どうしたんだい、トレ公?

  • 1二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 21:28:38

    いやね、浮かない顔してるからさ。何でも話してみな、ヒシアマ姐さんができる限り助けてあげるからさ。
    …………なるほど。アタシの担当として相応しいからどうかを悩んでるんだね? うーむ……。
    (こういう時にフジみたいに慰められたら、いいんだけどね……アタシはそういうの苦手だからねぇ……)
    (アタシにできることは……そうだ!)
    よし、分かった、トレ公! 少し呼んできて欲しいヤツらがいるんだけど頼めるかい?


    橙色に染まったトレセン学園のレース場に、5人のウマ娘が集っていた。
    最内枠にはヒシアマゾン。その外にはフジキセキ、ビワハヤヒデ、ナリタブライアン、マヤノトップガンの順に並ぶ。
    (ハヤヒデは呼んでないんだけどねぇ……)
    まぁいいか、とヒシアマゾンは前を向く。怪物と呼ばれる妹と走りたいのはウマ娘としてサガのひとつだと理解していたからだ。

    コースは芝、2000メートル。模擬レースながらも本番と同じ中距離なのは発端であるヒシアマゾンがそれを望んだからだった。全員がやりたいのなら、とトレーナー共々に快諾してくれた。
    周りには突然行われるであろう模擬レースに様々なウマ娘が集まり始めていた。
    それぞれが軽く体を動かしては走る構えを取り始め、そして全員の準備が終わり、しばらくの静寂。そして――――

  • 2二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 21:31:04

    パンッ! とスタートの合図が鳴った。
    全員がほぼ同時に飛び出していく。しかしヒシアマゾンがやや出遅れたようにも見える。
    最初の直線、先頭に立ったのはマヤノトップガン。その作戦は逃げ。それがこのメンバーの中で最も勝率の高い策であると彼女は理解していた故だった。続くビワハヤヒデ、ナリタブライアン、フジキセキは同じく先行策。唯一ヒシアマゾンだけが追い込み策で後方に位置していた。

    第一コーナーでマヤノトップガンはスタミナ温存のために逃げから先行へと策を変えようとしたが、ナリタブライアンがピッタリと真後ろに付いていた。怪物と称されるほどのスタミナと脚を持って、逃げの作戦から変えられないようにしたのと同時に彼女を壁として、彼女から発生するスリップストリームの中に入る――つまり、自分のスタミナを温存しやすくしたのだ。もちろん彼女とて、想定していなかった訳では無い。しかしここでペースを早め、スタミナを使い潰されるよりは付き合った方がまだ分があった故に付き合わざるを得なかった。
    それにナリタブライアンのやっている作戦は諸刃の剣でもあった。怪物とはいえ、いつスタミナが切れるかも分からぬ大作戦でもある。それを見て最後方の彼女、ヒシアマゾンはにやり、と笑う。
    (ここまでは予想通り、だね…………)


    第二コーナー、第三コーナーと曲がって順番は変わらずマヤノトップガン、ナリタブライアン、ビワハヤヒデ、フジキセキ、ヒシアマゾンの順。
    ナリタブライアンは未だマヤノトップガンのほぼ真後ろに付いて、風をガードさせていた。
    その二、三馬身ほど後ろでビワハヤヒデ、フジキセキの順に走っている。その後ろでヒシアマゾンも二人の体を使ってスリップストリームを利用していた。そして大外にその体をズラす。

  • 3二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 21:31:43

    >>2


    第四コーナーの少し前、ナリタブライアンが伸びる。完全にマークされ潰されたマヤノトップガンはスタミナを切らして、その速度を緩めてしまう。

    その隙を逃がすほどナリタブライアンは、怪物は甘くなかった。そしてブライアンがコーナーを曲がりきる。そこにスパートをかけた三人が突っ込んでくる。しかし、ビワハヤヒデとフジキセキは伸び切れない。

    原因は単純だった。今回のレース、マヤノトップガンとナリタブライアンによってペースが完璧に狂わされており、さらに先行策を取っていたが故に後方にいるヒシアマゾンに張り付かれて下がれない、という前方にいたマヤノトップガンと同じ状況にハサミ打ちにされていたのだ。


    全てを利用しきって、唯一突っ込むことの出来たヒシアマゾンはすぅ、と深く息を吸ってそれを長く吐ききる。

    スリップストリームから出た故に体幹がブレるが、それを力づくでカバーする。

    そして追いつくのに十分と見るやいなやぎらり、と前方にいるナリタブライアンを睨む。

    そして地面を砕くかのように踏み込み、遠く遠く、伸びる。何度も練習したコーナー練習が完璧に再現され、唯一ヒシアマゾンだけが最高スピードのままに突っ込んでくる。


    (やはり来たか! アマさん!)

    (タイマンだ! ブライアン!)


    もはや二人の間に言葉はなかった。まるで爆発するかのような末脚で突っ込んでくるヒシアマゾンとまるで逃げるように走るブライアン。

    「うぉぉおおおおおっ!」

    「らぁぁあああああっ!」


    ……………………

    ………………

    …………

    ……

  • 4二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 21:32:09

    >>3


    はぁ……はぁ……はぁ…………どうだった、トレ公……?

    これがアンタに育てられたヒシアマゾンの走りさ。さすがに出遅れが痛かったからハナ差で負けちまったが、いい走りだったろう?

    熱い走りだったって? あぁ、そうさ。私でさえ熱くなれるほどのレースだったよ。でもね、トレ公! この走りはこうやってタイマン貼ってくれる皆だけじゃなくて、アンタのおかげでもあるんだからね、特にスリップストリームはアンタに教えてもらった技だしね! へへ、なんだトレ公?

    ブライアンたちとそのトレーナーたちがアタシ呼んでる?

    ははっ、きっとレースの反省会だね。よっし、行くよトレ公!

  • 5二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 21:35:11

    (スレ主です……なぜレースSSになったのか分かりません……荒れそうだなぁと思ってます……さすが荒れたら消します……スレ主でした……)

  • 6二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 22:41:53

    あげ

  • 7二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 22:43:47

    いい……
    これ心ばかりのハートです……

  • 8二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 01:29:50

    (もっとください……スレ主です……)

  • 9二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 01:38:46

    (良かったよ…)

  • 10二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 02:02:17

    レース描写までこのクオリティで書けるのは天才すぎんか???

  • 11二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 02:02:42

    (ァ……!)

オススメ

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