【ルウタSS】「私は、ルフィが好き…」

  • 1二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 21:49:18
  • 21◆0yDCPvKqi222/11/08(火) 21:52:49

    「ルフィの事が、好き……」

    ぽつり、呟いた。





    サウザンドサニー号の船内に作られた一室。かのエレジアでの事件を経て、新たに麦わらの一味に加入した二人目の音楽家 ゙歌姫゙ウタの専用室。

    歌やダンスのトレーニングだけでなく、海賊となっても配信は続けたいと希望した彼女の為に。船大工であるフランキーを筆頭として一味の皆で協力して作りあげたウタのための全てを揃えた部屋である。

    配信機材は勿論の事、防音完備、それでいて換気や室内環境にも余念はないまさに贅を凝らした部屋に、少しの戸惑いを見せながらも一味の新顔は大いに喜んだ。……特定誰かの特別扱いに対してはよくぶー垂れ、自分も同待遇を欲しがる我儘盛りの船長も。この時ばかりは進んで協力し、笑顔を見せる彼女を見てまた、微笑むだけだった。

    閑話休題。

  • 31◆0yDCPvKqi222/11/08(火) 21:58:01

    兎に角、自分のためだけに用意されたこの室内で。ウタは今日もまた一人呟く……否、叫ぶ。

    「ルフィが好き! 大好き! 愛してる! 世界中の誰よりも好き! 私のものにしたい! 誰にも渡したくない! 好き好き! 私の全てだもん! ルフィ大大大好き!」

    なんてことはない。毎日……とまではいかないまでも、定期的に彼女が行っている感情の発露。日々高まる気持ちの発散。゛ウタはルフィが好き゛、ただそれだけのことだった。彼女は齢2つ程下の麦わらの船長に恋をしている。


    ……始まりはいつだったのか、今では定かではない。今では遠く愛しい日々の中なのか、二人で誓いを立てたあの時なのか、自らが世界を巻き込んで逃げようとしたとき、それを止めてくれた時か。或いは、この部屋を与えられた時に、喜ぶ自分を優しい笑みで見つめていたことに気付いた時か。

    何れにせよ、その感情を自覚した時は大いに戸惑い、揺れ、そして歓んだ。12年の月日を孤独に過ごした自分が恋等出来る等と思ってもいなかった。その相手が幼き日に夢を誓った幼馴染だなんて、どれほど素敵なことだろう。
    勿論嬉しい事だけではない。想いが届かない切なさ。求めるものが手に入らないもどかしさ。片時で離れる時に胸をつく寂しさ。彼の笑みが自分以外に向けられる痛み。暗い感情だって幾つも抱いた。彼を想うあまり枕を濡らした事だってある。
    それでも、そんな痛みも含めて、ウタは間違いなく幸せだった。逃げなくてよかったと、今では心底から思えるほどに。そういったところも含めて、彼への恋情はまた大きくなっていった。

    が、しかし。恋という感情は思っていたより余程抑制が効かないものらしく。日に日に積もっていく彼への想いには酷く難儀している。

    例えば共に一流コックのごはんを食べている時、例えば隣に並んで鼻の長い狙撃手と一緒に釣りをしている時、例えば船首で昼寝をする彼を見つめる時、例えば夜就寝の為にそれぞれ別の部屋へ入る時。
    傍にいたい。今すぐにでもルフィの胸へ飛びつきたい。その唇に触れたい。同じベッドのに入り、彼の腕の中で眠りにつきたい……そういった欲がウタの心を急かした。

    勿論実際にそんな行動を仕出かすわけにもいかず。万が一にでも間違いを犯さぬため、こうして誰にも聞かれぬ環境で彼への想いを吐露しているのだ。

  • 4二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 22:00:03

    ❤❤🍲❤❤

  • 51◆0yDCPvKqi222/11/08(火) 22:06:14

    「……ふぅ……スッキリした……! ほんとにここまで私に言わせるなんて罪な幼馴染なんだから! よしみんなのところに」

    誰にも聞かれるわけにはいかない。気づかれるわけにはいかない。我が麦わらの一味の船長は誰よりも自由を愛し、束縛を嫌う。そんな相手を自分だけのものにしたいなどと。

    今では親しくなった一味のクルーは、皆大なり小なりルフィに救われた経緯があるという。彼を海賊王にすると誓い、また彼が海賊王になると信じて疑っていない。そして自由を愛する彼を、皆好ましく思っている事は、加入してまだ日の浅いウタにもよくわかった。

    それは勿論自分も同じ。ルフィは必ず海賊王になって、新時代を作ってくれる。信頼どころではない確信だった。そんな彼の近くで、自分もまた歌でその新時代を彩るのが今の夢だ。そんな彼の夢を、自分の欲望で邪魔するわけにはいかない。

    それに自分は過ちを止めてもらって上にこの一味に入れてもらった恩義がある。それどころか自分の我儘の為にこんな立派な部屋まで貰ってしまった。その恩を仇で返すような真似をしたくない。



    ……そう、誰にも聞かれるわけにはいかない。一味のメンバーは勿論―――

    「だからあの……もう、晩飯がよ……できてんだけど……」

    勢い込んで入ろうとしたのか。ドアノブを掴んだ体半分だけ部屋に入り込んだ状態で石化したように固まった、なんとも言えない顔を真っ赤にしながら何とか言葉を紡いでいる。姉弟のような親友のような関係を持つ、世界で一番大切な幼馴染。

    目下ウタが恋い慕う、麦わらの一味船長。モンキー・D・ルフィ当人だけには。

  • 6二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 22:10:30

    ヒューヒュー

  • 7二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 22:10:32

    💞💖💞

  • 8二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 22:10:46

    🎀!!!

  • 91◆0yDCPvKqi222/11/08(火) 22:14:31

    「……へ?」

    仮に第三者がこの場にいれば耐えきれないような沈黙に支配された部屋の中。一瞬のような、永遠のような。ともすればまるで止まったようであった時を動かしたのは、随分と間の抜けた声だった。声を出した当人は状況が理解できていませんと書かれているような顔で、ルフィを見つめたまま固まってしまっている。

    あまりに予想外な展開に思考は完全に停止し、゛顔を赤らめているルフィなんてレアなもの見れたな、可愛い゛なんて処理を捨てた脳はのんきなことを考えていた。

    「い、いや……おせーから……よ、様子を……そのよ……」

    間の抜けた声だろうとなんだろうと、一先ず破られた沈黙にやれ続けと。赤い顔のまま、思考定まらぬまま、なんとかルフィは言葉を続ける。彼は彼で頭の中が真っ白になってはいたが、とりあえずは自分が今ここにいる説明はしなければならない。
    少なくとも悪気があったわけではないことは弁明しなければ。彼なりに今がとても不味い状況なのは本能でなんとなく理解できた。このままでは何がどうなろうと最終的に自分に被害が及ぶと背筋をよぎった悪寒が、彼の背を押す。

    「おれ腹減ったから、いい加減我慢の限界で……そ、それに飯食うなら、ウタとみんなと……く、食いてぇって……そんで呼びに来たんだけどあの、えっと……ウタ?」

    ぽつぽつと言い訳を述べるルフィを他所に、ウタの思考が少しずつクリアになっていく。落ち着き始めた思考が真っ先に処理を求めたのは言うまでもなく、今何が起こっているか。

  • 10二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 22:19:39

    もう勝ちでしょこれ

  • 111◆0yDCPvKqi222/11/08(火) 22:20:09

    自分は何をしていた? ルフィへの想いを叫んでいた。

    今目の前にいるのは誰? ルフィだ。

    なんでルフィは変な体勢で固まっているの? さっきの叫びを聞かれたから。

    叫んでいたのはなに? 私のルフィへの想い。

    ルフィが聞いたのは? 私の叫び。

    つまり私のルフィへの想いを聞いたのは―――



    「ウタ……?」

    「…………ゎ」

    「わ?」

    「わあぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

    船内に響く絶叫と共に、ウタは部屋を飛び出した。ドアをくぐる時にぶつかったルフィが派手に吹き飛んで壁に激突していたが気にする余裕もない。
    何事かと他の者達がダイニングから出てくるのも無視して、丁度補給の為に町のある島で船を停めていたことをこれ幸いと、一味の誰も止める暇もなく。そのまま船を跳び降りて一目散に逃げるように。町の方へと、走り去っていった。

    「…………」

    壁に激突し床に転がったまま、相も変わらず真っ赤な顔で固まっている最愛の幼馴染を置いて……。

  • 121◆0yDCPvKqi222/11/08(火) 22:22:37

    すいません、本日の投下ここまでです。また書き溜めて明日投下しにきます、多分2,3日で終わる量かと。

    インスピレーション元と書いてますが冒頭の台詞はほぼそのままお借りしています、この場ですいませんが感謝と謝罪を

    では本日はおやすみなさい

  • 13二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 23:16:16

    釜を煮込んで、君を待つ!!!!

  • 14二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 00:31:19

    保守

  • 15二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 00:34:18

    私こういうの好き!

  • 16二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 03:24:29

    すごくいい。
    重厚な恋心描写が最高だ。

  • 17二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 06:47:46

    いいね

  • 181 ◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 09:07:53

    【幕間の恋愛劇】

    「うんめェ〜! 今日もうんめェなサンジ!」

    「わかったからちったぁ黙って食えこのクソゴム! 色々口から飛び散ってんだろうが!」

    今日もサンジの料理は絶品。ルフィもご機嫌にあれよこれよと手当たり次第に頬張っては、嬉しそうに何度も何度もサンジの手腕を褒める。
    サンジの方も、口では少し汚いルフィの食べ方を叱りつつも。表情からは満更でもないのが窺えて。本当にいいクルーと、船長の間柄なのが伝わる。なんだか私まで嬉しくなってしまう。

    当の私はと言えば。

    「ん?どうしたウタ、手止まってるぞ? 食わねェのか?」

    「ん、んーん。 サンジの料理はほんとに美味しいから、ゆっくり味わって食べようかなって」

    半分は本当。色んな料理人に出会ってきたわけではないけれど、サンジの腕前は一流だと言うことぐらいは私の舌でもわかる。時々作ってくれるホイップマシマシパンケーキなんてほっぺが落ちそうになるくらい。

    「ウタちゃーん! 俺はコックとしてこれ程幸せだと思ったことはねェ! おらルフィ、お前も少しはウタちゃんを見習ってテーブルマナーの一つでも身につけてみろっ」

    サンジが泣いて喜んでみせた後、当てつけるようにルフィを睨みつける。
    少し大袈裟なリアクションを取ることはあれど、時々ナミやロビン相手にしてるハートが乱舞してるような態度を、サンジは私には取らない。

    何故かはわからない。他の人が言ってたけど、彼はとても優しく気遣いが出来る人だそう。私にも彼のそうした面は時々わかるから、もしかしてそれも彼の気遣いなのかもしれない。そう言うところも好ましい。
    実際あの態度でこられても、二人のようにサラリと流せる自信はないし。

    「ふーん、そっか……ならいいや、にっしっし」

    彼の指摘もまるで聞こえなかったようにスルーしながら。それでもルフィは深く考える必要は無いと思ったのか、クルーが褒められた事を喜ぶように素直に笑った。

  • 191 ◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 09:15:17

    疑いのない可愛らしい笑顔に少し罪悪感が湧くが誤魔化し成功。他の皆も気にした風でもなくそれぞれの会話を続けている。
    自分の食事も程々に、次々と料理を食べ続けるルフィを横目に見続ける。……正確には、ルフィの口、もっと言ってしまえば唇の。

    大口開けて食事しているのに唇も何もあったものでもないかもしれないが、それでもどうしても気になってしまうのだ。

    柔らかいのだろうか。彼はリップクリーム等塗ったりしないから、少しカサついているかもしれない。私の指がそれに触れれば、どんな表情をするだろうか。笑って真似をしたりするのだろうか。

    ……キス、したら。どんな感じだろう。ルフィはどんな風に、どんな表情で、私にキスするのだろう。
    優しく?荒々しく?今食べられている料理のように、彼の舌で絡め取られて、私も食べられてしまうのだろうか。
    ……だとするならば、それはきっととても幸せな事なんだと思う。彼に食べられて、彼の栄養となって、彼の身体中を駆け巡り、その身を支えることが出来るなら、それだけで私と言う存在は報われる気さえする。

    「んー?ウタ?」

    「……ふふっ、ほらほっぺについてるよ」

    此方の視線に気付いたルフィを、頰についた飯粒を取ってあげる事で再度誤魔化す。やっぱり疑われる事なんてなくて、彼は一言お礼を言ってまた食事に集中する。

    ……くだらない妄想はあくまで妄想でしかない。だからあなたは、こんな気持ちに気付かなくていい。私の中にあるこんな欲望なんて、あなたは知らなくていい。
    あなたの頬についた欠片を口に含んで、飲み込む。それだけでも、私は幸せだから。
    だからどうか気付かないで。私の気持ちに。真っ直ぐに私を好きだと言ってくれる、あなたを裏切るこの感情に。

    けれど。

    ……ねぇ、ルフィ。叶わなくたっていいから。ただ願うだけだから。
    いつか、あなたとキスができたらなんて。そんな想いを抱くことだけは……許してね。

  • 20二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 09:46:35

    >>19

    頬についてたご飯粒、そのまま食べて恋心隠してるは無理なんじゃないすかね……

  • 21二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 10:37:37

    ルフィに一途に片想いするウタは健康に良い

  • 221 ◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 10:39:15

    改めておはようございます

    自分でスレ立てておいて投下は毎晩と日中のスレ維持を投げっぱなしになるのもアレなので、本編は兎も角朝にも何かしら投下しに来ようと思ってます。ではまた夜に

  • 23二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 10:46:39

    総合スレで発情コラサムネの指摘されていたのでここのパート化や新スレ立てる人は気をつけて貰えると助かります
    界隈が悪く言われたくないので…

  • 24二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 11:23:39

    >>22

    面目ねぇ…面目ねぇ!(ガツガツ

  • 25二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 18:21:26

    楽しみに待ってます

  • 26二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 18:36:08

    >>23

    総合スレなんて見てる人いるのか?

    あそこほぼ愚痴スレでしょ?

  • 27二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 19:25:46

    >>26

    無視していい無視していい

    別に発情コラでもないしなここ

  • 28二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 19:28:28

    >>19

    何気ない日常の中での「キスしてみたいな」という感情ひとつでここまで重厚に書けるのは素晴らしい……。

    とても尊いです、もっと読んでみたい……。

  • 291◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 21:08:54

    こんばんは。まず最初にすいません、書き溜めがそこまで作れませんでした。今日はいけるとこまで書きながら投下していきます。
    お風呂やご飯も並行しながらなので所々遅筆に拍車がかかりますが、お許しください。

    後短い予定と言ってましたが思ってたより長くなりそうです。お付き合い頂いてる方には申し訳ないですが、少しばかり気長にオチをお待ちください。最終迄のプロットは脳内にあがってますので、完結はちゃんとさせます。

    では次から投下していきます。

  • 301◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 21:16:54

    「……いや固まってる場合じゃねえ! お、おいウタが行っちまったぞ!?」

    嵐の後の静けさが船内を包む中、いち早く硬直を抜けたウソップが口火を切った。とは言え、他の者同様状況を理解できていないことに変わりはなく。ただ慌てたように目の前の現状の共有をするに留まっているが。

    それに釣られたように、一味の動揺を代弁するようにその場を跳ねながら騒ぎ出す。

    「ど、どうすんだ!? お、追いかけねえとウタがいっちゃうぞ! お、おれっ、おれ!」

    「落ち着いて、二人とも」

    あわあわと落ち着きなく手足をばたつかせていた二人を、ウタが走り去っていった方角に視線を置いたまま。静かにロビンが制した。

    「一先ず、ウタは私が追うわ」

    「アゥッ、そりゃいいがよロビン。 もうウタは見失っちまったぞ、どっちにいったかはわかるのか?」

    言うまでもなく走り去った彼女の姿は既に眼前にない。時刻も先ほど皆で食事をしようとしていた通り夕飯時。まばらな灯と小さな賑わいを残す街中へと吸い込まれていった彼女を一から探すのは、いくら小さな町とは言えそう簡単な事ではない。

    至極もっともな疑問を呈したフランキーに頷き、ゾロが前に出た。

    「俺が探してきてやる、見聞色で探しゃあちったァ早く見つかんだろ」

    「あんただけはいくなっ」

    無論、奇跡的な迷子の才の持ち主である彼の言い分が通る筈もなく。手すりに手をかける前にナミの鉄拳制裁によって止められた訳だが。しかし実際問題当てなく探すよりも、生物の存在を感じ取れる見聞色の覇気に依る方が遥かに効率的なことは事実。
    ゾロは兎も角として。より見聞色が得意なサンジ、まだ荒削りなもののそれ以上の才を持つウソップに任せる方がよいのでは。そう判断した一味の視線を受けて、ロビンは小さく微笑えみ、自らの目を指さした。

    「私の能力を忘れたかしら? さっきウタが走っていった時、咄嗟に彼女の背中に生やしておいたの」

  • 311◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 21:30:54

    どうやら皆が固まる中一人、冷静に彼女が持つ゛ハナハナの実の能力゛を駆使して、ウタの背中に眼を生やしていたようだ。これなら、生やした眼から伝わる視界情報を元に追いかけるだけでウタのもとへたどり着ける。的確な行動に誰もが小さく感嘆し、得心がいったようにジンベエが頷いた。 

    「それに走り去った時の様子からしてウタは酷く動揺してるようじゃった。 ここは下手に刺激してしまうよりも、ウタの気持ちに寄り添った対応をしてやれるロビン一人に任せるのが得策かもしれんの」

    「そう言って貰えると少し照れるわね? みんなは彼の方をお願い」

    口で言う程照れた様子もなく、また一つ小さく微笑んで。未だ姿を見せぬこの騒動の当事者であろうもう一人。かの船長の方の確認と対処を仲間に任せ、ロビンはウタを追って町の中へと入っていった。

    「……はぁー……そうね。 なにがあってこんなことになったのかをまずルフィに確認しなくちゃ。 とりあえずはサンジくんに任せましょ」

    「ヨホホホッ! 島の向こう岸まで届きそうな大絶叫でしたものね、私鼓膜破れちゃうかと思いましたっ。 あ、私破れる鼓膜も耳もないんですけどっ」

    そう、あれほどの絶叫と同時に走り去って……有体に言ってしまえば逃げて行ったのだ。ルフィとウタの間で相応の事件があったのは想像に難くない。そもそも夕飯の準備が終わっても専用の「ウタルーム」から出てこない彼女に業を煮やしたルフィが呼びに行ったのが事の発端なのだ。

    残された一味の見解は、十中八九゛ルフィが何事かをやらかした゛だった。お陰で料理はお預け、ウタも出て行ってしまった。にもかかわらず未だ部屋の方から出てこない彼に、気持ちが落ち着いた分多少の苛立ちも覚える。

    それに加えて。ロビンが出ていくより早く先に様子を見に……態度次第では蹴りの一つでも入れてやろうと部屋まで訪れていたサンジは。先ほどの件から変わらず床に転がったままのルフィを見て、一抹の呆れのを覚えていた。

    「……で、お前はなにそこで寝っ転がってんだクソゴム野郎」

    意識的に怒気を含めた彼の声に、固まったままだったルフィはスイッチを入れたロボットのようにぎこちなく反応し。また数秒固まった後、漸くのそりと立ち上がった。

  • 321◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 21:53:44

    「サンジ……?」

    「おうおう漸く起きやがったかバカ野郎。 てめェ一体なにやった……おいルフィ、なんだその顔」

    「えっ?」

    立ち上がったルフィの顔を見て、サンジの怒りと呆れが少しばかり萎んだ。代わりに抱いた感情は困惑。それもそうだろう、これまで供に旅をしてきた一味の船長は。今まで一度も見たことがないほど真っ赤な顔をしていたのだから。

    その上視線も安定せず、妙な汗を流しながら、これまた彼らしくもない困惑と動揺を足して割らないような表情を浮かべていて。気付けば怒っていた筈のサンジも、逆にルフィを心配するような表情になってしまっていた。
    本当にただ事ではないことが起こっている。今は怒りを発散している場合ではないと、サンジは静かに問いかけた。

    「おいルフィ、なにがあった」

    「えっと……あ、あのよウタは……」

    「さっきの叫びの後そのまま船を出て町に行っちまった。 止める暇もなかったよ」

    視線を泳がせたまま質問には答えず。ウタを気にしたような素振りを見せるルフィにサンジは事実だけを述べる。すると驚いた表情を見せたルフィは、慌ててその場を動こうとする。

    あまりに余裕なく取り乱した彼に更に事態の深刻性を疑ったサンジは。焦れる気持ちを抑えてルフィの肩を掴み、追いかけようとする彼をこの場に留まらせる。

    「出て行っちまったのか!? 追いかけねェと!」

    「落ち着けバカっ、俺たちがそれを黙って放置してると思うか? 今ウタちゃんの方にはロビンちゃんが行ってくれてる。 兎に角てめェは一旦止まれこのバカゴム」

    必死に手を抜けようとするルフィを抑えつけながら説明すれば、一旦は安心できたのか。ルフィは肩で息をしながらも、身体の動きを止めた。両の手を意味なく開いたり閉じたりと、動揺は一切変わらずの様子ではあるが。

  • 331◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 22:12:26

    「っ……そ、そっか。 ロビンには礼を言わないとだ、な」

    「そりゃ二人が戻ってきてからでいい、とりあえずお前はまず落ち着け。 んで、何があったか俺に話せ」

    さりげなく肩を叩いて、浮足立つルフィの心を落ち着けるように。静かに言い含めるような声で語りかけながら、事の真相を促す。

    事態の解決はなんにせよ事情を知らなければ始まらない。蹴り飛ばして強引に吐かせたい気持ちを我慢しながら、サンジはルフィの方から話始めるのをジっと待ち続ける。

    相も変わらず顔が赤いままのルフィは、暫しうめくような声で言い淀んでいたが。此方を気遣う素振りを見せながらも、逃げることは許さないと言わんばかりのサンジの鋭い視線に。観念したように漏らした。








    「……ウタが、好きだって……」

  • 341◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 22:26:21

    「はっ?」

    重い空気が流れる船内に間抜けな声が響いた。

    言われた言葉の意味が分からないと素っ頓狂な顔でこちらを見るサンジに、いっぱいいっぱいになったルフィは。ただでさえ赤かった顔を更に真っ赤にしながら、大声で喚く。

    「だからよ! ウタがおれのこと好きだって言ってたんだよ! あいしてるとかわたしのすべてとか! だいだいだいっ……好き、とか、よ……これでいいだろ! おれだってまだ色々頭ん中めちゃくちゃなんだよ!」

    鼻息荒くまくしたて、これ以上はなしだと言いたげに睨みつけるルフィをしり目に、サンジの頭の中は絶賛パニック状態となっていた。

    ルフィがウタを呼びに行ったと思ったら、叫び声をあげてウタが船を跳び出していき、原因であろうルフィを詰めていたら、好きとか嫌いとかの話をされている。いや好きとか大好きとかの話をされている。ただでさえ女好きであり、色恋沙汰には敏感なサンジの事。ルフィの口から語られた言葉の衝撃は、想像を絶していた。

    それを表すように。俯いてしまったサンジは肩を小さく震わせながら、同じく震える声を何とか絞り出した。

    「……つまり……なんだ……お前は……ウ、ウタちゃんに……こ、告白されたっ……てのか……?」

    「えっ!? あれ告白だったのか!?」

    「俺に聞いてんじゃねえクソゴムゥッ!!!」

    ついに堪忍袋の緒が切れたのか、サンジの蹴りがさく裂した。

  • 351◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 22:44:40

    「……いつまでたっても出てこないと思ったら、何やってんのよあんたたち……」

    話が纏まるのを待っていたものの、いい加減に焦れったくなったのか、様子を見に来たナミの呆れた声が響いた。蹴り飛ばされたルフィは先ほど同様また床を転がり、対するサンジは怒り心頭と言わんばかりの形相。

    このままでは一向に話が進まない。ため息一つ吐いて、ナミは二人の間に入る。

    「はいサンジくんどうどう。怒りは多分ごもっともなんでしょうけど、今は一旦落ち着いてちょうだい話が進まないから。 ほらルフィも起きなさい。ウタのこと、このまま放置したいわけじゃないんでしょ?」

    「ナミさん……」

    「お、おう……」

    事情はまだ知らないなりに二人を窘める言葉に。一応は矛を収める場を見つけたのか。サンジは振り上げた足を下し、ルフィも再度立ち上がった。未だ自身の中の動揺が大きいのか、蹴られたことに怒る様子もない。
    サンジはサンジの方で怒気は収めたものの、今度はブツブツと小声で何事かを呟いている始末。

    深刻か否かは兎も角、面倒な事態になっていることは確かだと理解して。彼女はもう一度大きなため息を吐いた。

    「んじゃ、話してみなさい。 何があったか、具体的にね」



    そうして甲板へと連れ出され、改めて問いただされ、時折相槌を打たれながら。漸くルフィは一味に事の次第を話した。……彼が言葉を切るとともに。盛大に吐き出されたため息は、いったい誰のものだったか。

  • 361◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 23:11:27

    「んじゃつまり、だ。 お前が扉を開けたら、ウタが盛大にお前への好意をぶちまけていたと」

    「お、おう……そう、なのか……」

    「っで、聞かれると思ってなかったウタはパニックになって船を跳び出していったって流れか……」

    「お、おう……そう、なのか……?」

    疲れたように頭を抑えながら聞くウソップとフランキーに。未だ整理し切れていないのか、当の本人は眉間にしわを寄せながら歯切れの悪い返事を返す。

    話ながらどんどん顔を赤らめていく船長と言うレアなものが見れはしたが、それ一つでこの疲労感を拭えるほどの褒美にはあまりに程遠い。

    「あーよかったぁ……おれルフィとウタがなにかとんでもない喧嘩でもしたのかと思ったぞ……」

    安堵したようにチョッパーが漏らす。一体全体どんな深刻な事態になっているのかと思えばなんてことはない。ウタのルフィへの気持ちが当人にバレた、たったそれだけのこと。

    ルフィの話からして相当な想いであることは窺い知れたが、単純に一言で言ってしまえば。ウタがルフィに恋をしているというだけである。聞かれてしまった当人は、動揺と恥ずかしさから逃げ出してしまったようだが。

    最悪徹夜も覚悟せねばなるまい。そう思っていた彼らとしては、わかってしまえばなんともしょうもないことであった。

  • 371◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 23:23:07

    「はぁ~一体何が起こったのかと思ったらそんなこと……ルフィ~?」

    「は、はい……」

    ゛私苛立ってます゛、そう言いたげなナミの声に思わずルフィは畏まった返事で答える。下手な事を言えばぼこぼこにされる。今これ以上ナミの精神を刺激してはいけないと、本能が告げていた。

    「さっさとウタを連れ戻してきなさい!」

    怒りの色を隠しもせずに、ウタの元へと向かうよう告げる。こっちは言わば痴話喧嘩未満の何かに巻き込まれただけで夕飯をお預けになっているのである。赤裸々な言葉の数々をその対象に聞かれたことは同情するが、いい加減にお腹も空いた。下手に長引けば就寝時間も遅れる。こんな事態は当人同士でさっさと決着をつければいい。

    他の者達も。今回ばかりはナミを宥める立場になく、ほぼ同様の心情であった。現状彼らは喧嘩したわけでも正式に恋仲になったわけでもないが、゛痴話げ喧嘩は犬も食わない゛。

    ルフィの鈍さには少しばかり辟易とするが。二人の間柄を思えば、事はそう悪いことにはならないだろう。そういう確信もあった。

    「お、おうっ! わりィお前ら! 俺いってくる!」

    皆の呆れたような表情やナミの怒った態度に急かされてではあるが。未だ町から戻らぬ彼女を一刻も早く追いかけたかったのも本心。漸く楔が取れたと勢い込んで駆けだしたルフィを———————





    「おい、待てルフィ」

    ゾロの静かな声が止めた。

  • 381◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 23:52:17

    「ちょっとゾロ、あんたなにを」

    静かにルフィを見つめるゾロの、有無を言わせぬ静かな迫力にナミも何も言えなくなる。それを感じ取ったのかルフィも足を止め、ゾロへ振り返った。しかしその表情は焦りを色濃く写し、会話もそこそこに跳び出したい気持ちを隠す気もない。

    「なんだゾロ、わりィけどおれ早くウタを迎えにいきてェんだよっ」

    「迎えに行って……で、てめェウタになんて言うつもりだ?」

    ……静寂が、サウザンドサニー号を支配した。誰かはハッとした。誰かは言ってる言葉の意味がわからず首を傾げた。彼は……何も言えなかった。誰も何も言わないのを確認するように一呼吸置いて、ゾロは言葉を続けた。

    「迎えに行って、あいつの告白にイエスと答えてやるならそれで別に構わねェ。 晴れて恋人同士にでもなりゃいい。 だがお前、前に結婚はしねェと言ってたんじゃなかったか」

    「それはっ……だけどゾロ今はね」

    「あいつの気持ちに真正面からノーを突き付けてやるのも好きにすりゃいい。 それで関係がどうなろうが当人同士の問題だからな。 だが、聞かなかったことにはもう出来ねェだろ」

    間に入ろうとするナミを手で制して、尚もゾロは言葉の刃をルフィへと振るう。
    ゛何もなかったではもう済まされない゛。聞いてしまった彼女の心に。兎に角彼女を連れ戻したい気持ちと、大きくなってしまった事態のせいにしてルフィの中で有耶無耶にしていた現実が。逃がしはしないと言いたげに、ゾロの口から告げられる。

    「さっきお前自身の口から聞いた言葉が、あいつがお前に抱いてる気持ちだ。 わかんだろ、このままなぁなぁで済まそうとしたってあいつは帰ってこねぇぞ。」

    わかっている。いや、まだすべてを理解しきれた訳ではなかったが。それでも。彼女が自分に向けてくれている気持ちの一端を、自分は聞いた。それに、自分に聞かれたと理解した時の彼女は。ただ恥ずかしいという表情だけではなかった。

    「半端な行動をした結果、誰が一番傷つくことになるか。 お前ももうわかってんだろ」

    聞かなかった振りは恐らく出来ない。すっとぼけた所でルフィの真っ赤な顔はもうウタに見られてしまっている。今更どう取り繕ったところで、何も知らなかった関係のままではいられないだろう。
    だってそうだ。理解した時の彼女の表情が自分に伝えていたのは羞恥と……後悔と、恐れだったのだから。

  • 391◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 23:55:48

    「どうすんだルフィ、なんの結論もねェまま向かうっつうなら……俺はそれでもかまわねェけどよ」

    物言わぬままのルフィに、静かにゾロが告げる。言葉とは裏腹に、逃げることは許さないというように。





    「…………俺は……」

    ──────……。

  • 401◆0yDCPvKqi222/11/09(水) 23:58:18

    遅くなってしまいましたが、長々とお付き合いありがとうございました、第二幕ルフィパート終了です。第四幕で終了予定です。

    ルウタSSなのにルウタのいちゃいちゃまでが遠いですが、見限らず見守っていただければ幸いです。

    では今夜は、おやすみなさい

  • 41二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 00:04:25

    4幕まであるの?!ヤッちゃあああ!

  • 42二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 00:14:57

    これは一味No.2

  • 43二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 02:21:33

    丁寧だ……とても丁寧で……素晴らしい作品れすね……
    えっ まだおかわりもあるんれすか!?

  • 44二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 04:07:05

    スレ主の文体めちゃくちゃ好きだわ

  • 451◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 08:34:32

    【幕間の恋愛劇】

    1日の終わり。寝ずの船番に見張りを任せ、男は男部屋へと。女は女部屋へと。就寝するべく寝室へ向かう時間。……1日の中で、一番、寂しい時間。

    「んじゃおやすみーウタ! ナミ! ロビン!」

    「うん……おやすみルフィ……」

    実際に眠りにつく時間そのものはみんなバラバラみたいだけど。一応は、この瞬間を持って一味の団欒は解散となってる。

    寝室には向かわずに別の場所へ行く者もいるが、ルフィは特に理由がない限りは素直に寝室へと入っていく。私も。美容のためにと、一味の中でも寝る時間が早いナミとロビンと同じ時間に寝るよう勧められ、それに倣っている。

    だから、この瞬間から朝目覚めるまでは。ルフィと会話が出来なくなる……ルフィの隣にいることが出来なくなる。身体のためにも大切なこの時間が私は……少しだけ、憎らしかった。

    「……ウター? 早く行くわよー?」

    部屋へと入っていくルフィを名残惜しく見続ける私に疑問を持ったのか、ナミが呼びかけてくる。あまりルフィの方を見つめ続けて気付かれても不味いので、素直に頷いて部屋に入った。

    ……ナミもロビンも、とてもいい人。

    ロビンは大人びていて穏やかで、どんな話も急かさず遮らず、笑顔で聞いてくれる。
    博識で落ち着いていて、それでいてとても強い。こんな女性になれたらなと、密かに憧れているのは本人には内緒。

    ナミは一味のみんなに時に横暴だったり、お金にがめつい所もあるけれど、とても優しい。
    一味に入った私の、エレジアでの事情を聞いた時は、泣きながら私を抱きしめてくれた。見た目の愛らしさのわりに快活でカッコいいところもあって。年下だけど、まるでお姉ちゃんのような人だと思う。

    この二人と一緒の部屋で眠ることに不満なんてあるわけもない。まだ一味に入って日は浅いけれど、私は二人も大好き。

  • 46二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 08:37:59

    スレ主に“”と""を預ける
    立派に引用できるようになったら返しに来い

  • 471◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 08:48:26

    ……けれど。想いを自覚したあの日から。傍に彼が……ルフィがいない布団の中は、どうしようもなく寂しかった。時に、暖かな毛布の中で尚寒さを覚える程に。

    (明日はどんな話をしようかな……)

    その寂しさを紛らわせるように、ルフィとの明日を考える。どんな話をしよう、どんな勝負を、どんな事を二人でしよう、と。

    けれど、結局の所意味はない。ほんとはどんな話だって、どんな勝負だって、どんなことだって構わない。私はただ……。

    (ルフィが一緒にいてくれたら、私はただそれだけで幸せなのに……)

    堪えきれず涙が溢れ落ちた。先に寝ている二人に気付かれないよう、漏れそうになる嗚咽を……彼への気持ちを、必死に抑える。
    やっぱり、彼のいないこの布団の中は、シングルベッドにも関わらず。とても広くて、寂しかった。

    ……ルフィ。あなたの腕の中で。あなたの胸の上で。眠ることが出来たなら、それはどれほど温かな空間だろう。あなたに抱きしめられて、私はあなたの身体に身を預けて。
    穏やかな会話を交わしながら、包まれるように私は眠る……そんな、ありもしない空想。

    それはきっと叶わないから。私は今日も願いを抱いて眠りにつく。
    どうか夢の中でだけでも、あなたがくれる温もりの中で眠れますように…。

  • 481◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 08:51:35

    おはようございます、また夜に



    >>46

    ニュアンスで使用していたのでとても感謝することを教える

  • 49二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 09:29:09

    切なさ、寂しさ、恋しさがすごくよく伝わってくる……
    なんてすばらしい恋愛話なんだろう。巡り合えたことに感謝したい。
    続きを楽しみにしています。

  • 50二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 10:50:44

    まさかこんな切ない描写が出るとは・・・

  • 51二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 18:24:28

    読みやすくて心情やキャラの行動も分かりやすい文体ですごい
    悪いことにはならないと思うけどルフィはどう答えるのか…
    続き楽しみにしてます!

  • 521◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 21:02:58

    こんばんは、昨日より悪化していますが書き溜めが全く出来ていません。申し訳ないです。

    ちょっと書く方に集中して、一定量書き溜めて22時より投下開始していきます。

    投下は次から、よろしくお願いいたします。

  • 53二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 21:37:02

    鐘を鳴らして!君を待つ!!!

  • 541◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 22:03:02

    「…………」

    昼間には様々な商店が立ち並ぶメインストリート。その一角である酒屋の裏手。狭い路地を抜けた先にある、僅かな街灯が照らす空に酒樽の傍らで。ウタは独り、膝を抱えて俯いていた。両の膝の中でわずかに開かれた瞳から涙が零れては、太腿を伝い、丈の小さい純白のワンピースを滲ませた。

    それに呼応するように心を伝うは。果てしない後悔と、大いなる恐怖。

    「……ばれちゃった……」

    聞かれてしまった。気付かれてしまった。……知られてしまった。誰よりも知られたくなかった、他でもない想い寄せる彼自身に。あの時の彼の反応の所以を正確に推し量れる訳ではなくとも。あの真っ赤な顔からして、自身が曝け出していた言葉の意味はきっと伝わってしまっただろう。
    それを目の当たりにして。聞かれていないかもしれない、気付かれなかったかもしれない等と。楽観的になれるほど、ウタの心はお気楽でも、強くもなかった。

    ルフィは今どうしているだろうと。澱んだ心のまま考えても意味のない事に思考を割く。あの時見えたのは困惑のように思えたが、今は何を考えているだろうか。
    怒っているだろうか。ガッカリしているだろうか。あんな事件を起こして尚、あの頃と変わりない幼馴染の親友だと信じていた筈の自身が、こんな欲に塗れた想いを抱いていたことに。……嫌いに、なってしまっただろうか。

    ふと顔を少し上げ、左手のアームカバーの先に描かれた、下手くそなマークを見つめる……ウタの瞳から、また涙が溢れた。

    「っ……ごめんな、さい……っ」

    裏切ってしまった。彼の自分への信頼も。二人で誓いあった遠き日の約束も。綺麗だった筈の思い出も。すべて自分が、身勝手な感情で汚してしまった、……あの時にかけてくれた言葉も。

    ───ごめんね、ルフィ。 アンタの船に乗せてもらうことになっちゃって

    ───んあー?気にすんなっ! 海賊は歌うんだから音楽は何人いても問題ねェよ。 それによ、やっぱ嬉しいんだおれ。 なんたってよ

    ───……なんたって?

    ───大事な友達が生きてたんだ! そいつが船に乗ってくれるっつうんなら、おれはなんも文句なんてねェ!

  • 551◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 22:14:28

    ルフィと父親の海賊団との間で交わされたやり取りを経て。自身が麦わらの一味の仲間になることになった時の、彼の笑顔を思い出す。

    ウタの頬を伝う止めどない涙が、更に勢いを増す。あの時飛び上がりそうなほどに嬉しかった言葉が、今は痛くて仕方がなかった。

    綺麗なままでいたかった。他愛ないやり取りをしていたあの頃のように、何も知らない純粋な心で彼と一緒にいられたら。きっと幸せだっただろう。こんな苦しみも、抱えずに済んだだろう。

    ……こんな場所で。独り泣かなくても、済んだだろう。

    「ルフィ……ルフィ……っ」

    切ないだけならよかった。寂しいだけならよかった。痛むだけならよかった。それでも、確かに彼を想う日々は幸せだったのだ。止めどない欲に心を衝かれながらでも、ただ彼の傍に在れたら、どれほど辛くたって自分は満足だった。……満足な筈だった。

    それがどうだ。堪えきれずに漏らした声一つで、全てが台無しになってしまった。今は切なさより、寂しさより、痛みより、彼に拒絶される恐怖が遥かに勝る。

    ───俺はけっこんもれんあいもしねェっ!ウタがそんな風に思ってたなんてよ

    ───ずっとずっと友達だと思ってたのにな……

    想像するだけで、血の気が引いて息が止まりそうになる。実際に面と向かって言われてしまえば、きっとこの心は耐えられないだろう。自身の弱さが最悪の結果を招いてしまったのだ。自業自得。こんな感情を抱いたことがそもそもの間違い。……それでも。

  • 561◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 22:26:41

    「ごめんなさいっ……ごめんなさい……っ」

    この想いを抱いたことだけは、後悔したくなかった。浅ましくとも、自分はまだこんなにもルフィを想っていた。想うからこそ……怖いのだ。

    故にこそ、ウタは後悔する。この気持ちを声にしてしまったことを。我慢していればよかった。抑えつけてしまえばよかった。それがどれほど身を焦がす衝動であろうと、知られるくらいならばそのままこの想いに焼かれて、果ててしまえばよかったのだ。……そうやって自分を責めて、意味のない事だと思い知る。

    堪えられるなら声になどしなかった。想いの果てに終わりを受け入れられるなら、きっと恋なんてしなかった。抑えられるなら……きっと最初から、彼の傍になどいなかった。
    ならばどうすればよかったのかと、心の中でウタは自問する。終わりのない負の迷路、たどり着ける答えはただ一つ。けれどやはり、そのゴールにだけは辿り着きたくなかった……“最初から恋をしなければよかった”というゴールにだけは。

    本当はわかっているのだ。どれだけ自問自答したところで意味はない、全てはもう後の祭りだと。自身に待ち受ける未来に、もう希望などありはしないのだと。それから逃げるように、存在しない救いに縋って、逃げているだけなのだと。

    まるで死刑を待つ虜囚のような心境の中、ウタの心を閉じ込める迷路に終わりは来ない。刑の執行を受けるぐらいならばいっそ……今はもう、消え去ってしまいたかった。……しかし、わかっているのだ。

    「こんなところにいたのね、探したわよウタ」

    ……彼が信頼する者たちは。自分の仲間は。独り消え去ろうとする者を捨て置くような人たち等ではないってことも。

  • 571◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 22:43:49

    「……ロビン……」

    ウタを見つけた時、ロビンの心に去来したのは安堵。そして先の一件を遥かにしのぐ困惑だった。何があったかは未だわからないが、漸く自身の眼で捉えた彼女は膝を抱えて独り、泣いていた。

    ただの喧嘩程度では恐らくここまでにはならない。そして、あの船長が本気で目の前の幼馴染を傷つけるとも到底思えない。恐らくは、単純な言葉のやり取りなどでは、彼女の涙を止めることは敵わないだろう。

    「ふふ、可愛い顔が台無しよ?」

    大丈夫。我らが船長であるあの男は、傷つき泣いている人を放っておけるような男ではない。それが大切な幼馴染の女の子であれば尚更。
    ならば、今はただ彼女の傍にいればいい。もう独りにしないように、彼女が孤独な世界に押しつぶされてしまわぬように。少しでも、二人が対面した時に、障害なくぶつかり合えるように。
    そう判断したからこそ、ロビンは努めて明るく、笑みを以ってウタの隣にしゃがみ込んだ。

    「……なにしにきたの……」

    対して、ウタの心には諦観が訪れていた。見つかってしまったならもう終わり。このまま船へ連れ戻されて、哀れな死刑囚は刑の執行を受けるだけ。逃げることも、消えることも許されない。そう思ってかけた問いに、ロビンから返された言葉は意外なものであった。

    「なにをしにきたのかは実は私もよくわかってないの」

    少し驚いた表情で、ウタはロビンを見つめる。片目に彼女を捉えながら、ロビンは浮かべていた笑みに、少しの苦みを混ぜ込んだ。実際ただ仲間が一人出て行ったから追いかけてきたのであって、現状の自分にはそれ以上の意味も理由もなかった。

    「……きいたんじゃないの?」

    「ええ、ルフィが出てくる前にあなたを追いかけたから。 一人町に走ってく仲間を、放っておくわけにはいかないでしょう?」

  • 581◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 23:01:43

    「……ごめんなさい……」

    「謝らなくていいわ、仲間だもの」

    至極当然の事のようにそう零し。ロビンはそれ以上は何も言わなかった。先ほどまで独りで享受していた静寂が、またこの場を包みこむ。……ややあって、ウタの方が切り出した。

    「……聞かないの?」

    「聞いてもいいの?」

    問いに対して同様に。しかし声からも表情からも優しさと共に返された問いに、何も言えなくなった。ロビンは本当に何も知らないまま、ただ自分を心配してここに来てくれたのだと。小さな喜びまで感じてしまう。
    本当に彼はとてもいい仲間を見つけたんだと、改めて感じる。この優しさに応えないのであれば、それはきっと裏切り者ですらない、人の形をした酷く醜いナニカだろうと、ウタにはそう思えた。

    今誤魔化したところで、最終的にはきっと全員に知られる。暫し逡巡した後、ウタは答えた。

    「ルフィを……裏切っちゃった……」

    ぽつりと震えた声で溢された言葉は。そのまま刃となって、声にしたウタ自身を切り刻んでいるようで。眉間に皺が寄りそうになるのを抑えながら、ロビンは小さな相槌と共に、続きを促す。

    「私、最低なんだ。 アイツは私を信じてくれてたのに、それを裏切っちゃった。 いっぱいっぱい助けてくれたのに。友達だって笑ってくれたのにっ、船においてくれたのに……それ全部、私の勝手で壊しちゃった……ロビン……っ」

    堪えきれず嗚咽がウタの口から洩れた。言葉を重ねるたび、声は涙に覆われ、震え、擦れていった。
    今にも消え入りそうな声で、それでもそれははかの魔王を呼び出す楽譜を歌った時のような、彼女の心の慟哭だった。

    「わたしっ……ぜんぶ、台無しにしちゃったぁっ……」

  • 591◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 23:23:29

    「……そう。 話してくれてありがとう。 辛かったわね」

    ……なんて痛ましい罪の告白だろう。まるで世界に向けて絶望を叫んでいるようだと、嗚咽をこらえながら涙を溢すウタを抱きしめながらロビンは思った。

    具体的な事がわかったわけではなかったが。それでも、ウタがただ自分を責め続けている事だけは理解できた。自分は彼女の為に何が出来るだろう、何をしてやれるだろう。

    ウタを救えるのはただ一人、あの男だけだと理解しながら。それでも、せめて今は自らの刃で自らを傷つけ続ける彼女の望みを、聞いてやりたかった。

    「……ねぇウタ、あなたが沢山の事を後悔しているのはわかったわ。 怖がっていることもね。 ……聞いてもいいかしら。 あなたはどうしたい?」

    「……もう……逃げたいっ……」

    促されるままに。ウタは禁句を告げる。自身の罪から、世界の全てから逃げようとしたあの時。自分を止めて助けてくれた皆の一人に。笑顔で自分を迎え入れてくれたかけがえのない仲間の一人に。もう一度、逃げたいと。

    本当に、終わってしまったんだと悟る。何がどうなろうと、この言葉を言ってしまった自分には。あの時の皆の想いと努力を裏切る言葉を言ってしまった自分には。もうあの船での居場所は残されていない。



    ───心が死んでいく。ああ、せめて最後には。彼の笑った顔が見られたらよかったのに……。





    ……堕ちていくウタを拾い上げたのは。まるで何でもない事を告げるかのような、カラリとした声だった。

    「なら 逃げてしまいましょうか」

  • 601◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 23:43:40

    「…………えっ?」

    何を言われたのか理解できず、茫然とした表情で自身を見るウタに。ロビンはまた一つ、笑みを溢した。

    「ふふっ、否定されると思ったかしら? 残念ながら私は、逃げることはそう悪いことだと思わないから」

    少しばかり目に光を取り戻しながらも、代わりに動揺を含んだ瞳で何かを探るようにこちらを窺うウタに微笑みながら、ロビンは今では懐かしき過去を思い出す。

    人生において、ロビンは何度も逃げてきた。生きるために、明日を掴むために。逃げて逃げて逃げて、そうして彼らと出会った。

    「私もね、みんなから逃げたことがあるの。嫌われるのが怖くて、捨てられるのが恐ろしくて」

    冒険の日々を積み重ねる中で。まるで雪のように、彼らへの想いは降り積もっていった。この一味の為なら死さえ怖くないと……己の名を忌み嫌われる方がよほど恐ろしいと。そうして彼らからさえ逃げ、裏切った。

    「冷たい言葉を浴びせて、手ひどく裏切って、みんなを切り捨てた。 “悪魔の子”なんて手配書に書かれてるけど、あの時の私は間違いなく悪魔だったと思うわ」

    自身にとっては苦く、そしてそれ以上に眩い輝きに包まれたあの日を思って。虚空をみつめながらそう話した後、冗談めかしてそう溢して、静かに聞いていたウタへウィンクする。

    決して自身の私利私欲の為だけではなかったが。これまでの旅を否定するかのように裏切り、逃げた自分を……それでも、彼らは自分を連れ戻してくれた。もう一度海へと、連れ出してくれた。

    「その結果は今私がここにいる通りだけれど。 それでも、私はあの時の自分の行動全てを否定するつもりもない。 だからあなたも、逃げたければ逃げたっていいと、私は思うの」

  • 611◆0yDCPvKqi222/11/10(木) 23:58:22

    エゴだとしても、皆を政府の手から護りたかった。皆に知られる前に消え去りたかった。皆に正面から自身を切り捨てられるのがなにより恐かった。それは全て、皆への想い故だと。そう思うから。

    今は彼らに何の遠慮も、見栄も必要ない。だからこそ、あの時の行動は全て皆が好きだからこそなんだと。そう思えるのだ。

    必死に自身の言葉をかみ砕いて、理解しようとしているのだろう。涙も引っ込めて難しい顔で俯くウタの頭を、優しく撫でてやった。

    「……いいのかな、にげても……」

    「ええ……けれど、忘れないでね」

    暖かなてのひらに、甘えるように俯いたままそう弱音を溢したウタに。ロビンは変わらず肯定を示しながらも、優しさの中に鋭さを持った声へと変えた。

    「逃げるのは勿論あなたの自由。 それを否定する術を誰だって持ってはいないわ。 けれどきっと、彼はそれを許してはくれないわよ?」

    彼とは誰か、なんて言うまでもなく。お互いにそれを理解していた。麦わらの一味の船長は、勝手に離れようとする仲間をそのまま捨ておいたりはしない。どんな事情があろうと……そこにどんな感情を抱いていようと。

    そもそもの状況を思い出したようにひきつった顔を浮かべたウタに、今までの優しさとはまた違う、少し得意げな表情も織り交ぜて、ロビンは微笑んだ。

    「ウタ……あなたが何を抱えているのか、私は全てを理解できたわけではないわ。 けれど、海賊は船長の許可なく一味を抜けることは出来ない……だからウタ」

    「ルフィを、信じてあげて」

  • 621◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 00:25:45

    言われた言葉に目を見開いたウタに、もう一度優しい微笑みを向けて。ロビンは静かに立ち上がった。

    「それじゃあ、私は先にサニーに戻っているわね。 待っているわ、あなたのこと」

    「えっ……ロビン……?」

    ……伝わってくる、彼女を追いかけながら、ロビンが残してきた痕跡が、存在を伝えてくれる。程なく、彼はきっとここに現れる。
    捨てられる子犬のような頼りなさを見せるウタに、後ろ髪引かれる思いもあるが。これ以上は自分では役不足だろう。後は二人の問題、ここから先は介入するだけ野暮と言うものだ。
    そう確信して、もう一度だけウタの頭を撫でて。ロビンは夜の闇へと溶けていった。……置いていかれたウタは、何も言えなかった。

    「……」

    本当に、逃げてもいいのだろうか。確かに彼は追ってくるだろう。そして振り下ろすだろう。この首を刈り取る慈悲無き刃を。途端に恐ろしさと、独りの寂しさがぶり返してくる。
    先ほど迄は静まっていた負の感情が、ウタの心を捉えんと足元から手を伸ばしてくる。暖かな優しさがこの場に残していったのは、どうしようもなく辛い現実だけ。

    「……ロビンが、言ったんだから……」

    何を言い繕っても、彼から向けられる拒絶が恐ろしいことに変わりはない。“逃げてもいい”、彼女はそう言った。それを免罪符に立ち上がったウタは。あてもなく歩みを進めようとして。



    立ち去ったロビンと入れ替わるように……その場に現れた気配に立ちすくんだ。

  • 631◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 00:31:54

    今ではすっかり似合うようになった麦わら帽子を目深に被った、麦わらの一味船長。懸賞金30億の首を持つ海の皇帝の一人。未来の海賊王。新時代を作る者。

    雁字搦めになった自分を救い出してくれた英雄。いつかともに夢を誓い合った大切な幼馴染。姉弟のような、親友のような……世界で一番、誰よりも大好きな人。

    「……ウタ……」










    今一番、誰よりも会いたくて……誰よりも会いたくなかった男が、そこにいた。

  • 64二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 00:32:31

    さすがルフィさんだぜ

  • 651◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 00:34:28

    大変遅くなりましたが、なんとか第二幕ウタパート、終了いたしました。(実際のところ最後は画像選びで20分以上無駄にしてました)
    こんな時間までお付き合いいただいた方には本当に申し訳ありません、ありがとうございます。

    明日以降無理に一幕一日で終わらす想定をするのはちょっと控えます、では本日はおやすみなさい

  • 66二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 00:37:28

    このレスは削除されています

  • 67二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 00:43:55

    ゆっくりとご自身のペースでご投稿ください。
    いくらでも待つ。

  • 68二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 00:55:38

    乙です。自身の経験をふまえて慰めつつルフィを信じるように促すロビンちゃんかっこいいね

  • 69二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 06:17:53

  • 701◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 08:28:52

    【幕間の恋愛劇】

    「───」

    甲板に簡易的に設置された特設ステージ。”歌姫ウタ"のために、私のためだけに作られたその舞台の上で。今日も私は歌い踊る。

    私は音楽家。音を奏で、皆を楽しませるのが一味としての役割。そこに、躊躇いも妥協も一切必要はない。

    「───」

    楽器演奏を担当してくれているブルックと目を合わせる。盛り上がりは最高潮、いよいよフィナーレだ。

    「──────っ……ありがとー!」

    最後にファルセットでのロングトーンで締めて、私の新曲の初披露は終了した。聴いていたみんなの反応を見るに手応えは上々で、自然と口角も上がる。

    「いやぁ今回の曲もすげェよかったなっ」

    「ウタの新曲を真っ先に聴けるなんて…おれ、おれー!」

    私が配信していた頃からファンだったらしいウソップとチョッパーは殊更喜んでくれていて、私まで嬉しくなってくる。間違いばかりだったけれど、全てが無駄なことじゃなかったんだと。

    「ヨホホホッ! ウタさんの作られた楽曲はどれも素晴らしいですがっ、今回は楽しいと言う気持ちが前面に出た歌でしたねぇ」

    流石は同じ音楽家と言うべきか、ブルックは鋭い。この新曲は、この一味に入ってからの私の楽しいや嬉しいの気持ちをこれでもかと詰め込んだ曲だった。

    謂わば、私から麦わらの一味のみんなへ向けて歌った曲。みんなにも気に入ってもらえたようで、一安心。

  • 711◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 08:36:21

    「ルフィはどうだった? 私の新曲」

    「おう、やっぱウタの歌声はすげェな! 今の曲もすっげェよかったぞっ」
     
    感想が一番気になる彼に尋ねてみれば、屈託ない笑顔と一緒にそう言ってくれて。私の心はもっと嬉しくなった。なんと言っても私の楽しい嬉しいの気持ちは、彼が一緒にいてくれる事が大きな割合を占めている。
    その彼が気に入ってくれるのなら、それは何物にも変え難い私へのご褒美だった。

    「そう? よかったーっ、えへへ」

    褒められた事で嬉しくなって、締まりのない笑顔を浮かべてしまった私につられたのか。ルフィはより満面の笑みを浮かべて、言葉をつづけた。

    「やっぱよ、おれウタの歌が一番好きだっ」

    ……喜びと、小さな痛みが私の胸を突いた。なんの事はない、彼はただ私の歌を好きだと言ってくれただけ。それ以上でも以下でもない。

    それでも。そんな言葉が。こんなにも簡単に、私の心を乱した。

    「……うん! ありがとうルフィ!」

    上手く笑えただろうか。不審に感じたりはしなかっただろうか。真っ直ぐ彼を見る事ができずに、私は変わらず場の空気を楽しんでいるフリをしながら、彼に背を向ける。

    ───ウタが好きだ。

    私が欲しくて欲しくて仕方なくて。そして同時に聞きたくない言葉。きっと言って欲しいと頼めば、ルフィは先ほどと変わらない笑顔で同じ言葉を言ってくれるんだろう……それはきっと、私が求めているものとは別のものとなってしまっているけれど。

    「ほらみんな! まだまだいけるよ私は! 何か歌って欲しいものはあるかな!」

    湧き上がった仄暗い感情を振り払うように、わたしは努めて明るくみんなへ声をかける。
    周りからは何でもいい、好きな歌を歌えと囃し立てられ。自然と頭に浮かんだ曲の名を言っていた。

  • 721◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 08:45:01

    「んーわかったっ、ブルック演奏よろしく! じゃあいくよ! ”私は最強“!」

    拍手に迎えられ、ブルックの演奏に合わせて声を上げる。今出せる最高のものを、今出せる精一杯の熱で。みんなに届けるべく歌を奏でる。咄嗟にこの曲を選んだ…選んでしまった理由から、必死に目を逸らして。

    「───」

    歌に合わせて踊りながら、ルフィの様子を盗み見る。先程のやり取りはどうやら彼も気にはしていないようで、相変わらず楽しそうに私の歌に耳を傾けてくれている。
    その様子に逸らしていた愛しさが、また私
    の心を包んでいく。



    ……ねぇルフィ、あなたは知ってるかな。他の誰でもない。あなたがくれる温もりが、私を最強にしてくれること。時折みせるあなたの弱さが、私を奮い立たせること。いつかの誓いが。そしてあなたとの今が。私にとっての最愛だってこと。

    届いて欲しい。そしてどうか届かないで欲しい。矛盾した感情が私の心を支配する。気付いて、気付かないで。そんな相反する願いを込めるように、私は声のボルテージをあげる……ねぇ、届いてる?他の全てがなくたって。あなたと一緒にいれさえすれば。私は最強……”アナタと、最強“。


    ……今日も、私は歌う。誰にも届かない、アナタへのラブソングを。

  • 731◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 08:47:09

    おはようございます、なんだかんだ書いてしまいました。

    発言が二転三転する半端者ですいません、また夜に

  • 74二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 10:05:29

    ウタの歌が一番好きって言ってくれるのは嬉しいけど、
    ウタが好きって言ってほしくてたまらなくてちくっとする、
    それをそっと心にしまって、届くことのないラブソングを歌う。

    あまりにも奥ゆかしくて、切ないですね。やっぱ好き……。

  • 75二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 10:27:39

    老婆心ながらスレ主に“”の使い方を教える
    “こんな”感じで使うものだ
    ウザかったら削除してくれ
    続きを楽しみにしてるぞ

  • 761◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 10:43:20

    >>75

    指摘は素直にありがたいです。調べて強調したい部分に使用してきたつもりでしたが、精進します。


    向きの間違いは単純にスマホのメモ帳ではどっちかよくわからない故のミスだと言うことを教える、恥ずかしい

  • 77二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 10:49:49

    クォーテーションマークの違いめちゃくちゃ分かりづらいですもんね
    “ 上向きの払いが始
    ” 下向きの払いが終
    ということなんだけどフォントの種類やサイズによっては全く区別がつかねェんだ!

  • 78二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 18:31:26

    へへへ

  • 791◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 21:07:59

    こんばんは。相も変わらず書き溜めが足りていませんが、本日は22時半程で切り上げさせていただこうと思っています。

    引用符に関しまして、自分の無学の致すところではありますが、使用記号がころころ変わるのもあれなので当スレでは最後までそのまま使用していこうと思います。完結後、別の場所に投稿する機会があれば他含めて加筆修正加える際に一緒に修正しようと思います。

    違和感を感じるかもしれませんがこの場はご容赦を、では次から投下していきます。

  • 801◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 21:15:24

    「っ……!」

    相対したくなかった人物の登場に、咄嗟に後退りしようとした脚が、砂利をこする音を響かせた。
    覚悟していなかった急展開に、ウタは恐慌状態に陥りそうになりながら、逃げ場を探すように右へ左へ必死に顔を振らす。

    「逃げんなよ、ウタ」

    静かな、しかし確かな迫力を持ったルフィの声に。怯えるように、ウタは大げさに反応して固まった。一歩、ルフィが近づいてくる。表情は、まだ見えない。
    必死に逃げ込んだこの裏口は、周り全てを家屋に囲まれていた。唯一の通路には、彼が立ちふさがっている。最初から行き場のない袋小路に入り込んでいたのだと。ウタは漸く気付いた。

    一歩、ルフィが近づいてくる。表情は、まだ見えない。

    「待って……待って、ルフィっ」

    悲痛な声をあげるウタに、ルフィが立ち止まる。表情は……まだ見えない。恐くて怖くて仕方がなかった。彼が何を考えているのかが読めない……嘘だ。本当は、わかっている。

    告げられてしまう。残酷な現実を、犯した罪の報いを。嫌われてしまう、拒絶されてしまう……否定、されてしまう。

    ───嫌だ。






    嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ───

  • 811◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 21:39:58

    死に際の決死の命乞いのように。癇癪を起す赤子のような感情が、ウタの心で暴れ出す。

    それだけは嫌だった。この気持ちを否定されてしまえば、今の自分にはもう何も残らない。赤髪海賊団との絆も、麦わらの一味との日々も、育ててくれたエレジアの王への恩も。

    全部全部、それはウタの中に確かにあったもので、間違いなく大事なものだ。けれど、手放したそれを。目をそらしたそれを。自分で気付いていなかったそれらすべてを。拾い上げてくれたのは、与えてくれたのは、ルフィだった。
    ルフィという存在が無ければ、今のウタも存在し得なかった。始まりはわからずとも、それが全てでなくとも。だからこそウタはルフィに恋をした。

    その想いが否定されてしまえば、その全ても共に否定されてしまう。それだけは、それだけはどうしても嫌だった。

    「ねぇ、ルフィ」

    ……静かに。しかし今までとは違う確かな意志を持った声で、ウタはルフィを呼ぶ。返事はなく、表情も未だ見えず。しかし沈黙を以って、ルフィは聞く姿勢を見せる。

    「わかった。 逃げないよ、だから先に……言わせてほしいことがあるの」

    やはり、返事はない。だが拒否するわけでもなく、警戒の態勢も取らないなら、ウタにとってはそれで充分だった。彼女は“ウタウタの実”の能力者。歌声一つで……全てを凌駕する。

    「───」

    声が響く。それは旋律となり、歌となり、聴くものを夢の世界へと誘わんと手を伸ばす。ウタが形作る、ウタのための世界へと。

    ルフィは……抵抗“しなかった。”

    声も出さぬまま、拒絶の姿勢も見せぬまま、ルフィはウタの望むとおりに。夢の中へと潜り込んでいく……。

  • 82二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 21:46:02

    ルフィに片想い拗らせたウタはどうしてこんなにも湿度が高くなるのか

  • 831◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 21:51:40

    「……ん、ウタの夢ん中か」

    意識的には瞬き程の時間を持って。ルフィは夢の中にいた。立っている場所も、景色も先ほどと寸分違わず。ただ、空だけが夜にもかかわらず、明るい青が広がっていた。

    溢した言葉とともに向けた視線の先には、変わらずウタがいる。

    「とりあえずさ、こんな場所で話すのもなんだし? せめて大通りの方に移動しようよ。 私たち以外、他には誰もいないからさ」

    夢の中にいるのは間違いではないが。その上で、自分は夢でも見ているのかと、ルフィは錯覚しそうになる。
    先ほどまでの様子が嘘のように。笑みさえ溢しながら、軽い口調でそうウタは告げた。自分の歩みを呼び止めて。逃げようとさえしていたのに、一体どんな心境の変化があったのか。

    声と同じ軽い足取りで、後ろ手を組んだウタはルフィの横を通り抜けて、表へと続く通路へと入っていってしまう。その腕に手を伸ばそうとして……ただ、拳を握りしめた。

    「……おう」

    今はまだ、その時ではない……予知にも似た確信だった。どこまでも伸びるこの手を伸ばすには。まだ自分は、知らない事ばかりだった。

    それを知るために、今は黙って、歌の背を追う。彼女の声を聞くために。彼女の言葉を聞くために。

    「……」

    通りへと出てからは、暫くお互い無言のまま。意味もなく町の中を歩いた。……お互いに、覚悟を決めるための時間だった。

  • 84二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 21:52:57

    「逃げないよ」

    ウタが言うとこれほど信用できない言葉はない……

  • 851◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 22:15:49

    「……あのさ、ルフィ」

    先に覚悟を決めたのは、ウタの方だった。先を歩いていたその身を翻し、ルフィへと向き直る……悲しいほどに、穏やかな笑みを携えて。

    「さっきのやつさ……聞いちゃってたんだよね?」

    「……ああ、聞いた」

    硬い声で示した肯定に、乾いた笑い声が響いた。まるで全てを諦めたような。見世物になることを決意した、悲壮な道化のような声だった。

    「そっかそっか聞いちゃったかー。 やっちゃったなぁ、たははっ」

    何がそんなに可笑しいのか、腹を押さえて必死に声を抑えながら。ウタは笑う。嗤う。……何故だか、そんな姿がルフィには。痛くて仕方がなかった。

    「ウタ」

    「あのさ、ルフィ。 さっきの私の言葉は……」

    体と心と魂の全てがそれを拒んでいる。恐ろしくて仕方がない。否定も、拒絶も、嫌悪も……他の誰でもない。ルフィに、それを向けられることが。
    ならば自らそれを否定しよう。拒絶しよう。嫌悪しよう。それがどれ程の痛みを伴うとしても。それがどれ程心を蝕んでも。例え自分と言う存在が壊れることになろうとも。
    それで彼の傍にいられるなら、自分は喜んで間抜けになろう。道化を演じてみせよう。笑って、嗤って、嗤い続けて。そうしてウタがルフィへと望んだのは。

    「忘れてよ」

    忘却と、消失だった。

  • 861◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 22:36:20

    「いやー、ちょっとした冗談と言うか。 悪ふざけのつもりだったんだよね。 そろそろ誰かが呼びに来るだろうと思ってさ。 まさか本人が来ると思ってなかったから流石に恥ずかしくなって船跳び出しちゃったけど。 あ、ルフィが好きなのはホントだよ。 幼馴染で大事な友達だもん。 けどまぁ実際男としてみてるかって言うとねぇ? アンタは弟みたいなもんだし。 アンタにとっても私はお姉ちゃんみたいなもんでしょ? 勝負だって私の184連勝……まぁ、あの時の件に関しては負けを認めてあげるから、連勝記録はストップしちゃったけどさ。 それにアンタが作る新時代に負けないようにこれからも沢山練習して、一杯歌っていかなきゃいけないし。 アンタだって海賊王を目指してるんだし、お互いそんな暇ないでしょ」

    無言で聞き続けるルフィに、只管言葉を並べ立てていく。麦わら帽子の先の表情は……まだ、見えないままだった。

    「これからも私たちは新時代の夢を誓い合う、大事な友達。 安心してよルフィ、アンタが作る新時代、ちゃんとお姉ちゃんが見届けてあげるから」

    ───痛い。痛い。痛い……けれど、耐えられる。ルフィの傍にいられることを思えば。こんなの傷のうちにも入らない。大丈夫、私は最強。……けれど、この想いを否定して、拒絶して、嫌悪して、そうして彼の隣を手に入れた私は……果たして私としての心を、残しているのだろうか。心が残っていないなら、それは……私と、呼べるのだろうか。

    「ほんとにごめんね? 無意味に大きくしちゃってさ。 あーロビンにも心配かけちゃったし、晩御飯も食べそこなっちゃった。 みんな怒ってるだろうなぁ。 まぁでももうわかったでしょ? ただの冗談だったんだから、あんたも気にせず忘れて」

    ───堕ちていく。壊れていく。無くなっていく。私の何かが崩れていく。それでも……それでも私は───

  • 871◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 22:39:17

    「もういいよ、ウタ」








    ───静かな言葉が、ウタを遮った。

  • 881◆0yDCPvKqi222/11/11(金) 22:41:04

    一応?キリがいい所迄来ましたので、本日はこれで終了となります。
    明日は休みな分朝起きれる気がしないので、これからの用事済ませた後に幕間を投下しにくるかもしれません。

    本日もお付き合いありがとうございました、おやすみなさい

  • 89二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 22:46:12

    ルフィをよぉ!!信じろよォ!!!ウタァ!!

  • 90二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 22:46:17

    お疲れ様です。
    あ~~~~~……脳がじっとり焼ける…………最高だ……
    夢の中ならなんでも思い通り………にならないんだよ人の心だけは

  • 911◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 02:44:46

    【傍観者たち】

    「……っで? 結局『行ってくる』の一言だけで行っちゃったけど。 いいの?」

    麦わら帽子の男が走り去り。これ以上気を揉んでも仕方がないとそれぞれ自由に暇をつぶし始めて少し。
    静寂に包まれた甲板の上で、ナミがぼやいた。ジト目を向ければ、当の一度呼び止めた本人であるゾロはどこ吹く風。

    「最後のあの表情からして、多分答え自体は見つけただろ。 別に俺自身がそれを聞きたかったわけじゃねえ」

    言ってる言葉の意味がよく飲み込めず、ナミは更に渋い顔をする。この男は、自分にはわからない世界を語ることがままある。それが無性に腹立たしかった。

    「男の話ってわけ?私にはわかんないわねそりゃ」

    嫌味っぽく言えば、露骨に面倒くさそうな顔をして頭をかく。あまり口上手ではないと自覚のあるゾロとしては、説明を求められても困るのだが。
    無視すれば後々またしょうもない仕返しを受けることになる。ため息一つついて。ナミの方を向いた。

    「どういう答えに辿り着いたにしろ、それをあいつが言うべき相手は最初から決まってんだろ。俺は勿論、一味のもんが聞くことじゃねえし、聞くべきでもねェ」

    そう、あの船長がどういう答えを見つけたとしても。それを聞くべき相手も、聞いていい相手もこの世界にただ一人しかいない。ゾロは別にその言葉を聞きたかった訳じゃない。ただ何も持たぬままに走って、ぶつかる必要のない壁にぶつかる事を避けたかっただけだ。

    「俺はただ、覚悟を問うただけだ。 同じ大事なものとしても……一味を守んのと、好きな奴を護んのとじゃ、全く別もんだろうが」

    もし彼女の気持ちを受けるなら。同じ一味のクルーとしても、“ウタとそれ以外”とでは、明確に違う区分となる。モンキー・D・ルフィという男は、元来そこに優劣をつける男ではない。しかし。

    「あいつの語った言葉が本当にウタの気持ちだってんなら、あいつはその違いを受け入れなきゃならねェ。その違いもわからないままに受けた所で……お互い、傷つくだけだろ」

    要は、勢い勇んで駆けだそうとした彼に。心の整理をつけ、決心する時間を与えただけ。ゾロなりに、幼馴染の関係である二人には思うところがあった。それが故に、らしくない手助けをしたに過ぎない。

    そう結論付ければ、きょとんとした顔のナミが此方を見ていて。柄にもない事を語ってしまったと、やはり後悔した。

  • 921◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 02:46:54

    「……まさかあんたが恋愛を語る日が来るとはね……しかもルフィの」


    「喧嘩売ってんのかてめェ!?」


    「おうおう、俺も同感だぜマリモくん。てめェからそんな話が聞けるとは、明日は剣でも降るか?」


    いつの間に聞いていたのか、たばこを燻らせながら揶揄うようなにやけ面で現れたサンジに、苦虫を噛み潰したような顔になる。


    「てめェらいつか泣かすっ!……、……二年前の時……俺たちは何もできなかった」


    ……不意に変わった話題に、二人してゾロを揶揄う態勢をとっていた、ナミとサンジの顔が曇る。

    多くを語らずともわかる。二年前、バラバラになってしまった自分たちが手をこまねいている間に、ルフィは兄を失っていた。

    あの時の無力感と、それが故に強さを求めた日々を。自分たちは決して忘れない。それは、今この場にいない一味全員の気持ちである。


    「船長が護りたいもん護れるようにしてやるのが、俺たちの仕事だろ」


    ゾロはそれ以上何も言わなかったし。サンジとナミも、何も聞かなかった。


    不安はなく。また懸念もなかった。今あの二人がどんな想いを抱いていようと。例えばそこにすれ違いがあったとしても。

    結末は見えている、どうせ都合のいいハッピーエンドだ。ならば自分たちは、被った迷惑の分だけ二人に説教をして。そして最後は……笑って、祝福してやればいい。


    だから今はただ、信じて待っていてやろう……。夜の闇から船へと歩んでくる、この騒動の被害者仲間に軽く手を振りながら。三者三様、そう思った。


  • 93二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 10:28:28

    ゾロは本当に格好いいな…

  • 94二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 10:31:17

    ゾロはえらいな……

  • 951◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 14:18:55

    おそようございます、本日は19時頃より投下していこうと思っております

    ではまた夜に

  • 96二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 17:52:25

    待機

  • 971◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 18:58:58

    こんばんは、今日で3幕終了です。では次から投下していきます

  • 981◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 19:01:56

    「……も、もういいって……? なにが」

    「もう充分だって言ったんだ」

    重ねて、ピシャリと閉じられる。……怒っている、ルフィが。未だ表情は見えないが。ウタの言葉を二度遮った声には、確かに怒気が込められていた。

    ウタの頭に疑問符が乱舞する。どうして、何故、ルフィだって進んで自分を嫌いになりたいわけではないだろう。それは彼の人柄を思えば考えずともわかる。

    だからこうしてなかったことにしているのに。そうすれば、また元の二人に戻れるのに。

    「なっなんで……」

    「うるせぇ!今のお前の言葉はもう聞きたくねェ!!」

    もう充分だった。これ以上自分で自分を傷つけ続ける彼女の言葉なんて聞きたくなかった。腸が煮えくり返って、頭がどうにかなりそうだった……目の前のズタズタの彼女を生み出した、自分自身への怒りで。

    友達だった。大事な幼馴染だった。夢を誓い合った、大切な存在だった。それはルフィの中のウタへの嘘偽りない感情だった。そこに悪意等欠片もある筈はなく……それでも、そんな純粋さこそが、ウタを傷つけていた。

    どれ程の感情を押し殺して、彼女は自分の隣にいてくれたのか。心が大事だと言った彼女が、どれ程それを苛みながら自分に微笑んでくれていたのか。自分には推し量ることも出来ない。気付くことも出来なかった……その結果が、これだ。愚かな自分を殴り倒してやりたいが、今はその時ではない。後悔も反省も、後でいくらでも出来る。

    今はただ……彼女の笑顔を取り戻したかった。もう決して見誤ったりしない。そう決意を込めて、ルフィは伏せていた顔を上げ、真っすぐにウタを見据えた。

  • 991◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 19:10:15

    「なんで……なんでっ」


    漸く見えた麦わら帽子の先には、明確な怒りを浮かべた、ルフィの眼光があった。思わずたじろいでしまったウタは、その心情を表すように一歩、二歩と後ずさる。どうしてそこまで激昂するのかが理解できない。それとも、もう本当に手遅れになってしまったのだろうか。


    「忘れねェ……おれは絶対、お前が言ったこと忘れたりしねェぞ! ウタッ!!!」


    死刑宣告にも等しい言葉が、ルフィから告げられる。自ら壊し続けていた心が更にひび割れる。忘れない、なかったことに出来ない。その先に待っているのは絶望しかない。それだけはどうか赦して欲しいと、尚も足掻くようにウタは反論しようとする。


    「は、はぁっ? 冗談だって言ってんじゃん、何そんな怒ってんのさ、別に喧嘩したわけじゃないし、あ、あんただってそうでしょ? 聞きたくないもなにも、さっき言ったのが全部で、私の本音だよ。 だ、だから忘れてって」









    「だったらお前はっ……なんでずっと泣いてんだ!!?」


    「っ!?」

  • 1001◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 19:18:30

    ルフィの叫びに初めて、ウタは自身の頬を何かが伝っていることに気付いた。……いつの間にやら、涙が流れ落ちていた。慌てて拭おうとして……その手にも滴が伝っていって……一度自覚すると。もう、溢れるものを止めることは出来なかった。


    「……っ」


    痛かった。辛かった。自分で自分を切り裂いて、自分で自分を撃ち抜いて、自分で自分を打ちのめして。心を粉々に砕いて。それでも、ルフィの傍にいたかった。彼の隣が欲しかった。だから嘘をついて、自分の想いに蓋をして、泣き叫ぶ声から耳を塞いで……そんなことをして、平気な訳がなかったのに。


    嗚咽が漏れる。視界が歪む。体が震える。救いを求めるように、両の手がルフィの方へと伸ばされそうになって……きつく拳を握り込んで、それを無理やり抑えた。


    「……嫌! 忘れてって言ってるでしょ!? 喧嘩がしたいってんならのってあげるっ───」


    一節。口ずさむとともに、音符の兵士が現れルフィを拘束しようとする。彼女が言う通り、自分たちは喧嘩をしているわけじゃない。この兵士をぶっ飛ばしたところで、ウタは帰ってこない。そんなこともうわかっていると、ルフィは抵抗しないまま、変わらずウタを見据え続ける。


    「な、なにその目っ、 抵抗しないの? 忘れないって言うんなら、このまま酷い目に合わせてあげることも出来るんだけど」


    「なげやりになったって、おれは忘れてやんねェしっ、喧嘩もしねェしっ、逃がしてもやんねェ! おれの事ぶっとばしてェってんなら、やれよ!」


    「っ……」


    ルフィの言葉に、あっさりと、音符の兵士が消える。当たり前だ、ルフィの事を傷つけたいわけでもなく、わざと嫌われたいわけでもない。感情の制御が出来ない、自分が何をやってるのか、何をしたいのか、何処へ行きたいのかがわからなくなってくる。


  • 101二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 19:25:03

    このレスは削除されています

  • 102♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 19:26:06

    どうしてこんなことになったと、ウタの心をまた後悔が苛む。いっそのこと本当に全てを諦めて、彼からの断罪を受け入れる方が楽なのではないかとすら思えた……それでも。


    「ぅっ……わ、わすれて……わすれてよぉ……っ」


    それでも……それでも、ルフィに嫌われる事が怖いのだ。ウタにとってそれは絶対の恐怖だった。平気な訳がなくとも、心がどれだけ痛んでも、例え想いの炎に焦がされることになろうとも。どうしても、どうしても。それだけは嫌だった。


    もう手遅れだとしても。涙に震えた声で何度も、ウタは忘れることを願い続ける。自分に残された道はこれしかないと言うように。過ちを認めながら、その赦しを乞うように。……けれど、本当は。


    「誰が忘れるか! 下手くそな笑顔でずっと言いたくもねェ事ごちゃごちゃ並べやがって! そうやって逃げて逃げて逃げ続けたって、なんにもならねェことっ、お前だって、ほんとはわかってんだろ!? おれは、辛そうになんかを抱えてるお前なんか、見たくねェ!」


    まるであの時の繰り返しのようだと思った。あの時は、何が彼女をそうさせたのか。彼女の心がどこにあるのか。それがわからなくて、ギリギリまで手をこまねいて、結果全てが手遅れになるところだった。誰が悪いのか、何を倒せばいいのか、それがわからなくて。自分は戸惑うばかりで。危うく彼女の手を離すところだった。


    ……今度は違う、誰が敵かも、誰が悪いのかも、誰が彼女をそうさせたかも、もうわかってる。だから、手を伸ばすことを躊躇する必要は、ない。


    「助けて欲しいならちゃんと助けてって言えよ! おれはお前の船長で……おれたちは、たった一人の幼馴染だろうが!? お前が泣いてておれが平気でいられると思ってんのか!? 頼むから……お前の、本心を言えよっ!!」






    ……誰にも見つからないよう奥深く隠された宝箱が。そっと、開く音がした……。

  • 103♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 19:31:58

    「っる……ふぃ……っ」

    許されないと思った。これ以上何も望んではいけないと思った。何も知らないまま離れ離れになって、12年の歳月を越えて。再び邂逅した彼は、立派な海賊になっていた。その彼に酷い言葉を浴びせて、大切なものを傷つけて。身勝手な自滅行為に巻き込んで。愛する父と海賊団にも背を向けて。挙句の果てには、世界全てを滅ぼそうとした。

    そんな自分を、それでも彼は止めてくれた。救ってくれた。護ってくれた。心と身体ごと拾い上げて、バラバラになったピースを繋いでくれた。もう一度、広い海へと連れ出してくれた……。もう充分だと思った。彼から貰うばかりで、何も返せていない自分が、これ以上の我儘を望んでいいはずがなかった。それはきっと、あまりに過ぎたる幸福だから。

    ……けれど、ずっと辛かった。ずっと怖かった。ずっと痛かった。いつか気づかれたどうしようって、傍にいられなくなってしまったらって。彼の迷惑だなんだと理由をつけては、ほんとはただ捨てられることを只管に恐れて。海賊王になるから、新時代を作るから、そうやって拒否される理由をみつけて。ただありのままの彼からの拒絶を恐れて。



    ───本当は……本当はね……? ずっと、ただ私の心を知って欲しかった。それを……肯定してほしかった。それでもいいって。あなたに恋していいんだって。傍にいていいんだって。ただ、赦されたかったの───






    「……隣にいさせてっ……嫌いに……ならないで……っ!」

  • 104♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 19:32:57

    ……涙に震えた声で、それでも叫ぶように。自らの方へと伸ばされた手と共に聞こえたウタの願いに、ルフィは漸く“届いた”と確信した。

    彼女の悲痛な声が自らの罪を突き刺す痛みに顔をしかめさせながら、それでも伸ばされた腕を掴んで。胸に引き寄せた彼女をいっぱいに抱きしめながら、叫んだ。








    「っ……当たり前だっ!!!」

  • 105♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 19:37:30

    ルフィの背中に回された手が、必死に彼の服を握りしめる。決して離さないと、離したくないと声にあげるようなその感触に。彼女を抱きしめる腕により力が篭る。自分も、決してもう手離さないと、身体に伝わる温度に、そう誓う。

    「ふっ……ごめんなさいっ……ぅぇ……ごめんなさいっ……っ」

    「謝んな、わりィのは全部おれだ……ごめんな、おれバカだからよ、お前が苦しいの、ずっと気づけなかった」

    泣きながら何度も謝罪を繰り返す腕の中のウタを宥めるように、優しく片手でその頭を撫でながら、ルフィは穏やかな声で語りかける。違うと首を左右に振る彼女の、あくまで自分が悪いという姿勢は少しばかり不満ではあるが。もう大丈夫だと、そう思えた。

    思えばすれ違ってばかりいた自分たちだが、漸く居場所を見つけられた気がする。漸く本当の彼女と出逢えた気がすると。そう思えば喜びが際限なく溢れ出して。泣きじゃくる彼女には見えないまま。ルフィは自覚もないまま、酷く優しい、大人びた笑みを浮かべた。

    「……なぁ、ウタ……」

    返事はない。彼女は長い苦しみの中やっと抑えることのなくなった想いの奔流を。泣き声と涙とともに解放するのに手いっぱいで、ルフィの声を聞く余裕もなかった。それでもかまわないと、頭を撫で続けながら。今は彼女の分まで代わりに自分がと、彼は笑った。

    「おれのこと……好きになってくれて、ありがとう」

    そのまま腕の中で、ウタが泣き疲れて眠りにつき。夢の世界から戻るまで。ルフィはただ彼女を抱きしめて、頭を撫で続けた……。

  • 106♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/12(土) 19:39:21

    これにて第三幕終了、とりあえずはここで以上です。

    最後となる第四幕に関しては一度で投下しきりたいので、また書き溜めてきます。

    お付き合いいただきありがとうございました。出来れば最後まで、よろしくお願いいたします。

  • 107二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 19:41:47

    よかった…
    今日RED観て焼けた脳が回復するのを感じる
    最後まで楽しみにしてます

  • 108二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 19:41:56

    勝ったな!
    風呂入ってくる

  • 109二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 19:52:54

    本日映画を観て焼かれた脳が回復したよ
    ありがとう

  • 110二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 19:54:40

    ギャグ調で始まったかと思ったらなんか映画と別の意味で脳が焼かれてるんだが…

  • 111二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 02:37:32

    保守

  • 1121◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 03:01:42

    保守ありがとうございます、遅くにこんばんわ。
    出来ればこの流れのまま最終迄行きたいと思っておりますので、幕間はなしと考えております。

    明日が最終、よろしくお願いいたします。ではおやすみなさい

  • 113二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 03:24:42

    深夜に見れてよかった
    ウヒョっちゃうから

  • 114二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 05:56:26

    最高の寝覚めになる……ありがとう……続きも楽しみにしているよ……

  • 115二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 11:41:43

    さてここまでは夢の中の世界だったけど現実世界のウタは一体何をやらかしているのか

  • 1161◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 12:45:52

    おそようございます、このまま1時より投下していきます。

    では最終幕、どうかよろしくお願いします。

  • 117二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 12:50:55

    待ってた。対戦よろしくお願いします。

  • 118♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 13:00:24

    「……んっ……」

    「おう、起きたかっ ウタ」

    目を覚ますと。見上げた空には、ルフィの顔があった。突然の景色に驚いてウタが頭を上げると、ヒョイと躱したルフィがからからと笑っている。

    何が起こっているのかと一瞬考えたが、覚め始めた頭に先ほどまでのやり取りが一気によみがえってくる。途轍もない恥ずかしさに襲われて。ウタは顔を真っ赤にしながら、ルフィから目をそらした。

    「お、おはようルフィ……え、えっと私、どれくらい、寝てた……?」

    「おうおはよっ 2時間ぐれェかな、よく寝てたぞっ」

    どうやらいつの間にか、町の中ではなく、海岸沿いの草場で寝ていたらしい。ルフィがここまで運んでくれたようだ。そうなるとまた申し訳なさが顔を出すが、ふと考えれば。近くに船が見当たらない。何故態々、別の海岸に移動したのか。

    「べ、別に運んでくれるなら、サニーちゃんまで戻ってくれててもよかったんだよ? 晩御飯も食べてないし、ルフィお腹空いてるでしょ……?」

    「んーまぁ、腹は減ったけどよ。 膝に乗っけてウタの寝顔を見てるのも楽しかったぞっ。 お前もずっと膝枕してくれてたんだろ? ありがとな、だからお返しだ」

    「ぁぅっ」

    『ウタワールド』の中でやり取りしてる間、ずっとルフィの頭を膝に乗せていたのも、しっかり見つかってしまったらしい。ルフィが起きると同時に自分は寝てしまっているのだから、バレるのも当然の事なのだが。ウタの顔が、また一段と赤に染められる。

  • 119二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 13:01:39

    交代で寝顔をひとりじめできる夢みたいな能力だね

  • 120♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 13:03:58

    「……それにまだ、ちゃんと言ってないからな。おれの答え」

    「あっ……」

    言われて、思い出す。そうだ、抱きしめてくれたものの、彼から聞かれてしまった言葉の返事は聞かされていなかった。つまり……断りの、返事を。

    ウタの心をまた雲が覆う。そうだ。彼は自分の願いに対して頷いてくれただけで、好意を抱いていることを受け入れてくれた訳ではない。否定されなかったことはとてもありがたいが、あくまで彼は海賊王を目指す自由な男。自分の傍に縛り付けて置くことなんて出来る筈もない。

    あれほど泣いたのに、また涙が零れ落ちそうになる。泣くな泣くなと必死に自分に言い聞かせる。彼はもう沢山のものをくれた。隣にいていいと、嫌ったりしないと、そう言ってくれた。それで充分。これ以上我儘を言ってしまえば、嫌われないにしろ呆れられてしまう。失恋だって初めてなんだ、それを楽しもう。

    そう覚悟を決めて、ウタはルフィに向き直る。きつく引き結んだ口と、涙を堪えた瞳が。あからさまに後ろ向きな決意をしているその表情に、ルフィは内心小さな呆れを覚えていた。

    「……わかった……いいよルフィ、言って」

    「お、おう……あのよ、ウタ。 俺あんま口うまくねェから、ちゃんと聞いててくれよ?」

    「うんっ大丈夫」

    頷くウタに。一度目を瞑り深呼吸をする。大丈夫、恥ずかしがることはない。今の本心を言えばいい。部屋で彼女の独白を聞いてしまったあの時から、ずっと考え続けて見つけた答えを。ルフィ口にした。

  • 121♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 13:09:50

    「ウタ……好きだ! 大好きだ! あいしてるぞ! 世界中のどんなやつよりもよ! 誰にも渡したくねェ! 好きだ! おれの全部かけてでも護る! 大! 大! 大! 好きだ! ……にっしっし!」

    目一杯ぶちまけた、嘘偽らざる感情。恋だの愛だの、自分には正直まだよくわからない。それでも好きの中に“違い”があることぐらいはわかった。

    彼女への好きは、他のどれとも違っていた。友達も仲間も大切で、護りたいが、それはお互いさまで、決して絶対的なものではなかった。その中で彼女だけは。他の誰でもない、自分の力で護りたいと、そう思ったのだ。彼女を護り、助け、救うのなら、それはいつだって自分でありたいと。

    そしてなにより、嬉しかったのだ。彼女が言ってくれた言葉が。例え全てを、自分が肯定することはできずとも。彼女の言葉一つ一つが、確かにこの胸に、温かいものをくれた。

    これが恋だと言うのなら。これを愛だと言うのなら。自分は喜んでこの感情を受け入れよう。ルフィは、ごく自然にそう思えた。

    「……っ」

    ……涙は、やはり堪えられなかった。自分は夢でも見ているのだろうか。『ウタワールド』の中で、ルフィを帰した後に一人都合のいい彼を作り出しているのではないか。いくつもの否定的な考えが浮かんでは、彼の笑顔と、自分の中に湧き上がる喜びが、それを打ち消していく。

    「まだ終わりじゃねェぞ、聞いとけよウタ」

    零れる涙を拭ってやりながら、ルフィが笑う。少し乱暴な指使いが痛くて。それが夢ではないのだと、ウタに教えてくれる。涙が、また溢れた。

  • 122♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 13:15:26

    「けっこんとかは……まだしねェ、できねェ。 お前が言ってくれた通り、おれは海賊王になるし、新時代を作らなきゃなんねェ。 これからまだまだ旅は続くし、大変な事だっていっぱいある。 無責任なことは、出来ねェ」

    泣きながら頷く。一味に加入していつだったか語ってくれた彼の夢の果て。そこに辿り着くためには、まだまだ数えきれない程の困難がきっと待ち受けている。

    「全部お前のもんにも、してやれねェ。おれは一味の船長で、仲間を護んなきゃなんねェし、友達がおれを必要としてくれてたら、やっぱり助けてェし、力もかしてやりてェ」

    泣きながら頷く。ルフィに多くの縁があることも聞いた。彼らはルフィのためならきっと力を貸してくれるだろうし、ルフィもまた、そんな彼らの為にもいくらでも身体を張るだろう。時には、ウタを置いて。

    「ずっとそばにいてやることは出来ねェかもしんねェ……それでもよ」

    「おれも、お前と一緒にいてーんだ。 離したくねェんだ。……だからよ、おれがお前の傍にいるだけじゃなくて、お前がおれの傍に来てくれよっ。お前がいてくれるんなら、おれはぜってェ嫌がったりしねェし、絶対にお前を護るからな! けっこんとか色々、海賊王になってからじゃねェとなんも言えねェけどよ……」

    「ウタっ! おれもお前が好きだ! こいびとってやつに、なってくれよ!」

    もう、限界だった。もしも強すぎる想いが人を殺すのならば、今ここで自分は死んでしまうのかもしれない。そう思えるほどに、内から溢れだす愛に溺れてしまいそうだった。先ほどあれだけ泣いたというのに。それすら大したものではないと、そう言えるほどの涙を零れさせながら。

    想いのままに、衝動のままに、ウタはルフィへと抱き着いた。

    「っ……好きっ! アンタが好きっ……、大好き……っ!」

  • 123♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 13:20:22

    否定されてばかりの人生だった。幼き心に抱いた父とその仲間への愛は、凄惨な事件の果てに。優しさと言う残酷さで否定された。憎しみと悲しみと共感の果てに作り出した仮面は、容赦のない真相に否定された。苦悩の果てに描いた新時代は、それを望んだ筈の無辜の民と、他ならぬ大切な者たちの手で否定された。

    ……その先に途轍もない幸福が待っていると、かつての自分は信じられるだろうか。否定され続けた人生の果てに、全てを覆す肯定が待っているなど。信じられるだろうか。その全てが複雑に混ざり合った事で、今があるんだと。ウタはかつての日々すら愛おしく感じた。

    後悔がないわけではない。忘れられるわけでもない。あの罪はこれからも一生背負い続ける自身の業。それでも、今確かに自分のこれまでの人生全てが報われたと。最愛に抱きしめられながら。ウタはただ、泣いた。泣いて泣いて、ただ想いを声へと変えた。

    「好きっ……好きっ……好きっ……ルフィ……好きぃ……っ!」



    ……まるで“歌声”のようだ。腕の中で何度も同じ言葉で愛を叫ぶ最愛を強く抱きしめながら。ルフィはふと、そう思った。

    「好きっ……好きっ……好きっ……好きっ……っ、……好き……っ!」

    ステージもなければ、伴奏もない。リズムに乗るわけでもなく、抑揚も緩急も、音程もあったものじゃない。情緒的でも、洒落が効いているわけでもないたった二文字の言葉。声は涙に震え、嗚咽で時折詰まってしまっている。彼女本来の人を魅了する歌からは程遠い。

    ……だが、ありったけの気持ちが込められたその二文字は。溢れる想いに震えたその声は。それだけで構成された真っすぐな音は確かに……世界でたった一人の為の歌われた、“愛の歌”だった。

    「……ししししっ、やっぱよ」

    世界でただ一人それを聴くことを許された男は。彼女の声の紡ぐ旋律に心地好く耳を傾け。愉快に、笑った。

    「おれはウタの歌が、いっちばん好きだっ」



    ──────……

  • 124♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 13:24:26

    ……──────



    「……好き……」

    サウザンドサニー号の船内に作られた一室。かのエレジアでの事件を経て、新たに麦わらの一味に加入した二人目の音楽家 ゙歌姫゙ウタの専用室。

    歌やダンスのトレーニングだけでなく、海賊となっても配信は続けたいと希望した彼女の為に。船大工であるフランキーを筆頭として一味の皆で協力して作りあげたウタのための全てを揃えた部屋である。

    配信機材は勿論の事、防音完備、それでいて換気や室内環境にも余念はないまさに贅を凝らした部屋に、少しの戸惑いを見せながらも一味の新顔は大いに喜んだ。……専用室と呼ぶには、最近は彼女の恋人が入りびたることも多分に増えてしまったが。



    閑話休題。



    兎に角、自分のためだけに用意されたこの室内で。ウタは今日もまた一人呟く……否、叫ぶ。

    「ルフィが好き! 大好き! 愛してる! 世界中の誰よりも好き! いつか結婚して! 旦那さまって呼べるの楽しみにしてる! 好き好き! 私のダーリン! ルフィ大大大好き!」

    なんてことはない。毎日……とまではいかないまでも、定期的に彼女が行っている感情の発露。日々高まる気持ちの発散。“ウタはルフィが好き”、ただそれだけのことだった。彼女は齢2つ程下の麦わらの船長に恋をしている。

    二人が正式に恋仲になったことは一味の記憶にも新しい。あの一件以降、二人は一緒にいる時間が更に増え、フランキーの協力の元『船長室』という体の二人の寝室で就寝も共にするようになった。自覚のあるなし関係なく、互いに遠慮なく恋人同士の関係を満喫するあまり、一味の者をうんざりさせることも珍しくない。

  • 125♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 13:28:24

    例えば共に一流コックのごはんを食べている時、例えば鼻の長い狙撃手と一緒に釣りをしている彼を後ろから抱きしめている時、例えば船首で昼寝をする彼に膝枕をしてあげている時、例えば夜就寝の為にベッドの中で手を繋ぐ時。

    愛を叫びたい。今すぐにでもルフィに甘えたい。その唇に触れたい。その先へと進みたい……そういった欲がウタの心を急かした。

    勿論実際にその行為をするにはまだ恥じらいもあり、所かまわずいちゃついてまた一味の揶揄いや文句を言われないためにも。節度ある付き合いをするため、こうして誰にも聞かれぬ環境で彼への想いを吐露しているのだ。

    「……ふぅ…………まだ言い足りないや。 ほんとにここまで私に言わせるなんてルフィはどれだけ私を惚れさせるつもりなの! 好きっ! でもとりあえずみんなのところに」

    出来れば誰にも聞かれたくない。彼に向ける言葉は彼以外に聞いてほしくはないし、彼自身にも頭からつま先まで思いの丈をぶちまけるのはやはり少し恥ずかしい気持ちがある。念願叶って恋人同士になれたことは間違いなく幸せだ。しかし本人に直接愛を囁くというのは、かつて自分が思っていたより遥かに勇気がいる事なのだと知った。

    それに彼に気持ちをぶつければ、ぶつけたぶんだけあの恋人は同じ気持ちを言葉にして返してくれる。時には倍返しで返ってくる。嬉しいのは勿論なのだが、時に嬉しすぎて気絶しそうになっているのも事実。

    だからこうして日々一人で想いを叫んで、彼への想いを再確認するとともに、彼に対する耐性を少しでも養っているのだ。謂わばダンスや歌と同じ、トレーニングの一環。



    ……そう、誰にも聞かれるわけにはいかない。一味のメンバーは勿論───

    「……晩飯、出来たぞ」

    目下ウタが恋い慕う、麦わらの一味船長。最愛の恋人。モンキー・D・ルフィ当人には。

  • 126♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 13:31:14

    「……へ?」

    仮に第三者がこの場にいれば笑ってしまうような沈黙に支配された部屋の中。一瞬のような、永遠のような。ともすればまるでケーキのような甘ったるい空気を破壊したのは、随分と間の抜けた声だった。声を出した当人は状況が理解できていませんと書かれているような顔で、ルフィを見つめたまま固まってしまっている。

    あまりに予想外な展開に思考は完全に停止し、(ああ私の恋人はやっぱりかっこいいな、なんでそんなに麦わら帽子が似合うの)なんて処理を捨てた脳はのんきなことを考えていた。

    「……ウタ」

    麦わら帽子を目深に被って。表情を見せないままウタを呼ぶ。少し低い声に、ウタの思考が少しずつクリアになっていく。落ち着き始めた思考が真っ先に処理を求めたのは言うまでもなく、今何が起こっているか。

    「……あのルフィ……? もしかして今の……」

    「ウタ」

    「ひゃ、ひゃいっ!」

    みるみる赤くなっていく可愛い自慢の恋人に。逃がしはしないと、麦わら帽子の船長は。満面の笑みで笑った。

    「おれも、好きだぞ! ししししっ!」





    ───おしまい───

  • 127二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 13:33:42

    とても…とても素晴らしい作品でした!!

  • 1281◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 13:34:36

    以上で終わりです。

    誤字脱字のみならず、所々名詞の入れ忘れや描写漏れが多発している稚拙な文を読んで下さり、ありがとうございました。
    話の流れの中で必要ないかと判断し描写を省いた部分もあり、そこに違和感を抱いてしまっている方もいらっしゃるかと思います。もっと読みやすい文章を目指し、これからも励んでまいります。

    改めて、お付き合いありがとうございました

  • 129二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 13:36:16

    すごい幸せでよかった…
    こっちも幸せな気分になりました

  • 130二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 13:40:35

    このレスは削除されています

  • 131二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 13:40:40

    >>128

    お疲れ様です。

    途中で何度も叫びたくなるのを堪えるのに必死でした。

    とても甘酸っぱく切ない重厚な純愛のお話をありがとう…!ハッピーエンドでよかった!

    最初と同じシチュエーションに戻ってくるけど好き合ってることでちゃんとそばに居られるのよかったねぇ。このあと気絶したのかな。

    でも麦わらいい加減ノック覚えろ!

  • 132二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 13:42:37

    ‥‥新時代だぁ、

  • 133二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 13:47:16

    すばらしいお話でした。そしてお疲れ様です。

    ルフィの言葉で次第に冷たくなっていったウタの心が温かみを帯びていくようで…良かったです。ウタの好意の叫びがルフィにバレてから最後に2人が結ばれるまでの描写もとても良かったです。心温まるお話、ありがとうございました。


    完結

  • 134二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 14:52:46

    良かった! ありがとう!!!

  • 135二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 15:03:56

    良かった!!!

  • 136二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 15:04:29

    やはり純愛は世界を救う
    良いSSでした! ありがとうございました!

  • 137二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 16:46:28

    純愛だ。
    純愛こそが全てを凌駕する!!!
    お疲れさまでした。

  • 138♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 17:02:18

    【おまけの後日談】

    「……あったかいね……」

    「おう、あったけェな」

    二人っきりの部屋の中で。二人っきりのベッドの上で。柔らかな毛布の下で。私は微睡む、彼の腕に包まれて。
    幸せというものに温度があるとするなら。きっとそれはこれくらいの熱なのだろうと、口にするには照れ臭い言葉まで浮かんで……やっぱり言葉にはず、胸の中にとどめた。

    彼と結ばれて暫く、毎日が幸せ。朝は彼とともに目を覚まして。お互いに笑顔でおはようを伝えあって。彼の隣で最高のご飯を食べて。

    彼と共に船の上で児戯のようなやり取りに遊び、時にちょっとしたことで勝負し、時に穏やかな日光と彼の胸に微睡み、時には仲間の言葉や教えに学び、時にはちょっと事件に巻き込まれて。そうして一日を終えて。最後はまた、彼の腕の中で眠りにつく。

    “私”という存在を彩る日常の全てに、今は常に彼の姿が隣にある。身に余る幸福に何度も頬を濡らしては、そのたびに彼が不器用な手つきでそれを慰めてくれた。

    「ねぇルフィ……?」

    「んー?」

    「大好きだよ……」

    今でもちょっとだけ照れてしまう想いを込めた言葉に、彼は嬉しそうに笑って。抱きしめる腕の力を少しだけ強めて、同じ言葉を返してくれる。

    一日一日全てが愛しい。目に見える全てのものが輝いて見えて、目が眩みそうになることもあるほどに。内から湧き上がる衝動に堪えきれず。彼の胸に一つ、唇を落とした。

    少しくすぐったそうに身を捩る彼にまた愛しさが増して。この距離さえ惜しいともう一つ分、彼に身体を密着させた。

    ……溶けてしまいそうだと、思った。彼への想いに、彼から受ける愛に。彼もそうだったらいいなと、少しだけ仄暗い欲望が顔を出す。二人して溶けて、ドロドロに混ざり合って、そうして一つになってしまえたら。それはそれでとても幸せだろう。

  • 139二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 17:04:34

    >>138おまけありがとう....ありがとう...

  • 140♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 17:07:13

    ……けれど、やっぱりそれはなし。一つになってしまえば、彼の笑顔も、彼の腕の温もりも感じられなくなる。それはきっと……とても寂しいから。


    「ねぇルフィ……?」


    「んー?」


    「離さないでね……」


    代わりに願う。これからもずっと、いつかその時がくるまでずっと、彼の隣にいさせてくださいと。一つになれないならせめて、一つになってしまったと錯覚できる程に、彼の傍に。或いは、どれだけ離れても。彼とともにあるのだという証を……。


    ねぇ、ルフィ。今はまだこれで幸せ。ただあなたの隣で歌って、あなたが作る新時代を見たい。……けれど。いつかあなたが全てを変えて、夢の果てへとたどり着いたときには。その時には、二人っきりのこのベッドの上に。まだ見ぬ誰かがもう一人加わってくれたらなんて。


    それを望んでも……そんな願いを抱いて待ってても、あなたは許してくれる……?


    「ねぇルフィ……?」


    「んー?」


    「私は、ルフィが好き……好きだよ」


    「おう、おれもウタが好きだっ」




    ───おしまい───

  • 141二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 17:09:27

    おまけまで…ありがとうございます

  • 142♪Love song◆0yDCPvKqi222/11/13(日) 17:10:21

    とあるスレを見てきて少し思うところありましたので、再浮上しました。
    皆さんからいただいたコメント、感想、ご指摘、全てが力となり、励みになりました。本当にありがとうございました。

    感謝を伝えるだけの為にやってくるのもあれなので、おまけを置いていきます。
    またどこかでお会い出来たら、その時は拙文ではありますが、よければまたお読みください。今度こそ本当にお疲れ様でした。ありがとうございました!

  • 143二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 19:41:32

    純愛は脳が回復する
    王道ルウタって感じで最高だった

  • 144二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 19:54:33

    純愛ルウタ
    私の好きな言葉です

  • 145二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 19:58:57

    おれァ大好きなんだ
    あなたの書く"純愛ルウタ"神ss
    「最高でした!」って伝えてェんだ
    今からでもレスすることで

  • 146二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 20:57:05

    おかわりのおまけにデザートまでついてきて……こ、こんな幸せなこと……うわーい!!!
    はぁ……好きだ……!!!最高だった……!!!

  • 147二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 22:06:09

    クソォ……どうしてルウタってのはこんなにも尊いんだ……?

  • 148二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 22:26:29

    ホント最高だった…こういう王道ルウタは脳を回復させる
    もう日曜日の終わり際の更新本当にお疲れ様でした

    ん?日曜日の終わり…?
    ……アッ(脳死

  • 149二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 22:54:01

    こういうただただ尊いルウタ、多分おれの寿命を延ばしてくれている気がする
    ありがとう

  • 150二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 23:06:41

    純愛ルウタをありがとうございます…
    尊さで心が癒される

  • 151二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 00:40:03

    素晴らしい神SSをありがとう

  • 152二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 01:09:17

    最後に序盤と同じシチュエーションを持ってきてその差異を表現するのは王道ですよね、いい
    ありがとうございます

  • 153二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 03:00:36

    礼を言う…俺はまだまだルウタで気ぶれる

  • 154二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 03:40:58

    寿命が伸びました。
    純愛ルウタありがとうございます。

  • 155二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 15:13:31

    ありがとう…

  • 156二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 15:19:26

    すまん!!恩にきる!

  • 157二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 23:22:09

    ああ〜仕事頑張ってよかった
    五臓六腑にルウタが染み渡る

  • 158二次元好きの匿名さん22/11/15(火) 02:31:46

    本当によかった。
    ありがとうございます!

  • 159二次元好きの匿名さん22/11/15(火) 14:26:10

    ありがとう

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