- 1二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 20:48:09
PokemonGOが流行る
↓
ピカチュウやイーブイなど可愛いポケモンに癒される
↓
しかし体は闘争を求める
↓
鉄臭さが欲しくなる
↓
アーマードコアを買う
↓
アーマードコアシリーズの収入が伸びる
↓
ウマ娘になる
本スレは「自分がウマ娘だったら」を妄想するスレです。
スレを開いたあなたも自分のウマ娘になった姿を想像してみましょう。
前スレ
あにまんウマ娘になりたい部Part155|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/img/1178150/44来週もキリコとウマ娘になってもらう。本スレは「自分がウマ娘だったら」を妄想するスレです。スレを開いたあなたも自分のウマ娘に…bbs.animanch.comアーカイブ
@Wiki
umamusumeninaritai @ ウィキ【12/15更新】@wikiへようこそ ウィキはみんなで気軽にホームページ編集できるツールです。 このページは自由に編集することができます。 メールで送られてきたパスワードを用いてログインすることで、各種変更(サイト名...w.atwiki.jp - 2二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 20:48:27
参考になりそうなもの↓
https://bbs.animanch.com/board/199950/?res=3
自分みたいにお絵描きできない人向け
https://bbs.animanch.com/board/199950/?res=4
https://bbs.animanch.com/board/246596/?res=141
診断メーカー↓
ウマ娘になったらの診断をプログラミングして作った!|あにまん掲示板https://shindanking.wixsite.com/my-site-1おかしくなったから立て直した画像のような結果が出ますbbs.animanch.com※入部希望者へ※
際限なくウマ娘が増えてしまうことを避けるため、原則一人一ウマ娘でお願いします!
次スレは>>190を踏んだ人が建てること!
建てられない場合は他の人にスレ建て代行をお願いすること!
スレの管理ができなくなるモバイル回線で建てないこと!
いいー?
- 3二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 20:48:37
何故そこでウマ娘になるッ!?
- 4二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 20:49:37
そりゃあおめぇ、ACシリーズは高速機動戦だからターフでも二段QB吹かしたくなるなるだろ
- 5二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 20:50:13
- 6二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 20:52:00
故障率高そうだし故障したら断末魔が響きそう
- 7二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 20:57:55
たておつでございます
- 8二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:05:32
前スレ200フレンチキスに空目した
- 9二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:06:08
お
つ - 10二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:06:16
おつおつ
- 11二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:06:51
クラシックに秋三冠? 知ってる知ってるテイエムオペラオーでしょ(アプリ脳)
- 12二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:07:02
たておつ
- 13二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:08:07
前スレ200
僕はフリフリもこもこ魔法少女装備にエプロンがあるので実質フレンチメイドだから改めてメイド服は遠慮させてもらいますね…… - 14二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:14:25
- 15二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:17:01
クインちゃん的にはこういうメイド服なら大歓迎
名古屋大須商店街に6月21日OPEN予定のメイドカフェ『MAID√MADE』( <a href="https://twitter.com/maidmade06" target="_blank">@maidmade06</a> )の制服デザインを担当させていただきました🎀
店舗デザインは雷雷公社( <a href="https://twitter.com/kato_R2PC" target="_blank">@kato_R2PC</a> )です!
よろしくお願いします⚡️ — LAM (ramdayo1122) 2021年06月12日三面図こんなかんじです — LAM (ramdayo1122) 2021年06月12日
- 16二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:21:51
- 17二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:23:34
- 18二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 21:43:21
実質フレンチメイドなら今更遠慮する必要などないのでは?(凡推理)
- 19ラプ中22/10/30(日) 21:47:25
【急募】
フレンチメイドラプラス書いてくださる方 - 20メジロエスキーの人22/10/30(日) 22:05:55
クラシック系メイド服ならまあ
- 21クアドラプルグロウ22/10/30(日) 22:13:10
寝てる間に新スレ立っとる!
前スレのアイちゃんの感想へ
同室認定してくれてありがとう!
エリ女は…うん! - 22二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:14:15
- 23クアドラプルグロウ22/10/30(日) 22:16:42
ふふふ…某ワクワクさんのせいで寝込んでたのです…
- 24二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:26:50
謂れのない罵倒が英国競馬統括機構を襲う───
- 25二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:41:37
ブリテン人全部そんな感じだから(語弊)
- 26二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 02:16:09
- 27メジロエスキーの人22/10/31(月) 06:50:55
もうこれ漫才なんよ
- 28クアドラプルグロウ22/10/31(月) 08:10:18
うへへへへへ朝からかんたんアラシュを出力地獄してました
受け取れ!これがアラシュパーパス(かんたんのすがた)だ!!!
ファイルなう - アップロードされたファイルかんたんアラシュ 制服.zip (822 KB)d.kuku.lu - 29クアドラプルグロウ22/10/31(月) 08:54:12
- 30二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 09:14:05
不法侵入というよりロープウェイ自体が違法定期
- 31クアドラプルグロウ22/10/31(月) 09:15:20
わたくし悪くないかな!なんか朝目が覚めたら通ってただけかな!!!
…ロープウェイのこっち側の同室って誰なんだろう - 32アラシュパーパス22/10/31(月) 09:19:18
ありがとうございますうううううう!!!!!
- 33二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 09:24:20
- 34ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 09:46:38
誰もいない時間ですね、ヨシっ!
SSを投稿させて頂きます - 35ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 09:47:29
【揺らぎ】
「スカウト? んー、へぇ」
ぴこぴこ。にこにこ。
耳を揺らし、人好きするような笑顔に反して、品定めするように──いや、間違いなく品定めをしている。月光で照らされた夜の海を連想させる瞳が、今はただ私だけを映していた。
鼓動が高まる。期待に胸が膨らむ。私はじっと、彼女の返答を待つ。断られることなど頭にはなく、かといって断られなかったとして、彼女を育成するビジョンもなく。ただ、気持ちばかり先行した私は彼女を待つだけ。
少しして、品定めを終えたらしい。芦毛のウマ娘は私の傍から離れて、尻尾を一振りしてから口を開いた。
「ごめん無理」
……え?
「……どうして?」
告げられた言葉は端的な拒絶だった。
ありきたりな表現だけど、天国から地獄に一気に突き落とされてような気分。私の理性がそりゃそうだって呟くけど、理由なんてわかりきってるって言ってくるけど、思わず聞き返してしまった。
「どうしてって……んー、まぁ、理由は色々あるよ」
苦笑する芦毛のウマ娘は後ろ手を組み、私に背を向けてターフの方へゆっくりと歩き出した。些細な動作だけど、どうしてか目が吸い寄せされる。私はもう、色々ダメなのかもしれない。 - 36ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 09:48:06
「まずさ。私、貴方が泣いてたから声掛けたワケ。ひとりでぼーとしたまま泣いちゃっててなんか心配だったから。そしたら泣きながらスカウトされるとか……ちょっと意味不明すぎて怖い」
流れるような罵倒。けれど、常識的な正論だ。ぐうの音も出ない。正直、同じ立場になったら絶対私も同じことを考えるし、そんなヤツにホイホイついていったりしない。
「でもね、一番はそれじゃないんだ」
肩越しに振り向いた芦毛のウマ娘の言葉と同時。確かに、空気が変わった。涼しい秋の夜の空気感じゃ絶対ない。気のせいなんかでもない。スカウトを断られたショックでも、罵倒されたことのショックでもなく、私は今、恐怖にも似た感覚に肩を抱いて震えている。
ひたすらに澄み切っているのに、どこまで狂っている。ウマ娘らしく神々しいのに、ウマ娘らしからぬ禍々しさ。底冷えするような視線が、私を貫いた。 - 37ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 09:48:39
「……走り見てないのにスカウトするなよ。芦毛無礼てるの? 足元みやがって。引き回すよ、お前」
地獄から響いているような恐ろしさを孕んだ、天国から届いているかのような玲瓏な声。矛盾が同居した狂気。耳に入れてしまって、おかしくなってしまいそうになる。
芦毛は走らない。確かにそれは一般常識だ。だから、芦毛のウマ娘はチームやトレーナーに恵まれない。トレーナーの中にはその状況につけ込んで、声を掛けられることの少ない芦毛のウマ娘を、とりあえず誰かを担当したという実績欲しさにスカウトするような者もいることを知っている。けれど、私は彼女をスカウトしたとき、決してそんなつもりじゃなかった。走れなくてもいいから一緒にトゥインクルシリーズを駆け抜けたい。なんて、言い訳さえ言えなくて。情けなく尻もちをついてしまい、冷や汗が止まらない。
──後になって、あんな酷い言い訳を口にしなくて本当によかったと、あの頃の私はどうしようもないヤツだったと思うことになるが、それは別の話。 - 38ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 09:49:05
「……はぁ。やる気なくなっちゃった。もういい。じゃあね、泣き虫トレーナー」
貴方と私の道は交わらない。これは〝天命〟だから。そう言い残して、彼女は夜のターフを去っていく。
私はひとり、尻もちをついたまま取り残された。
──そして、次の朝。私はサブトレーナーを辞めた。 - 39ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 09:49:30
終わりです、お目汚し失礼致しました
- 40ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 09:50:17
- 41二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 10:46:13
当時はその時代だったかー
そりゃ怒るわ というか芦毛云々抜きにしても走りも見ずにスカウトかよってのはあるよね - 42ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 12:48:29
ミフネ視点だと
なんかこっち見てハァハァしてる
挙動がキモい
走りも見てないのにスカウトする
情緒不安定で意味不明、ミフネとしては当然トゥインクル・シリーズで活躍したい気持ちがあるので、そんなヤツはトレーナーとして信用できない
と、思いつつも万が一もあるのでじっくり観察
天命が交わらない
あっ、これ絶対ナシだわ
総括→キモ……ないわ……なんなのコイツ、ちょっとムカついたし脅しとこ
こうですね - 43ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 12:49:36
当時はまだその時代でした……
- 44二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 13:08:52
- 45ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 13:25:04
ツキノミフネはなぜトレーナーを殺さなかったのか
一言でいうなら時代がそれを許さなかった - 46二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 13:28:05
無礼討ちが許されるのは江戸時代までだぞ
- 47ダンスローバストの中の人22/10/31(月) 15:28:33
私情によりSSをあまり書けなかったダンスローバストの中の人です
SS投下予告を
キャラスト5話と皐月賞〜ダービー前編でございます - 48ダンスローバストの中の人22/10/31(月) 15:32:36
【ストーリー5話 幽されるヘンゼル】
「さ、トレーナーさん。ゆっくり休んでください♪」
……早いうちに休息をとっていればこのようなことにならなかっただろうか。ローバストの優しい笑みが今はとても恐ろしく見える。トレーナー室に隠していたエナジードリンクの山を見られたか、それとも寝不足が顔に現れていたか。日々の疲れを取る為に皐月賞が迫っているのにも関わらず、トレーナー室で『休息』と称して今……膝枕をされている。
「トレーナーさん、貴女に何かがあったら大変です。レースにも関わりますし……。」
「ダンスパートナーがいなくなってしまうとなると私、どうしたらいいか分からなくなってしまいます。」
「嫌なことを全部、全部忘れてください。この時間だけは、今だけは……。」
そういうとローバストは両頬に手を添えて優しく摩ってくる。
「……寝るならあっちの仮眠用ベットでするからさ。」
「駄目です。」
有無を言わさない強い口調にたじろいてしまう。上から顔を覗き込まれてじっと見つめられる。
「日々のデスクワークできっと肩も凝っているでしょう、少々固い枕より柔らかい膝の方が肩にも影響を与えないと思いますよ?」
「あ、良い睡眠への導入として朗読をしましょうか?私、結構得意で。」
「いつもレース前に持ってきている童話?」
「…それも良いですね。よくトレセン学園の近くの児童館や保育園でお話会を開いているんです。今度、それを朗読する予定ですから練習としてでも、素敵な夢への導入としてでも聞いてくれますか?」
「お言葉に甘えて。」
「ふふっ、ありがとうございます。では……」
「『昔々、あるところに一人のウマ娘がいました。そのウマ娘は幼くして母を亡くし、継母とその連れ子の姉のウマ娘二人、父親と暮らしておりました。
元から、ウマ娘には冷たく当たっていた継母たちでしたが、不幸な病気で父親が亡くなると、その冷たさは一層激しくなりました。そんなウマ娘に継母たちは『サンドリヨン』と名付けました。』」 - 49ダンスローバストの中の人22/10/31(月) 15:33:15
……まずい。意識を集中させていなければすぐに眠ってしまいそうだ。ローバストの凛とした声に耳を傾ける度に心地よい感覚に身を任せてしまいそうになる。時折頭を撫でる手つきも優しく、思わず目を閉じてしまった。
「『ある日、城の使いが家を訪ねて来ました。城の使いは、ガラスの蹄鉄を手がかりに、王子様が惚れた女性を探していました。ウマ娘が落としたガラスの蹄鉄は、姉2人も含めて、そのウマ娘以外の靴のサイズには合いませんでした。そして、とうとうウマ娘の番です。恐る恐るあの夜に履いた靴に打ち付けてみると、ぴったりサイズが合いました。』」
ローバストの声は落ち着いた、透き通ったような、それでいてどこか温かみのある声で、童話の内容も相まって眠りに誘ってくれるようだった。
「……ふわぁあ。」
「眠くなって来ました?」
ローバストの問いかけに首を縦に振ると、髪をそっと撫でられた。
「寝てもいいんですよ。ここでお話は終わりにしますか?」
「ううん、続けて。……でも終わる頃にはとっくに夢の中だろうけれど。」
「いいですよ。起きる時は私が目覚めのキス、してあげますから。その時を夢の中で待っててくださいね。」
ローバストは口に手を当ててクスリと笑い、顔を近づけてくる。三つ編みを結んでいる黒いレース生地のリボンが垂れてきて、彼女と2人の空間になってしまったようだ。
「運命の人がローバストじゃなくても、きっと私はローバストのキスで目覚めるよ。」
「それはそれは光栄です。あ、けれどももう一つ___。」
「目覚めなかったら私が夢の中にでも行って捕まえて見せます。」
「捕まえたら……ヘンゼルとグレーテルのように、大切に大切に、逃げれないようにしてあげますよ。」
「ウマ娘が人間に敵うはずないからすぐ捕まっちゃうね。そのときは存分にローバストのお菓子の家に閉じ込めて?」
「……えぇ、そうして差し上げます。」
ゆっくりと目を閉じると、ローバストの優しい声が聞こえてきた。もうすぐ童話の世界に入れるのだろうか、甘い香りに包まれながら、眠りに入った。 - 50ダンスローバストの中の人22/10/31(月) 15:34:36
【皐月賞に向けて】
『皐月賞』の幕開けを待っているかと思い、ローバストの控室に訪れてみると____。
「『おお、貴方こそ私のお姫様だ。結婚してください!』ウマ娘は照れながら言いました。『ええ、喜んで。』ウマ娘は王子様と結婚してお妃様となり、幸せに暮らしたのでした。めでたし、めでたし…。」
「その童話、大好きなんだね。」
「あら、トレーナーさん。いらしていたんですね。……そうです、小さい頃から聞いていたお話ですから馴染み深くて。」
「他にも好きな童話はたくさんありますが、このお話が絵もストーリーも登場人物も。一番大好きです。それに、トゥインクルシリーズにはこのような展開のレース人生を送ったウマ娘も沢山いますから。」
クラシック級でパッとしない成績のウマ娘がシニア級で返り咲くことは多い、それに一時期不調だったのを抜け出して復活するウマ娘……圧倒的な成績を残したウマ娘よりも強さを示しにくいが、何よりもドラマチックなレース人生がファンの心に残り続ける。そんなウマ娘になれたら良いと言い、ローバストとの話に花を咲かせていると_____。
「失礼しまーす!」
「……え、サウダージさん?!」
控室のドアが開き、桜花賞ウマ娘のサウダージが訪ねてきた。ローバストはいきなりの出来事に少し戸惑っている様子だった。 - 51ダンスローバストの中の人22/10/31(月) 15:35:29
「えっと、ダンスローバストさん……だっけ?わたしの名前知ってるんだね、嬉しいよ!そういえばクラシック路線の同期の子とは挨拶もしていなかったから、応援も兼ねて挨拶しようと思って。」
「確か、ローバストさんって元はティアラ路線だったよね?でもそこからクラシックに路線変更して、皐月賞出るって聞いたから……。」
「クラシック路線のウマ娘にティアラ路線の強さ、見せつけちゃって!!」
サウダージはローバストの手を握ってまっすぐに見つめる。その気迫は、そばから見ている自分にも十分伝わった。それを受け取ったのかローバストは自信に満ちた笑みを浮かべた。
「…ええ、分かりました。クラシックの幕開けにふさわしい走りをして見せます。」
「うん。……あ、もう席取らないと見れなくなっちゃう〜!あたし、もう行くね!!皐月賞頑張って〜!!」
そう言うとサウダージは控室から勢いよく飛び出していった。
「トレーナーさん、ついに……始まるんですね。クラシックの章が。」
「どんなストーリーになっても、私はローバストのダンスパートナーでいるよ。」
「ふふっ、ありがとうございます。行ってきますね、皐月の舞台へと_____!!」 - 52ダンスローバストの中の人22/10/31(月) 15:36:56
【皐月賞のあとに・風薫る新緑の丘で】
『皐月賞』を見事に走り切ったダンスローバストを出迎えると_____。
「さすが、クラシックレース……と言うべきでしょうか。共に走った皆様は素晴らしき走りをしていました。」
「だからこそ______頂に立てたことに心躍るもの。」
走り終えた後だというのに、ローバストは、より強く闘志を燃やしていた……!
「次の『ダービー』では今日以上の走りをしないとね。」
「その通りです。やはり、ダービーで1着になるのはとても難しいことかもしれません。」
「でも、『素敵な物語』の為に勝ちたいよね?」
「…!」
「それはもう……走る前からずっと思っていました。」
「この中の誰よりも輝いて。このレースの主役になりたい……と思いました。」
「私、もっと強くなります。強く、強く……。」 - 53ダンスローバストの中の人22/10/31(月) 15:37:29
「必ず私がローバストを世代の頂点にしてみせるよ。」
「あ、言いましたね?」
「でも、それがいいかもしれませんね。」
『_____ウマ娘に生まれたからには、目指す称号は一つです』
『_____ダービーには価値があります。ダービーを勝ちたいだなんて簡単に言えません』
『______自分のこれまで積み重ねてきた勝利全てを引き換えにしてもいいほどダービーウマ娘の称号が欲しくて欲しくてたまらなかったです』
「_____私だってウマ娘なんですもの。」
「それじゃあ、明日はお休みで明後日からトレーニング再開……ですかね?」
「送ってくださりありがとうございます。おやすみなさい、トレーナーさん。良い夢を見てください。」
「ローバストもねー!」
「ふふっ、トレーナーさん。世代の頂点にして見せるだなんて、どれだけ期待してくれているのでしょうか。」
_____歩みを進めていく内に、いつかそれは『素敵な物語』になるから。
「……貴方が私の物語を支えてくれたように。」
「……私も貴方に相応しいほどの、物語にして見せますから。」
「日本ダービーを……一緒に勝ちましょう。トレーナーさん。」 - 54ダンスローバストの中の人22/10/31(月) 15:38:40
【日本ダービーに向けて】
『日本ダービー』……当日。
「行きましょう、トレーナーさん。憧れの地へ。」
「どんな光景が待っているのでしょうか。楽しみですね。」
パドックに出るなり、どよめくギャラリー。その声は称賛、侮蔑、期待……多くの感情が入り混じっていた。
「この感じ……まさに世代の頂点の決定戦『日本ダービー』。」
「多くの歓声が、栄光が。私たちの物語を彩ってくれるんですね。」
「やあ、無敗の皐月賞ウマ娘さん。今日はよろしくね。」
「……え、貴方は?」
「ああ知らなかったか。共同通信杯、青葉賞……皐月賞には出走しないで青葉賞からダービーへと直行したマグナレクスだよ。」
「っと、挨拶はこのくらいにしておいて。俺は容赦するつもりは無い、当然、頂点も栄光も簡単に貰われるわけにもいかない。」
「さっきっから聞いてたけど物語を彩るだとか素敵な物語にするだとか。そういうのは俺らを倒してからにしてくれよ。」
「クラシック路線で注目されるすべきなのは、お前だけじゃないからな。」
「お前だけに夢を語らせるわけにはいかねぇ_____」
「世代の頂点は、お前じゃなくて俺が貰ってやるよ!」
思いがけない挑発を受けたローバスト、大丈夫かと人混みを掻き分けて最前列で様子を伺う。感情が昂ることなく、冷静に。だが内に秘めた闘志を燃やすように微笑んでいた。
「……そうですか。さすがはダービー、名役者が勢揃いですね。だからこそ頂点を取りたいと燃えるもの……。
「受けて立ちます。私も、頂点は譲りません_____!」 - 55ダンスローバストの中の人22/10/31(月) 15:40:56
- 56アラシュパーパス22/10/31(月) 16:07:58
- 57フラピンクのひと22/10/31(月) 17:03:38
- 58二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 17:29:21
僕は魔法少女になったので大丈夫ですね
魔法少女はハロウィンなのか
魔女もありなら大丈夫だろ
そうだな - 59カンパナーレボバー22/10/31(月) 17:33:17
魔法少女なら年始辺りにやったからまあええか
- 60Mahmoud22/10/31(月) 17:37:16
芦毛ってのは走らへんらしいし気をつけなアカンね
なあネイティヴダンサー君よ - 61二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 17:41:23
- 62二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 18:06:20
昨今の魔法少女はエプロンドレス着てること多いから実質メイド
と言うか僕のデザインはややメイド入ってるからメイド魔法少女で問題ありません
というわけでwiki更新な
バラカドボナール - uma-musumeになりたい部 @ ウィキ▽タグ一覧 バラカドボナール バラカドボナール Baraka de Bonheur 「それではぼちぼち気楽に行きましょう。……今度は絶対に負けませんよ」 CV: - NoImage 制服 勝負服/原案...w.atwiki.jp - 63キタサンアイドルの人22/10/31(月) 19:35:19
- 64ライジョウドウの中の人22/10/31(月) 19:58:54
- 65フラの人22/10/31(月) 20:07:05
あっ可愛い……可愛い……そして思ったより大胆……普段の珍獣とは逆に女性的で慌てふためく同室の姿が見える……
- 66フラワリングタイムの人(偽)22/10/31(月) 21:40:11
- 67二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 21:43:10
ビキニ部分はいらねぇだろいい加減にしろ!
- 68ツキノミフネの背後霊22/10/31(月) 21:54:47
神が……神作品が渋滞している……これがハロウィン、これが……
幸せすぎる……背後霊死ぬのかな……あっ、死んでましたね……
いやもうほんとね、神作品渋滞の多幸感って本当ね……あらゆる語彙力が死ぬよね……最高じゃんか……ひとつひとつにコメントしたいけどね……たぶんそれやると成仏しちゃいますからね……とにかくね……皆さんの作品に対する全てのキモチを一言に纏めますね……
大 好 き ♡ - 69二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 21:55:23
規約違反はマズイですよ!
- 70フラワリングナントカのひと22/10/31(月) 22:03:59
誰だお前は!
- 71二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:05:00
こんなのやるやつと言えばうちのチームには…ねぇ?
- 72二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:06:01
容疑者が多過ぎますねぇ
- 73二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:07:41
そうだなぁ、多分走れメロスのクソ改変Verを投げるようなやつな気もするんだよなぁ
- 74二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:15:49
いったい誰がなんのためにこんなクリーチャーを…
- 75二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:17:47
クリーチャーは過去に作ったやつがいて、今回のはそれを活用したやつが別にいるのでは?
つまり犯人はヤス - 76二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:26:48
よく見ると手足とうっすら見える胴体はいらすとやだしな
- 77二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:43:28
- 78二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:44:05
- 79二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:12:25
でもよお……公式もマミークリークとかいう狂気の沙汰みてえな衣装出してるじゃねえか?
- 80二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:16:11
まずい…このままだとフラりんのハロウィン衣装があんなおぞましいもので確定してしまう…
- 81二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:16:48
- 82二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:17:41
違うが?
>貴様ーっ ビキニはまともなハロウィン衣装じゃないと申すかーっ
- 83二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:19:36
落ち着いて聞いて下さいね?朝晩ってもう寒いじゃあないですか。ビキニ着るのはグラドルが仕事でやる位なんですよ
- 84フラワリングナントカのひと22/10/31(月) 23:29:19
こ、このままでは我がバケモノカボチャになってしまう……なんとかしなければ……
- 85二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:34:23
もしかして:手遅れ
- 86メジロエスキーの人22/11/01(火) 06:52:44
なんか上の方でやべー絵がある気がするけど、言及せずにスルーして今日の分のSS投げますね
- 87メジロエスキーの人22/11/01(火) 06:53:39
─────
迎えたオールカマー当日。週末に降った雨の影響は天気が回復してもバ場にしっかりと影響を残しており、当日は重バ場スタートとなった。ここから太陽がコース全体に降り注げば良まで回復するかもしれないが、上を見上げると未だに厚い雲が空を覆っていた。これなら回復したところで稍重が精一杯だろう。
「先週の特別登録から変わらず9人でのレース。絶対に逃げたいという子もいない……スローペースになるぞ」
「大丈夫。ペース読みは得意なんだから」
これまでに鍛え上げられてきたペース感覚。もしかしたら親──この場合はエスキーの方──から受け継いだ天性のものかもしれないけど、その抜群の体内時計とトレーナーとの事前の展開予想が相まって、仕掛けどころを大きく間違えたことがない。これまで負けたレースは純粋な力不足な所が大きい。ただそれも充実期を迎えた今なら並の子たちなら軽く一蹴できるような力を身につけることができている。
「こんなことあまり言いたくないけどメンバーは小粒……負けるなよ」
「大丈夫、勝ってくるよ」
圧倒的な1番人気でも動じない胆力、そして黙っていても醸し出される強者の風格、今の私に敵うのはそれこそ彼女しかいない。
(見ててよ、エスキー。私がどれだけ成長してるのか)
─────
『──さあ今バ場に登場いたしましたのは断然の1番人気、6枠6番メジロエスキモーです! 場内からは大きな歓声が上がっています!』
直線奥の引き込み線、ゲートのすぐ後ろでレース前最後の最後のストレッチを行う。観客席はすっかり多くのお客さんで一杯になっていた。
(ペースはおそらく遅め……だからいつもより少し前の位置につけたい。少人数だからごちゃつかないだろうしバタバタすることはないかな?)
頭の中でレースの展開のシミュレーションを何度か行う。スッとゲートを出られた場合や少し出遅れてしまった場合、またペースが速くなるパターンも想定するけど……
(うん、どれだけ考えても負ける気がしない。いける……!)
スターターが台へと上がり赤い旗を振る。枠入りが進んでいくのと並行して場内にファンファーレが鳴り響く。
『さあ枠入りは順調に進みまして、最後は大外8枠9番カスティーリャサンがゲートに収まり態勢完了……スタートしました!』 - 88メジロエスキーの人22/11/01(火) 06:54:40
1人が少し出遅れたもののあとは横一線のスタート。やはり前を主張するウマ娘は少なく、やや押し出される形で5枠5番の子が先頭に立ってレースを引っ張る。そんな中私は前から3番目の位置を確保し、3バ身ほど前に先頭の子を視界に収めながら前へと駆けていく。
『──さあ1コーナーから2コーナーへ坂を上っていきます9人のウマ娘たち。先頭は変わらずオンリーキャプテン、2番手に1バ身半から2バ身ほどのリードをつけて逃げています。そして2番手、3番手の所に断然人気の6番メジロエスキモーがつけています』
坂を上っているとしてもやはりスローペースで流れている。これは稍重だったとしても最初の1000mは……
『──2コーナーを過ぎて向こう正面に入ります。ここで最初の1000mは……1分4秒3! 少し重たいバ場のことを考えてもゆっくりな流れでレースが進みますが……おっと!? ここで中団で待機していたプチブーケが上がっていって先頭に並びかけます!』
(みんなもやっぱり遅いって思ってたのね。これから下り坂に入るからペースが一気に上がりそう……!)
4番手に後退した私だけど特に掛かることなく3コーナー手前、残り1000mの標識から少しずつ前に迫っていく。そのまま勢いを落とすことなく3コーナー、4コーナーへと流れ込むと、直線を向いた所でもう先頭に立っていた。
『──各ウマ娘たちが短い直線に入ってまいりますが……もうここでメジロエスキモーが先頭に立っている! 後続に1バ身、2バ身、3バ身……いやまだ伸びるのか!?』
(後ろからは誰も来てない。本当だったらちょっと最後まで流しちゃってもいいんだけど、あの子が見てるんだから手抜きはしたくない)
『プチブーケも伸びる! さらに外からエタンセルマンも追い込んでくるがむしろ差は広がるばかり! メジロエスキモー、余力を残してゴールイン!』
結果的には6バ身差の圧勝。しかもみんなが必死に追い込んでくる中次走以降への余力を残しつつの1着ゴールイン。前哨戦を最高の形で終えることができた。ただ……ただ……
(……なーんか物足りないんだよね。けどこれ言ったら絶対怒られるから言えない……)
- 89メジロエスキーの人22/11/01(火) 06:55:42
強者ゆえの退屈。やはり最後まで競り合うことができるライバルがいないと張り合いがない。それこそサートゥルヌスさんだったりエスキーだったり。G1の舞台なら猛者たちが集うからワクワクできるんだけど……
(まあ次エスキーと走れるからいっか。とりあえず今日はトレーナーの家で反省会して、明日はママのとこ行って話聞いてもらって……エスキーは……まだ天皇賞は先だからジャブのつもりで声かけてみよっかな)
ママはエスキーと同じ部屋だけど、口が堅いから弱音を吐いても絶対漏らしたりなんかしない。とりあえずエスキーが出かけるのを見計らって部屋に行けば……
(いやちょっと待ってね……そもそも2人で話すのに部屋に行かなくても2人きりでお出かけすれば解決じゃない?)
根本的な所が頭からすっかり抜け落ちてしまっていた。同じ寮で過ごしているからっていって寮の中で話す必要なんて全くなかったということを、外に出てしまえば何の問題もないということを。
そうと決まれば話が早い。私は控え室に戻るやいなや、ママへ来週の週末に2人で出かけないかとメッセージを送り、その返事を待つ。わりとすぐに既読の表示が現れ返事が返ってくる。
「『来週は駄目だけど、再来週なら大丈夫だと思う。どこ行きたい?』……やった!」
あっさりお出かけ、いやデートが決まって少し小躍り。たぶんレースに勝ったことより喜んじゃってる気がする。そのことを一緒にいたトレーナーに見抜かれ、呆れ気味に声をかけられる。
「……レース後ってこと忘れてないよな?」
「……だ、大丈夫だって! これからウイニングライブだよね、頑張らないと!」
若干図星を突かれて心臓が跳ね上がる。それをトレーナーに悟られないように振る舞いながら、ママへの返事を考える。
(どこがいいかな……どこなら楽しいかな……)
──意識はとっくに2週間後へ飛んでいってしまっていた。
─────
(髪跳ねてないよね……)
携帯の画面を手鏡代わりに髪がぴょこんと飛び出ていないかの最終チェックを行う。見た感じ大丈夫そうかな。
- 90メジロエスキーの人22/11/01(火) 06:56:46
そうこうしていると、ママが私へ声をかけ、軽く小走りにこっちに向かってきた。
「遅くなってごめんね。結構待った?」
「全然! ママが来るちょっと前に着いたばっかりだよ」
「そっか、それならよかった……って外だから『ママ』は禁止だからね」
「はーい、『ドーベルさん』」
私たちが全く有名でなければそう呼んだところで仲がいい親子と周囲も見てくれるだろうけど、あいにくと2人ともG1を複数勝っているおかげでわりと有名人になってしまっている。だから不用意に『ママ』なんて呼んでしまったら、「あのG1ウマ娘のエスキモーって子、近い歳のドーベルって子を『ママ』って呼んでたぞ」みたいな噂が広まってしまう。それは避けなくちゃいけない。
もちろん呼び方以外はそのまま。いつもより近づいて手も繋いじゃったりして……エスキーが見たら嫉妬しちゃうかな?
「それにしても今日の格好可愛いね。似合ってるよ」
「ありがと。せっかくのデートだもん、ちょっと頑張っちゃった」
今日の私は長袖のブラウスに長めのプリーツスカート、それにレザーのラウンドトゥシューズを履いて、小さめのショルダーバッグを肩から掛けるスタイル。髪も前に習ったのを思い出して少しウェーブを作ってみた。
「でもマ……ドーベルさんの方が大人っぽくて素敵。私子どもっぽく見えるかも……」
「そんなことない。エスキモーも十分大人っぽく着こなせてるよ」
「えへへ……」
ママに頭を軽く撫でられ顔がパッと明るくなる。そんなママはジャケットに腕を通さずに肩へ軽く羽織り、下は長めのスカートだけど、くるぶし辺りまで丈がある私のとは違って、ショートブーツが隠れない膝と足首の中間ぐらいまで覆われた長さのものを履いていた。ハンドバッグもおしゃれだし、やっぱり大人の女性って雰囲気がばっちり出ていた。
「というかここで待ち合わせでよかったの? 学園から近いんだから寮の前でもよかったんじゃ……」
そう、ここは東京レース場、学園からはすぐそこの場所に位置している。確かにママの言うとおり十分歩いてこられる距離だから寮の前、それこそどっちかの部屋の前で待ち合わせでもよかったんだけど……
- 91メジロエスキーの人22/11/01(火) 06:57:44
「こっちの方がデートっぽいかなって思ったの。せっかく2人きりでお出かけできるんだもん、ちょっとぐらいは雰囲気作ってもいいかなって」
「そっか。エスキモーがそれで満足っていうならアタシもそれでいいよ……ねぇ、トレーナーともいつもこんな風にデートしてるの?」
耳元で他の人に聞かれないようこっそりと耳打ちするママ。そういえば最近こんな待ち合わせするデートしたことないかも……
「付き合うまではどこかで待ち合わせしてお出かけするのが普通だったんだけど、最近はトレーナーの家から2人で行くことが多いかも……あっ、もしかしてこれってマンネリ……!?」
もちろんお出かけの時は手は繋ぐし食事の時はあーんってしてもらえるし、ハグとかキスとかもしてくれる。でも最近は付き合う前みたいなドキドキのデートをしてない……!
「あはは……マンネリってまだ付き合ってそんなに経ってないでしょ?」
「いやーそれが実は……」
デビュー前からだからかれこれ2年以上は付き合っていることを伝えると、ママは足を止めてまさにガーンっといった表情で目を見開いていた。
「そんなに……アタシがちょっとモヤモヤしてる間に……」
「モヤモヤ? あー、そういうことか。トレーナーのことが好きなのにああなっちゃったから気持ち伝えられず。そうこうしてるうちに私に先越され……あれ、もしかして怒った?」
無言。ということはちょっとからかいが過ぎたかもしれない。素直に謝ることにする。
「ごめんね、ちょっと言いすぎちゃった」
「ううん、いいの。あんなこと気にせず言っちゃえばよかったのにってちょっと反省しただけ」
「ありがと。ねえ、ドーベルさん。パ……トレーナーのことまた教えてほしいな……どんなところ好きになったとか」
親の恋バナを聞くなんてそうそうできることじゃない。元の世界でもパパがママのトレーナーをしていた頃の話をしようとすると、ママが恥ずかしがって止めて、どんなだったのか深くは教えてくれなかったから。
「……また今度ね。もうレースの時間迫ってきてるから早く行こっ」
「うん、話してくれるの期待してる!」
ようやく入場口へ、スタンドへ向けて2人歩みを進める。最初のレースはまもなく始まるところだ。
- 92メジロエスキーの人22/11/01(火) 06:58:50
─────
「そういえばエスキモー、なんでレース場にしたの?」
2人分の席を確保し一息ついているとママから今日のお出かけスポットについて尋ねられる。デートって言ってるのに確かにレース場、しかも学園からすぐそこの場所っていうのはどうなのと言いたい気持ちは分かる。
「最初はいろいろ考えたんだよ? それこそショッピングしてお茶したりとか、映画観に行って2人カフェで感想言い合ったりとか。遊園地で2人で遊ぶのもいいかなーって思ってたの」
「でも結局レース場に……?」
ママとの初デート。それはもういろいろ悩んだ。新宿とか渋谷に出てウインドウショッピングしたり、カフェでタピってみたり。カフェと一体になったブックストアで2人静かに本を読みながらお茶するっていうのも考えた。だけど、私たちウマ娘として何が一番大切なのかなって思ったらレースなんじゃないかって思えてきたんだよね。
「もちろんマ……ドーベルさんがよかったらこれからいろんな所デートしたい。さっき言ったみたいにデパートとかモールに行ってショッピングもしたい。だけどまずはレースが一番大事だって、そこからなんじゃないかって思ったの」
「そっ、か……分かった。今日はいっぱいレースのこと話そ? アタシのレースのことも教えてあげる」
「やった! ありがとママ! 大好き!」
そういって横に座っていたママへしがみつく。ママは「呼び方が……」って私を注意しようとしたけど、1つため息をつくと、
「全く、しょうがないんだから……」
そう言って私の頭を数度撫でた。
─────
「──それでね、アタシがテレビ見て悔しがってたらさ、あの人も泣きそう、というか泣いててさ、アタシのこと誰になんと言われても一番強いウマ娘だって言ってくれて……あとあと……」
「えーっと……ドーベルさん? 酔ってないよね?」
おそるおそる自分のアイスティーにも口をつける。前にトレーナーの家で缶チューハイを少し飲んじゃった時みたいな感じはしない。私とママで同じ物を頼んだからママの方にだけアルコールが入ってるなんてことはないと思うけど……
- 93メジロエスキーの人22/11/01(火) 07:00:49
─────
時は前半のレースが終わってお昼どきに入った頃まで遡る。私がスタンド内のカフェで2人分の軽食とアイスティーを買って席に戻り、仲良く並んで食事をしていた時、そういえばとママが自身のトゥインクルシリーズの頃の話を始めた。
「元々、というか今でも少しだけどアタシって男の人苦手でしょ? そんな苦手意識が強く残ってた頃に出会ったのがトレーナー。初めて会ったのはまだあの人がサブトレーナーしてた頃だけど」
「サブトレーナー……そういえばトレーナーも試験合格してすぐの頃はベテランの人のサポートやりながらいろいろ覚えたって言ってたかも」
具体的に誰のみたいなのは聞いてないけど、前にどこかで聞いた記憶がある。「その頃の経験があるから君を上手く導いていけているんだと思う」なーんて言われたっけ。
「それでチーフトレーナー──元々のね──が高齢で倒れちゃってさ。その時担当してたのがアタシだけだったからト……あの人がアタシの指導を引き継ぐことになったの」
「そうだったんだ。てっきり最初からスカウトされてそれでって思ってた」
実際にトレーナーを受け持つことになった経緯は今まで聞いたことがなかった。そんなことまで子どもに話す必要がなかっただけかもしれないけど初耳。
「……女の人、それこそチーフトレーナーみたいな女の人だったら、人によるけどスカウト受けてたと思う。だけど男の人だよ? その時はまだ直接話すなんて上手くできなかったし」
「そっか。今はそうは見えないけど」
「そう見えてるならよかった。ただそれもトレーナーのおかげ。あの人が男の記者たちを上手く御してくれたり、トレーナーと話すことで少しずつ慣れたって部分はあると思う」
手に持ったアイスティーを一口含むと、静かに飲み込み喉を潤す。そう一息つくと話を続ける。
「……つっけんどんに接することも多かったし、迷惑かけちゃったこともいっぱいあったと思う。だけどそれでもあの人はいつもアタシの側にいてくれて、アタシのことを『強いウマ娘だ』なんてことあるごとに言ってくれて……ほんと……」
言葉を切り、ふっと微笑む。その顔を見て私はあることに気づく。
- 94メジロエスキーの人22/11/01(火) 07:02:05
「もしかしてトレーナー、パパのこと好きになったのって……」
「現役の頃からかな。自分で気持ちに気づいたのは終わりの方だけど、もしかしたらその前から……あっ、そういえばこんなことがあってさ──」
─────
そういえばそこからだった。怒涛の如く、そうまさにマシンガントークが始まったのは。練習の時の話とかレースの話とか、それこそ2人で出かけた時の話とか。最後のとか、「それってお出かけって名目のデートじゃない?」ってツッコミを入れそうになったけど、話を区切ろうにも全然間に入らせてくれなかった。
そして今に至るというわけ。
「あっ、そろそろメインレースの時間だよ? ちょっと前の方まで行かない?」
今日の目的は何なのか忘れかけていたところ、ターフビジョンの着順表示の部分が11Rという表記に替わったのを視界に捉えた。場内の熱気が少しずつ高まり、皆が今か今かとスタートの時を待ち構えている。
「──それで……あっ、そうだったそうだった。早く行かないとおしくら饅頭になっちゃうね」
2人して飲み干したアイスティーの紙コップを自らの席に置き、バッグを持ってコースの近くまで歩いていく。寄れる所まで近づいた場所で立ち止まると、ちょうど一番人気の子がゲート裏で待機している所がターフビジョンに映し出され、観客のボルテージが一段上がった。
「こうして純粋に応援するためにレースを見るって久しぶりかも……」
「どうしても自分のレースのこと考えちゃうからね。アタシも現役の時にブライトの応援まで京都に行って……あっ始まりそう」
スターターが旗を振りファンファーレが響き渡る。G1ほどではないけれどもファンのみんなからレースを駆けるウマ娘に対して盛大な拍手が送られた。
大外の子が枠に収まり、係員が走路から離れるとゲートが開きレースが始まる。
「このコースって最後の直線の坂のこと言われがちだけど、向こう正面もわりとアップダウンあるんだよね。単純なスピードコースじゃないというか」
「そうそう、まさに総合力を試されるコース。アタシもオークスの時しんどかったな。エスキモーはダービー以外でも何回か走ったことあるんだっけ?」
- 95メジロエスキーの人22/11/01(火) 07:03:12
そうママに言われ、今まで走ったレースをコース別に指折り数える。確か中山が一番走った気がする。皐月賞とかホープフルSとか、それこそこの前のオールカマーとか。この東京レース場も何度か走ったことがあるけど確か……
「ジュニア級の時に東スポ杯ジュニアSでしょ、クラシック級の時は共同通信杯とダービーで、シニア級は……あれ? 1回も走ってない?」
改めて自分自身のレースを振り返ると、今年はほとんど関西でしか走っていなかったことを思い出した。というか春は全部阪神と京都でしか走っていない。
「分かる分かる。なんかこのコースいっぱい走ってるなとか、ここ走るの久しぶりだなとか。アタシはコースの勉強も兼ねて選んだのかなって思ったけど違ったみたいだね」
「あはは……」
てっきり走り慣れていたコースだと思っていたらそうではなかったことに衝撃を覚える。ママにそう言われたことで気持ちを入れ替えて、目の前のレースでちゃんと勉強しようとコースに視線を向けるともう先頭のウマ娘がゴールする寸前だった。
「あっ……終わっちゃった……」
「最終レースは……ダートか……ごめんね、昼からずっとアタシ喋っててレース見れなくて」
確かにそれは間違いないけれど、そもそも私が最初から勉強するつもりで来ていればそんな事態にならなかった訳だから、それは違うよときっぱりと否定する。
「ううん、ドーベルさんが謝ることじゃない。それに聞いてて楽しかったし」
そう、区切る所がとは言いつつもママの話を聞いて一緒に盛り上がっていたことは事実だ。メイクデビューの話とか初めてのG1の話とかいろいろ裏側を聞くことができたのだから。
「1人で勝手に盛り上がってた訳じゃなくてよかった……どうする? このままウイニングライブまで残って見る?」
「うん、そうする。せっかく来たんだから最後まで楽しみたいし」
そうはっきり頷くと2人はそこから動かずに最後のレースを観戦し、ウイニングライブで全力でみんなを応援した。こうやって大声を出して盛り上がれたのは久しぶりだったから、2人ともライブ後はスッキリした顔を互いに見せ合うことができた。
- 96メジロエスキーの人22/11/01(火) 07:03:48
────
すっかり日が落ちた寮への帰り道。仲良く手を繋いで歩いていると、ママが何かを思い出したかのように左手の人差し指で顎を触り私に質問を投げかけた。
「そういえばお昼にアタシがいつあの人を……って話したでしょ? その時エスキモーはって聞くの忘れてたの思い出した」
「わ、私? えーっといつからだろ……?」
バレンタインでトレーナーの家に上がった時には既に自覚はあった。ただその気持ちがいつからだったのって聞かれると答えに戸惑ってしまう。
「えーっと……いつだったっけ」
歩きながらも頭の記憶を必死に辿る私にママは「今じゃなくてもいいから」と言ってくれる。
「思い出したらでいいからさ、また教えてよ」
「うん、絶対言うから待ってて」
そのあとは今日の楽しかった話とか明日の授業のこととかで2人笑いながら、仲良く寮の中まで談笑を続けた。
「じゃあアタシはこっちだから。また明日ね」
「うん、今日はありがと。楽しかった」
互いに軽く手を振ってそれぞれの部屋へと歩を進める。私は部屋に向かう途中にさっきママに言われた話を必死に思い出そうとしていた。
(えーっと確か、あの時だったかな。初めて異性として意識したのって……)
──それは入学後、担当してもらうことが決まってから半年ほど経った秋の頃だろうか。それまではただ優しいけど時には厳しくしてくれるいいトレーナーに見てもらえてるなぐらいしか思っていなかった。
- 97メジロエスキーの人22/11/01(火) 07:04:06
今日はここまで。また次回
- 98二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 13:05:01
- 99二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 14:47:37
アッポー君すごい
journals.sagepub.com - 100クアドラプルグロウ22/11/01(火) 17:47:13
新入部員のみなさんへ
wikiをつくってくれるととてもたすかります
なぜならアホのクア中はかんたん部員を量産したくても誰がどんな容姿か把握できないからです - 101二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 18:24:54
現時点でWikiページない人は無貌なので実質ニャルさま
- 102二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 19:21:41
チームカオスクトゥルフ部
- 103二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 19:29:34
チームカオスカオナシ部
- 104二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 20:27:16
カオナシシナリオでクトゥルフをやれ?(混乱)
- 105クアドラプルグロウ22/11/01(火) 21:22:59
かんたんが増えたよ!
内容物:ブルーラグーン、ダンスローバスト、ナックル
似てなかったらごめんなさい!
ファイルなう - アップロードされたファイルかんたん追加分.zip (2.44 MB)d.kuku.lu - 106クアドラプルグロウ22/11/01(火) 21:32:24
- 107二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 21:44:14
そこはチームカオスなのだからカオティックカーニバルをやるべきでは?(ぐるぐるおめめ)
- 108ナックル宅の壁22/11/01(火) 21:48:59
- 109クアドラプルグロウ22/11/01(火) 21:54:18
- 110メジロエスキーの人22/11/02(水) 06:55:58
やったね、クアちゃん! かんたんウマ娘が(ry
……今日もSSの続き投げていきますね - 111メジロエスキーの人22/11/02(水) 06:56:49
─────
あれは秋も深まったあるトレーニングの最中のこと。世間ではエスキーが「新星誕生か!?」なんて騒がれていた頃、本格化がまだ来ていない私は来年以降のデビューに向けてトレーナーからの指導を受けていた。
「よし! 息を整えたらラスト1本!」
「はぁはぁはぁ……うん!」
肩で大きく息をしながらなんとか呼吸を整える。この頃はまだまだ息の入りや体力もまだまだで本番のレースなんて夢のまた夢、いつになったらデビューできるのかなと思うほどだった。
「位置について、よーい、ドン!」
トレーナーのかけ声とストップウォッチを押す音に合わせて足を蹴り上げコースを一周駆けていく。1コーナーから2コーナー、向こう正面を過ぎて3コーナー、そして迎えた4コーナーで事件が起きた。
「おーい! ペースを落とすな! キツいけどここで踏ん張れ!」
トレーナーからの檄が遠くから飛んでくる。ただそれに反応する余裕はなく、ただ足を踏み込んで前に進むしか私にできることはなかった。そんな時、数メートル先に少し大きめの穴ぼこができているのを見つけた。
(このまま突っ込んだら危ない……少し内に進路を切り替え……)
「うわぁ!?」
穴ぼこを避けようと、コーナーを曲がりながら内に切り込もうとしたその時、これまでの練習で溜まっていた疲労のせいか右足が滑りかける。それをなんとか立て直そうと今度は左足でバランスを取ろうと試みるが足が上手く芝に着地せず足首を捻って転んでしまう。蓄積した疲労によってスピードが落ちていたことが幸いしたのか、派手に転んだにも関わらず、大怪我になることはなかった。
「いたた……」
他の子の練習の邪魔にならないよう足を引きずりながらもなんとかコースの外に出る。そこにトレーナーが血相を変えて駆けつけてきた。
「おい、大丈夫か!? 靴と靴下脱いでジャージの裾捲って見せてみろ……腫れているのは足首だけ……それ以外は……こけた時にできたかすり傷程度か。よし、とりあえず保健室に向かうから、ほら、背中に乗って」 - 112メジロエスキーの人22/11/02(水) 06:58:07
そうやってトレーナーは地面にしゃがみ込み私をおんぶする体勢をとる。流石に中等部にもなっておんぶなんてって思ってたけど足首は痛いしここは背に腹は代えられない。周りの目をチラチラと気にしながらそっとトレーナーの背中に掴まり、腕を首に回す。それを確認したトレーナーは私の足を前から抱え込むように持ち静かに立ち上がる。
「よいしょっと! 保健室まではちゃんと掴まっててくれよ」
「……分かってるって」
その時はまだ2人はただのトレーナーとその担当に過ぎなかったから、関係は良好といえどこうやって体を密着させるなんてことは今までになく、ただ恥ずかしさがこみ上げ、顔が徐々に赤くなっていくのを感じた。そんな照れている顔を隠したい私は、おでこをトレーナーの肩に乗せるような体勢で顔を意地でも見られないように悪あがきをする。ただトレーニングの真っ最中だったのが功を奏したのか、その日の私の星座占いが1位だったおかげなのか、知り合いや友人とは一切遭遇することなく保健室までたどり着くことができた。
(トレーナーの背中大きいな……)
落ちないよう全力でしがみつくその背中からほんのりとした温もりが体全体を包んでいく。果たしてそれは助けてくれたという安心感から来るものなのか、それともまた違う何かから来たものなのか、その時はまだまだ子どもだった私にはその理由がさっぱり分からなかった。
─────
「失礼します……ってあれ先生いないのか」
「ただいま所用のため席を外していますって机の上に置いてるプレートに書いてあるね」
部屋の隅に置いてあった丸椅子に私を座らせると、どこからかテーピングのテープやら氷と水を入れた氷嚢とかいろいろ出してきた。
「それどこから持ってきたの?」
「そこの棚と冷蔵庫からちょっとだけ。応急処置程度ならやっていいって言われているし、トレーナーとしても最低限の怪我の処置は叩き込まれているからそこは安心してほしい。さあもう1回足を見せてくれ」
そう言われ素直に裸足になった左足をトレーナーへ向けて差し出すと、トレーナーはテキパキとした動きであっという間に応急処置を終わらせてしまった。
- 113メジロエスキーの人22/11/02(水) 06:59:03
「これ保健室から用具持ってくるだけでよかったんじゃ……」
「オレができるのはあくまでも場当たり的な応急処置。スポーツ医学も表面的には触れているけど、やっぱりより専門的な知識を持った先生に見てもらうのが一番だろ?」
それは確かにそうだ。捻挫だと思っていたら実は骨折だったり、ただの腹痛かと思っていたら病気だったりすることもたまに聞く。頭を打ってできたたんこぶが治ったと思ったら実は内部に腫瘍ができていたなんて恐ろしい話も小耳に挟んだことがある。だからトレーナーが言っていることは全くもってそのとおりだ。
「分かった。とりあえず今はじっとしといた方がいいんだよね?」
「ああ。捻挫の処置の基本は安静、冷却、圧迫、挙上の4つだからな……そうだベッドの方に移動して椅子に足を乗っけたら良さそうだな。肩持つからゆっくりベッドの方に歩こうか」
そうやってなんとか保健室のベッドまでたどり着き、そのまま腰かける。トレーナーはすぐさまさっきまで私が座っていた丸椅子を持ってきて、私の左足を静かに乗せた。
「これでよし、と。今日はトレーニングはできないし、ゆっくり休もう」
「ごめんね、トレーナー。私、転んじゃって……せっかく組んでくれたトレーニング、最後までできなかった」
トレーナーはそんな顔を俯かせる私を謝罪とともに元気な声で励ましてくれた。
「いやいやオレがこれまで無理させたのも悪い、ごめん。これからメニュー考え直すよ。あと怪我が捻挫で済んでまだよかったよ。だからほら、そんなに落ち込まない! 顔上げる!」
「トレーナー……ありがと」
トレーナーに感謝の気持ちを伝えた時、なぜかさっきおんぶしてもらっていた時のことと今朝教室でクラスメイトと話していた時のことが同時にフラッシュバックした。
『そうだ! ねえエスキモーちゃん知ってる?』
『え、なになに、いきなり何の話?』
『この前読んだ雑誌に書いてあったんだけどね──』
「トレーナー」
「ん、どうした?」
- 114メジロエスキーの人22/11/02(水) 06:59:58
何を血迷ったのか、何に急かされたのか。
「トレーナーって身長、何センチ?」
口を衝いて出てきたのは今までの話と全く脈絡がない、傍から聞いたら意味不明な言葉。自分の口から漏れた言葉が信じられずつい手で口を覆う。
「オレの身長? 確か今年の健康診断で測った時は……」
「あっ、やっぱり言わなくて……」
なんとか紡ぎ出した小さな声はトレーナーに届くことはなく、
「173cmだったと思う」
なぜかこういうときには回転が速い私の頭。
(173cm−158cm……あっ……)
保健室に入るまでに元に戻ったと思った顔が再び燃えるような熱を発する。それを瞬時に感じ取った私は今度はトレーナーに見られないよう顔をぷいっと横に向ける。
「エスキモー? どうしたんだ?」
「な、なんでもないから……!」
この顔は見られちゃいけない。この人にまた心配をかけてしまうから。
ただそれ以上に気づかれてはいけない。かすかに速くなるこの鼓動を。原因不明の胸の高鳴りを。
『ハグとかキスがしやすい身長差って15cmなんだって!』
──あの人に恋をしたのはきっとこのとき。このことをはっきりと自覚したのはそれからまた数ヶ月経ったバレンタインの時だった。
- 115メジロエスキーの人22/11/02(水) 07:01:35
─────
バレンタイン1週間前、自室で私はベッドに転がりながら何をあげようか悩んでいた。
「クッキーは……味気ないし、ケーキは……ちょっと大きいかな……うーん……」
「エスキモーちゃん、何携帯見ながら唸ってるンスか?」
そんな姿を見かねたカジっちゃん先輩が声をかけてくる。私はこれ幸いと先輩に助言を求めた。
「ねえカジっちゃん先輩。トレーナーにバレンタインのチョコあげようと思ってるんですけど、何がいいと思います?」
「バレンタインッスか……気持ちが籠もってる物ならなんでも嬉しいと思うンスけど……」
それは間違いなくそう。今の私の料理の腕前だったら不味くはならない、というか何度かお菓子作ってるから自分で言うのもなんだけど味は保証できる。ただ重要なのはそこじゃないんだよね……
「私のトレーナーってさ、他にもチョコいっぱいもらってそうじゃないですか? そんな相手にありきたりなの渡しても喜ばれるのかなって思っちゃって……」
「まあかっこいいかかっこよくないかって聞かれたらかっこいい部類に入るとは思うンスけど、流石に考えすぎじゃないッスか? もっと気楽に考えた方が……相手トレーナーさんッスよ?」
そこが頭を悩ませている大きな要因だ。彼の立場を考えると、担当しているウマ娘からチョコをもらうのは純粋に嬉しいと思うけど、仮にそれがほ、ほ、本命だったらどう思うだろうか……年の離れた学生からそんなチョコをもらったりしたら困惑するだけな気がする。だけどここで気持ちを伝えなきゃ他に言える機会なんて、それこそ来年のバレンタインぐらいまでない。だったら今行くしか……!
「そうなんですけどね? 日頃の感謝というか気持ちをちゃんと伝えたいなって思ってですね……」
本当の気持ちは伝えずにごまかす。だって言ったところで先輩は困るだけだろうから。
「だったら気合入れて作るしかないッスね! 私もそういうの慣れてる訳じゃないッスけど、もし手伝えることあったら教えてほしいッス!」
「……ありがとうございます。困ったら頼らせてもらいますね」
いつもは後輩の私が世話を見る方なんだけど、こういうところはしっかり先輩の立場として助けになってくれる。まあたぶんお願いするのは試食が中心になると思うけど。
- 116メジロエスキーの人22/11/02(水) 07:02:42
気を取り直したところでさてそれじゃあ何を作ろうか? ミニケーキ? チョコレートボンボン? それとも……
再び携帯でバレンタインチョコのレシピをいろいろ調べてみる。そして様々なサイトを渡り歩いた先に見つけたのがトリュフだった。
(こういうのって大概花言葉みたいに何にどんな意味がついているのかっていうのがあるんだよね……えーっとトリュフは……)
「バレンタイン トリュフ 意味」と打ち込んで検索にかける。すると出てきたのは……
(「大きな意味はありません。気軽にあげられるチョコです」、か……)
意味がなければそれこそあげる意味がない。だけど重く受け取ってほしいかとなるとそうじゃない。だったら一体するべきなのか。もう一度トリュフのことを調べてみると、それの解決策になりそうなホームページを発見した。
(へー、トリュフもいろんな味にアレンジできるんだ。ミルクチョコ、抹茶、フルーツ……シャンパン入れたものまであるの!?)
その時名案が頭の中で閃いた。トリュフに意味がないというのならそこに味で想いを籠めてしまえばいいと、いろんな味のトリュフを食べてもらうことに意味を籠めればいいと。
(貴方に私の料理を食べてもらいたい。貴方を私で満たしたい……)
貴方の側にいたい、貴方と深い関係になりたい、貴方の隣で、貴方の近くで……
想いが止まらない、止められない、止めたくなんかない。
──だって私は貴方が好きなのだから。
─────
「まあ結局その時は駄目だったんだけどね」
少し古い記憶を呼び起こし、ふっとため息が零れる。そんな私を見て、あの時の繰り返しみたいに同室のカジっちゃん先輩が心配そうな声で私に話しかけてきた。
- 117メジロエスキーの人22/11/02(水) 07:03:24
「どうしたンスか? 何が駄目って?」
「ううん、昔の話です。今はなんでもありません」
先輩はさっきの話なんて覚えていないだろう。去年のバレンタイン前の他愛もない話なんて。
「ふーん……まあなんでもいいッスけど。今度の天皇賞頑張ってくださいッス。レース場には行けないけど応援してるッスよ」
「ありがとうございます。先輩の応援があったら百人力ですね」
「いやいやいや、そんな訳ないじゃないッスか……違うッスよね……?」
これまた冗談で先輩をからかいながらも2人仲良く眠くなるまでおしゃべりを続けた。他愛もない話を、すぐに忘れてしまうかもしれない話をずっと。
─────
その夜再びあの白い部屋にいる夢を見た。この前は電池を探しに行く所でテレビの電源を落とすかのようにぷつりと途切れたあの夢の続きを。
(えーっと電池電池……あった! よし、じゃあこれを1つ嵌めてっと)
落ちていた電池を拾い上げ時計の裏に嵌め込む。ただもう1つの穴にはまだ何も入っていない。当然時計が動き出すこともない。
(もう1個探さないといけないのか。どこだろう……?)
再びキョロキョロと真っ白い部屋を見渡す。すると、今度はさっき電池を見つけた方向と逆の方角に小さいけど照明に照らされて光っている物を見つけた。
(あっ、あれだ! 拾いに行かないと!)
そうしてまた立ち上がりその物の方向へと駆け出していく。
──そこでまた映像が途切れた。
- 118メジロエスキーの人22/11/02(水) 07:03:48
今日はここまで。また次回
- 119二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 09:25:46
チョコ選びの様子から冷静になって考えたんだけどこいつ学生のレベル超えた愛の重さしてるな?
- 120二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 10:28:23
い ま さ ら
- 121二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 13:52:45
また電池の夢……これは一体
- 122キタサンアイドルの人22/11/02(水) 18:51:04
電池の夢…なんか不穏です…。
というかまたイチャイチャカップルが居ますねアイちゃんロープウェイ繋げます!
突然の小説投下! - 123キタサンアイドルの人22/11/02(水) 18:53:32
【彗星の恋】
アイドルと一緒に学園内をうろうろしていると…
「天井に張り付いている人がいますがどうしますか?」
[え!?]
慌てて上を見ると……
コメット「あっバレちゃったか…でも怪しいことは!怪しいことは何もしてないから!」
綺麗な着地だ、やはり脚が強いのだろう。…それはさておき完全に怪しい…。
「天井に張り付いている時点で…」
コメット「待って待って誤解誤解!…いや誤解じゃないかな…?まあとにかく!ホープフルの出走ウマ娘の情報を集めてただけなの!」
「…そうですか、でもなんでワタシに付いてきたんですか?」
コメット「そ…それはその……///。そこのトレーナー耳貸して(耳打ち)」
[?…わかった(小声)]
コメット「トレピに言われてデータ集めてたらアイドル見かけてそれでつい追いかけちゃって…(小声)」
[…あー、そういうことね]
「なんでしたか?」
コメット「言っちゃダメー!!」 - 124キタサンアイドルの人22/11/02(水) 18:55:47
[アイドルともっと仲良くしたいんだってさ]
コメット「!?…あ…うん///」
「…そうですね、ワタシもコメットちゃんともっと仲良くしたいです」
[(コメットの恋、応援するからね!…アイドルは恋愛対象として認識してなさそうだけど……)]
コメット「……あ」バタッ
眼鏡をかけたモブ娘「ゴコメ殿ー!!」
その後保健室に搬送された後天井に張り付いたことに対する説教をくらったそうな…
__
トレーナーさんはワタシの恋を応援してくれないんですね失望しましたゴコメちゃんのファンやめます。
…おや?何か特徴があるモブ娘が居ますね。ストーリーには関わりますがそこまで関わらないと言う名誉モブ娘です、あくまでモブです! - 125二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 19:03:29
トレラブの次はウマラブだぜ
トレセンは婚活会場ちゃうねんぞ!(懐かしのネタ) - 126二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 19:06:55
待つんだタマ 破れ鍋に綴じ蓋レベルでトレーナーとウマ娘がピッタリハマりこむトレセンは最早リアルマッチングアプリと言っても過言ではないはずだ
- 127メジロエスキーの人22/11/02(水) 19:30:35
マッチングアプリ「トレセン学園」
運営:三女神
協賛:URA - 128ナックル宅の壁22/11/02(水) 20:02:26
お疲れさまです。
取り急ぎナックルさんのwikiを作成いたしました。
ナックル - uma-musumeになりたい部 @ ウィキ【11/2更新】(YSDメーカー様にて作成) 「誰より速く、かっ飛ばします! 『奇蹄グループ』、上空旋回中!」 プロフィール 名前----- ナックル(Knuckle) 誕生日----- 5月13日 身長----- ...w.atwiki.jpよろしくお願いします。
- 129二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 20:52:37
う あ あ あ あ(PC書き文字)
け、血統ニキが蹄鉄スレで蹄鉄を練り紹介してる - 130二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 20:53:21
- 131二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 21:31:31
それは群青のことを言うとんのかい
- 132二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 21:50:51
あれは悲しい事故だったよ…。
この話やめよっか() - 133メジロエスキーの人22/11/03(木) 03:49:11
そもそも運営が運営なんだけどそれは()
- 134キタサンアイドルの人22/11/03(木) 07:21:11
- 135メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:26:09
- 136メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:27:42
─────
天皇賞秋2週間前の日曜日、他のG2やG3とは違いG1だからこの日に特別登録のメンバーが発表される。果たしてそのメンバーは……
「少なっ……これG1だよね?」
なんと私とエスキーを含めて12人。フルメンバーの18人には到底満たない数。当然ここから追加登録することはできないからこれがMAXの人数となる。
「ああ間違いなくG1なんだが……おそらく君たち2人に恐れをなしたんだろう。2000mという距離はマイラー寄りの子でもなんとかこなせる距離だし、逆にガチガチのステイヤーでもない限り距離適性が多少長くても十分にカバーできるはず。それなのにこの少人数ということは間違いなく理由は君たちだ」
「まあ少ないなら少ないでありがたい所はあるんだけど……」
この東京2000mというコース設定はスタート直後に進路を左に取る関係でフルメンバーだと8枠がどうしても不利になってしまう。ただ12人だと大外でもフルメンバーでの6枠相当。イコール内に殺到する数も必然的に減るわけで、前が壁になったり他の子と接触して取りたいポジションが取れなかったりというアクシデントが目に見えて少なくなる。
「あとはやっぱりマークしやすいことが大きいな。常にターゲットを視界に入れてレース運びができるのは大きなメリットだ」
そう言ってトレーナーは机に置いてあるマグカップを手に取りお茶を一口飲んで喉を潤す。私もそれに釣られてトレーニングで余ったスポーツドリンクを口にする。
「そういえばなんだけど、これまでずっとエスキーを前に置いて後ろから捉えるレースプランだったじゃない? 私が前にっていうのは難しいの?」
残り少なかった中身を一気に飲み干すとトレーナーへ疑問をぶつける。去年の有馬記念然り彼女とのトレーニングでの併走然り、あの子が前、私が後ろの態勢でレースが進み、後半あの子が一気に仕掛けるのに合わせて私も仕掛けるけど追いつかないことが常だったように思える。
「もちろんそれは考えたよ。君もスタートが上手い。並の相手だったら、何も考えることなくスッと前を制することができるはずだ。ただし……相手が悪い」
そう言ってパソコンのキーボードをカタカタと叩き見せてきたのは、エスキーのこれまでのレースにおけるスタート時のパトロール映像だった。 - 137メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:28:45
「これが去年の有馬記念。海外、特にヨーロッパ勢はスタートがそこまで上手くないから自然と前に立ててしまうから割愛するとして、さらにもう1年前の有馬記念、菊、ダービー、皐月……どれもスタートが速い」
「ほんとだ……一緒に走っててもなんでこんなに前に行けるんだろうって思ってたけど、前から見たら分かりやすいね」
ともに走っている時は単にスタートが速いなとしか思っていなかったけど、こうして別の角度で見てみるとその異常さが分かる。
「ゲートの中で走ってるんじゃないかって思うぐらいだ。こっちはテレビ放送版なんだけど……」
そう言って映像を再び去年の有馬記念のものへと切り替える。今度は地上波で放送されたものを録画した映像だ。
「うわ……スタートの時点で1バ身ぐらい差がついてる……」
まさにロケットスタート。私もゲートを出るのが下手な訳ではなく、むしろ速い部類に入る。そんな私を彼女は1バ身も差をつけた状態でレースを始めていた。
「ただ無理には前に行かずスッと番手につけて道中は回り、終盤に一気に突き放してっていうのが彼女の王道パターン。有馬の時は少し違ったけど、ヨーロッパの感覚が抜けてなかったんだろう。今回はばっちり仕上げてくるぞ」
「うん、分かってる……」
果たしてどうしたものかと腕を組む。何も対策を打たないと去年の二の舞い、むしろ向こうが日本のレース仕様に仕上げてきている以上その上を行く惨状が広がるのを容易に想像できる。
「もちろんこれで白旗を揚げるほどオレも諦めがいい人間じゃない。まあこれまでの焼き直しに近くはあるんだけど……」
そう言って三度パソコンの画面を切り替える。今度は映像ではなく表計算シートを立ち上げファイルを開く。
「当然だけど君のこれまで走ったレースのデータは全部取ってある。それで今回見てほしいのは……ここだ」
「えーっと……ラップタイム?」
そこにはこれまで私が走った各レースの全体のラップタイムと、私個人のラップタイムが書かれていた。
「そう。もちろんあくまで君のラップはオレの手計算だから多少誤差はあるかもしれないけど、それでも傾向は見て取れる。これを見て何か分かるか?」
「傾向? そんなのいきなり言われても……あっ」
- 138メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:29:49
私のラップを抽出して見てみると一目瞭然だった。むしろこれに気づかない方がおかしいぐらいに。
「ずっと加速し続けてる? 後半の4ハロンずっと?」
「正解。もちろんレースやコースによって変わってはくるけど、ずっと伸び続けているというのは変わらない。それが君の武器だ」
「私の武器……?」
胸に手を当てこれまでのレースをいくつか振り返ってみる。淀の坂を下り始める手前で仕掛けてそのまま捲くっていった菊花賞と天皇賞春、3コーナーから4コーナーにかけて一気に踏み込み、前を飲み込んで突き放した日本ダービー、重たいバ場を苦にすることなく最後まで脚を伸ばせた宝塚記念……思い返すと最後に苦しくなってペースを落とすという記憶が全くなかった。その記憶とこの記録が見事に一致しているという事実。確かにこれは私の武器と呼べるもの、彼女を超える鍵になるものだろう。
「ただこの武器を最大限に活かすためには最後まで伸び続けるためのスタミナ、そしてトップスピードの上限を上げる瞬発力を鍛えないといけない。あと2週間、きっちり仕上げていくぞ」
「うん、お願い。あの子に勝ちたいから」
目に捉えられるか分からないほどのかすかな突破口。しかしそれに私たちは全てを賭ける。縋るのではなく信じる。己の脚と愛する者の頭脳を注ぎ込んで。
─────
「なるほど、エスキモーちゃん、ほんとレース運び上手ですね……特に最後の伸びなんて……」
─────
「はぁ……ふぅ……よし!」
迎えた天皇賞秋当日。トレーナーと打倒エスキーの作戦を考えたのがつい2週間ほど前。それからラストまで伸び続けることができるように体力と瞬発力を必死に鍛え今日に至る。
「緊張は……大丈夫か」
「もう慣れたしね。しかも今回は1番人気じゃないし」
今回の1番人気は当然とまで言っていいエスキー。それに続いて私が2番人気に支持されている。各種スポーツ新聞には「2強対決」や「メジロとメジロの一騎打ち」だったり「無敗VS春の覇者」なんて言葉がデカデカと一面に書かれていた。
「初対戦から約1年、君は数多くのレースを駆け、そして勝ってきた。そこで得た自信、そして今まで積み重ねてきたトレーニングを胸に今日精一杯走ってきてほしい」
私より硬くなっているトレーナーの姿を見て思わず噴き出してしまった。しかも台詞がなぜか重いし。
- 139メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:30:57
「トレーナー、ラストランとかで言う言葉だよそれ。今言ったら駄目でしょ、ふふっ」
「そ、そうか……なんか変に緊張しちゃって……」
頭をポリポリと書くトレーナーに近づき、腕を左右に広げる。
「はいトレーナー、こっちおいで?」
「なんか立場逆になってないか?」
そう言いながらも私の元へ歩いてきてギュッと抱きつくトレーナー。私はその彼の体に腕を巻きつけ胸に頭を埋める。
「よしよし。緊張しなくていいからねー」
「子ども扱いするなよ……でもありがとう、おかげですっきりしたよ」
そう言って軽く口づけを交わすと再び自席へ戻りペットボトルの水を飲む。彼の言うとおり体の強張りはなくなり、肩の力も抜けていた。
「そろそろ時間か……じゃあ私頑張ってくるね」
「ああ、行ってこい!」
そうして決戦の舞台へと歩を進める。果たしてどういう結末を迎えるのか。神のみぞ知る未来へ1秒1秒時計は針を刻んでいく。
─────
『──さあ入場してきました! 春の中長距離G1を3連勝! 今年まだ負けなしの2番人気、7枠10番メジロエスキモー!』
観客からの声援に応えつつ軽く走りながらスタート地点へと向かう。芝の具合は良好。みんなが存分に力を発揮できそうな理想のバ場状態だ。
『──そしていよいよこのウマ娘がターフに帰ってきました! 今年、ではなくこれまで無敗の凱旋門賞ウマ娘、1番人気メジロエスキー! 今日は7枠9番から出走いたします!』
私に向けられていた歓声より一段とボルテージが上がり、観客席は早くも熱狂のムードに包まれている。それもそのはず、彼女は半年ぶりにレースに復帰するのだから。
- 140メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:32:27
そんな声援に彼女は笑顔で手を振り丁寧に応える。あれもあの子の大きな魅力、ファンが魅了されるのも無理はない。私だって羨ましくなるぐらい。
「コースの上で会うのは久しぶりだね」
「約10ヶ月、随分とお待たせした気がします。ですけど安心して全力を出してください。それに応えられるだけの力を見せてあげますから」
「……楽しみにしてるね」
二言三言言葉を交わすと、お互い離れレースへ向けて孤独に集中力を高めていく。
(あっちは休み明けでも関係なく力を発揮できる。ただこっちもこっちで1回叩いた分全力でぶつかれるんだから……!)
静かにスタートの時を待つ。数刻ののち高らかにファンファーレが轟き、ゲートへと枠入りが始まる。
『──先に奇数番号のウマ娘が枠入りを始めます。1番人気のメジロエスキーは7枠9番に静かに歩を進めます』
奇数番号の枠のウマ娘が入り終わり、続いて偶数番号の枠のウマ娘がゲートへと収まっていく。私も8番のウマ娘に続いてゲートの中に入る。
(隣はエスキー。出方はしっかりと窺わないと……! できたら一瞬でも前に立てたら……!)
『──さて最後に大外12番セカンドシスターが収まり態勢完了! ゲートが──』
(よし……! あれ……? タイミングが……)
『開いて今スタートしました! 各ウマ娘横並びで……おっと!? 珍しくメジロエスキモーがゲートで後手を踏んで後方からのスタートとなりました!』
エスキーより先んじようと気がはやったせいかゲートが開くよりわずかに駆け出し、前のゲートにぶつかりそうになった。それをなんとか踏ん張ってこらえた所で不幸にもゲートが開きレースが始まってしまった。
(やっちゃった……でもまだレースは終わった訳じゃない! ここから冷静に運べば必ず勝機が生まれるはず!)
レースで大事なのは常に冷静でいること。どれだけ実力があっても道中我を忘れてペースを乱せば、それを抑えるのに力が殺がれ持ちたるポテンシャルを発揮できないままレースを終えてしまうことになる。
- 141メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:33:26
(トレーナーから散々言われたっけ。冷静でいるためにも多くのレース展開を頭に叩き込んどけって)
当たり前のことだけど人は自分が想定していなかったことが起きると少なからずパニック状態に陥る。それはレースの時も同じ。むしろコンマ1秒、もしくはそれ以下を争うレースにおいてはほんのわずかな恐慌状態でも勝ち負けがひっくり返ってしまう。だったらどうすればいいか。
(レースの展開を何パターン、何十パターンも考えて頭に叩き込む……!)
ありがたいことにパパとママから頭の回転の良さと高い記憶力も受け継ぐことができたから覚えることに苦労はしなかった。むしろ大変だったのは一つ一つ展開を考えるトレーナーの方だっただろう。私がご飯を作りに行ってなかったら倒れてたんじゃないだろうか。
(そんなトレーナーの努力を絶対無駄にはしない! 収まった位置からきっちり仕掛ければいい!)
『──向こう正面を過ぎて、現在チバディスカウントがレースを引っ張ります。2番手にジェームズヤマト、3番手にミラクルがつけて、そのすぐ隣にメジロエスキーが控える展開になっております。さあまもなく最初の1000mを迎えますが……60秒5! まずまずの流れでレースが進んでいます』
エスキーとの差は……約1秒ほど、距離としては5バ身ぐらいだろうか。さあ問題はどこから仕掛けるかだけど……
(事前の話だと800mからだけど、脚は残ってるし差も縮めていかないと絶対に届かない……だったらここで!)
残り800mの標識を待たずにスパートをかけていく。彼女との差がじわりじわりと縮まる。だけど……
『──残り800mの標識を通過して……ここで一気にメジロエスキーが仕掛けた! 前を一気に捉え、そして突き放す!』
彼女もここでスパートをかける。まるで精密機械かのように絶妙のタイミングでギアを上げ後続を千切り、少し詰めた差をあっという間に離されてしまった。
(それでも私は私の武器で勝負するだけ……!)
『──さあ直線に入ってまいりますが、先頭はメジロエスキー! 後続をグングンと引き離す! これはセーフティーリードか!?』
直線残り400m。あの子との差は5バ身、6バ身、いやもっと離れているだろうか。ただそれでも私の脚は止まらない。息は全然上がってない。
(あああああああああああああああっっっ!!!!!)
- 142メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:34:21
『──後続もジェネシーとフィレラヴォアが上がって……いやその外から一気にメジロエスキモーが飛んできた! 5番手、4番手……一気に2番手へと替わった! 残り200m! 猛烈な勢いで前に迫る!』
(届かない。けどそれは今この時だけの話。次は絶対……絶対……!)
『──ただリードは十分か! メジロエスキー今先頭でゴールイン! 2着は最後猛烈な脚で追い込んできたメジロエスキモー! 王者復活! 2番手に4バ身ほど差をつけて見事復帰戦を勝利で飾りました! タイムは1分56秒5!』
前走った時より差は開いてしまった。ただそれは出遅れてしまった分。次のジャパンカップでは必ず捕まえてみせる。
(悔しい……けど私たちは間違ってなかった。自分の脚とトレーナーを信じて次も……!)
─────
「エスキモーちゃん……やっぱり最後……」
危なげなく10ヶ月ぶりのレースを勝利で飾り、早々と控え室へと引き上げる。ただ勝ったはいいものの次のレースへかすかな不安材料を見つけてしまった。控え室に戻るやいなや、先ほどのレースの映像をパソコンで確認する。
「わたしはいつもどおり残り800mの所で仕掛けて一気に突き放して……確かにラスト2ハロン目は軽く息を入れるのでいつも差を縮められるんですけど、最後の1ハロンはわたしも伸びてるはずなのにさらに差を縮められた……」
春まで彼女の練習に付き合いデータをいろいろと集めさせてもらった。ただ今日の彼女はそれを上回ってきた……
「次のレース、気をつけないと飲まれるかもしれません……」
勝って兜の緒を締めよ。その言葉通りに気を引き締め直したところでウイニングライブの準備へと取りかかるわたしだった。
─────
「あーあ、負けちゃったー」
「あれ、案外平気そうだな……」
控え室に戻り、椅子に座ってぐでーっと伸びている所をトレーナーに見られる。まあトレーナーの言い分も分かる、というか逆になんで悔しがらないのと言われそう。
- 143メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:35:14
「初めて出遅れたのにーって言いたいんでしょ?」
「そりゃそうだろ……今までスタート抜群だった君がこの大一番でミスするなんて考えられなかったからな。それで何か理由はあったんだろ?」
そう言われると若干答えに苦しむ。答えがないという意味ではなく、この答えをしたら怒られるんじゃないかという意味で。だって……
(エスキーを制して一瞬でも前に出たかったーなんて言える訳ないじゃない?)
レースプランとしてもエスキーのすぐ後ろに構えて残り800m辺りから仕掛けていく形だった。確かにスタートを素早く決めるだけ決めてスッと控えれば、無理に位置を取りに行くよりも体力の消費が抑えられるメリットはあるけど、別に彼女より先に出てそれをやる必要はなかったんだから。
「えーっと、ゲート開くタイミングと足踏み出すタイミングが合わなくてね? それでワンテンポ遅れて出ちゃったっていうか……」
嘘ではない。前へと飛び出そうした時にまだゲートが開かず、おっとっととつんのめったタイミングでゲートが開いて後ろからのレースになったのは事実だ。うん、嘘は言ってない。
「……本当か?」
そう言って私のわざわざ立ち上がって私の顔を覗き込もうとするトレーナー。私は彼の顔を両手でホールドして別の方向へと向かせる。
「……おい、何か隠しているな?」
「な、なんのことやらさっぱり……」
相変わらず嘘が下手くそな私。尻尾もしきりに揺れているし鏡を見ても目が完全に泳いでいることがはっきりと分かる。そもそも何もなければトレーナーに顔を見られてもどうってことなかった訳だから、もうその時点で破綻していたということに今気づいた。
「嘘ついたら当分オレの家泊まるの禁止にするから」
「ごめんなさい話します」
それは禁止カード……そんなこと言われたら何も隠し事できなくなっちゃうじゃん……
そんな反則技を使われた私は洗いざらい全てを吐き出した。トレーナーはうんうんと頷きながらも少しずつ顔が険しくなっていく。
- 144メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:36:23
「──ということなの」
「……やっぱりお泊まり禁止にしようか?」
「いやいやいやいや! 本当のこと言わなかったらって話だったでしょ!?」
なんかもうレースの時より必死の表情でトレーナーにしがみつく。話が変わってきて……いや本当のこと言ったら禁止にしないってことは言ってない……
「あのな? オレは遅れたことに怒っているんじゃないの。そりゃゲートなんてミスすることはある。有名なウマ娘だって出遅れ何回もしているし、それでも勝ちきっている例もたくさんあるからな。それに出遅れたとき用のレースプランも組んでいたから、そこは問題じゃないんだ……なんでエスキーより前に出る必要があった?」
淡々と、それはもう淡々と理詰めで責められているのをひしひしと感じる。これで間違ったこと言ってたら反論できるんだけど、その余地はまるで残っていない。
「……そっちの方がレースしやすいかなって」
「……これを見てくれ」
そう言って差し出したのはこの前も見せてもらった私のこれまでのレースのラップタイム。早速さっきのレースのものも入力されている。
「最後まで加速ラップを刻んでいるのは見事だ。練習の成果が出ている。ただ見てほしいのはそこじゃない」
「えっと……どこを見ればいいの?」
そう尋ねるとトレーナーは2つのレースのラップについて指し示す。片方は今日のレース、もう片方はこの前のオールカマーのものだった。
「はっきり言おうか。君に一番合っている脚質は差し。先行じゃない」
「えっ……?」
今この段階で言う話なのだろうか? だって今までずっと前でレースをって……
「なんで今って顔だな。確かにもっと早く気づくべきだった。それは申し訳ない」
「頭下げなくていいよ……でもどうして? というかそれで怒ってるのはなんで……?」
いまいち全体の話が見えてこず、頭の中がはてなマークでいっぱいになる。今日のスタートの話と脚質の話がどう繋がってくるんだろうか?
- 145メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:37:24
そんな不思議そうな顔をしている私を一瞥すると、再びパソコンの画面を見ながらトレーナーは話を続ける。
「オールカマーの時は出遅れもなく前目でレースを運べた。その時のラップも当然最後まで加速ラップを刻んでいるんだが……少し加速が甘い。オールカマー後に成長した分を差し引いても今日の走りとは明らかに違う。ほら、2つ見比べてみて」
そう言われ画面を覗き込み、2つのレースのラップタイムを見比べる。
「あっ……そういうことか」
さっきの話を踏まえたら、トレーナーが何を言いたいのか、なんでスタートで無理に前に出ようとしたことで怒ったのかがはっきりと分かる。
「前回は前に行った分最後の伸びが甘くなってる。それが今回たまたま後ろになったけど、その分脚を溜められたから爆発力に違いが出た」
「正解。じゃあオレがなんで怒ったか分かるか?」
「……自然と出た結果じゃなくて無理に前に行こうとした分、余計な脚を使ったから」
そう、そこに繋がる。私の武器は最後まで伸びる末脚。その勢いを削ぐような真似を自分からやったんだから怒られるのも当然だ。
- 146メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:37:45
「はい、正解。じゃあ次のレースはどうしたらいいか分かるな?」
「中団より少し後ろでエスキーをマーク。あの子より早めに動いてその勢いで最後に差す」
一瞬の爆発力で後続を突き放し、少しだけ息を入れて最後にもう一度伸びるあの子とは違う。3コーナー辺りから仕掛けてその勢いのまま垂れてきた子を差しに行くママとも違う。
──早仕掛け気味に前を狙い、体力を使い切る勢いで最後まで伸び続けて一気に差し切る。それが私の武器。
あの子が剃刀なら私は鉈。ゴール板まで伸び続けるこの末脚。これがあれば、私はきっと……
「……よしじゃあ今日の反省会は夜にオレの家でやるとするか」
正解の代わりに放ったその言葉は「そういうこと」だろう。今度はしがみつくのではなく、正面から抱きついた。
「やっぱりトレーナーって優しい! 大好き!」
- 147メジロエスキーの人22/11/03(木) 07:38:33
長くなりましたが今日はここまで。また次回
- 148キタサンアイドルの人22/11/03(木) 08:48:16
- 149クアドラプルグロウ22/11/03(木) 08:57:43
アイちゃんのウィキ画像貼れてないですねこれ…
- 150キタサンアイドルの人22/11/03(木) 09:59:32
- 151クアドラプルグロウ22/11/03(木) 10:11:59
- 152残滓(大)22/11/03(木) 13:05:11
- 153ラピッドホライゾンの人22/11/03(木) 13:07:14
新入部員だ!囲え!
- 154プログレスの人22/11/03(木) 13:10:53
なんだと!囲む!
- 155残滓(大)22/11/03(木) 13:14:35
ちなみに育成ストーリーはほぼほぼ固まってたりする
考え始めてから三ヶ月経ったけど出そうか迷ってたところを、遥か昔に息の根を止めたはずの承認欲求に操られて出させていただきました。 - 156アルケミー22/11/03(木) 13:17:53
三ヶ月…
きっと熟成されていい感じの部員になっている頃ですね - 157残滓(大)22/11/03(木) 13:31:08
・競争意欲が死んでるけど研鑽欲求がえぐい
人類は愚かだけど一つのことに打ち込んでる時は忘れられる[コンセントレーション]
・脚質は逃げ
戦略?タイム上がるのそれ?
・ライバルとか知らない
・妄想癖があって結論を急ぎがち。
・怖がり。特に失うことに関して。
・座右の銘は「覆水盆に返らず」
そんなメンタルのウマ娘です。 - 158メジロエスキーの人22/11/03(木) 15:20:02
新入部員と聞いて
- 159クアドラプルグロウ22/11/03(木) 15:29:18
新入部員さーん!よろしくお願いします!!!
ちなみにナックルさんに影響を受けてwikiのプロフを更新してみたり - 160クアドラプルグロウ22/11/03(木) 15:38:16
わたくしは承認欲求を隠そうともしないので編集したwikiを見て見てアピールするかな!
クアドラプルグロウ - uma-musumeになりたい部 @ ウィキ【11/3更新】原案風イラスト 制服風コラ 「…わたくしは、クアドラプルグロウ…その名前と家の期待に、答えるだけ…かな」 (原案風イラスト:ライジョウドウの人) + 目次 プロフィール 概要(実装前) 概要(実装後)...w.atwiki.jp - 161ナックル宅の壁22/11/03(木) 15:47:36
- 162クアドラプルグロウ22/11/03(木) 15:50:59
- 163クアドラプルグロウ22/11/03(木) 16:00:28
ディスコードで雑談していたら
「珍味を求め定期的にロイビを購入するクアドラプルグロウ」
というネタが生えてきました
対戦よろしくお願い負けました - 164二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 16:14:00
まともな方のロイビ
- 165残滓(大)22/11/03(木) 16:18:19
うちの子の末路(予定)その1です。
夢が叶って幸せそうにしています。
因みに"拭いきれぬ主観"をコンセプトにしてます。
怨念の残滓:拐
世に恨みを持ち、悩める子羊を連れ去らんとする怨霊
彼女の怨念の欠片の一種
純粋な善意によるその誘惑は抗い難く、
四種のうち二番目に恐ろしいと言われる - 166キタサンアイドルの人22/11/03(木) 16:50:09
ありがとうございます!ありがとうございます!(感謝の舞)
新入部員だー!それも大逃げだー!!(私怨)
いきなり自己紹介をしますがキタサンアイドルです。承認欲求のためにwiki貼ります。
新入部員祝いにアイちゃんロゴスちゃんの部屋と理事長室をロープウェイで繋げておきますね。
キタサンアイドル - uma-musumeになりたい部 @ ウィキ【10/17更新】(読み込めない部分は順次解放予定) 実馬のキタサンアイドル 血統 父キタサンブラック 母父ジャングルポケット 幸運の重戦車 牝馬でありながらそこいらの牡馬より馬体が大きい。 かなり気難しくプライドが高...w.atwiki.jp - 167二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 17:22:23
- 168メジロエスキーの人22/11/03(木) 17:24:42
ロープウェイ……なんで???
- 169クアドラプルグロウ22/11/03(木) 17:50:25
誰かがわたくしとアイちゃんの部屋をロープウェイで繋げちゃったから仕方ないかな
毎度気になってるけどこっち側の同室は誰なんだ…
誰かいないかな…最悪同室確定してないアプリっ子を…?
できれば部員がいいよな… - 170クアドラプルグロウ22/11/03(木) 18:16:30
JBC終わったらSS投げますね
菊花賞&エリ女編です
ついにエリ女編です - 171クアドラプルグロウ22/11/03(木) 19:23:24
遅れた!今から投げます!
- 172クアドラプルグロウ22/11/03(木) 19:23:47
菊花賞「クラシックの夢の終着点」
菊花賞。
クラシックロードの終着点。
クアドラプルグロウはどこか上の空でそのレースを眺めていた。
その帰り道。
「…ねえ、トレーナー」
結果はセイウンスカイの逃げ切り勝ち。
それを見て、彼女は何を思ったのだろうか。
「………負けた子、見たの」
『ん?』
「…金色の髪が綺麗な子。すごく、すごく悔しそうな顔してたんだ」
『………そうか』
「…皐月賞の時の、スペちゃんみたいな顔してたかな」
『………そうか』
それ以降の会話は続かないまま、帰り道を辿る。 - 173クアドラプルグロウ22/11/03(木) 19:24:03
菊花賞の裏側「黄金の夢のクラシック」
ツキノエルドラドの菊花賞は、大敗に終わった。
「………」
「お疲れ、エルドラド」
控室で待っていたのはゴールドシチー。
「…シチ姉」
「ん」
「………負け、ちゃった」
「…」
「負けちゃった…まけちゃったぁ…!クラシック…っ!とれなかった…!」
「………エルドラドはよく頑張ったよ」
「でもでも!!!前哨戦ばっか勝ったって意味ないんだよ!スプリングS、青葉賞、神戸新聞杯…全部、勝った。でも、本番は勝ててない」
「………エルドラド」
「アタシがとりたかったのは!!!”夢”だったのは!クラシックだったのに!!!」
彼女は泣きそうな顔で叫ぶ。いや、すでに涙が溢れていた。
「………大丈夫だよ」
「っ………」
シチーはそっとエルドラドを抱きしめた。
「アンタはよく頑張った。これだけ頑張れたなら、いつかG1に手が届く。…アタシが保証する」
「…シチねえぇぇぇ…」
「だから、今は…お疲れ。って、そう言いたい」
「…うん…!アタシがんばった…がんばったよぉおお…!!!いつかG1とってやるんだ…!」
「よしよし、その意気!」
ツキノエルドラドのクラシックが終わる。
そしてまた、次のレースへの日々が始まっていく。 - 174クアドラプルグロウ22/11/03(木) 19:24:21
エリザベス女王杯の前に「メジロの夢の栄冠」
エリザベス女王杯の日。
クアドラプルグロウはエリザベス女王杯への地下バ道を歩いていた。
「………G1の歓声にも慣れてきたかな…っとと、あれは…」
「………今日こそ、エアグルーヴ先輩に………!」
視線の先にいたのはメジロドーベル。
1つ上の世代の先輩で、名門”メジロ家”のウマ娘だった。
「こんにちは、ドーベルさん!今日はよろしくお願いするかな!」
「あ…クアドラプルグロウ、だっけ。こちらこそ、よろしく」
「長いからクアでいいかな!」
2人は何となく歩調を合わせて地下バ道を進んでいく。
「…クラシックでエリザベス女王杯出てくるなんて、すごいよね。そんなにこのレースに思い入れがあるの?」
「思い入れ…とは違うかな。名前に…”三冠を超える栄冠”に、応えたいかな。だから、このレースを勝って、超えるの」
「…?そうなんだ…?じゃあ、自分自身の目標っていうより、周りからの期待ってこと…?辛くないの?」
「あー、あはは…今まさにそこをトレーナーと悩み中かな…」
「………アタシ、先輩に挨拶してくるから。またね」
そう言ってドーベルは行ってしまった。
(…今辛いのは、怖いのは。期待より…)
(このレースで、”夢”が見つからなかったら、わたくしは…) - 175クアドラプルグロウ22/11/03(木) 19:24:49
エリザべス女王杯「………の夢の………」
ゲートが、開いた。
彼女は今日も一番に飛び出していく。
それ以外の戦い方を知らないから。
(………このレースは、ドーベルさんとエアグルーヴさんの対決。そこにわたくしが割り込んでいるような形)
だがそんなことを気にしていられない。彼女は走る、走る、走る。
「………あああああああ゛あ゛あ゛っ!!!」
悲鳴にも近い絶叫をあげながら、今この1レースに全力を注ぐ。
だって、このレース以外のレースなんて思いつかないから。
そんな中、最終コーナーに差し掛かった。
「………!」
来る。
後ろから、来る。
「…はぁああああああああっ!!!」
「………ふっ!!!」
「だああああありゃあああああああああ!!!」
(やだっ、やだ、負けない!わたくしは、負けたくない………!)
そんな願いを抱いて必死に足を動かす。
………それでも。
3つの影が、自分の髪を掠めていくのがわかった。
「………1着は、メジロドーベル!4度目の挑戦で、エアグルーヴを破りました!エアグルーヴは3着、2着は…」 - 176クアドラプルグロウ22/11/03(木) 19:25:02
エリザベス女王杯の後に「???の夢の???」
ターフに膝をつく。
「はぁっ…!はぁっ…!!!」
でも、そんなことをしていられない。
「………ドーベルさん!おめでとう!!!いやぁ、完敗かな!!!」
「あ、クア。ありがとう。…”いいレース”だったよ」
「え…あ…」
差し伸べられた手。
それを、戸惑いながらクアドラプルグロウは握った。
「…また、レースしようね」
「うん………」
どこか上の空で、そう返事をする。
ドーベルが去った後も、しばらくそこで立ち尽くしていた。
数分ののちに、やっと絞り出した言葉は。
「…悔しい、なぁ」 - 177クアドラプルグロウ22/11/03(木) 19:25:28
エリザベス女王杯の後に「☆!◇の夢の↓♪※」
『お疲れ、クア』
「ありがとう………トレーナー………」
『………どうしたんだ?』
「………”いいレース”だったなぁって…まだ現実に帰ってこれない…感じかな」
そう、クアドラプルグロウは何も読み取れない表情で言った。
『それで、クア、次のレースだけど………』
「…つ、ぎ?」
彼女の顔が曇る。
そう。ついにきてしまった。この時が。
「…つぎって、何?つぎは何があるの?」
『次のレースの候補か?例えば…』
「つぎなんてわからない。もう”お母様の夢”のトリプルティアラは終わった。”名前の夢”の栄冠…4つ目と言われる、エリ女も終わった。じゃあ、次は?」
『“君の夢”だよ』
「“わたくしの夢”って、なんなの?わからない。わからないよ…」
彼女はだんだん取り乱していく。
『お、落ち着け、クア…!』
「落ち着いてなんていられない。わたくしは何もわからない。わからないわからないわからない…この先のわたくしが何一つ見えない」
「わたくし…これから何のために走るの?」
………彼女は青白い顔で学園まで帰った。
トレーナーとして、とりあえず目標を設定しよう。そう思い、とりあえず「ヴィクトリアマイル」に狙いを定めることにした。
彼女がここまで歩んできた、ティアラ路線に連なるレースだからだ。
…最も、そのティアラは“彼女の夢”ではないわけだが。 - 178クアドラプルグロウ22/11/03(木) 19:26:03
- 179メジロエスキーの人22/11/03(木) 19:30:31
ドーベル出てきたのは嬉しいけど、それ以上に胸が痛いんだが?????
- 180ツキノミフネの背後霊22/11/03(木) 19:39:26
(SSを読む)(胸を抑える)(吐血)
- 181ラプ中22/11/03(木) 19:40:12
すべての夢が終わった中で次はどんな現実に追い詰められていくのかを見るのが楽しみです(クソ外道)
- 182ナックル宅の壁22/11/03(木) 20:03:48
- 183ナックル宅の壁22/11/03(木) 20:05:42
ナックルさんのページをウマ娘一覧に追加してくださった方、ありがとうございます。
wikiにいろいろ追加しましたので再掲です。ご査収ください。
ナックル - uma-musumeになりたい部 @ ウィキ【11/2更新】(YSDメーカー様にて作成) 「誰より速く、かっ飛ばします! 『奇蹄グループ』、上空旋回中!」 プロフィール 名前----- ナックル(Knuckle) 誕生日----- 5月13日 身長----- ...w.atwiki.jp - 184クアドラプルグロウ22/11/03(木) 21:05:48
tipsの精霊参上ー!
新入部員たちの3サイズや適性を書き込んできます!
そして感想嬉しいねぇ…これからも筆が乗るねぇ… - 185メジロエスキーの人22/11/03(木) 21:08:46
- 186ナックル宅の壁22/11/03(木) 21:25:16
- 187メジロエスキーの人22/11/03(木) 21:35:00
- 188クアドラプルグロウ22/11/03(木) 21:38:38
個人的にしてみたい話題は
「自分のキャラ以外で」
・好きなウマ娘名
・好きな固有スキル名
・好きな衣装名(?)
とか知りたいですね
個人的にはブルーラグーンの固有スキルの「つまり俺の勝ちってこと!」とか好きです
もちろんこの話題じゃなくても大丈夫ですーーー - 189二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:39:48
浴場でバスボム大会は真面目にいい案だと思うけど寮がなぁ…。
- 190アルケミー22/11/03(木) 21:41:32
- 191クアドラプルグロウ22/11/03(木) 21:41:51
ありがとーケミちゃん!!!
- 192アルケミー22/11/03(木) 21:48:19
- 193クアドラプルグロウ22/11/03(木) 21:49:25
おつうめたいむ
- 194二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:49:56
ウメノアスコット
- 195レッカの中身22/11/03(木) 21:50:56
- 196二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:51:53
たて埋めクラフト
- 197クアドラプルグロウ22/11/03(木) 21:52:44
200ならなんかサイコーに盛り上がる
- 198二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:53:22
- 199クアドラプルグロウ22/11/03(木) 21:53:55
200ならこの呪いを反転させガチャが当たる祝福(効果見てから1秒)を授ける
- 200二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:54:03
200ならおっぱい