【SS】スカイ「詫びの品」

  • 1二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 18:58:24

    「はぁ……」
    幾度目か分からない溜め息を吐きながら、私はショッピングモールを歩いていた。
    それはつい先日の事、どうやら私は寝惚けてグラスちゃんに膝枕させたり、ドーベル先輩に壁ドンしたりしていた様だった。
    それを後にアマさんから聞いた私は直ぐ二人に土下座して、詫びの品を買う為にこのショッピングモールに来ていた。
    …まあ、グラスちゃんへの詫びの品は直ぐに【取った】から良しとして、問題はドーベル先輩への詫びの品だった。
    「…確か、ドーベル先輩は【絵を描く事】が好きみたいだから、何か描く物が良いのかな…?なら、ペンとか紙か……いや、ペンはもう気に入ってるのがあるだろうし、ここは紙、かな?」
    考えた末に、ドーベル先輩への詫びの品はスケッチブックに決まった。
    「良し。じゃあ文房具店に行きますか」
    そうして私は足取り軽く文房具店へと向かった。

  • 2二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 18:59:53

    「スカイさん…」
    「えっ…?」
    それは、ウマ娘の耳からでも消え入りそうな声だった。
    そして、その声の主は、私が愛して已まない人だった。
    「フラワー……ッ!」
    声がした方を向くと、その声の主であるフラワーが頭を少し俯かせたまま、余りにも近い距離に居た。
    「え、ちょっ、近い…?!」
    余りの近い距離に思わず後退りで距離を取ろうとしたけど、フラワーはそのまま距離を詰めてきた。
    「あの…ちょっと…!?」
    幾ら後退りしてもフラワーは距離を取ってくれず、そのまま追い詰められたままになり、そして、私の背中が壁に当たった。
    「うっ…!」
    ドンッ!
    「へっ…?!」
    フラワーが両手を私の直ぐ傍の壁に勢い良く置き、私は逃げ場を失った。
    「いや、ホント、如何したのさ…!?」
    「どうして…」
    「ん…?」
    「どうしてなんですか…?」
    漸く頭を上げ、私の顔を見たフラワーの目には、今にも零れ落ちそうな位に涙が溜まっていた。
    「フラワー…」
    一体何がとは思ったらけど、多分私のやらかしを人伝に聞いたからなんだろうとは想像が付いた。
    ならば、私がやるべき事は…

  • 3二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:00:36

    「フラワー」
    今は言い訳や弁明よりも、明らかに掛かっているフラワーを何とかする方が先決だと思い、私はそっとフラワーを抱き締めた。
    「スカイ…さん……」
    「大丈夫、大丈夫だから、ねっ?」
    私は更にフラワーを落ち着かせようと、背中をそっと撫でた。
    「…………」
    フラワーは私に撫でられながら、そのまま私に抱き付いた。
    「……落ち着いた?」
    「…はい」
    暫くの間お互い抱き付いたままだったけど、フラワーは名残惜しそうに離れた。
    「ま、取り敢えず、ベンチにでも座ろうか?」
    「はい」
    そうして、私とフラワーは近くのベンチに座る事とした。

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:02:37

    「…えっ?全部知ってたの?」
    「はい」
    どうやらグラスちゃんから私のやらかしを全部聞かされていた様だった。
    「……ん?でもさ、セイちゃんが寝惚けていたのは知ってるのに、何でわざわざコッチに来たのかな~?」
    「…グラスさんからスカイさんがショッピングモールに行ったって聞いた時、何だか居ても立ってもいられなかったんです。それで…」
    「やきもちというより、寧ろ独占力ですな~。まさかフラワーがそんな物を持ってたなんて、セイちゃんも罪深いですな~」
    「ううっ…それは……」
    「にゃはは、まあ、そんなフラワーにしちゃったセイちゃんにも責任があるので、フラワーにも詫びの品を買わないとね~」
    「…えっ?い、いいですよそんな…!」
    「…え?セイちゃんからのプレゼントが欲しくないの…?!」
    「…ッ!ず、ズルいですよそんなの…!」
    「にゃはっ、じゃあ決まりだね~。あ、先にドーベル先輩のを買うから、その後ね」
    「もう…!」
    「じゃあ、行きましょうか」
    「…はい」
    そうして私とフラワーはまず先に文房具店へと向かい、スケッチブックを買った。

  • 5二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:05:08

    「さて、フラワーは何が欲しい?」
    「何が欲しいって言われましても………あっ」
    何かを見付けたフラワーが立ち止まり、私はフラワーの視線の先を見た。
    「ん?……あれは…」
    其処には、先日オープンしたばかりのアクセサリーショップがあった。
    「彼処がいい?」
    「…はい」
    私とフラワーはそのアクセサリーショップに入って行った。
    「はへ~…」
    シンプルな物から凝った形状の物が整然と並べられていたけど、学生でも何個か買える位のお得な値段ばかりで、これは良い店だと思った。
    「あっ」
    「ん?」
    フラワーが突然声を上げたので其方を向くと、其処には【G1ウマ娘をコンセプトにしたアクセサリーシリーズ!!】という看板があり、ネックレスや指輪等が色別に……いや、ウマ娘別に並べられていた。
    (スペちゃんとかゴルシさんとかをイメージしたアクセサリーがそれぞれ有るって事か……)
    「スカイさん、私、これが欲しいです」
    「ん?どれ……えっ?!」
    フラワーが指差した物を見て、私は心臓が跳ねそうになった。

  • 6二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:06:57

    「それって…私のアクセサリー…?!」
    「…?スカイさんだってG1ウマ娘ですよね?」
    「…あ…ああー……そうだよね……ってか、私のが欲しいの…?」
    「はい、一緒に居られない時でもスカイさんを感じたいですから」
    「ん゛んッ?!そ、それは破壊力有り過ぎ……あ゛っ?!」
    ふと視線を左に逸らすと、私のアクセサリーの隣にフラワーのアクセサリーが置かれていた。
    (フラウンス…!)
    ゴルシさんが私とフラワーを纏めて言う時の言葉が過り、反射的にそのフラワーのアクセサリーのひとつの指輪を手に取っていた。
    「あっ!私のも有るんです…スカイさん!?」
    「えっと…その……ええい!指輪だ指輪!後オプションのチェーンとリングホルダー!」
    もう捲し立てる様に私とフラワーの指輪をオプション毎購入した。
    「…やっぱりあの子の言う通り、セイウンスカイとニシノフラワーが付き合ってるって噂は本当みたいね…」
    …店を出る時に聞こえた店員の呟きは、聞こえなかった事にした。

  • 7二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:09:23

    「そう言えばスカイさん、さっき店員さんが何か言ってました?」
    「えっ?…いや、ちょっと聞こえなかったね~」
    店を出て、休憩スペースのベンチに座っていた私は、フラワーの疑問を躱していた。
    「そうですか。……あっ!折角ですから、お互いに付けましょうか」
    「……へっ?」
    一体何を言い出してるんだと思ったけど、ニコニコなフラワーを見て、折れる事にした。
    「……分かった。じゃあ私からね」
    そう言って私のモチーフの指輪を取り出し、リングホルダーとチェーンを取り付けた。
    私モチーフの指輪は、ベゼルが雲の形をしていて、その形に沿う様に削られた空色の宝石が填められていた。
    「行くよ……」
    やけに緊張した趣でフラワーの首にチェーンを掛けた。
    「…綺麗…」
    フラワーは首に掛けられた指輪を手に取って眺めた。
    「じゃあ次はフラワーね」
    そう言って私はフラワーのモチーフの指輪とリングホルダーとチェーンを手渡した。
    フラワーモチーフの指輪は、花の形のベゼルに、真ん中が菫色で、周りが薄黄色の宝石が填められていた。
    「はい」
    フラワーは指輪とリングホルダーとチェーンを付け、それを私の首に掛けた。

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:11:22

    「わあ…!良いですね!」
    「うん、私もそう思うよ」
    確かにこの指輪はフラワーと一緒にいる様な感覚を覚える位に良く出来ていた。
    「さてと、良い店にも巡り合えたし、帰りましょうかね~」
    「はい!」
    こうして、私達は寮へと帰る事にした。
    「という訳で、お納め下さい」
    フラワーを伴って美浦寮に戻った私は、丁度ロビーで寛いでいたドーベル先輩を見付けて、スケッチブックを手渡した。
    「…わざわざ其処までしなくて良かったのに……ま、気持ちは受け取るわ」
    「有難うございます!」
    「あら?セイちゃんにフラワーちゃん」
    「あっ…グラスさん…」
    更に丁度良くグラスちゃんも現れた。
    「フフッ、いきなり出て行った時はどうなる物かと思いましたけど、その様子ですと、大丈夫みたいですね」
    「は…はい…」
    「はい、グラスちゃん」
    私は紙袋の中にあるグラスちゃんへの詫びの品を取り出し、それを渡した。
    「?それってエルのぬいぐるみじゃない?同室なのに?」
    そう、グラスちゃんへの詫びの品とは、エルコンドルパサーの超巨大ぬいぐるみである。

  • 9二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:14:01

    「あらー……やっぱりセイちゃんにはお見通しみたいですねぇ…。では、早速ながら使いましょうか」
    「…?」
    頭に疑問符を浮かべる二人を余所に、グラスちゃんはエルの超巨大ぱかプチを持ったまま壁際まで歩き
    「……では…!」
    ドンッとエルのぬいぐるみを壁に叩き付けたと思ったら、空いてる拳でエルのぬいぐるみを思いっ切り殴り付けた。
    「ッ!!?」
    突然の行為に青ざめるフラワーとドーベル先輩。
    「あー……思ってた以上にストレス溜まってたかぁ……」
    「な…成る程ね…ストレス解消の道具だったのね。でも、どうしてエルのなの?」
    「んー?まあ、目に付いたのがエルのだったから?」
    「ええっ…」
    「ま、やるべき事は全部やれたし、そろそろお昼にしますかな?」
    「…あ、今日はお弁当作れてないです……」
    「んじゃ、偶には購買でも良いんじゃないかな~?」
    「ううっ…すみません……」
    「まあまあ、謝る事じゃないですよ~?ささ、行きましょうか」
    「…はい」
    私はフラワーの手を繋いで、購買部へと向かった。
    「……ふーん、成る程、ね…」
    …完全に忘れてました、はい。

  • 10二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:17:25

    「セイちゃーーーーん!!何でエルのぬいぐるみなんデスかーーーー!!?」
    数日後、ロビーのソファーで寝転んでゲームをしていた私の所に、青ざめた表情のエルが問い詰めて来た。
    「ちょっと良い所だから邪魔しないでよ」
    エルの顔面を足蹴りしながらそう言った。
    「グエッ?!な、何するデース!?」
    「あ、此処に居たのねスカイ」
    「ん?」
    すると、大きな封筒を持ったドーベル先輩が此方にやって来た。
    「ス、スカイ!?セイちゃんに用が有るんデスか?!」
    「?何なのよエル…何かヘンじゃない?」
    「へ…ヘン…?!」
    そう言ってエルは固まった。
    「ま、良いわ。はい、スカイ」
    ドーベル先輩が封筒を私に手渡した。
    「何ですこれ?」
    「見てのお楽しみよ」
    何なんだと思いつつ、封筒を開けた。
    「…!これって…!」
    封筒の中に入っていたのは、2枚の紙で、私とフラワーが笑い合っている絵が描かれていて、1枚は私よりで、もう1枚はフラワーよりに描かれていた。

  • 11二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:20:20

    「…あれ?この紙って…?」
    「そ、スカイがくれたスケッチブックの最初と次の紙だよ」
    「ありゃ、何か悪いね~」
    「ううん、スカイとフラワーが仲良いみたいだから思わず描いちゃっただけよ」
    「……ああ~…成る程ね~。…あ、時間だ」
    あの手繋ぎはほぼ素でやってた事と、ドーベル先輩の事を完全に忘れてた事に苦笑しつつ、紙を封筒にしまい、傍にあるバッグを手に取った。
    「あれ?出掛けるの?」
    「この際だから言いますけど、フラワーとのデートですよ」
    「そ」
    「それじゃあ」
    そして私は美浦寮から出た。
    「…………ハッ?!何やらデートという単語が聞こえた気がしマース!」
    「…えっ?ずっと気を失ってたの…?」
    「という訳で、エルとデートするデース!!」
    「何で!?」
    「あらあら、何を寝惚けているのですか?エル」ジャキッ
    「ヒッ?!グラス!?」
    「ドーベル先輩、このお莫迦さんは私が引き取りますので、それでは…」
    「や、止めるデース…!あのぬいぐるみみたいにはしないで下サーイ……」
    「………ヨシ、今のは忘れよ」

  • 12二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:23:28

    「フーラワー♪」
    待ち合わせ場所である何時もの花壇の所に居るフラワーに声を掛けた。
    待ち合わせ場所が花壇なのは、フラワーがお世話をしてからという事だった。
    「あ、スカイさん。…あれ?その封筒って…?」
    フラワーは私が持ってる封筒に気付いて声を掛けた。
    「いやぁ~、ドーベル先輩が私とフラワーの事を描いてくれたんだよね~」
    「えっ?そうなんですか?」
    「見る?」
    「はい!」
    私はフラワーに封筒を手渡し、フラワーは中身を見た。
    「わぁ…!素敵ですね」
    「うん、そうだね」
    「……あっ!この絵を部屋に置いてからにしません?」
    「あっ、やっぱり?んじゃ、校門の前にしようか」
    「はい!」
    そして、私とフラワーは絵を持ってそれぞれの寮と自室に向かった。
    因みに、ロビーには何人か居たけど、ドーベル先輩とエルはもう居なかった様だった。

  • 13二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:24:57

    「♪~♪♪~」
    絵を机の中にしまい、校門の前まで来たけど、フラワーはまだだったから、鼻歌を歌って待っていた。
    「スカイさーん!」
    「んっ」
    「待たせました?」
    「いや、別に」
    「そうですか」
    「そう言えば、今日は何処に行きたいの?」
    「そうですね……あっ!久し振りにゲームセンターに行きたいです」
    「ん。じゃ、行こうか」
    「はい!」
    そして、何方ともなく手を繋ぎ合わせ、私達は歩いていった。

  • 14二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:29:34

    …作品自体は数週間前に完成したけど、出すタイミングを見誤った結果、今出すハメになりますた…

    それはそうと、デイリーレジェや女神像を駆使して、遂にスカイを星5に出来ました
    それでは

  • 15二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 19:34:08

    素晴らしいですわ

オススメ

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