- 1二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 13:19:39
■年前 トレセン学園
その日、その話題をきりだしたのはヒシスピードだった。急に話題を振られたものだから何かと思ったものだ。
「何の話?」
「俺達の進路だよ。トゥインクルシリーズに出続けるか、他の仕事につくか。お前は当然前者だな。…いや、その更に上、ドリームシリーズ・海外G1目指してまっしぐらか。」
進路の話題だった。レースの道に進むにせよ別の道に進むにせよ、これから長い人生なのだから将来設計は重要だ。
「当然よ。その為にここまでやってきたんでしょ?」
「まっ、そうだけどな。」
どうも煮え切らない態度をとるヒシスピードに、漠然とした不安が膨らんでいく。何故私にこのことを切り出したのか。それに薄々感じながらも、私は彼女の進路を問うた。
「俺?俺は……俺は無理だな。精々GⅡ・GⅢが関の山だ。今は南関東のローカルシリーズででトレーナーでもしようかなと考えてる。まぁ、狭い世界だ。何処かで会うこともあるだろう…そんときは、ちゃんと俺のこと覚えててくれよ?」
それは事実上の引退宣言だった。すでにトレーナーの承認は得ているという。それを聞いた私は、気持ちを抑えることが出来なかった。
「…いいの?」
「…えっ?」
「それで貴女はいいの?レースで上を目指す為にやってたんじゃないの!?」
「そりゃなりたいけどさ、しかたないだろ?希望と適正は違う。どんなに頑張っても出来ないことはあるんだよ。」 - 2二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 13:20:31
今思えば私は焦っていたのだと思う。クラスメイトや友人の大多数が別の道を進む中、せめて彼女だけには残ってほしかったのかもしれない。その焦りが私にあの言葉を言わせた。言わせてしまった。
「…何故諦めるの?何故努力しようとしないの!?」
若さ故の無知と共感性の無さから出た本音。それは彼女にとっての地雷だった。
「……努力してないわけじゃないさ。俺だって…俺なりに、今まで精一杯の努力をしたきた!けど………お前には分からないよ!!!」
「____ッ」
「やっぱ違うんだよ俺達は!!!お前とは!!!!」
ヒシスピードの言葉に頭の中は真っ白になった。反射の様な言葉が零れる
「……何が違うの?」
「あっ………すまない」
「私が貴女と…何が違うの?」
「それは…」
ヒシスピードはそれきり黙ってしまった。痛いほどの静寂。私の頭にはいなくなってしまった友人達との別れ際が浮かんでいた。
「疲れたんだ……」
「分かってる、君のせいじゃないってことも。でも…」
「ごめん…」
- 3二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 13:20:45
ハードバージ、プレストウコウ、ラッキールーラ…誰もが入学時の希望と戦意を喪失して学園を去っていった。そして、その理由の中心には私がいた。
ヒシスピードは私が皆と違うと言った。それがレースの才能であることは察せられた。
では、どうすればよかったのだろう?いつから間違っていたのだろう?何が駄目だったんだろう?その自問自答が私にとっての罰なのだろうか?
多くの友人や優秀な後輩達を得た今でも時折この出来事を思い出す。多分私は、この日を一生忘れることはないだろう。
- 4二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 14:59:23
救いは無いんですか?
- 5122/10/30(日) 15:39:26
- 6122/10/30(日) 17:06:29
元ネタ考えるとこういうおつらい展開になるかなって…
- 7二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 19:09:15
マルゼン曇らせは珍しい