- 1二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:21:56
「来たわよ使い魔!」
いつもと何も変わらないある日のこと。
午後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴って数分後、担当ウマ娘のスイープトウショウが慌ただしくトレーナー室へと入ってきた。
「ふんふふんふーんふーん♪……ふふふふ」
扉を閉めて鼻歌を口ずさみながら歩いてくるスイープ。
まるで何かを企んでいるようなその楽しそうな様子に、正直嫌な予感がするのだが……。
「な、なんか楽しそうだねスイープ」
おずおずと俺が問いかけると、スイープは嬉しそうに口角を上げる。
「ふふーん♪ そう見える? そう見えるかしら?」
応えるスイープの眼は綺麗な弧を描いており、その隙間から覗く瞳が紫水晶のように怪しい輝きを放っていた。
予感は的中だ……これは絶対に何か企んでる。
背中に寒いものを感じながらも、問いかけた責任から俺は続きを促す。 - 2二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:24:32
「何かいいことがあったの?」
「ええ、とっても面白いことよ。ふふふ、知りたい? 知りたいわよね?!」
俺の返事を待たずに畳みかけると、スキップしそうなくらいに軽い足取りで俺のそばへとやってきて人差し指を突き出した。
「仕方無いから教えてあげる! 目を閉じて頭をこっちに向けなさい使い魔」
「え、目?」
「いいから早くするの! ほら!」
「は、はい……」
言われた通りに目を閉じて頭を向けると、俺の頭に何か硬いものが乗せられた。 なんだこれ?
「くく、ふふふ……全然似合わないわねアンタ……ぷふふ……」
一体何を乗せたんだ……。
「ぷふふふ……め、目を開けなさい使い魔……くふふふ……」
目を開けると────正面には彼女愛用の手鏡が構えられていて、そこに映る俺の頭に乗っていたのは黒い猫耳のカチューシャだった。
……確かに俺、似合ってないな。似合っても困るけどさ。 - 3二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:25:33
なんでこんなものを? ……そんな感想を心の中で呟いていると、スイープは鏡を俺に向けたまま魔法の杖を構える。
「クリソスプレニウム⭐︎ウェデリアプロストラータ! 黒猫にな〜れ!」
……猫? 猫だって?
誰が猫に? ……え、俺? 俺が猫になるの!?
「…………ぅ〜っ……!!」
……まずい、フリーズしてしまっていた。
目の前のスイープの顔がみるみる不機嫌に変わっていく。
「なんで猫にならないのよー!!」
「い、いやスイープこれは」
「ちゃんと本の通りにやったのに! グランマお手製の魔法の鏡に猫耳の飾りを乗せた人物を写して呪文を唱えたら猫に変化するって書いてあったのよ!?」
どんな本だよ!? それっぽい本を独自解釈したのか……?
スイープの魔法に対する信じる気持ちはとても強い。きっとその本が面白そうだったのだろう。そしてイタズラ感覚で俺を猫にしようと思ったのだ。
でもいま猫にされちゃうのは困るよスイープ……。
今日中に仕上げないといけない書類が溜まっていて、朝からほとんど何も食べずに進めていたのだ。 - 4二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:26:38
今日のスイープのトレーニングも自主トレをしてもらうつもりだったし、このペースで進めれば夜には終われそうなのでとにかく今は時間が惜しい……。
「いい、使い魔。この鏡を見て目を離したらダメよ。アタシがもう一度呪文を唱えるから、今度こそアンタは黒猫になるのよ!」
「……あと一回だけね。その後は自主トレに向かってよ?」
「ふんだ! 絶対失敗なんかしないんだから! あと黒猫になったら2時間は絶対人間に戻らないし、意識も猫になるから!」
なんだって!? 本当にそれは困る!
「動かないで!」
「うう……はい」
諦めるしかないのか……。
「はい、鏡持って。アタシは杖を振るので忙しいから」
「はい……」
スイープから手渡された鏡を自分に向けて持つ。鏡面に映る俺の猫耳カチューシャの似合わなさったら……最悪だ。
そもそも男に被せるものじゃないしなぁ、これ。
ウマ娘なら猫耳型のメンコがコスプレグッズとして売ってるし、主に人間の女の子が使うくらいしか用途は……──── - 5二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:28:19
……というかスイープは俺を黒猫にしてどうするつもりなんだろう。儀式の生贄に捧げるとか? いや、そんなことはしないだろうけど。
「さあ行くわよ! クリソスプレニウム⭐︎ウェデリアプロストラータ────」
スイープが声高らかに呪文を唱える。
────……このまま猫になってあげるか、彼女が不機嫌になるのを覚悟で無視してしまうか。
きっとここで不機嫌にさせたら今週はまともにトレーニングしてくれないんだろうなぁ……。
そもそも俺が猫になったところで可愛くないだろうに。
そうだ、どうせ猫になるなら────
どうせ猫になるならスイープのほうが可愛らしいに決まってる────……そう思った俺は、無意識のうちに鏡をスイープの方へと向けていた。
呪文を唱えている途中のスイープに。
「黒猫になー……れ!?」
「あっ」 - 6二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:29:23
鏡に向かって呪文を唱えきったスイープは、その場でフリーズした。
「……スイープ?」
微動だにせずこちらを見続ける彼女へ恐る恐る声をかけるが……返事はない。
話しかけた方がいいだろうか。
「おーいスイープ……? だ、大丈夫?」
目の前で手を振りながら声をかける。瞬きすらしない……が、俺の手の振りに合わせて若干瞳が揺らいだように見えた。
少し近づいてもう一度、
「スイープ、しっかりしてよ。まさか猫になったわけじゃないだろ? やめてくれよ、ほんとに今日の日付が変わるまで猫になるなんて」
正気に戻るよう説明しつつ話し続けると……────
スイープはゆっくりとその場にしゃがみ込み……俺の足へ甘えるように身体を擦り付けて、言った。
「にゃあ」
いや、これを言ったとは形容しない。これは鳴いたのだ。
そして今度は俺がフリーズする番だった。 - 7二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:31:00
「にゃ〜……」
俺が思考停止している間も、スイープは猫のような動きで俺の足元を動き回る。
頬から肩口、そして脇腹、尻尾と順番に俺の足へ擦り付けて、匂いをマーキングしているかのようだ。
まさかスイープが俺に甘えたりはしないはず。絶対これはマーキングだ。俺の匂いが気に入らないに違いない。
マーキングに満足したら今度はころりと寝転がってみたり、手の甲を舐めて顔をこしこし拭って顔洗い。
本当の猫がやるであろう行動を、スイープは見た目そのままで行っている。
つまり俺の足に身体を擦り付けたのも、ころりと腹を見せて寝転がったのも、顔を手の甲で洗っているのも全てスイープそのままの姿なのだ。
なんだこれ……なんだこれ……?
俺は一体何を見ているんだろう。スイープが猫の真似をしている────……え、ホントに?
まさか本当に猫になったってこと?
彼女の普段の姿からは想像もできないような行動だ……立ち上がる勢いを使って、俺の身体をよじ登ろうとしてくるなんて。
「……え、ちょっ……な、何してんの!?」
流石に何かの危険信号を察知した俺は思考を取り戻して後ろに飛びすさり、スイープから距離をとった。 - 8二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:32:11
「にゃによ」
「!!!??」
え、喋った……?
「当たり前でしょ! アタシのことにゃんだと思ってるのよ!」
喋れるのか、スイープ。
……いや、待ってくれ。にゃって言わなかった?
「言うに決まってるじゃにゃい。アタシは猫にゃのよ?」
本当に猫らしかった。
「失礼しちゃうわ! ヒトのことをバケモノみたいにゃ目で見ちゃって! 使い魔のくせに!」
俺の反応がお気に召さなかったらしく、少し不機嫌そうにスイープは、すぐにソファの方へと歩いて行ってしまった。当然、四つん這いでだ。
そしてソファへ到着すると軽快に飛び乗り、丸くなって眠ってしまった。
「……ホントに猫になっちゃったのか?」
その様子を見て、俺は独り言ちる。
確かに俺はおばあさんの魔法の鏡をスイープに向け、彼女は自分の顔を見ながら魔法の呪文を唱えてしまった。
そしてこの言動だ。本当にスイープは猫になって────……いや、自分は猫だと思い込んでいるのか。 - 9二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:33:35
彼女の話によるとその効果は日付が変わるまでだと言っていたが……嘘だろ?
だが実際、スイープは猫のような所作を始めてしまった。俺の足元に匂いを擦り付けたり顔を洗ったり丸まって眠ったり……あと、にゃって言ったり。
これはもう猫としか思えない。
ということは明日までこのまま……?
俺は軽く目眩のする頭を抱えながら、ひとまず彼女の同室の子に連絡を取るべく携帯を探した。
あと頭に触れた時にまだ猫耳カチューシャをかぶっていたのでそれも外し、知り合いのトレーナーのLANEを開いた。
────……のだが。
「……わからん」
数分後、俺はデスクに突っ伏して途方に暮れていた。
理由は明白、スイープの同室のウマ娘が誰なのか全く分からなかったからだ。俺の知りうるツテの全てを駆使してもわからないとは……。
あわよくばフジキセキとの連絡手段をと思ったが、それすら入手できなかったので正直もう諦めていた。
それにこれ以上、他のことに時間を割いていると仕事が本当に終わらなくなってしまう。
日付が変わる頃には元に戻るというスイープの言葉を信じ、俺はパソコンと睨み合う作業に戻ることにした。
幸い、スイープはソファで眠ったままだ。デスクからすやすやと気持ちよさそうに眠る彼女の顔が見える。 - 10二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:34:44
本当に丸くなって眠るとは……完全に猫だよアレ。
「……さて、仕事に戻ろう」
ともかく静かに寝てくれているうちに作業を済ませて、それからスイープを少し構ってあげてもいいかな。
どこまで猫になってるのか気になるし……────まあ催眠術のようなものだろうし、スイープの中での猫のイメージなんだろうけど。
そう考えながら、俺はパソコンを叩きながら、ふと頼りになる理事長秘書の顔を思い出し、彼女宛にメールを飛ばした。 - 11二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:35:22
・・・
「ん……────?」
ふと、デスクが揺れるような感覚。
「……というか本当に揺れてる! え、なに!? 地震!?」
だとしたら倒れたらまずいものばかりだ。
デスクに積み重ねた書類の山もそうだが、それよりもスイープの優勝トロフィーを飾った棚やスイープお気に入りの魔女っぽい照明が倒れてしまう方のはまずい────
「────……あれ?」
しかし周りを見渡してみると、他に揺れているものはない。というかデスクだけが揺れていた。
一体何が……────と考えた瞬間のこと。
「ふぎゃー!!」
「ひっ!?」
けたたましい叫び声と共に、俺のデスクに並んだ書類が吹き飛んだ。というか吹っ飛ばされた。
デスクの上に飛び乗ってきたスイープトウショウによって。 - 12二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:36:15
「な、何してるんだよスイープ!?」
驚きのあまり大きな声をあげてしまうが、スイープは書類が吹き飛んで綺麗になったデスクに座って踏ん反り返っていた。
「フフン! びっくりしたでしょ! 驚かせてあげようと思って準備していたのよ!」
「も〜……! いくら猫になったからってそんなことしちゃダメだろ?!」
「にゃによ! ずっと仕事ばっかりして、アタシを一人ぼっちにさせるほうが悪いんじゃない!」
「ったく、わがままだな……────」
────……何だか変な違和感がある。
いつもわがままを言う彼女だが、こんなわがままを言うことがあったろうか?
俺はそっと手を伸ばし、彼女頭へと近づけてみる。
普段のスイープならきっと怒って手を振り払うはずだが……はたして。
「……ん」
「!」
なんと彼女は自分から頭を手に近づけ、撫でることを許容した。
とんがり帽子越しではあるが、ふわふわした彼女の毛の感触が伝わるようで……まずい、なんだかこれは癖になってしまいそうだぞ……! - 13二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:37:06
何か危ない扉を開きそうになってしまった俺はすぐに手を離し、
「あとちょっとで仕事が終わるからそれまで待ってくれないか?」
「やだ! 遊びにゃさいよ!」
「終わったら遊ぶからさ。夕飯も食べないといけないし」
「やだやだやだ〜! 遊ぶの〜!」
デスクの上でばたばたと暴れるスイープトウショウ。
やめてくれ……書類がどんどん散らばってしまう……!
ノートパソコンだけは咄嗟に退避させたが、その代償は床に散らばる書類の山だった。
「ほら、アイスあるからこれで許してくれ」
「む、仕方にゃいわね……」
スイープにあげようと思って買っていたアイスを冷蔵庫から取り出して彼女に渡し、おとなしくなっている間に仕事を再開することにした。
もう少し上手くスイープを扱う術を磨かなくてはいけないな────……と心の中で呟きながら、俺は散らばった書類を集め直し、手早くホッチキスでまとめてカバンに片付けておいた。そうすれば手出しはできまい。
心配事がなくなった俺は、デスクに猫みたいな座り方をするスイープに話しかける。というかその座り方、見えそうで危ないからやめてほしいんだけど……。 - 14二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:39:00
「ほらスイープ、俺もう少し仕事があるから降りてくれないか?」
「……」
返事はない。アイスに夢中になっているようだ。
その後、数回同じように話しかけたがスイープは降りてはくれなかった。仕方がないのでノートパソコンを持って、ソファまで移動して仕事を再開することにした。
「あと少しで終わるから待っててよスイープ。そしたら夕飯も用意するしさ」
呼びかけるように言って、俺は書類をまとめる作業に戻る。
時刻は18時手前。画面の右下にメールの返信が届く────……流石たづなさん。スイープの外泊届け、対応してくれたみたいだ。
さすがは理事長秘書。助かります。
これで心配事は無くなったし、あとは仕事を……────
「……ちょっとスイープ」
「みぃ」
と、パソコンを叩く俺の腕の間にスイープが顔を潜り込ませてきた。そしてそのまま俺の膝に座り、視界を遮ってしまう。
本当に猫がするやつだぞ、これ。 - 15二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:39:40
普段は天と地がひっくり返ったとしてもしない行動なだけに、少し可愛らしく感じてしまうがこのままでは仕事にならない。
俺は彼女をそのまま抱き上げ、隣に下ろして再度仕事に取り掛かる。
「にゃあ」
……が、またスイープは顔を潜り込ませて邪魔をしてくる。
もう一度隣に下ろすも、やはりまたスイープは顔を潜り込ませてきた。
「フフン」
「……なんもできん」
「させにゃいわよ、フフン」
可愛らしいスイープが抱きしめられるくらいに近くに寄ってきていることよりも、仕事が手につかない方が俺はもう精神を引き裂かれてしまいそうだった。
よく話に聞く、キーボードに乗られてデータが全て消えてしまうということにはなっていないけれど、これはこれで本当に何もできない。
「あと30分もかからないで終わるはずだからちょっとだけ待っててスイープ!」
隣に下ろしてスイープに頼み込むと、
「ったく、仕方のにゃい使い魔ね」
そう言いながら喉を鳴らして……────
俺の腕の間に顔を潜り込ませてきた。 - 16二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:40:42
それからは彼女の妨害を受けながらもなんとか仕事をこなし、19時過ぎに終えたらカフェテリアでお弁当を買って二人で食べた。
猫だから一人で食べられるわけないでしょ、とスイープが言うのでひと口ずつお箸で食べさせてあげた。
自分の手でアイス持って食べてたよね、とは言わないでおいた。
あとは眠たくなるまでのんびり彼女と遊んだ。
ゆらゆら尻尾を揺らしながらトレーナー室を徘徊するスイープを眺めたり、廃棄するプリントを丸めて紙玉にして投げてみたり。
猫になったスイープは存外、普段よりもおとなしいしワガママな態度も見せずに俺と遊んでいた。
その行動のほとんどがスイープとは何も関係のない、本当にただの猫のような行動で不安になることもあったが……。
それだけに、このまま元に戻らなかった場合のことが、不安になってしまう。 - 17二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:41:51
日付が変われば魔法は解ける────とは、猫になる前のスイープの話。
だが彼女の魔法はほとんど成功したことがなく、失敗しては魔力を高めるために行動することが常だった。
だが今回は魔法が反射してしまってらしく、彼女自身がその強い思い込みによって猫になってしまったわけだが。
「……本当に戻るんだよね?」
そう、とにかく不安なのは彼女が元のスイープトウショウに戻るかどうか────……なのだ。
いま紙玉を咥えて近寄ってくる猫スイープも可愛らしいけれど、やはり俺が大切に思っているのは普段のわがままスイーピーなわけで。
「にゃんの話?」
ソファベッドに寝転んだ俺の胸元に潜り込みながらスイープが首を傾げる。
「スイープがウマ娘に戻るのかって話」
「にゃに言ってんの? アタシは猫よ」
「……そうだよね」
この数時間、猫スイープと話して分かったことだけど……この魔法は認識そのものを猫に変えてしまうらしい。
というか自分が猫だと完全に思い込んでいるようだった。 - 18二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:43:20
ウマ娘ではなくて猫で、俺は彼女をお世話する使い魔なのだそうだ。
きっと俺とこの子の思い出にある『ウマ娘』という部分だけが猫に変換されているのだろう。
戻ってくれるのなら俺はそのほうが嬉しいが……さて。
「スイープ、寝るのはいいけど流石に一緒にはまずいよ」
「にゃんでよ! アタシが邪魔って言いたいの!?」
「邪魔ってというか……ねぇ? ほら、流石に担当とトレーナーが一緒に寝るのはやばいよ」
「アタシはただの猫にゃんだから大丈夫よ。それより使い魔はアタシの専属抱き枕にゃんだから、大人しく抱かれてればいいの!」
言いたいことだけ言って、スイープは目を閉じてすやすやと寝息を立て始めてしまった。
普段なら絶対やらないような行動が多くて困惑してばかりだった今日ではあったが、まあ、少し違ったスイープを見られたのは良かったかもしれない。
きっと今後、彼女と一緒に寝ることなんてないだろうし……猫だし、今日は……いいか。
そう結論つけ、俺は俺の胸の上で器用に眠るスイープの頭を少しだけ撫でてから、俺も目を閉じた。 - 19二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:44:42
「なんでアタシこんなとこで寝てるのよーーー!!!!」
「ぶっ!?」
明け方。
耳を破られるかと思うほどに大きな声と、胸に叩き込まれた衝撃で俺は目を覚ました。
「な、なん……なに……?」
胸の痛みに手をおさえながらふらふらと立ち上がると、顔を真っ赤にしたスイープが床にへたりこんでいた。
「スイープ……? おはよ……」
「おはようじゃないわよばか! あ、アタシなんで使い魔なんかと一緒に寝てるのよ!? もぉ〜っ!! も〜ぉ〜〜っ!!!」
ぶんぶんと真っ赤な顔で腕を振りながらやだやだと叫ぶスイープ。よく見れば目元に涙が浮かんでいるように見える……。
「い、いや……でもスイープが自分で来たんじゃないか……」
「っ……ち、違うもん! アタシそんなの知らないんだから!」
「ええっ!? でも猫なんだし……」
「はぁ? ばかじゃないの、アタシはウマ娘でしょ。猫とか……そんなの、絶対違うんだから」
「え……」
……ということは、魔法が解けたってことか!? - 20二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:47:25
「よかったよスイープ!」
「え、ちょ」
「おかえりスイープ! やっぱり俺はウマ娘のキミがいい、もう猫になる魔法なんて使っちゃダメだぞ!」
喜びのあまり彼女を本気で抱きしめてしまい、お腹を蹴られた。 - 21二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:48:11
「……すみませんでした」
「ふんだ! 急に抱きしめるとかほんっとありえないんだけど! 使い魔のくせに!!!」
「本当にすみません……つい」
「あとアタシに魔法返しを使ったこと、絶対許さないんだから」
「あれは……うう、はい……」
「……分かったら、ほら」
「……何?」
「わかんないの!? ほら、これ!」
ウマ娘に戻ったスイープは何故か俺のそばに寄り、腕に触れたり顔を擦り付けたりしてくる。
なんだ……何をしてほしいんだ……? アイスが欲しいのか?
「っ……ば〜か〜!!!」
大声の罵声と共にスイープは帽子を脱いで、こちらへ頭をしっかりと向けた。
ようやく理解した俺は、彼女の頭に手を乗せた。
よく考えたら、スイープは猫にならなくても猫のような性格だったっけ。
そう思いながら猫のようにわがままで気ままなスイープを撫でるのだった。
直接撫でる彼女の毛は、とてもふわふわして気持ちよかった。 - 22二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:48:23
おわり!
- 23二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:49:47
素晴らしいものを見せていただきありがとうございます
- 24二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:53:00
にゃんこスイーピー可愛すぎた……
一度猫になってさんざんスキンシップ取ったから、ウマ娘に戻ったときに前より大胆になってるのイイ - 25二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 16:16:34
かわいい… これが次のストイベってマジですか?
- 26二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 16:17:50
お、完成したのか
おつおつ - 27二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 17:20:11
魔法を鏡で反射できるのかってスレ立ててまで考えてたやつか
おつかれさん - 28二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 17:54:54
- 29二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 18:16:43
実にほほえま&かわいらしいSSで大変美味でした
スイーピーはなんかエミュしやすいのか良質SSが定期的に投稿されてありがてぇな・・・ - 30二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 21:54:39
スイープあげ
- 31二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 00:54:47
夜中あげ