- 1微修正してあります22/11/02(水) 23:28:12
エランさんがいなくなってからしばらく経った日のことです。
とある事情でペイル寮に訪れた私は、エランさんの部屋に案内されました。
案内されたエランさんの部屋は殺風景で、寂しくて、生きた証がどこにもないような、見ていて悲しくなってくるそんな部屋でした。エランさんはここでずっと一人ぼっちだったんですよね……
ですが、そんな殺風景な部屋の一角、使用感のほとんどない机の上に一冊の本が置かれていました。
ちょっとばかし背伸びした大人な感じのするノートの表紙には「やりたいことリスト」と丁寧な文字で書かれていて、まだ新しい感じがしました。
悪いとは思いながらも好奇心に負けた私は、エランさんに一言謝罪をしてから、ノートを拝見させてもらいました。
1ページ目にはこの手記をつけた目的が簡潔に書かれていました。
『自分と同じ人が「やりたいことリスト」を達成しようとしていた。とても凄いことだ。境遇にもめげず、1日1日をしっかり生きようとしている。
そういう思いに感化されたのか僕も今こうしてリストを作成している。願わくばこのリストがたくさん埋まりますように。
そして、いつか僕のリストも彼女に見せてあげたい』
所々がニ重線で消された書き出しからはエランさんの純粋な願いや思いが溢れんばかりに込められていて、その思いが私に後悔だけを募らせていきます。
ページを捲るとびっしりと書き込まれたやりたいことの数々……
「友達を作る、あだ名で呼ぶ、デートをする……etc」
チェックはまばらで、彼に時間が残されていなかったことを嫌でもわからされるようで、見れば見るほど辛くて、もっとしてあげられることはなかったのかとか、もっと寄り添えられていればなんて今更どうしようもない後悔が浮かんでは消えていきました。
そして少なくないページをめくった最後のページのチェックリストには一際大きく濃い文字でこう書かれていました。
「死ぬまで生きる」
───私は震える手で、その最後のチェックリストに達成の丸をつけました。 - 2二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 23:33:00
おおう…お辛いやつぅ……
- 3二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 23:34:46
クソ重い…
- 4二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 23:35:16
前に見たやつだけど相変わらず重い……
- 5二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 23:36:45
「どんな命でも、生きられるのなら生きたいだろう」
- 6二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 23:38:33
彼の命を終わらせたのは誰なのかな‥‥?
- 7二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 23:51:14
きっつ
- 8つづき22/11/02(水) 23:51:55
それから、エランさんのお世話をしていたと言う女性に断ってその手記を譲り受けました。
エランさんを感じるものが欲しかったからと言われれば強くは否定できません。
私は今まで少なくない命が終わるところを見てきました。その誰もが私に少なくない喪失感を与え、私の中に大事なものを作っていってくれました。
だから、エランさんだけが特別なわけではないんです。でも、こんな気持ちになるのは初めてです。
寂しそうな目をしていたあの人にとって、私はどう言う存在だったのでしょうか。やっぱり嫌いだったんでしょうか。
エランさんの手記を譲り受けた私は、やりたいことリストを久々に更新しました。
追加したのは、エランさんができなかったこと。
こんなことに意味がないのはわかっています。これはエランさんのやりたかったことで、私がしようとしていることは彼の残り香を追いかけているだけです。
それでも、これがいつか彼と再会した時の予行演習になるように、いいお土産話になるように、そんなことを祈って今日も私はリスト埋めに勤しむのです - 9二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 00:27:04
エラン君がリスト埋まるといいねって言ってくれたの、嫌な伏線になっててほんま悲しい