【CP】ぺーたん×マリアンヌなSS

  • 1122/10/23(日) 20:05:13

    ワノ国の外で出会った女は、おれが初めて見るタイプの女だった。

    …思えばおれの周りにいたのはおれを溺愛し過ぎる姉貴に、頭のイカれたヤマトに、何考えてるか読めないブラックマリアくらいのもので、そいつら以外の配下たちはそもそも付き合う事はもちろん、結婚なんか到底考えられないくらい粗暴な奴らが多かった。

    そんな環境で育てばその逆の女がタイプになるのも仕方のない事なのかも知れないが、まさかおれの好みそのものみたいな女がいるとは思わなかった。

    穏やかで落ち着いてて、グイグイ来る事も自分の考えを押し付ける事もない。
    小柄で髪が長くて、性格もキツい所がない。
    無口という程でもないが、お喋りという程でもない。
    それとお茶が似合う大人しい女で、なんとも平和な奴。…いや、のんきと言うのが正しいか。

    そいつの名前はマリアンヌ。
    おれの人生で見たことない性格の女。

    こんなに穏やかな女とは初めて出会った。

  • 2122/10/23(日) 20:08:09

    行き倒れたおれをコイツが助けてくれた。
    ワノ国から追い出され、姉貴ともはぐれた今、コイツに頼るのが1番だと判断して居候させて貰っている。
    行く宛てのないおれを家に住まわせてくれた事は本当に感謝してる。
    お互い素性や過去の事はあまり詮索しない様にしてくれる事も助かる。

    だからおれは恩返しにやれる事はやってやる。
    家事や掃除をしてやったり、肩が凝ったと言われればマッサージしてやったりと、とにかく何でも。
    …姉貴もこんな穏やかな感じで頼んでくれりゃ、おれも苦労はしなかっただろう。
    ただ、その姉貴のお陰でこういう事が出来る様になっている訳だが……もしかしたらいつか姉貴と離れる事を見越してやらせていたのかもな。

    それに、マリアンヌは話してみるとなかなか面白い奴だった。

    「へぇ。お前画家なんだな」

    「うん。ページワンも描いてあげようか?」

    「…そのうちな」

    「そ。別にいいけど」

    万事こんな感じで話が終わる。
    自分から誘っておきながらやる気が続かないというか、興味がないというか。なんなんだ?
    …だが、正直言っておれにとってはそれが心地いい。余計な苛立ちもプレッシャーもない。
    追い求めていたストレスのない穏やかな日々を送れてありがたい。

  • 3122/10/23(日) 20:11:05

    「ページワン、そろそろお茶にしようよ」

    「ああ、今用意してやるよ」

    マリアンヌは茶が好きらしく、よくおれを誘って外で飲む。

    何故そんなに好きなのか前に聞いた事があった。マリアンヌが言うには絵に行き詰まった時の息抜きに飲み始めたらいつの間にかハマってたとか何とか。
    おれのこれまでの環境下では落ち着いて茶を飲むなんてほとんど無かったから理解の出来ない考えだった。

    だから、それだったら1人で飲んだ方がリラックス出来ていいんじゃねェのかと言ったら珍しくマリアンヌに怒られた。

    1人でお茶するより2人の方が楽しいって。
    そんな、耳まで赤くして怒る事ねェだろうに。

    だがそれ以来、おれはマリアンヌのお茶の誘いには必ず応じる様にしている。
    風の音や水のせせらぎを聞き、ゆったりと茶の香りと味を楽しみ、2人で取り留めのない話をする。

    表情のほとんど変わらない女が珍しく笑顔になるこの時間が、いつの間にかおれも好きになっている様だ。

  • 4122/10/23(日) 20:14:05

    「じゃあいつもの奴お願いね」

    「ああ、こっち来いマリアンヌ」

    一息ついた後、おれの膝枕で昼寝をするのがコイツの言う"いつもの"だ。
    …普通、女が男に膝枕するもんなんじゃねェの?
    別にいいけどさ。

    いくら好きでもずっと絵を描き続けていれば、行き詰まったりストレスや疲れが溜まったりもするだろう。
    少しでもコイツが癒されるのならおれの膝くらいいつでも貸してやるよ。
    何気におれも楽しんでる部分はあるしさ。

    落ち着いて周りの景色や音を楽しむ。
    今はまだ暖かいから良いが、いつか冬になったらコイツはどうする気なんだろうな。
    ああ、家の中ですりゃいいのか。
    …いや、そもそもおれはいつまで居候するつもりなんだ?

    だが暖かい日差しと風がおれたちを包み込むと、だんだんおれまで眠くなってくる。
    なにより、おれの膝で気持ち良さそうに眠るマリアンヌの顔を見てると全てがどうでも良くなる。
    …なんて心穏やかな時間なんだろうな。

    そんな下らない事を考えながら結局おれも眠りに落ちた。

    「…zzz」

    「……。おやすみ、ページワン」

  • 5122/10/23(日) 20:17:07

    夜、そろそろ寝ようかとベッドに向かうと布団の中に不自然な膨らみを発見。

    …マリアンヌの行動はたまに読めない時がある。
    芸術家ってのは人と異なる感性や考え方の持ち主が多いと聞くが、コイツもそうなんだろうな。
    まぁそれがおれには新鮮で可愛く思えるが。

    だがこのままじゃ眠れないだろ。
    仕方ないからどかさねェと…。
    悪いが部屋に戻ってもらうぞ。

    「…なにしてるんだお前」

    「ページのベッドで寝てるの」

    「そろそろ寝たいから部屋帰れよ、マリアンヌ」

    布団から少しだけ顔を出しておれをじとっと見てくるマリアンヌの頭をなんとなく撫でてやると今度は布団にすっぽり隠れちまった。
    …やっぱり意図が読めない。

    「どうした?」

    「…する?」

    「いや、何言ってんだよ…」

    「ページが決めて」

    「…お前なぁ」

  • 6122/10/23(日) 20:20:12

    色恋沙汰の経験のないおれでも、さすがに今のが何の誘いかくらいは分かる。分かるがそれはまだ早いだろ、おれたちには。

    「私は別にいいし」

    「"そういうの"って好きな奴同士でするもんだろ?」

    「……」

    また顔を少しだけ出し、いつもみたいにのんきな目でおれを見てくるコイツを逆にからかってやりたくなって、少し行動を起こす。これで少しは反省しろ。
    男を誘うって事がどういう事なのか分かれよ。

    「……お前、おれをからかってるつもりなら…」
    「こんな事されても仕方ねェよな、マリアンヌ」

    からかわれた仕返しに布団を剥いでマリアンヌにのしかかり、顔を近づけて脅してみる。

    目をじっと見詰めてやるとみるみる内に泣きそうな顔に変わっていった。
    嫌ならさっさと部屋帰るだろうと思ってやった事だが、何か決意した様に顔を耳まで赤くしてゆっくりと目を閉じたマリアンヌを見て、何故か急に恥ずかしさと罪悪感がおれを襲った。

    「……悪かった。おれ今日向こうで寝るから」

    それだけ告げて部屋から出ようとした時、後ろから小さな声で「意気地無し」と聞こえたのは幻聴じゃないんだろうな。

    …だが、まだ付き合ってもねェだろ。おれたち。

  • 7122/10/23(日) 20:23:05

    「おはようページワン」

    「ああ、おはようマリアンヌ」

    昨日の事が気まずくなって顔が見れない。
    怒ってたら厄介だ。どうする?
    …だがコイツは好きでもない奴をからかったりする様な女じゃねェとは思う。だから、なおさらどうしてあんな事をしたのかが理解出来ない。
    何故か少しだけ胸が痛むが、理由が分からない。

    「今日は何かしたい事ある?」

    「……。いや、特には」

    やっぱりコイツの意図が読めない。
    気にしてないのか?忘れようとしてるのか?
    怒ってないならそれでいいが、いつもと変わらないマリアンヌの表情からは何も読めない。

    「ページワンは休みの時なにしてたの?」

    「訓練とか、カイド……船長の酒に付き合わされたりとか、だったっけな。ロクな思い出ねェよ」

    「あなた自身の趣味とか、好きな事とかは?」

    「……無いな。多分」

    他人に言われてみて初めて理解した。
    あそこで必要なのは強さだけだった。何故なら強いものだけが自由に振る舞えるから。
    おれは姉貴と離れたくなくてそれなりに強くはなったが、その代わり人として色々と犠牲にしてきた部分はあったのかもしれない。

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:23:12

    普通の大学生の恋愛を見てるみたいだな

  • 9122/10/23(日) 20:27:08

    「じゃあ今日はページワンの趣味を探しに町に行こう」

    「ああ?そんなの別に…」

    「あなたが前に居た海賊団がどんなのかも、そこで何があったのかも興味ないけど、趣味が無ければあなたの人生にあなたの色はつかないよ」

    「……」

    人生の色、か。そんなの考えた事も無かった…。
    思えばキングやクイーンもそれなりに趣味はあったと思う。…まぁ拷問と研究を趣味にカウントしていいのかは分からないが。

    確かに今のままのおれじゃ真っ白なままだ。
    いや、そもそも色さえ着いてないかもしれねェ。

    …やっぱりおれ自身の色で染めるべきなんだろうか。
    だが、何色で?どうやって染めればいい?
    おれは何も知らないまま育ってきたんだろうか。

    「どう?」

    「わかった。行こうかマリアンヌ」

    おれの人生の色を探しに。

  • 10二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:28:05

    出来の良い新ジャンルに困惑している

  • 11二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:29:34

    やっぱりペーたんにはホワッとした女の子が似合うよね
    かわいいカップルだな…

  • 12122/10/23(日) 20:30:16

    町で楽しそうに画材や資料を買うマリアンヌをぼーっと眺める。
    1つ手に取る度にこれはどういう道具だの、それはこういう資料だの解説を付けてくれるがおれには半分も理解出来なかった。

    それより、こんなに楽しそうなマリアンヌを見るのは初めてだ。コイツは普段ずっと落ち着いてるから、表情も大きく変わらないような奴だとばかり思っていた。

    マリアンヌ、お前こんな柔らかい顔出来るんだな。
    それを見てどこかおれの心が温かくなる気がする。なんだろうな、初めて感じるこの気持ちは。

    それと、この町の奴らはみんな優しい。
    おれの知ってるカタギの奴らはみんな恐怖と怒りに満ちた目でおれたちを見ていた。
    だからこういうのも初めて見る。
    あんなに穏やかに会話って出来るもんなんだな。

    「おや、マリアンヌちゃん。とうとう彼氏できたのかい?優しそうな人で良かったねぇ」

    「……」

    「あー、悪いがそうじゃねェんだ。それよりさっさと会計してくれ」

    こうやって時折恋人扱いされるが、その度にコイツは下向いて黙ってしまう。多分怒ってるよな。
    …嫌な思いさせて済まないな、マリアンヌ。

    でも顔赤くしてまでムッとする事ねェだろ。

  • 13122/10/23(日) 20:33:33

    マリアンヌに教わって色々と芸術とやらに触れてみるが…彫刻は結構興味を引いた。

    ただの石や木を彫るだけで1つの作品になる所がいい。それにマリアンヌの絵を見ちまうとおれに絵は無理だとしか思えないしな。

    だが、おれが試しに彫ってみるとガラクタかゴミしか出来ない。どうやればいいんだ?
    …やっぱり難しいな。だが、だからこそ面白い。

    「なぁ、お前は彫刻やらねェのか?」

    「私は絵画専門だよ。画家だし」

    「それもそうか…」

    「初めから上手く出来る人なんていないから、家でゆっくりやってけば良いの」

    「……。そうだな」

    "ゆっくりやってけば良い"

    お前はおれがここに居る事を望んでいるのか?
    おれはいつまで居ていいんだ?
    答えが出ない。マリアンヌに聞く勇気がない。

    …おれはどうしたいんだ?

  • 14122/10/23(日) 20:36:32

    あれからしばらく経った。
    彫刻の方はゴミじゃなくてヘタクソな何かを作れる様にはなった。
    それもこれも色々教えてくれたコイツのお陰だ。
    日に日におれの中でマリアンヌという存在が大きくなっている感じがする。

    だから今夜、いつもみたいに2人で食後の茶を飲んで話してる時に感謝を伝えてみる事にしたんだ。

    「お前のお陰で最近人生楽しく過ごせてるよ。…ありがとな、マリアンヌ」

    「別にいいのに」

    「いや、ありがとうくらい素直に受け取っておけよ。おれの気持ちだ」

    「……」

    「全部、お前のお陰なんだよ」

    「…。そうかな」

    「ああ、そうだ。ありがとう」

    まっすぐに目を見てそう伝えると、帽子を深く被って顔を隠してしまった。
    …なんだろうな。なんとも言えない気持ちだ。

    また胸の中が暖かくなる。だが初めて抱く感情の意味をおれはようやく理解できた。

  • 15二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:36:47

    マリアンヌ 18歳 145センチ
    ページワン 20歳 171センチ

    可愛いすぎか

  • 16122/10/23(日) 20:39:03

    「それともう1つ。お前に伝えておきたい事がある」

    「…なに?」

    「大切な話なんだ」

    「……」

    「……おれはお前の事が…好きになった」

    「……」

    「ずっとおれの側に居てくれねェか、マリアンヌ」

    マリアンヌはおれが告白を始めてから終始無言だった。相変わらず考えの読めない女だ。

    だが赤い顔しておれの頬にキスをくれたのなら、さっきの告白は成功って事でいいよな?

    「…嬉しいよ」

    「そうか。おれもだ」

    「あんなにまっすぐ言われると…ちょっと恥ずかしい」

    「これでも勇気を出して言った方だぞ。少しくらい褒めてくれよ」

    そう言うと今度は唇に優しい感触が届いた。
    …これが勇気を出したご褒美って事か。

  • 17122/10/23(日) 20:42:05

    マリアンヌに影響されて好きになった茶と彫刻は今でも続けている。
    2人で茶を飲んだり、飯を食いながら作品について話し合ったり、今度どこに行こうと話したり、前と変わらない穏やかな日々を過ごしている。

    変わった事と言えば、夜一緒に寝るようになった事だろうな。

    おれが寝る為に部屋に入るといつかの時のように布団が膨らんでいて、前と同じように少しだけ顔を出したマリアンヌがおれをじっと見詰める。この行動は物静かなマリアンヌの可愛らしい勇気の出し方なのだと最近ようやく理解が出来た。

    こんな優しい生活が出来ているのも、全てはおれを受け入れてくれたマリアンヌのお陰だ。
    アイツには感謝してもし足りない。
    あまりに多くのものを教わってしまった。

    出来る事なら残りの人生はずっとマリアンヌと共に歩んでいきたい。

    「なぁ、おれに穏やかな人生をくれて本当にありがとな。感謝してるよ」

    「私こそ。いつも一緒にのんびりしてくれてありがとう。それと…」
    「…愛してるよ、ページ」

    「ああ。おれも愛してるぞ、マリアンヌ」

  • 18二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:42:42

    >>15

    身長差最高…

  • 19二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:44:00

    絶対幸せになってほしい2人

  • 20二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:49:10

    ゆるかわいい

  • 21二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:49:52

    なんでこの2人を選んだか知らんけど好き

  • 22二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:50:50

    みんな微笑ましく見守ってそう
    若くて眩しいぜ

  • 23二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 21:05:26

    立ち会えた…!ありがとう>>1

    少しずつ自分の気持ちに気づいて向き合っていくページワンも、何でも無いように見せ掛けて内心物凄く勇気を振り絞ってるマリアンヌも可愛すぎる…!

  • 24122/10/23(日) 21:07:44

    >>21

    だって2人とも可愛いじゃん?

    絶対相性良さそうじゃん?

    たまにはぺーたんに普通の恋愛して欲しかったし

  • 25二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 21:13:59

    美術館行ってカフェでゆっくり感想言い合って欲しいなこの2人

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