- 1二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:10:59
ある日、とある島でのこと。
ウタは、偶然同じ島に滞在していたルフィの船を訪ねた。久しぶりにルフィに会うためである。しかし、肝心のルフィは出かけてしまったらしくサニー号にいなかった。
ウタは出直そうとしたが、ルフィの仲間たちが、多分すぐに戻ってくると思うから少し待ってて、とお茶を出してもてなしてくれた。そのため、ウタはお茶とお菓子を味わいながらサニー号でルフィを待っていた。
(あ、このお菓子美味しい。そういえばさっき、本を持ってきてくれたんだよね。たしか私が載ってるとか…)
ウタは先ほど渡された本を眺める。チョッパーが「これ、ルフィがよく読んでるんだ。ウタが載ってる本だぞ!」と言ってウタに見せた沢山の本。パッと見てどれも見覚えのない本だったが、様々な雑誌で取材を受けているため見逃してしまっていたものがあるのだろうと、それらを貸してもらった。他人の物を勝手に借りてもいいのだろうかと少しのためらいもあったが、それ以上に興味がわいたのだ。あのルフィがわざわざ読む本とは、一体どんな本なのだろう。
今まで受けた取材では、主に歌・エレジア・自身の目指す新時代についてなどを話してきた。…ルフィの興味を引くものは無いように思える。以外にも、何か共感することでもあったのだろうか。ルフィが戻ってきたら聞いてみるのもいいかもしれない。
ウタがこれらの本を借りた際に見たのは上から2〜3冊の表紙だけだ。そのどれもがウタが中心に大きく描かれていた。その中から1冊を手に取り、適当なページを開く。
ウタが、シャンクスと、キスをしていた。 - 2二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:12:20
……!?
- 3122/10/30(日) 22:12:26
「えァっ!?!?!?」
ウタは勢いよく本を閉じる。驚きのあまり、人に聞かせてはいけないような声を出してしまう。
(どうしてルフィがこんな物を?シャンクスとわたしの?いやいや。見間違いかもしれないし…。)
混乱する頭でウタは必死に考える。ルフィがよく読んでいる本がコレな訳がない。きっと何かの間違いだ。そう思ってもう一度本を開く。
ウタとシャンクスのキスシーン。
「何でだよ!!」
今度は叫んでしまった。
ルフィはなぜこんな本を持っているんだ。もしかして、何かと間違えて買ってしまったのだろうか。
改めて表紙をよく見ると、ウタのイラストに本のタイトルは『歌姫のヒミツ』。紛らわしい。…これならルフィは間違えて買ってしまうかもしれない。ウタはそう自分を納得させた。
(やっぱり間違いか。そうだよね。ルフィがこんな本なんて買うわけ無いもんね。あ~びっくりした)
まさか、こんな本が紛れているなんて思ってもみなかった。気を取り直して別の本を手に取る。
念のため、次の本は表紙からきちんと目を通す。念のためだ。
ウタは手に取った本の表紙をしっかりと見る。そこにはウタとシャンクスが描かれていた。タイトルは『貴方と紡ぐラブソング』。おそらくこれはさっき見た本と同じような内容だろう。確認せずともわかる。これも見なかったことにして次の本を手にとる。
表紙にはウタの堂々としたイラストが描かれている。タイトルは『song ~secret world~』。これは普通の雑誌だろう。よかった。ウタはどこか安心した気分になりながら、本を開いた。 - 4122/10/30(日) 22:13:31
『前書き︰ウタちゃんの逆光が大好きなのですが、彼女があの赤髪海賊団の関係者と聞いてから赤髪との禁断の恋の歌にしか聞こえなくなってしまいました。その勢いで描いた本です。』
パタン。
ウタはそっと本を閉じた。見てはいけないものを見てしまった気分だ。いや、実際にウタが見てはいけなかったのだろう。ルフィはこれも読んだのだろうか。いいや、そんなわけがない。これだけ沢山の本があれば、間違えて買ってしまった本もそれだけあるのだろう。きっとそうだ。ルフィは少々抜けているところがある。だからいつも勝負のときウタの作戦に引っかかってしまうのだ。
そうだ。そもそも、取材を受けた雑誌なら表紙はそれ用に撮影した写真や自分以外の人の写真になるはず。ウタはそう考えて、全ての本の表紙を確認していく。
結果として、全てがウタ(とシャンクス)のイラスト、もしくはタイトルだけが書いてある本だった。
ウタは、念のため、と中身もザッと確認した。全てウタとシャンクスが恋人であるような本だった。付け加えるならアダルトな本もあった(もちろんウタとシャンクスはそういう関係ではない。健全な父娘だ)。
チョッパーはルフィがこれらの本をよく読んでいる、と言っていた。つまりコレは、この沢山の本はルフィの趣味で集められたものなのだろう。
「嘘でしょ…。なんで、どうしてルフィがこんな本を持ってるの!?」 - 5122/10/30(日) 22:17:11
一方、ルフィはウタとは入れ違いになる形でレッド・フォース号の甲板にいた。ウタはサニー号に向かったと聞いてすぐに戻ろうとしたが、赤髪海賊団の面々に少し話でもしようと引き止められたのだ。ルフィとしては早く船に戻りたい気持ちもあったが、皆に押しきられてしまった。懐かしい顔ぶれとの会話に花を咲かせ、さて、そろそろサニー号に戻ろうというときに、再びルフィは引き止められた。
「ルフィ、良かったら船の皆に土産でも持っていかないか。いま何か詰めてやるから、ちょっと待っててくれ」
赤髪海賊団のコックであるルウにそう言われたら断る理由もない。ルフィはそのまま土産に心を踊らせながらそこで待っていた。
その時ふと、本が積まれているのに気がついた。
「なあ、あれなんだ?」
ルフィが近くにいたライムジュースに尋ねると、
「あ?あーあれはお頭のモンだな。おれは内容まではよく知らないが、似たような本をよく読んでるのを見る。ウタが載ってる本ばっかりだぜ。まったく、親バカだよな」
とのことだった。
シャンクスが読んでいる本。なんとなく気になりこっそりと一つ手に取る。周りを警戒しながらも本を開くと、
ルフィと、ウタが、キスをしていた。 - 6二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:18:48
期待
ワクワクしてきた - 7122/10/30(日) 22:19:54
「?」
ルフィは不思議そうな顔をする。何だこの本は。
いや、ルフィ自身にも覚えはある。似たような本は沢山持っている。自分とウタ、ではなくシャンクスとウタが書かれているものだが。まさかシャンクスも?いや、もしかしたら見間違いかもしれない。早く船に戻り、自分のお宝(本)を読みたいあまりに幻覚を見てしまったのだろうか。もう一度本に目をやる。
ルフィとウタのキスシーン。
パタン。
ルフィは静かに本を閉じた。恐る恐る表紙を確認する。可愛らしいウタのイラストにタイトルは『新時代の歌姫』とある。きっと間違えて買ってしまったんだろう。シャンクスにだってそういうときはある。ルフィ自身も初めて所謂シャンウタ本を買ったときはそうだったのだ。ただ自身はそのままどっぷりとハマってしまったわけだが。
他にもシャンクスが読んでいるという本は沢山ある。たまたま1つがこうだっただけだろう。ルフィはそう自身を納得させ別の本を手に取った。
『🔞歌姫さまのいいなり〜オ○禁2週間からの射○我慢オ○○ー配信〜』
タイトルからしてこれだ。見てはいけないものを見てしまった。最早中身を見るまでもなく”そういう”本であることがわかる。シャンクスは先ほどの本もこの本もルフィとウタの本だとわかった上で所持しているのだ。
ルフィは、沈んだような表情で他の本も確認する。サッと目を通しただけでも、ルフィかウタ、あるいは両方が表紙に描かれている。内容をパラパラと眺める。どうやらこれらは全て、ウタとルフィが恋人や肉体関係であり、主導権をウタが握っているというような所謂ウタル本のようだ(もちろんルフィはウタとそういう関係ではない。大切な幼なじみである)。
「シャ、シャンクスがまさかウタル愛好家だったなんて…」
シャンウタを愛するルフィにとってそれは大変な衝撃であった。しかし、
「…でもまあ、シャンクスがシャンウタ好きだったらそれはそれでよくねーよな」
そうだ。シャンクスとウタは大変仲のいい父娘なのだ。ルフィだってそれは十分に理解している。あくまでも創作物として人々が描いたシャンウタを楽しんでいるだけなのだ。シャンクスだって同じようにウタルを楽しんでいるだけ。
そうして持ち直したルフィは、タイミングよく土産を持ってきたルウにお礼を言いレッド・フォース号を後にしたのだった。 - 8122/10/30(日) 22:25:35
そのころ、レッド・フォース号の一室で、シャンクスは自身の戦利品の整理をしていた。戦利品と言っても他の海賊から奪った宝などではない。今シャンクス達が訪れている島の”祭”で購入した本である。
この島では個人が発行した本などの取引が頻繁に行われている。内容はオリジナルは勿論、ある作品や実在の人物を元にして作られたものなどもあり、島を歩くだけで面白いモノが見つかることが多い。そしてこの島で行われる祭では世界中からそうした品々が集まり、それを求める人々もまたこの島に集まる。この祭のために1年をかけて準備をする者だって数多くいるのだ。島全体が熱気に包まれる祭の期間は、犯罪行為をしない限りは海軍も海賊を捕まえない。そうした特殊なルールもあり海賊であるシャンクス達も落ちついて買い物を楽しむことができるのだ。
さて、今回シャンクスが目当てにしていたのはウタルの新刊である。無事に目当てのものを入手することができ、ご機嫌なまま本を整理していた。
「♪〜〜…ん?こいつは…」
その最中、とある本に気づきシャンクスは手を止めた。見覚えのない本が紛れていたのだ。他の奴らの本が混ざっていたのだろうか。
そういえば、買い物を済ませたあとウタから荷物を預かっていた。それを自身のものと混ぜてしまったのだろう。これはマズい。娘の趣味を暴いてしまうのは悪い気がする。
まあ、シャンクスが買った本かそうでないかは表紙を見るだけでもわかることだ。
そう時間はかからずに自身のものとウタのものを分けることができた。 - 9122/10/30(日) 22:32:06
「しっかしまあ…ウタの奴、こんなのが趣味だったのか…」
娘の趣味を暴くつもりはない。しかし、こういった本は表紙やタイトルで内容がわかってしまうものも多くある。
例えば、シャンクスとルフィが描かれた表紙に『おれの初恋』『赤の誘惑』『🔞セッ○スしないと出られない島』『🔞シャン◎スはこんなことしない!!』というようなタイトル。これらはシャンルとよばれるジャンルの本だろう(もちろんシャンクスとルフィはそういう関係ではない。大事な友人である)。コレはまあいい。
シャンル本と別に、少量ではあるもののシャンクスのみが表紙に描かれている本があった。タイトルは『🔞四皇を知らないヤツらにわざと捕まって犯される赤髪』『🔞海賊踊り食い』などだ。これらの本は不特定の人物とシャンクスの(主に)肉体関係が表現された、所謂モブシャンとよばれるものだろう(無論シャンクスは男と関係を持ったことはない)。
これはどうなのだろうか。娘がこんな本を読んでいるだなんて流石のシャンクスといえども少し落ち込む。
「…何を見ようとウタの自由だしな。そもそも見ちまったおれが悪い」
そう、ウタには何の非もない。悪いのはウタのお宝(本)を自身のものと混ぜてしまったシャンクスだ。そもそも、シャンクスもウタル本愛好家であるのでウタ何か言えるはずもない。
シャンクスにできるのは、せいぜい、ウタのお宝(本)を表紙だけとはいえ見てしまったことがバレないようにすることだけなのである。
(完) - 10二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:34:39
一周回って趣味かち合ってるなこいつら……
- 11二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:36:58
- 12二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:45:12
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- 13122/10/30(日) 22:48:33
- 14二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:54:17
- 15122/10/31(月) 08:59:47
きっかけは些細なことだった。
ウタがレッド・フォース号船内を歩いていると、一冊の本が落ちていた。誰かの落とし物だろうその本はシャンクスとルフィが表紙に描かれていた。
この本は何だろうか。ウタは時々雑誌に特集記事が載ることがある。でも、シャンクスやルフィが雑誌に載っているだなんて聞いたことがない。2人のことが書かれた新聞記事なら読んだことはあるが。
ウタはその本の内容が妙に気になり、パラパラとページをめくる。
「な、何…これ?」
そこにはシャンクスとルフィの恋模様が描かれていた。
衝撃であった。
これは同人誌と呼ばれるものだろう。ウタも少しは聞いたことがある。しかし、まさかシャンクスとルフィにこのような関係を見出す人がいるとは。世界は広い。
同時に、これは”アリ”だなとも思った。
もちろん、2人がそういう関係ではないこと知っている。仲のいい友人なのである。それを充分にわかった上で、”アリ”だと受け入れたのだ。
ウタは、元々2人の関係を好ましいと思ってた。幼い頃からシャンクスとルフィの仲の良さは、自分とシャンクスの仲とも自分とルフィの仲とも違っていて、それを何だかいいなぁと感じていた。そして、今でも2人はお互いを大切に思っている友人である。
そう、そこから恋に発展してもおかしくはない、そういうことなのだ。
こういった本は他にもあるのだろうか、今度どこかの島に降りたときに探してみよう。
そうしてこの日、ウタはシャンルに目覚めたのであった。 - 16二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 09:01:45
ビッグサイ島の語呂好き