ふーんこれがあにまんか・・・

  • 1二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 00:18:56

    千束が来ましたー!

  • 2二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 00:38:29

    こんなところに来てはいけませんよ、千束

  • 3二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 00:43:12

    >>2

    おはたきな

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 00:44:26

    たきなの名前が入ってるスレが161まで伸びてるの普通に恐怖だろ

  • 5二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 01:05:39

    狂犬たきな部見てドン引きしそう

  • 6二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 01:26:36

    クルミに爆破されたら終わるからな…

  • 7二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 01:30:15

    たきながスレに乱入

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 02:11:09

    >>5

    今じゃ千束の風評被害の方がすごくなってるからな…

  • 9二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 02:55:50

    あにまんで婚活よ

  • 10二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:38:22

    別に見るつもりじゃなかった。
    たきなのスマホにちょっと映ってて
    面白そうな掲示板だったから自分でも覗いて見ようかと……。それだけだったんだけど……。

    「狂犬レズたきな部……161……?」
    「いやらしリコリス……?」
    「……わたしが乳首弱い……?」
    「シチューパイ女?」

    ううう……。なにこれ、風評被害ってやつ?
    そうか、たきなは調査してくれてるんだね

    たきなはレズじゃないよ、多分。
    土井さんの件はちょっと好みが違っただけだし
    おしりと胸の件はセクハラもいいとこだ。

    それより、私のガチ恋部は10個ぐらいしかないんだけど、どういうこと?
    たきなは160以上あるのに!

    なに? 黒髪ロングなの? 敬語キャラ?
    やっぱみんなそっちのほうがいいの?
    確かにたきなは最高だけど……
    ここまで差をつけられると悲しい。

    私も髪を黒にして敬語を喋ってみたら
    ワンちゃんあるか?

    皆さん、千束が参りました!

  • 11二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:57:01

    たきなアンチスレ荒らしてそう

  • 12二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 07:15:27

    帰れ帰れ帰れ帰れ。

  • 13二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 07:36:30

    最近あにまんがよく落ちるのはクルミがあにまん潰そうとしてるからだしね
    管理人ちゃんすぐ復旧したりして抵抗してるから充分頑張ってるよ

  • 14二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 08:18:21

    >>10

    あそこは実質ちさたき部だから…たきなガチ恋部は前ちょこちょこ立ってたけどほぼスレが完走しないで落ちる

  • 15二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 14:20:10

    銃弾躱した後のスンとした時とおんなじ目で見てそう

  • 16二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 16:05:33

    クルミお疲れ様ーw

  • 17二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 00:53:34

    >>10

     リコリコに向かう道すがら、たきなに出会う。

    「たきな、おはようございます」

    「……? おはようございます、千束」

     なんかたきなが変な目で見てくる。

     いや、いきなり黒染めしたら変かなーと思って敬語キャラになってみようと思ったんだけど

    挨拶だけでバレてない?


    「今日は一段と寒いですね」

    「……そうですね」


    「……千束、どうしたんですか? 変なものでも食べましたか?」

    「あ、いえ、そんなことはないですよ」

    「そうですか……」


     あれ、たきななんか悲しそう? なんで? えっ。

     でも私だってもっとスレ立ててほしいし、今の人気に乗ってみたい。

    これからは敬語キャラの時代なんですよたきなさん。

     もしや、たきなはそのブームを知っててなのか? くぅ、やるねえ……流石だわ。

    でも千束さんも負けないから! 見てらっしゃい!

  • 18二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 06:50:23

    >>17

    掲示板を気にするかは知らんけど千束はこういう突拍子もないことし出す

  • 19二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 07:50:43

    なぜこんなスレからssが生まれているのだ

  • 20二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 08:51:08

    >>19

    脳内で千束が喋るから……

  • 21二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 11:39:10

    千束は一話でネットの評判気にしてたからね

  • 22二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 12:15:19

    うるせぇうんこ食ってろ

  • 23二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 12:33:01

    たきなのパフェうんこって言うのやめろ

  • 24二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 23:30:15

    ネットの評判を気にする→あにまんに行き着く
    もう末期だよ

  • 25二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 23:52:36

    実際本編の千束はもう人生の末期だったから…

  • 26二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 23:55:49

    >>13

    🤖〈そうだ!もっと僕をねぎらえ!

  • 27二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 23:56:50

    >>17

    「おはようございます。先生」

    「おー千束、そういえば……え、お、おはよう」

     あれ、先生も目を丸くしてしまった。

    ミズキにいたっては胡散臭そうな目で私を見ている。

    そのあとすぐにたきなに目線をやるが、たきなは無言で首を横に振った。


    「あの、千束。わたしなにかしましたっけ」

    更衣室に入るやいなやたきなが私に詰め寄る。

    「いえ、たきなは何もしてないですよ、どうしたんですか?」

    「そうやって敬語使うの、千束らしくないです。わたしと距離を取りたくなったんですか?」

    「たきなだって使ってるじゃないですか。たきなもそうしたいんですか?」

    我ながら意地悪い返しだと思う。でもキャラ変更は一日にしてならず。頑張れ私

    「そんなわけないじゃないですか……! 誰があなたと距離をとりたいんでs……だよ!」

    「え?」

    「千束はなんでそうなったの? わたしのせいなの?」

     た、タメ口たきなだ。ど、どうして?

    「ち、違います!」

     思ったより衝撃が強い、さっさと着替えて行かなきゃヤバイ。ううう~どうしたんだよたきなぁ〜

  • 28二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 00:15:10

    千束にまじたきスレを見せてぇ~

  • 29二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 09:12:55

    千束から距離を取られたと勘違いしてタメ口になるたきないいよね・・・

  • 30二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 10:12:10

    >>27

    ……でも待てよ? タメ口たきなって意外と可愛いし

    たきなが敬語キャラやめたら人気も私に移ってくるんじゃ……!

    それに真面目なたきなが私以外にもタメ口使うわけないから

    実質私独り占めじゃん! やった!


    よし、このままいこう。

    んーしかし、今はたきなに壁ドンされている状態。

    この子ほんと無意識でこういうことするよね、よくないよ心臓に。


    「……なんというか、く、訓練というかですね?」

    「く……訓練ですか」

    「そ、そう。私っていっつもフレンドリーな元気キャラじゃないですか。

    もうちょっとこう、お淑やかキャラを開拓した方がですね、潜入とかに便利じゃないですか。

    Bar Forbiddenみたいなところに入ることも今後もまたあるかもしれませんし」

    「……なる……ほど」

     お、ヨシ、この調子でいこう。

     疑惑を持った目は少し薄らいでくれている。

    「だから、たきなは私にだけは敬語をやめてくださいね? 訓練ですし」

    「わかり……わかった」

     ふぅ……。壁ドンが解かれるのって少し寂しいね? 

  • 31二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 16:14:42

    >>30

    まあ、リコリコメンバーとだけ敬語に変身したってだけで、

    お客さんとはもともとそうだから違和感はそんなにないよね。

    よく観察している常連さんじゃなきゃ気づかないぐらいだしー。

    さぁて、今日の仕事が終わったらたきなを家に呼んで

    思う存分タメ口たきなを堪能するぞぉ~。


    カランカラン、ドアが開く。

    「いらっしゃいませ~」


    私の前に現れたのは、フキだった……!


    「あ、フキさん。ご無沙汰しています。何かあったんですか?」

    ささっとたきなが出てくる。ありがたい。ここは……彼女に任せて……。


    「おい千束、DAからの指令だぞ、受け取れ」

    「あ、はい……」

     そうだった、私はすっかりリコリコメンバーとだけ話すことを想定していたが

    クソ、こいつらもいるんだった。ど、どうする私!

    「じゃ、渡したからな。早く返事出せよ」

    「ありがとうございます……」

     ボソ、と私が言うが、なんだかフキはこちらを気にして

    「とうした? 体調でも悪いのか? いつものようなバカ元気はないみたいだが……」

    「いえ、そんなことは……」

     ちら、とたきなを見る。な、なんで? そんなキラキラした目で見ないで!

     あのフキさんとも徹底するなんて素敵です! みたいな目で見ないで!

    「……ん、まあ大丈夫ならいいけどよ、お前は突っ走りすぎなんだ、二人しかいない部署で大変だと思うが

    その時はちゃんと言えよ」

    「はい……」

     ぐ……。私は殆ど何も言えずにフキを見送った。

  • 32二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 16:20:48

    >>28

    一人で書きこんでるスレをか

  • 33二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 17:26:15

    ssありがとナス!

  • 34二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 20:11:42

    続いてるのか…

  • 35二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 23:23:19

    >>31

    //こんなんでいいのか……


    「流石です……流石だね! 千束! フキさんとは少し心理的抵抗があるかと思ったけどそれでもできちゃうなんて!」

     手をグーにして胸の前に持ってきて褒めてくれる。心苦しい……。

     流石とか言われちゃうと今後もこれやらなきゃいけないじゃん。


    「そ……そうですね! 当然です! 私はファーストですから!」

     ええい、たきなに褒められる快感に私は屈するぞ!

     そもそも丁寧な言葉で喋りかけるのって別に悪いことでもなんでもないし、ぶっちゃけこれからこの習慣で

    いいんじゃないかとすら思える。


    とりあえず、アレを乗り切ったご褒美に(?)私はたきなを家に招待した。いやまあいつもの奴ですよ。


    「たきな、いらっしゃい」

    「ありがとう、千束」

     ほんとかわいいなぁうちのたきなは、どこ出しても可愛い。


    「訓練疲れない?」

    「平気ですよ、意外と慣れてしまえば問題ないかと。たきなはどうですか?」

    「わたしも意外と慣れてきました、じゃなかった、なれたよ」

    「ふふふ、お互い頑張りましょう」

     ちょっと余裕が出てきたぞ、私! ああなるほどね、余裕がありそうなキャラが人気ってわけですよ。

    確かにたきなは冷静沈着で、動じないし……? うん、なんか違う気がしてきた。無表情で敬語なだけで

    動じている気がする。分かりづらいだけで。余裕なキャラってやつじゃないかもしれないぞ。

    あれ……人気要素ってなんだ……。

  • 36二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 23:38:47

    お前人気投票だとたきなにダブルスコア近くつけてるのに……

  • 37二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 05:21:32

    >>35

    こんにちは、井ノ上たきなです。

    最近、千束が丁寧に話しています。正直驚きました。がさつで粗暴で口の悪いあの人が

    教科書みたいな話し方をするようになって。

    何か怒っているのかと思って問い詰めたりしたのですが、訓練の一環のようです。


    確かにわたし以外にも同じようにしているし、わたしを避けているみたいな傾向はみられません。

    今まで通りの関係でいます。家にも連れて行ってくれますし。


    ですが……。


    とても余裕を感じるような雰囲気になっていて、話し方で人はこんなに変わるのかと。

    凄い実力者の風格が全身から湧き出ているのが見えます。何事も焦る様子もなく、ニコニコと笑っていて物腰柔らかで、ああこれがファーストなんだと思うと尊敬の念が生まれてきます。


    こんなに格好いいならずっとこのままでいてほしいですね。

    そうお願いしてみましたら、了承してくれました。ありがたい……。

  • 38二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 06:13:29

    >>37

    一週間ほど丁寧な生活を送ってきたわけだが……。

    ネットの評判はどうだろうな、と思ってまた覗いてみたんですよ。


    「おっっ!!」

     私、一位じゃん! 人気ランキング一位じゃん! たきなの二倍の得票じゃん!

     え、マジで? 敬語効果すごっっ!


     たきなもそうなんだけど……。あ、そうか、ギャップ萌えか!

    真面目な外見のたきなが丁寧だと普通だけど、元気っ子な私がそうだと

    「グッ」とくるのかもしれないぞ!


     ……じゃあ、えっ、このまま? 一生このまま?

  • 39二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 08:43:40

    引っ込みがつかなくなる千束はある

  • 40二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 08:46:55

    クルミがキリの良いところで全履歴削除して
    もうあんな掲示板行くんじゃねーぞされるオチ

  • 41二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 10:40:32

    リコリス・リコイルあにまん編

  • 42二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 11:53:35

    >>38

    「ここは私に任せて、たきなはこちらで待機してください。先に彼らの体勢を崩しますのでそのあと遠的で宜しくお願いしますね」

    「……! はい!」

    千束からの指示が明瞭になる。戦闘時でも何をすればいいのかわかる。

     また麻薬密売組織の生け捕りという仕事です。わたしたちにとってはよくある仕事なので

    今更新鮮味はないのですが、ここ数週間の千束とするのは初めてです。

     千束がテテテテと走って敵の集団を崩す。そこからわたしが、重武装の者の脚などを撃っていく。

     そして千束は数人を倒すと壁を背にして警告する。


    「皆さん、これ以上抵抗するともっと酷いことになりますよ。あなた方はただ単に雇われただけですよね、

    そこまで雇い主に義理立てする必要はないと思いますよ」

     

     カッコイイ……! 

     プロの振る舞いだ……!


     戦闘中にも関わらずわたしはごくりと唾をのんだ。

  • 43二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 13:31:43

    ゆっくりと続いていて楽しいな

  • 44二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:08:34

    >>42

    「……千束、凄い! わたし、とっても尊敬しちゃう!」

     たきなに褒められまくって私はもうやめるタイミングを失う。

     いいんや……これで……。私の運命は敬語キャラなんや……。

     

    「そんな、余り褒められると恥ずかしくなってしまいます」

     言葉によって性格が変わるということを最近実感してしまう。

    なんというか、たきながグイグイくるようになって、私が控えめになるようになった。


    私が下がって、彼女が前に来るから距離としては変わってはいないし、

    付き合い方もいつも通りだけど、たきながかなり積極的に……なんというか

    私を可愛がってくれるようになったというか。


    「千束、帰ったらわたしがご飯作るからね! 今日は大手柄だもんね!」

    「あ、そうそう、ちゃんと節約にも気を配ってくれてありがとうね! 非殺傷弾も三発しか使わなかったし」

    「何か食べたいのある?」

    「もう、いっつも『なんでも好き』なんて言っちゃって、ほんとは考えるの面倒なんでしょ? もー」


    ね……? ヤバくない? やばいでしょ、これはやばいよ、別の意味で人気出ちゃうよ!

    人懐っこい美人って枠になっちゃうよ! これはまずいよ!


    ヴぅぅぅぅ! あっまたあにまん掲示板でたきな部が170まで伸びてるじゃん!

    私……どうしても、ダメなのかな……。

  • 45二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 00:37:26

    たきな部は実質ちさたき部だから千束スレでもあるから・・・

  • 46二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 00:50:24

    なんならpartの半分以上は千束の話してるぞ

  • 47二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 00:51:29

    >>44

    あと、これは発見なんだけど、たきなにため口喋らせると

    どことなく関西の抑揚が入ってくる。

    それがとっても可愛い……(語彙力死亡)


    しかも私とだけの訓練ってことにしてあるから

    他の人には丁寧で、私にだけ京言葉(京都弁って言ったら訂正されてしまった)の

    雰囲気で喋ってくるからほんとに……私の理性さぁ、ムリだよね。


    「千束のオムライスっていつっも絵が描いてあってカワイイよね」

    のカワイイのところが、カワ↓↑イ↑イになってるの、ほんとすき。


    しかもさぁ……表情も豊かになっちゃってさあ……心臓がバクバクですよ、

    ないけどね? ないけどね? 電波塔ジョーク。

    あ、これたきなに言うと表情が一瞬暗くなるから言わないんだけどね?


    「千束も言葉だけ丁寧にするんじゃなくてさ、所作も覚えたほうがいいんと違う?」

    って色々本まで買ってきてくれたり、動画を送ってくれるようになった。


    それで、それの訓練ってことで小鉢とかに分けられた和食とかも出してくれるようになって

    箸の使い方も特訓することになったわけですよ……。

    たきなのご飯が食べられるのはとっても嬉しいけど、これって結構大変なんだよなー。


    やっぱりたきなにネタばらしすべきかなぁ……。でもなあ……。私だって新キャラクターで人気になりたいし……。

  • 48二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 01:01:39

    あにまん監視するリコリスども

  • 49二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 01:04:40

    >>47

    千束が丁寧語生活を送ってからもう一か月以上になります。

    わたしももう慣れたものですが、やはり千束は東京で暮らして長いので

    標準語が基礎としてきちんとできているのでしょう、とてもお手本のような

    喋り方をしてくれます。


    自分の丁寧語は正直、訛りを隠すためのところも少しあるのですが

    千束のそれは凄く自然で、聞き惚れて仕舞いそうです。


    声の出し方も少し変わってきたのでしょう、高くなって、

    しかもゆっくりとしたスピードになりました。


    正直千束は年上感がなかったのですが、こんなふうになってしまうと余裕が見えて

    ドキっとしてしまいます。

    わたしがタメ口で千束が丁寧語だと傍から見ると

    逆の関係性に見えなくはないのですが、それがむしろ千束の器の大きさを示すようになってですね

    わたしも誇らしく思えます。


    所作も口では難しいと言っていますが、やはり目がいいのでしょう。

    すぐに覚えてしまって、体幹も鍛えられているので背筋がぴしっとしていて

    食べる姿でも美しいです……!


    どんどんとお出ししてしまうのですが、そうすると千束は決まって

    「とてもおいしいですけれど、たきなの負担になっていないといいのですが、沢山作らせてしまって」

    と逆に心配してくれます、今までそんなことはなかったのに。


    もしかして、こっちの千束の方が素? あーありえますね。優しいのは昔からですけど

    こう、キャラとして姉御っぽい感じで頑張ってたのかもしれません。

    相棒組むのが楽しみだったと言ってましたしね! 今まで負担を掛けていたのはこっちの方でした。すみません。

    でも、千束、これからは大丈夫ですからねっ! 

  • 50二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 08:05:19

    かわいいよなあ

  • 51二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 12:42:17

    すれ違い……!

  • 52二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 12:46:28

    定期的に長めSS書いてくれるの好き

  • 53二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 13:48:17

    千束の言葉はミズキの影響と思うわ

  • 54二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 20:24:17

    >>49

    「『錦木千束 可愛い』で検索……」

     わたしの秘密の日課。千束の可愛さは光の速度で様々な回線を通じて全世界に発信されています。

    勿論ファンがたくさんできるのは千束にとっても喜ばしいことですし、わたしも鼻が高いです。

    千束の写真と共に「この子可愛いよね」「私もリボン結んでみようかな」というのぐらいは許容しましょう。


    でもですね、ガチ恋はダメですよ。

    ガチ恋の意味わかってますか皆さん。

    千束に恋しているってことですよ? そんなのダメに決まってるじゃないですか。


    最近特に可愛いから綺麗に移っていく千束です、彼女に悪い虫がつかないように

    見張っていなければなりません。さて、わたしが囮で立てた

    「錦木千束ガチ恋部」に書き込んだ者を特定しなければなりません。


    ふふふ……クルミは買収済みです。

  • 55二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 21:29:19

    >>54

    「千束、最近お淑やかになっててグッとくるよな」

    「分かる。活発系なのにお嬢様っぽくてギャップがヤバイ」


    ……ほう。私は指を止める。あにまん掲示板で私について書かれているレスだ。

    やっぱりギャップ萌えだな。あ、最近萌えって言わないよね、なんだろ。

    まあいいや、これで私はたきなより人気者になるわけですよ。

    残念だったなたきなっ! リコリコ看板娘の座は渡さないぜ!


    ということでですね、最近は服も変えてみたんですよ。

    デニムとか、ショートパンツとかじゃなくて、マキシのプリーツスカートとか

    シンプルなブラウスにからし色のハイゲージのカーディガンとかそういう感じで。

    足元はシンプルなエナメルパンプス。

    ウェッジとかでもいいんだけど、元気っこ成分が出てくるからそれは今度ね。

    アクセサリも細めのピンクゴールドのバングルとかにしておくわけ。

    マニキュアもクリアとかにしておいて大人しめを狙っていくわけですよ。

    バッグも、キャメルのちょっとくしゅっとしたハンドバッグ。ショルダーバッグとかサコシュとかじゃくてね!

    でも髪色とリボンは変えない。これ! これですよ。


    たきなに見せたらもうほんと驚いてて、

    「綺麗めなOLさんみたいで素敵」とか言われちゃってオホホホ。

    なんか私、ヨシさんから色んな使命を言い渡されてたけど、今ならわかる。

    たきなに褒められるために生きてるんだわ……。これで決定だわ……。


    思えば、丁寧な言葉も綺麗な、大人しめの服も実はたきなが似合うものだとおもう。

    それを今は交換している状態だ。

    私とたきなはお互いの特徴を交換し合っている。他の人には一見して分かる物ではないけれど

    私たちにはわかる、そういう友情がこれに現れてるんじゃないかな?


    ……っていい話になったところで私は掲示板を更新しまくる。

  • 56二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 00:12:45

    >>55

    ギリ……っ。わたしは歯ぎしりする。

    最近の千束に対するネットの評価が高すぎる。

    千束は自分自身のことを調べたりはしないでしょうけど

    こんなのを見られたら困る。


    それに、千束の服の傾向が……どうしよう、好き……。

    好きで好きで頭がおかしくなりそう。


    でも、ちゃんとそれは言えない。


    「千束、めっちゃかわいいね」

    「わたしの真似? お揃い好きなんだね」

    「でも千束の方がスタイルいいから、わたし自信なくなっちゃうな……」


    とか色々言ってるけど、「好き」をちゃんと言えない。

    ごめんね、わたしって言葉で武装しないと何も言えないみたいで、

    皮肉も扱えないで、小さな子供みたいになってしまう。


    それなのに千束は、いろんな人を魅了してしまっていて

    それに無自覚で、わたしのところから離れてしまうみたいな気がして


    ……千束はもうわたしと一緒にいるべきひとじゃないのかもしれないな

    もう人並みの寿命がある。人生だって。

    いつまでも、ハシャいでばかりじゃなくて……。


    あれ、おかしいな。どうして。

    つつつ、と涙が垂れていく。

  • 57二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 07:43:56

    泣いてる……

  • 58二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 12:47:04

    千束はたきなにクソデカ矢印向けてるのに
    たきなが逃げてしまうのもいい

  • 59二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 20:29:11

    >>56

    今日もたきなと買い物~。服装の系統変えるから最近出費が多くてお困り中。

    ……でも、どうしたんだろう。たきな、元気がないみたい。

    こういうとき、「大丈夫?」とか聞いてもあの子は大丈夫って言う。

    「たきな、少し私疲れてしまいました、少し座りません?」

    「う、うん」

     少し手を引いて喫茶店に連れていく。

     こうでもしないと座ってくれない。


    「最近疲れますよね、新しくお客さんも増えましたし。経理のたきなからすると嬉しい悲鳴なのかもしれませんけれど、休養もした方がいいと思います。っとまあ、私が連れ出してしまいましたけどね」

     これ以上は言わないでたきなの反応を待つ。その紫色の瞳は私と氷の浮く珈琲の水面とを交互に暫く見て、その水面が幾らか下がった後にたきなの唇は動く。

    「ううん、わたしは千束と遊びに行くの好きだよ……? むしろリフレッシュになっていいと思う」

    「そう? なんだか疲れている様子だったから心配してしまって」

     嫌われては……ないみたいね。最大の懸念が払拭されて少し安心した。でも、微かに浮かぶその曇った表情が抜けない。

    「何かあったのかな……って」

     そうして少しだけ待ってみる。たきなは両手でグラスを持ってちゅうちゅうとストローで吸う。

     かわいいかよ。かわいいよ。

    「……千束が最近綺麗で困ってる」

     ぶほっwww マジかwwww……コホン。

    「嬉しい。困ってるってどういうことですか?」

    「みんな、常連さんも新規の人も、DAのリコリスも……いろんな人が千束のこと一層好きになってて困ってる」

     珈琲を吸い、言葉を吐く。

    「なんだか遠くに行ってしまいそうな気持ちになって寂しい」

     たきなはそう言って、ガラガラと氷が音を立てるまで一気に飲み干した。

     たきならしくもない、そういう音を立てて最後まで吸うのは私の癖だったはずなのに。

    「……そうですか。そんなことないですよ? どこにも行きません。……あ、まあ前科があるので信じてもらえそうもないですけれど」

     昔の行いを悔いる。後ろめたくてたきなを直視できない。少し伏し目がちになった私。

  • 60二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 21:13:13

    これがちさたきスレか・・・

  • 61二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 00:23:14

    >>59

    「わたし、ダメな奴だね……。千束がどんどん綺麗になってくのを見てるの嬉しいし、

    千束にもっとたくさん友達が出来て、いろんな人に千束のいいところをたくさん知ってもらいたい。

    ただの元気なだけのバカなやつとかじゃくて、気遣いもできて、お淑やかな一面もあるんだって。

    でもね千束。そうなったら寂しいって思っちゃうんだ。わたしよりも時間を使う相手がいないでほしい。

    他の人と仲良くなってほしくないって胸が痛くなる。ごめんね、こんなこと言って。でもね、ぽろぽろ

    零れてきちゃうんだ……。ヘンだよね」


    たきなはそう言いながら、極めて静かに両の眼から涙を流した。

    鼻が詰まるようなことも、嗚咽にまみれることもなく

    ただ淡々とたきなは私に所思を述べているような感じがする。


    たきな……私は別にそういう人気取りの為にやってたわけじゃないんだ。

    確かにランキングは気にした。でもそれは特定の誰かから好かれるとかモテるためとかじゃなくて

    単純に数字がたくさん伸びてるのが面白いとかそういう意味でだった。

    たきなばっかり人気で羨ましい! ってのは勿論あるんだけどね。

    あの秘密は正直よくわからない。

    狂犬レズたきな部は覗いてみたら結構私のことも書いてあって、実質二人の話だったよ。

    私はたきなから離れる気はないし……とは言ったものの、命の恩人から逃げて

    数カ月間は潜伏していたことが私の言葉を軽くしてしまう。


    ああそうか、私は自分の言葉を少しでも重くしたかったのかもしれないな……。

    「たきな、来て」

     私は喫茶店内にも関わらずたきなの方の席に近づいて抱きしめた。

    来て、と言ったのに彼女が私に手を回してくれないのは、ちょっと想定できていたけど。

    「言葉で言っても私って信用無いので、こうしないと伝わらないかもしれないんです」

    「……千束は、わたしは抱かれれば信じるって、バカにしてるのかな?」

     その言い回しは結構危ない。

    「いいえ、私がこうしないといけないと思うからそうするんです。言葉ではなく振る舞いで信を得ていくしかないと」

     たきなは控えめに私の胴に指を這わせた。

  • 62二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 08:57:21

    かわいい

  • 63二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 09:09:51

    すれ違いからの和解する流れは美しいな…

  • 64二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 20:00:08

    >>61

    それからは少しぎこちないけれど、お互いいいたいことが言えたと思う。

    私は人気が欲しいけれど、それはたきなからのとは別物だし、

    たきなは大切な友人で、他の人たちは私のファンみたいなものだから

    心配しないでいいよと言う感じだ。


    たきなの表情がすっきりしたところで私も問題なく楽しめるね!

    あ、でもあにまん掲示板のことはあまり言えないよね。

    スレの名前が酷すぎる。狂犬もアレだしレズもアレすぎる。

    中身もアレ。元々はたきなのスマホをチラ見したからこうなったんだけど

    あんまり読んでないよね……? 題名だけ見ておぞましがってクルミに

    消させてると信じる。私自身もあまり見たくはない。


    食べモグとかそういうので誤魔化しておく。

    あとは普通の人気投票だよね~

    ニヤニヤとしていたらたきながこっちを向いて微笑んでくれた。マジ天使。


    「千束が雰囲気変わってから人気が出ちゃったから、もしかしてわたしも変えてみたらと思ってるんだけど」

    「え? たきなもイメチェンするの?」

    「髪切っちゃおうかなって……」


    か、髪を! それを切るなんてとんでもない!!


    「反対に千束が伸ばしたらどうなるのかな? その綺麗な金を長くしてみたら」


    たきなの想像に私も引き込まれる。

    ショートのたきな、ロングの私……。うん、ちょっと悪くない。

    でも、たきなだよ? ツインテできなくなるじゃん! ど、どうするよ!

    どうする私! なんて返事をしよう!

  • 65二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 06:10:29

    割とアリ

  • 66二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 15:31:49

    >>64

    「や……! えっと……」

    ここで頭から否定してはダメだ。一気に不信感が湧いてきそうだ。

    よし……ここはですね……。


    「わ、私の方がたきなとお揃いになりたいな……と思いまして」

    「お揃い……?」

     よし、この方面で行こう。


    「たきなみたいに長くなって、結んでもらったりしたいかな……と思っています」

     ツインテにされる私、ポニテにされる私、色々いますね。どれも多分可愛い。

    ……そうじゃなくて! あのつやつやで触ったら指紋が付きそうなぐらい繊細な

    髪を減らしてたまるか!

     そういうある意味自分勝手な欲望の為に言ったのに、たきなったら目を輝かせて

    「わ、わたしが好きにしていいの?!!」

    「あ、はい、勿論……」

    「前から千束の髪触ってみたいと思ってたの! きっとわたしのより細くて脆いからすぐに傷ついちゃうんじゃないかと思って手を出せなかったけれど、編み込んだり、結んだりしたらとっても似合うだろうなあって」

     え、たきなそんなこと思ってたの?

    「赤いリボンが千束のトレードマークなのは知っているけど、わたしの色の紺色にもしてほしい。

    黄色と青って合うじゃない?」

     合うけど、なんかそれってTカードみたいじゃない? たきなのセンスは謎。

    似顔絵の時もそうだけど、美的感覚が変な所にあるよね? あ、お前例のパフェのことを思い起こしたな?

    出禁にするぞ? まあ今でも頼まれればたまに出すけどね……。

    よかったよかった……これでたきなの髪は守られた……。


    「そうだ、伸びたらおんなじ髪型にしましょう? リボンだけ交換して!」


    正直たきながこんな風に思っているなんて……思わなかったなあ……。

    目の前でニコニコしているたきなを見たら、もう何も言えないじゃん。

    バカだなあ、私って。

  • 67二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:54:51

    なんだこれ・・・!?

  • 68二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 05:42:07

    Tカードは草

  • 69二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 07:42:47

    レンタルビデオ屋の知識あるからね

  • 70二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 19:03:16

    ほす

  • 71二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 21:29:06

    >>66

    というわけで、私の髪は伸ばされることになったわけです。

    それから、髪に触ってもよいと私が言ってしまったので、

    ことあるごとに頭を撫でられるようになってしまいました……。


    おっといけね、脳内ですら敬語になってしまった。

    結構人格染められちゃうね。


    「千束! 今日もお疲れ様です!」ヨシヨシ

    「千束! 今日も銃弾少なくしてくれてありがとう」ヨシヨシ

    「え、わたしの為にお菓子買ってくれたんだ! えー! これ好きなのよく知ってたね!」ヨシヨシ


    なんなの? この人……。

    ヨシヨシなの? ヨシさんじゃんw

    って言ったらさっきまでの眼から一瞬で殺人者に変わったから

    人格はそこまで変わってなさそう。そういうのもヤバイ。


    そのあとなんだけど、たきなは誤魔化すように私を抱きしめて

    「そういう冗談きらい。言わないで」

    って……もう可愛いなお前。


    はい、言いません。

    ごめんねー親離れの時期だからさ~。


    でも撫でられながら褒められるとほんとにいいな……。

    なんかもっと頑張ろうと思う。今度も銃弾頑張って少なくするぞーとか

    もっと売り上げに貢献したいぞーって気持ちがどんどんと高まってくる。


    嬉しいな……褒められるのって。

  • 72二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 23:44:39

    続き待ってるよー

  • 73二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 06:30:41

    マジか

  • 74二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 10:12:12

    保守

  • 75二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 11:40:51

    >>71

    作戦が成功すると撫でてもらえる、好きな物作ってもらえる。

    それにたくさん褒めてもらえる。

    これを覚えてしまったらもう、一人でやっていたころになんて戻れない。

    たきなとは恋人とかじゃないけど、そうやってされるのは嬉しいし

    私にだけしてもらえるのは特権で、だれにもしてほしくない。


    リコリコはDAの支部、という立ち位置だから誰かほかにも転属してくる人もいないとは

    限らないけど……。私だけを見ていてほしい。

    そんなことはかなわないと知っているけれど。

    私が頑張ってれば、追加人員の必要性なんかないし、ずっと二人でやれるはず。

    それに、銃弾も節約したかったし……。

    これが、私が冷たい床に転がされている時に脳内で漂っていた言葉だった。


    ――数時間前。


    今日も今日とて銃器の取引現場を制圧の任務。

    よぉし、意気込んで飛び込んだ。

    この頃沢山節約したから、もっとやって褒めてもらいたい。なんて邪な気持ちで

    少し撃つのを制限した。一発を額に、みぞおちにと急所を出来るだけ狙えば

    消費は数少なくていい。

    真っすぐ飛んでくれない銃弾を綺麗に急所に当てるには――。

    近づくことだ。でも、私は近づきすぎた。それは視野狭窄を起こして

    私の横に誰かが来ていることを予見できなくさせた。


    千束!!!! と叫ぶたきなの声。

    そして腹部に感じる熱さ、痛み。床の冷たさ。

  • 76二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 11:52:10

    続きキターーー

  • 77二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 12:02:32

    突然のシリアス

  • 78二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 19:49:57

    何ぞ?

  • 79二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 02:37:44

    >>75

    「千束っっっ!!!」

     千束が! あの千束が撃たれた?

     どうして! 


     いつも通りの銃取引のはずで、わたしたちにとっては慣れた仕事で、

    千束だってこんなもの苦にするようなものじゃなかったはずでしょ?

    なのにどうして!


    ともかく、わたしは奴らを憎いあいつらの脚を肩を撃ち動けなくさせる。

    腹部や胸部にはできなかった。

    地面に倒れてもなお彼女はわたしの殺人を咎めるような気がして。


    今日は調子が悪かった?

    千束だって人間だ、調子が悪い時ぐらいある。それに当たってしまった?

    でもわたしはそれを事前に察知できなかった。

    いつもと同じだと思ってしまった。

    ――相棒なのに。

    わたしを庇って、ではない。千束は近距離戦闘で、わたしは遠的でと

    いつも通りの分担でわたしの身に危険はなかった。

    なのにどうして!


    全員を撃つと千束に駆け寄る。

    ああ、血だ。これは本当に。薄汚れたコンクリートに千束の暗い血が静かに広がっていく。

    千束はその出血部を強く抑えているものの、指の隙間からドクドクとそれは、千束の命が

    地面に落ちていく。

    千束にも血があるんだ、と頭の中で冷静な自分が囁く。当たり前だろ。

  • 80二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 02:37:59

    >>79

    「失礼しますね」

     出来るだけ冷静さを装い千束の鞄から消毒液、ワセリンとガーゼを取り出す。

    リコリス制服は脱着しやすいようにワンピースになっていて助かる。

    この時はボタンを限界まで開けて、見たくもない、だけど観察しなければならない

    彼女の傷に処置を施す。右の脇腹にあるその穴は静かに、そして確実に血を垂れ流させる。

    当てたガーゼなんかまるで無意味とでもあざ笑うかのように赤く、黒く染まっていく。


    「たきな……無理しなくてもいいよ……? あいつら拘束して?」

     天井をぼんやりと見つめていた千束がその目をわたしに向けて指示をした。

    何言ってるんですか千束。

    「嫌です。わたしは救助が来るまでこうしています」

     わたしはファーストからの指示を無視するような不良だって、千束は知っていますよね?

  • 81二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 02:41:13

    千束があにまん覗くのではないのか!?

  • 82二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 06:35:46

    千束( ; ; )

  • 83二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 15:54:10

    >>80

    救護車で運ばれ、わたしたちはDA管轄の病院にいる。

    「錦木千束が撃たれた」

    という情報は医師らにとっても衝撃なようで

    いつにも増して手際よく処置が行われるように見えた。


    車からすぐに担架が下ろされ、手術室へ一直線だ。

    店長やミズキさん、クルミには電話したけれど

    なんども聞き返されてしまう。順序立てて話すことなんかできなかった。


    ともかくも千束が撃たれて、病院にいるとしか言いようがない。

    それだけでわかってほしかった。場所も伝えたし、最悪わたしの位置情報で

    クルミが特定してくれるだろう。


    病院特有のビニール張りのソファともベッドとも言えない椅子に

    わたしは座り続けていた。

    不思議と、涙は流れない。千束なら大丈夫という期待がどこかにあったのだろう。

    死ぬなんてありえない。被弾個所は脇腹だった。腎臓に当たっていたら? 

    一つぐらいならわたしのをあげたって良い。

    運ばれているときにはもう意識がなかったけどあれはたぶん疲れて眠っただけだ。

    心拍はあった。体も温かかった。

    それから、性能の悪い制服の所為でもある。防弾と防刃の機能が弱すぎる。


    時間は過ぎない。待っている時には過ぎないものだ。

    まだここに来て一時間も経っていない。


    最強のリコリスをDAは失うことは許されないはずだ。

    だからすべての資源を以て彼女を回復させるだろう。

    たった一人の少女に組織の存亡を賭けていたクソ組織を唾棄していたけれど

    今回ばかりはその可能性に縋るしかないのだ。

  • 84二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 19:37:18

    ゆるゆるコメディSSがいつのまにかこんなことに…

  • 85二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 19:43:37

    温度差で風邪引いちゃった

  • 86二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 22:57:41

    千束は敬語がたきなはタメ語が抜けちゃってるよ
    それどころじゃないもんね

  • 87二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 23:38:22

    >>84

    この二人はきっと乗り越えてくれる……!

    >>85

    千束からマフラー貰いたいだけの人生だったよね

    >>86

    お、そこに気づくとは……


    >>83

    店長、ミズキさん、クルミは来てくれた。

    千束撃たれるの報は三人を焦らせるのには十分だったようだ。

    絶対に起きないことなんだから。普通は。


    ……わたしの所為?

    わたしが来る前にはかすり傷一つ負わなかったんじゃないか?

    でも……わたしは千束の足手まといにはなってない……はず。

    ちゃんと目標を撃ててるし、わたしの所為じゃ……ないよね。

    わたしがここに飛ばされていなければ千束は撃たれなかった?


    「……飲めよ」

    「クルミ……ありがとうございます」

     クルミは水筒を渡してくれた。キャップをひねって開けると嗅ぎなれた香りが眼前に広がる。

     お店の豆だとわかる。千束が淹れてくれるものと同じ。

     普段はガサツな癖に、珈琲だけは丁寧に焙煎して、挽いて、落として……。

     柔らかい湯気がわたしの目を湿らせ、いつのまにか水筒の中に返す。一滴、二滴と目から零れる

    それは、頬を経由して顎からダラダラとわたしのスカートを濡らしていく。

    「……ほら」

     見かねたクルミがリス柄のタオルハンカチをくれる。

     ふわふわなのにそれですら水を吸うのに足りない。

  • 88二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 23:45:51

    >>87

    「クルミ……」

    「お前の所為じゃないだろ」

     まだわたしは何も言ってない。それなのに、この人は脳までハックできるんですか?

    「千束が失敗しただけだ。千束がお前に恨み言の一つでも言ったか?」

     文面だけにすると、非常に冷たいような台詞だったけれど、クルミがいうと受け入れられる。

    そこには、千束の失敗を嘲笑したり、責めるニュアンスがまったく含まれていないからだろう。

    確かに撃たれたことは「失敗」と表現するしかないのだ。

    クルミは事実を事実のまま述べてそれでいながら傷つけないという特殊な才能がある。


    「……言ってないです。でも秘めただけかも」

     そうだ、千束はいつだって本心を隠す。わたしの前から逃げたのは、本心の隠匿以外のなにがある?

    「あいつは確かに本心は言わないことはある。けど、自分の行動を後悔していたことがあるか?」

    「……無いと思います」

     反省すらしてくれませんでしたよ。

    「それでいい。あいつはたきなを、お前を恨んではいないんだから、自分の所為だとか思うな。あいつが悲しむぞ」

    「……手術室の状況、観られませんか?」

     様々な装置に繋がれている千束を想像する。それの一つでも見られれば千束の無事を推し量れるのではないか。

    「生憎ネットワークに繋がってないみたいだ。ここで珈琲でも飲んで待ってるんだな」

     クルミはわたしに水筒とハンカチを残してどこかへ歩いて行った。

     缶コーヒーでなくて、ペットボトルでなくて、水筒というやさしさ。長丁場になる待ち時間で

    わたしが冷えないようにしてくれる優しさ。クルミのやさしさはいつもそうだ。

    表層は冷たく感じられて、その実は湯気が立つぐらいに熱いような。まるでこの水筒のように。

    ありがとう、クルミ。

  • 89二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 23:50:11

    クルミやさしいな
    クルミはたきなの保護者だもんな

  • 90二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 06:50:59

    たきな……

  • 91二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 07:47:16

    クルたき流行れ

  • 92二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 12:25:03

    たきクルでもいいぞ

  • 93二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 17:23:19

    たきなはクルミからいろいろ学んでさらにレベルアップしそう
    保護者であり先生であるクルミ

  • 94二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 21:50:49

    保守

  • 95二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 21:58:39

    >>88

    わたしは俯いて病院の床を眺めている。

    もうどれぐらいこうしていただろう?

    窓の外が暗くなって、それから明るくなって……。


    わたしの頭に降ってくる声があった。

    「たきな? どうして泣いてるの?」

     千束だ。言葉が戻ってる。


    わたしは重い頭をあげて、壁の方を向く。

    ファーストの制服は血で汚れていなくて

    孔も空いてないし、顔色も真っ青じゃない。唇だっていつものように瑞々しい。

    わたしの前でくるり、と回って隣に座ってくる。


    「……千束? はっ……千束!」


    ――

    夢か。

    夢と本当が混じっていた。朝になっているのは本当だ。

    千束がいるのは夢だった。


    眼が重い。あれから一晩中涙が止まらなかったのだろう、

    うまく瞼が開かない。袖とか目の粗いタオルで擦ったのも原因の一つだ。

    ……ちょっと痛い。

    手術中のランプはまだ灯っている。すこしだけ、顔を洗わせてもらたいたい。

  • 96二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 21:58:56

    >>95

    トイレに向かう。早朝の病院は寂しいけれど、看護師さんが動いていて

    幾分それが軽減された。

    それでもこの世に一人っきりになってしまったかのような心細さを今でも拭い去れない。

    パシャ、パシャと流水がわたしの顔を冷やす。

    厚ぼったい瞼はいつもより強く二重に捲れて、いつもより光を取り込む。

    千束がまだ目覚めていない世界の癖にいつもより明るいなんてそれこそ嘘だ。


    鏡に映るわたしの顔は別人のよう。たった一日の待機だったのにこんなにやつれているなんて。

     

    ……でも千束はもっとつらいんだ。

    キュッ、と蛇口を閉めて元の位置に戻る。

  • 97二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 07:11:50

    憔悴したきなは可愛いよ……美しいよ……

  • 98二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 08:52:59

    生きてるかねえ

  • 99二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 12:23:13

    ゆるゆるコメディはどこにいったんや…

  • 100二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 12:48:15

    我は汝...汝は我...
    ゆるふわァ!

  • 101二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 21:53:25

    >>96

    千束は眠ったまま。

    いや、いつか目を覚ますはず……。

    手術自体は成功しているみたいで、生きているそうです。

    沢山の機械に繋がれながら彼女はまだ生き永らえています。

    ガラス越しの彼女は本当に眠っているだけに見えます。


    頬の色も戻って、とても柔らかそうで……。

    長い睫もぴしっと伸びていて、寝てるだけでわたしの目を奪う。


    なにが原因で目を覚まさないのか、わたしには分かりません。

    ただ、そういうことがある。という説明を医師から受けただけで

    店長もミズキさんも、クルミも黙って頷くしかできなかった。


    ちゃんと千束が帰ってきても大丈夫なようにお店の仕事も、DAからの任務も

    こなしています。クルミのドローンがサポートしてくれていて、存外便利なんですよ。


    「なんで最近ドローン飛ばしてくれるようになったんですか?」

    「……お前ひとりで行かせると千束に怒られるからな」

    なんて言われて、千束がいる頃より世話を焼いてくれるようになりました。不思議ですね。


    ……千束の病室に入れるようになりました。個室ですよ。結構高いんですから。

    千束の病室に行くたびにわたしはトマトジュースのパックを持っていきます。

    それが今ではもうベッドの脇のキャビネットにうず高く積まれたままになっています。

    一本も消費されないまま。

  • 102二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 21:55:34

    これはキスで目覚めるやつ

  • 103二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 07:45:43

    しようとしたときに目覚めるやつじゃん?

  • 104二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 08:07:50

    クルミ…

  • 105二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 12:17:07

    がんばれ

  • 106二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 18:03:53

    SSけっこうよんでるけどたきな怪我入院が多くて千束がやられるパターンは少なめな印象
    これは貴重なパターン

  • 107二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 23:02:35

    >>101

    「たきなが来た……よ」


     千束はまだ眠っている。

     その顔は安らかで……だめだめ、死んじゃったみたいじゃない。

    そろそろ下の方に積まれたトマトジュースの期限が気になってくる頃だ。

    ……これは千束のだけれど、悪くしてしまうのも忍びないから一つ頂く。

    初めて会ったときもこれを飲んでいたっけな。好きなんだよね、千束はこれ。


    ちゅう……と吸った瞬間にあの光景が目に戻ってくる。

    千束の脇腹から流れる血、血、血!


    「う゛……!」

    トマトジュースと血を結びつけたことなんてなかったのに。

    思わず吐きそうになる。これを吐いたら洒落にならないぐらい染みになる。

    口を袖で抑えグっと喉を鳴らして飲み込む。

    ……残りはもう飲めなくなった。


    ハアハアと思わず荒げてしまった息だけれど、

    千束の顔を見ると、次第に治まっていく。

    ……綺麗だな。

    そうか、千束が眠っている間なら、ずっと千束を独り占めできるんだ。

    あの笑顔も、笑い声も他の人に見せてほしくないと思ってしまった

    わたしの願いが……叶ってしまったんだ。

  • 108二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 07:24:34

    しんどい…

  • 109二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 07:34:50

    保守

  • 110二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 08:41:21

    温度差で凍死しそう

  • 111二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 09:02:40

    まだ生きてるとわかってるからあれだが…
    本編のたきなは千束手術中さらに不安だったんだろうな がんばれたきな

  • 112二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 12:17:09

    続くか?

  • 113二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 15:02:21

    続いてください

  • 114二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 20:05:53

    続き待ってるよ

  • 115二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 21:10:05

    >>107

    「バカですね、わたし」

     千束がみんなに人気になって、わたしの許から離れて行ってしまうことは怖かった。

    自分の知らない間に、自分の知らない人と仲良くなっているかもしれないことに強い抵抗を覚えた。

    嫉妬。嫉妬は見捨てられることに対する恐怖であるとどこかで読んだ。

     でも、ここまでして独り占めしたいなんて……思ってなかった。


    千束の頬をつつく。心なしかカサついている。水分が足りないんだ。

    ウエットティッシュで少し拭いてあげる。

    心なしか、艶が戻ったような気がしていい気分になる。

    「そうだよね、千束は……わたしがいないと……」

     千束を庇護している、守ってもらってばかりのわたしが千束をお世話しているような気持ち。

    千束の居場所を守っているのもわたしだ。リコリコがDAの仕事を請け続けられるのもわたしが

    いるからだ。もしわたしがいなければ、千束は帰る場所を失う。

    それはとても後ろ暗い喜びだった。


    「千束……。わたしが一生そばにいますから……いるから」

     もしこのまま目覚めなければ、リコリコのみんなとわたしぐらいしか会いに来ない。

     そして千束はどこにもいかない。病室を抜け出して南の島なんかに行かない。

    わたしを二度と不安にさせない。心臓の異常もここでならすぐに対処してもらえる。

     耳はいつでも活動しているとどこかで読んで、それ以来わたしはこの邪な気持ちを

    頭の中だけに収めた。口に出すのは千束を心配する声だけ。

    一生そばにいると、誓いのキスを千束に。

    わたしの髪の檻が千束を閉じ込めようとしたとき。


    ――ガタ。来客だった。

    珍しい色の服が来た。紺色でも白でもない。殆ど見ないそれ。


    「フキ……さん?」

  • 116二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 21:44:46

    あれ…なんか雲行きがあやしく…

  • 117二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 21:45:41

    続きが気になる引きだ

  • 118二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 07:53:26

    続くか

  • 119二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 12:34:53

    保守

  • 120二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 20:51:27

    >>115

    わたしがキスしようとしたところ、どこまで見てたんでしょうか。

    少し顔を覗き込んでいるだけにしか見えてないといいんですが。


    わたしはいすまいを正して彼女に向き合う。

    いつも通り少し不機嫌そうな顔。

    手には花束があった。フキさんに花は正直ミスマッチすぎる。

    「……近くまできたからな」

    「そう、ですか」

     大嘘もフキさんらしくない。


    「……伝わってるんですね」

    「まあな。普通なら何十回も死んでるだろうが」

     このまま彼女は花を置いて行ってしまうだろう。

     すぐ去って行って欲しい気持ちがあるのに、わたしは

    彼女に椅子を勧めた。けれど、座らない。


    「……このまま目覚めなかったらどうなるんでしょう」

     わたしの質問とも独り言ともつかないそれを、フキさんは掬う。

    「DAとしては、こいつは温存させておきたいはずだ。だからそれこそ死ぬまでこうだろうよ」

    「そうで……すか。よかった」

     途中でやめられてしまったらと、心にずっと引っ掛かっていた。

    「まあ、恢復を祈ってるからな。……それからたきな、お前、酷い顔だぞ。鏡を見てみろ。それから……

    まあ、話ぐらいならたまに聞いてやる」

     それだけ言ってプイと帰ってしまった。

  • 121二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 20:51:40

    このレスは削除されています

  • 122二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 20:52:39

    >>120 

    フキさんはずっと入口の近くから近づかなかった。花束をわたしに受け渡した時だけ

    すこし近寄ってくれたぐらいだった。

     その理由が、わたしの顔だったのかもしれない。

     病室の鏡に写るわたしの顔は、悲しみと憔悴とそれから、口元に浮かぶ笑みの混ざったものであった。

     わたしがどんな気持ちだか、きっとバレてしまっているのだろう。

     ファーストは、きっと千束並とは言わないが、目は良いのだから。

     

     ずっと千束と一緒に居られると確信できたわたしはいつも以上に任務に精を出した。

     わたしが死なない限り千束と一緒に居られる。ずっと独占できる。

     常連のみなさんは千束が長期入院中だとしか聞いてない。たまに貰える千束宛の花やお菓子は

    受け取って自宅で処分した。

     やってることが完璧に悪人だった。千束が戻ってきたとき、彼らから何か貰ったという情報がないと

    会話にもお礼にも困ると知りながら、わたしはゴミ箱のふたを上げるペダルを思いっきり踏んだ。

  • 123二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 21:03:07

    病きなさんだ...

  • 124二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 21:21:01

    >>122

    この時のわたしは、千束がもう戻ってこないことを半ば確信し、そしてそうあってほしいと期待していた。

    大好きな相棒の恢復を祈らない、最低なわたし。


    朝起きて、リコリコや日本語学校、幼稚園へ出勤して仕事をして、午後に千束を見に行き、夜は取引を潰す。

    このサイクルが崩れることは殆どなかった。

    千束が培ってきた交友関係は広くて、それの維持は本当に大変だ。


    ……戻ってこないことを期待しながらなんで維持しているんだろう。わたし。


    「たきな、最近働き過ぎだ。酷い顔だぞ?」

     昼間、リコリコで働いているときにクルミが注意してくる。

    夜に続けて何件も付き合わせてしまっているから不満なのでしょう。

     画面越しとはいえ、リアルタイムで指示を出すのは確かに神経を使うだろう。

    「わたしは大丈夫です。クルミは、適当な所で抜けてもらって大丈夫ですよ」

    「違う。たきなの心配をしてる」

    「……寝てますよ?」

    「それは本当だと思う。でも、すごく顔色が悪い。……接客に支障が出るぞ」

    「そう、ですか」

     そうまで言われてしまうと、気にしない訳にはいかないかもしれません。

     とはいうものの……。鏡に写るわたしは、あの病室の時よりは普通なのに。

  • 125二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 01:22:09

    初めての感情や

  • 126二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 10:19:14

    >>124

    月に一回程度、フキさんが来る。

    まあ彼女も心配なのだろう。でも、いても数分といったところだ。


    「……このまま千束が目覚めなければいいな、と思ってしまいます」

     あるとき、わたしはぽろっとこぼしてしまった。

     俯いていたからフキさんの表情は分からない。

    「このままだったら千束は危険な任務に就かなくてもいい、それにわたしとか、限られた人にだけ

    会えるというか……わたしだけの千束みたいな気分になれます。もうどこにも行かない。逃げたりしない」

     だからか、思っているだけにしておこうとした黒い感情がどんどんと口からあふれ出る。

    なおも、フキさんはその場に留まりわたしの話を聞くともなしに聴いているのだろう。

    ……話ぐらいは聞いてくれるそうですから、甘えましょう。

    「ゴミ……ですよね、わたし」

     遠くから差し込む日差しだけが暖かい。


    「……それは千束が悪いな」

     思いもよらない言葉にわたしは顔を上げる。

     相変わらず椅子に座らないフキさんがわたしを見下ろしながら、ぽつりと言う。

     表情の変化に乏しいのはわたしではなくて実はフキさんの方なんじゃないか?

    「でも、相棒の恢復を祈らないのはダメだ。わかってるよな」

    「はい」

    「……ならいい。それは気の迷いだ」

    「ですよね……」

    「その……なんだ、そういう気持ちは先生には言うなよ。悲しむからな」

     フキさんそれを残して去って行った。

     彼女が持ってきてくれたお花は、花瓶に差して水を注いだ。

     千束に似合う、赤と黄色の花は日の光に当たって輝いていた。

    ……やっぱり千束はこの方がいいのですよね。

    暗い病室ではなくて、外の世界の方が。

  • 127二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 14:21:09

    >>126

    心を新たにした、といはいえ出来ることは少ない。

    わたしは別に千束に治療できるわけでもなければ、

    不思議な超能力があるわけでもないのだ。


    千束の恢復を願うだけ。それから、お仕事は減らすようにしました。

    クルミも少し安心してくれたようでよかったです。


    ――お前の仲間も、千束の目が覚めることを祈ってんじゃねーのかよ

    というフキさんの言葉は尤もだと思いました。

    みんな千束のことが大好きなんですから。


    「ねえ、千束。今日はこんなのを作ったよ」

     毎日のように千束の病室に顔を出して読み聞かせではないけれども

    料理や出来事を写真に収めてそれを見ながら喋る。

     ずっと眠っている状態の患者でも話しかけ続ければ目が覚めるみたいな

    ことを勉強した、どういう理屈かは分からないけれど。

    以前のわたしならその情報を得たら余計に話さなくなっていたかもしれない。


    ともかくも、わたしは千束にいろんなことを話しかけた。

    常連さんがお見舞いを渡してくれたこともちゃんと話しておくことにした。

    ……千束が起きないからわたしが食べちゃったよと嘘を吐いたけれど。


    最近千束の瞼がピクッと動いてくれるようになった。反応してくれているのか?

    こういうこともあるようだという話だけど、それだけでも幸せに思える。

    眼が動けば、次は口も動いてほしい。そしたら喋ってほしい、そのあとは起き上がってほしい。

    次は歩いて、一緒に――


    帰ってきてほしい

  • 128二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 15:52:58

    たきなが軌道修正できてホッとした
    続き気になるけど読み続けるのしんどくなってきてたから
    フキ…いいやつだよね

  • 129二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 22:11:38

    作者はバランス厨

  • 130二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 02:17:33

    保守しておくか

  • 131二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 07:53:36

    完走期待保守

  • 132二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 13:49:34

  • 133二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 15:33:27

    しゅ

  • 134二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 20:13:16

    待ってるよー

  • 135二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 22:57:14

    >>127

    「ねえ千束、そろそろ飽きてこない? 眠ってるの」

     いつものように話しかける。千束の右側の席はわたしの指定席だ。

     窓を背にして千束に強すぎる日差しから遮る。

     そこに座って、昨日の夜のこと、今日の午前中のことをたくさん話す。


     千束に懐いていた保育園の子供がずっと千束が来ないことにしびれを切らして

    わたしに浮気(?)してこようとしたんだよ、とか看板娘は最早わたしなのでは?

    とか、色々。

     ちょっと妬かせるようなことを最近話している。

     いままでのお返しみたいなものですよ。

     時計を見ると、もうそろそろ行かなければいけない時刻だ。


    「ねえ……起きてくれないのかな……?」

     光に照らされた千束の髪は、ぱさぱさなものではなく、元気なころと変わらない艶めきがある。

     リボンをつけていないから、さらりと長いまま布団に流れている。

     千束のリボンはたぶん手術の時にどっかに外されているのだと思うけど……見当たらない。

    それがずっと気になってて、結局見当たらなくて、だから……。

    「じゃーん。買っちゃった。リボン」

     

     トレードマークの赤色リボンではなく、この前わたしが宣言した紺色リボンだ。

    「早く起きないとこれ結んじゃうからね……?」

     千束の右側面に立って、髪に触れる。柔らかくて繊細で、手から零れ落ちる。

    「どうやってたっけ……」

     髪の処理なんてあまりやったことなかったから、うまくできない。雑に纏めるぐらいしか。

     下手なサイドテールになってしまって、ちょっとがっかりする。なんだろう、千束の言う

    「女子力」というのが足りないのかもしれないね。


    「うう……ん」

     千束の口の中が鳴った。空気が押し出されるような音が。

  • 136二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 01:02:55

    いよいよ目覚めるか?

  • 137二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 06:30:12

    おはよう

  • 138二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 07:41:30

    オハヨー

  • 139二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 12:41:21

    目覚めるか?

  • 140二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 14:29:24

    そういえばたきながタメ口に戻ってるな
    すっかり別人になってるけどもともとのSSをようやく思い出したわ

  • 141二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 19:52:12

    保守しておくね

  • 142二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 22:53:58

    >>135

    「ち、千束!」

     わたしは千束に駆け寄ってその状態を見る。

    気のせいじゃなかった。千束の口元が少し歪んで、動いている。

    呻いている……?

     口の端から漏れるのは声のようにも、荒いだけの息にも聞こえる。

    「せ、先生呼びますから!!」

     ナースコールを押して、でも、出来ることは何もなくて、千束が呻き始めたとか

    それぐらいしか伝えられなくて。


    客観的には一分も待たされなかったはずなのだが、先生を待つのに大分焦らされていた気がした。

    わらわらと白衣の集団が入ってきて、千束を取り囲んでなんか色々触ったり

    光を当てたりしている。

    正直怖い。もう、治りません、のような宣告がされるような気がして。

    このまま未来に希望を漠然と抱いていられるような時間をも消し去られるような

    そんな気がして。


    先生たちの顔や目を見ることは怖かった。彼らの眉が下がれば千束の未来が

    無いような気がしてしまう。彼らが言葉に詰まると、わたしに言いにくいような

    事態が起きているのかもと不安になる。

    それでも、訊きたい。いや、訊かなければならない。

    「どう……ですか?」

    集団の中でも一番若そうな、看護師さんに訊ねる。少し、親しみがあるような気がするので……。

    我ながら情けない。

    「多分ですが」

    と彼女は前置きして、でもその表情は笑顔だ。それってつまり、期待してもいいって意味?

     医師らが嘆息するのが聞こえる。どうなったんだ、わたしにも見せて。

     背の高い白衣たちの隙間から目を凝らす。


    ああ、見たかったんだ。その、濡れた赤い瞳を、ずっと。わたしは。

  • 143二次元好きの匿名さん22/11/15(火) 07:32:21

    あげ

  • 144二次元好きの匿名さん22/11/15(火) 12:20:24

    生き返る感じ

  • 145二次元好きの匿名さん22/11/15(火) 16:33:26

    >>23

    う○こをたきなのパフェって言うのやめろ


  • 146二次元好きの匿名さん22/11/15(火) 22:46:28

    みんな保守してくれてありがとうだよ~!

    >>142

    そこからは大変だった。目を覚ました彼女をまた動くベッドに載せて

    どこかに引きまわしたり、いろんな機械をつけたりと千束の目も廻ってるかもしれません。

    わたしは特に何もできることはないので、病室に残されたり、戻ってきたときに

    邪魔にならないように隅っこに移動したり……。


    ……あ! お店に連絡しないと!

    すっかり忘れてました。


    隙を見計らって、千束の虚ろながら目の開いた写真を撮ります。

    それを添付して「千束が起きました!!!!!」

    と送る。十秒後、店長から「すぐ行く」との返事。

    もう、営業中なのにずっと近くに携帯置いてたんですね、店長。


    ――みんな千束のことが大好きなんだ。


    医師らがとりあえず出払った後、わたしと千束は二人きりで残される。

    次の検査までの休み時間。待機時間だ。

  • 147二次元好きの匿名さん22/11/15(火) 22:46:47

    >>146

    「千束、おはよう」

     わたしはそう言うけれど、千束が口をパクパクさせる前に手のひらを見せて制した。

    「いいんですよ……いいのよ。何カ月も喋ってないんだから無理しないで」

     そうだ、ずっと眠ってたんだ。声が出なくなるのは当然。

     千束は幾分かほっとしたような面持ちで頷いた。ざらりと枕と頭が擦れる音がする。

     こんな音すら、いままでずっと聞けなかったかと思うと、これだって立派な返事だ。

    「これからね、店長くるから、待っててあげて」

     すると、千束の表情が少し明るくなる。具体的には口の両端が持ち上がるような。

     表情筋も大分衰えたのかもしれない。使ってないから、ずーっとお澄まし顔だったからですよ、

    千束に似合うのはやっぱり満面の笑みなんですから。


     ああ、すごい足音。真島でなくてもわかってしまう。

     わたしは少しの間トイレにでも行きましょう。

     親子の時間ぐらい作らないと、いままでわたしがずっと一緒にいたんだから少しぐらいは。

     

     病室を離れるときの足取りの中で今日が一番軽かった。そして、この軽さは毎日更新されていくのだと思うと

    本当に良かった。

  • 148二次元好きの匿名さん22/11/16(水) 07:45:28

    あげ

  • 149二次元好きの匿名さん22/11/16(水) 12:46:45

    続くか?

  • 150二次元好きの匿名さん22/11/16(水) 23:32:39

    >>147

    「たきな……ごめんなさい、うまくしゃべれないで……す」

     わたしに最初に言ったのが謝罪なのは心に深く刺さった。

     久しぶり、でも、やっほーでもなく、ごめんなさいだった。

    「いいの、丁寧語は長くて辛いよね、そうじゃなくてもいいよ」

    「あり、がと」

     喉が痒そうに、辛そうにしていたからお水をあげる。

    あのトマトジュースの山は……すこし喉に引っ掛かるからまた後でね。

    「リハビリしなきゃなんだって……」

     千束は自分の身体を抱くように腕を組む。そりゃあそうだろう。

    もう何カ月も寝たきり。筋肉は細く、弱くなっているはずだ。

     一人で立つのも難儀しているのだ、銃を扱って飛び跳ねるなんてとても先の話に見えるぐらい。


    「大丈夫、千束。元々持ってるものが違うんだから、すぐによくなるよ」

     わたしは、病床で半身を起こしている千束に語り掛ける。

     俯いて鬱っぽそうにしている彼女をどう励ませばいいのか分からない。

     だけど、絶対千束は返り咲く。リコリスとして。


     暗い話はこれぐらいにして、わたしは撮りためた写真を見せる。

    「わぁ、まだこのパフェ出してんだ……たきな嫌がってたのに」

    「千束がお客様優先っていうからだしてるのよ?」

     たまに頼まれてしまう。まったく、ネットに上がった写真を消すのは一苦労なのだ。

    でも、売り上げにつながるならいいんです。千束の場所も守れますし。

     わたしが千束の言葉を覚えていて、そして守っていることに、彼女は少し照れたようで

    目を背けてほっぺを掻く。

    「そっか、そだね、えへへ……ありがと」

    「もう、なに急に改まって」

     そうやって千束を茶化しながら写真をめくっていく。

     こんな些細なことをわたしはずっと待っていたんだ。並べる肩が近づいていく。 

  • 151二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 03:46:32

    タメ口通しになったね

  • 152二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 07:44:18

    保守

  • 153二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 12:16:20

    続くのか

  • 154二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 23:02:14

    >>151

    たきなの良さを殺してしまってるかもしれない……。人によってこれは多分

    大きく解釈が分かれてしまいそうなSSにしてしまった。


    >>150

    千束のリハビリに付き合うときには、少しあの、黒い感情が呼び起されてしまうのではないか

    と自分自身に懸念があったが、それよりも千束が恢復してくれる様子を見ていると

    なんだか心の奥底が暖かくなる。こんな経験今まで全然なかった。


    今まで通りいかないけれど、それでも諦めないで手すり伝いでも歩こうとする姿に

    純粋な気持ちで心打たれてしまった。

    もっと、彼女が上手になる姿を見てみたいと、不思議とそう思ってしまったのだ。

    弱った彼女なら自分の手元から逃げないんじゃないかとか思っていた過去の自分が本当に

    馬鹿らしい。

    ほんと、「気の迷い」でしたね、フキさん。


    「つかれたー!」

     二本の棒の間に立って進む、みたいな歩行訓練を終えた千束はベンチでわたしから

    トマトジュースをねだる。

     あの大量のジュースの山を見て、当初千束は絶句していました。いや、我ながら恥ずかしい。

     願掛けです! と誤魔化したけれど、誤魔化しになっているのだろうか?

    「早く走り回れるようになれるといいね」

    「そだねー。ファーストの地位も剥奪されるかもしれないし……」

     暗い顔だ。時々こうなってしまう。生まれてからずっと俊敏で頑強だったから

    一般人未満の体力は本当に不便なのだろう。それにまだ脇腹が少し痛むようだ。

     千束の笑顔が明るいが故に、苦痛に歪む顔が酷く暗く見えてしまう。

    「だからといって、無理は禁物だからね、店長からもいわれてるでしょ」

    「もー。たきなをお目付け役として置いて行ったな、せんせー!」

     と、プンプン怒っていますが、はずれです。わたしは任命されていません、自然にそうしているだけです。

    長い付き合いなのに、そんなことも分からないんですか? もう。

  • 155二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 07:41:14

  • 156二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 08:09:47

    完走を期待してるよ

  • 157二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 12:08:40

    タメ語で喋ってるのに心の声が丁寧語になっちゃってるのがいいね

  • 158二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:03:16

    >>156

    期待しているよ、作者ちゃん……(ねっとり)


    >>154

    「がんばろ……私。がんばるんだ……」

     わたしが病室に入るちょっと前に、ドアに手を掛ける寸前に千束の声が中から聞こえて来た。

     まったく、ずっと頑張ってるじゃないですか。

     かわいいところあるんだから、と思ってガララと引き戸を開ける。


    「なにやってるんですか! 千束!」

     わたしは思わず大きな声を出した。


     わたしに怒られた千束はベッドの上に戻ってしゅんと肩を縮めて、布団に目線を落としている。

    「いいですか? なんで無理してるんですか、ちゃんとこういうのは付き添いがいるときにですね……」

     そう、千束は床で腕立て伏せをしていた。一人で。

    「わかってるし……。今日もリハビリあるもん……」

     千束は自分の身体を自分で抱きながら弁明するが、わたしはあまり許していない。

    「ちゃんとリコリスの訓練も知っている人たちがメニュー組んでくれてるんですから……」

     気持ちはわかるけど、と続けたかったが実際わたしには分からない。天才が凡人以下に突き落とされた

    恐怖と焦燥感なんか分からない。わたしも凡人だからだ。それでも、ここはちゃんと言い含めておかないと

    また無茶なトレーニングをして身体を壊すかもしれない。

     でも、キツく言いすぎるのも違うと思う。千束は早く戻りたいのだ。いつもの日常に。

    悪気があるわけではないのだ。

    「焦らないで、千束はきっとうまくいきます。それに、身体を悪化させたらもっと入院が延長されますよ」

    「……そっか、そうだね……」

     ずっと見たかったその赤い目が濡れて膨らんでいるところをわたしは受け取って、千束を抱きしめる。

     抱擁をしてわかる、彼女が本当に弱くなってしまったこと。でも、信じなきゃ。

     だって錦木千束だもの、そうでしょ?


     

  • 159二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 01:44:59

    実際焦るかなあ

  • 160二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 10:16:32

    保守~

  • 161二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 19:05:20

    保守

  • 162二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 23:08:51

    >>158

    そこから少しずつだけど、伝い歩きしなくても、長い距離歩けるようになったり、

    徐々に思い負荷のグリップを握れるようになったりと治ってきてくれてる。

    なんというか、子供の成長を見守る親って、こんな感じなんでしょうかね?

    だとしたらとても幸せな役割です、親って。


    千束を子ども扱いしてしまったのは内緒です。


    そしてついに病院の敷地内なら散歩してもよろしい、という許可が下りました。

    隣で聞いていたわたしも自分の事のように嬉しいです。

    千束もやっと少し解放されたような顔をしています。

     ええ、そうでしょうよ、いままでずっと窓の外を彼女は見ていたのですから。

    空を飛ぶ鳥を羨ましそうにあなたは……眺めていましたよね。


    「たきなー付き合わせちゃってごめんね?」

    「ううん、いいの」

     病院の敷地は広く、緑もあり、今の時期はまだ寒いですが歩くにはいい気候です。

    入院着の上にコートを羽織らせます。

    このコートはわたしが選びました。薄ピンクの分厚いウールです。

    少しでも千束から寒さを遠ざけたいのとそれに、顔色が明るくなってほしいですから。

     ダウンコートの方がよかったでしょうか? そちらの方が軽いし、温かかったかもしれません。

     でも、こっちのほうがなんとなく「可愛い」気がしました。

    「これ、たきなが選んでくれたんでしょ? ありがとう! めちゃめちゃ可愛い!」

     ほっとしました。千束が寝てる間に肩幅とかをメジャーで測っておいて正解でしたね。

    「あんまりはしゃぐとコケちゃうから、ね、っ」

     わたしはそっと右手を差し出す。

     彼女は少しも考えることもなく、手を取ってわたしの隣を歩いてくれた。

    ああ、千束は生きています。神様

  • 163二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 08:42:14

    神に感謝するたきなも良き

  • 164二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 16:29:21

    神様を信じるたきなか……

  • 165二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 00:32:46

    >>162

    「あのベンチまで行ったら少し休もうね」

     わたしが千束の手を引く形で散歩する。

    五十メートルほど離れたそこまで、いつもなら一瞬で距離を詰められる千束が

    少し息を上げなければならないのはやはり辛い。

    「うん、ちょっと疲れてしまって、困りますわ……」

     落ち葉を踏みながらゆっくりと千束と周囲を見回す。

    ……あれ、千束丁寧語になってる?


    「こんなにゆっくり歩いたのって生まれて初めてかもしません」

     やっぱりだ。もう喉や息がこのまえより苦しくないのだろうか。

    「そう……だね。千束はせっかちだから」

     いつもわたしを置いて、ずっと前を走ってしまう。

    「木ってこんなにシワシワだったんだ、とか、土は柔らかいんだなとか、いっぱい分かったことがある」

     千束は自然をいつくしむように見えて、その時間を堪能できる喜びの表現に満ちていた。

     そうか、千束は幼少期から訓練と実戦続きで、もしかしたら纏まった休息をとるのは今回が初めてかもしれないのか。

    「千束」

     そちらの方をわたしは向いた。

    「ど、どうしたんですか?」

     戸惑って胸の前で手を振る千束も愛おしい。

    「これからもっと、もっとわかることがあるから、ずっと元気でいて欲しい」

     不器用なわたしはそれしか言えずに、千束からの返事を待たないで、また前を向いて千束を先導する。

     繋いでいる手から伝わる熱がほんの少しだけ温かくなったのは、彼女からの同意だとわたしは受け取った。

     ああ、ベンチで気まずくなっちゃうじゃないか! わたしのバカ!

  • 166二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 07:44:12

    二人共やっぱかわいいなあ

  • 167二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 12:18:48

    かわいい

  • 168二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 21:54:53

    >>165

    「たきなはさ、わたしがこうなっちゃったこと、がっかりしましたか?」

     なんで朗らかな声で、様子でそんな悲しいことが言えるのでしょうか、この人は。

    「がっかりって……何?」

    「なんていうか……役立たず?」

     千束の横顔は特に悲しそうだったり、辛そうだったりはしません。淡々としています。

    「そんな風に思ったことはありませんよ」

     本心だ。千束を縛りたいと思いこそすれ、役立たずだなんて。

    「そう……そうですか。それはうれ……しいな」

     吐いた息が白く染まってきました。俯きながらそのように言う。

     千束の存在意義を揺るがすような事柄なのは確かです。

    俊敏で、力強くて、体力が無尽蔵で……。それをすべてひっくり返されてしまったこと。

    でも、千束は隠れてこそこそ訓練することはあっても、ヤケになることなんかなかった。

    千束が強いのは本当は心なんだと思う。身体はそれのおまけ。

    DAを追い出されたわたしの荒れようと言ったら自分でも恥ずかしくなる。


    「え、たきな、なんか顔赤いですよ、風邪? 早く戻ろ」

    「ち、違います!」

     怪我人の千束に心配かけるなんてやっちゃいけないこと。

     千束の表情。千束自身について話すときは特に変化がないのに、わたしのことを覗き込んだ時は

    心底心配そうなものを浮かべて……そういうの、やめてほしい……です。

    「……千束は強いなって」

     これ以上心配を掛けるわけにはいかないから……思ってたことを白状する。

     わたしの言葉に千束はきょとんとする。

    「いや、弱いよ、当たっちゃったしね、えへへ……」

    「違います。こう……もっと絶望しててもいいわけじゃないですか。ずっと生まれてからこのかた最強の名を欲しいままにしてたのに、それが破られて。わたしならプライドがズタズタです」

    「なるほど……そうか。たしかにね。なんか生きててよかったーぐらいの感想しかなくてさ」

     千束の脚が宙をバタバタと切る。

    「でもね、確かに、プライドっていうか、そういうのは刺激されたって言うか、『最強じゃなくなった私なんか……』ってのは思ってる」

     ――思ってる。と現在形で彼女は言った。

  • 169二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 07:38:35

    よわよわ千束ちゃん……

  • 170二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 12:39:10

    千束サイド書いたらドロドロ過ぎんよねえ

  • 171二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 18:16:25

    シチューパイすぎる

  • 172二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 00:41:33

    千束は強いからすべてを許されてたという自覚があるよな……

  • 173二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 07:06:57

    喫茶リコリコ解体すらあり得る

  • 174二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 11:09:25

    >>168

    「そうです……か」

    「んー。いや、まあ訓練して取り戻せれば全く問題はないのですけどね? なんか自信がない」

    「フキさんに頼めば絶対やってくれますよ」

    「えーそうですかねー? あの人無能には厳しいですから」

    「そんなこといわないで。まだ退院もしてないのだから」

    「そうだねえ、寿命も延びたし、気長にやってみますよ」

     千束の言葉は軽い。嘘っぽいのだ。何を言ってても。

     それは辛さを告白するときもそう。

    「絶対待ってますから。現場でまた指揮してください」

     赤い服を着て。いやなんなら紺でもいいんですけどね?

     代わりにわたしが赤くなればリコリコは残せる。

    「えへへ、私は指揮官っていうよりほら、自分でやる方が好きなんで……」

    「最近の千束の指揮は分かりやすくてとってもよかったですよ?」

    「……そうなのか、いやあやっぱり私は優秀だなあ……なんて」

     春になる頃には、きっと。100メートル10秒台とかもっと早く走れるようになってますよ。

    今の千束が弱気になっているのは、長期の入院で体力が落ちてしまったことが原因なだけで

    その他の体に障害はないのだ。頑張ればなんとかなると思う。千束が悲観しすぎなだけ。


    「たきなはさ……一人で任務やれてます?」

    「え?」

     予想していなかった質問。

    「……そうですね、やれてます。クルミが助けてくれているんで……大丈夫ですよ!」

     あんまり心配かけちゃいけないよね、ここはわたしがちゃんとできてることを言っておかないと。

     麻薬密売組織を捕まえたこと、テロリストもだ、殺さずに送った。なかなか骨が折れましたけど、倉庫に閉じ込めるっていう作戦を取ったんですよ。それに迷子探しだって、日本語学校だってちゃんとこなせたって言わないと。

     安心させなければ……。そうすればリハビリに専念してくれるはず。沢山報告しましょう。


    「うんうん、すごいですよ。たきな!」

     それに、いっぱい褒めてもらえてる。この一言を貰うためにわたしは……。

  • 175二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 16:22:23

    戻って来られる展開がいいのかな

  • 176二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 23:54:52

    >>174

    たきなに心配かけちゃったよなあ……。私。


    意識がなかった頃の記憶はないけど、まあ当然か。

    夢か現実かは分からないの遠いおぼろげなものが頭の隅にある。

    本当じゃなかったらバカみたいだからたきなには言わないけど

    たきなは私の復帰を願っていなかった。


    そんな、嘘だよね……?

    嘘嘘。たきながそんなこと言うわけないもん。だからこれは悪い夢。


    目を覚ました時にはたきなはボロボロ泣いて喜んでくれたもん。

    リハビリにも付き合ってくれたし、せっかちなのに私に合わせて歩いてくれてた。

    リコリコも、任務もたくさん私がいない間も受け持ってくれてて

    潰れないように頑張ってくれてた。だから私も頑張らなきゃ。


    と思ったけど、なんだたきな、クルミとうまくやれてんじゃん……。

    そっか、だからか。私の復帰をそこまで望んでないのはそういうことか。

    テロ組織を倉庫ごと閉じ込めるなんて私には考え付かないな……。

    多分自分で銃を持って突撃して、多分うまく全員制圧して……それで報告して

    引き取ってもらうはずだ。いつもと同じように。

    たきなは……近接戦闘より遠隔の方が得意だからむしろ私みたいにせずに頭使えたんだな……。

    クルミとの連携も取ったんだろうし。二人とも頭いいから、出発するころにはもう

    第二第三の作戦まで立てててさ。閉じ込めるなら非殺傷もできるしさ……。

    やっぱすごいよ、私のたきなはさ、たきなはさ……。


    いやだ……いやだよ……私を置いてかないでよ。

    もっと頑張るから……。置いてかないで。

  • 177二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 00:01:28

    久しぶりに見たら重力移ってて草も生えない
    よわよわおもおも千束いいぞ…!

  • 178二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 07:10:37

    たしかにクルたきなら戦術の上手いいいコンビになりそうではあるが

  • 179二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 12:54:54

    二人とも闇落ちしやすい

  • 180二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 21:00:27

    >>176

    千束がわたしの顔を見てしみじみした表情をしています。

    わたしは自慢の相棒になれたでしょうか?

    いつまでも千束に頼ってばかりの弱いセカンドじゃないんです。

    人質を囮にするようなことも……最近はしてませんし。


    「千束に心配されるような弱いやつから卒業できたら……嬉しいんですよ」

    「そりゃ、たきなは強いよ、ずっと前から強いよ!」

     そんなにストレートに褒めてもらえるだなんてとてもうれしいです。

     強くて、賢くて、千束の役に立てたらとずっと思ってました。

    「ありがとうございます。千束みたいになれるように頑張りますから、千束も頑張ってくださいよ」

    「勿論! 腕立て100回は余裕でやれるようになるから!」

    「無理しないでくださいよ?」

     千束は腕を曲げて、上腕二頭筋をぺし! と叩きます。

     心なしか細くなった腕は、わたしのあげたモコモココートに包まれて、守られている。

    少しでも寒さから遠ざかるように、恢復を早めるように。

    「っていうか、千束の言う腕立てってアレですよね、腕立てからの直立スクワットからの……ってやつ」

     教官の笛に合わせて、腕立て、スクワット、ジャンプを次々にやるものだ。

    「そうそう。あれを100セット」

    「だいぶ先ですよそれ」

     ……今ならできても十回かな? 千束なら五十はできそうかも。でもそんなこと言ったら

    今すぐにでもやりそうだから黙る。

    「え、普段なら300は出来てたのにぃ」

    「化け物ですよね……」

     そしてそのあと普通に長距離走とか高跳びとかでいい記録出すんだから……。

    「たきなまで化け物あつかいすんのかよー!」

    「他にだれかにされたんですか?」

    「……真島」

    「ごめんなさい。訂正します。千束は化け物なんかじゃありませんから」

     あぶないあぶない。あんなのと一緒の感想を持つところだった。

  • 181二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 07:25:35

    ゆるゆるに戻ってきたぜ

  • 182二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 12:12:56

    ゆるちさたきはいいぞ

  • 183二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 21:45:13

    保守

  • 184二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 00:27:03

    保守

  • 185二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 02:18:24

    >>180

    「そうか……」

     たきなも独り立ちの日が来てしまったんだな……。

    しみじみしてしまう。いや、まだ相棒だけどね。

    私からの卒業ができるってそういうこと。一旦はDAに戻れたんだし、

    また戻ったりできるよね……。必要とされている場所がいくつもある。

    その日が来るまで、私はめいっぱい、たきなと生きていきたい。


    ――


    「ねえ、たきな」

    「なんですか……なに?」

    「あはは、言葉の交換、やっぱりうまくできないね」

     千束は、はにかんで頭を掻く。寝癖がついた髪がふわりと広がった。

     ああ、千束の髪、結構伸びたんだよね。あれから結構長い時間が経った。

    髪の毛の長さはわたしがあの時勢い余ってお揃いにしてくれと頼んだような気がしている。

    千束はそれを覚えているのでしょうか? ええ、そのはずです。

    今でも千束の髪はわたしが結んだ紺色のリボンで纏められているのですから。

    でも、それが千束の髪だけでなくて、全てを縛ってしまっていたとしたら――。


    「千束がやりたいことを最優先してください」

    「……でも、かっこいい方がいいんだよね。たきなみたいにキリっとしたい」

    「なるほど……。なら頑張ってください……ね、千束」

     クスっと笑って、返すしかない。千束がキリッとしたい、と言ったときの顔が

    嫌に真面目で、それなのに唇は尖らせていていて、なんか変な雰囲気です。

    結局千束は敬語とため口が混ざった感じの言葉になってしまいました。

    ……あれ、以前とあまり変わらないですね。

     でもそれでいいんです。千束は千束です。わたしは……。

    まあ気が向いたら方言を出してみてもいいかもしれないですね。正直そっちの方が楽ですし。

  • 186二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 12:04:16

    よわつよになってきました!

  • 187二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 18:36:12

    >>185

    日に日に、身体機能は恢復している状態です。

    歩ける距離も長くなりましたし、もはや普通に歩いています。

    持ち上げられる物の重さも増えました。

    反復横跳びも立ち幅跳びもよい記録です。わたしと同じぐらい……。


    「はぁ……つぅ……疲れた」

    それぞれの記録がわたしと同じぐらいとは言っても、持久力が大分落ちてますね。

    それでも、一週間前と比べると向上してますから、フルに戻るのも時間の問題です。

    もうそろそろ退院のお許しが出るそうです。傷もすっかり塞がっていて、

    内蔵などの機能には問題がないそうです。


    「内臓は大丈夫でしょう」と言われたときが千束が一番うれしそうにしてた瞬間と言って

    過言ではありません。……食事制限が今後ないということですから。

     だとしたら、退院の折には千束が大好きな料理を腕によりをかけて作りたいな。

     ……でもこれを言ったら千束は無理するから……。

  • 188二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 18:36:26

    >>187

    「結構つかれるけど……昨日よりは大丈夫そう」

    「そうでしょう、千束が軽やかに動いてるの、最高ですよ」

     わたしも軽く付き合う。ストレッチで身体を押すとかぐらいしかできないけど

    そのさなかに話せるのが嬉しい。汗を拭って、飲み物を渡して、体調を見て……

    それができるだけでも嬉しい。あと、アラーム係ですね。長くやりすぎないように管理してます。


    「私、いつ実戦に戻れるかな……」

    「それは……まだ分からないですね」

     そう。体は動かしてはいるものの、銃を使った訓練はまだ再開していない。

    腕が鈍ることを心配しているのだろう、でもいうほど千束は銃はうまくないし……。ね?

    「お医者さんに聞いておきますから、いまは基礎体力を伸ばしましょう」

     千束の頬を伝う汗をタオルで拭く。すっかり伸びた髪は後ろで括られていて、運動のたびに

    左右に揺れる。――やっぱり邪魔だったかな?

    「たきなが居てくれてよかった。私、こういうのあんまりやってなくてさ」

    「天才はそういうところがよくないですね、凡なわたしでも役に立って良かったです」

    なんて諧謔を千束はあまり好まないのだけど、一瞬しょぼっとした顔が可愛くてついやってしまう。

    あ、もうこんな時間だ。申し訳ないけどまた別の任務が来てる。わたしが時計をチラと見たことに

    目ざとく反応する千束。ははぁ、目は衰えていないようで。

    「ごめんなさい、千束」

    「ううん、行っといで。わたしもすぐに病室に戻るから」

    「絶対ですよ?」

     なんて念押しをしてわたしは離れる。後ろ髪を引かれるような気はしているけど、リコリコと千束の為だ。


    ――

    「たきなにお世話されてられるなら、いまのままでも……いいかな」

    その呟きは誰にも聞こえない。

  • 189二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 18:44:46

    あれ…まもなくハッピーエンドと思いきやまた雲行きがあやしく…?

  • 190二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 00:12:44

    >>188

    でも、訓練に手は抜けない。

    たきなにお世話されたい気持ちと、たきなを守りたい気持ちが綯交ぜになって

    私の心は不安定だ。なにより、私がいないと、ファーストリコリスがいないと

    リコリコが閉店しちゃう。間抜けな姿は見せられない。


    でも、もしかしたら、たきなだってもう昇進しちゃうかもしれないな。

    そしたら小さい部署に二人もファーストは不必要だから、いなくなっちゃうんだろうな……。


    なにはともあれ頑張らないと。

    頑張らないと……。以前よりは動ける。でも、理想通りではない身体を引きずってランニングする。

    心臓自体は人工物で大して劣化も何もないんだけど、肺の方が衰えているみたいなんだって。

    こんなすぐにゼエハア言ってたら戦えないし、銃の狙いだってブレてしまう。

    いくら非殺傷弾だって喉や目に当たれば最悪死んでしまう。

    わたしがあのコントロールしづらい銃弾を使いこなせるのは、接近できるからだ。

    でも、今は……。のろまで弱くて、こんなんじゃまだ実戦には出られない。

    それに……少し懸念してることがある。それは……ううん、考えたくない。


    ……でもたきなとの約束は守らなきゃ。もっとやりたい訓練をそのままやめて

    トレーニングルームを出る。

    ベンチに座って、水筒の水を飲みながら空を、天井を仰ぐ。

    私の記憶の中で、銃口をまともに見たことなんて何度もある。でも、

    今は思い出すだけでも……震えが止まらなくなる。

    さっき考えるのを止めたそれが、一旦思い出したらあふれ出てきてどうしようもない。


    怖い――銃が。


    もうマトモに避けられないんじゃないか。

    身体能力が恢復しても、これが治らないのなら全然意味がない。

  • 191二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 06:28:39

    保守

  • 192二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 14:29:13

    >>190

    「おめでとうございます! 千束」

     ぎゅ、と私の手を握ってくれるたきな。

    そう、退院の日が来たんだ。あの入院着から懐かしいあの赤い制服に着替えられる日が来た。

     心なしか緩くなった服のごわごわとした感覚が良い。慣れ親しんだアレだ。

     病院のみんなも喜んでくれて、面映ゆい。でも、あまり派手にやるべきじゃないから

    こっそりと裏門から出た。もう春に近い。つぼみが膨らんで、あと一息でそれが弾けるのだろう。

    「復帰ですね! よかったです!」

     隣で無邪気に喜んでくれるたきな。もう私が殆ど万全の状態であると信じてやまないその姿に

    チクリと心が、無いはずの心が痛む。

    「たきな、帰ったらちょっと銃を撃ってみたい。鈍ってそうで……アハハ」

     出来るだけ深刻さを顔に出さないようにして、私は言うけど、それがよくなかったのかな?

    「? 今日ぐらい休んでくださいよ! ね?」

     ……ずるい。その表情は。


     もう何年も帰ってきてないような気分だ。

    耳慣れたそのドアベルは私を――無力な私を歓迎してくれているだろうか?


    「どうぞ、歓迎の一杯です」

     たきながわざわざ珈琲を淹れてくれる。わかる、この香りは……リコリコのものだ。

     リコリス制服にエプロンを引っ掛けたままの簡易的な用意でだったけれど、

    すぐにでも淹れたいという気持ちが分かった。それなら、私もすぐに飲まなきゃ。

    「頼んでも水筒に入れてくれなかったのにー」

    「最初の一杯をめいっぱい楽しんでもらいたくて」

     流動食じゃなくて、普通の、固形の食事が摂れるようになったときにたきなに頼んだけど、

    まだカフェインはダメですよ、って言われて叱られてたんだっけ。

     ずっとトマトジュースだったし?

    「ありがと、たきな。腕をあげたのぉ~」

     なんだか素直に褒められなくて、そうするとなんだか涙が溢れてきてしまうような気がして。

     それでも、たきなは嬉しそうに頬を上げてくれる。

  • 193二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 23:59:55

    >>192

    常連さんも後できてくれて、お花とかもらっちゃった。

    あはは、私が寝てるときにもくれたんだってたきなから教えてもらったけど

    受け取れなくて悪かったな……。

    寝てるからたきなが全部食べちゃったんだって?ずるいわ~。


    いやいや、私がお客さんをもてなさないと!

    張り切ってやってみたけど、意外と私、もう治ってるみたい!

    そりゃ、治ってなかったら退院は許されなかったわけだけど、って違うわ、

    自分の理想通りの動きが出来てる。まあそりゃ、もう十年以上やってるしね

    数カ月のブランクなんてすぐに取り戻せる。


    ――


    「千束、いけそうですか?」

    「おうよ!」

     電波塔の麓は港が近く、密輸が月に一回はある。まったく飽きないもんだね……。

     地下の射撃場で何度も練習したんだ。相変わらずのブレ、そう相変わらずだ。

    つまり腕は鈍ってない。あとは……怖くさえなければそれでいつもの私に戻れる。

    最強最高のリコリスの私として……戻れるんだ。

     慣れ親しんだグリップが手に吸い付く感覚。1kg程度のその重みが懐かしい。

     倉庫の入口に私たちは立つ。夜の、冷たい潮風が私たちを包む。息遣いも、震えも

    全てを飲み込んで私たちを隠してくれる。さぁ行こう、絶対、今度は失敗しない。

  • 194二次元好きの匿名さん22/11/28(月) 07:40:24

    次いっちゃうかな?

  • 195二次元好きの匿名さん22/11/28(月) 12:10:56

    ごめん、続くかもしれんわ
    by作者

  • 196二次元好きの匿名さん22/11/28(月) 23:26:54

    >>193

    「たきな、今日もドローン呼んでるんだっけ」

    「一応、あれはあれで便利なんで。千束のインカムの周波数も合わせてありますよ」

    「よし……鬼に金棒って感じ、やっちゃるぜ」

     千束はいつも通りだ。数カ月ぶりなのに判断も、銃の持ち方も以前のままだ。

     もう心配して損したかな? いや、まだ入り口にいるだけだ。油断は禁物。


    「ここも閉じ込められたらよかったんだけどね」

     千束が残念そうに言います。わたしも確かにと思って歯噛みする。そう、この倉庫は

    造りが古すぎて電動シャッターでもなんでもない、ただの手押し式のものだ。

    こればかりは天下のウォールナットでもこれは制御できなかった。

     それに、倉庫自体も劣化していて、壁に所々錆びて孔が開いています。人が通れるほどのものではないのですが

    全力で蹴られでもしたら広がるでしょう。

     つまり、カチコミに行かなければならない作りなのです。


    「千束がいるから大丈夫なんです。行きましょう!」

     クルミからのGoサインを受け取り、わたしたちは駆け出す。ドラム缶や土嚢、その他雑多な資材に

    身を隠して、一人づつ狙っていく。脚や、肩といった命に別条のないところを遠くからわたしが。

     そして、密輸貨物自体を奪いに千束が駆ける。

     あの鮮やかな色の制服でよかったといつも思う。わたしはそれを避けて撃ちやすい。


     そして色だけでなく、その動きも昔見たままだ。

     まず一番大柄な男に近づき、ボディーアーマーに覆われていなさそうな脇腹に一発。

    後ろから千束を狙う男たちの導線を、まるで後頭部に目が付いているかのように予測して

    右に避けて、瞬間的に彼らの後ろを取ってまた一発、そして一発。

     あとはもう簡単な話です。誰一人立っている者はいない。――そして誰一人、死んだ者もいない。

     ああ、本当に彼女が帰ってきたのだ。

     戦ってる最中の癖に、わたしは思わず見とれてしまった。

  • 197二次元好きの匿名さん22/11/29(火) 07:36:21

    保守しておくか?

  • 198二次元好きの匿名さん22/11/29(火) 12:21:58

    一応ね?

  • 199二次元好きの匿名さん22/11/29(火) 22:27:45
  • 200二次元好きの匿名さん22/11/29(火) 22:31:51

    .

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