両者、向顔

  • 1二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:03:36

    ミオリネの合図と同時に互いの機体が向き合う。

    聞きたいことが山ほどある。けど、今はただこの決闘に集中しなければ。

    「では、スレッタ・マーキュリーから決闘の口上を」

    「…勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず」

    「操縦者の技のみで決まらず」

    「「ただ結果のみが真実」」

    「…フィックスリリース!」

    それから暫く。開始直後こそ互いに凌ぎを削るビームとファンネルの撃ち合いだったが、今までの皆との決闘から近接戦の経験と研鑽を積んだスレッタとエアリアルが優位を取り、べギルベウをあと僅かという所まで追い詰めていた。それでも彼女は未だに余裕のある笑みを浮かべる。

    フェルシー「いけー!やっちゃえー!!」

    ペトラ「行ける…行けるぞ…!」

    ラウダ「そうだね…やってみたら意外とあっさり──」

    グエル「いや、多分まだだ」

    ラウダ「え?」

    優勢に回ったスレッタに安心しかける弟たちとは対照的に、グエルは厳しい表情を崩さない。

    グエル「まだ、何か…」

  • 2二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:06:08

    エルノラ「強くなったわね、スレッタ。娘たちがここまで強くなってくれたのは親として誇らしいわ」

    スレッタ「お母さん!!もうこれ以上──」

    エルノラ「…前にも教えたはずよスレッタ。いくら貴方が天才とはいえ、敵の底を見誤るのはパイロット失格だって」

    スレッタ「え…?」

    エルノラ「っ……パーメットスコア……4!!」

    スレッタ「!?」

    その単語が出た瞬時にスレッタと委員会室に動揺が走る。

    ミオリネ「そんな、まだ上があるわけ!?」

    シャディク「そんな…理論上、パーメットスコアは3段階以上の運用は不可能なはず……」

    デリング「いや、前例はある。一件だけだがな」

    チュチュ「そ、それマジなのおっさん!?」

    デリング「ああ。そしてそれはかつて彼女の所属していたヴァナディース機関襲撃の際の報告に記されていた」

    ロウジ「つ、つまり彼女が……」

    デリング「いや、その記録を出した者の名はナディム・サマヤ。エルノラの夫にあたる人物だ。」

  • 3二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:09:09

    ニカ「そ、それなら……」

    スレッタ「ぁ……ああ……」

    デリング「そう、スレッタ・マーキュリー……奴の父親だ」

    ミオリネ「そんな……」

    エルノラ「スレッタ、一つ面白い話をしてあげるわ」

    スレッタ「え……?」

    エルノラ「パーメットスコアはね、数値を4以上に段階を引き上げると肉体がその負荷に耐えられず命を落とすの。ナディム……あなたのお父さんがそうだったように。そうよね、シャディック君?」

    シャディク「ええ。だが現に貴方は……」

    エルノラ「そう、こうして正常に会話が出来ている。それは一体何故かしら?」

    スレッタ「そ、そんなの分かんないよ!!」

    エルノラ「それはね、愛よ」

    グエル「あ、愛だぁ?」

    エルノラ「ええ、そうよ。デリング総帥、貴方ならその意味もお分かりではなくて?」

    ミオリネ「え…?」

    デリング「……」

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:10:41

    普段はまるで鉄仮面を崩さないデリングの眉が微かに動く。

    ペトラ「ま、まだ何か隠してんのかよ?」

    セセリア「何か知ってるなら早く吐いたらどうです、元理事長さん?」

    フェルシー「そうっすよ!この期に及んで勿体ぶることないじゃないっすか!!」

    ミオリネ「……詳しく話して。多くの命を奪ったあんたにはその義務があるはずよ」

    デリング「……今より三年前のことだ」  

  • 5二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:11:49

    エラン「三年前…プロスペラとして活動していた彼女がシンセーのトップに就任した年……」

    デリング「そうだ。報道機関に圧力をかけたため幸いにも競合他社や世間に知られることは無かったが……今より三年前、ベネリットグループに所属する傘下企業の一つであるグラスレー・ディフェンス・システムズが何者かの襲撃を受けた。そしてグラスレー社がかつてヴァナディースを襲撃した際に鹵獲し、長年に渡り保有していたルブリス試作機が盗まれるという事件が起きたのだ。……あれはお前の仕業だな、エルノラ」

    エルノラ「ええ……私も機体を回収して驚いたわ。まさか修復されたルブリスのシステムにあの人の精神が眠っているなんてね。ここまで言えば分かるでしょう?」

    シャディク「限界を超えたナディム氏の肉体はパーメットスコアの負荷に耐えきれず消失…そしてその精神はルブリスと一体化したというのか……」

  • 6二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:12:49

    エルノラ「正解。…では最後に、私が本来理論上あり得るはずのない4の負荷に耐え、今なおこうして健在な理由は?」

    スレッタ「いや……やめて……私聞きたくない!聞きたくないよお母さん!!」

    頭では分かっていても心が、自分の中にある倫理観がその理解を拒む。

    エラン「それは……」

    誰もが言い淀む。それに対して当のエルノラだけはそんな誰も答えない状況を待っていたかのように満面の笑顔で種明かしをする。

    エルノラ「そう、ルブリスのAIシステムを私が今搭乗しているべギルベウに移植し上書きしたから」

    スレッタ「ああああぁぁぁぁ!!」

    エルノラ「ふふ、これで私とあの人は一心同体。あの人が私を守ってくれる。そして私はあの時の……あの人を、先生を、皆を無意味に虐げたデリングとこの世界への復讐を果たす。…ね、スレッタ。家族の愛って素敵でしょう?」

  • 7二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:13:29

    グエル「く、狂ってやがる…」

    あまりの悍ましさに誰もが苦虫を噛み潰したような顔をする中でグエルが吐き捨てる。

    スレッタ「いやぁ……こんなのやだよぉ……」

    大粒の涙を流すスレッタ。実の家族の受け入れ難い真実を突きつけられた彼女の戦意はとうに失われていた。

    ミオリネ「スレッタ!」

    エルノラ「ねぇ、ナディム。私たち、今まであの子たちに何一つ満足にしてあげられなかったけどようやく親らしいことが出来そうよ」

    エルノラは恍惚とした表情で愛おしそうに機体を撫でる。

    スレッタ「……」

    ミオリネ「スレッタ!!しっかりしてスレッタ!!」

    涙も枯れ、虚な目をした今のスレッタにミオリネの必死の呼びかけは届かない。

    ガクンと脱力したようなエアリアルにフィールドの端まで追い詰められていたベキルベウが体勢を整え向き直る。

    エルノラ「さあ、改めての親子喧嘩といきましょうスレッタ。私たち夫婦の絆が勝つか、貴方たち姉妹の絆が勝つか。この大事な思い出を家族四人のアルバム、その記念すべき一枚目にしましょうね」

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:20:08

    ・3話のAI操作の黒幕ママ説
    ・エアリアル=エリクト説
    ・前作鉄血のアインシステム
    ・エヴァのシンクロ率とLCL融合
    これらを基に書いてみました。
    ガンダムは劇場版ハサウェイと鉄血と水星しか知らないので、他のガンダム作品の設定で肉体消失とかはSF考証上あり得ないので多分設定無視です。反省はしているが後悔はしていない。

  • 9二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:30:58

    朝からいきなりこんな重いSSを浴びせてくるんじゃあない

  • 10二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:33:20

    健康的な女の子の曇らせはいい…

  • 11二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:35:44

    こういうの見たらやっぱママがラスボスかもと思っちゃうよなあ。ダブスタクソ親父はどう見ても表向きのボスだし

  • 12二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:40:31

    重い…あまりにも…

  • 13二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:44:48

    朝から特大の爆弾投下しやがって…

  • 14二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:48:36

    >>10

    お辛いのと曇らせによる興奮で脳が破壊と再生を

    繰り返すような感覚に陥ったよね

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