- 1二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 23:03:53
【同衾(どうきん)】
一つの夜具の中で共に寝ること。特に、男女が共に寝ること。
…ジョーダンからまた旅行へ行こうと誘われたときは、何か、きっかけのようなものがあった訳では無い筈だ。少なくとも、自分にとっては。
「なんかー、またペアの券みたいだし?ダチの誰か選ぶってのもさー…んで、あんたなら、ね?」
「また休養として、ということだな」
トゥインクル・シリーズ最初の3年間を終えた後、福引で偶然当てた温泉旅行にジョーダンと行ったことがある。その際も、今と同じようなことを彼女は口にしていた。
「そ。またあんた、スケジュールみっちり入れようとしてんでしょ?休めよ少しはさー…ま、あんたが、イヤじゃなければ、だけどさ」
「まさか。またお言葉に甘えて、ご一緒させてもらおうかな」
「…ん」 - 2二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 23:07:08
「メジロの人たちが使ってる保養所なんだけど、ペアのチケット貰ったんだー。良かったら、誰かと行っておいでよ」
パーマーがホヨージョ?のチケットをくれた。やっぱメジロ家パねぇ〜…ホテルみたいなものっしょ?
「あざー…てか、いーの?こんな立派そうなヤツもらっちゃって」
「私は何度か行ったことあるし、皆にはいつもお世話になってるしさ。まあ〜ペアってなるとジョーダンは友達多いから、ちょっと悩ましいかな?…親御さんか、ト、トレーナーさん誘ったり!?なーんて…」
パパかママと2人で…いやーちょっとな〜。…トレーナーは、前にも一緒に温泉行った…。うん、前も一緒に行ったんだし、トレーナーとだったら…。
「まあ、期限も特に無いしさ。好きな時に使ってよ」
「は〜い。マジありがとね、パーマー」
またトレーナーと旅行…って、別に変じゃない、よね?担当トレーナーなんだし、休みにいくだけ…なんだし。
「…なんて言って、誘うかな」 - 3二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 23:11:05
そうしてジョーダンからの提案があり、スケジュールを調整して2人で旅行する運びとなった。
当日、長い間バスに揺られ(流石メジロ家、専用のバスまで用意しているとは…)、ジョーダンと共に宿泊する建物に到着した。のは良かったが…
「まさかな…」
「…ね」
「ジョーダンは知ってた?」
「い、いや知らんくて…なんか、ゴメン」
案内された部屋は、一つだけだった。広々とした立派な部屋…2人で使うに足りる十分なサイズだろう。
…ご丁寧に(?)寝室にはこれまた2人がすっぽり収まるであろう、大きなダブルベッドが用意されていた。
「ま、まあ広い部屋だしね、2人で居ても窮屈なことは無いだろう。…寝る時はまた考えようか」
「う、うん…りょー」
…ジョーダンが戸惑っている。折角の旅行なのだから、ちゃんと休ませてあげなくては。 - 4二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 23:17:42
うわーーやべー。完全にやらかしたな?まさか部屋いっしょとか…トレーナー、めっちゃ気使ってくれてるし…
そういえばパーマー、トレーナーの名前出してたとき、ちょいジョーダンっぽく言ってたような…こういうことだったんかな…?
「大浴場が使える時間だな。…とりあえず、行こうか。お、浴衣もここに…」
「…あー、うん。行こ行こ〜」
…ま、来たからには楽しみますか〜。
…
お風呂も超デカくて、前に行った温泉旅館にも負けてねー。メジロ家すごくね?
「ん〜〜…気持ちーわ〜…」
なんだかんだ、最近もトレーニングちゃんとやってたし、疲れに効く…感じするわ〜。パーマーにちゃんとお礼しなきゃ。
…夜、どうしよう。トレーナーきっと、あたしにだけベッド使わせようとする、よね。
「…あたしは、いいんだけどな…」 - 5二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 23:24:51
到着して早々、慌ただしい場面もあったが、一旦入浴すると不思議なもので幾らか落ち着いてきた気がする。
休憩スペースで寛いでいると、ジョーダンも戻ってきた、よう、だ……?
「っす〜いい湯だったわ〜。トレーナーはどうだった?」
「…」
「?トレーナー、どしたん?」
「…あ、いや…こっちも良かったよ。ゆっくりできた」
…お風呂上がりの浴衣姿で、珍しく髪を下ろしたジョーダン。普段より少し大人びたような感じで、思わず、…見惚れてしまった。
「す、少し休んだら夕食にしようか。食堂で用意があるみたいだから」
「…はーい」
落ち着いたのも束の間、また心がざわついている。部屋の件がある所為か、空気に呑まれてしまっているような…しっかりしなければ。 - 6二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 23:31:49
「わー、うめーこれ。ヤバくない?」
「ああ、確かに美味しいな」
ご飯もうめー。来てよかったな〜ほんと…トレーナー、なんか目泳いでる感じもするケド…。
…
「星ちょーキレイじゃん!ね、すごくない?」
「これは、凄いな…」
「撮っとこ〜ほら、あんたも映りなって」
「ああ」
夜になって、外はキレイな星空だった。こんな映えるの、撮るしかないっしょ。
…トレーナー、表情かたくなーい?…それは、いつものことか。
…
「…少し、冷えてきたかもな」
「あー、そうね。…」
なんか、気まずい感じ…ケド、何となく、あたしから言った方がいいような気がした。
「…そろそろ、部屋もどろっか。夜、だしね」
「…ああ、そうしよう、か…」 - 7二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 23:40:39
部屋に戻った俺たちは、明日の準備や寝支度を黙々と進めていた。しかし…ベッドのことはしっかり伝えなければ。
「ベッドはジョーダンが使ってくれ」
「…トレーナーは?」
「こっちの、居間にソファあるし適当に使うよ」
予想外の部屋にはなってしまったが、何にせよジョーダンを下手な場所で寝かせるわけにはいかない。
「明日のチェックアウトは…そんなに急ぐ時間では無いけど、目覚ましは忘れずにな」
「…」
それじゃあ、おやすみ、と言おうとしたが…浴衣の袖をジョーダンに引っ張られた。
「…今日は、さ。あんたの旅行でもあるんだからさ…あんたもちゃんと休まねーと」
「…ジョーダン?」
「…いいじゃん、ベッド大きいんだしさ。2人で使っちゃえば、よくない?」
「ジョーダン、それは」
「あたしは大丈夫だし!…別に、変なこと、しないっしょ?」
「だけど、流石に…」
「…あんたがベッド、使わねーなら、あたしも使わねーから…」 - 8二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 23:47:19
あーあ、なんか…ワガママ言っちゃったなぁ。トレーナー、困ってた、よね…。こうやって、いっしょのベッド入ってんのにさ。
「…」
背中向けて、こっち、見てくれねーんだもん。怒ってんのかな…
「…起きてる?」
「…ああ」
「怒ってる?ワガママ言って…」
「いや…むしろ、気を遣ってくれて、ありがとう」
「…なら、こっち、向いてよ」
あんたに、あたしを見つけてくれた、いっしょに走ってくれたトレーナーに…そっぽを向かれてしまうのは、何でかわからないけど…イヤだった。
「…すまない、気を使わせてばかりで」
「あ…」
あたしのお願いに、応えてくれたトレーナー、こっち向いてくれたけど…やば、顔近いし、なんかハズいな…。 - 9二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 23:55:37
ジョーダンと一つの布団の中で、向き合っている。部屋の電気は落としたが、月明かりが僅かに互いの姿を照らしている。
…わかっている。こんなこと、トレーナーとウマ娘がこのような…だが、今はただ、湯上がりの時と同じく、目の前の彼女に見惚れてしまっていた…。
「あー…なんかホント、ゴメンね?こんなことにして…」
「いや…この辺りは、夜にかなり冷え込むみたいだ。温かくて、助かったよ」
「あ、そう…じゃあ、よかった、カナ?」
互いにぎこちない言葉が続く。身体は温かいのに、眠気が襲い来る様子もない。
ふと、左手に何かが当たった感触。ジョーダンの手に触れたようだ。
「あ…」
「ご、ごめん」
「う、ううん、へーき…」
向き合っているのに、互いに目が泳いでいる。目が合った瞬間、気恥ずかしくてまた目が泳ぐ。
少しの間、そんな時間が続いたが…再び、左手に伝わる感触。一瞬触れただけではない、今度は…ジョーダンに手を握られていた。
「…あの、さ、トレーナー」 - 10二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 00:02:17
「あたしさ、わかんなくて」
「わからない?」
「うん…あー、ゴメン。ちゃんと、うまく言えねーかも、なんだけどさ、その…」
「…大丈夫。ちゃんと聞くから。ゆっくり話して、大丈夫だ」
「…うん」
「…シチーと、ネイチャちゃんがさ?担当のトレーナーさんのこと、好きっぽいんだ」
「そうか…」
「あんまり、いいことじゃないんだっけ…?」
「…専属のトレーナーと、そのウマ娘が結ばれること自体は、よく聞く話ではあるよ」
「そっか…2人さ、トレーナーさんとお出かけのときにさ、嬉しそうなんだよね。ほんとに、好きなんだな〜って感じでさ」
「…そうか」
「うん、そう、それで、さ…」
「あたしは、あたしにとってトレーナーは、どう、なのかなって…」
「…」 - 11二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 00:10:33
「あんたは頭いーしさ。ケド、流行には遅れてるし、あたしとは色々とさ、合わなかったりする、じゃん?」
「そうだな」
「でも、さ…例えば、ガッコーの先生とか、教官サンみたいなモンかってーと…そういう感じでもなくってさ」
「…」
「いっしょに出かけたり、夏祭りも行ったよね。温泉だって…今日だってさ」
「…ああ」
「…こうやって、いっしょの布団に入って、話聞いてくれることだって。…あたし、嬉しいんだ。…すごく、幸せ、なんだよね」
「そう、か」
「…これがさ、シチーたちと、同じ気持ちなのかなって…トレーナーといるときの、あたしの気持ちは、何なのかなって…」
「…」
「トレーナーなら、わかる?…教えてくれる?」 - 12二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 00:28:45
「…ごめん、俺からは、すぐに答えられない」
「そ、そっか。ゴメンね?変なこと、聞いて」
「…ただ」
「?」
「…俺にとって君は、担当の子…教え子だ」
「…うん」
「…だけど、その一言だけの関係だとは、言いたくない、とも思ってる」
「!」
「こうして、一緒に寝るなんてさ…多分、学園からは怒られそうなんだけど、でも…嬉しい、とも思うよ。…この気持ちを、何て言えば良いのかはわからないけど…」
「…それってさ、あたしと、同じ?」
「…ああ、そうなのかも、な」
「…そっか…ふふっ、そっかぁ〜……」
「ジョーダン?」
「へへ…いーじゃん。わかんなくても…あんたとあたし、いっしょなら、さ…ふふっ…」
「…ああ、そうだな」
「ふふっ…いっしょ、か…」 - 13二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 00:47:19
……
「…そういえばさ、お風呂入った後、なんかボーッとしてなかった?もしかして、ベッドのこと、ずっと悩んでたり?」
「ああ、あのときは…それもあるんだけどさ、ジョーダンの浴衣姿が、すごく綺麗で見惚れていたんだ」
「き…!?は、はぁ?急になに言ってんの!?」
「今だって、とても綺麗で、素敵だと思うぞ」
「か、からかうなし!もーそんなん言うキャラじゃないっしょー?なんだよ、もー…」
「ごめんな、深夜だからテンション変になってるのかも」
「い、いいけどさ〜ハズいっての…嬉しい、けどさ」
…
「…」シュル…
「…ジョーダン?その、尻尾が、足に…」
「…なんだよー?ハズいの?さっきの、お返しだし」
「う…参ったな、これは…」
「手だって、繋いでるんだし…別にいいっしょ?」
「…ああ、そうだな」 - 14二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:00:19
「…トレーナー」
「なに?」
「…なんつーか、楽しいなって」
「…そうだな。俺もだ」
「えへへ…」
「…」
「こんなに、さ」
「ああ」
「いっしょのベッドで、顔も近いと、さ?」
「ああ」
「………キス、できちゃうね」
「…そうだな」
「…ダメって言われるかと思った」
「…もう、とっくにダメのラインは超えてるから、同じことだろうってな」
「…あははっ、なんか、バカじゃね?トレーナーも」
「君のトレーナーだから、な」
「もー、マジでバカじゃーん…」
「ああ…」
「…」
「…」
「………ん」 - 15二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:14:10
…翌朝。2人揃って、何だか寝不足気味だった。
「ねむ〜…」
「帰りのバスで、また長いこと揺られるだろう…そのときに寝ようか…」
「ん〜…あ、お風呂もう一回行こうかなー♪…お風呂も、いっしょに入るとかアリじゃね?なんて…」
「…」
「じ、ジョーダンだってトレーナー…」
「…今度は、混浴できる所なんかも、良いかもしれないな」
「……えっち」
…お互いに、かけがえのない絆を感じたひとときだった…。 - 16二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:17:09
いい物を見た…
- 17二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:18:29
もう感想言っていい?
最高なんすよね...心の中でもうスタンディングオベーションしてるよ ジョーダンのいじらしさがさぁ...ジョートレの穏やかに見守る感じがさぁ、いいんだよね... - 18二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:18:55
先生(トレーナー)と生徒(ウマ娘)という壁を僅かに破っていく流れが素晴らしかった
ずっとスレに張り付いてて良かったぜ - 19二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:19:05
終わり。こいつらうまぴょいは多分してない、はず。
最後のジョーダンに「えっち」と言わせるか「ヘンタイ」と言わせるかは非常に悩ましかったです
導入に困るとパマえもんのメジロ道具に頼ってしまって頭が下がりますね…トレウマ厨ですみません、失礼しやした - 20二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:20:14
このジョーダン漢字読めないシリーズほんとすき
- 21二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:27:01
- 22二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:28:18
素晴らしいSSをありがとう!
毎更新ごとにここすきポイントを挙げたかったがそれ以上にこの流れを止めてはいけないと感じさせる文章だった…
やっぱりジョーダンが上手く感情を表せないときに余裕を持つように、とトレーナーが宥める瞬間にしか得られない成分がある…そこまでトレーナー自身もかかり気味なのもいい…両者が互いを思いやっているからこそのちぐはぐかつ優しさに溢れる序盤の展開と心をさらけ出した後の歯車が噛み合ったような瞬間が心地よかった
- 23二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:30:06
ありがとう…
- 24二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:31:44
素晴らしいですね……
- 25二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:32:04
堅物真面目君とピュアギャルの恐る恐る触れに行くような距離の詰め方堪らねえ~
- 26二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:33:32
すこ
しぬ - 27二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 06:21:34
交互に視点が切り替わっていたのがベッドで向き合ってからは2人の会話オンリーになってるの拘り感じますね…
- 28二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 06:37:59
すごく…すごいです!
- 29二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 08:39:28
ジョーダンのイチャラブもっと増えて…
- 30二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 08:53:46
この人のジョーダン×トレーナーssは本当にこう……ちょうどいいんだよな
3年一緒にいて出来上がったであろう関係性、距離感、しっとり感諸々を「そうそうこういう感じなんだよなきっと」って思わせてくれるちょうどいいラインで出してくれる
いつまでも観ていたい - 31二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 10:00:15
想いを言い切らずとも伝わる関係性良すぎ〜
いつも良質なSSに感謝 - 32二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 10:22:21
心がみるみる活性化していっているのをひしひしと感じる…これが心の栄養というものか
ありがとう… - 33二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 11:09:41
はっきりと言葉にしない関係でも良い…ずっと続いてくれ…
- 34二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 13:01:00
- 35二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 15:49:56
ありがとう……ありがとう……
- 36二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 21:21:43
ここ偶にジョーダンめっちゃ好きな人出現するよな
もっと増えて? - 37二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 00:52:13
アプリ本編の2人はもっとカラッとしてるけどこういう光景もね、見たいっすね…