- 1二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 19:41:35
秋も深まる今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか。私はゼンノロブロイ、本好きの文学ウマ娘です。
さて、突然ですが秋と言われるとどんな事を思い浮かべますでしょうか?食欲・運動・読書・芸術・行楽…。他にも沢山ありますが、よく聞く語句としてはこの5つでしょうか。太陽の光に照らされた夏を越え、良く実った農作物がこの時期によく収穫される豊穣の季節とはよく言ったもの、ヒトやウマ娘問わず良いイメージを持つ方も多いと見受けられます。
かく言う私も秋どころか年がら年中、お小遣いを溜めては買った本を読んで見聞の糧としているのですが…秋は特に自分の中で感性が昂じるのか、読み物に馳せる想いが特に強くなる気がします。自由時間にトレーナーさんとお互い同じ本を読み、同じ場面に対する互いの見解を言い合う時間は私にとってはとても充実していて、いつまでも続けばいいのに…なんて思ってしまう事もある位です。
…しかし。このお二方にとってはそうでもないみたいです。
「ほら、スイープ?行かなきゃ」
「ヤダ…」
「…スイープ、辛いのは分かるけど…な?」
「イヤったらイヤ!使い魔から絶対離れないんだからっ!」
そこにいるのは私のお友達のスイープトウショウさんと彼女から使い魔と呼ばれるそのトレーナーさん。普段は、快活な彼女がトレーナーさんや周囲を気ままに振り回しているのですが…今日はどうも様子が変みたいですね。スイープさんが使い魔さんにセミのように張り付いています。
「あ、あの…お二人共、いかがなさったのですか?」
「君は…ゼンノロブロイか、こんにちは」
ミシミシと身体が軋む音とブチブチとシャツの肩口部分が裂け始める音を立てながら私に挨拶をしてくれました。ウマ娘の本気の抱擁に対してどうして平気そうなのでしょうか…いえ、今は置いといて。
「その、何か揉め事でしょうか?もし私で力になれる事でしたら是非相談に…」
「…いや、君の心遣いは凄く嬉しいよ、ありがとう。けどこれはこの子自身の問題なんだ。だから申し訳ないが手出しは無用で頼んでも良いかな」
「そ、それは一体…?」
私の申し出に深刻な顔をして断りを入れる使い魔さん。今をときめく魔法少女ウマ娘の彼女が抱える問題…!?そう言われると、どうしても気になってしまうのがサガ。深く聞き込もうとすると──────。 - 2二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 19:41:48
「スイープトウショウさん!早くお入りください!もう後は貴方だけなんですよ!」
「だからイヤって言ってるでしょ!使い魔も一緒じゃなきゃ入らないって何回言えば解るのよ!」
「だから俺は入れないから一人で行ってきてねって何度も言ってるんだけどなあ…」
「…へっ?」
思わず、気の抜けた声が出てしまいました。スイープさんが最後…?俺は入れない…?あっ、まさか。
「…その、身体計測ですか?」
「お恥ずかしながら…。今回の項目の中に感染症予防のワクチン接種があっただろう?だから俺が隣にいないとイヤって動いてくれないんだ」
「はい、確かにそうですし確か身体計測って…」
「お察しの通り、胸囲も採るから服を脱ぐだろ?その場に俺がいたらアウトどころか懲戒免職の直線一気じゃん?」
「ヤダヤダヤダ〜!体重の計測もイヤなのに予防接種!?使い魔がいなきゃ痛みを肩代わりしてくれる身代わりがいなくなっちゃうじゃない!」
な、なるほど…。使い魔さんのお話と今のやり取りを統合し、大体の事が理解できました。わからない方がいた時のために不肖、これより私ゼンノロブロイがご説明致します。
まず、スイープさんは普段の体重はおろか、レース直前のバ体重の公表を一回もした事がありません。恐らく、変な邪推を受けるのを嫌がってのことだと思いますが、レースには普通に出ているのでそこは使い魔さんがどうにか丸く収めているのでしょう、私も特に気にしたことはありませんでした。
そして、極み付けは…スイープさんは過去に安心沢さんの笹針治療を目の当たりにして怯えてしまった事があるのです。当時、隣で見ていた私もあのような太い針を人体に刺して大丈夫なのかなと不思議に思うと同時に戦慄していました。天真爛漫な彼女が無言、かつ涙目で震えるなんて言えば状況の異常性が伝わるのではないかと思われます。
その2つを天秤にかけて、注射への恐怖が勝ったのでしょう。身体計測は基本、全て終了するまでは部屋からは出れません。その環境下に使い魔さんがずっといたら…擁護は不可能です。
中学生、ましてや彼女は飛び級で入学してきたので年齢的には小学生に当たります。彼が言う事はごもっともな上、何も事が起きなかったとしても、風評とは得てして自分の思うように触れ回らないのが世の常。リスク回避を含めて考えると尚の事…うん? - 3二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 19:42:18
「あの…お言葉ですが、身体計測を受けてる間はスイープさん単独でやってもらって予防接種をする際だけ使い魔さんが中に入るというのはダメなのでしょうか?」
「「えっ」」
「体重が第三者に知れ渡るのは気分良くないかもしれませんが…向こうとて受けてほしいでしょうしある程度なら妥協してくれるかと」
私の提案を聞き、顔を見合わせてから中に入る両者。その後、使い魔さんが出てきて笑顔でサムズアップのポーズを贈ってくれました。どうやら許可を貰えたそうで私も少し安堵しました。
ホッと一安心もしたしここで会ったのも何かの縁と、待っている間使い魔さんと様々なお話をしました。
「スイープさんの読解力は素晴らしいんです!こういう紐解き方もあるんだなっていつも感心させてもらってます」
「彼女はお祖母さんの家で本の虫してたみたいだからね。本と言えば君の話もスイープや君のトレーナー経由で聞いたことあるよ。物語を読むのがとても上手でその世界に引き込まれるってあいつ、太鼓判押してたよ」
「と、トレーナーさんがそんな事を…!?やだ、顔が少し熱いです…」
「この仕事してると難読漢字みたいな知識を問われる場面も多いんだけど読めないことも多くて。例えば驛とか」
「ええと…えき、ですね。駅の旧字体だったはずです」
「ええっ!?…合ってる。じゃあ、驥は?」
「これはき、ですね。優れた才能を持つ方を称える形で使われる事があるそうです」
(この娘俺よりも頭良いんじゃないか…)
楽しくお話をしていると中から使い魔さんが呼ばれ、入っていきました。後は接種を受けるのみですし辺りも暗くなってきたから、私もこれにて失礼しようと部屋に一礼し、踵を返した瞬間────
「うにゃあああああああああ!!!!!!」
地鳴りのような断末魔が聞こえ、思わず耳を絞ってしまいました。そんなに痛かったのかなと立ち尽くしていると、先程同様に使い魔さんにぴっとりしがみつき、嗚咽を漏らすスイープさんと頑張ったね、今日は美味しいものいっぱい食べようねと頭や背中を優しく叩き、しきりに励ます使い魔さんが出てきました。そんなお二人を微笑ましく思うと同時にあそこまで使い魔さんに己を委ねられるスイープさんを、私と姿を重ねてしまい────ほんの少し、羨ましく思うのでした。
…お二人にピッタリの秋は…ヤダヤダの秋、でしょうか。 - 4二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 19:45:25
珍しく2日連続です。
題名は決まらない、スレ画も良いのがない。こういう時他のSS書いてる人ってどうしているんでしょうね…
なんかもう本当にすいません、アドリブのなさをどうか許し亭 - 5二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 20:10:26
何だそのスレ画は
なかったんだから仕方ねーだろ
そ、それもそうだな… - 6二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 20:36:04
許し亭氏の新作2日連続で助かる
スイープはまあ注射嫌いだろうなあ……
そして後は春と夏と冬を書いてくれれば四季コンプですね!!!! - 7二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 20:57:33
なるほどな、枕草子やるってことか
じゃあ冬春夏も待ってるぜ - 8二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 21:35:35
べったり張り付いてるせいで使い魔の服が破壊されてるの芝
- 9二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:09:51
時折お出しされる無意識甘えんぼスイーピーすき
- 10二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:22:57
ロブロイも何のかんので恋してるみたいでほっこりしたよ…