- 1122/11/03(木) 20:50:38
「っ…………!」
「し……シチー…………」
やらかした。熱が残る唇の感覚を感じながらゴールドシチーは失態を恥じた。事故だったのだ。
雑談中に体幹トレーニングの話になれば、バンブーメモリーが体の柔らかさを示すためにI字バランスを取って見せることは読めただろう。余計な対抗心に突き動かされ案の定バランスを崩したのがシチーの失態だった。
「せ、せんぱい……ごめっ……あたし」
ファーストキスじゃん、とか、事故はノーカンだし、とか。幾つもの思考が脳裏をよぎる。今最もすべき事は弁明だ、とシチーは断定した。同室の、それもバンブーメモリーとの間柄が事故ひとつでぎくしゃくするのは何よりも避けたかったからだ。故意では無いのが明白な以上、バンブーならすぐ許してくれる。きっと今まで通りに接してくれるに違いない。
怪我はなかったっスかシチー、なんて言いながら、まるで気にせず心配してくれるんだろう。……何も反応がないのはそれはそれで気に入らないが、バンブーメモリーはそういうウマ娘だ。
そういうウマ娘だと、思っていた。
「……先輩?」
「わ、わわわ………」
少なくともシチーは、両手で口元を覆いへたり込むバンブーメモリーを見たことが無かった。 - 2122/11/03(木) 20:51:58
「ち、ちゅー……シチーと、ちゅーしちゃったっス……」
かわいい。シチーの素直な感想だった。
頬は赤く染まり、尻尾が床を左右に彷徨う。うわ言のようにシチーとちゅー、と呟く姿は、普段の風紀委員長のそれではない。
……呆気に取られている場合ではない。気を取り直して声を掛ける。
「先輩?」
肩が震える。
「し……しちぃ……」
小動物みたいだ。
目は潤み、体を縮こまらせたバンブー。
まずい。シチーは込み上げるものが理性を上回りそうになるのをどうにか抑える。
「せ、先輩、その、ごめんなさい。さっきのはその…事故、だから……」
「あ、アタシ……きききキスなんて……初めてだったっス…………」
「……え?」
「シチーは…は、初めてじゃ、ないんスか?そんなに落ち着いて…ほ、他のヒトとしたこと、あるんスか?こんな……きゅーってなって……ばくばくすること……アタシ以外と……じゃなくて…えっと……えっと……?」
「______________。」
(ああ、もう。らしくない。
貴女のそんな姿も。あたしのこんな行動も。)
「わ、シチー!?」
シチーはバンブーを抱き締めた。
優しく、決して逃さないように、バンブーを抱き締めた。 - 3122/11/03(木) 20:52:48
「大丈夫、大丈夫だよ?」
バンブーの背中を何度も擦る。いやらしくないように。安心を与えるように。自分の手の感触を刻み込むように。
「あたしも初めてだったし、それに…事故でしょ?ノーカンですよ、ノーカン。」
「え、の、ノーカン……そっか、そう、スね……ノーカン、ノーカンっスよね。」
言い聞かせるように何度も呟くバンブー。その間、シチーは落ち着かせるために背中を撫で続けた。
「……ど?落ち着いた?」
「ふぅ、う……あ、ありがとうっス。シチー……えっと、ビックリして、変なこと口走っちゃったかもっスけど……」
「えー?何だったっけ?」
「……そっスか、じゃ、アタシの気の所為かもしれないっス。……うっし、もう離しても大丈夫っスよ!」
「ふふ、良かった。じゃ……」
改めて抱き締める腕に力を入れる。
シチーは、バンブーの耳元で囁きかける。
「______ノーカンじゃないキス、する?」 - 4122/11/03(木) 21:08:25
以上になります。
照れバンブー先輩が書きたかった…。 - 5二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:15:25
すごくいい……
- 6二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:17:29
すごい好き…
語彙力が無くて上手く言葉で言い表せない - 7二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:18:49
おいおい唐突に尊いものを見せるなよ危うく意識が無くな
- 8二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:23:15
私は素晴らしいと思いますよ
- 9二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 21:26:12
困惑する先輩を優しく宥めて醜態をまなかったことにするシチー、素晴らしいですね
- 10122/11/03(木) 22:23:45
みなさん感想ありがとうございます…!
- 11二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 22:29:06
攻め攻めシチーさん美しいべ…
この関係で続編も読みたいべ… - 12二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 10:20:02
しゅき…