【リメイクSS】あなたとミスターシービーの3年間が始まります。

  • 1二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:35:31

    とある模擬レースの日。
    学園はとある噂で持ちきりだった。
    「ねえ聞いた!?あのミスターシービーさんが今日の模擬レースに出るって!」
    「え、ほんと!?あの人もついにレースに登録したんだ…!」
    「びっくりだよね〜。あの人今までなぜかずっと登録してなかったし…」
    ミスターシービー。彼女の名前は自分も聞いたことがある。
    確か…ものすごい才能を持っていて、後方から追い上げるレースが得意な娘。
    何よりの特徴は、走ることを思いっきり楽しんでいると言うこと。
    そんなすごい娘のレースが見られるなら、と…レース場に向かうことにした。

  • 2二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:35:59

    「………」
    「あっ、見て、シービーさんが来た!」
    「ほんとだ〜!いつ見てもかっこいいねぇ…」
    ⦅………ものすごいしっかりとした体つきに、全く緊張を感じない表情…⦆
    …彼女は圧倒的な貫禄を放っていた。
    「_ゲートイン完了。2000メートルのレースが幕を開けます」
    その模擬レースは、静かに幕を開けた。

    「先頭は4番。注目のミスターシービーは現在、最後方です…!」
    「ね、ねえ…シービーさん、勝てるんだよね…?」
    「な、何言ってるの!普段あそこから追い上げてるじゃん!」
    「まあでも…不安にもなるよね…」
    彼女は既に前から1バ身ほど離されていた。
    「残り400メートルを切りました…な、なんと!ミスターシービー、上がってきています!」
    ぐんぐんと彼女は追い上げる。
    そのまま他の全員を抜き去り、千切って…
    「なんとミスターシービー、1着でゴールイン!!!」
    そのまま勝ってしまった。
    「…すごい!すごい!!!」
    「シービーさーん!!!かっこよかったですーーー!!!」
    あまりに自由で、綺麗な走り。思わず目を奪われる。
    「ねえシービーさん、今フリーなんでしょ?是非うちでトレーニングを…」
    ⦅しまった、先を越された_!⦆
    「あれ、スカウト?ごめんね、今回のレース、スカウトのためにでたんじゃないんだ」
    「えっ…あ………そ、そうなの…」
    そういえばこれは”模擬レース”だ。担当がいないウマ娘がよく出る”選抜レース”ではない。
    「それじゃアタシ、いくところあるからまたね」
    そう言って、彼女は1人歩き去ってしまった。

  • 3二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:36:13

    そんなレースを見た後、自分は屋上に訪れていた。
    『はぁ…』
    なんてものを見てしまったのだろう。あんなものを見てしまっては、普通の走りではしばらく興奮できないだろう…
    「あれ、先客?珍しいね」
    不意に声がする。振り返ると、先ほどレースを走っていたミスターシービーがいた。
    「今からお昼ご飯食べるんだ。キミは何も食べないの?そろそろお腹空いてるんじゃない?」
    言われてみれば、そろそろ昼だ。
    お腹が空いていないと言われれば嘘になる…
    「アハハ、いかにも言われたらお腹が空いてきたって顔。はい、あげる」
    そう言って手渡されたのはハンバーガー。
    『ありがとう』
    「どういたしまして」
    2人でハンバーガーを齧る。
    …初対面だし、どうも微妙な雰囲気に包まれている様に感じる…
    『な、なぁ』
    「ん?」
    耐えかねて話題を振る。
    『今日のレース、スカウトが目的じゃないなら何のために出たんだ?』
    それはさっきからずっと気になっていたことだった。
    が、同時にいきなりデリケートなことを聞いてしまったかもしれないことに気が付く。
    一人不安になっていると、彼女は普通に返してくれた。
    「何のために…?レースに出るのに…走るのに…何かのため、とかあるの?」
    『…あ』
    そうか。彼女は走るのをただ楽しむために模擬レースに出たんだ。
    『…素敵だな』
    なんとなく、そう思った。
    「ふふ、そう言ってくれると嬉しいね。ありがとう」
    少しだけ気まずさは和らぎ、一緒に昼飯を食べるのだった。

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:36:25

    それから、時々屋上で彼女と食事をするようになった。
    『はい。パン、今日は俺が買ってきたよ」
    「美味しそうなパンだね。どこで買ったの?」
    そんな他愛のない会話をしながら、食事をする。
    そんなことを何度か繰り返したある日。
    『…シービーが来ない』
    何かあったのだろうか。心配していると、グラウンドの方から声がすることに気がついた。
    「ねえ、わかってるの!?あなたの才能は素晴らしいの!ずっとフリーでいるなんて…」
    見てみれば、シービーが誰かに怒鳴られていた………!
    『今すぐ向かわなくちゃ!』

  • 5二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:36:38

    向かった先で怒鳴っていたのは、この間スカウトを断られたトレーナーだった。
    「そんなこと言われても…アタシは自由に走れればそれで…」
    「それがダメなの!自由に走るだけじゃなんにもなりゃしないわ!」
    『ちょ、ちょっと!』
    「何!?誰よ!!!」
    割って入ると、シービーがこちらを向く。
    「あっ、丁度よかった」
    そうすると自分を指差して彼女は話し出す、
    「アタシ、このトレーナーにスカウトされてるんだよね。検討中だから少なくともキミのスカウトに乗ることはないよ」
    「なっ…!」
    ………そんな覚えはないが、おそらく切り抜けるための嘘だろう。何も言わないことにした。
    相手のトレーナーは何か言いたげな顔をしていたが、主張が”誰かのスカウトを受けろ”な以上、何も言えずに帰っていった。

  • 6二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:36:49

    「はぁー…疲れたね…」
    『なあ、シービー』
    「なに?」
    彼女はいきなり改まって声をかけたことに面食らったのか、こちらを不思議そうな顔で見てくる。
    『嘘じゃなくて、本当にキミをスカウトしたい』
    「…このタイミングで言うなんて、キミもなかなかクレイジーだね」
    『タイミングなんて自由でいいだろ。それに』
    「それに?」
    『書類上誰かの担当になってた方が、今回みたいなトラブルも避けられるだろ?』
    トレーニングなどを見られるのが好きではないならやらないし、あくまで書類上のもの。
    そう言うと、彼女はおかしそうな顔をする。
    「…それって、アタシに自由な走りをさせてくれるって…そういう宣言でいいのかな?」
    『ああ。あってるぞ』
    「…はは!面白いこというね!いいよ、気に入った…だけど、せっかくスカウトするならもっと夢のあること言ってもいいんじゃない?」
    …これは、自分を一緒に夢を追うトレーナーを認めてくれたと言うことだろうか。
    それなら…
    『キミの自由な走りを貫いて、三冠でも一緒に取ろうじゃないか!』
    「いいね、楽しそうだよ。それじゃあよろしくね、ミスター・トレーナー?」

  • 7二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:37:07

    おしまい

    お付き合いくださりありがとうございました

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:40:23

    過去スレの宣伝もついでに置かせていただきます

    広がるとアレなので1への安価を仕込んで

    https://bbs.animanch.com/board/1084262/?res=1

    https://bbs.animanch.com/board/1140223/?res=1

    https://bbs.animanch.com/board/1184455/?res=1

  • 9二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 07:44:16

    いいものを読ませて頂いた
    誠に感謝

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