ボールで仕切られた荷物置き場。
    休憩用の椅子に体重を預けたボクは頬杖をついて、お洒落な装飾に彩られた教室を動き回る演者たちへうろうろと目を動かす。
    動作一つ一つが洗練されててカッコイイカイチョー。エンターテイナーとしての才能を生き生きと発揮しているフジ。そして、派手な動作で注目を集めるのはオペラオー。薔薇を向けられたファンが丁度今、卒倒した。
    ……いつものボクならきっと目の前の喧騒へワクワクが抑えられなくなるはずなのに、今日はちっとも気分が乗らない。尻尾もだらりと床に垂れ下がっている。
    なんて言ったらいいのかな。例えるなら、いつもならお腹いっぱいになるくらいの十分な量のご飯を食べたはずなのに、全然まだ物足りなさが残る感じ。モヤモヤの理由はちっとも見当が付かなくて、ボクはゆっくりと重い空気を吐き出した。

     「おい、テイオー。裏とはいえその態度は良くないぞ。礼服に皴もつく」

     「……エアグルーヴ」

     隣に腰を下ろした彼女に応える言葉が浮かばないから、思わず逃げるように視線を落とす。

  • 2二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:19:37

    攻守逆転してて草

  • 32/422/10/15(土) 23:19:44

     「……らしくないな。お前だって他の皆に負けず劣らず、注目の的だったじゃないか」

     それはそうなんだけど。
     いや、このモヤモヤと不特定多数からの注目とはあまり関係がないのかもしれない……なら、どうして?
      
     ──なんで来てくれないの?

     ああ、そっか。
    ボクはドアの向こうを行きかう波に目を凝らし、点滅するライトのように一瞬で入れ替わる人々の中に弾むワインレッドのツインテールを見出そうとする。緑色の紐で綴じられたメンコをしたあの子の姿を探す。
    でも、見つからない
     もしかして、いつの間にか背後に隠れてるんじゃないか。そんなあり得ないことを考えて首を回しても、視界に入ったのはエアグルーヴの怪訝な表情だけ。

     「……何度も言ったはずなんだけどなぁ」

     とうとう諦めて視線を天井に向け、迷路のようにつけられた模様を辿り始めた。

     「……どうした?」

     「絶対見に来てよね、って」

  • 43/422/10/15(土) 23:20:18

     「む──そうだな。急な用事が入ったのではないか? 頼み事を引き受けてしまった可能性も考えられるだろう」

     たしかに、そうかも。蛍光灯の光を遮るように瞼を閉じる。
     彼女にだって自分の都合がある。特に今日は学園祭。急に予定を変更する必要が生じてここに来れなくなってしまうことなんか、起こりうること。
     でも──
     暫く考えてからボクは首を数度振った。

     「……それでも、ダメだよ」

     思っていたよりも声を上手く出せなくて、バラバラになるのを抑えようとした右手が胸元のリボンにかかる。
     朝、カイチョーにお願いして結んでもらったやつ。形を丁寧に整えてくれた後、似合ってるな、と最後に一言褒めてもらえて嬉しかった。いつも通りとても嬉しかった。

     「は?」

     でも同時に、あの子にも見せたいと思った。
    いつもと違うボクの姿を見て彼女がどんな反応を示してくれるんだろうか。驚いてくれるのかな、それとも違うのかな……なんだか凄くワクワクして。
    初めての感覚だ。カイチョーよりもずっと見てほしいと思えるなんて。

  • 54/422/10/15(土) 23:21:11

     「そんなの、ヤダ」
      
     だからそれを刹那的な感情で台無しにしてしまいたくない。
    握りしめてしまいたくなる指を、爪を皮膚に突き立てるくらいの気持ちで力を込めて、抑えた。

     「そうか…」

    「ごめん、二人で話してるとこ悪いけど邪魔するよ」

    「っフジ?! おい、お前いつの間に──」

     瞬間、エアグルーヴの声を遮るように指が弾けて、花が宙を舞った。
     鮮やかなポインセチアだった。

  • 6オーバー22/10/15(土) 23:21:43

     悪戯を成功させたフジは、事態が飲み込めずに困惑しているボクたちのことを揶揄うように微笑んだ後、手品で出してみせた花枝をボクの胸ポケットに手際よく差し込んだ。

     「ふふっ、サプラ~イズ! ──それよりテイオー、ゲストが君のことを待ってるよ」

     「!」

     ウインクを浮かべるフジの向こう、執事喫茶の受付に息をきらせて入ってきた彼女に、思わずピンと跳ねる耳。
     「せっかく来てくれたんだ……そうだね、少し盛大に迎えに行ってあげるのはどう?」

     「──うん」

     促されるように立ち上がったボクは彼女の方へと歩こうとして、脚を止めた。
     そうだ、リボン。カイチョーにやってもらったみたいには綺麗にできないけど、それでもできる限り真っ直ぐになるように整えて外に出る。

     「え、えっと……誰を指名しますか?! あー、いやえと、……そのっ!」

     どうやらボクのことには気づいてないみたいだ──なら、ちょっとびっくり驚かせるのもいいよね?
     昔マヤノと見たドラマで登場したカッコイイ執事をイメージして……台詞はたしか、
     
     「ううん違っ、間違えたとかじゃなくて! お、お任せじゃない、から……ん、なに?」

     「──Hey, will you play with me?」

     お辞儀から姿勢を少し上げ、上目遣いのまま手を差し出してそう口ずさんだ。
     これであとはネイチャの反応を待つだけ……
     「……きゅー」
     ……あれ?
     崩れ落ちそうになったネイチャの身体に慌てて手を伸ばして支える。
     「え~っ!? ネイチャどうしたの!? しっかりしてよ~、ねぇ!」
     「いやムリ、ちょ、キツイわ~……」

  • 7二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:29:44

    以上です
    スタゲはいいぞ

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 23:39:01

    👍

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