- 1二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:24:00
初めて食べるマキノさんの料理は?」
「フーシャ村は変わってないし、マキノさんなんて最後に見たときとまったく一緒なのに子供までいるなんてびっくりしたよ。あと相変わらずマキノさんの料理は絶品でした〜」
「くゥ、うらやましい」
「そっちにも味は伝わってるでしょ」
「それはそれだよ!!実際にわたしも食べて味わいたいよ!」
「それをいうならそっちもそっちでしょ!!寝てるルフィの体をグニグニ引っ張ったり、頭をずっと撫でまくったりしててさ」
「誰かみたいに全身を舌で舐めたり、体を丸ごと鷲掴みにしてルフィのゴムの気持ちよさを味わってませ〜ん」
「片方は人命救助でもう片方は不可抗力だよ!」
「「・・・でも」」
「「最高に楽しかったね!!」」
「あの頃みたいにルフィと遊べたし、ルフィで遊べたし、12年前にした約束もやっと果たせたし、マキノさんとも会えて、二人とあんなに長く過ごせていっぱい喋れた。・・・・・・ルフィと喧嘩したことでずっと抱えてたモヤモヤも乗り越えて前に進める気力も湧いてきたし、・・・・・何よりもルフィに楽しかったって言ってもらえた」
「・・・子供の時は、一曲が限界でウタワールドも殺風景な世界だったからね・・」
「すごく活力湧いてきたァ早速新曲作るぞ〜っていきたいけど・・・もうタイムリミットだね」
「ごめんね」
「もう、謝る意味なんてないでしょ。今までもこれからもずっと一心同体なんだからさ」
「そうだね。私達は一心同体!!」
「でも、私は先に寝まーす。ルフィによろしくね。お休みわたし」
「うん、お休みウタ」
いつもの挨拶をして目の前にいた私自身ーーーウタは消えた・・・正確には私の体の中に入って寝たというのかもしれない。
ここは、現実でもウタワールドでもない空間、存在出来るのは2人だけ。現実にいるわたしとウタワールド内にいるウタだ。いうならばウタという人間の精神の世界もしくはウタウタの実の能力の1つと言えるかもしれない。ウタウタの能力は歌を聞いた生き物の心をウタワールドに呼び寄せるーーーつまり、呼び寄せる世界とその主は常に存在しつづけているのだ。私が現実で起きている間は。 - 2二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:24:45
分かりづらくて混乱してしまうので、私達は現実にいる方をわたし、ウタワールドにいる方をウタと呼ぶようにした。
私はどうやら拾われた時からウタウタの実を食べていたそうだが、この事実に気付いた時に非常に混乱した。
片方の視界にはシャンクス達がいてくれているのに、もう片方の視界には周りに誰もいなく自分一人しかいない世界が広がっているのだ。
ウタは何でも出来るとはいえ、当時は世界どころか自分の能力のことすらも何も知らないただの子供。自分がなんでも出来ることなんて知る由もなく、ただ訳も分からず孤独に泣き続けるしかなかった。
私はシャンクス達に世界が二つあることを伝えてウタを助けて欲しいとお願いした。程なくして・・・やはり有名だったのだろうかーー私がウタウタの実を食べていることが判明し、この実を食べたものは起きている限りウタウタの実が創り出した世界ー通称ウタワールドにもう一人の自分がいること、歌を聞いた者を強制的にその世界に引き込めることが分かった。幸い私は生まれつき能力を制御出来ていたようで知らないうちに皆をウタワールドに呼ぶという事故は起きなかった。
だから、初めてシャンクス達を呼んだ時のことは鮮明に覚えている。 - 3二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:25:15
今まで誰もいない空間に、いつももう一つの世界では常に一緒にいる皆が来てくれてウタは泣いて泣いてまともに話すことなんで出来ていなかった。そして反対に私の目の前には皆が寝ていた。私の歌を誰も聞いてくれていなくて、いつもウタが受けている孤独と寂しさを味わって泣いて、すぐに能力に限界がきて寝てしまった。
自分の能力について知ったことで、ウタがいつも一人にいる理由は分かったが、かといって誰かが常にそばにいることも出来なかった。私自身の未熟さにもよる時間限界もあるが私たちは海賊なのだ。海の上にいる時にたとえ10秒でも意識を失っていたらそれだけで命とりになることだってある。だから私達は歌の練習をしてウタウタの実の能力を使いこなすことに専念した。がんばれば、もっと長く皆をウタワールドに呼べるかもしれない。この能力で敵だけを無力化できるようになれば戦闘にも皆の役に立つことができて赤髪海賊団の音楽家として相応しい存在になれるかもしれない。泣いてばかりいられないと私達は決意した。 - 4二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:26:25
そんなわたしとウタに転機が訪れたのは9歳の時に、赤髪海賊団がフーシャ村を拠点として活動していたときだ。ここなら、海上の船と違って突然敵襲を受けることもないため遠慮することなくみんなを呼ぶことができて私もウタも楽しかったが、この村で会った私達の初めてにして唯一の友達のルフィには・・・って唯一!?
え?ちょっと待って!?もしかして私達ってルフィしか友達いないの?
シャンクス達は家族だし、ゴードンはもう一人の父親で私達の師匠だし、マキノさんは頼りになる憧れのお姉さん。ファンの皆は私達の歌を聞いてくれて喜んでくれる大切な人達だけど友達っていう関係性ではない。・・・・・ハハッ!!そうかァ私達に友達ってルフィしかいなかったのかァ - 5二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:27:25
とにかく、ルフィにはウタワールドはつまんないという感想だった。
この言葉は当時の私には衝撃が強すぎた。一切の比喩なく自分の半身を拒絶されたのだ。
だから私達は、わたしが現実でルフィと勝負している間にウタはウタワールド内で出来ることを増やしてルフィから認められようと思った。
残念ながら、その成果を見せるより前にルフィと離れ離れになってしまったが私達は諦めなかった。
エレジアにいた12年の間にもゴードンにウタウタの能力について説明して、数日に1回はウタワールド内で稽古をつけてもらった。その際に、五線譜への拘束や音符の戦士の召喚、音符を使った当人が望むものに変化させるといった技の練習にも付き合ってもらった。あのピカピカ黄金の鎧姿やバックバンドの動物たちもゴードンと一緒に考えたんだっけ。いつか皆を呼んだ時に楽しく騒げるように、またルフィと喧嘩できるように。
そして、皆と再会したのは私達が新時代を創るときのライブの時だった。 - 6二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:44:42
…これハッピーの方にいけるかな?
- 7二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:48:18
あのときはもういろいろな感情が一杯一杯だったということしか覚えていない。ファンの皆が私達の歌を聞いて救世主だと言ってくれて、海賊は悪い奴らと聞いて、ならシャンクス達もやっぱりそんなやつらだったの?と考えている際に電伝虫を拾ってあの真実を知った。
もう、私達は現実から逃げ出したくなって、新時代に行く計画を思いついた。
みんなをウタワールドに連れて行ってしまえば、ファンもわたしもウタも世界中全員が辛いことなんてなくなる!!って - 8二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:50:38
だけど、ウタワールドはわたしの体力が持つ限りしか続かないからこの思いつきは机上の空論になるはずだった。がそのウタワールド自体によって空論ではなくなってしまった。
あの世界はどういうわけか生き物以外なら現実世界と同じものがそのままの位置で存在している。私達が知らない建物や本がそしてその内容までもが。
残っていたエレジアの書庫の中でウタは見つけてしまった。私達・・・ウタウタの実の前任者達の記録を。
ウタワールドに呼んだ者の肉体を現実で自由に操作できる、
ウタワールド内で死ぬと現実の肉体でも死を迎える、
ウタワールドにいる者が現実の肉体で死を迎えるとウタワールド内でも死ぬ・・・が
能力者本人がウタワールドの解除条件である睡眠の前に肉体の死を迎えることでこのルールは崩壊し永遠にウタワールドにいられることを。
そして、それをネズキノコを使用して行った前任者がいたことを。 - 9二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:53:53
そのことを知ってから私達は世界的にライブを発信して、ファンの皆を夢の世界に連れて行く新時代の計画を進めていった。といっても準備は簡単。ウタが各種必要なものである、ライブ関連の資料やグッズ、設備、ネズキノコの生息地をウタワールドで調べていってわたしがそれらを現実で用意していくだけ。ゴードンにばれない様にウタワールドに連れて行って、その間に電伝虫で方々に連絡をしてエレジアに運んでもらう。そして常に二人で皆に楽しんでもらえるようにライブの演出について会議を重ねた。
- 10二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:54:45
そんなこんなでライブ当日までゴードンにもばれることなくライブ会場の設営、各種グッズやそれらを売ってもらうスタッフさん達をエレジアに招いて開催した私達の初ライブ。
1曲目を歌い終わったところでルフィが突然ステージに上がってきた。
私達は嬉しくて嬉しくて、計画のこともファンの目の前であることも忘れて12年振りに再会した友達に抱き着いてしまった。
だけど・・・ - 11二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:57:29
「おれサニー号に帰って寝るよ」
と言われてルフィに背を向けられた時、ウタの中にとてつもない激情が沸いた。
きっとこれを聞いたのが現実世界のわたしだったら気付いたかもしれない。ルフィは寝ると言っただけでこのまま帰るとは言っていない。おそらく当時からすっかり変わってしまった私と会場にいるファンの皆を気遣ってライブが終わった後にまた会いにくるつもりなんだろうと。
でもこれを聞いたのはウタワールドのウタだった。
12年も・・12年も頑張って頑張って頑張ったのにまたルフィにこの世界がつまらないと思われた。拒絶されたと。つまらないから帰ると。唯一の友達であるルフィに。
冷静に考えれば帰れるわけがないのだ。船はすでにかわいいものに変えてエレジアから抜け出す手段はない。ライブがひと段落してから改めて落ち着いて話し合えばよかったのだ。
だが、私達はこの言葉を聞いて感情がコントロール出来なくなってしまい、ネズキノコの凶暴化の副作用も相まって、また取り返しがつかないことをしでかしてしまった。でもルフィがその友達が赤髪海賊団の家族がこんな私達を助けてくれた。 - 12二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 22:01:24
結局全部私達のワガママだったんだ。歌で皆を幸せにする新世界を創るというのはもちろん本心だ。
でも、自分以外の人たちについてまったく考えていなかった。あの世界では、その気になれば睡眠も食事も労働も必要なくなってしまう。そんな中であるのは私達の歌う歌という娯楽だけ。人によっては死ぬこともできない生き地獄になってしまう。私達はそのことを誰よりも分かっていたはずなのに。
そして本当に創りたかった世界は
もう独りぼっちなわたしもウタもいない世界・・本当に一つの存在となった私達と大好きなルフィや赤髪海賊団の皆やゴードンがいる世界を創りたかったんだ。
そうでなければ、海軍と交戦までしているのに現実でキノコによる毒で死ぬのなんて待っているわけがない。ライブを始めて30分くらいすれば間違いなくファンの皆はウタワールドに全員いるんだから、さっさとナイフを自分に刺せばよかっただけの話。それを実行しなかったのは家族である赤髪海賊団の皆が来ていなかったからだ。 - 13二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 22:02:36
私達はただ、二人で抱え込まずにちゃんと相談すればよかったんだ。それだけであんなすれ違いは起こらなかったはずだ。
私は自分の膝の上でグーグー寝てるルフィの顔を改めて撫でた。
「・・・ねぇ、ルフィ。さっきウタが言ったけどわたしからも言わせて」
「色々ごめんね。ありがとう。私もルフィのこと大好きだよ」
ああ、視界が歪む。膝の上のルフィの息遣いが変わっていって起きようとしているのを感じる。
もう限界かな・・・
でもまだルフィに伝えてないことが・・・ - 14二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 22:04:53
以上で終わりです。
このあと起きたルフィとウタが拳を合わせて改めて新時代への誓いをするはずです。
元々、ウタとルフィがウタワールドでマキノさんに会いに行くという文を書いている時に、最後ルフィが現実で目を覚ます前に入れようと思っていたんですが
それまでとまったく違う話になってしまったので、自分が考えたこの妄想を供養します。SBSでウタウタの実についての詳細が来たら全然違うかもしれないですし。
現実でシャンクスに会った時にウタワールドのウタが動揺しているので、もしかしてウタウタの実って起きている限り常にもう一人の自分とその意識があるんじゃないか
っていう風に解釈しました。 - 15二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 22:38:56
二人のウタの冒険はこれからも続く…
- 16二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 22:42:08
結局ウタは生き残れたの?
- 17二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 23:05:08
- 18二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 01:56:05
乙乙!面白かった!
- 19二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 11:51:07
言われて(読んで)気付いたけど、ウタの生涯で友達がルフィしかいなかったってホントにひどくない?
- 20二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 22:37:37
乙です!こういう解釈は面白いね
ウタワールドのウタだったからルフィの気遣いに気づけず12年前と同じように拒絶されたのだと思ってしまったという見方はなかなか斬新で良かった
わっしが語り継ごうか? - 21122/10/19(水) 01:07:10